JP2006297831A - ポリマーフィルム並びにそれを用いた光学フィルム、偏光板及び画像表示装置 - Google Patents

ポリマーフィルム並びにそれを用いた光学フィルム、偏光板及び画像表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 反射防止層、防眩層、ハードコート層、光学異方層等の光学機能層を形成した光学機能性層をポリマー層上に塗布により形成されたポリマーフィルムにおいて、光学機能性層とポリマーフィルムとの密着性を改善すること。また、ポリマーフィルムの厚みムラを小さくしてポリマーフィルムの厚みムラを改善する。さらに、厚みムラの改善されたポリマーフィルムをディスプレイに適用し、優れた表示性能を実現すること。
【解決手段】
表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層A上に、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bが形成されていることを特徴とするポリマーフィルム。該ポリマーフィルムを用いた光学フィルム、さらに該光学フィルムを用いた偏光板。該光学フィルムを装着した画像表示装置。
【選択図】 なし

Description

本発明は、ディスプレイの表示品位の改善に使用される光学フィルム、該光学フィルムを使用した偏光板、さらには該偏光板を使用した液晶表示装置に関する。
基材上への溶液塗布による膜形成においては、基材への塗布溶液の濡れ性、言い換えれば基材の表面エネルギーと溶液の表面張力を調節することが、膜の厚みムラ防止、膜のハジキ防止、基材と膜の密着確保の観点で重要である。
従来は、基材の表面エネルギーを調節することは難しく、溶液の表面張力を調節することが行われてきた。例えば、溶液に使用される溶媒として基材との濡れ性がよいものを選択する、あるいは基材上に塗布された溶液膜に乾燥中に生じた厚みムラをレベリングさせるためにレベリング剤を溶液に添加することが行われてきた(特許文献1および2)。
また、溶剤を選択する際には基材との濡れ性だけでなく、塗布溶液中に含まれる無機微粒子の分散性も考慮する必要があり、濡れ性を向上させるために無機微粒子に表面処理を施す必要が生じる等、材料設計が複雑になる(特許文献3)。
基材の表面エネルギーの増大(親水化)はアルカリ処理、酸処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線照射、表面エネルギーの高い層塗設、等の処理により表面エネルギーを大きくし、基材と水、アルコール等の極性溶媒との濡れ性を改善することが行われてきた(特許文献4)。また他の親水化手段としては、プラズマ処理(特許文献5)も挙げられる。
特開2004−122119号公報 特開平8−309251号公報 特開2004−371234号公報 特開2002−192656号公報 特開2000−356714号公報
本発明は、ディスプレイに使用される反射防止層、防眩層、ハードコート層、光学異方層等の光学機能層を形成した光学フィルムにおいて、ポリマーフィルム上に塗布により形成される前記光学機能性層とポリマーフィルムとの密着性を改善することを目的とする。
また、ポリマーフィルムの厚みムラを小さくすることにより光学フィルムの厚みムラ起因のムラを改善することを目的とする。
さらに、本発明は前記の厚みムラの改善された光学フィルムをディスプレイに適用し、優れた表示性能を実現することを目的とする。
本発明者は、最近の市場の高まりつつあるニーズに対処するには、上記特許文献4及び5で開示された光学機能層とポリマーフィルム(ポリマー層A)との密着性改良手段では密着性が確保できない場合が発生、鋭意検討した結果、表面エネルギーを特定の疎水的な範囲に設定すると、その層を積層構成にしたときの層間の界面エネルギーが有機溶媒に対する濡れ性向上に好適な範囲になり、層間、例えば光学機能層と層Bの界面、の密着性が改善されることを見出した。
この発見に基いて、ポリマーフィルム上に表面エネルギーを小さくする層を設け、さらに前記層の表面エネルギーと光学機能層を形成するための塗布液の溶剤の表面張力を適切な関係に調整する密着性改良方法、前記層の表面エネルギーと塗膜の表面エネルギーを適切な関係に調整する密着性改良方法、及びこれらを利用して前記光学機能性層とポリマーフィルム(ポリマー層A)との密着性を改善できる方法を見出し、本発明を完成するに至った。また、ポリマーフィルム上に表面エネルギーの小さな材料と表面張力の小さな溶媒からなる層を設けることによりポリマーフィルム表面のレベリングが生じポリマーフィルムの厚みムラが小さくなることを見出し、平面性向上の面からも本発明の密着性向上の目的が達せられることを見出すに至った。さらに、ポリマーフィルムを溶液流延する際の支持体からの剥離時の残留溶剤量を適切な範囲とすること、および延伸処理を行うことによりポリマーフィルムの厚みムラを改善し、結果として光学フィルムにおけるムラを改善できることを見出した。
すなわち、本発明は、これらの関連するあらたなに見出された現象に基いてなされたものであって、下記(1)〜(20)のポリマーフィルム、(21)の偏光板、(22)の液晶表示板から構成される。
(1)表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層A上に、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bが形成されていることを特徴とするポリマーフィルム。
(2)表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bの厚みが5μm以下であることを特徴とする上記(1)に記載のポリマーフィルム。
(3)表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層A上に、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bが形成されているポリマーフィルムであって、表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層Aの表面エネルギーの分散力成分γA d、極性力成分γA p、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bの表面エネルギーの分散力成分γB d、極性力成分γB pがそれぞれ下記式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のポリマーフィルム。
式(1) γA d≧30mN/m
式(2) γA p≧10mN/m
式(3) γB d<35mN/m
式(4) γB p<15mN/m
(4)上記ポリマー層Aの表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(5)上記層Bが形成されている面と反対の面にさらに表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層Cが形成されていることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(6)表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層Cの表面エネルギーの分散力成分γC d、極性力成分γC pがそれぞれ下記式(5)、(6)を満たすことを特徴とする上記(4)に記載のポリマーフィルム。
式(5) γC d≧30mN/m
式(6) γC p≧20mN/m
(7)上記層B 上に光学機能層を塗布により形成したポリマーフィルムであって、層Bが有する表面エネルギーγBと該光学機能層の塗布液の溶剤の表面張力γLが下記式(7)を満足することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
式(7) γL≦γB≦γL+10
(8)上記層B上に光学機能層を塗布により形成したポリマーフィルムであって、層Bが有する表面エネルギーγBと該光学機能層を形成するポリマー成分の表面エネルギーγPが下記式(8)を満足することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
式(8) γP−10≦γB≦γP+10
(9)上記層B上および層Cが共流延で形成されたことを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(10)ポリマーフィルムAポリマー層Aが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(9)、(10)を満たすことを特徴とする上記(1)〜(9)いずれかに記載のポリマーフィルム。
数式(9):2.5≦A+B<2.95
数式(10):0≦B
(ただし、本明細書においては、式(10)が等号の場合のアシル置換エステルも混合脂肪酸エステルに含まれるものとする。)
(11)上記層Bが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(11)、(12)を満たすことを特徴とする上記(1)〜(10)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
数式(11):2.95≦A+B<3.0
数式(12):0≦B≦0.5
(ただし、本明細書においては、式(12)が等号の場合のアシル置換エステルも混合脂肪酸エステルに含まれるものとする。)
(12)上記層Bが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(13)、(14)を満たすことを特徴とする上記(1)〜(11)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
数式(13):2.5≦A+B<3.0
数式(14):0.5<B
(13)上記層Bが、(メタ)アクリル酸エステルポリマーまたはビニルエステルポリマーの炭素原子数が2以上の置換基を有するポリマーからなることを特徴とする上記(1)〜(12)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(14)上記層Cが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(15)、(16)を満たすことを特徴とする上記(1)〜(13)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
数式(15):0.5≦A+B<2.2
数式(16):0≦B
(ただし、本明細書においては、式(16)が等号の場合のアシル置換エステルも混合脂肪酸エステルに含まれるものとする。)
(15)ポリマーフィルムの厚みムラがピッチ5mm以上、高さ3μm以下であることを特徴とする上記(1)〜(14)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(16)ポリマーフィルムの厚みムラの傾斜が0.3μm/mm以下であることを特徴とする上記(1)〜(15)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(17)ポリマーフィルムが延伸フィルムであることを特徴とする上記(1)〜(16)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(18)ポリマーフィルムが溶液流延により製膜されたものであり、支持体から剥離されるときの残留溶剤量が100質量%以下であることを特徴とする上記(1)〜(17)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(19)光学機能層とポリマーフィルムの密着がJIS K5600−5−6に定められたクロスカットセロテープ剥離試験で2点以下であることを特徴とする上記(1)〜(18)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(20)光学機能層が反射防止層、防眩層、ハードコート層、光学異方層のうちのいずれか、またはこれらの複数層が積層された層であることを特徴とする上記(1)〜(19)のいずれかに記載のポリマーフィルム。
(21)偏光子を保護フィルムで狭持してなる偏光板であって、保護フィルムの少なくとも一方が上記(20)に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
(22)液晶セルの少なくとも一方に偏光板を配置してなる液晶表示装置であって、偏光板のうち少なくとも一枚が上記(21)記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
光学フィルムの構成層の表面エネルギー(即ち積層したときの積層された層間の界面エネルギー)を調整することを特徴とする本発明によって、ポリマーフィルム上に形成される前記光学機能性層とポリマーフィルムとの密着性が向上する。また、ポリマーフィルムの厚みムラが小さくなり、その結果光学フィルムの厚みムラ起因のムラが低減される。
さらに、本発明は前記の厚みムラの改善された光学フィルムをディスプレイに適用し、優れた表示性能を実現することができる。
以下、本は詰めのポリマーフィルム、それを用いた光学フィルム、さらにそれを用いた変更版や液晶表示装置について詳細に説明する。
(表面エネルギーが45mN/m以上のポリマーフィルム)
表面エネルギーが45mN/m以上のポリマーフィルムとしては、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基によって置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(9)、(10)を満たすものを用いることが、透明性、偏光板作製プロセスにおける適度な透湿性及びコストの点で好ましい。置換度Bが0、すなわちセルロースアセテートは耐久性や寸度安定性に優れる。
数式(9):2.5≦A+B<2.95
数式(10):0≦B
反射防止フィルム等のように表示装置の表面に用いる光学フィルムの用途では光学異方性の値は特に限定しないが、液晶表示装置に用いる偏光板の場合、液晶セル側に用いる光学フィルムの用途ではRe値およびRth値が下記式を満たすことが好ましい。
数式(2):0nm≦Re590≦200nm
数式(3):0nm≦Rth590≦400nm
[式中、Re590、Rth590は、波長λ=590nmにおける正面レターデーションRe及び厚み方向レターデーションRthの値(単位:nm)である。]
上記式の範囲にRe値、Rth値を調節するために、ポリマーフィルムが、棒状化合物又は円盤状化合物のレターデーション発現剤を1種以上含有していてもよい。また、幅方向、長手方向に延伸を行ってもよい。
(表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層を形成する材料)
表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層を形成する材料としては、低分子材料、高分子材料のいずれも用いることが出来る。また無機材料、有機材料のいずれも用いることができる。溶剤を塗布することや、膜の強度、膜の形成のしやすさの点で有機高分子材料を用いることも好ましい。
表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bとして好ましい層は、セルロースの水酸基がアセチル基及び好ましくは更に炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースエステルの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(11)、(12)を満たすものが挙げられる。
数式(11):2.95≦A+B<3.0
数式(12):0≦B≦0.5
表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bの別の例としては、セルロースの水酸基がアセチル基及び好ましくは更に炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(13)、(14)を満たすものが挙げられる。炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bを0.5よりも大きくすることにより、総置換度A+Bを小さくしても表面エネルギーのうち極性力成分を小さくすることができ、表面エネルギーを小さくすることができる。
数式(13):2.5≦A+B<3.0
数式(14):0.5<B
上記のセルロースセルロースアシレート以外の例としてはポリビニルアセテート、ポリビニルプロピオネート、ポリビニルブチレート等のポリビニルエステルポリマー、ポリエチルアクリレート、ポリ(n−ブチルアクリレート)等のアクリルポリマー、ポリエチルメタクリレート、ポリ(n−プロピルメタクリレート)、ポリ(n−ブチルメタクリレート)、ポリ(n−ヘキシルメタクリレート)等のメタクリレートポリマー、が挙げられる。
上記のポリマーの水素原子をフッ素等のハロゲン原子で置換することで更に表面エネルギーを小さくすることができるが、ポリマーフィルムの表面エネルギーを20mN/m未満とすると、この表面上で十分な濡れ性を示す表面張力の小さな溶剤がほとんどなく、ポリマーフィルム上での良好な塗工性が確保できないため好ましくない。
(表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層を形成する材料)
表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層を形成する材料としては、セルロースの水酸基がアセチル基及び好ましくは更に炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(15)、(16)を満たすものを使うことができる。
数式(15):0.5≦A+B<2.2
数式(16):0≦B
その他にも、表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層は表面エネルギーが50mN/m未満の材料に、アルカリ処理、酸処理、コロナ処理、火炎処理、紫外線照射等の表面処理を施すことによっても得られる。表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層を設けることにより、表面エネルギーの大きな(親水性の高い)材料との密着性が向上する。
ポリマーフィルム作製後あるいはポリマーフィルム上に光学機能層を形成した後に上記の表面処理を行うことによりポリマーフィルムおよび光学機能層の性能が劣化する場合があるが、このような場合には上記数式(15)および(16)を満足する層を形成することにより表面処理を行わなくても表面エネルギーの大きな(親水性の高い)材料との密着性を確保することができる。
ポリマーフィルムの厚みムラはピッチが5mm以上、高さ3μm以下であることが好ましい。高さは2μm以下であることが更に好ましく、1μm以下であることが最も好ましい。また、厚みムラは高さが同一であってもピッチが広い、つまり傾斜が小さいと視認しにくくなるため傾斜は0.3μm/mm以下であることが好ましく、0.2μm/mmであることが更に好ましく、0.1μm/mm以下であることが最も好ましい。
上記のような厚みムラ、特に長手方向に発生するスジ状の厚みムラは、塗布液の流延のさいに支持体上で十分に乾燥しないうちにウェブを支持体から剥離すると、幅方向にウェブが収縮するために生じる。したがって、上記のようなポリマーフィルムの厚みムラは、幅方向に延伸することにより小さくすることができる。また、支持体上で十分に乾燥させる、つまり残留溶剤量を100質量%以下とすることによっても上記のようなポリマーフィルムの厚みムラを小さくすることができる。
ポリマー層A上に形成する表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bおよび表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層Cの厚みは5μm以下であることが好ましい。光学機能層と前記層Bおよび層Cとの密着を良くする為には5μm以下の厚みがあれば十分であり、前記層Bおよび層Cの厚みが5μmを超えると、層Bおよび層C内の破壊が生じやすくなり、密着性が悪くなる。
〔セルロースアシレートの合成方法〕
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位及び6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。
