上記の従来技術の問題点を鑑み、本発明は、複数の樹脂を用いる樹脂や所望する層の分布によらず高精度に樹脂を配置させ、かつ樹脂層のサイズや間隔を微細化することが可能であり、多様な形状の層を多様なパターンで複合させることができるフィルム成型用ダイを提供することを課題とする。
また、特許文献2、3に開示される複合化方法を複合フィルムに応用しようとすると、本発明者らの知見によれば以下のような問題があった。
複合繊維と比較して複合フィルムは断面積が非常に大きく、単位時間当たりに供給する必要のある樹脂の量が増大する。そのため、分配孔群の各孔を流動する樹脂の流量も増加して分配孔にかかる圧力損失が大きくなり、装置の耐久性が低くなるという問題があった。特に、分配孔の孔径や孔間隔を微細化することにより、孔の形状を圧力損失のさらなる増大や分配板の変形・破損が生じてしまう。
また、複合紡糸用口金では、一本の複合繊維を製造するための口金の形状は略円形となるのに対して、複合フィルムの製膜ではダイの形状はフィルム幅方向に極端に扁平な形状となる。そのため、各分割口金板やその他口金の構成要素の位置ズレが生じやすくなり、複合精度が低下して所望する複合フィルムを得ることが出来ないという問題もあった。特に、実際に複合フィルムを製膜するにあたり装置を加熱する必要があるが、加熱の際の装置の熱膨張による変形が幅方向に扁平であるフィルム成型用ダイでは顕著であり、構成要素間の位置ズレが悪化しやすい。
そこで、本発明は、複数の樹脂を、流量の増加や孔の形状を微細化においても分配孔群の変形・破損がなく、耐久性に優れており、高精度に複合させるができるフィルム成型用ダイを提供することも課題とする。
上記目的を達成するため、本発明は、以下の構成を特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、複数種類の樹脂が前記複数種類の数よりも多い数の複数の層に配列された複合フィルムを成型するフィルム成型用ダイであって、前記複数種類の樹脂を導入する複数の導入口と、前記複数の導入口の後段に設けられた分配板であって該分配板の面方向に設けられた複数の流動溝と前記分配板の流動方向に設けられた複数の孔とにより前記導入口から導入された前記複数の樹脂をそれぞれ独立して分配させる分配板と、前記分配板の各孔と接続し前記孔から流出される樹脂を合流させ複合流を形成させる合流部と、前記合流部にて形成された複合流を外部へ吐出するための略矩形状の開口部である吐出部とを有するフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記分配板が複数枚積層されたものであるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、少なくとも1枚以上の前記分配板において、前記分配板中の前記孔の個数が30個以上であるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記分配板のいずれかと前記合流部との間に支持部材を有するフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記支持部材が前記分配板と前記合流部の間に設けられ、かつ前記支持部材が前記分配板と接する面を備えてなるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記複数枚の分配板同士および/または前記分配板と前記合流部との配置を固定するための位置決め機構を備えたフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記分配板と前記合流部との配置を固定するための位置決め機構がピンと間隙からなるものであり、かつ前記間隙の少なくとも一つは前記ピンの周形状と略同一形状であり、かつ前記間隙の少なくとも一つは前記ピンに対して少なくとも一方方向に可動することができるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記ダイ外部から複数の前記分配板または前記分配板と前記合流部とを加圧固定可能な締め機構を備えるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記導入口から前記合流部との間に、少なくとも1つのマニホールドが形成されてなるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記合流部の幅方向−厚み方向の断面形状が略矩形状であるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記孔のうち、少なくとも一方の厚み方向の末端に配置される孔と厚み方向中央に配置される孔とが、異なる前記導入口と連続する流路ならびに前記流動溝と接続されるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記合流部に隣接する前記分配板に設けられた前記孔が略矩形状の領域に分布してなり、かつ前記孔が幅方向に等間隔に配置してあるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記合流部と前記吐出部との間で、流路形状を縮小するための縮流部をさらに備えてなるフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の好ましい形態によれば、前記縮流部において、流路の断面形状が相似形状を保ち変化するフィルム成型用ダイが提供される。
