JP2006299484A - 光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金 - Google Patents
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Abstract
【課題】 形成する交互積層体の層数に依存することなく、少なくとも2種のポリマーが均一な薄層として交互に形成された交互積層数が60層未満の交互積層体であっても設計通りに「うねり」を生じることなく形成させることができ、これによって、波長の揃った反射光による優れた光干渉効果を発現する光学干渉性複合高分子繊維を製造することができる溶融紡糸用口金を提供する。
【解決手段】 光の屈折率が異なる2種類の高分子重合体を交互に合流させると共に、合流した高分子重合体同士を交互に貼り合せて押し出し、貼り合わされた交互積層流の幅方向長さ(W)と厚さ方向長さ(T)との比(W/T)を変更するために、厚み方向へ逆テーパー状に徐々に拡流する矩形拡大流路と、該矩形拡大流路から出た交互積層流が幅方向に徐々に縮流する漏斗状の矩形縮小流路と、スリット状流路の吐出口とを備えた光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金。
【選択図】 図2
【解決手段】 光の屈折率が異なる2種類の高分子重合体を交互に合流させると共に、合流した高分子重合体同士を交互に貼り合せて押し出し、貼り合わされた交互積層流の幅方向長さ(W)と厚さ方向長さ(T)との比(W/T)を変更するために、厚み方向へ逆テーパー状に徐々に拡流する矩形拡大流路と、該矩形拡大流路から出た交互積層流が幅方向に徐々に縮流する漏斗状の矩形縮小流路と、スリット状流路の吐出口とを備えた光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金。
【選択図】 図2
Description
本発明は可視光線を反射、干渉して、その結果、高級感のある色彩を発現させ優れた意匠性を提供できる、2種類以上の高分子重合体によって形成された薄膜の交互積層体部を有する複合高分子繊維を製造可能な溶融紡糸口金に関する。
自然界には玉虫や南米に生息するモルフォ蝶等、深色性と光沢性を同時に満足した色彩を有しているものが存在する。この発色メカニズムをヒントに、光の反射、干渉を利用した光学機能を有する複合高分子繊維が種々検討されている。例えば、このような光学機能を有する複合高分子繊維の例として、繊維の長手方向に沿って2種類の高分子からなる薄膜を交互に積層させた交互積層体を形成させ、この交互積層体に可視光線を反射、干渉させて発色させようとするものがある。
このような異なる2種類の高分子重合体(以下、“ポリマー”とも称する)からなる薄膜を交互に積層させた交互積層体からなる複合繊維を安定して溶融紡糸しようとすると、各薄膜の厚みを狙い通りの寸法で形成するために、加工精度良く製作された複雑な構造を有する紡糸口金が要求されるのであるが、従来の紡糸口金はこのような要求に十分に応えられるものではない。
そこで、例えば特開2000−178825号公報には、2種のポリマーAとポリマーBとをそれぞれ供給する孔を半ピッチずらせた状態で上下に対向して設けて「C」の字状に形成した積層体形成溝中に交互合流させる口金が提案されている。この口金では、ポリマーAとポリマーBとを合流させて交互積層体を形成させる積層体形成溝の断面形状を「C」の字状に形成しており、形成させた交互積層流を「C」の字形状を維持させながら流動変形させることを特徴としている。つまり、この口金ではその一部が切り欠かれた円形流路を形成させて、この「C」の字流路内で交互積層流を流動変形させている。このため、交互積層流は円周方向へは大きく流動変形させても、半径方向には大きな流動変形を行わせる必要が全くない。したがって、安定な交互積層流を維持した状態で円周方向に沿って、交互積層流を流動変形させることができる。
しかしながら、このような口金は、「C」の字という複雑なポリマー流路形状を形成しなければならない上に、このような「C」の字流路に上下から対向させて2種のポリマーを交互に合流させなければならず、その故に、ポリマー流路の加工が複雑である上に、加工精度も要求されるために、口金の製作コストが高くつくという問題がある。また、「C」の字状に変形した断面形状を有する光学干渉性繊維が生じたりする。
