JP2006299640A - 2系統アクチュエータおよび2系統操作システム - Google Patents

2系統アクチュエータおよび2系統操作システム Download PDF

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Abstract

【課題】 電気系統に故障が生じたときでも、運転者ないし同乗者などがアクチュエータを直接操作することができる2系統アクチュエータを提供する。
【解決手段】 往復回転するモータMと、そのモータによって回転駆動される出力ギヤ13と、前記モータMと出力ギヤ13との間に介在される、ギヤ側からモータの回転操作が可能な減速機Gと、前記出力ギヤ13と噛み合う歯列を備えると共にコントロールケーブル16、17を介して互いに異なる操作対象に連結された第1ラック14および第2ラック15と、第1ラック14の端部でハウジング11から突出する端部に設けたエマージェンシーレバー42とからなる2系統アクチュエータ10。
【選択図】 図1

Description

本発明は2系統(2ウエイ)アクチュエータおよび2系統操作システムに関する。さらに詳しくは、自動車のトランクラッチとフューエルハッチなど、2個所の操作対象を電動操作することができる2系統アクチュエータおよび車両に用いられる2系統操作システムに関する。
特開平5−187159号公報 特許第3360858号公報
特許文献1には、低回転数・高トルクのモータと、そのモータの出力軸に取りつけたピニオンギヤと、そのピニオンギヤと噛み合う大径の入力ギヤおよび小径の出力ギヤを一体化した減速ギヤと、出力ギヤと噛み合うラックプレートと、そのラックプレートに対して遊びをもって連結されたフューエルケーブルおよびトランクケーブルとを備えた車両の開閉体用のアクチュエータが開示されている。
このアクチュエータは、自動車のフューエルリッド側のリアフェンダー内部に取りつけられ、運転席のスイッチ操作によりモータの正転/逆転/停止を制御する。そしてモータが一方向に回転すると、減速ギヤを介してラックプレートを一方向にスライドさせ、フューエルケーブルあるいはトランクケーブルの内の一方を引き操作する。その場合、他方のケーブルは、遊びにより押されることがない。モータが逆方向に回転する場合は他方のケーブルが引き操作され、一方のケーブルは押されない。
他方、特許文献2には、通常のモータを用い、モータと減速ギヤとの間にウォーム減速機を介在させた以外は特許文献1のアクチュエータと実質的に同様のアクチュエータが開示されている。
前述の電動式のアクチュエータは、いずれも1個のラックに2本のケーブルを連結するので、部品点数が少ない半面、組立作業が煩雑である。さらにソレノイドタイプのトランクオープナを採用する場合など、1系統用のアクチュエータに変更する場合は、ラックを取り外すために2本のケーブルを引き出す必要があり、そのため、残す方のケーブルの他端側を緩めたり、再度取りつけたりする手間がかかる。
また、特許文献2の装置の場合、ウォームギヤ減速機を用いているのでモータあるいはモータピニオンを外さなければ、ラックを移動させることもできない。特許文献1の装置についても、大径のギヤと小径のギヤを組み合わせた減速比が大きい1段の減速機を備えているので、ラックを移動させることは困難である。本発明は、組み立て作業が容易で、しかも1系統用のアクチュエータに容易に変更できる電動式の2系統アクチュエータを提供することを技術課題としている。
また、特許文献1、2のアクチュエータの場合、電気系統に故障が生じた場合は、運転者が自動車から降りてキーでロックを解除する必要がある。さらに一方のロックを解除した状態で電気系統に故障が生ずると、フューエルリッドやトランクリッドを閉じることができなくなる問題がある。本発明はアクチュエータの電気系統に故障が生じたときでも、直接操作することができる2系統操作システムを提供することを第2の技術課題としている。
本発明の2系統アクチュエータは、往復回転するモータと、そのモータによって回転駆動されるギヤと、前記モータとギヤとの間に介在される、ギヤ側からモータの回転操作が可能な減速機構と、前記ギヤと噛み合う歯列を備え、互いに異なる操作対象に連結される第1出力部材および第2出力部材とからなることを特徴としている。
