JP2006300523A - 測定精度の向上方法および測定容器 - Google Patents
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Abstract
【課題】不溶性担体を備えることを特徴とする測定容器において、実際に反応が行われる不溶性担体部分を改良することなく、感度の向上、測定値ばらつきの低減といった測定精度の向上ができる手段を提供する。
【解決手段】生体試料中の測定対象物質を検出する方法と測定容器であって、(1)開口部を有し、(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている測定容器で、測定容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が測定容器の実質収納空間長より大きくしている。
【選択図】図2
【解決手段】生体試料中の測定対象物質を検出する方法と測定容器であって、(1)開口部を有し、(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている測定容器で、測定容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が測定容器の実質収納空間長より大きくしている。
【選択図】図2
Description
本願発明は、生体試料中の核酸、抗原、抗体あるいはホルモン等の測定対象物質を不溶性担体上で検出する方法における測定精度の向上方法およびそれに用いる測定容器に関するものである。
当技術分野では、免疫測定を実行する技法が一般的に知られている。たとえば、従来型の酵素免疫測定(EIA)手順では、最初、生体試料中の測定対象物質を、対応する抗原試薬または抗体試薬と結合する、一連のステップが使用される。次いで、直接、あるいは、色原物質や蛍光源物質、化学発光を活性化するトリガー溶液など適当な試薬を添加した後に、検出することができる酵素またはその他の物質で標識された第2の抗原または抗体をサンプルに導入する。次いで、生成された信号を読み取り、生体試料中に抗原または抗体が存在するかどうかが示される。
免疫測定において、近年、測定容器に収納された不溶性担体上で試料や試薬を順次滴下させて反応を行わせ、試料中の測定対象物質を検出する手法が用いられている。
そのような手法として、例えば特許文献1には繊維マトリックスを使用した発光免疫測定法において、発光のバックグラウンドを低減させるために「吸収パッドから発せられる化学発光を低減させるために吸収パッドに結合された要素」を用いることが開示されており、微粒子捕獲分離技法およびイオン捕獲分離技法を使用して反応生成物を繊維マトリックス上に捕捉することが記載されている。
特許第2880801号
そのような手法として、例えば特許文献1には繊維マトリックスを使用した発光免疫測定法において、発光のバックグラウンドを低減させるために「吸収パッドから発せられる化学発光を低減させるために吸収パッドに結合された要素」を用いることが開示されており、微粒子捕獲分離技法およびイオン捕獲分離技法を使用して反応生成物を繊維マトリックス上に捕捉することが記載されている。
現在、生体試料の分析における免疫測定の重要性は高まってきており、そのような状況下で、さらにレベルの高い測定精度を望む声は多い。本願発明は、生体試料中の測定対象物質を検出する方法において、測定項目に関わりなく汎用的に、感度の向上、測定値ばらつきの低減といった測定精度の向上ができる手段を提供するものである。
発明者は、生体試料中の測定対象物質を検出する方法において、測定精度を向上させる方法について鋭意検討したところ、開口部を有し、開口部に近接して位置する吸収要素と、開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている、生体試料中の測定対象物質を検出する方法に用いる測定容器において、該測定容器内に設置する前の該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和を、該測定容器の実質収納空間長より大きくすることによって、測定項目に関わりなく汎用的に測定精度の向上ができることを見い出し、本願発明を完成した。
すなわち本願発明の要旨は、以下の通りである。
[項1]生体試料中の測定対象物質を検出する方法であって、
(1)開口部を有し、
(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、
(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、
(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている、
測定容器を用いる方法において、測定容器がさらに以下の特徴を有する、測定精度の向上方法。
(5)該測定容器内に設置する前の該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きい。
[項2]該吸収要素の長さが均一である項1記載の測定精度の向上方法。
[項3]該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きく、かつ140%以下である項1記載の測定精度の向上方法。
[項4]該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の105%以上、かつ120%以下である項1記載の測定精度の向上方法。