また、この他の従来口金としては、特開平11−1817号公報や特開平11−1818号公報において、2種類以上のポリマーの薄膜を厚さ方向に交互に積層させることが可能な口金が提案されている。なお、これらの口金は、2種以上のポリマー流を「C」の字形状の流路ではなく、直線状流路上で交互に合流させて交互積層流が形成されている。これらの従来口金では、60層未満の交互積層体を有する高分子繊維を紡糸しようとすると、次に述べるような問題がある。
すなわち、これらの従来の口金では、60層以上の多層交互積層体を形成する場合は、積層数が多いために交互積層流の厚みが大きくなって、層面に垂直な方向へ交互積層流が変形しようとしてもこれに対する抵抗を示すため、各層の界面(層面)は互いに平行な面を維持しようとする。これに対して、60層未満(特に、20層未満)の交互積層体を形成しようとすると、図4に示すように、ポリマーAとポリマーBからなる交互積層体全体に「うねり」を生じる場合がある。そうすると、平行な界面(層面)を形成することができず、光の反射、干渉を利用した光干渉効果を発現させることができなかった。
本発明は以上に述べた従来技術が有する問題を解消することを目的になされたものである。すなわち、本発明が解決しようとする課題は、形成する交互積層体の層数に依存することなく、少なくとも2種のポリマーが均一な薄層として交互に形成された交互積層数が60層未満の交互積層体であっても設計通りに「うねり」を生じることなく形成させることができ、これによって、波長の揃った反射光による優れた光干渉効果を発現する光学干渉性複合高分子繊維を製造することができる溶融紡糸用口金を提供することである。また、その加工を容易かつ精度よくでき、しかも、その製作コストを低減できる溶融紡糸用口金を提供することにある。
ここに、前記課題を解決するための発明として、
(1) 光の屈折率が異なる2種類の高分子重合体が互いに交じり合わないように独立した状態でそれぞれ個別に導入する第1導入流路及び第2導入流路と、
該高分子重合体流が相互に交わることなく前記第1導入流路と第2導入流路からそれぞれ複数に分岐されて形成された第1分岐流路群と第2流路群と、
該第1分岐流路群と第2分岐流路群を独立して流れる高分子重合体を互いに対向した状態で上下方向から入れ違いに交互に合流させると共に合流した高分子重合体同士を交互に貼り合せて押し出す直線状合流流路と、
該直線状合流流路で交互に貼り合わされた交互積層流の幅方向長さ(W)と厚さ方向長さ(T)との比(W/T)を変更するために、前記交互積層流が厚み方向へ逆テーパー状に徐々に拡流する矩形拡大流路と、
該矩形拡大流路から出た交互積層流が幅方向に徐々に縮流する漏斗状の矩形縮小流路と、
記矩形縮小流路の下流部に前記交互積層流を吐出するための吐出孔として穿設されたスリット状流路と、
を含む光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金、
(2) 前記矩形縮小流路の流路壁がJIS B0601-1994に規定される中心線平均粗さ(Ra)で表わした表面粗さで、0.8μm以下に仕上げられたことを特徴とする(1)に記載の光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金、
(3) (2)に記載の表面粗さが0.8μm以下であることを特徴とする光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金、
(4) 前記漏斗状の矩形縮小流路の下流側先端部に流路断面積が一定の直線状矩形流路を形成し、該直線状矩形流路の上流側流路との流れ方向に沿った接続部を滑らかな曲線で連結したことを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金が提供される。
(1) 光の屈折率が異なる2種類の高分子重合体が互いに交じり合わないように独立した状態でそれぞれ個別に導入する第1導入流路及び第2導入流路と、
該高分子重合体流が相互に交わることなく前記第1導入流路と第2導入流路からそれぞれ複数に分岐されて形成された第1分岐流路群と第2流路群と、
該第1分岐流路群と第2分岐流路群を独立して流れる高分子重合体を互いに対向した状態で上下方向から入れ違いに交互に合流させると共に合流した高分子重合体同士を交互に貼り合せて押し出す直線状合流流路と、
該直線状合流流路で交互に貼り合わされた交互積層流の幅方向長さ(W)と厚さ方向長さ(T)との比(W/T)を変更するために、前記交互積層流が厚み方向へ逆テーパー状に徐々に拡流する矩形拡大流路と、
