JP2006299243A - 塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体 - Google Patents
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Abstract
【課題】 塩化ビニル系樹脂の有する成形加工性や透明性を損なうことなく、γ線照射による変色の少ない塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体を提供することを課題とする。
【解決手段】 塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分として含有する塩化ビニル系共重合樹脂組成物を、成形加工して塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体を得る。この時、(A)塩化ビニル系モノマーと(B)該マクロモノマーとを、(A)/(B)=80重量%/20重量%〜60重量%/40重量%の範囲で共重合したものを用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】 塩化ビニル系モノマーと、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分として含有する塩化ビニル系共重合樹脂組成物を、成形加工して塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体を得る。この時、(A)塩化ビニル系モノマーと(B)該マクロモノマーとを、(A)/(B)=80重量%/20重量%〜60重量%/40重量%の範囲で共重合したものを用いる。
【選択図】 なし
Description
本発明は、塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体に関する。さらに詳しくは、医療材料用途や食品用容器あるいは包装材料用途等に使用される、γ線照射による変色の少ない、耐γ線性に優れた塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体に関する。
塩化ビニル系樹脂は、成形加工性に優れ比較的安価であるという特徴があることから種々の成形体に汎用されており、特に透明感があることや添加する可塑剤の種類と量によって容易に柔軟性を制御できるという利点を生かし、輸液セット等の医療用成形品に最も多用されている軟質樹脂材料である。医療用成形体は通常、成形後に滅菌処理を施すが、その際の方法としては主に、エチレンオキサイドガス滅菌(以下EOG滅菌と略す)、スチーム滅菌、γ線滅菌等がある。このうち、EOG滅菌では滅菌後の成形体内の残留EOGが問題になる場合があり、またスチーム滅菌では121℃という高温のスチームに耐え得る耐熱性を要すると共に、滅菌時間が長くまた装置も大型化せざるを得ないという問題がある。一方γ線滅菌は、比較的短時間で滅菌でき、残留物の問題や装置の大型化という問題もないことから、近年主流になってきている滅菌処理法である。しかし、塩化ビニル系樹脂を用いた医療用成形体をγ線滅菌処理すると、黄色ないしは褐色に変色して実用に耐えなくなるという問題があった(特許文献1)。この問題を解決するために、塩化ビニル系樹脂以外の材料、例えば、ポリエステルにソフトセグメントを共重合させた材料が多数開示され、その一例として、ポリテトラメチレングリコールをポリブチレンテレフタレートに共重合させた材料が開示されているが(特許文献2)、この場合、成形体は結晶化しやすく、白化により透明性が低下するという問題がある。また、多段重合によるプロピレン系重合体組成物(特許文献3)も開示されているが、この場合、透明性および柔軟性が塩化ビニル系樹脂よりも劣り、医療用成形体材料としては不充分であった。
特開2003−695
特公昭57−48577号公報
特開平6−25367号公報
本発明は、塩化ビニル系樹脂の有する成形加工性や透明性を損なうことなく、γ線照射による変色の少ない塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意研究の結果、塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を用いることにより、上記課題を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1)(A)塩化ビニル系モノマーと、(B)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマー、とを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分として含有する塩化ビニル系共重合樹脂組成物から得られる、塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体(請求項1)、
(2)塩化ビニル系共重合樹脂が、(A)塩化ビニル系モノマーと(B)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを、(A)/(B)=80重量%/20重量%〜60重量%/40重量%の範囲で共重合して得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体(請求項2)、
(3)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが重合性反応基を有し、該重合性反応基が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式:
−OC(O)C(R)=CH2
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む構造であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体(請求項3)、
に関する。
すなわち本発明は、
(1)(A)塩化ビニル系モノマーと、(B)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマー、とを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分として含有する塩化ビニル系共重合樹脂組成物から得られる、塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体(請求項1)、