このような2系統アクチュエータでは、前記第1出力部材および第2出力部材のうち、いずれか一方の出力部材を手動操作するためのエマージェンシー手段を備えているものが好ましい。さらに前記第1および第2出力部材が前記ギヤと噛み合う2本のラックであり、それらのラックがハウジング内に互いに平行に移動自在に収容されているものが好ましい。
その場合、前記ラックのうち、いずれか一方のラックの端部に手動操作のためのエマージェンシレバーが設けられると共に、そのエマージェンシレバーがハウジングから突出しているものが好ましい。また、いずれか一方のラックにプルコントロールケーブルが連結され、そのプルコントロールケーブルの他端ないし途中に、手動操作のためのエマージェンシー手段が設けられているものとすることができる。さらにエマージェンシー手段は、ギヤの回転軸に固定されているレバーによっても実現することができる。
本発明の2系統操作システムは、前記いずれかの2系統アクチュエータと、その2系統アクチュエータの第1および第2出力部材の端部にそれぞれ一端が遊びをもって連結されると共に、他端が操作対象に連結される第1および第2プルコントロールケーブルとを備えており、前記ギヤの一方向の回転が第1プルコントロールケーブルを引き操作し、他方向の回転が第2プルコントロールケーブルを引き操作するように連結されていることを特徴としている。前記操作対象は、車両のトランクラッチとフューエルハッチとすることができる。
本発明の2系統操作システムの第2の態様は、往復回転するモータと、そのモータの正転および逆転によりトランクラッチとフューエルハッチを操作する出力部材と、モータと出力部材の間に介在される、出力部材側からの回転操作が可能な減速機と、前記出力部材を手動で操作するためのエマージェンシー手段とからなることを特徴としている。このような2系統操作システムでは、前記出力部材とトランクハッチの間、および出力部材とフューエルハッチの間のうち、少なくとも一方がコントロールケーブルによって連結されているものが好ましい。
本発明の2系統アクチュエータは、モータを一方向に回転させることにより、ギヤを介して第1出力部材と第2出力部材を同方向あるいは逆方向に駆動させることができ、それぞれの出力部材に連結されている操作対象を操作することができる。そして1系統用のアクチュエータに変更する場合は、いずれか一方の出力部材を取り外すか、一端その出力部材を取り出して、それに連結されている連結部材を外して再度その出力部材を取り付けるだけでよい。その場合、他方の出力部材およびそれに連結されている操作対象には触れる必要がない。したがって簡単に1系統用のアクチュエータとして用いることができる。
前記第1出力部材および第2出力部材のうち、いずれか一方の出力部材を手動操作するためのエマージェンシー手段を備えている場合は、モータや電気系統に故障が生じたときは、ギヤ側からモータの回転操作が可能であるので、エマージェンシー手段を一方向に操作することによって、ギヤ、減速機およびモータを回転させながら、一方の出力部材を操作することができる。それによりその出力部材と連結されている操作対象を操作することができる。また、エマージェンシー手段を他方向に操作することによって、他方の出力部材を介して他方の操作対象を操作することができる。
このような2系統アクチュエータにおいて、前記第1および第2出力部材が前記ギヤと噛み合う2本のラックであり、それらのラックがハウジング内に互いに平行に移動自在に収容されている場合は、部品の製造および組み立て、並びに片方のだけラックを取り外したり、組み付けたりすることも容易である。そのような2系統アクチュエータにおいて、2本のラックのうち、いずれか一方のラックの端部に手動操作用のエマージェンシーレバーが設けられると共に、そのエマージェンシーレバーがハウジングから突出している場合は、エマージェンシーレバーを直線方向に往復操作するだけでよいので、緊急時の操作が容易である。