該矩形拡大流路から出た交互積層流が幅方向に徐々に縮流する漏斗状の矩形縮小流路と、
記矩形縮小流路の下流部に前記交互積層流を吐出するための吐出孔として穿設されたスリット状流路と、
を含む光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金、
(2) 前記矩形縮小流路の流路壁がJIS B0601-1994に規定される中心線平均粗さ(Ra)で表わした表面粗さで、0.8μm以下に仕上げられたことを特徴とする(1)に記載の光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金、
(3) (2)に記載の表面粗さが0.8μm以下であることを特徴とする光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金、
(4) 前記漏斗状の矩形縮小流路の下流側先端部に流路断面積が一定の直線状矩形流路を形成し、該直線状矩形流路の上流側流路との流れ方向に沿った接続部を滑らかな曲線で連結したことを特徴とする(1)〜(3)の何れかに記載の光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金が提供される。
以上に述べた本発明の請求項1に係わる光学干渉性複合高分子繊維の紡糸口金によると、2種類のポリマーからなる交互積層体を形成させるための口金に関して、第1のポリマーを供給する第1分岐流路群と第2のポリマーを供給する第2分岐流路群から互いに交じり合うことなく、独立して互いに対向した状態で上下方向から入れ違いに交互に直線状合流流路へ合流させることができる。
したがって、本発明では、従来技術のように「C」の字状合流流路を採用せず、直線状合流流路を採用しているために、前記第1分岐流路群と第2分岐流路群とを直線状合流流路に対して直角に問うピッチで穿孔することができる。このため、第1分岐流路群と第2分岐流路群の加工精度が向上すると共に、口金板を組み込むときの位置決め精度も向上する。しかも、前記第1分岐流路群と第2分岐流路群を設けるための孔開け加工が容易となって口金の加工コストを低減できる。
更に、本発明の紡糸口金を精度良く加工したり、組み込んだりできることから、各層が均一な厚みを有する薄膜を厚さ方向に平行かつ交互に積層した良好な状態で形成された交互積層体を得ることができる。
また、本発明の請求項2〜4に係わる光学干渉性複合高分子繊維の紡糸口金によると、光学干渉性複合高分子繊維中に形成する交互積層体の交互積層数に依存せず、交互積層数が60未満であっても、前記直線状合流流路で交互に2種のポリマーが交互に積層されて形成された交互積層流の形状調整を良好に行うことができ、光学干渉性に優れた複合高分子繊維を安定して紡出できる。
以下、本発明の光学干渉性複合高分子繊維を紡出するための紡糸口金について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明の溶融紡糸口金によって紡糸される光学干渉性複合高分子繊維の説明図である。この図1において、図1(a)は、前記光学干渉性を有する複合高分子繊維を模式的に例示した横方向断面(繊維軸に直角方向の断面)、図1(b)は交互積層体L部のみを複合高分子繊維から取り出した図である。
この図1に例示したように、本発明の紡糸口金によって得られる光学干渉性繊維Fは、互いに屈折率の異なる2種のポリマー層(Aポリマー層、Bポリマー層)が交互に積層された交互積層体Lを含んだ状態で形成されている。なお、前記交互積層体Lの周りには、Cポリマーからなる保護ポリマー層AとBとが交互に積層した交互積層体Lを囲繞するように、その厚みが0.2〜10μmの保護層Cが通常設けられるが、この保護層Cは必須というわけではない。しかしながら、交互積層体Lのポリマー貼り合せ面での剥離などを防止する目的からは、保護層Cを設けることが好ましい。
以上に述べた交互積層体Lにおいて本発明では、交互積層流の幅方向長さ(W)と厚さ方向長さ(T)を図1(b)に図示したように定義するものとする。すなわち、交互積層流の幅方向長さ(W)とは、図1(b)に示した交互積層体Lの断面図における層面に沿った方向での長さ(W)を指し、交互積層流の厚さ方向長さ(T)とは層面に垂直な方向の長さを指す。その際、異なるポリマー層AとBからなる交互積層体L部における各層の厚みは、通常0.02〜0.3μmの範囲であり、互いに独立したポリマーの層AとBとの交互積層数は、5〜120層の範囲である。なお、当然のことながら、通常、これら各層の厚みは光学干渉性繊維の色合いを規定するため、所望の色合いを得ることができる厚みに設定されることは言うまでもない。