(2)塩化ビニル系共重合樹脂が、(A)塩化ビニル系モノマーと(B)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを、(A)/(B)=80重量%/20重量%〜60重量%/40重量%の範囲で共重合して得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体(請求項2)、
(3)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが重合性反応基を有し、該重合性反応基が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式:
−OC(O)C(R)=CH2
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む構造であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体(請求項3)、
に関する。
本発明によれば、塩化ビニル系樹脂の有する成形加工性や透明性を損なうことなく、γ線照射による変色の少ない塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体が可塑剤無添加で得られる。
本発明の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体は、塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分として含有する塩化ビニル系共重合樹脂組成物から得られる塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体である。ここで、主成分とは、重量換算での添加量が最も多い第一成分を言う。この第一成分の好ましい添加量としては、組成物を構成する全成分の50重量%以上であり、さらに好ましくは70重量%以上である。該組成物を該成形体に成形加工する方法としては、特に限定はなく、例えばカレンダー成形法、押出成形法、射出成形法、ブロー成形法、インフレーション成形法、プレス成形法、真空成形法等の、通常の塩化ビニル系樹脂の成形加工法が挙げられる。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂組成物は、各種成形加工法により成形加工して各種成形体を得た場合には、透明性および耐放射線性が良好で、該組成物から塩化ビニル系軟質成形体を成形した場合には、γ線照射による着色が少ない塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体が得られる。該組成物を医療用成形体材料として使用すれば、該成形体をγ線滅菌処理しても変色が少なく、充分実用に供することができるものである。
ここで、「塩化ビニル系共重合樹脂を主成分とする塩化ビニル系共重合樹脂組成物」とは、該塩化ビニル系共重合樹脂組成物の主要な構成成分が塩化ビニル系共重合樹脂成分であり、塩化ビニル系共重合樹脂以外の構成成分は、要すれば使用される各種添加剤等であることを指す。
また、本発明の「軟質成形体」とは、JIS K 7215に規定のプラスチックのデュロメータ硬さ試験方法に準じ、タイプAデュロメーターを用いて評価した硬度(以下HDAと略す)の値が80以下の成形体を指す。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂を構成する塩化ビニル系モノマーとしては特に限定はなく、例えば塩化ビニルモノマー、塩化ビニリデンモノマー、酢酸ビニルモノマーまたはこれらの混合物、または、この他にこれらと共重合可能で、好ましくは重合後の重合体主鎖に反応性官能基を有しないモノマー、例えばエチレン、プロピレンなどのα−オレフィン類から選ばれる1種または2種以上の混合物を使用しても良い。2種以上の混合物を使用する場合は、塩化ビニル系モノマー全体に占める塩化ビニルモノマーの含有率を50重量%以上、特に70重量%以上とすることが好ましい。中でも得られる共重合樹脂の物性等から、塩化ビニルモノマーあるいは塩化ビニリデンモノマーのいずれか1種のみを使用することが好ましく、塩化ビニルモノマーを使用することがさらに好ましい。
一般にマクロモノマーとは、重合体の末端に反応性の官能基を有するオリゴマー分子である。本発明で使用される二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーは、反応性官能基として、アリル基、ビニルシリル基、ビニルエーテル基、ジシクロペンタジエニル基、下記一般式(1)から選ばれる重合性の炭素−炭素二重結合を有する基を、少なくとも1分子あたり1個、分子末端に有する、ラジカル重合によって製造されたものである。
特に、塩化ビニル系モノマーとの反応性が良好なことから、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基が、下記一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
で表される基が好ましい。
特に、塩化ビニル系モノマーとの反応性が良好なことから、重合性の炭素−炭素二重結合を有する基が、下記一般式(1):
−OC(O)C(R)=CH2 (1)
で表される基が好ましい。
式中、Rの具体例としては特に限定されず、例えば、−H、−CH3、−CH2CH3、−(CH2)nCH3(nは2〜19の整数を表す)、−C6H5、−CH2OH、−CNの中から選ばれる基が好ましく、さらに好ましくは−H、−CH3である。
本発明で使用されるマクロモノマーの主鎖である、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体は、ラジカル重合によって製造される。ラジカル重合法は、重合開始剤としてアゾ系化合物、過酸化物などを使用して、特定の官能基を有するモノマーとビニル系モノマーとを単に共重合させる「一般的なラジカル重合法」と、末端などの制御された位置に特定の官能基を導入することが可能な「制御ラジカル重合法」に分類できる。
「一般的なラジカル重合法」は、特定の官能基を有するモノマーは確率的にしか重合体中に導入されないので、官能化率の高い重合体を得ようとした場合には、このモノマーをかなり大量に使用する必要がある。またフリーラジカル重合であるため、分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
「制御ラジカル重合法」は、さらに、特定の官能基を有する連鎖移動剤を使用して重合を行うことにより末端に官能基を有するビニル系重合体が得られる「連鎖移動剤法」と、重合生長末端が停止反応などを起こさずに生長することによりほぼ設計どおりの分子量の重合体が得られる「リビングラジカル重合法」とに分類することができる。