また、いずれか一方のラックに連結されるプルコントロールケーブルの他端ないし途中に、手動操作用のエマージェンシー手段が設けられている場合は、プルコントロールケーブルを介してラックを遠隔操作できるので、2系統アクチュエータおよびエマージェンシー手段の取り付け位置の選択範囲が拡がる。前記エマージェンシー手段が前記ギヤの回転軸に固定されているレバーである場合は、エマージェンシーレバーを回動させると、ギヤが回転する。それにより第1あるいは第2出力部材を操作することができる。2系統アクチュエータを取りつける位置によっては、エマージェンシーレバーを往復直線操作しにくいことがある。その場合はこのような回動操作式のエマージェンシーレバーを用いることにより、操作が容易になることがある。
本発明の2系統操作システム(請求項7)は、前述の2系統アクチュエータを備えており、その2系統アクチュエータの出力部材が第1プルコントロールケーブルおよび第2プルコントロールケーブルを介して操作対象に連結されているので、2系統アクチュエータを操作対象から離れた位置に配置することができる。また、1系統のアクチュエータに簡単に変更することができる。そして操作対象が車両のトランクラッチとフューエルハッチである場合は、一方のみをプルコントロールケーブルを介して操作システムで操作し、他方をソレノイドなど他の手段で操作するように変更することも容易である。
本発明の2系統操作システムの第2の形態(請求項9)は、モータの一方向の回転でトランクラッチを操作することができ、他方の回転でフューエルハッチを操作することができる。そしてエマージェンシー手段を手動で操作することにより出力部材を操作できるので、電気系統の故障にも対処できる。
前記出力部材とトランクハッチの間、および出力部材とフューエルハッチの間のうち、少なくとも一方がコントロールケーブルによって連結されている場合は、2系統アクチュエータあるいはエマージェンシー手段を操作しやすい位置に設定することができる。
つぎに図面を参照しながら本発明の2系統アクチュエータ(以下、単にアクチュエータという)およびそのアクチュエータを備えた車両の実施形態を説明する。図1および図2はそれぞれ本発明のアクチュエータの一実施形態を示す一部切り欠き平面図および正面図、図3は図1のアクチュエータの要部斜視図、図4は図1のIV-IV線断面図、図5は図1のアクチュエータを備えた車両の一実地形態を示す斜視図、図6は本発明のアクチュエータの他の実施形態を示す一部切り欠き要部概略正面図、図7は本発明のアクチュエータのさらに他の実施形態を示す要部概略斜視図である。
図1に示すアクチュエータ10は、ハウジング11と、そのハウジングに被せられるカバー12と、ハウジング11の内部に収容されるモータMと、そのモータに連結される減速機Gと、その減速機の出力ギヤ13と噛み合う2個のラック、すなわち第1ラック14および第2ラック15と、それらのラックに連結される第1コントロールケーブル16および第2コントロールケーブル17とを備えている。
前記ハウジング11は、ラック14、15を摺動自在にガイドする細長い矩形状のガイド部20と、そのガイド部とほぼ直交するモータ収容部21とからなり、平面視で略L字状の箱状の形態を有する。ガイド部20とモータ収容部21が交わる内側のコーナー近辺には、略三角形状の減速機収容部22が設けられている。前記ガイド部20には、ラック14、15の片面を摺動自在にガイドする2枚のガイド壁23が長手方向に延びるように互いに間隔をあけて配置されており、それらのガイド壁23と対向する位置には、ラック14、15の他面をガイドするリブ24が突設されている。
ガイド部20の両端には、前記第1および第2コントロールケーブル16、17の導管25の端部に固着されたケーシングキャップ26を係止するための導管係止部27が設けられている。ケーシングキャップ26には環状溝26aが形成されており、その環状溝26aを導管係止部27に係止している。さらに減速機収容部22に相当する外壁の内面には、減速機Gのギヤを回転自在に支持する軸受け28、28が設けられている。
ハウジング11のモータ収容部21と減速機収容部22との間には、仕切り壁29が形成されている。減速機収容部22には、モータMの出力軸30あるいはそれに取りつけたピニオン31を回転自在に支持する軸受け用の壁32が設けられている。