上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸及び触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロース及び系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解及びエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウム又は亜鉛の炭酸塩、酢酸塩又は酸化物)の水溶液を添加する。
次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度及び重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水もしくは希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(又は、セルロースアシレート溶液中に、水もしくは希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄及び安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
前記セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が、実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。
ここで『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上が0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、前記セルロースアシレートとしては低分子成分を除去したものが有用である。
低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロースアシレート100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
セルロースアシレートをフィルムの製造に使用する際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており含水率2.5〜5質量%が知られている。本発明では、セルロースアシレートの含水率を上記好適範囲とするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になる方法であれば特に限定されない。
前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、前記の特定のセルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ることができる。
〔添加剤〕
本発明において前記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、レターデーション(光学異方性)低下剤、波長分散調整剤、染料、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤及び剥離促進剤の少なくとも1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いたりすることができ、例えば特開2001−151901号公報などに記載されている。
[紫外線吸収剤]
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等を挙げることができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等を挙げることができる。
サリチル酸エステル系としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等を挙げることができる。
これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、且つ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不用な着色が少ないことから、好ましい。
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が0.001質量%以上であれば添加効果が十分に発揮されうるので好ましく、添加量が5質量%以下であればフィルム表面への紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制できるので好ましい。
また紫外線吸収剤は、セルロースアシレート溶解時に同時に添加してもよいし、溶解後のドープに添加してもよい。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができるので好ましい。
[劣化防止剤]
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
[可塑剤]
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等;カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えばジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、o−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、o−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等を挙げることができ、本発明に用いられる可塑剤はこれら例示の可塑剤から選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
[剥離促進剤]
剥離促進剤としては、クエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。
[赤外吸収剤]
さらに赤外吸収剤としては例えば特開2001−194522号公報に記載されている。
[添加時期等]
これらの添加剤を添加する時期は、ドープ作製工程において何れで添加してもよいが、ドープ調製工程の最後の調製工程に、添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。
また、セルロースアシレートフィルムが多層である場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば、特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。
これら添加剤の種類や添加量の選択によって、セルロースアシレートフィルムの動的粘弾性測定機「バイブロン:DVA−225」{アイティー計測制御(株)製)}で測定するガラス転移点Tgを70〜150℃に、引張試験機「ストログラフ−R2」{(株)東洋精機製作所製}で測定する弾性率を1500〜4000MPaすることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点Tgが80〜135℃、弾性率が1500〜3000MPaである。すなわち、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、偏光板加工や液晶表示装置組立ての工程適性の点で、ガラス転移点Tg、弾性率を上記の範囲とすることが好ましい。
さらに添加剤については、前記公技番号2001−1745号p.16以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
[レターデーション発現剤]
本発明では、光学補償フィルムとして使用するために、光学異方性を大きく発現させる場合には、好ましいレターデーション値を実現するために、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。本発明において用いることができるレターデーション発現剤としては、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも2つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、0.5〜20質量部であることがさらに好ましい。
円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5〜2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
円盤状化合物は、Rthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。
2種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
棒状又は円盤状化合物からなる前記レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
(円盤状化合物)
以下、円盤状化合物について説明する。
円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。
芳香族性ヘテロ環は、一般に最多の二重結合を有する。
ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が含まれる。芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環及び1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が円盤状化合物として好ましく用いられる。
前記円盤状化合物が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
2つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合及び(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環及びチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環及びキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環又は非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−又はそれらの組み合わせであることが好ましい。
組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
1:−CO−O−
2:−CO−NH−
3:−アルキレン−O−
4:−NH−CO−NH−
5:−NH−CO−O−
6:−O−CO−O−
7:−O−アルキレン−O−
8:−CO−アルケニレン−
9:−CO−アルケニレン−NH−
10:−CO−アルケニレン−O−
11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
14:−NH−CO−アルケニレン−
15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環及び連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は1〜8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基及び2−ジエチルアミノエチル基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は2〜8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基及び1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は2〜8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基及び1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は1〜10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基及びブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は1〜10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は1〜8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例えば、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基及びメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基及びエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は2〜10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基及びエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は1〜12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基及びオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は1〜8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基及びエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は1〜10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は1〜8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基及びn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は1〜10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基及び2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は2〜10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基及びジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は1〜8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基及びジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は2〜10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基及びモルホリノ基が含まれる。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい
(棒状化合物)
本発明では前述の円盤状化合物の他に、直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。
直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析又は分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト{例えば、“WinMOPAC2000”富士通(株)製}を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140゜以上であることを意味する。
棒状化合物としては、少なくとも2つの芳香族環を有するものが好ましく、少なくとも2つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(1)で表される化合物が好ましい。
一般式(1):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(1)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基を含む。アリール基及び置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基及び置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。
芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環又は7員環であることが好ましく、5員環又は6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は、一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子又は硫黄原子が好ましく、窒素原子又は硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環及びピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例えば、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例えば、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例えば、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N'−トリメチルウレイド基)、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例えば、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例えば、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基)、アシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例えば、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基)、アミド基(例えば、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基)及び非芳香族性複素環基(例えば、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
置換アリール基及び置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基及びアルキル基が好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基及びアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分及びアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基及び非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分及びアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基及びアルコキシ基が好ましい。
前記一般式(1)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基から選ばれる2価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜20であることが好ましく、より好ましくは1〜15であり、さらに好ましくは1〜10であり、さらに好ましくは1〜8であり、最も好ましくは1〜6である。
アルケニレン基及びアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルケニレン基及びアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2〜10であり、より好ましくは2〜8であり、さらに好ましくは2〜6であり、さらに好ましくは2〜4であり、最も好ましくは2(ビニレン又はエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6〜20であることが好ましく、より好ましくは6〜16であり、さらに好ましくは6〜12である。