[項5]該吸収要素が、セルロースもしくはセルロース誘導体である項1記載の測定精度の向上方法。
[項6]該不溶性担体が繊維マトリックスである項1記載の測定精度の向上方法。
[項7]該繊維マトリックスがガラス繊維である項6記載の測定精度の向上方法。
[項8]該ガラス繊維の厚みが0.3〜2.0mmである項7記載の測定精度の向上方法。
[項9]該測定容器の長さが10〜25mmである項1記載の測定精度の向上方法。
[項10]該測定容器の壁面に2つ以上のつばを有する項1記載の測定精度の向上方法。
[項11]該測定容器の壁面に2つ以上のつばを有し、そのつばが該測定容器の上端から2.0〜10mmの位置にある、項1記載の測定精度の向上方法。
[項12]該測定容器の形状が円筒状である項1記載の測定精度の向上方法。
[項13]該測定容器の内径が5.0〜20mmである項14記載の測定精度の向上方法。
[項14]生体試料中の測定対象物質を検出する方法に用いる測定容器において、
(1)開口部を有し、
(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、
(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、
(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されており、
(5)該測定容器内に設置する前の該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きいことを特徴とする測定容器。
[項15]項14に記載の測定容器を用いて測定を実施する、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定システム
[項16]項14に記載の測定容器を含む、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定に用いるためのキット
[項1]生体試料中の測定対象物質を検出する方法であって、
(1)開口部を有し、
(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、
(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、
(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている、
測定容器を用いる方法において、測定容器がさらに以下の特徴を有する、測定精度の向上方法。
(5)該測定容器内に設置する前の該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きい。
[項2]該吸収要素の長さが均一である項1記載の測定精度の向上方法。
[項3]該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きく、かつ140%以下である項1記載の測定精度の向上方法。
[項4]該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の105%以上、かつ120%以下である項1記載の測定精度の向上方法。
[項5]該吸収要素が、セルロースもしくはセルロース誘導体である項1記載の測定精度の向上方法。
[項6]該不溶性担体が繊維マトリックスである項1記載の測定精度の向上方法。
[項7]該繊維マトリックスがガラス繊維である項6記載の測定精度の向上方法。
[項8]該ガラス繊維の厚みが0.3〜2.0mmである項7記載の測定精度の向上方法。
[項9]該測定容器の長さが10〜25mmである項1記載の測定精度の向上方法。
[項10]該測定容器の壁面に2つ以上のつばを有する項1記載の測定精度の向上方法。
[項11]該測定容器の壁面に2つ以上のつばを有し、そのつばが該測定容器の上端から2.0〜10mmの位置にある、項1記載の測定精度の向上方法。
[項12]該測定容器の形状が円筒状である項1記載の測定精度の向上方法。
[項13]該測定容器の内径が5.0〜20mmである項14記載の測定精度の向上方法。
[項14]生体試料中の測定対象物質を検出する方法に用いる測定容器において、
(1)開口部を有し、
(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、
(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、
(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されており、
(5)該測定容器内に設置する前の該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きいことを特徴とする測定容器。
[項15]項14に記載の測定容器を用いて測定を実施する、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定システム
[項16]項14に記載の測定容器を含む、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定に用いるためのキット
本願発明は、不溶性担体を備えることを特徴とする測定容器において、実際に反応が行われる不溶性担体部分を改良することなく、測定項目に関わりなく汎用的に、感度の向上、測定値ばらつきの低減といった測定精度の向上ができる。