図2に示すように、ガイド部20の外壁には、カバー12の一端を係止するための係止爪33が設けられており、カバー12の対応する部位には、その係止爪33に弾力的に係止される略コ字状の係止片34が設けられている。カバー12の平面形状はハウジング11とほぼ同一であり、同じく箱状を呈している。このようなハウジング11およびカバー12はそれぞれ ポリアセタール(POM)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、およびガラス入りPOMおよびガラス入りPBTなどの合成樹脂で成形することができる。
カバー12は3本のタッピングスクリューなどの止めねじ12aでハウジング11に取りつけられる(図1参照)。ガイド部20の外壁には2個の略三角形状の支持脚取付け部35が設けられている。それらの支持脚取付け部35には、車両取り付け用のねじ36が仮止めされている。
図1および図3に示すように、前記減速機Gは、モータMの出力軸30に固定される前述のピニオン31と、そのピニオンと噛み合う第1大径ギヤ37と、その第1大径ギヤと一体に回転する第1小径ギヤ38と、その小径ギヤと噛み合う第2大径ギヤ39と、その第2大径ギヤ39と一体に回転する前述の出力ギヤ13とから構成されている。ピニオン31、第1大径ギヤ37、第1小径ギヤ38および第2大径ギヤ39には、歯が斜めに形成されたヘリカルギヤが用いられる。ただし平歯車であってもよい。これらのギヤは、出力ギヤ13を含めてポリアセタール(POM)などの合成樹脂で構成することができる。
第1大径ギヤ37と第1小径ギヤ38は一体に結合され、両端から軸40が突出している。また、第2大径ギヤ39と出力ギヤ13も一体に結合され、両端から軸41が突出している。それらのギヤの軸40、41は、ハウジング11の軸受け28によって回転自在に支持されている。ウォーム減速機などは自己拘束機能、すなわち出力側から回転させることができないという機能があるが、この減速機Gはそのような自己拘束機能がなく、出力ギヤ13を回転させるとモータMを回転させることができる。
前記2本のラック14、15のうち、第1ラック14はハウジング11の端部に形成した開口11aから突出しており、その突出した部分の端部にエマージェンシーレバー42が一体に設けられている。エマージェンシーレバー42は第1ラック14の端部から横向きに延びており、その自由端43はモータ側に湾曲している。第1ラック14の他端には第1コントロールケーブル16の内索44のケーブルエンド45を収容し、係止する箱状のケーブル係止部46が設けられている。さらに第1ラック14の上面には、出力ギヤ13と噛み合うラック歯列が形成されている。
ケーブル係止部46は図3に示すように上方に突出しており、ケーブルエンド45を軸方向に移動自在に収容する空所47を備えている。ケーブル係止部46の端部側の壁48には内索44を通すスリット49が形成されている。空所47およびスリット49は、ケーブルエンド45を収容し、内索44を通すために上方に開放している。他方のラック(第2ラック)15は、エマージェンシーレバー42を有しない以外は、第1ラック14と実質的に同一であるので、同一部分に同じ符号を付して説明を省略する。
図1あるいは図3に示すように、第1ラック14と第2ラック15は、ケーブル係止部46が互いに逆方向となるように、ハウジング11のガイド部20に収容される。それぞれのラック14、15はハウジング11の底面、ガイド壁23およびリブ24で囲まれ、上面は出力ギヤ13によって押さえられて軸方向に摺動自在にガイドされる。さらに図示していないが、カバー12の下面にケーブル係止部46の上面と摺接する突条を設け、ケーブルエンド45が抜けないようにしている。第1ラック14および第2ラック15は、合成樹脂で成形することができる。
前記コントロールケーブル16、17は、ぞれぞれ前述の導管25とその内部に摺動自在に収容される内索44とからなる公知のプルコントロールケーブルである。導管25は金属線を螺旋状に密に巻いた鎧層の外周に合成樹脂を被覆したものなどが用いられる。合成樹脂製のチューブからなるライナーを内部に設けることもある。内索(インナーケーブル)44は複数本の金属線を撚り合わせたものであり、端部に鋳込みなどで公知のケーブルエンド45を固着している。内索44は導管25内を摺動するものであるので、とくに所定の半径での往復摺動時の摩擦が低く、耐久性が高いように構成されており、荷役用のワイヤーロープなどとは異なる。この実施形態では、ケーブルエンド45は内索44の軸心と同心の円柱状としており、ケーブル係止部46の空所47の底面はケーブルエンド45と摺動しやすいように断面円弧状にしている。