また、本発明の別の形態によれば、複数の樹脂を前記いずれかのフィルム成型用ダイの前記導入口へと供給し、各々の樹脂を前記分配板中において分配して複数の前記孔へと導き、前記各孔から流出した樹脂を合流させて複合流を形成し、前記複合流を吐出部からシート状に吐出してシート化することを特徴とする複合フィルムの製造方法が提供される。
また、本発明の別の形態によれば、前記方法で製造されることを特徴とする複合フィルムが提供される。
本発明のフィルム成型用ダイを用いることにより、複数の樹脂を用いる樹脂や所望する層の分布によらず高精度に樹脂を配置させ、かつ樹脂層のサイズや間隔を微細化することが可能であり、多様な形状の層を多様なパターンで複合させることが可能となる。
また、本発明のフィルム成型用ダイによれば、流量の増加や孔の微細化によるダイの変形・破損を抑制することができ、耐久性に優れたものとなる。
また、本発明のフィルム成型用ダイによれば、組立精度に優れ、かつダイの温度上昇による位置ズレを抑制することが可能となり、高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となる。
以下に本発明の実施の形態について図面に基づいて詳細に述べるが、本発明は以下の実施例を含む実施の形態に限定されるものではなく、発明の目的を達成できて、かつ、発明の要旨を逸脱しない範囲内においての種々の変更は当然あり得る。なお、本発明においては、便宜上フィルム成型用ダイの吐出部の長辺方向を幅方向、短辺方向を厚み方向、幅方向と厚み方向に垂直な方向を流動方向とする。また、本明細書中においては、2種類の樹脂を複合させるためのフィルム成型用ダイを一例として記述し、各々の樹脂を樹脂A、樹脂Bとして記載する。
本発明の目的とする複合フィルムの一例について図1〜3に示す。図1は、本発明のフィルム成型用ダイを用いて製造された複合フィルムの一例の概略図である。図2は、本発明のフィルム成型用ダイを用いて製造された複合フィルムの一例における幅方向−厚み方向の断面図である。図3は図2とは異なるフィルム成型用ダイを用いて製造された複合フィルムの一例における幅方向−厚み方向の断面図である。本発明の目的とする複合フィルムとは、少なくとも2つ以上の樹脂が複合されたものである。図1〜3に示す複合フィルムの一例においては、樹脂Aからなる層(22)の周囲を樹脂Bからなる層(23)が取り囲んだ構造となっている。しかし、複合フィルムの形態は特に制約されるものではなく、樹脂Aからなる層が交互に幅方向に配列した形態であってもよく、3種類以上の樹脂からなる層で構成される形態であってもよい。また、図2に示すように厚み方向に一列に配列した形態であっても、図3のように厚み方向に複数列配列した形態であってもよい。このように、多種多様な形態の複合フィルムを得ることができることも、本発明のフィルム成型用ダイの特徴の一つである。
また、本発明のフィルム成型用ダイを用いた複合フィルムの製造において用いられる樹脂には特に制限はなく、各種溶融樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂や樹脂を溶解した溶液などが使用可能である。これらの中でも、特に、本発明のフィルム成型用ダイを用いた複合フィルムの製造においては、溶融樹脂を用いることが好ましい。溶融樹脂は、溶媒を必要とせずその他の樹脂と比較して比較的低コストで製造・調達することができ、かつ、加熱・冷却の一連の工程のみでフィルム化できることから光硬化性樹脂で必要な光照射装置や溶液を用いることによる脱溶媒工程などが不要であるなど、低コストで大量の複合フィルムを得ることが可能となる。
本発明の目的とするフィルムの製造装置として、特に溶融樹脂を用いた場合の製造装置の一例を図4に示す。図4は、本発明のフィルム成型用ダイを用いた複合フィルムの製造装置の概略図である。複合フィルムの製造装置は、樹脂を溶融状態として送り出すための押出機(図示しない)と、押出機で溶融状態となった樹脂をフィルム成型用ダイ(1)へと供給するための導入管(19)と、供給された樹脂を高精度に複合させ複合流とせしめるフィルム成型用ダイと、フィルム成型用ダイから流出した複合流を冷却固化させフィルム状とするためのキャストドラム(20)からなる。このような製造装置を用いることにより、本発明の目的とする複合フィルム(未延伸フィルム、21)を得ることができる。もちろん、製造装置の形態についても図4に示す形態に限られるものでなく、たとえば、高精度化のために押出機とフィルム成型用ダイとの間にギアポンプを組み入れることも好ましく、さらなるフィルム物性向上のために未延伸フィルムを延伸・コーティングなどの加工装置を組み入れることも好ましい。溶融樹脂以外の樹脂を用いて複合フィルムを得る場合においても、導入管(19)やフィルム成型用ダイを用いる点では溶融樹脂の場合と相異は無く、樹脂の特性に合わせて、各種ポンプ、加熱用オーブン、光照射装置などが用いられる。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)の構成を図5〜11を用いて以下に記載する。図5はフィルム成型用ダイ(1)の導入口C(2)を含む幅方向−流動方向の断面図であり、図4の断面Xにおける断面図である。図6は、フィルム成型用ダイ(1)の導入口D(3)を含む幅方向−流動方向の断面図であり、図4の断面Yにおける断面図である。図7はマニホールド(13)を含む構成要素の分配板側からみたときの概略図である。図8は、分配板(5)の導入口側からみたときの概略図である。図9は、分配板(6)の導入口側からみたときの概略図である。図10は、分配板(7)の導入口側からみたときの概略図である。図11は、分配板(7)の合流部側からみたときの概略図である。なお、連続する流路においては、各構成要素の境界を点線で図示してあり、樹脂の流れを明確化するために、樹脂Aの流動する流路をドット模様で、樹脂Bの流動する流路を菱形模様で表示している。