本願発明は、生体試料中の核酸、抗原、抗体あるいはホルモン等の測定対象物質を不溶性担体3上で検出する方法における測定精度の向上方法およびそれに用いる測定容器に関するものである。
本願発明における生体試料とは、全血液、脊髄液、前立腺液、尿、腹水、唾液、血清、血漿など生体流体が含まれる。この改良された測定装置を使用して非生物学的性質の他の流体試料を分析することも可能である。
本願発明の測定容器の一実施態様を図1および図2に示す。なお、本明細書において例えば「開口部2」と表記される場合それは図面の番号と対応していることを示す。
本願発明は、生体試料中の測定対象物質を検出する方法に用いる、以下のような測定容器に対して好ましく適用される。
(1)開口部2を有し、(2)開口部2に近接して位置する吸収要素4と、(3)開口部2と吸収要素4の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体3を備え、(4)該不溶性担体3には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている測定容器。
(1)開口部2を有し、(2)開口部2に近接して位置する吸収要素4と、(3)開口部2と吸収要素4の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体3を備え、(4)該不溶性担体3には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている測定容器。
本願発明の好ましい一実施態様は、上記測定容器において、(5)該測定容器の外郭部1内に設置する前の該不溶性担体3と該吸収要素4の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きいことを特徴とする測定容器であり、また、それを用いる生体試料中の測定対象物質を検出する方法である。
本願発明における、容器内に設置する前の不溶性担体3と吸収要素4の長さの総和とは、それぞれを測定容器内に収納した際の垂直方向になる部分の長さの総和である。垂直方向になる部分の長さの総和が場所によって異なる場合、最も長い部分の長さを採用する。
外郭部1は、不溶性担体3および吸収要素4をその内部に挿入できるように、キャップ(ふた)7とカップ5(うつわ)との組み合わせ構造にすることが出来る。本願発明における測定容器の実質収納空間長とは、カップ5にキャップ7を装着した状態での測定容器内底部からキャップ7の開口部2までの垂直方向の長さのことをいい、図2で示したような形状の容器ではaの長さのことである。
本願発明における測定容器の内径とは、不溶性担体および吸収要素が収納される空間の直径の長さのことをいい、図2で示したような形状の容器ではbの長さのことである。
本願発明における測定容器の長さとは、外郭部1の底部からのキャップ7上端部までの垂直方向の長さのことをいい、図2で示したような形状の容器ではcの長さのことである。
本願発明の、生体試料中の測定対象物質を検出する方法は、(1)開口部2を有し、(2)開口部2に近接して位置する吸収要素4と、(3)開口部2と吸収要素4の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体3を備え、(4)該不溶性担体3には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている測定容器において、流体除去手段としての吸収要素4の大きさを変えることで達成される。
本願発明の、測定容器、および、それを用いて生体試料中の測定対象物質を検出する方法は、化学発光、蛍光、発色など様々な検出系の不溶性担体を用いた診断検定に使用でき、検出方法は限定されない。
本願発明の測定容器は、少なくとも一つの試料添加と測定対象物質の検出を行う開口部2を有し、この開口部2から必要に応じ逐次試薬を投入することで、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている不溶性担体3に到達させ、不溶性担体3に特定の結合対複合体を介して保持される。この保持・固定化されている特定の結合対複合体を検出することで測定を行う。
本願発明の好ましい一実施態様は、(5)該測定容器の外郭部1内に設置する前の該不溶性担体3と該吸収要素4の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きいことである。
好ましくは、容器内に設置する前の該不溶性担体3と該吸収要素4の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きく、かつ140%以下である。
さらに好ましくは、容器内に設置する前の該不溶性担体3と該吸収要素4の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の105%以上、かつ120%以下である。
好ましくは、容器内に設置する前の該不溶性担体3と該吸収要素4の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きく、かつ140%以下である。
さらに好ましくは、容器内に設置する前の該不溶性担体3と該吸収要素4の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の105%以上、かつ120%以下である。