「連鎖移動剤法」は、官能化率の高い重合体を得ることが可能であるが、開始剤に対して特定の官能基を有する連鎖移動剤を必要とする。また上記の「一般的なラジカル重合法」と同様、フリーラジカル重合であるため分子量分布が広く、粘度の低い重合体は得にくい。
これらの重合法とは異なり、「リビングラジカル重合法」は、本件出願人自身の発明に係る国際公開WO99/65963号公報に記載されるように、重合速度が大きく、ラジカル同士のカップリングなどによる停止反応が起こりやすいため制御の難しいとされるラジカル重合でありながら、停止反応が起こりにくく、分子量分布の狭い、例えば、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比(Mw/Mn)が1.1〜1.5程度の重合体が得られるとともに、モノマーと開始剤の仕込み比によって分子量は自由にコントロールすることができる。
従って「リビングラジカル重合法」は、分子量分布が狭く、粘度が低い重合体を得ることができる上に、特定の官能基を有するモノマーを重合体のほぼ任意の位置に導入することができるため、本発明において、上記の如き特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはより好ましい重合法である。
「リビングラジカル重合法」の中でも、有機ハロゲン化物あるいはハロゲン化スルホニル化合物等を開始剤、遷移金属錯体を触媒としてビニル系モノマーを重合する「原子移動ラジカル重合法」(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)は、上記の「リビングラジカル重合法」の特徴に加えて、官能基変換反応に比較的有利なハロゲン等を末端に有し、開始剤や触媒の設計の自由度が大きいことから、特定の官能基を有するビニル系重合体の製造方法としてはさらに好ましい。この原子移動ラジカル重合法としては例えばMatyjaszewskiら、ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカルソサエティー(J.Am.Chem.Soc.)1995年、117巻、5614頁等が挙げられる。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂を構成するマクロモノマーの製法として、これらのうちどの方法を使用するかは特に制約はないが、通常、制御ラジカル重合法が利用され、さらに制御の容易さなどからリビングラジカル重合法が好ましく用いられ、特に原子移動ラジカル重合法が最も好ましい。
また本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂を構成するマクロモノマーの主鎖が有する、二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体としては特に制約はなく、該重合体を構成する二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーとしては、各種のものを使用することができる。例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸−n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸−tert−ブチル、(メタ)アクリル酸−n−ペンチル、(メタ)アクリル酸−n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−n−ヘプチル、(メタ)アクリル酸−n−オクチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸トルイル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸−2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸−3−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、(メタ)アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、(メタ)アクリル酸トリフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロエチル、(メタ)アクリル酸パーフルオロメチル、(メタ)アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、(メタ)アクリル酸2−パーフルオロヘキサデシルエチル等の(メタ)アクリル酸系モノマー;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、クロルスチレン、スチレンスルホン酸およびその塩等のスチレン系モノマー;パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のケイ素含有ビニルモノマー;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル;マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系モノマー;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル基含有ビニル系モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド基含有ビニル系モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル等のビニルエステル類;エチレン、プロピレン等のアルケン類;ブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類;塩化アリル、アリルアルコール等が挙げられる。これらは単独で使用しても良いし、2種以上を共重合させても構わない。中でも生成物の物性等から、スチレン系モノマーあるいは(メタ)アクリル酸系モノマーが好ましい。より好ましくはアクリル酸エステルモノマーあるいはメタクリル酸エステルモノマーであり、さらに好ましくはアクリル酸エステルモノマーであり、最も好ましくはアクリル酸ブチルである。本発明においてはこれらの好ましいモノマーを他のモノマーと共重合させたものを用いても良く、その際はこれらの好ましいモノマーが重量比で40%以上含まれていることが好ましい。ここで、例えば「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸あるいはメタクリル酸を意味するものである。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂を構成するマクロモノマーは、これら二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有し、さらに反応性官能基を、少なくとも1分子あたり1個、分子末端に有することを特徴としている。