本発明のフィルム成型用ダイは、樹脂をダイ内へと導入するための導入口、樹脂を所望する複合フィルムの形態にあわせて分流・分配するための分配板、分配板から供給された樹脂を複合せしめる合流部、複合流をダイ外へと吐出する吐出部が、上記記載の順番で配置されて構成される。詳しくは、上記の部位を含む各構成要素を組み合わせたフィルム成型用ダイ(1)の一例の概略を図4に示している。ダイ(1)は、合流部と吐出部となる流路を含んでなりかつ合流部の上部にあたる位置に空洞をもつ構成要素(24)と、前述の空洞部(合流部に上部)に配置された分配板(25)と、前述の空洞部(分配板上部)に配置された導入口を含んでなる構成要素(26)とが固定配置された構成であり、さらにダイの幅方向の両端にはシールするための側板(27)をも備えてなる。また、合流部と吐出部とを含む構成要素と分配板、ならびに分配板と吐出部を含む構成要素との間は、鏡面加工やパッキンを用いて、圧着固定時にシールできる構成となっている。以下に、各々の構成をさらに詳しく説明する。
本発明のフィルム成型用ダイには、数種類の樹脂を導入する複数の導入口が備えられている。本明細書中のダイの一例である2種類の樹脂A、Bを複合させる例においては、図5、6に示すようにダイの表面に樹脂Aをダイ内へと導入する導入口C(2)と樹脂Bをダイ内へと導入する導入口D(3)が備えられる。これら導入口(2、3)から連続する流路(4)が分配板(5)へと備えられており、導入口から導入された樹脂A、Bは、流路(4)を流動して分配板へと達する。
本発明のフィルム成型用ダイの分配板(5、6、7)は、複数の導入口の後段に設けられた幅方向−厚み方向を含む平面に平行な方向に扁平な薄板であり(ここで、幅方向−厚み方向を含む平面に平行な方向を分配板の面方向と呼ぶ)、面方向に設けられた流路(流動溝)と、流動方向に設けられた複数の穴(孔)とが、導入口から導入された複数の樹脂をそれぞれ独立して分配させることができるように構成されている。本明細書中のダイの一例では、図9に示すように導入口C(2)から導入された樹脂Aをその他の導入口から導入された樹脂と混同することなく独立に流動させるための流動溝E(8)と、図10に示すように導入口D(3)から導入された樹脂Bをその他の導入口から導入された樹脂と混同することなく独立に流動させるための流動溝F(9)と、図8〜11に示すように流動溝Eまたは流動溝Fのいずれかに接続される複数の孔(10)から構成されている。導入口からダイ内へと導入された樹脂は、上述の構成を備えた分配板(5、6、7)において流動溝を経て複数の孔(10)へと分割・供給される。分配板に設けられた孔は複合フィルムの各層に対応し、所望する複合フィルムの形状に合わせて分配板の孔の形状、配置や各孔へ分配する樹脂を種類が決められる。なお、ここで示すフィルム成型用ダイの一例においては、説明を簡略化するために分配板は3枚用いた構成となっているが、実際のダイにおいては、分配板の枚数はこの限りではない。また、図5〜13に示すフィルム成型用ダイにおいては、流動溝は面方向に平行でありかつ分配板の流動方向上流側に設けられているが、流動溝は必ずしも分配板の面方向に平行であったり分配板の流動方向上流側に設けられる必要はなく、複数の孔と接続可能な構成であればよい。同様に孔も必ずしも流動方向に平行である必要はなく、一枚の分配板において表裏を貫通する形状であればよい。前述の構成である流動溝と孔を備えることに樹脂を効率的に複数の流動へと分配できるものである。
本発明のフィルム成型用ダイの合流部(11)は、略矩形状の単一の空洞からなる流路である。合流部は分配板に続いて分配板の各孔と接続されて設けられており、各孔から流出された樹脂は合流部において合流されて複合流となる。
本発明のフィルム成型用ダイの吐出部(12)は、合流部以降に設けられたダイの外部へとつながる略矩形状の開口部である。合流部にて形成された複合流は、吐出部からダイ外へと流出される。
以上の特徴を備えたダイでは、分配板において複数の孔に所望する断面形状の複合フィルムの設計に対応して樹脂を供給することで、用いる樹脂の流動特性や所望する層の分布によらず均等に樹脂を分配することが可能となり、高精度に所望する複合フィルムを得ることが可能となる。また、分配板に設けられる孔への各樹脂の割り当てを変更することで、多種多様な形態で複数の樹脂が複合された複合フィルムを得ることが可能となる。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、複合フィルムを得ることを目的とするため、導入口C(2)から導入される樹脂Aと導入口D(3)から導入される樹脂Bは組成や物性の異なる樹脂であることが好ましいものの、全く同一の樹脂であってもなんら問題はない。ここで重要なことは、異なる導入口からダイ内へと供給された樹脂は、異なる導入口から導入された樹脂が異なる経路を経て合流部へと流動することにある。また、ダイ内に導入される樹脂の数は2種類に限定されるものではなく、3種類以上であることもまた好ましい。ダイに導入される樹脂の種類が増えることにより、2種類の樹脂の複合では達成し得ない物性の複合フィルムを得ることが可能となる。