「容器内に設置する前の該不溶性担体3と該吸収要素4の長さの総和」と「該測定容器の実質収納空間長」がそのような比率をとることにより、キャップ7を装着すると「不溶性担体3と吸収要素4に一定の圧力が加わっている状態」になるため、不溶性担体3がずれて「生理活性物質が固定化されていない部分が開口部に露出すること」がなくなり、かつ、不溶性担体3の表面に「しわ」や「よれ」など凹凸が生じることなくなることから不溶性担体3上で均一な反応を起こすことができ、結果として測定感度が向上すると考えられる。さらに、吸収要素4の長さを測定容器間で均一にすることで、感度が安定化し、再現性が向上するものと考えられる。以上のようなことから、測定精度を向上させることができるものと考えられる。
本願発明においては、容器内に設置する前の不溶性担体3と吸収要素4の長さの総和と、測定容器の実質収納空間長との比が重要であるが、さらに本願発明に好ましい条件を例示することができる。
例えば、不溶性担体3は、均一な厚さを持つシート状が好ましい。厚さは特に限定されないが、反応の結果生じる変化を上面から検出することから、担体としての強度を維持できる範囲でできるだけ薄いほうが好ましい。好ましくは0.3〜2.0mmである。シートの面積は、吸収要素4の断面より小さくても大きくても良いが、開口部2の範囲を全てカバーする大きさおよび形状でなければならない。好ましくは開口部2の面積と比較して100%〜400%の大きさである。
吸収要素4は、生体試料および測定反応混合物の不溶性担体3中の通過を強化するために不溶性担体3の下方に流体除去手段として配置されている。その働きは、不溶性担体3を通過した液が毛管現象により多孔性の材料に吸収されることによる。そのため、不溶性担体3と接する面が平らになっていることが好ましく、反応液を吸収するのに十分な容量を持つ柱状が好ましい。柱の長さは通常、不溶性担体3の厚さより大きく、好ましくは柱の長さは不溶性担体3の厚さの5〜30倍である。柱の断面はどのような形であっても良いが、好ましくは円柱である。また、不溶性担体3と接する面は円柱に対して直角が好ましい。円柱の反対面はどのようであっても良いが、外郭部1に接する圧力を均一に受け、それを不溶性担体3と接する面に均一に伝えられるよう、直角で平らな面が好ましい。また、吸収要素4は外郭部1の内壁の間にぴったり嵌まり込むように成形されていることが好ましいが、吸収要素4の外壁部分と外郭部1の内壁との距離は全ての部位で同じである必要はない。嵌り具合には多少の遊びがあっても良いがその動き幅は吸収要素4の最大径の10%を超えないことが好ましい。円柱の場合、外径は外郭部1の内径の90%以上が好ましい。
また、必要により、開口部2と不溶性担体3または不溶性担体3と吸収要素4の間に、本願発明の効果を妨げない範囲内で別の構造体を挿入しても良い。
外郭部1は、キャップ7上部に添加した反応液や試薬が漏れず、その内部が不溶性担体3と吸収要素4を適切に保持できるような構造になっていれば、その外側の形状については特に限定されない。上から見た形が円や正多角形あるいはそれらに近い形状であってもよいし、反応が行われる以外の部分に関係ないところに図2の6のようなつばが出ていてもよい。また、液相での反応を行うための容器や反応に必要な試薬を入れる容器などが一体となっていてもよい。その他、外郭部1には、流体の吸収速度を上げるために、測定前に測定容器内に含まれる空気が、添加された反応混合物および試薬によって置き換えられ排出されるように、通気孔が1つ以上あることがより好ましい。
キャップ7は、開口部2を有し、装着時、外郭部1にしっかり固定され、かつ不溶性担体3とキャップ7の一部と接触し、不溶性担体3を押さえつけ、移動しないようにできれば、その形状については特に限定されない。開口部2は、上から見た形が円や正多角形あるいはそれらに近い形状であっても良い。好ましくは、添加した反応液や試薬が開口部以外に漏出しないように開口部を中心軸にした漏斗状構造であることである。
本願発明においては、容器内に設置する前の不溶性担体3と吸収要素4の長さの総和と、測定容器の実質収納空間長との比が重要であり、その大きさ、形状、材質等については特に制限されるものではない。好ましくは、全ての試薬が、不溶性担体3の開口部2から見えている範囲に、必要かつ十分に吸収されうる程度であれば差し支えない。
具体的には、外郭部1については、生体試料、測定に必要な試薬を漏出することなく、吸収できうる大きさであれば、限定されないが、好ましくは自動分析装置での取扱に適当な大きさとして、10〜25mmであることが望まれる。また、形状は円筒状であることが好ましく、内径が5.0〜20mmであることがより好ましい。材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン・ターポリマー(ABS)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、HIPS、または測定成分に不活性な他の何らかの成形可能な材料で成形されるならば、限定されない。
キャップ7は、開口部2を有していれば大きさは限定されないが、好ましくは、外郭部1をすべて覆うことが可能な10〜25mmである。材質は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン・ターポリマー(ABS)、ポリカーボネート、ポリアクリレート、HIPS、または測定成分に不活性な他の何らかの成形可能な材料で成形されるならば、限定されない。水を通さず、自然乾燥、風乾、真空乾燥、減圧乾燥、凍結真空乾燥、赤外線や遠赤外線による乾燥、またマイクロウェーブなどの高周波を利用した乾燥等に耐えるものが好ましい。