さらに、本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂を構成する、塩化ビニル系モノマーと共重合可能なマクロモノマーは1種のみを用いてもよく、構成するエチレン性不飽和モノマーが異なるマクロモノマーを2種以上併用してもよい。
本発明に使用される二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの重量平均分子量(以下、Mwと略す)は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略す)で測定したMwが、500〜100,000の範囲が好ましく、1,000〜40,000の範囲がより好ましく、3,000〜20,000の範囲がさらに好ましい。この範囲のマクロモノマーを用いると、塩化ビニルモノマーと均一混合が可能で、重合終了後も安定な水性重合体が得られることができる。Mwが500以上であると、重合終了後も未反応のマクロモノマーが残存することが少ないという観点から好ましく、また、Mwが100,000以下であると、マクロモノマーの粘度は高くなるものの、塩化ビニル系モノマーにも充分溶解し共重合体の進行を妨げることが少ないという観点から好ましい。本発明におけるGPC測定の際には、Waters社製GPCシステム(製品名510)を用い、クロロホルムを移動相として、昭和電工(株)製Shodex K−802.5及びK−804(ポリスチレンゲルカラム)を使用し、室温環境下で測定した。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂中は、(A)塩化ビニル系モノマーと(B)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを、(A)/(B)=80重量%/20重量%〜60重量%/40重量%の範囲で共重合して得られるものであることが好ましい。(A)/(B)=80重量%/20重量%〜60重量%/40重量%の範囲であれば、共重合反応が安定である上に、得られる塩化ビニル系共重合樹脂が粉粒体になり取り扱いが容易になると同時に、加工方法の自由度を増すという効果が期待でき、さらに耐γ線性に優れた軟質成形体素材を可塑剤無添加で提供することができる。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂の平均重合度または平均分子量は、本発明の効果を奏する範囲であれば特に限定されず、通常製造および使用される塩化ビニル系樹脂と同様に、JIS K 7367−2に従って測定したK値が50〜95の範囲が好ましく、55〜90の範囲がさらに好ましい。K値が50以上であると、得られる成形体の強度、成形加工時の延伸性等の観点から好ましい。一方、K値が95以下であると、成形加工時の溶融流動性、得られる成形品の表面性や透明性等の観点から好ましい。
また、平均粒径としては特に限定されないが、通常0.01〜500μmの範囲であり、好ましくは0.1〜300μmの範囲であり、さらに好ましくは、50〜300μmの範囲である。平均粒径が50〜300μmの範囲であれば、塩化ビニル系樹脂に適用される通常の成形加工法に適用でき、耐γ線性に優れた素材を提供することができる。
また、平均粒径としては特に限定されないが、通常0.01〜500μmの範囲であり、好ましくは0.1〜300μmの範囲であり、さらに好ましくは、50〜300μmの範囲である。平均粒径が50〜300μmの範囲であれば、塩化ビニル系樹脂に適用される通常の成形加工法に適用でき、耐γ線性に優れた素材を提供することができる。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂の製造方法については、特に制約はないが、重合制御の簡便性から水性媒体中での共重合が好ましく、そのような重合方法としては、例えば、懸濁重合法、微細懸濁重合法、乳化重合法等の製造方法が挙げられる。中でも、平均粒径が50〜300μmの範囲の塩化ビニル系共重合樹脂を得るために懸濁重合法が好ましい。このような製造方法によれば、該共重合樹脂はラテックス状あるいはスラリー状で得られるが、これを乾燥して粉粒体の共重合樹脂を得る方法としては特に制約はなく、例えば、ラテックスをスプレー乾燥法により乾燥する方法や、スラリーを脱水したのち流動乾燥法により乾燥する方法、あるいはラテックスまたはスラリーを脱水したのち熱風乾燥機等で静置乾燥法により乾燥する方法、等が挙げられる。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂組成物中には、塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を必須成分とし、必要に応じ熱安定剤、滑剤、安定化助剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料等を、本発明の目的を損なわない範囲で適宜配合することができ、また可塑剤も、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じ適宜使用しても良い。
熱安定剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような熱安定剤としては、例えばジメチル錫メルカプト、ジブチル錫メルカプト、ジオクチル錫メルカプト、ジブチル錫マレート、ジブチル錫マレートポリマー、ジオクチル錫マレート、ジオクチル錫マレートポリマー、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫ラウレートポリマー等の有機錫系熱安定剤;ステアリン酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、三塩基性硫酸鉛等の鉛系熱安定剤;カルシウム−亜鉛系熱安定剤;バリウム−亜鉛系熱安定剤;カドミウム−バリウム系熱安定剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、5重量部以下の範囲である。
また滑剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような滑剤としては、例えばパラフィンワックス系滑剤、ポリオレフィンワックス系滑剤、ステアリン酸系滑剤、アルコール系滑剤、エステル系滑剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、3重量部以下の範囲である。