一般式(1)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140゜以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記一般式(2)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(2):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(2)において、Ar1及びAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
芳香族基の定義及び例は、一般式(1)のAr1及びAr2と同様である。また、L2及びL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−及びそれらの組み合わせからなる基より選ばれる2価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。アルキレン基の炭素原子数は1〜10であることが好ましく、より好ましくは1〜8であり、さらに好ましくは1〜6であり、さらに好ましくは1〜4であり、1又は2(メチレン又はエチレン)であることが最も好ましい。
2及びL3は、−O−CO−又は−CO−O−であることが特に好ましい。
一般式(2)において、Xは、1,4−シクロへキシレン、ビニレン又はエチニレンである。
一般式(1)又は(2)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の[化1]〜[化11]に記載の化合物が挙げられる。
その他、下記一般式(3)で表される化合物もまた好ましい。
一般式(3):
Figure 2006297831
(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R9及びR10は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を表し、R1、R2、R3、R4及びR5のうち少なくとも1つは電子供与性基を表す。R8は水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数2〜6のアルケニル基、炭素数2〜6のアルキニル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜12のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜12のアシルアミノ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。)
レターデーション発現剤のうち、一般式(3)で表される棒状化合物の具体例を以下に示す。
Figure 2006297831
Figure 2006297831
Figure 2006297831
Figure 2006297831
Figure 2006297831
Figure 2006297831
Figure 2006297831
溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて、最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、2種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法により合成できる。
文献としては、“Mol.Cryst.Liq.Cryst.”,53巻、p229(1979年)、同89巻、p93(1982年)、同145巻、p111(1987年)、同170巻、p43(1989年)、“J.Am.Chem.Soc.”,113巻、p1349(1991年)、同118巻、p5346(1996年)、同92巻、p1582ページ(1970年)、“J.Org.Chem.”,40巻、p420(1975年)、“Tetrahedron”,48巻16号、p3437(1992年)を挙げることができる。
[レターデーション低下剤]
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる場合に使用するレターデーション低下剤について説明する。
フィルム中のセルロースアシレートが、面内及び膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて、光学的異方性を十分に低下させ、Re及びRthをゼロ又はゼロに近くにすることができる。このためには、光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
(LogP値)
光学的異方性の低いセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のように、フィルム中のセルロースアシレートが面内及び膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0〜7である化合物が好ましい。化合物のlogP値が7以下であれば、セルロースアシレートとの相溶性が良好で、フィルムの白濁や粉吹きなどの不具合を生じにくいので好ましい。
また化合物のlogP値が0以上であれば、親水性が高くなりすぎることがなく、セルロースアシレートフィルムの耐水性を悪化させることがないので好ましい。logP値としてさらに好ましい範囲は1〜6であり、特に好ましい範囲は1.5〜5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS Z−7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法又は経験的方法により見積もることも可能である。
計算方法としては、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年)}、Viswanadhan’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,29巻、p163(1989年)}、Broto’s fragmentation法{“Eur.J.Med.Chem.−Chim.Theor.”,19巻、p71(1984年)}などが好ましく用いられるが、Crippen’s fragmentation法{“J.Chem.Inf.Comput.Sci.”,27巻、p21(1987年)}がより好ましい。
ある化合物のlogPの値が測定方法又は計算方法により異なる場合に、該化合物が上記の範囲内であるかどうかは、Crippen’s fragmentation法により判断することが好ましい。
(光学的異方性を低下する化合物の物性)
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有してもよいし、含有しなくてもよい。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01〜30質量%であることが好ましく、1〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。
光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学異方性を低下させる化合物を添加する時期は、ドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフィルムの中央部における該化合物の平均含有率の80〜99%であることが好ましい。光学異方性を低下させる化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより、表面及び中心部の化合物量を測定して求めることができる。
(光学異方性を低下させる化合物の具体例)
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させる化合物の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
Figure 2006297831
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[波長分散調整剤]
次ぎに、セルロースアシレートフィルムの波長分散を低下させる化合物について説明する。200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re400−Re700|及び|Rth400−Rth700|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことが好ましい。波長分散調整剤の含有により、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整することができる。ここで、Re400、Rth400は、波長λ=400nmにおける値、Re700、Rth700は、波長λ=700nmにおける値(いずれも単位:nm)を表す。このような化合物の添加量としては、0.1〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整できる。
セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの値は、一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。従って、相対的に小さい短波長側のRe、Rthを大きくすることによって、波長分散を平滑にすることが要求される。一方、200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は、短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースアシレートフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe、Rthの波長分散は、吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
従って、上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe、Rthの波長分散が短波長側で大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには、波長分散を調整する化合物は、セルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置では、より少ない電力で輝度を高めるために、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re400−Re700|及び|Rth400−Rth700|を低下させる化合物を、セルロースアシレートフィルムに添加する場合、分光透過率が優れていることが要求される。本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、且つ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は、揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であってもよいし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でもよい。
波長分散調整剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
(波長分散調整剤の添加量)
上記の本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの固形分に対して0.01〜30質量%であることが好ましく、0.1〜20質量%であることがより好ましく、0.2〜10質量%であることが特に好ましい。
(波長分散調整剤の添加の方法)
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上の化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期は、ドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれらの化合物だけに限定されるものではない。
[染料]
また本発明では、色相調整のための染料を添加してもよい。染料の含有量は、セルロースアシレートに対する質量割合で10〜1000ppmが好ましく、50〜500ppmが更に好ましい。この様に染料を含有させることにより、セルロースアシレートフィルムのライトパイピングが減少でき、黄色味を改良することができる。これらの化合物は、セルロースアシレート溶液の調製の際に、セルロースアシレートや溶媒と共に添加してもよいし、溶液調製中や調製後に添加してもよい。またインライン添加する紫外線吸収剤液に添加してもよい。特開平5−34858号公報に記載の染料を用いることができる。
[マット剤微粒子]
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和珪酸カルシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子は、珪素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。
二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見掛け比重が70g/L以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見掛け比重は90〜200g/L以上が好ましく、100〜200g/L以上がさらに好ましい。見掛け比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
マット剤として二酸化珪素微粒子を用いる場合の、その使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成するが、フィルム中では1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次粒子の平均粒子径は0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。該平均粒子径が1.5μm以下であればヘイズが強くなりすぎることがなく、また0.2μm以上であればきしみ防止効果が十分に発揮されるので好ましい。
微粒子の1次、2次粒子径は、フィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、「アエロジル」R972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600{以上、日本アエロジル(株)製}などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、「アエロジル」R976及びR811{以上、日本アエロジル(株)製}の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中で「アエロジル200V」、「アエロジルR972V」が、1次平均粒子径が20nm以下であり、且つ見掛け比重が70g/L以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において、2次平均粒子径の小さな粒子を含有するセルロースアシレートフィルムを得るためには、微粒子の分散液を調製する際いくつかの手法が考えられる。例えば、溶媒と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液を予め作製し、この微粒子分散液を、別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶媒に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明においては、これらの方法に限定されるものではないが、二酸化珪素微粒子を溶媒などと混合して分散するときの、二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。
分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2当たり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶媒は、低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては、特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶媒を用いることが好ましい。
次に、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートが溶解される前記有機溶媒について記述する。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と、塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
〔塩素系溶媒〕
本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し、流延・製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、その塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合ジクロロメタンは、有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが好ましい。
本発明で塩素系有機溶媒と併用される他の有機溶媒について以下に記す。
すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテル及びアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。2種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート及びペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトール等が挙げられる。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール及びシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組合せ例としては、以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール=75/8/5/5/7(質量部)
ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール=80/7/5/8(質量部)
ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール=80/10/10(質量部)、
ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン=70/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール=70/20/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール=60/20/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=70/10/10/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール=65/20/10/5(質量部)、
ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)。
〔非塩素系溶媒〕