また、ある特定の樹脂が導入される導入口は必ずしも一つである必要はなく、複数個存在することも好ましい。ある特定の樹脂が導入される導入口を複数個設けることにより、ダイの内部で流路を分割する回数が減少し、ダイ内の構成を簡素化することが可能となる。また、たとえ同一の樹脂であっても、異なる導入口からダイ内へ導入することにより、各々の導入口から導入される樹脂の流量を個別に制御することができるようになる。その結果、たとえ同一樹脂であったとしても各々の導入口から供給される樹脂の孔への割り当てによって流量を制御できるため、より高精度かつ多様に複合された複合フィルムが得られるだけでなく、装置を解体することなく異なる形状の複合フィルムを得ることが可能となるため、製造コストの面でも好ましい。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、導入口(2、3)から合流部(11)との間に、少なくとも1つ以上のマニホールド(13)が形成されてなることが好ましい。ここでいうマニホールドとは、図5、6に示すように、孔や分配板の流動方向の長さと比較して10倍以上の流動方向の長さを備えるものとする。マニホールドを設けることにより、分配板中の流動溝や孔へ供給される樹脂の流量や温度分布を均等化することが可能となる。また、流動方向の長さが短い分配板に設けられ、流動中にも比較的大きな圧力損失が発生する分配溝と異なり、流動方向の長さが十分なマニホールドでは流動中の圧力損失がほとんど発生しないために、上記の効果は顕著である。好ましくは、マニホールドが導入口(2、3)と最も上流に配置される分配板(5)の間に設けられることであり、この場合、分配板への樹脂の流動を安定化させることが可能となるため分配板での樹脂の分配精度が向上し、所望する複合フィルムを高精度に得ることが可能となる。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、分配板が複数枚積層されていることも好ましく、分配板に設けたられた孔の数が流動方向上流側の設けられた分配板の孔の数と同数以上であることがさらに好ましい。1枚の分配板においても、分配板に導入された樹脂を複数の孔へと分割・供給することは可能である。しかし、樹脂の分配機能を備えた分配板を複数枚用いることにより、1枚の分配板を用いるときと比較してより多くの孔への分配が可能となり、その分配パターンも複雑化できるために多彩な複合パターンで高精度な複合フィルムが得られるようになる。また、分配板中に流動溝と複数の孔を備える必要があるが、複数枚の分配板を用いる場合には必ずしも1枚の分配板に流動溝と孔を共に備える必要はない。より詳しくは、孔のみが形成された分配板と流動溝も形成された分配板とを積層して組み合わせて使用した場合も、一枚の分配板に流動溝と孔を形成した場合と同様の分配機能を付与することが可能である。また、孔のみが形成された分配板と、流動溝と孔を含む分配板とを組み合わせて使用する場合、後者を流動溝の形成様式の異なる分配板と取り替えることで異なる断面形状を有する複合フィルムを得ることが可能となり、低コストで多様な形状の複合フィルムを作製することができる。図5〜11に示す本発明のフィルム成型用ダイの一例においては、分配板(5)に供給された樹脂は分配板(5)上の各々の孔(10)から分配板(6)に設けられた流動溝(8)もしくは孔(10)に供給される。流動溝(8)に供給された樹脂は複分割されて各流動溝に対して2個の孔(10)に供給され、分配板(5)に設けられた孔の個数よりも多くの孔へと樹脂を分配することが可能となる。同様に、分配板(6)から分配板(7)に供給された樹脂は、分配板(7)上に設けられた流動溝(9)により分割される。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、分配板中に形成された流動溝が複数の流動溝へと分岐される流路分岐点を備えることも好ましい。また、好ましくは、流動分岐点で分岐された流動溝は、同一に圧力損失が生じる形状とすることであり、より好ましくは、同一の流動溝から流路分岐点において分岐された流動溝においては、流動溝の高さ、幅、長さが同一となるようにすることである。この場合、分配板中で効率的に樹脂の流動を分割することが可能になり、かつ分岐された樹脂にかかる圧力損失を等しくできることから、より分配板中で均等に樹脂を孔へと分配することが可能となる。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、少なくとも1枚以上の分配板において、分配板中の孔(10)の個数が30個以上であることが好ましい。より好ましくは、合流部と隣接する分配板中の孔(10)の個数が30個以上である。上記のとおり、分配板に設けられた各孔からの樹脂の流動を合流部で合流させることにより複合流としている。特に、分配板中の孔の個数が30個以上である場合、幅方向に扁平な形態であるフィルムの製膜においても所望する機能を発現させるのに十分な形態を達成しやすくなる。好ましくは、分配板中の孔の個数が100個以上であり、より好ましくは1000個以上である。分配板中の孔の個数が多くなるに従い、より微細でかつ高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となるため、複合フィルムの高機能化を達成できる。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、合流部(11)の幅方向−厚み方向の断面形状が略矩形状であることが好ましい。