さらに安定化助剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような安定化助剤としては、例えばエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化テトラヒドロフタレート、エポキシ化ポリブタジエン、燐酸エステル等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、3重量部以下の範囲である。
また加工助剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような加工助剤としては、例えばアクリル酸−n−ブチル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル共重合体、アクリル酸−2−エチルヘキシル/メタクリル酸メチル/メタクリル酸−n−ブチル共重合体等のアクリル系加工助剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、10重量部以下の範囲である。
さらに充填剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような充填剤としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸リチウム、カオリングレー、石膏、マイカ、タルク、水酸化マグネシウム、珪酸カルシウム、硼砂等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、1000重量部以下の範囲である。
また酸化防止剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような酸化防止剤としては、例えばフェノール系抗酸化剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、5重量部以下の範囲である。
さらに光安定剤としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような光安定剤としては、例えばサリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系の光安定剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、5重量部以下の範囲である。
また顔料としては、特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲のものを用いることができる。そのような顔料としては、例えばアゾ系、フタロシアニン系、スレン系、染料レーキ系等の有機顔料;酸化物系、クロム酸モリブデン系、硫化物・セレン化物系、フェロシアン化物系等の無機顔料等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、5重量部以下の範囲である。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂は、可塑剤を添加しなくとも、得られる軟質成形体は耐γ線性に優れたものが得られるが、軟質成形体の柔軟性を調整するために本発明の目的を損なわない限り可塑剤を配合添加しても良い。そのような可塑剤としては、例えばジ−2−エチルヘキシルフタレート(以下DOPと略す)、ジ−n−オクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジブチルフタレート等のフタル酸エステル系可塑剤;トリクレジルフォスフェート、トリキシリルホスフェート、トリフェニルフォスフェート等のリン酸エステル系可塑剤;ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等の脂肪酸エステル系可塑剤等が挙げられ、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。またその使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良いが、使用する場合には、好ましくは塩化ビニル系共重合樹脂100重量部に対し、100重量部以下の範囲である。
その他、本発明の目的を損なわない範囲の難燃剤、帯電防止剤、強化剤、改質剤等も必要に応じて適宜配合することができ、その使用量も特に限定されず、本発明の目的を損なわない範囲であれば良い。
本発明で使用される塩化ビニル系共重合樹脂組成物の製造方法には特に限定はなく、塩化ビニル系共重合樹脂を所定量配合し、要すれば使用される各種添加剤(熱安定剤、滑剤、安定化助剤、加工助剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、顔料、可塑剤、さらには難燃剤、帯電防止剤、強化剤、改質剤等)を配合したものを、例えばリボンブレンダー、スーパーミキサー、タンブラーミキサー、バンバリーミキサー、ヘンシェルミキサー、ミキシングロール等の混合機および/または混合混練機等を用いて、ホットブレンドまたはコールドブレンド等の常法によって均一に混合または混合混練するなどの方法で製造すれば良い。その際の配合順序等に特に限定はなく、本発明の目的を損なわない範囲の技術を任意に用いることができる。例えば塩化ビニル系共重合樹脂および各種添加剤を一括して配合する方法、液状の添加剤を均一に配合する目的で先に塩化ビニル系共重合樹脂、粉粒体の各種添加剤を配合したのち液状添加剤を配合する方法または先に塩化ビニル系共重合樹脂を配合したのち液状添加剤を配合し、最後に粉粒体の各種添加剤を配合する方法、等を用いることができる。
このようにして製造された塩化ビニル系共重合樹脂組成物を本発明の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体に成形加工する際には、そのまま各種成形加工に供しても良いし、さらにコニーダー、押出機、ペレタイザー等の混練機および/または混練造粒機等を用いて混練または混練造粒したのち、各種成形加工に供しても良い。
こうして得られた成形体の用途としては、特に限定されるものではないが、例えば、輸液バッグ、血液バッグ、薬液容器、チューブ、各種チップ、セル、キャップ、カテーテル、ブリスターパック等の医療用成形体、食品包装用成形体、食品容器等が挙げられる。