ここで、前記光学干渉性繊維Fの交互積層体Lを構成する各ポリマーは、各々の溶解度パラメーターが0.8〜1.2の範囲にあるもので、光の屈折率が互に異なる2種のポリマーAとBとからなっている。このとき、高屈折率側のポリマーをA成分、低屈折率側のポリマーをB成分とすれば、A成分としてスルホン酸金属塩基を有する二塩基酸成分が全二塩基酸成分当たり0.3〜10モル%共重合しているポリエチレンテレフタレートと、B成分として酸価が3以上を有するポリメチルメタクリレート;A成分としてスルホン酸金属塩を有する二塩基酸成分をポリエステルを形成している全二塩基酸成分あたり0.3〜5モル%共重合しているポリエチレンナフタレートと、B成分として脂肪族ポリアミド;A成分として側鎖にアルキル基を少なくとも1個有する二塩基酸成分および/またはグリコール成分を共重合成分とし、該共重合成分を全繰り返し単位当たり5〜30モル%共重合している共重合芳香族ポリエステルと、B成分としてポリメチルメタクリレート;A成分として4,4’−ヒドロキシジフェニル−2,2−プロパンを二価フェノール成分とするポリカーボネートと、B成分としてポリメチルメタクリレート;A成分としてポリエチレンテレフタレートと、B成分として脂肪族ポリアミド;などの組み合わせが例示される。
なお、このような成分構成を持つ交互積層体Lを含む光学干渉性繊維Fが、可視光線を反射干渉して、その結果、着色や染料で得られないような透明度が高く、反射率の高い色彩を発現させ優れた意匠性を提供するためには、前記光学干渉性繊維Fの交互積層体構造は、下記に規定する所定の要件を具備することが必要である。すなわち、交互積層体Lの高屈折率ポリマー層Aの光学屈折率na、厚さdaとし、低屈折率ポリマー層10Bの光学屈折率nb、厚さdbとした際に、na及びdaと、nb及びdbとが下記の関係を満足することである。また、赤外線及び紫外線等の非可視光線を反射干渉させるにも同様に以下の関係を満たすことが必要である。
すなわち、λ1=2(nada+nbdb)で定義される可視光線反射干渉層用のλ1が、1.0≦na<1.8、1.3≦nb≦1.8、そして、1.01≦nb/na≦1.8という条件下で、それぞれ0.38μm≦λ1<0.78μm(可視光線反射干渉層用)、0.2μm≦λ1<0.38μm(紫外線反射干渉層用)、0.78μm≦λ1≦2μm(赤外線反射干渉層用)であることが必要である。
ここで、前記λ1とは反射スペクトルにおけるピーク波長(μm)を意味し、この場合一次のピーク波長を示す。また、この式中のnada、nbdbは、それぞれ高屈折率を構成するポリマー層Aの「光学屈折率と厚みの積」及び低屈折率層を構成するポリマー層Bの「光学屈折率と厚みの積」を示している。この「光学屈折率と厚みの積」が一般に「光学厚み」と称されるものである。それ故、高屈折率ポリマー及び低屈折率ポリマーのそれぞれの光学厚みの和の2倍が、所望のピーク波長λ1を与えることになる。このようなことを念頭において光学干渉性繊維Fが具備すべき交互席層体Lを設計して、これを製造することができるならば、深みと光沢のある色彩を具現することができ、卓越した色彩感を提供することができる。
以上に説明したように、反射や干渉等の良好な光干渉効果を発現するためには繊維内部に形成する交互積層体Lは光学的精度で形成させることが必要である。しかし、この交互積層体において各層を光学的精度でその厚み制御を行なうことは難しい。特に、その積層数が少なくなると交互積層体流の厚み方向での剛性が低下し、流路壁面の表面粗さや流路形状の影響を強く受けるため十分な光干渉効果を発現する繊維を得ることは容易ではない。ところが、本発明の口金を使用することによって、従来技術のように積層数の影響を取り除き、良好な積層体を形成することを可能としたものである。
以下、以上に述べた良好な交互積層体Lを内包する複合高分子繊維Fを形成するための溶融紡糸口金の実施態様例について、図2を参照しながら詳細に説明する。ただし、図2において、図2(a)は本発明の溶融紡糸口金の実施形態例を模式的に例示した要部の正断面図であって、図2(b)は図2(a)におけるX−X’方向矢視断面図である。なお、図3は前記複合高分子繊維Fをマルチフィラメントとして紡出するための多繊維用紡糸口金の実施形態例を示した正断面図である。