合流部で高精度な複合流を形成したとしても、合流部の断面形状と吐出部の開口部の形状に大きな違いがある場合には、速度分布の変化による複合精度の低下が生じ、所望する複合フィルムが得られない場合がある。そこで、略矩形状である合流部を備えることにより、フィルムの形状に対応する形状の複合流を形成でき、高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となる。より好ましくは、合流部の幅方向−厚み方向の断面形状が略矩形状であり、かつ矩形の角が丸めてなることである。分配板の孔から流出した流体は、合流部で複合される際に流速分布に変化が生じて複合精度の低下の原因となりうる場合がある。特に、円形の合流部を利用する紡糸においては、合流部での流速分布の変化が均等に生じ複合精度の低下が小さいのと比較して、合流部の形状を略矩形状とすることにより流速分布の変化が不均等に生じやすくなり、矩形の角の周囲では壁面の影響を大きく受けるために複合精度が最も低下しやすくなる。しかし、矩形の合流部の角部に丸めてあることにより、角の周囲での壁面の影響による流速分布の変化を緩和することができ、複合流の形状変化が抑制されるために高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となる。
同様に、本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、合流部(1)に隣接する分配板に設けられた孔(10)が略矩形状の領域に分布してなることが好ましい。この場合、略矩形状の断面形状の合流部での流速分布の変化を最小限に抑制することができることで、略矩形状の合流部において複合流を高精度に形成でき、高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となる。
また、本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、合流部(11)に隣接する分配板に設けられた孔(10)が略矩形状の領域に分布してなり、かつ孔が幅方向に等間隔に配置してあることが好ましい。ここでいう孔の間隔とは、隣接する孔の重心間の距離(28)とし、装置の図面や画像解析などを実施することにより算出されるものである。また、幅方向に等間隔であるとは、隣接する孔の重心間を結ぶ線分のうち、幅方向に平行な成分の長さが±5%以内であることをいう。分配板に設けられた孔から流出した樹脂は周囲の孔から流出した樹脂と接することにより複合されるものであるが、隣接する孔の間隔が不均等である場合、孔から流出して合流するまでの流動が不均等となり、特に複合する樹脂の流動特性が異なるときに複合精度の低下の原因となる可能性がある。しかし、孔が幅方向および厚み方向に等間隔に配置してあることにより、孔から流出して合流するまでの流動が幅方向および厚み方向に等しく生じるようになるため、流動特性の大きく異なる樹脂の組み合わせにおいても複合精度を向上させることが可能となる。一方、厚み方向においては、合流部の厚み方向中央位置に対応する孔の間隔が、合流部の厚み方向の末端に対応する孔の間隔よりも短いことが好ましい。ここでいう厚み方向においての孔の間隔とは、隣接する孔の重心間を結ぶ線分のうち、厚み方向に平行な成分の長さを示すものとする。高精度な複合フィルムを得るためには幅方向に扁平な略矩形状の流路を備えた合流部を用いることが好ましいが、幅方向と比較して厚み方向大きな速度勾配を有するために流速分布が変化し、特に樹脂の流動特性が異なる樹脂の組み合わせの場合において複合精度の低下の原因となる場合がある。しかし、合流部の厚み方向中央位置に対応する孔の間隔が、合流部の厚み方向の末端に対応する孔の間隔よりも短い場合、この合流部での流速分布に対応する孔の間隔となるため、孔から流出した後の流速分布の変化をある程度抑制することが可能となり、より高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となる。
また、本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、合流部(1)に隣接する分配板に設けられた孔(10)のうち、少なくとも一方の厚み方向の末端に配置される孔が厚み方向中央に配置される孔とは異なる導入口と連続する流路ならびに流動溝と接続されることも好ましい。ここでいう厚み方向の末端に配置される孔とは、分配板の孔をすべて含み最も周長が短くなる図形の内部を孔の配置される領域とすると、この図形と接する孔の中で、各々の幅方向の位置における厚み方向の末端に配置される孔とする。厚み方向の末端に配置される孔からの流量は複合フィルム内の各層の厚み方向の長さの制御に寄与し、厚み方向の中央に配置される孔はフィルムの内の幅方向の長さの制御に寄与するが、この場合、厚み方向の制御と幅方向の制御をダイへと供給される樹脂の流量により個別に制御することが可能となる。この結果、フィルム成型用ダイを解体し分配板を取り替えることなく、多様な形状の複合フィルムを得ることができ、製造コストを低減できるようになる。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、分配板のいずれかと合流部(11)との間に支持部材(14)を有することが好ましい。図12は、合流部(1)の厚み方向中央における幅方向−流動方向の断面図であり、幅方向末端部の拡大図である。上記の分配板中を流動する過程において、特に孔において大きな圧力損失が生じるために、分配板が変形・破損する可能性がある。フィルムの製造においては、繊維の製造と比較してより多くの樹脂を使用するため、単一の孔を流動する樹脂の流量が増加し圧力損失が高くなる傾向にある。