次に、本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートの溶液を作製するに際して、好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し、流延・製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン及び、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトン及びエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、例えばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数は、いずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル及び酢酸ペンチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン及びアセチル酢酸メチルが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール及びフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。
以上の、セルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。
すなわち、非塩素系溶媒としては、上記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも1種又はそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数4〜7のケトン類又はアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒が炭素数1〜10のアルコール又は炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは、酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチル又はこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
第3の溶媒であるアルコールは、その炭化水素鎖が直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素鎖であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール及びシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、その炭化水素鎖の水素の一部又は全部がフッ素で置換されたフッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。
さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン及びキシレンが含まれる。
これらの第3の溶媒であるアルコール及び炭化水素は、単独で用いてもよいし、2種類以上の混合物で用いてもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとして、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、及びシクロヘキサノール、炭化水素として、シクロヘキサン、ヘキサンなどを挙げることができ、特に好ましくはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%、そして第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、そして第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであって3〜15質量%含まれることが好ましい。
以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には前記公技番号2001−1745号p.12−16に詳細に記載されている。
本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン=75/10/5/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=81/8/7/4(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=82/10/4/4(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=80/10/4/6(質量部)、
酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=80/10/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール=75/8/5/5/7(質量部)、
酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール=80/7/5/8(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/ブタノール=85/10/5(質量部)、
酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール=60/15/14/5/6(質量部)、
酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン=70/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール=70/20/5/5(質量部)、
酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール=60/20/10/5/5(質量部)、
酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール=50/20/20/5/5(質量部)、
ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン=65/10/10/5/5/5(質量部)、
アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール=65/20/10/5(質量部)、
アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)、
アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール=65/20/10/5(質量部)、
1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール=55/20/10/5/5/5(質量部)
などをあげることができる。
更に、下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=81/8/7/4(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法、
酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール=84/10/4/2(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法、
酢酸メチル/アセトン/エタノール=84/10/6(質量部)でセルロースアシレート溶液を作製し、濾過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法、
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
〔セルロースアシレート溶液特性〕
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを溶解させた溶液であり、その濃度は10〜30質量%の範囲であることが、製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。
セルロースアシレート溶液をこのような濃度範囲にする方法は、溶解する段階で所定の濃度になるようにしてもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に、後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明において好ましく用いられるセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
次に、本発明では、セルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にしたときの、希釈溶液中のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが、溶媒への溶解性の点で好ましい。会合分子量は18万〜900万であることがさらに好ましい。この会合分子量は、静的光散乱法で求めることができる。その際に、同時に求められる慣性半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性半径は20〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜+4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜+2×10-4である。
ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性半径及び第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定する。測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶媒に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお秤量は、吸湿を防ぐため、セルロースアシレートは、120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃、10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、及び溶媒を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過する。そして、濾過した溶液の静的光散乱を、光散乱測定装置“DLS−700”{大塚電子(株)製}を用い、25℃において30゜から140゜まで10゜間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率は、アッベ屈折系で求めた溶媒の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計“DRM−1021”{大塚電子(株)製}を用い、光散乱測定に用いた溶媒及び溶液を用いて測定する。
〔ドープの調製〕
次に、セルロースアシレートの流延・製膜用の溶液(ドープ)の調製について述べる。
セルロースアシレートの溶解方法は、特に限定されず、室温溶解法でもよく、また冷却溶解法又は高温溶解法、さらにはこれらの組み合わせで実施されてもよい。これらに関しては、例えば特開平5−163301号、特開昭61−106628号、特開昭58−127737号、特開平9−95544号、特開平10−95854号、特開平10−45950号、特開2000−53784号、特開平11−322946号、さらに特開平11−322947号、特開平2−276830号、特開2000−273239号、特開平11−71463号、特開平04−259511号、特開2000−273184号、特開平11−323017号、特開平11−302388号などの各公報にセルロースアシレート溶液の調製法として記載されている。
以上記載した、これらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、適宜本発明の範囲であれば、本発明においてもこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細、特に非塩素系溶媒系については、前記公技番号2001−1745号p.22−25に詳細に記載されており、その方法に従って実施することができる。さらに本発明において好ましく用いられるセルロースアシレートのドープ溶液については、通常、溶液濃縮、濾過が実施されるが、これらについては同様に前記公技番号2001−1745号p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合には、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で行われる。
セルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が以下に述べる範囲であることが、流延しやすく好ましい。これらの値は、試料溶液1mLをレオメーター“CLS 500”に、直径4cm/2°の“Steel Cone”(共にTA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・s)及び−5℃の貯蔵弾性率G'(Pa)を求める。なお試料溶液は、予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。
本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であることが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sで、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万であるのがよい。さらには、低温での動的貯蔵弾性率は大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は、動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は、−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paであることが好ましい。
本発明においては、前述の特定のセルロースアシレートを用いているので、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度で、しかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために、低い濃度で溶解してから濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて、溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
ドープ溶液は、流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には、絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルターを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルターを用いることが好ましい。フィルターの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、濾過圧力は1.6MPa以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更には1.0MPa以下、特に0.2MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜+70℃であり、より好ましくは−5〜+55℃である。
〔製膜〕
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液(ドープ)を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)から、エンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延し、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して、巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製するに際しては、まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)を、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40質量%となるように濃度を調整しておくことが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラム又はバンド上に流延する方法が好ましく採用され、特には金属支持体温度が−10〜20℃の範囲であることが好ましい。さらに本発明では、特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平07−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、及び特開平02−208650号の各公報に記載の方法を用いることができる。
[重層流延]
セルロースアシレート溶液は、金属支持体としての平滑なバンド上又はドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口から、セルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて、積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、及び特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することもでき、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、及び特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。さらに、特開昭56−162617号公報に記載の、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高粘度及び低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す、セルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更にまた、特開昭61−94724号及び特開昭61−94725号の各公報に記載の、外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。あるいはまた2個の流延口を用い、第一の流延口により金属支持体上に形成したフィルムを剥離した後、そのフィルムの金属支持体面に接していた側に第二の流延を行うことでより、複数の層のフィルムを作製することもでき、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法を挙げることができる。流延するセルロースアシレート溶液は、同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく、特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるためには、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、粘着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには、高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くなりがちで固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決法として、複数のセルロースアシレート溶液を、複数の流延口から相対的に少量ずつ流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことが可能になり、平面性も改善されて優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができる。