なお、この図2において、Aポリマー、Bポリマー及びCポリマーが流れる流路にはそれぞれ下付き添字A、B及びCを付して示した。また、交互積層体流が形成された流路には、下付き添字Lを付し、この交互積層流に保護層を形成するCポリマーが加わった流路には下付き添字Mを付して、その流路にはどのような構成のポリマーが流れているのかを明示している。
ここで、前記図2及び図3において、本発明の紡糸口金は、参照符号1〜5で示した複数枚(本例では、5枚の場合を例示している)の口金板より構成されている。その際、交互積層体Lを構成するAポリマーとBポリマーは、第1口金板1の上部に穿設された第1導入流路11Aと第2導入流路11Bから互いに交じり合わないように独立した状態でそれぞれ個別に導入される。
そして、図2及び図3の実施形態例のように、一方のAポリマーは第1口金板1と第2口金板2の間に形成された第1放射状溝21Aへ供給され、他方のBポリマーは第3口金板3と第4口金板4の間の第2放射状溝31Bへ供給される。次いで、これらの第1放射状溝21Aと第2放射状溝31Bから、Aポリマー流とBポリマー流とを相互に交わることなく、それぞれ第1分配流路22Aと第2分配流路32Bを介して、下方向及び上方向からそれぞれ第1分岐流路群23Aと第2分岐流路群33Bへ供給される。
ここで、本発明の第1分岐流路群23A及び第2流路群33Bに関して、先ず第1分岐流路群23Aについては、第1分配流路22Aの底部から下方へ等ピッチで穿設されて直線状合流流路31Lの上端部に開口し、次に第2分岐流路群33Bについては、第2分岐流路群33Bの天部から上方に等ピッチで穿設されて直線状合流流路31Lの上端部に開口する。このように、本発明の第1分岐流路群23A及び第2分岐流路群33Bは、直線状に形成された合流流路31Lに互い違いに上下から対向して交互に開口するような構造を採っている。したがって、加工が容易かつ簡易にでき、その上、加工時の位置決め精度を向上できるために、加工精度や組込み精度を上げることが可能である。このため、口金の加工コストを大幅に低減できるという大きな特徴を有している。
以上に述べたようにして、直線状に形成された合流流路31Lに交互にAポリマー流とBポリマー流とが上下方向から交互に対向して合流して貼り合せられることによって、交互積層流の源流が形成されると、この交互積層源流は、図2(a)に示したように、合流位置から水平方向へ合流流路31Lを流れて、矩形導入流路32Lに達する。そして、この矩形導入流路32Lの上部から矩形導入流路32Lを流下して矩形拡大流路33Lに達する。
このとき、前記矩形拡大流路33Lは、下流側へ向かってその流路幅が交互積層流の厚み方向へ逆テーパー状に拡げられている。したがって、この流路32Lを流れてきた交互積層流は、その厚みが増大するように逆テーパー状に徐々に拡流されるので、矩形導入流路32Lを出た交互積層流は、ここで先ず厚さ方向長さが調整される。なお、交互積層流の厚さ方向長さ(T)と幅方向長さ(W)は、図1(b)に示した交互積層体L定義と同様である。このようにして、交互積層流の厚み方向長さ(T)が先ず変更されると、次に幅方向長さ(W)が変更される。
この交互積層流の幅方向長さ(W)の調整は、該矩形拡大流路32Lから出た交互積層流を漏斗状の矩形縮小流路41Lに流すことによって達成される。すなわち、漏斗状の矩形縮小流路41Lは、図2(a)と図2(b)とに例示したように、下流側へ行くに従って、交互積層流の幅方向を縮流させるように、矩形を有する漏斗状にその流路幅が徐々に縮小されている。この矩形縮小流路41Lで行われる幅方向への交互積層流の形状調整は、矩形拡大流路33Lにおいて行われる厚み方向への形状調整と比較すると、大幅に調整される。したがって、ここで行われる交互積層流の幅方向への形状調整は、図4に例示したような「うねり」を生じずに、良好な交互積層流を安定して形成する上で重要な意味を持つ。
しかしながら、この交互積層流の幅方向への形状調整を行わせる矩形縮小流路は放電加工により成形されるため、加工後における矩形縮小流路壁の表面粗さは15μm程度であって、この表面粗さを6μm程度に仕上げて使用される。なお、本発明で言う「表面粗さ」とは、JIS B0601-1994に規定される中心線平均粗さ(Ra)で表わした値である。