加えて、繊維の口金の場合においては、個々の合流部の断面積が小さく、複数の複合部を備えた複合紡糸口金であっても個々の合流部間の部材が支持部材となることで変形・破損を抑制することが可能であるが、フィルムの場合、合流部の形状が幅方向に長く断面積も大きくなるため分配板を支持できずより小さな圧力損失により分配板が変形・破損しやすくなる。また、より微細かつ高精度な複合フィルムを得るためには、分配板に設けられる孔径の小さい孔を高密度で設ける必要があるが、孔径が小さくなることにより孔で生じる圧力損失が大きくなることに加えて、微細な孔を分配板に形成するための加工上の制約で分配板の板厚みを薄くする必要が生じてより低い圧力損失で分配板が変形・破損しやすくなる。分配板のいずれかと合流部との間に支持部材を有することにより、分配板で生じる圧力損失による分配板の変形・破損を抑制することが可能となる。支持部材は、合流部を含む構成要素(24)の一部として構成されることが好ましく、さらに好ましくは合流部を含む構成要素(24)に形成された合流部の分配板側に支持部材を備えてなることである。このように支持部材を構成することにより、実際の複合フィルムの構成に影響する合流部と支持部材の位置との位置のズレを抑制できることから複合精度を向上させることが可能となる。さらに、支持部材を別個部材として形成した場合と比較して強度を高めることもでき、より大きな圧力損失に対しても破損や変形を抑制できるものである。同様の観点から、支持部材を合流部を含む構成要素(24)の一部として構成する場合においても、一個材料から作製することが好ましい。この場合、溶接などにより支持部材を構成要素(24)に固定する場合と比較して、より支持部材の強度を高めることが可能である。また、支持部材は、分配板の流動方向下面に固着形成することも好ましい。この場合、分配板の熱膨張に対しても、同様に変形するために、分配板中の孔との位置精度が高くなり、複合精度を向上させることが可能となる。
支持部材の配置には特に制約はないものの、より好ましくは、支持部材が分配板と合流部の間に設けられ、かつ支持部材が分配板と接する面を備えてなることである。本発明のフィルム成型用ダイにおいては、合流部に隣接する分配板に設けられた孔が最も径が小さくなりやすいために大きな圧力損失が発生し、かつそれより上流の分配板で生じる圧力損失の影響も全てうけるために、非常に大きな力が合流部に隣接する分配板にかかるようになる。そこで、合流部に隣接する分配板と合流部の支持部材を導入することにより、合流板の変形・破損を効果的に抑制することが可能となる。また、支持部材が分配板と接する面を備えてなることにより、支持部材と分配板の接触面積を大きくすることが可能となり変形・破損を効果的に抑制することが可能となる。
さらに好ましくは、支持部材の幅の最大値が支持部材と分配板の接触幅(15)の110%以下であることである。ここでいう支持部材の幅とは各々の支持部材の幅方向−厚み方向平面における短辺方向の長さであるとし、その最大値とは流動方向の各点において前記の支持部材の長さの最大値のことである。また、支持部材と分配板の接触幅とは支持部材と分配板とが接する面の幅方向−厚み方向平面における短辺方向の長さであるとする。支持部材を合流部と分配板との間に設けると、合流部中に分配板からの流動を乱す障害物となり、複合精度の低下を招く可能性がある。そこで、支持部材の幅の最大値が支持部材と分配板の接触幅(15)の110%以下である場合、孔から流出した樹脂に不要な縮流を生じさせることなく支持部材を挟んで隣接する複合流と合流させることができるため、支持部材の存在による流動への影響を抑制し高精度な複合フィルムを得ることが可能となる。なお、支持部材が分配板と合流部との間に設けられる場合には、合流部に隣接する分配板に設けられる孔は支持部材の接触領域に相当する箇所に設けられている必要はなく、接触領域を除く箇所において上述の孔の間隔精度を保持していれば、十分に高精度に複合された複合フィルムを得ることも可能である。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、複数枚の分配板同士および/または分配板と合流部(11)との配置を固定するための位置決め機構を備えていることが好ましい。本発明のフィルム成型用ダイにおいては、複数枚の分配板同士や分配板と合流部との位置関係が非常に重要となり、用いる分配板の孔の数、形状や複合フィルムの設計によっては、少々の位置のズレによっても所望する複合フィルムを得ることができなくなる可能性がある。特に、複合紡糸口金とは異なりフィルム成型用ダイは幅方向に極端に扁平な形状であるためにより位置ズレが生じやすいものである。複数枚の分配板同士および/または分配板と合流部との配置を固定するための位置決め機構を備えることにより、幅方向に扁平なフィルム成型用ダイにおいても分配板同士や分配板と合流部の位置ズレを抑制することが可能となり、高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となる。好ましくは、フィルム成型用ダイを構成する分配板の材質の熱膨張係数が同一であることであり、より好ましくはフィルム成型用ダイを構成する分配板が同一の材質からなることであり、さらに好ましくはフィルム成型用ダイを構成する分配板の厚みが同一であることである。フィルム成型用ダイにおいては、幅方向に扁平な形状であるためダイが加熱された際にダイの幅方向の末端では熱膨張による大きな歪みが発生し、複数枚の分配板同士や分配板と合流部との位置のズレが生じやすくなる。しかし、上記の用件を満たす分配板においては、ダイが加熱された際にも個々の分配板が同様に熱膨張するため分配版同士の位置ズレが生じにくく、高精度に複合された複合フィルムを得ることが可能となる。