次に本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。ここで、特に断りのない限り、実施例中の「部」は「重量部」を、「%」は「重量%」を意味する。なお成形体の硬度および耐γ線性の評価方法は下記の通りである。
<硬度の評価方法>
JIS K 7215に規定のプラスチックのデュロメータ硬さ試験方法に準じ、成形体を室温23℃および相対湿度50%の恒温恒湿室中に88時間静置し、該恒温恒湿室中でタイプAデュロメーターを用いて硬度(以下HDAと略す)を評価した。
<耐γ線性の評価方法>
成形体を遮光状態且つ無酸素状態にして25kGyのγ線を照射し、照射前後の変色度合いを目視観察して、以下の基準に従い○、△、×の3段階で評価した。
<硬度の評価方法>
JIS K 7215に規定のプラスチックのデュロメータ硬さ試験方法に準じ、成形体を室温23℃および相対湿度50%の恒温恒湿室中に88時間静置し、該恒温恒湿室中でタイプAデュロメーターを用いて硬度(以下HDAと略す)を評価した。
<耐γ線性の評価方法>
成形体を遮光状態且つ無酸素状態にして25kGyのγ線を照射し、照射前後の変色度合いを目視観察して、以下の基準に従い○、△、×の3段階で評価した。
○:変色が殆どない
△:変色がやや起こる
×:変色がひどく実用に耐えない
<二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの製造>
二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの製造は、下記の製造例に示す手順に従って行った。
△:変色がやや起こる
×:変色がひどく実用に耐えない
<二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの製造>
二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーの製造は、下記の製造例に示す手順に従って行った。
(製造例1)
還流管および攪拌機付きの2Lのセパラブルフラスコに、CuBr(5.54g)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(73.8ml)を加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸−n−ブチル(132g)、2−ブロモプロピオン酸メチル(7.2ml)、ペンタメチルジエチレントリアミン(4.69ml)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸−n−ブチル(528g)を90分かけて連続的に滴下し、さらに80分間加熱攪拌した。
還流管および攪拌機付きの2Lのセパラブルフラスコに、CuBr(5.54g)を仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル(73.8ml)を加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにアクリル酸−n−ブチル(132g)、2−ブロモプロピオン酸メチル(7.2ml)、ペンタメチルジエチレントリアミン(4.69ml)を加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、アクリル酸−n−ブチル(528g)を90分かけて連続的に滴下し、さらに80分間加熱攪拌した。
反応混合物をトルエンで希釈し、活性アルミナカラムを通したのち、揮発分を減圧留去することにより、片末端Br基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)を得た。
フラスコに、メタノール(800ml)を仕込み、0℃に冷却した。そこへ、t−ブトキシカリウム(130g)を数回に分けて加えた。この反応溶液を0℃に保持して、アクリル酸(100g)のメタノール溶液を滴下した。滴下終了後、反応液の温度を0℃から室温に戻したのち、反応液の揮発分を減圧留去することにより、アクリル酸カリウム(CH2=CHCO2K)を得た。
還流管付き500mLフラスコに、得られた片末端Br基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)(150g)、アクリル酸カリウム(7.45g)、ジメチルアセトアミド(150ml)を仕込み、70℃で3時間加熱攪拌した。反応混合物よりジメチルアセトアミドを留去し、トルエンに溶解させ、活性アルミナカラムを通したのち、トルエンを留去することにより片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマーを得た。
<塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂の製造>
塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂の製造は、下記の製造例に示す手順に従って行った。
<塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂の製造>
塩化ビニル系モノマーと二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂の製造は、下記の製造例に示す手順に従って行った。
(製造例A)(A)塩化ビニル系モノマーと(B)マクロモノマーの比率が(A)/(B)=80%/20%である塩化ビニル系共重合樹脂の製造
ジャケットおよび攪拌機を備えた内容量25リットルのステンレス鋼製重合反応機を脱気したのち塩化ビニルモノマー80部を仕込み、次いで製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー20部を仕込んだのち、ジャケットに温水を通じて重合反応機内温を30℃まで昇温し、1分間当たり900回転の回転速度で5分間攪拌した。ジャケットに水を通じて重合反応機内温を20℃以下まで冷却したのち、鹸化度約80モル%、平均重合度約2000の部分鹸化ポリ酢酸ビニル0.1部、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト0.03部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート0.01部を仕込んだのち60℃の温水150部を仕込み、重合温度57℃で約6時間重合した。重合機内の未反応モノマーを回収したのち重合機を冷却し、スラリーを払い出した。得られたスラリーを脱水して熱風乾燥機にて55℃で24時間乾燥し、塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Aを白色粉末として得た。