共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合には、金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さとして定義する。共流延の場合、前記の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。またコア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び紫外線吸収剤の少なくともいずれかを含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、あるいは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。さらに剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。さらにまた、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていてもよく、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。またさらに流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度も、スキン層とコア層で異なっていてもよく、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
[流延方法]
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるが、いずれも好ましく用いることができる。またここで挙げた方法以外にも、従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施することができ、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することにより、それぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用される、エンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。使用される加圧ダイは、金属支持体の上方に1基又は2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には、流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべての溶液温度が同一でもよく、又は工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
[乾燥]
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる、金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には、金属支持体(ドラム又はベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム又はベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム又はベルトを加熱し表面温度をコントロールする裏面液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度は、ドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。なお流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
[延伸処理]
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、延伸処理によりレターデーションを調整することが好ましい。特に、セルロースアシレートフィルムの面内レターデーション値を高い値とする場合には、積極的に幅方向に延伸する方法、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、及び特開平11−48271号の各公報などに記載されている、製造したフィルムを延伸する方法を用いることができる。
フィルムの延伸は、常温又は加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以下であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦又は横だけの一軸延伸でもよく、同時又は逐次2軸延伸でもよい。通常は1〜200%の延伸を行うが、好ましくは1〜100%、特に好ましくは1〜50%の延伸を行うのがよい。
液晶セルの光学異方性の補償及び偏光板を斜めから見た場合の光漏れの抑制のためには、面内レターデーション値が30nm以上の保護膜を用いることが好ましく、そのためには延伸処理を行ったセルロースアシレートフィルムが用いられる。具体的には、延伸倍率10%以上のものが好ましく、さらに好ましくは15%以上のものである。
上記の偏光板を斜めから見たときの光漏れの抑制のためには、偏光子の透過軸とセルロースアシレートフィルムの面内の遅相軸を平行に配置する必要がある。連続的に製造されるロールフィルム状の偏光子の透過軸は、一般的に、ロールフィルムの幅方向に平行であるので、前記ロールフィルム状の偏光子とロールフィルム状のセルロースアシレートフィルムからなる保護膜を連続的に貼り合せるためには、ロールフィルム状の保護膜の面内遅相軸は、フィルムの幅方向に平行であることが必要となる。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また延伸処理は、製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理してもよい。前者の場合には残留溶媒を含んだ状態で延伸を行ってもよく、残留溶媒量が2〜30質量%で好ましく延伸することができる。
乾燥後得られる、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムの膜厚は、使用目的によって異なり、通常、5〜500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用、特にVA液晶表示装置用としては、40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調整は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。
以上のようにして得られた、セルロースアシレートフィルムの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは、1ロール当たり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、ナーリングの幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであってもよい。
フィルムの幅方向のRe590値のばらつきは、±5nmであることが好ましく、±3nmであることが更に好ましい。また幅方向のRth590値のバラツキは±10nmが好ましく、±5nmであることが更に好ましい。また、長さ方向のRe値、及びRth値のバラツキも、幅方向のバラツキの範囲内であることが好ましい。
〔セルロースアシレートフィルムの光学特性〕
本明細書において、Reλ、Rthλは、それぞれ波長λにおける面内のリターデーション及び厚さ方向のリターデーションを表す。これらの値はポリマーフィルムを光学補償フィルムとして用いる場合に重量な値となる。Reλは“KOBRA 21ADH”{王子計測機器(株)製}において、波長λnmの光をフィルムの法線方向に入射させて測定される。Rthλは、前記Reλ、面内の遅相軸(“KOBRA 21ADH”により判断される)を傾斜軸(回転軸)として、フィルム法線方向に対して+50°から−50°まで10°おきにリターデーション値を測定し、測定したレターデーション値を基に“KOBRA 21ADH”が算出する。
ここで平均屈折率の仮定値は、ポリマーハンドブック(John Wiley & Sons,Inc.)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについては、アッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:
セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)。
また、これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHによりnx(遅相軸方向の屈折率)、ny(進相軸方向の屈折率)、nz(厚み方向の屈折率)を算出する。また“KOBRA 21ADH”は、面内の遅相軸を傾斜軸とした場合の、フィルム内部を伝播する光に対してレターデーション値が最小となるフィルム法線方向に対する角度βも算出する。
Reλレターデーション値、Rthλレターデーション値が、それぞれ、以下の数式(2)、(3)を満たすことが、液晶表示装置、特にVAモード液晶表示装置の視野角を広くするために好ましい。また特にセルロースアシレートフィルムが、偏光板の液晶セル側の保護膜に用いられる場合に好ましい。
数式(2):0nm≦Re590≦200nm
数式(3):0nm≦Rth590≦400nm
[式中、Re590、Rth590は、波長λ=590nmにおける値(単位:nm)である。]
また、セルロースアシレートフィルムの光学異方性の影響を小さくしたい場合は、液晶セル側に配置される保護膜(セルロースアシレートフィルム)のReλ及びRthλが、数式(8)〜(11)を満たすことが好ましい。
数式(8):0≦Re590≦10
数式(9):|Rth590|≦25
数式(10):|Re400−Re700|≦10
数式(11):|Rth400−Rth700|≦35
[式中、Re590、Rth590は、波長λ=590nmにおける値、Re400、Rth400は、波長λ=400nmにおける値、Re700、Rth700は、波長λ=700nmにおける値(いずれも単位:nm)である。]
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムをVAモードに使用する場合、セルの両側に1枚ずつ合計2枚使用する形態(2枚型)と、セルの上下のいずれか一方の側にのみ使用する形態(1枚型)の2通りがある。
2枚型の場合、Re590は20〜100nmが好ましく、30〜70nmがさらに好ましい。Rth590については70〜300nmが好ましく、100〜200nmがさらに好ましい。
1枚型の場合、Re590は30〜150nmが好ましく、40〜100nmがさらに好ましい。Rth590については100〜300nmが好ましく、150〜250nmがさらに好ましい。
本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムの、フィルム面内の遅相軸角度のバラつきは、ロールフィルムの基準方向に対して−2゜〜+2゜の範囲にあることが好ましく、−1゜〜+1゜の範囲にあることがさらに好ましく、−0.5゜〜+0.5゜の範囲にあることが最も好ましい。ここで、基準方向とは、セルロースアシレートフィルムを縦延伸する場合にはロールフィルムの長手方向であり、横延伸する場合にはロールフィルムの幅方向である。
また、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、25℃、10%RHにおけるRe値と、25℃、80%RHにおけるRe値との差ΔRe(=Re10%−Re80%)が0〜10nmであり、25℃、10%RHにおけるRth値と、25℃、80%RHにおけるRth値との差ΔRth(=Rth10%−Rth80%)が0〜30nmであるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
さらに本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、25℃、80%RHにおける平衡含水率が3.2%以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
含水率の測定法は、セルロースアシレートフィルム試料7mm×35mmを、水分測定器、試料乾燥装置{“CA−03”、“VA−05”、共に三菱化学(株)}を用いてカールフィッシャー法で測定する。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出する。
さらにまた、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RH、24時間の透湿度(膜厚80μm換算)が、400g/m2・24hr以上1800g/m2・24hr以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
透湿度は、セルロースアシレートフィルムの膜厚が厚ければ小さくなり、膜厚が薄ければ大きくなる。そこで、どのような膜厚のサンプルでも基準となる膜厚を設け換算する必要がある。本発明においては、基準となる膜厚を80μmとして、次の数式(13)に従って膜厚を換算した。
数式(13):80μm換算の透湿度=実測の透湿度×実測の膜厚μm/80μm。
透湿度の測定法は、「高分子の物性II」(高分子実験講座4 共立出版)の285頁〜294頁:蒸気透過量の測定(質量法、温度計法、蒸気圧法、吸着量法)に記載の方法を適用することができる。
ガラス転移温度の測定は、セルロースアシレートフィルム試料(未延伸)5mm×30mmを、25℃、60%RHで2時間以上調湿した後に、動的粘弾性測定装置「バイブロン:DVA−225」{アイティー計測制御(株)製)}を用いて、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜200℃、周波数1Hzで測定し、縦軸に対数軸で貯蔵弾性率、横軸に線形軸で温度(℃)をとった時に、貯蔵弾性率が固体領域からガラス転移領域へ移行する際に見受けられる、貯蔵弾性率の急激な減少を示す温度をガラス転移温度Tgとした。具体的には、得られたチャート上において、固体領域で直線1を引き、ガラス転移領域で直線2を引いたときの直線1と直線2の交点が、昇温時に貯蔵弾性率が急激に減少しフィルムが軟化し始める温度であり、ガラス転移領域に移行し始める温度であることから、ガラス転移温度Tg(動的粘弾性)とした。
弾性率の測定は、セルロースアシレートフィルム試料10mm×150mmを、25℃、60%RHで2時間以上調湿した後、引張り試験機「ストログラフ−R2」{(株)東洋精機製作所製)}で、チャック間距離100mm、温度25℃、延伸速度10mm/分で行った。
吸湿膨張係数の測定は、25℃、80%RH下に2時間以上放置したフィルムの寸法をピンゲージで測定した値L80%と、25℃、10%RH下に2時間以上放置したフィルム
の寸法をピンゲージで測定した値L10%とから、次の数式(14)により求めた。
数式(14):(L80%−L10%)/(80%RH−10%RH)×106
また、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、そのヘイズが0.01〜2%の範囲であるのが好ましい。ここでヘイズは、以下のようにして測定できる。
ヘイズの測定は、セルロースアシレートフィルム試料40mm×80mmを、25℃、60%RHでヘイズメーター“HGM−2DP”{スガ試験機(株)製}でJIS K−6714に従って測定する。
さらに本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、80℃、90%RHの条件下に48時間静置した場合の質量変化が、0〜5質量%の範囲であるのが、好ましい。
またさらに、本発明に好ましく用いられるセルロースアシレートフィルムは、60℃、95%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化、及び90℃、5%RHの条件下に24時間静置した場合の寸度変化が、いずれも0〜5%の範囲であるのが好ましい。
光弾性係数は、50×10-13cm2/dyn以下であるのが、液晶表示装置の経時による色味変化を少なくする上で好ましい。
具体的な測定方法としては、セルロースアシレートフィルム試料10mm×100mmの、長軸方向に対して引っ張り応力をかけ、その際のレターデーションをエリプソメーター“M150”{日本分光(株)}で測定し、応力に対するレターデーションの変化量から光弾性係数を算出した。
本発明の偏光板やそれを用いる液晶表示装置の構成とポリマーフィルムのセルロースアシレート層の貼り合わせ方を模式図によって示す。
図1は、偏光板と光学補償機能(位相差)を有するポリマーフィルムTAC1のセルロースアシレート層の貼り合わせを模式的に示した図であって偏光子1は、配向層を有しており直線偏光が発生するように作成作製されている。偏光子1の透過軸2の方向にあわせて光学補償機能を有するポリマーフィルムTAC1のセルロースアシレート層の遅相軸が合わせられ、その形で重ねあわされる。光学補償機能を有するポリマーフィルムは保護膜3を兼ねていることが好ましい。
図2は、本発明に関する偏光板の断面構造を模式的に示す図である。偏光板は、光学補償機能(位相差)を有するポリマーフィルムTAC1から構成されていて液晶セル側の保護膜をかねており、偏光子11が積層されている。偏光子11の上に液晶セルとは反対側の保護膜13としてポリマーフィルムTAC2を設けてあり、その上に光学機能性膜層14(例えば、ハードコート層、防眩層、反射防止層など)が設けられとた構成となっている。
図3は、本発明の液晶表示装置の断面構造を模式的に示す図である。矢印50は視認側を、矢印60はバックライト側を示しており、VAモード液晶セル40の視認側には偏光子21、光学補償機能を有する液晶セル側保護膜22、液晶セルとは反対側の保護膜23からなる視認側偏光板が設けられ、VAモード液晶セル40のバックライト側には、偏光子31、光学補償機能を有する液晶セル側保護膜32、液晶セルとは反対側の保護膜33からなるバックライト側偏光板が設けられている。上記の光学補償機能を有する液晶セル側保護膜22と23は同じものでもよいし、異なるものでもよい。
本発明の特徴は前記したように、層間の界面エネルギー(各層がそれぞれ表面にあるときの表面エネルギーと相関)の値が近似していると層間の密着性が向上することに基いており、したがって、表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層A上に、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bが形成されているポリマーフィルムである場合には、表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層Aの表面エネルギーの分散力成分γA d、極性力成分γA p、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bの表面エネルギーの分散力成分γB d、極性力成分γB pがそれぞれ下記式(1)〜(4)を満たすことを特徴としているポリマーフィルムである。
式(1) γA d≧30mN/m
式(2) γA p≧10mN/m
式(3) γB d<35mN/m
式(4) γB p<15mN/m
表面エネルギーは、その発現性の起源により分散力成分と極性力成分に分けて考えることができ、表面エネルギーγ、分散力成分γd、極性力成分γpは下記式の関係で表される。
γ=γd+γp
分散力成分は分子の無極性部分に起因する分子同士の長距離レンジに及ぶ引力であり、極性力成分は分子の極性部分に起因する比較的ショートレンジの引力である。有機物質の多くは総体としては電気的に中性であるが、微視的には原子の電気陰性度の違いに起因して、分子中に電荷の偏りを生じる極性部分(永久双極子)を有するものがある。永久双極子同士は相互作用(Keesom相互作用)を持ち、これが前記極性力成分を引き起こす。また、無極性分子の集団中に永久双極子が存在する場合には、これが無極性分子を誘起して誘起双極子を生じさせる。これらの間には、永久双極子−誘起双極子(Debye)相互作用が働く。したがって、極性力成分はカルボニル基やヒドロキシル基などの極性の強い基を有する分子で大きく、ポリイミド、ポリアミド、エポキシ樹脂などが大きな値を示す。さらに、無極性分子でも分子内電子の移動が瞬間的な双極子を発生させ、他の分子を分極させて分散力(London)相互作用を起こす。したがって、分散力は電子移動性に富む共役結合を多く含む分子ほど大きくなり、ポリアセチレンやポリブタジエンなどが大きな値を示す。分散力成分、極性力成分共にフッ素原子を含む分子では小さく、アクリル樹脂やメタクリル樹脂で水素原子をフッ素原子に置換したものが例として挙げられる。2つの層の表面同士を接触させ接着させるためには、2つの表面の表面エネルギーを等しくすることによって接触面の界面の過剰エネルギーを実質的に消去させてしまうことが好ましい。接着力を高めるためには2つの表面の分散力成分、極性力成分がそれぞれ等しいことがさらに好ましい。