開口部2は、測定に必要なシグナルが検出できうる大きさの不溶性担体3が露出し、かつ添加した試薬や試料を10秒以内に吸収させることが可能な大きさなら限定されないが、好ましくは2.0〜10mmの円形であり、より好ましくは2.0〜6.0mmである。
不溶性担体3については、流体を透過することができる構造であれば特に限定されない。様々な多孔性構造の材料から選択することができるが、好ましくは、紙、ガラス、セルロース、ナイロン、その他の天然繊維材料または合成繊維材料等でできたフィルターなどの繊維マトリックスかつ、バインダレス繊維である。より好ましくは安価であり、タンパク質の非特異的な吸着が少ないことで知られているガラス繊維のバインダレス繊維フィルターである。また、重量が比較的大きくかつ比較的厚い、具体的には重量が1平方メートル当たり80〜220gかつ厚さが0.3〜2.0mmの直径4〜10mmの円状に切り抜いたガラス繊維フィルターを用いることがより好ましい。これらは市販品などを用いることができる。
吸収要素4については、流体を一定量保持できるものであれば、特に限定されない。好ましくは、紙、ガラス、セルロース、セルロース誘導体、ナイロン、その他の天然繊維材料または合成繊維材料などであり、より好ましくは流体の液性による化学変化の起こりにくい酢酸セルロース誘導体である。また、吸収要素4の構造は、流体を保持しうる繊維の表面積を多くするため、多孔性構造であることが好ましい。これは、市販のタバコフィルターを用いることもできる。また、大きさは、外郭部1の内径が5.0〜20mm、高さ10〜25mmならば、吸収要素4も内径が5.0〜20mm、高さ10〜25mmで隙間の空かない形状であることがより好ましい。
本願発明の、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定システムは、例えば、本願発明の測定容器を用いた反応により生じた種々の物理化学的変化を、検出系に応じて従来公知の検出方法(測定機器)を用いることにより実施することができる。
また、本願発明の、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定に用いるためのキットは、例えば、本願発明の反応容器(全体)および必要に応じ、測定対象物質と結合対複合体を形成する物質を含む試薬、検出可能なシグナルを生じさせる基質を含む試薬、ブロック液、洗浄液などを含む。
本願発明の測定容器においては、測定対象物質を「直接」あるいは「結合対複合体を形成する物質を介して」捕捉することができる、不溶性担体3に結合性の生理活性物質が、あらかじめ固定化された状態で提供される。より好ましくは、「測定対象物質に非依存的な汎用性の高い測定容器にすることができる結合対複合体」を形成する物質を介して捕捉することができる結合性の生理活性物質が、あらかじめ固定化された状態である。固定化される結合性の生理活性物質の例としては、直接捕捉するならば、測定対象物質に対する抗体または抗原が挙げられる。結合対複合体を形成する物質を介して捕捉するならば、測定対象物質と特異的に結合する第一の物質に標識された低分子化合物を捕捉できるものであれば特に限定はされないが、抗ビオチン抗体、抗ジニトロフェノール抗体または抗ジゴキシゲニン抗体のような、低分子化合物に対する抗体または抗体フラグメントや、ビオチンと結合し得るアビジン、ストレプトアビジン等が例として挙げられる。
結合対複合体とは、本明細書では、「化学的もしくは物理的な方法により、測定対象物質と特異的に結合する第一の物質」に結合した低分子化合物と、その化合物を特異的に認識する分子との複合体を意味する。そのような複合体を形成できうる組み合わせならば限定されるものではないが、代表的なものにハプテン−アンチハプテン複合体が含まれ、例えばビオチン−アンチビオチン、アビジン−ビオチン、炭水化物−レクチン、相補ヌクレオチド配列、エフェクタ−レセプタ、酵素共同因子−酵素、酵素阻害物質−酵素などが挙げられる。
また、この測定容器をあらかじめ固定化された生理活性物質を使用せずに測定に使用することも可能である。たとえば、ラテックスビーズなど免疫測定を液相で行った後、本願発明の測定容器に添加し、B/F分離を不溶性担体3上で行うといった応用的使用法も可能であり、使用用途は多岐に渡る。
不溶性担体3に生理活性物質を固定化するには一般的に知られているような、例えば物理的に吸着させる方法または化学的に結合させる方法を用いればよい。その際、該生理活性物質を不溶性担体に直接固定化してもよいし、該生理活性物質に特異的に結合する抗体や受容体などの物質を不溶性担体に固定化し、該物質を介して該生理活性物質を固定化してもよい。また、固定化した不溶性担体を切り出して測定容器に装着してもよいし、未固相の不溶性担体を測定容器に装着した後に固定化を実施してもよい。また保存時や輸送時の安定性等を考慮すると、測定容器は生理活性物質を固定化した後に乾燥した状態で提供されることが望ましく、乾燥の方法としては自然乾燥、風乾、真空乾燥、減圧乾燥、凍結真空乾燥、赤外線や遠赤外線による乾燥、またマイクロウェーブなどの高周波を利用した乾燥等が挙げられる。
本願発明によれば、反応が行われる不溶性担体3における各種反応系、あるいは不溶性担体に固定化される生理活性物質の保存安定性などに悪影響を及ぼすことがないので、測定項目に関わりなく汎用的に、感度の向上、測定値ばらつきの低減といった測定精度の向上が可能となる。
[実施例1]
(1)吸収要素の作製