ジャケットおよび攪拌機を備えた内容量25リットルのステンレス鋼製重合反応機を脱気したのち塩化ビニルモノマー80部を仕込み、次いで製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー20部を仕込んだのち、ジャケットに温水を通じて重合反応機内温を30℃まで昇温し、1分間当たり900回転の回転速度で5分間攪拌した。ジャケットに水を通じて重合反応機内温を20℃以下まで冷却したのち、鹸化度約80モル%、平均重合度約2000の部分鹸化ポリ酢酸ビニル0.1部、t−ブチルパーオキシネオデカノエイト0.03部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート0.01部を仕込んだのち60℃の温水150部を仕込み、重合温度57℃で約6時間重合した。重合機内の未反応モノマーを回収したのち重合機を冷却し、スラリーを払い出した。得られたスラリーを脱水して熱風乾燥機にて55℃で24時間乾燥し、塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Aを白色粉末として得た。
(製造例B)(A)塩化ビニル系モノマーと(B)マクロモノマーの比率が(A)/(B)=70%/30%である塩化ビニル系共重合樹脂の製造
製造例Aにおいて、塩化ビニルモノマー70部および製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー30部を仕込んだこと以外は、製造例Aと同様にして、塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Bを白色粉末として得た。
製造例Aにおいて、塩化ビニルモノマー70部および製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー30部を仕込んだこと以外は、製造例Aと同様にして、塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Bを白色粉末として得た。
(製造例C)(A)塩化ビニル系モノマーと(B)マクロモノマーの比率が(A)/(B)=60%/40%である塩化ビニル系共重合樹脂の製造
製造例Aにおいて、塩化ビニルモノマー60部および製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー40部を仕込んだこと以外は、製造例Aと同様にして、塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Cを白色粉末として得た。
製造例Aにおいて、塩化ビニルモノマー60部および製造例1の片末端アクリロイル基ポリ(アクリル酸−n−ブチル)マクロモノマー40部を仕込んだこと以外は、製造例Aと同様にして、塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Cを白色粉末として得た。
(実施例1)
製造例Aで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂A100部に対し、有機錫系熱安定剤(TVS#8831:日東化成株式会社製、ジオクチル錫メルカプト)2.0部、モンタン系滑剤(WAX−OP:クラリアントジャパン株式会社製)0.2部を、ヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が110℃になるまで混合し、その後50℃以下まで冷却して塩化ビニル系共重合樹脂組成物を得た。該組成物を日本ロール社製H0S−2103型8インチロール(外径約20cm)を用いて、前ロール20rpm、後ロール18rpm、150℃、5分間ロールの条件で、厚さ約1mmのロールシートを作製した。得られたロールシートを所定の大きさに切り分けたのち数十枚重ね合わせ、神藤金属工業社製シンドー式SF型油圧プレス機を用いて160℃、圧力5MPaで約10分間プレスして厚さ5mmのテストプレートを作製し、硬度及び耐γ線性の測定に供した。結果を表1に示す。
製造例Aで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂A100部に対し、有機錫系熱安定剤(TVS#8831:日東化成株式会社製、ジオクチル錫メルカプト)2.0部、モンタン系滑剤(WAX−OP:クラリアントジャパン株式会社製)0.2部を、ヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が110℃になるまで混合し、その後50℃以下まで冷却して塩化ビニル系共重合樹脂組成物を得た。該組成物を日本ロール社製H0S−2103型8インチロール(外径約20cm)を用いて、前ロール20rpm、後ロール18rpm、150℃、5分間ロールの条件で、厚さ約1mmのロールシートを作製した。得られたロールシートを所定の大きさに切り分けたのち数十枚重ね合わせ、神藤金属工業社製シンドー式SF型油圧プレス機を用いて160℃、圧力5MPaで約10分間プレスして厚さ5mmのテストプレートを作製し、硬度及び耐γ線性の測定に供した。結果を表1に示す。
(実施例2)
製造例Bで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂B100部に対し、有機錫系熱安定剤(TVS#8831:日東化成株式会社製、ジオクチル錫メルカプト)2.0部を、ヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が70℃になるまで混合し、その後50℃以下まで冷却して塩化ビニル系共重合樹脂組成物を得た。該組成物を日本ロール社製H0S−2103型8インチロール(外径約20cm)を用いて、前ロール20rpm、後ロール18rpm、140℃、5分間ロールの条件で、厚さ約1mmのロールシートを作製した。得られたロールシートを所定の大きさに切り分けたのち数十枚重ね合わせ、神藤金属工業社製シンドー式SF型油圧プレス機を用いて150℃、圧力5MPaで約10分間プレスして厚さ5mmのテストプレートを作製し、硬度及び耐γ線性の測定に供した。結果を表1に示す。
製造例Bで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂B100部に対し、有機錫系熱安定剤(TVS#8831:日東化成株式会社製、ジオクチル錫メルカプト)2.0部を、ヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が70℃になるまで混合し、その後50℃以下まで冷却して塩化ビニル系共重合樹脂組成物を得た。該組成物を日本ロール社製H0S−2103型8インチロール(外径約20cm)を用いて、前ロール20rpm、後ロール18rpm、140℃、5分間ロールの条件で、厚さ約1mmのロールシートを作製した。得られたロールシートを所定の大きさに切り分けたのち数十枚重ね合わせ、神藤金属工業社製シンドー式SF型油圧プレス機を用いて150℃、圧力5MPaで約10分間プレスして厚さ5mmのテストプレートを作製し、硬度及び耐γ線性の測定に供した。結果を表1に示す。