このとき、矩形縮小流路壁の表面粗さが6μm以上であっても、「背景技術」欄で説明したように60層以上の交互積層流であれば、この交互積層流は適当な剛性を有するため、良好な光干渉性を有する交互積層体Lを形成するように交互積層流の幅方向の寸法調整を比較的容易に行うことが可能である。
しかしながら、交互積層数が60層未満ではその交互積層数が少なくなるほど、交互積層流の剛性が小さくなって、図4に例示したような「うねり」を生じてしまう。もし、このような状態となってしまっては、光は散乱されてしまうために、所望の発色を発現させることができない。したがって、交互積層数が少なくなる場合には、矩形縮小流路41Lが極めて重要な役割を果たし、特に、その流路壁の表面粗さが極めて重大な影響を果たすことが分かった。
そこで、本発明の紡糸口金は矩形縮小流路41Lの表面粗さを6μm未満、特に好ましくは、0.8μm以下とすることによって、形成する交互積層体Lの層数に依存せず、その交互積層数が60層未満であっても、良好な交互積層体Lを形成することが可能であり、これによって、波長の揃った単色発色性に優れた光学干渉性複合高分子繊維を得ることを可能としたものである。なお、矩形拡大流路32Lなどの交互積層流が流れる流路についても、矩形縮小流路41Lよりもその影響が小さいとはいえ、その流路壁の表面粗さを6μm未満、特に好ましくは、0.8μm以下とすることが好ましいことは言うまでもない。
なお、本発明においては、前記矩形縮小流路41Lの下流側先端部に、金太郎飴のように流路断面積が一定の直線状矩形流路42Lを形成することが、矩形縮小流路41Lで最終的に形成される交互積層流の形状を安定に維持する上で好ましい。しかしながら、この直線状矩形流路42Lとその上流側の縮小流路との間の接続部を滑らかな曲線とすることが、形状調整された交互積層流の流動がより円滑に行われ、これによって、交互積層体Lがより安定的に形成されることとなるため好ましい。
以上に述べたように、交互積層流の幅方向長さ(W)と厚さ方向長さ(T)との比(W/T)が適切に調整変更されると、必要に応じて、図3に例示するような第3導入流路11CからCポリマーが環状流路52Cへ導入され、この環状流路52Cに流入したCポリマーにより交互積層流を囲繞して包み込んだ状態の保護ポリマー流層が形成される。次いで、保護ポリマー層を有する交互積層流は、導入孔を形成する導入流路51Mに流入し、Cポリマーが貼り合わされた交互積層流を形成する。そして、最終的に前記導入流路51Mに引き続いてスリット状流路52Mが形成された吐出孔から紡出される。そして、最終的に、図1に例示したようなCポリマーによる保護層が形成された交互積層体Lが形成された光学干渉性複合高分子繊維Fとして紡出される。
以上、詳細に説明したように、本発明の図2に例示した紡糸口金を使用すれば、Aポリマー及びBポリマーから構成される各層の厚みが自動的に薄膜化され、最終的に繊維として紡出されたときに、機械加工では得られない薄い状態で各層が交互に積層された交互積層体Lをその内部に含んでいるため、光学干渉機能に優れた繊維が得られる。
以上に述べた図2に例示した紡糸口金は、一本の単繊維(モノフィラメント)からなる光学干渉性複合高分子繊維を紡糸する実施形態例であるが、当然のことながら、マルチフィラメントを紡糸するための口金としても容易に適用可能であることは言うまでもなく、その一例として、図3(正断面図)に、マルチフィラメント用紡糸口金の実施形態例を示す。
この図3の正断面図において、右側断面図では、AポリマーとBポリマーとがそれぞれ上下方向から入れ違いに交互に合流して交互積層流を形成する部分を例示し、左側断面図では、交互積層流が形成された後にCポリマーが形成されて紡出されるまでの部分を例示している。なお、二点鎖線で囲んだ部分がこれまで説明したモノフィラメントの紡糸ユニット部であり、このようなユニット部が図示した直径(PCD)を有するピッチ円上に等配されて複数個(例えば、20個)設けられ、これによって、複数本のマルチフィラメントを紡糸することを可能としている。このとき、Aポリマーは太い実線、Bポリマーは太い点線、そして、Cポリマーは太い一点鎖線でそれぞれ図示した分配経路を経てそれぞれのユニットへポリマーが分配され、これによって、マルチフィラメントからなる光学干渉性複合高分子繊維が口金から紡出されることになる。