表面エネルギーの分散力成分と極性力成分の見積もりは、分散力成分と極性力成分が既知の複数の液体の測定対象固体上における接触角の測定によって行うことができる。その一例は、水(HO)と塩化メチレン(CHCl)の接触角から下記2式の連立方程式を解くことにより求めるOwensらの方法(D.K.Owens and R.C.Wendt:J.Appl.Polym.Sci,13,1941(1969))が提案されている。
1+cosθH2O=2×(γs d0.5×(γH2O d0.5/γH2O+2×(γs p0.5×(γH2O p0.5/γH2O
1+cosθCH2Cl2=2×(γs d0.5×(γCH2Cl2 d0.5/γCH2Cl2+2×(γs p0.5×(γCH2Cl2 p0.5/γCH2Cl2
ここで、θH2OおよびθCH2Cl2はそれぞれ固体S上の水と塩化メチレンの接触角、γs d、γH2O d、γCH2Cl2 dはそれぞれ固体S、水、塩化メチレンの分散力成分、γs p、γH2O p、γCH2Cl2 pはそれぞれ固体S、水、塩化メチレンの極性力成分である。γH2O d、γCH2Cl2 d、γH2O p、γCH2Cl2 pは既知の値であり、それぞれ21.8mN/m、49.5mN/m、51.0mN/m、1.3mN/mである。
さらに本発明のポリマーフィルム上には、ポリマーフィルムの少なくとも一方の表面に、ハードコート層、防眩層又は反射防止層の少なくとも一層を設けられたものであるのが好ましい。すなわち、図2に示すように、偏光板の液晶表示装置への使用時において、液晶セルと反対側に配置される保護膜(TAC2)には、反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましく、かかる機能性膜としては、ハードコート層、防眩層又は反射防止層の少なくとも一層を設けるのが好ましい。なお、各層はそれぞれ別個の層として設ける必要はなく、例えば、反射防止層やハードコート層に防眩性の機能を持たせることにより、反射防止層及び防眩層の二層を設ける代わりに、防眩性反射防止層として機能させてもよい。
〔反射防止層〕
本発明では、ポリマーフィルム上に、少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止層、又は保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に設けられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。なお前者の構成では、一般的に鏡面反射率は1%以上となり、Low Reflection(LR)フィルムと呼ばれる。後者の構成では、鏡面反射率0.5%以下を実現するものが可能となり、Anti―Reflection(AR)フィルムと呼ばれる。
[LRフィルム]
ポリマ−フィルム上に、光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層(LRフィルム)の好ましい例について述べる。
光散乱層には、マット粒子が分散されているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.20〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、一層でもよいし、複数層、例えば二層〜四層で構成されていてもよい。
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均凹凸間距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均凹凸間距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5゜の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成されるので好ましい。
また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の、最小値と最大値の比0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなるので好ましい。さらにC光源下での透過光のb*値が0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減されるので好ましい。さらにまた、面光源上と反射防止層の間に120μm×40μmの格子を挿入して、フィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明の偏光板を適用したときのギラツキが低減されるので好ましい。
本発明で用いることができる反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60゜光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値の比が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2゜傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成されるので好ましい。
(低屈折率層)
本発明で用いることができる低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.49であり、更に好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数式(19)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(19):(m/4)λ×0.7<nLL<(m/4)λ×1.3
式中、mは正の奇数であり、nLは低屈折率層の屈折率であり、そして、dLは低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層は、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。
フッ素ポリマーとしては、動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120゜、純水の滑落角が70゜以下の、熱又は電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明に関する偏光板を画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、引張試験機で測定した場合、該剥離力が500gf以下であることが好ましく、300gf以下であることがより好ましく、100gf以下であることが最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど傷がつき難く、該表面硬度は0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしては、ペルフルオロアルキル基含有シラン化合物{例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン}の加水分解物、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマーの具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分又は完全フッ素化アルキルエステル誘導体類[例えば「ビスコート6FM」{大阪有機化学工業(株)製}や“M−2020”{ダイキン工業(株)製}等]、完全又は部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはペルフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としては、グリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように、分子内に予め自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー{例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等}の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶媒への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−t−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては、特開平10−25388号及び特開平10−147739号各公報に記載のごとく、適宜硬化剤を併用してもよい。
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱及び内部散乱の少なくともいずれかによる光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに付与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、及び必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。また、このような光散乱層を設けることにより、該光散乱層が防眩層としても機能し、偏光板が防眩層を有することになる。
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。光散乱層の膜厚が該下限値以上であれば、ハード性が不足するなどの問題が生じにくく、該上限値以下であれば、カールや脆性が悪化して加工適性が不足するなどの不都合が生じにくいので好ましい。
光散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖又はポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。またバインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、且つ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル{例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート}、上記のエチレンオキシド変性体、ビニルベンゼン及びその誘導体(例えば、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例えば、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例えば、メチレンビスアクリルアミド)及びメタクリルアミドが挙げられる。これらのモノマーは2種以上併用してもよい。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤又は熱ラジカル開始剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を保護膜上に塗布後、電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止層を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤又は熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射又は加熱により行うことができる。従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤又は熱酸発生剤、マット粒子及び無機フィラーを含有する塗布液を調製し、該塗布液を保護膜上に塗布後電離放射線又は熱による重合反応により硬化して反射防止層を形成することができる。
2個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりに、又はそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基及び活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステル及びウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子又は樹脂粒子が含有される。マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては、単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほどよい。例えば、平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2及びZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
光散乱層のバインダー及び無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.50〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.51〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、又はその両者を光散乱層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明において好ましく用いられる反射防止層の塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
[ARフィルム]
次にポリマーフィルム上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層(ARフィルム)について述べる。
ポリマーフィルム上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成からなる反射防止層は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>保護膜の屈折率>低屈折率層の屈折率
また、ポリマーフィルムと中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよく、例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の反射防止層が挙げられる。
さらに各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例えば、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。また、膜の表面強度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層及び中屈折率層)
反射防止層の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化膜からなる。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104号公報等)、特定の分散剤併用(例えば、特開平11−153703号公報、米国特許第6210858号明細書、特開2002−277609号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に好ましい材料としては、ラジカル重合性及びカチオン重合性の少なくともいずれかの重合性基を2個以上有する多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有する有機金属化合物を含有する組成物、及びその部分縮合体を含有する組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が挙げられ、例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の化合物が挙げられる。
また、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層してなる。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50である。
低屈折率層は、耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等からなる薄膜層の手段を適用できる。
含フッ素化合物は、フッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性又は重合性の官能基を含む化合物が好ましく、例えば、特開平9−222503号公報段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。
シリコーン化合物としては、ポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン[例えば、「サイラプレーン」{チッソ(株)製等}]、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する、含フッ素ポリマー及びシロキサンポリマーの少なくともいずれかの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時に、又は塗布後に光照射や加熱することにより低屈折率層を形成することが好ましい。
またシランカップリング剤等の有機金属化合物と、特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを、触媒共存下に縮合反応で硬化するゾル/ゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物又はその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ(ペルフルオロアルキルエーテル)基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として、充填剤{例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820号公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等}、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されてもよい。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けたポリマーフィルムに物理強度を付与するために、ポリマーフィルムの表面に設ける。特に、ポリマーフィルムと前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び/又は熱の硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物における硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましい。また加水分解性官能基含有の有機金属化合物や有機アルコキシシリル化合物も好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。
ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、国際公開第00/46617号パンフレット等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は、用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の表面強度は、JIS K−5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。またJIS K−5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(反射防止層の他の層)
さらに、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には、体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属として、Zn、Ti、Sn、Al、In、Si、Mg、Ba、Mo、W又はVをあげることができ、これらを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。