前述のように、導管25の端部には、鎧層がほどけないようにケーシングキャップ26がカシメによって固着されている(図1参照)。この実施形態では、第1コントロールケーブル16の他端には、公知のフューエルハッチ(図5の符号50)用のロック解除部51が連結されている。ロック解除部51のケース52内には、内索44の端部に固定される係止ピン53が軸方向移動自在に収容されており、さらにその係止ピン53をケース52から突出する方向に常時付勢するバネが収容されている。第2コントロールケーブル17の他端には、トランクラッチ(図5の符号55)が連結されている。
上記のごとく構成されるアクチュエータ10は、通常は図5に示すように自動車の車体のフューエルハッチ50の後ろ側に設置するが、ケーブル式であるので、配索可能、設置可能な位置であればどこに配置してもよい。たとえば前述のフューエルハッチの後ろ側のほか、フューエルハッチの下側、あるいはトランクの後端に設置することができる。ただしコストを考慮すると、フューエルリッド付近に配置するのが好ましい。エマージェンシーレバーを備えている場合は、そのエマージェンシーレバーを車内から操作できるように取りつけてもよく、トランク内で操作できるようにしてもよい。また、エマージェンシー操作をコントロールケーブルを介して行うようにしてもよく、その場合はエマージェンシーレバーの配置の自由度が一層高くなる。そして運転席の切り替えスイッチSWの操作により、モータMの正転/逆転/停止を制御する。なお、無線ないし赤外線でモータMを操作できるように構成することもできる。図5の符号56はトランクリッドである。
図4のモータMが時計方向(矢印P1)に回転すると、ピニオン31も同方向に回転する。それによりピニオン31と噛み合っている第1大径ギヤ37がギヤ比に応じて減速されて反時計方向(矢印P2)に回転し、その第1大径ギヤ37と一体に回転する第1小径ギヤ38が同方向に回転する。それにより第1小径ギヤ31と噛み合っている第2大径ギヤ39およびそれと一体に回転する出力ギヤ13がさらに減速されて時計方向(矢印P3方向)に回転する。すなわち減速機Gは2段減速を行う。
それにより出力ギヤ13と噛み合っている第1ラック14および第2ラック15が左側(矢印L1方向)に摺動する。そして第1ラック14のケーブル係止部26に連結されている右側のコントロールケーブル16の内索44がロック解除部のバネの付勢力に抗して左側に引かれる。そのとき、第2ラック15も左側に移動するが、それに連結されている左側のコントロールケーブル17の内索44は、ケーブルエンド45がケーブル係止部46の空所内を摺動するので、左側に押されることはない(図1参照)。したがって右側のコントロールケーブル16の他端に連結されているロック解除部51のみが操作される。
他方、モータMが反時計方向に回転すると、減速機Gのピニオン31、第1大径ギヤ37、第1小径ギヤ38、第2大径ギヤ39および出力ギヤ13が前述の場合と逆方向に回転し、第1ラック14および第2ラック15は右側(矢印L2方向)に移動する。それにより左側に移動したときとは逆に、第2コントロールケーブル17の内索44がトランクラッチのリターンバネの付勢力に抗して右側に引かれるが、第1コントロールケーブル16の内索44は操作されない。このようにして2個の操作対象、たとえば図5の自動車のフューエルハッチ50のロック解除部(図1の符号51)とトランクラッチ55とを独立して操作することができる。
図1のアクチュエータ10では、2本のラック14、15にそれぞれ第1コントロールケーブル16および第2コントロールケーブル17を連結しているが、一方のラックおよびコントロールケーブルを省略することもできる。たとえばトランクリッドオープナーを別個に備えている自動車では、フューエルハッチのロック解除のみに使用することがある。その場合は一方のラックとコントロールケーブルを取り外すだけでよい。また、一方のコントロールケーブルのみを取り外してラックはそのまま残しておいてもよい。その場合、他方のラックおよびコントロールケーブルは取り外す必要がないので、作業が容易である。