また、分配板と合流部との配置を固定するための位置決め機構がピン(16)と間隙(17)からなるものであり、かつ間隙の少なくとも一つはピンの周形状と略同一形状であり、かつ間隙の少なくとも一つはピンに対して少なくとも一方方向に可動することができることも好ましい。分配板と合流部とではその機能の違いから個々の部材の形状が異なり、ダイが加熱された際の熱膨張の程度が違うために分配板と合流部との位置ズレが生じたり、歪みによる部材の変形・破損の可能性がある。しかし、分配板と合流部との配置を固定するための位置決め機構がピンと間隙からなるものであり、かつ間隙の少なくとも一つはピンの周形状と略同一形状であり、かつ間隙の少なくとも一つはピンに対して少なくとも一方方向に可動することができる場合、分配板と合流部との熱膨張率の違いに対応して分配板の合流部に対する位置を調整することが可能となり、歪みによる部材の変形・破損を抑制することが可能となる。
さらに好ましくは、ダイ外部から複数の分配板または分配板と合流部とを加圧固定可能な締め機構を備えることである。この場合、複数の分配板または分配板と合流部との間を固定することなくダイを加熱し、加熱後にこれらの部材を加圧固定することができるため、加熱時の歪みによるダイの変形・破損を抑制しつつ実際の複合フィルムの製造時の位置ズレによる複合精度の低下を抑制することが可能となる。
本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、上述のとおり合流部(11)の幅方向−厚み方向の形状と吐出部(12)の開口部の形状が略同一形状であり、これらの構成要素間の流路形状が同一形状であることが好ましい。流路形状が拡大・縮小することにより流速分布に変化が生じ、複合する樹脂の流動特性によっては合流部で高精度で複合された複合流の形状に乱れが生じて複合フィルムの複合精度が低下する場合がある。合流部から吐出部までの流路形状が同一形状であることにより、上述の複合精度の低下の原因となる流速分布の変化が生じないため、高精度に複合することが可能となる。
しかし、本発明のフィルム成型用ダイ(1)においては、合流部(11)と吐出部(12)との間で、流路形状を縮小するための縮流部(18)をさらに備えてなることもまた好ましい。図13は、縮流部(18)を備えたフィルム成型用ダイ(1)の一例における導入口C(2)を含む幅方向−流動方向の断面図であり、図4の断面Xにおける断面図である。本発明のフィルム成型用ダイでは、分配板に設けられた孔(10)の配置により合流部で形成される複合流の構造が決まる。しかし、分配板に設けられる孔の径や間隔は、流体が流動する際に圧力損失や加工精度の点からある程度の限界がある。そこで、合流部と吐出部との間に流路形状を縮小するための縮流部をさらに備えることにより、合流部で形成された複合流の構造をさらに微細化することが可能となり、製造できる複合フィルムを多様化することが可能となる。より好ましくは、縮流部において、流路の断面形状が相似形状を保ち変化することである。この場合、流路形状が相似形状を保ち変形することにより、流路を縮小した際に生じる流速分布の変化をほぼ抑制できるために、合流部で高精度に複合された複合流の形状を保持したまま複合流の微細化を達成することが可能となり、より多様な形状の複合フィルムを高精度に製造することが可能となる。
以下、図5〜13に記載のフィルム成型用ダイを用い、流体として2種類の熱可塑性樹脂を用いて複合フィルムを製膜した際の断面形状を測定し、本実施形態における流体積層装置の効果を検証した結果について、さらに説明する。下記に本実施形態に使用した物性値の評価法を記載する。
(物性値の評価法)
(1)断面形状の観察
まず、研磨機により観察するフィルム幅方向−厚み方向断面の平滑化処理を行った。カッターナイフを用いてフィルム断面を切り出し、このフィルムの両表面を厚さ2mmのアクリル板ではさみ、治具に固定した。次に、研磨機(NAP−240 日新化成社製)を用い、研磨板に#6000番手の研磨フィルム(砥粒 酸化アルミニウム)を貼り付け、研磨液に純水を用い、研磨板の回転数240rpmで10分間研磨することにより平滑な断面とした。この処理をフィルム全幅について、順次行った。次に、非接触三次元測定機(NEXIV VMR−H3030TZ Nikon社製)を用いて、B層の断面幅、層数、形状を計測した。
非接触三次元測定機の試料台中央部に平滑にした断面が見えるように試料を置き、B層の断面幅が約800μm程度の場合は倍率3倍で撮影し、B層の断面幅が約100μm程度の場合は倍率10倍で撮影し、B層の断面幅が約10μm程度の場合は倍率100倍で撮影した。そして、得られた画像から、B層の断面形状を判断した。なお、1回のストローク範囲内で撮影が完了しない場合は、サンプルをずらしてセットし直し、継続して計測を行った。撮影された画像は、画像処理ソフト Image-Pro Plus ver.4(販売元 プラネトロン(株))を用いて解析し、必要であれば、画像処理を行った。画像処理は、層の形状を鮮明にするために行うものであり、例えば、ソフト付属の2値化およびローパスフィルタ処理などを行った。解析は、画像解析プログラムを用い、複合された一方の樹脂層(樹脂A層)の幅方向の長さ(以後幅と略記)、厚み方向の長さ(以後高さと略記)、間隔を計測し、平均幅、平均高さ、平均間隔を算出した。