上記金属酸化物の具体的な例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO3、WO3、V25等、又はこれらの複合酸化物がよく、特にZnO、TiO2及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl、In等の添加物、SnO2に対してはSb、Nb、ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb、Ta等の添加が効果的である。
更にまた、特公昭59−6235号公報に記載の如く、他の結晶性金属粒子又は繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用してもよい。なお体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり、単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10-8(Ωcm-3)以下の導電性を確保するためには、該帯電防止層が概ね10-10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく、更に好ましくは10-8(Ω/□)である。帯電防止層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
また、本発明のポリマーフィルム上に光学異方性層を設けることが好ましい。
光学異方性層は、液晶性化合物、非液晶性化合物、無機化合物、有機/無機複合化合物等、材料は限定されない。液晶性化合物としては、重合性基を有する低分子化合物を配向させた後に光または熱による重合により配向を固定化するものや、液晶性高分子を加熱し配向させた後に冷却しガラス状態で配向固定化するものを使うことができる。液晶性化合物としては円盤状構造を有するもの、棒状構造を有するもの、光学的二軸性を示す構造を有するものを使うことができる。非液晶性化合物としては、ポリイミド、ポリエステル等の芳香族環を有する高分子を使うことができる。
光学異方性層の形成方法は、塗布、蒸着、スパッタリング等種々の手法を使用することができる。
偏光板の保護膜の上に光学異方性層を設ける場合、粘着層は偏光子側からさらに該光学異方性層の外側に設けられる。
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
はじめに、本実施例に用いた物性試験方法や性能評価方法について記す。
(残留溶剤量の測定)
ウェブの質量をM、ウェブを140℃で2時間乾燥させた後の質量をNとする、下記式から残留溶剤量を算出した。
[残留溶剤量]=(M−N)/N×100 (質量%)
(表面張力の測定)
ポリマー材料の表面張力、表面張力の分散力成分γ、表面張力の極性力成分γは水と塩化メチレンの接触角からOwensらの方法(D.K.Owens and R.C.Wendt:J.Appl.Polym.Sci,13,1941(1969))により算出した。
(密着評価)
JIS K5600-5-6に従いクロスカット法によりポリマーフィルムと光学機能層の密着試験を行った。剥離しにくいもの:分類0〜剥離しやすいもの:5の6段階で評価した。
(光学フィルムのムラ評価)
黒い布を被せた台の上に光学機能層を上面にして光学フィルムを広げ、蛍光灯下で観察し、光学フィルムに映り込んだ蛍光灯の明かりの蛍光管の形の乱れ方の程度を目視観察し、評価基準見本と比較して1点(悪い)〜5点(良い)の5段階の点数を付けた。
(ポリマーフィルムの厚みムラの測定)
ポリマーフィルムの幅方向に関して厚みムラを触針式の連続厚み測定器(アンリツ(株)製)で測定した。幅方向1.3m内の山部分の間隔の平均をピッチ、隣りあった山の高さと谷の深さの差の平均を高さとした。さらに、高さをピッチで除したものを厚みムラの傾斜とした。
I.バンド流延機によるポリマーフィルムの製膜(ポリマーフィルム1〜8)
(実施例1)ポリマーフィルム1の製膜
(1)表面張力が45mN/m以上のポリマー層Aのドープの調製
[1−1.セルロースアシレート溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。 セルロースアシレートCA1は表1に記載のものを使用した。また本発明でポリマーフィルム作製に用いる材料の表面エネルギーを表2に示した。
Figure 2006297831
Figure 2006297831
(セルロースアシレート溶液の組成)
セルロースアシレートCA1 100.0質量部
トリフェニルホスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
メチレンクロリド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
[1−2.マット剤分散液]
次に、上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
(マット剤分散液の組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm) 2.0質量部
“aerosil R972”{日本アエロジル(株)製}
メチレンクロリド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
上記セルロースアシレート溶液 10.3質量部
[1−3.紫外線吸収剤溶液]
次に、上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。下記の紫外線吸収剤UV1は2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチ ルフェニル]ベンゾトリアゾール]、UV2は2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ− アミルフェニル]−5−クロルベンゾトリアゾール]を意味する。
(紫外線吸収剤溶液の組成)
UV1 14.0質量部
UV2 6.0質量部
メチレンクロリド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
上記セルロースアシレート溶液 12.8質量部
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更に紫外線吸収剤溶液を1質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープA1を調製した。
(2)表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bのドープの調整
[2−1.ポリマー溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。 セルロースアシレートCA6は表1に記載のものを使用した。
(ポリマー溶液の組成)
セルロースアシレートCA6 92.0質量部
メチレンクロリド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
[2−2.マット剤分散液]
次に、上記方法で作製したポリマー溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
(マット剤分散液の組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm) 2.0質量部
“aerosil R972”{日本アエロジル(株)製}
メチレンクロリド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
上記ポリマー溶液 10.3質量部
上記ポリマー溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープB1を調製した。
(3)流延
上記のドープを、二層共流延ダイを用いてバンド流延機で流延した。巻き取り時のポリマーフィルムにおいて、表面張力が45mN/m以上のポリマー層Aの厚みは平均77μm、表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bの厚みは平均3μmとなるように調整した。残留溶媒量が60質量%でバンドから剥ぎ取った共流延ポリマーフィルムを、120℃の雰囲気下で、テンターを用いて5%延伸倍率で幅方向に延伸して、テンター離脱後に130℃で20分間乾燥させポリマーフィルム1を製膜した。巻取り部前で両端部を切り落として幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。ポリマーフィルム1の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(実施例2)ポリマーフィルム2の製膜
実施例1のセルロースアシレートCA1の代りにセルロースアシレートCA2を用い、セルロースアシレートCA6の代りにポリエチルアクリレート(数平均分子量=32000)を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーフィルム2を作製した。セルロースアシレートCA2およびポリエチルアクリレートの表面エネルギーを表2に示した。ポリマーフィルム2の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(実施例3)ポリマーフィルム3の製膜
実施例1のセルロースアシレートCA1の代りにセルロースアシレートCA3を用い、セルロースアシレートCA6の代りにCAB1を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーフィルム3を作製した。ポリマーフィルム3の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(比較例1)ポリマーフィルム4の製膜
実施例1のセルロースアシレートCA6の代りにCA3を用いた以外は実施例1と同様にしてポリマーフィルム4を作製した。ポリマーフィルム4の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(比較例2)ポリマーフィルム5の製膜
実施例1で表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bを設けなかった以外は実施例1と同様にしてポリマーフィルム5を作製した。ポリマーフィルム5の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(比較例3)ポリマーフィルム6の製膜
実施例2で表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bを設けなかった以外は実施例2と同様にしてポリマーフィルム6を作製した。ポリマーフィルム6の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(比較例4)ポリマーフィルム7の製膜
実施例3で表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bを設けなかった以外は実施例2と同様にしてポリマーフィルム7を作製した。ポリマーフィルム7の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(実施例4)ポリマーフィルム8の製膜
(1)表面張力が45mN/m以上のポリマー層Aのドープの調製
[1−1.セルロースアシレート溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。 セルロースアシレートCA1は表1に記載のものを使用した。また本発明でポリマーフィルム作製に用いる材料の表面エネルギーを表2に示した。
(セルロースアシレート溶液の組成)
セルロースアシレートCA1 100.0質量部
トリフェニルホスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
メチレンクロリド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
[1−2.マット剤分散液]
次に、上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
(マット剤分散液の組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm) 2.0質量部
“aerosil R972”{日本アエロジル(株)製}
メチレンクロリド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
上記セルロースアシレート溶液 10.3質量部
[1−3.紫外線吸収剤溶液]
次に、上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。下記の紫外線吸収剤UV1は2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチ ルフェニル]ベンゾトリアゾール]、UV2は2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ− アミルフェニル]−5−クロルベンゾトリアゾール]を意味する。
(紫外線吸収剤溶液の組成)
UV1 14.0質量部
UV2 6.0質量部
メチレンクロリド 58.3質量部
メタノール 8.7質量部
上記セルロースアシレート溶液 12.8質量部
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更に紫外線吸収剤溶液を1質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープA8を調製した。
(2)表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bのドープの調整
[2−1.ポリマー溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。 セルロースアシレートCA6は表1に記載のものを使用した。
(ポリマー溶液の組成)
セルロースアシレートCA6 92.0質量部
メチレンクロリド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
[2−2.マット剤分散液]
次に、上記方法で作製したポリマー溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
(マット剤分散液の組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm) 2.0質量部
“aerosil R972”{日本アエロジル(株)製}
メチレンクロリド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
上記ポリマー溶液 10.3質量部
上記ポリマー溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープB8を調製した。
(3)表面張力が50mN/m以上75mN/m以下の層Cのドープの調整
[3−1.ポリマー溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。 セルロースアシレートCA3は表1に記載のものを使用した。
(ポリマー溶液の組成)
セルロースアシレートCA3 92.0質量部
メチレンクロリド 403.0質量部
メタノール 60.2質量部
[3−2.マット剤分散液]
次に、上記方法で作製したポリマー溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
(マット剤分散液の組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm) 2.0質量部
“aerosil R972”{日本アエロジル(株)製}
メチレンクロリド 72.4質量部
メタノール 10.8質量部
上記ポリマー溶液 10.3質量部
上記ポリマー溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープC8を調製した。
(3)流延
上記のドープを、三層共流延ダイを用いてバンド流延機で流延した。巻き取り時のポリマーフィルムにおいて、表面張力が45mN/m以上のポリマー層Aの厚みは平均74μm、表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bの厚みは平均3μm、表面張力が50mN/m以上75mN/m以下の層Cの厚みは平均3μmとなるように調整した。残留溶媒量が60質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、120℃の雰囲気下で、テンターを用いて20%延伸倍率で幅方向に延伸して、テンター離脱後に130℃で20分間乾燥させポリマーフィルム8を製膜した。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。ポリマーフィルム8の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
II.ドラム流延機によるポリマーフィルムの製膜(ポリマーフィルム9〜13)
(実施例5)ポリマーフィルム9の製膜
(1)ポリマー層Aのドープの調製
[1−1.セルロースアシレート溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。 セルロースアシレートCA4は表1に記載のものを使用した。
(セルロースアシレート溶液の組成)
セルロースアシレートCA4 100.0質量部
トリフェニルホスフェート 7.8質量部
ビフェニルジフェニルホスフェート 3.9質量部
メチレンクロリド 303.4質量部
メタノール 58.5質量部
1−ブタノール 2.2質量部
[1−2.紫外線吸収剤溶液]
次に、上記方法で作製したセルロースアシレート溶液を含む下記組成物をミキシングタンクに投入し、加熱しながら攪拌して溶解し、紫外線吸収剤溶液を調製した。下記の紫外線吸収剤UV1は2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチ ルフェニル]ベンゾトリアゾール]、UV2は2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ− アミルフェニル]−5−クロルベンゾトリアゾール]を意味する。
(紫外線吸収剤溶液の組成)
UV1 14.0質量部
UV2 6.0質量部
メチレンクロリド 55.6質量部
メタノール 10.7質量部
1−ブタノール 0.4質量部
上記セルロースアシレート溶液 12.8質量部
上記セルロースアシレート溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部、更に紫外線吸収剤溶液を1質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープA9を調製した。
(2)表面張力が20mN/m以上45mN/m未満の層Bのドープの調整
[2−1.ポリマー溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。
(ポリマー溶液の組成)
エチルセルロース 92.0質量部
メチレンクロリド 303.4質量部
メタノール 58.5質量部
1−ブタノール 2.2質量部
[2−2.マット剤分散液]
次に、上記方法で作製したポリマー溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
(マット剤分散液の組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm) 2.0質量部
“aerosil R972”{日本アエロジル(株)製}
メチレンクロリド 69.1質量部
メタノール 13.3質量部
1−ブタノール 0.5質量部
上記ポリマー溶液 10.3質量部
上記ポリマー溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープB9を調製した。
(3)表面張力が50mN/m以上75mN/m以下の層Cのドープの調整
[3−1.ポリマー溶液]
下記組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、更に90℃に約10分間加熱した後、平均孔径34μmの濾紙及び平均孔径10μmの焼結金属フィルターで濾過した。
(ポリマー溶液の組成)
セルロースアシレートCA3 92.0質量部
メチレンクロリド 303.4質量部
メタノール 58.5質量部