つぎに電気系統の故障などでモータMが回転しない場合を説明する。通常の自動車では、運転者あるいは同乗者が降りてフューエルハッチ50やトランクリッド56の鍵穴にキーを差し込んで開ける。しかし図1のアクチュエータ10を採用する場合は、運転者あるいは同乗者が自動車の内部で、アクチュエータ10のエマージェンシーレバー42を矢印S1方向に引くと、第1ラック14を矢印L1方向に移動させることができ、第1コントロールケーブル16を介してフューエルハッチ50のロック解除部51を手動で操作することができる。また、エマージェンシーレバーを矢印S2方向に操作すると、第1ラック14と噛み合っている出力ギヤ13が反時計方向に回転し、第2ラック15が矢印L2方向に移動するので、トランクラッチ55を手動で操作することができる。
前記実施形態では2本のラック14、15を並列的に配置しているが、図6に示すアクチュエータ60のように、出力ギヤ13を挟んで平行に配置することもできる。この場合はコントロールケーブル16、17は同じ方向に延びることになる。自動車にアクチュエータ10を取りつける位置によってはこのような配索が好ましい場合もある。ただし2本のラックを並列的に配列する方が省スペースであり、ハウジングをコンパクトに構成することができる。
また、図6のアクチュエータ60では、エマージェンシーレバー42は出力ギヤ13の軸41に固定されている。このエマージェンシーレバー42によって出力ギヤ13を回転させ、その出力ギヤ13と噛み合っているラック15、16を手動で操作することができる。ただし図1の場合と同様に、いずれかのラック15、16にエマージェンシーレバー42を取りつけてもよい。
前記図1のアクチュエータ10では、一方のラックに押し引き両方向の操作が可能なレバーを設けているが、両方のラックに引き操作のみが可能な手段、たとえばプルコントロールケーブルを連結して遠隔操作できるようにしてもよい。また、押し操作も可能な手段を一方あるいは両方のラックに連結することもできる。操作対象に連結される第1および第2コントロールケーブル16、17の一方、あるいは両方の途中にエマージェンシー手段を設けることもできる。一方あるいは両方の操作対象が、電気系統が故障したときでもロック解除キーなどにより容易に操作できる場合は、一方あるいは両方のエマージェンシー手段を省略することもできる。
前記実施形態ではいずれも2本のラック14、15を採用しているので、それぞれのコントロールケーブル16、17を個別に調整できる利点がある。しかし図7のアクチュエータ62のように、1本のラック63の両端にケーブル係止部46を設けることもできる。ケーブル係止部46は、たとえばケーブルエンド45を軸方向に移動自在に収容する空所47と、ケーブル係止部46の端部側の壁48に形成した内索44を通すスリット49とから構成しうる。空所47およびスリット49は、ケーブルエンド45を収容し、内索44を通すために下方に開放している。空所47は左右で連続している。
この場合は2本のラック14、15を一体に結合したものと考えることもできる。ラック63を1本にすることにより、部品点数を少なくすることができる。ただしエマージェンシーレバー42はラック63の端部に取りつけることができないので、たとえば側面に一体に形成する。その場合もエマージェンシーレバー42とハウジング11の間に隙間が開かないように、エマージェンシーレバー42にラック63と平行な部位64を設け、その部位をハウジング11の端部から突出させるようにするのが好ましい。シールする場合でも、その方がシールし易い。なお、図7の場合は、図1の場合とは逆に、フューエルハッチ側にエマージェンシーレバー42を突出させている。
前記実施形態では、出力ギヤ13にラック14、15を噛み合わせているが、出力ギヤ13に大径のギヤあるいはセクタギヤを噛み合わせ、その大径のギヤないしセクタギヤからなる出力部材に係合片を設けると共に、それぞれ内索の端部を係止して巻き付けた一対のプーリないしドラムを係合片と遊びをもって係合させるように構成してもよい。プーリないしドラムはハウジング11に回転自在に支持させると共に、その回転軸にエマージェンシーレバーを固定する。