(実施例1)
図4に示される複合フィルムの製造装置を用い、フィルム成型用ダイとしては、図5〜11のごときダイを用いた。また、合流部と隣接する分配板に設けられた孔の径は全て0.25mmであり、幅方向には0.25mm間隔で1600個、厚み方向に0.70mm間隔で3個であり、幅方向に400mm、厚み方向に2.0mmの矩形領域に4800個の孔が設けられていた。分配板中に設けられたその他の孔や流動溝で生じる圧力損失に対して十分に高い圧力損失がかかるものであった。合流部から吐出部に至るまでの流路形状は幅方向に400mm、厚み方向に2.0mmであった。
樹脂Aとして出光興産製ポリカーボネート(PC・LC1700)を用い、樹脂Bとして住友化学製ポリプロピレン(PP・ノーブレンWF836DG)を用いた。樹脂Aは空気中、110℃の条件で6時間以上乾燥した。これらの樹脂を別々の押出機に供給した。
樹脂A、Bは、それぞれ押出機にて280℃の溶融状態とし、ギアポンプおよびフィルターを介した後、図4に示す導入路18を経て図5、6に示す導入口2、3へと導入された。なお、ギアポンプから吐出される樹脂の量の比は、樹脂A:樹脂B=1:3とする。
上記のフィルム成型用ダイを用いて作製された複合流は、エアナイフにて表面温度25℃に保たれたキャストドラム19上で急冷固化して、未延伸フィルム20とした。得られたフィルムは幅380mm、厚み500μmであり、PP樹脂からなるフィルム中にPC樹脂からなる層が500±10μm間隔で幅250μm、高さ250μmである層が800個存在するものであった。大多数の層の形状はほぼ同一形状であり、略正方形であった。
(実施例2)
各孔への流量の比率を変更した以外は、実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムは幅380mm、厚み500μmであり、PP樹脂からなるフィルム中にPC樹脂からなる層が500±10μm間隔で半径約200μmの略円形である層が800個存在するものであった。大多数の層の形状はほぼ同一形状であった。
(実施例3)
図13に示す縮流部を備えたフィルム成型用ダイを用いた以外が、実施例1と同様の条件で製膜した。なお、縮流部は、合流部の幅方向の長さが400mm、厚み方向の長さが2.0mmであるのに対して、吐出部に設けられた開口部の幅方向の長さが200mm、厚み方向の長さが1.0mmであり、その間の流路の断面形状は相似的に変化していくものであった。
得られたフィルムは幅180mm、厚み250μmであり、PP樹脂からなるフィルム中にPC樹脂からなる層が250±5μm間隔で幅125μm、高さ125μmである層が800個存在するものであった。大多数の層の形状はほぼ同一形状で略正方形であったが、若干幅方向末端の層の形状に乱れがあった。
(実施例4)
分配板として、孔の径が0.25mmであり、幅方向には0.25mm間隔で1600個、厚み方向に0.40mm〜0.50mm間隔で5個であり、幅方向に400mm、厚み方向に2.0mmの矩形領域に8000個の孔が設けられているものを用いた以外は、実施例1と同様の条件で製膜した。得られたフィルムは幅380mm、厚み500μmであり、PP樹脂からなるフィルム中にPC樹脂からなる層が500±10μm間隔で幅100μm、高さ100μmである層が幅方向に800個配列したものが厚み方向に2列存在するものであった。大多数の層の形状はほぼ同一形状であり、略正方形であった。
(実施例5)
分配板と合流部の間に、図12に示すがごとき支持部材を含んでなり、合流部の幅方向の長さが500mm、厚み方向の長さが2.0mmであるのに対して、吐出部に設けられた開口部の幅方向の長さが400mm、厚み方向の長さが1.6mmであり、その間の流路の断面形状は相似的に変化していく縮流部を備えてなるフィルム成型用ダイを用い、樹脂A、樹脂Bの流量をそれぞれ5倍とした。支持部材は幅方向に10mm間隔で厚み方向に平行に設けられ、幅方向―流動方向の断面形状が分配板側を底辺とする略三角形であり、分配板との接触幅、支持部材の幅の最大値が共に2.0mmであるものであった。また、合流部に隣接する分配板においては、支持部材と相対する位置には孔が設けられず、それ以外の領域に実施例1と同様の径、間隔の孔が設けられていた。得られたフィルムは幅380mm、厚み500μmであり、PP樹脂からなるフィルム中にPC樹脂からなる層が500±25μm間隔で幅250μm、高さ250μmである層が800個存在するものであった。大多数の層の形状はほぼ同一形状であり、略正方形であった。実施例1と比較して5倍の速度で製膜可能なものであり、生産性に優れたものであった。
(比較例1)
引用文献1の実施例1のごとき装置を用い、実施例1と同様の樹脂を用いて複合フィルムを得た。得られたフィルムは幅94mm、厚み90μmであり、PP樹脂からなるフィルム中にPC樹脂からなる層が330±50μm間隔で幅50μm、高さ50μmであり、形状が略正方形である層が150個存在するものであった。しかし、PC樹脂からなる層は、隣接する層の間隔が幅方向中央部に対して幅方向の両端近傍で狭くなっており、間隔精度が低いものであった。また、層の形状も幅方向の両端では正方形状から若干ではあるが変形していた。そのため、特に、異方拡散フィルムや集光フィルムに用いた場合に、フィルムの場所により光学特性が不均一化しており、輝度ムラの原因となるものであった。また、本装置を用いた場合には、樹脂の組み合わせを変えることなくPC樹脂からなる層の形状にバリエーションを持たせることは難しいものであった。