(実施例3)
実施例2において、製造例Bで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Bの代わりに、製造例Cで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Cを用いたこと以外は、実施例2と同様にして塩化ビニル系共重合樹脂組成物を得た。該組成物を日本ロール社製H0S−2103型8インチロール(外径約20cm)を用いて、前ロール20rpm、後ロール18rpm、130℃、5分間ロールの条件で、厚さ約1mmのロールシートを作製した。得られたロールシートを所定の大きさに切り分けたのち数十枚重ね合わせ、神藤金属工業社製シンドー式SF型油圧プレス機を用いて140℃、圧力5MPaで約10分間プレスして厚さ5mmのテストプレートを作製し、硬度及び耐γ線性の測定に供した。結果を表1に示す。
実施例2において、製造例Bで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Bの代わりに、製造例Cで得た塩化ビニル/ポリ(アクリル酸−n−ブチル)グラフト共重合樹脂Cを用いたこと以外は、実施例2と同様にして塩化ビニル系共重合樹脂組成物を得た。該組成物を日本ロール社製H0S−2103型8インチロール(外径約20cm)を用いて、前ロール20rpm、後ロール18rpm、130℃、5分間ロールの条件で、厚さ約1mmのロールシートを作製した。得られたロールシートを所定の大きさに切り分けたのち数十枚重ね合わせ、神藤金属工業社製シンドー式SF型油圧プレス機を用いて140℃、圧力5MPaで約10分間プレスして厚さ5mmのテストプレートを作製し、硬度及び耐γ線性の測定に供した。結果を表1に示す。
(比較例1)
一般用ポリ塩化ビニル樹脂(カネビニールS1001:株式会社カネカ製、塩化ビニル単独重合樹脂、K値66.5)100部に対し、有機錫系熱安定剤(TVS#8831:日東化成株式会社製、ジオクチル錫メルカプト)2.0部、モンタン系滑剤(WAX−OP:クラリアントジャパン株式会社製)0.2部、さらに可塑剤としてDOP(株式会社ジェイプラス製、商品名DOP)20部を、ヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が110℃になるまで混合し、その後50℃以下まで冷却して塩化ビニル樹脂組成物を得た。該組成物から実施例1と同様の方法を用いてテストプレートを成形し、実施例1と同様の方法で硬度および耐γ線性を評価した。結果を表1に示す。実施例1とほぼ同等の硬度を有する成形体が得られるが、耐γ線性は全ての実施例より劣り、好ましくない。
一般用ポリ塩化ビニル樹脂(カネビニールS1001:株式会社カネカ製、塩化ビニル単独重合樹脂、K値66.5)100部に対し、有機錫系熱安定剤(TVS#8831:日東化成株式会社製、ジオクチル錫メルカプト)2.0部、モンタン系滑剤(WAX−OP:クラリアントジャパン株式会社製)0.2部、さらに可塑剤としてDOP(株式会社ジェイプラス製、商品名DOP)20部を、ヘンシェルミキサーを用いて樹脂温度が110℃になるまで混合し、その後50℃以下まで冷却して塩化ビニル樹脂組成物を得た。該組成物から実施例1と同様の方法を用いてテストプレートを成形し、実施例1と同様の方法で硬度および耐γ線性を評価した。結果を表1に示す。実施例1とほぼ同等の硬度を有する成形体が得られるが、耐γ線性は全ての実施例より劣り、好ましくない。
(比較例2)
比較例1において、可塑剤DOPを40部配合したこと以外は比較例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物を得、該組成物から実施例3と同様の方法を用いてテストプレートを成形し、硬度および耐γ線性を評価した。結果を表1に示す。実施例3とほぼ同等の硬度を有する成形体が得られるが、耐γ線性は全ての実施例より劣り、好ましくない。
比較例1において、可塑剤DOPを40部配合したこと以外は比較例1と同様にして塩化ビニル樹脂組成物を得、該組成物から実施例3と同様の方法を用いてテストプレートを成形し、硬度および耐γ線性を評価した。結果を表1に示す。実施例3とほぼ同等の硬度を有する成形体が得られるが、耐γ線性は全ての実施例より劣り、好ましくない。
Claims (3)
- (A)塩化ビニル系モノマーと、(B)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマー、とを共重合して得られる塩化ビニル系共重合樹脂を主成分として含有する塩化ビニル系共重合樹脂組成物から得られる、塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体。
- 塩化ビニル系共重合樹脂が、(A)塩化ビニル系モノマーと(B)二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーとを、(A)/(B)=80重量%/20重量%〜60重量%/40重量%の範囲で共重合して得られたものであることを特徴とする、請求項1に記載の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体。
- 二重結合を含有するエチレン性不飽和モノマーからなる重合体を主鎖に有するマクロモノマーが重合性反応基を有し、該重合性反応基が、1分子あたり少なくとも1個、下記一般式:
−OC(O)C(R)=CH2
(式中、Rは水素、又は、炭素数1〜20の有機基を表す。)
を含む構造であることを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載の塩化ビニル系耐γ線性軟質成形体。
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JP2018044088A (ja) * | 2016-09-15 | 2018-03-22 | タイガースポリマー株式会社 | 耐放射線塩化ビニル樹脂組成物および耐放射線塩化ビニル樹脂組成物を含む可撓性ホースおよび可撓性チューブ |
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2006
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