本発明のアクチュエータの一実施形態を示す一部切り欠き平面図である。 そのアクチュエータの正面図である。 図1のアクチュエータの要部斜視図である。 図1のIV-IV線断面図である。 図1のアクチュエータを備えた車両の一実地形態を示す要部斜視図である。 本発明のアクチュエータの他の実施形態を示す一部切り欠き要部概略正面図である。 本発明のアクチュエータのさらに他の実施形態を示す要部概略斜視図である。
符号の説明
10 アクチュエータ
11 ハウジング
11a 開口
12 カバー
12a 止めねじ
M モータ
G 減速機
13 出力ギヤ
14 第1ラック
15 第2ラック
16 第1コントロールケーブル
17 第2コントロールケーブル
20 ガイド部
21 モータ収容部
22 減速機収容部
23 ガイド壁
24 リブ
25 導管
26 ケーシングキャップ
26a 環状溝
27 導管係止部
28 軸受け
30 出力軸
31 ピニオン
32 壁
33 係止爪
34 係止片
35 支持脚取付け部
36 ねじ
37 第1大径ギヤ
38 第1小径ギヤ
39 第2大径ギヤ
40 軸
41 軸
42 エマージェンシーレバー
43 自由端
44 内索
45 ケーブルエンド
46 ケーブル係止部
47 空所
48 壁
49 スリット
50 フューエルハッチ
51 ロック解除部
52 ケース
53 係止ピン
55 トランクラッチ
56 トランクリッド
60 アクチュエータ
62 アクチュエータ
63 ラック
64 平行な部位

Claims (10)

  1. 往復回転するモータと、
    そのモータによって回転駆動されるギヤと、
    前記モータとギヤとの間に介在される、ギヤ側からモータの回転操作が可能な減速機構と、
    前記ギヤと噛み合う歯列を備え、互いに異なる操作対象に連結される第1出力部材および第2出力部材とからなる2系統アクチュエータ。
  2. 前記第1出力部材および第2出力部材のうち、いずれか一方の出力部材を手動操作するためのエマージェンシー手段を備えている請求項1記載の2系統アクチュエータ。
  3. 前記第1および第2出力部材が前記ギヤと噛み合う2本のラックであり、それらのラックがハウジング内に互いに平行に移動自在に収容されている請求項1記載の2系統アクチュエータ。
  4. 前記ラックのうち、いずれか一方のラックの端部に、手動操作するためのエマージェンシーレバーが設けられ、そのエマージェンシレバーがハウジングから突出している請求項3記載の2系統アクチュエータ。
  5. いずれか一方のラックにプルコントロールケーブルが連結され、そのプルコントロールケーブルの他端ないし途中に、手動操作用のエマージェンシー手段が設けられている請求項3記載の2系統アクチュエータ。
  6. 前記エマージェンシー手段が前記ギヤの回転軸に固定されているレバーである請求項2記載の2系統アクチュエータ。
  7. 請求項1〜6記載のいずれかに記載の2系統アクチュエータと、
    その2系統アクチュエータの第1および第2出力部材にそれぞれ一端が遊びをもって連結されると共に、他端が操作対象に連結される第1および第2プルコントロールケーブル
    とを備えており、
    前記ギヤの一方向の回転が第1プルコントロールケーブルを引き操作し、他方向の回転が第2プルコントロールケーブルを引き操作するように連結されている2系統操作システム。
  8. 前記操作対象が車両のトランクラッチとフューエルハッチである請求項7記載の2系統操作システム。
  9. 往復回転するモータと、
    そのモータの正転および逆転によりトランクラッチとフューエルハッチを操作する出力部材と、
    モータと出力部材の間に介在される、出力部材側からの回転操作が可能な減速機と、
    前記出力部材を手動で操作するためのエマージェンシー手段
    とからなる2系統操作システム。
  10. 前記出力部材とトランクハッチの間、および出力部材とフューエルハッチの間のうち、少なくとも一方がコントロールケーブルによって連結されている請求項9記載の2系統操作システム。
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