直径9.0mmの酢酸セルロース製タバコフィルターを11.5mmずつ切断した 。
(2)測定容器の作製
直径9.0mm、厚さ1.0mmのガラス繊維濾紙(アドバンテック東洋社製)に 円形にくりぬき、上記(1)で製した吸収要素に積層し、図1に示すような、ポリエチ レン製の液体不透過性容器内に収納した。今回使用した液体不透過性容器は実質収納空 間長が12mm、内径9.0mm、測定容器の長さが15mmのものを使用した。この 実施例1では、容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が、該測定容 器の実質収納空間長の104.2%になる。
(3)抗体の固相化
上記(2)で製した測定容器の開口部より、(a)100mMクエン酸緩衝液:pH3.0を100μl、(b)ヤギ抗ビオチンポリクローナル抗体47μg/mL(100mMクエン酸緩衝液:pH3.0)を50μl、(c)5%グリセロール・1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液(10mMリン酸塩−生理食塩水緩衝液:pH7.4)を100μl、直前に供給された液が吸引されるのを待って順次供給した後、凍結乾燥した。
(4)BNPの測定
本測定容器は、全自動化学発光免疫測定装置MI02で使用が可能である。そこで、試薬は「MI02 シオノギBNP」(塩野義製薬)を使用し測定した。測定の概略は、まず添付の標準BNP溶液(DおよびE)65μlとBNP抗体溶液20μlが混和され、30℃で5分間インキュベーションする(第1反応液)。続いてこの第1反応液70μlを(3)で作製した測定容器に添加し、30℃で4分間インキュベーション後、専用洗浄液80μlで2回洗浄後、発光基質30μlを加え、測定を行う。
(1)吸収要素の作製
直径9.0mmの酢酸セルロース製タバコフィルターを11.5mmずつ切断した 。
(2)測定容器の作製
直径9.0mm、厚さ1.0mmのガラス繊維濾紙(アドバンテック東洋社製)に 円形にくりぬき、上記(1)で製した吸収要素に積層し、図1に示すような、ポリエチ レン製の液体不透過性容器内に収納した。今回使用した液体不透過性容器は実質収納空 間長が12mm、内径9.0mm、測定容器の長さが15mmのものを使用した。この 実施例1では、容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が、該測定容 器の実質収納空間長の104.2%になる。
(3)抗体の固相化
上記(2)で製した測定容器の開口部より、(a)100mMクエン酸緩衝液:pH3.0を100μl、(b)ヤギ抗ビオチンポリクローナル抗体47μg/mL(100mMクエン酸緩衝液:pH3.0)を50μl、(c)5%グリセロール・1%ウシ血清アルブミン(BSA)溶液(10mMリン酸塩−生理食塩水緩衝液:pH7.4)を100μl、直前に供給された液が吸引されるのを待って順次供給した後、凍結乾燥した。
(4)BNPの測定
本測定容器は、全自動化学発光免疫測定装置MI02で使用が可能である。そこで、試薬は「MI02 シオノギBNP」(塩野義製薬)を使用し測定した。測定の概略は、まず添付の標準BNP溶液(DおよびE)65μlとBNP抗体溶液20μlが混和され、30℃で5分間インキュベーションする(第1反応液)。続いてこの第1反応液70μlを(3)で作製した測定容器に添加し、30℃で4分間インキュベーション後、専用洗浄液80μlで2回洗浄後、発光基質30μlを加え、測定を行う。
[実施例2]
実施例(1)の工程を、12.5mmで切断した以外は実施例と同様に測定容器を製し、BNPを測定した。この比較例1では、容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の112.5%になる。
実施例(1)の工程を、12.5mmで切断した以外は実施例と同様に測定容器を製し、BNPを測定した。この比較例1では、容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の112.5%になる。
[比較例]
実施例(1)の工程を、10.5mmで切断した以外は実施例と同様に測定容器を製し、BNPを測定した。この比較例1では、容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の95.8%になる。
実施例(1)の工程を、10.5mmで切断した以外は実施例と同様に測定容器を製し、BNPを測定した。この比較例1では、容器内に設置する前の不溶性担体と吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の95.8%になる。
実施例および比較例で標準BNP試薬Eを7重測定し、発光シグナル強度(RLU)の平均値(Mean)、比較例のMeanを1としたときの実施例の相対強度を表1に示す。
表1に示すとおり、標準BNP試薬Eの発光シグナル強度が比較例に対し、実施例1で1.15倍、実施例2で1.26倍に感度が向上した。
実施例および比較例で標準BNP試薬Dを7重測定し、発光シグナル強度(RLU)の平均値(Mean)、標準偏差(SD)、変動係数(CV)を表2に示す。
表2に示すとおり、標準BNP試薬Dの発光シグナル強度が比較例に対し、実施例1で変動係数が2分の1、実施例2で8分の1になり、同時再現性が向上した。