本発明の紡糸口金によれば、深色性と光沢性を同時に満たすことができる強力な光干渉効果を発現する光学干渉性複合高分子繊維を容易に紡糸することができる。このため、本発明が提供する紡糸口金を用いることによって、衣料をはじめ、インテリア、装飾品、塗料等、広い分野において工業的に利用することが可能である。さらに、このような紡糸口金を使用して得られる繊維は、着色する必要がないため染色時における環境への負荷および費用を取り除くことができる。
1 : 第1口金板
2 : 第1口金板
3 : 第2口金板
4 : 第3口金板
5 : 第4口金板
11A:第1導入流路
11B:第2導入流路
21A: 第1放射状溝
22A: 第1分配流路
23A: 第1分岐流路群
31B: 第2放射状溝
31L: 直線状合流流路
32B: 第2分配流路
32L: 矩形導入流路
33B: 第2分岐流路群
33L: 矩形拡大流路
41L: 矩形縮小流路
42L: 直線状矩形流路
51C: 第3放射状溝
52C: 環状流路
51M: 導入流路
52M: スリット状流路
2 : 第1口金板
3 : 第2口金板
4 : 第3口金板
5 : 第4口金板
11A:第1導入流路
11B:第2導入流路
21A: 第1放射状溝
22A: 第1分配流路
23A: 第1分岐流路群
31B: 第2放射状溝
31L: 直線状合流流路
32B: 第2分配流路
32L: 矩形導入流路
33B: 第2分岐流路群
33L: 矩形拡大流路
41L: 矩形縮小流路
42L: 直線状矩形流路
51C: 第3放射状溝
52C: 環状流路
51M: 導入流路
52M: スリット状流路
Claims (4)
- 光の屈折率が異なる2種類の高分子重合体が互いに交じり合わないように独立した状態でそれぞれ個別に導入する第1導入流路及び第2導入流路と、
該高分子重合体流が相互に交わることなく前記第1導入流路と第2導入流路からそれぞれ複数に分岐されて形成された第1分岐流路群と第2分岐流路群と、
該第1分岐流路群と第2分岐流路群を独立して流れる高分子重合体を互いに対向した状態で上下方向から入れ違いに交互に合流させると共に合流した高分子重合体同士を交互に貼り合せて押し出す直線状合流流路と、
該直線状合流流路で交互に貼り合わされた交互積層流の幅方向長さ(W)と厚さ方向長さ(T)との比(W/T)を変更するために、前記交互積層流が厚み方向へ逆テーパー状に徐々に拡流する矩形拡大流路と、
該矩形拡大流路から出た交互積層流が幅方向に徐々に縮流する漏斗状の矩形縮小流路と、
記矩形縮小流路の下流部に前記交互積層流を吐出するための吐出孔として穿設されたスリット状流路と、
を含む光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金。 - 前記矩形縮小流路の流路壁がJIS B0601-1994に規定される中心線平均粗さ(Ra)で表わした表面粗さで、6μm未満に仕上げられたことを特徴とする請求項1に記載の光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金。
- 請求項2に記載の表面粗さが0.8μm以下であることを特徴とする光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金。
- 前記矩形縮小流路の下流側先端部に流路断面積が一定の直線状矩形流路を形成し、該直線状矩形流路の上流側流路との流れ方向に沿った接続部を滑らかな曲線で連結したことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金。
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JP2005126191A JP2006299484A (ja) | 2005-04-25 | 2005-04-25 | 光学干渉性複合高分子繊維の溶融紡糸口金 |
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2010203005A (ja) * | 2009-03-04 | 2010-09-16 | Teijin Fibers Ltd | 光干渉繊維の溶融紡糸口金 |
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-
2005
- 2005-04-25 JP JP2005126191A patent/JP2006299484A/ja active Pending
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