このように、本願発明の測定容器を使用することで、実際に反応が行われる不溶性担体部分を改良することなく、感度の向上、測定値ばらつきの低減といった測定精度の向上ができることから、これまで培われた製造ノウハウを無駄にすることなく、体外診断用医薬品などの各種分析用途に利用することができ、産業界に寄与することが大である。
1:外郭部
2:開口部
3:不溶性担体
4:吸収要素
5:カップ
6:つば
7:キャップ
2:開口部
3:不溶性担体
4:吸収要素
5:カップ
6:つば
7:キャップ
Claims (16)
- 生体試料中の測定対象物質を検出する方法であって、
(1)開口部を有し、
(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、
(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、
(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されている、
測定容器を用いる方法において、測定容器がさらに以下の特徴を有する、測定精度の向上方法。
(5)該測定容器内に設置する前の該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きい。 - 該吸収要素の長さが均一である請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きく、かつ140%以下である請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長の105%以上、かつ120%以下である請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該吸収要素が、セルロースもしくはセルロース誘導体である請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該不溶性担体が繊維マトリックスである請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該繊維マトリックスがガラス繊維である請求項6記載の測定精度の向上方法。
- 該ガラス繊維の厚みが0.3〜2.0mmである請求項7記載の測定精度の向上方法。
- 該測定容器の長さが10〜25mmである請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該測定容器の壁面に2つ以上のつばを有する請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該測定容器の壁面に2つ以上のつばを有し、そのつばが該測定容器の上端から2.0〜10mmの位置にある、請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該測定容器の形状が円筒状である請求項1記載の測定精度の向上方法。
- 該測定容器の内径が5.0〜20mmである請求項14記載の測定精度の向上方法。
- 生体試料中の測定対象物質を検出する方法に用いる測定容器において、
(1)開口部を有し、
(2)開口部に近接して位置する吸収要素と、
(3)開口部と吸収要素の間に配置した、液体を透過することができる構造である不溶性担体を備え、
(4)該不溶性担体には、測定対象物質を、直接あるいは結合対複合体を形成する物質を介して、捕捉することができる結合性の生理活性物質があらかじめ固定化されており、
(5)該測定容器内に設置する前の該不溶性担体と該吸収要素の長さの総和が、該測定容器の実質収納空間長より大きいことを特徴とする測定容器。 - 請求項14に記載の測定容器を用いて測定を実施する、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定システム
- 請求項14に記載の測定容器を含む、生体試料中の測定対象物質を検出するための測定に用いるためのキット
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---|---|---|---|
JP2005117884A JP2006300523A (ja) | 2005-04-15 | 2005-04-15 | 測定精度の向上方法および測定容器 |
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JP (1) | JP2006300523A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008157684A (ja) * | 2006-12-21 | 2008-07-10 | Toyobo Co Ltd | 反応カップ収納器、及び反応測定器具セット |
WO2016163493A1 (ja) * | 2015-04-08 | 2016-10-13 | 株式会社パートナーファーム | 固相反応容器及びこれを用いた測定方法 |
Citations (1)
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JPH01244368A (ja) * | 1987-10-29 | 1989-09-28 | Hygeia Sci Inc | イムノアッセイを実施するための事前包装された使い捨て装置 |
-
2005
- 2005-04-15 JP JP2005117884A patent/JP2006300523A/ja active Pending
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