1−ブタノール 2.2質量部
[3−2.マット剤分散液]
次に、上記方法で作製したポリマー溶液を含む下記組成物を分散機に投入し、マット剤分散液を調製した。
(マット剤分散液の組成)
シリカ粒子(平均粒径16nm) 2.0質量部
“aerosil R972”{日本アエロジル(株)製}
メチレンクロリド 69.1質量部
メタノール 13.3質量部
1−ブタノール 0.5質量部
上記ポリマー溶液 10.3質量部
上記ポリマー溶液を100質量部、マット剤分散液を1.35質量部の割合になるように混合し、製膜用ドープC9を調製した。
(3)流延
上記のドープを、三層共流延ダイを用いてドラム流延機で流延した。巻き取り時のポリマーフィルムにおいて、表面張力が45mN/m以上のポリマー層Aの厚みは平均74μm、表面張力が45mN/m未満の層Bの厚みは平均3μm、表面張力が55mN/m以上の層Cの厚みは平均3μmとなるように調整した。残留溶媒量が150質量%でドラムから剥ぎ取ったフィルムを、50℃〜140℃まで連続的に温度を変化させたゾーン内でウェブをテンターで保持し、テンター離脱後に140℃で20分間乾燥させポリマーフィルム9を製膜した。巻取り部前で両端部を切り落とし幅2000mmとし、長さ4000mのロールフィルムとして巻き取った。ポリマーフィルム9の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(実施例6)ポリマーフィルム10の製膜
実施例5のセルロースアシレートCA4の代りにセルロースアシレートCA5を用い、エチルセルロースの代りにポリ(n−ヘキシルメタクリレート)を用いた以外は実施例5と同様にしてポリマーフィルム10を作製した。ポリマーフィルム10の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(実施例7)ポリマーフィルム11の製膜
実施例5のエチルセルロースの代りにポリビニルブチレートを用いた以外は実施例5と同様にしてポリマーフィルム11を作製した。ポリマーフィルム11の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(比較例5)ポリマーフィルム12の製膜
実施例5のエチルセルロースの代りにセルロースアシレートCA4を用い、セルロースアシレートCA3の代りにセルロースアシレートCA4を用いた以外は実施例5と同様にしてポリマーフィルム12を作製した。ポリマーフィルム12の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
(比較例6)ポリマーフィルム13の製膜
実施例6のポリ(n−ヘキシルメタクリ-レート)の代りにセルロースアシレートCA5を用い、セルロースアシレートCA3の代りにセルロースアシレートCA5を用いた以外は実施例6と同様にしてポリマーフィルム13を作製した。ポリマーフィルム13の厚みムラのピッチ、高さ、傾斜、表面エネルギーを測定した。結果を表3に示す。
III 反射防止層付き保護膜の作製
(実施例8)反射防止層を有する保護膜(保護膜1)の作製
[光散乱層用塗布液の調製]
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物“PETA”{日本化薬(株)製}50gをシクロヘキサノン(表面張力34.5mN/m)38.5gで希釈した。更に、重合開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}を2g添加し、混合攪拌した。この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51、表面エネルギーは35.1mN/mであった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子“SX−350”{屈折率1.60、綜研化学(株)製}の30質量%シクロヘキサノン分散液を1.7g及び平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子{屈折率1.55、綜研化学(株)製}の30質量%シクロヘキサノン分散液を13.3g加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP−1)0.75g、シランカップリング剤“KBM−5103”{信越化学工業(株)製}を10g加えて、得られた混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して光散乱層の塗布液を調製した。
フッ素系表面改質剤(FP−1)
Figure 2006297831
[低屈折率層用塗布液の調製]
まず始めに、次のようにしてゾル液aを調製した。
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120質量部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン“KBM5103”{信越化学工業(株)製}100質量部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3質量部を加え混合したのち、イオン交換水30質量部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100質量%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー“JN−7228”{固形分濃度6質量%、JSR(株)製}13g、シリカゾル{シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30質量%、日産化学(株)製}1.3g、上記のように調製したゾル液a0.6g及びメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
[反射防止層を有する保護膜の作製]
実施例1で作製したポリマーフィルム1をロール形態で巻き出して、上記の機能層(光散乱層)用塗布液を、線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する、直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60μで150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの機能層を形成し、巻き取った。
上記の機能層(光散乱層)を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出して、その光散乱層側に、前記で調製した低屈折率層用塗布液を、線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する、直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取り、反射防止層を有する保護膜1を作製した。 保護膜1のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(実施例9)反射防止層を有する保護膜(保護膜2)の作製
実施例8の光散乱層用塗布液に用いたシクロヘキサノンを全てトルエン(表面張力29mN/m)に変え、またポリマーフィルム1をポリマーフィルム2に変え、その他は実施例8と同様にして反射防止層を有する保護膜2を作製した。保護膜2のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(実施例10)反射防止層を有する保護膜(保護膜3)の作製
実施例9のポリマーフィルム2をポリマーフィルム3に変え、その他は実施例9と同様にして反射防止層を有する保護膜3を作製した。保護膜3のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(比較例7)反射防止層を有する保護膜(保護膜4)の作製
実施例9のポリマーフィルム2をポリマーフィルム4に変え、その他は実施例9と同様にして反射防止層を有する保護膜4を作製した。保護膜4のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(比較例8)反射防止層を有する保護膜(保護膜5)の作製
実施例9のポリマーフィルム2をポリマーフィルム5に変え、その他は実施例9と同様にして反射防止層を有する保護膜5を作製した。保護膜5のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(比較例9)反射防止層を有する保護膜(保護膜6)の作製
実施例9のポリマーフィルム2をポリマーフィルム6に変え、その他は実施例9と同様にして反射防止層を有する保護膜6を作製した。保護膜6のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(比較例10)反射防止層を有する保護膜(保護膜7)の作製
実施例9のポリマーフィルム2をポリマーフィルム7に変え、その他は実施例9と同様にして反射防止層を有する保護膜7を作製した。保護膜7のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(比較例11)反射防止層を有する保護膜(保護膜8)の作製
実施例9のポリマーフィルム2をポリマーフィルム8に変え、その他は実施例9と同様にして反射防止層を有する保護膜8を作製した。保護膜8のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(実施例11)反射防止層を有する保護膜(保護膜9)の作製
[ハードコート層用塗布液の調製]
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA){日本化薬(株)製}750.0質量部に、質量平均分子量3000のポリ(グリシジルメタクリレート)(PGA)270.0質量部、シクロヘキサノン1230.0g及び光重合開始剤「イルガキュア184」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}50.0gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
[二酸化チタン微粒子分散液の調製]
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、且つ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子“MPT−129”{石原産業(株)製}を使用した。
この粒子257.1gに、下記分散剤38.6g、及びシクロヘキサノン704.3gを添加してダイノミルにより分散し、質量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
Figure 2006297831
[中屈折率層用塗布液の調製]
上記の二酸化チタン分散液88.9gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”58.4g、光重合開始剤「イルガキュア907」3.1g、光増感剤「カヤキュアーDETX」{日本化薬(株)製}1.1g、メチルエチルケトン482.4g及びシクロヘキサノン1869.8gを添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液を調製した。
[高屈折率層用塗布液の調製]
上記の二酸化チタン分散液586.8gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物“DPHA”{日本化薬(株)製}47.9g、光重合開始剤「イルガキュア907」{チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製}4.0g、光増感剤「カヤキュアー−DETX」{日本化薬(株)製}1.3g、メチルエチルケトン455.8g、及びシクロヘキサノン1427.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液を調製した。
[低屈折率層用塗布液の調製]
下記共重合体(P−1)を、メチルイソブチルケトンに7質量%の濃度になるように溶解し、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂“X−22−164C”{信越化学(株)製}を固形分に対して3質量%、光ラジカル発生剤「イルガキュア907」(商品名)を固形分に対して5質量%添加し、低屈折率層用塗布液を調製した。
Figure 2006297831
[反射防止層を有する保護膜の作製]
実施例4で作製したポリマーフィルム9上に、ハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら、160W/cmの空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、放射照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。前記ハードコート層の表面エネルギーは35.1mN/mであった。
次いでハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液を3つの塗布ステーションを有するグラビアコーターを用いて連続して塗布した。
中屈折率層の乾燥条件は100℃、2分間とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cm2の空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、放射照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。硬化後の中屈折率層は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
高屈折率層及び低屈折率層の乾燥条件は、いずれも90℃、1分の後、100℃、1分とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cm2の空冷メタルハライドランプ{アイグラフィックス(株)製}を用いて、放射照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
硬化後の高屈折率層は屈折率1.905、膜厚107nm、低屈折率層は屈折率1.440、膜厚85nmであった。このようにして、反射防止層を有する保護膜9を作製した。
(実施例12)反射防止層を有する保護膜(保護膜10)の作製
実施例11のハードコート層用塗布液に用いたシクロヘキサノンを全てトルエン(表面張力29mN/m)に変え、またポリマーフィルム9をポリマーフィルム10に変え、その他は実施例11と同様にして反射防止層を有する保護膜10を作製した。保護膜10のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(実施例13)反射防止層を有する保護膜(保護膜11)の作製
実施例12のポリマーフィルム10をポリマーフィルム11に変え、その他は実施例12と同様にして反射防止層を有する保護膜11を作製した。保護膜11のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(比較例12)反射防止層を有する保護膜(保護膜12)の作製
実施例12のポリマーフィルム10をポリマーフィルム12に変え、その他は実施例12と同様にして反射防止層を有する保護膜12を作製した。保護膜12のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
(比較例13)反射防止層を有する保護膜(保護膜13)の作製
実施例12のポリマーフィルム10をポリマーフィルム13に変え、その他は実施例12と同様にして反射防止層を有する保護膜13を作製した。保護膜13のポリマーフィルムと光学機能層間の密着および光学フィルムのムラを評価した。結果を表3に示す。
Figure 2006297831
表3から光学機能性層と接するポリマーフィルム表面の表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満である本発明の態様のポリマーフィルムは優れた密着性を有することが分かる。
IV 偏光板の作製
(実施例14)偏光板の作製(偏光板1〜13)
(偏光子の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
(保護膜の表面処理)
上記実施例および比較例で作製した保護膜1〜13及び市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80ULを、濃度1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、濃度0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
(偏光板の作製)
上記のように鹸化処理を行った保護膜と市販のセルロースアシレートフィルム一対として前記の偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板を作製した。
このとき、偏光子及び偏光子両側の保護膜はロール形態で作製されているため、各ロールフィルムの長手方向が平行となっており、連続的に貼り合わされる。
(粘着剤溶液の調製)
アクリル酸ブチル100質量部、アクリル酸5質量部、2、2’−アゾビスブチロニトリル0.5質量部をモノマー濃度60質量%となるように酢酸エチルに溶解した後、60℃で8時間重合してアクリル系共重合体溶液を得た。前記アクリル系共重合体の固形分100質量部に対して、1質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社製)を加えて十分に攪拌し粘着剤溶液を作製した。
(粘着層の塗設)
偏光板への粘着層の塗設は次のように行った。
上記粘着剤の溶液を、25μm厚のPETフィルム上にダイコーターを用いて塗布した後、乾燥させた。ここで、乾燥後の粘着層の厚さが25μmとなるように調整した。さらに、PETフィルム上に塗設された粘着層を上記で作製した偏光板に転写した。このようにして、保護膜1〜13を用いた偏光板1〜13を作製した。
(実施例15)液晶表示装置への偏光板貼り付け
実施例14で作製した偏光板を、32”ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように長方形に打抜いた。VAモードの液晶TV“LC―32GD3”{シャープ(株)製}の、表の偏光板を剥し、表側に実施例14で作製した偏光板を貼り付け、LCD1〜13を作製した。偏光板貼り付け後、50℃5kg/cmで20分間保持し、接着させた。
プロテクトフィルムを剥した後、液晶表示装置表面に蛍光灯が写り込むようにして観察したところ、ポリマーフィルムの厚みムラ起因のムラの視認性は保護膜1〜13のムラとよく対応していた。
(実施例16)偏光板の作製(偏光板14〜26)
(偏光子の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光子を得た。
(保護膜の表面処理)
市販のセルロースアシレートフィルムフジタックTDY80ULを、濃度1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、濃度0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
(偏光板の作製)
上記のように鹸化処理を行った市販のセルロースアシレートフィルムと上記実施例および比較例で作製した鹸化処理を行っていない保護膜1〜13を一対として前記の偏光子を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板を作製した。
このとき、偏光子及び偏光子両側の保護膜はロール形態で作製されているため、各ロールフィルムの長手方向が平行となっており、連続的に貼り合わされる。
(粘着剤溶液の調製)
アクリル酸ブチル100質量部、アクリル酸5質量部、2、2’−アゾビスブチロニトリル0.5質量部をモノマー濃度60質量%となるように酢酸エチルに溶解した後、60℃で8時間重合してアクリル系共重合体溶液を得た。前記アクリル系共重合体の固形分100質量部に対して、1質量部のイソシアネート系架橋剤(商品名:コロネートL、日本ポリウレタン工業株式会社製)を加えて十分に攪拌し粘着剤溶液を作製した。
(粘着層の塗設)
偏光板への粘着層の塗設は次のように行った。
上記粘着剤の溶液を、25μm厚のPETフィルム上にダイコーターを用いて塗布した後、乾燥させた。ここで、乾燥後の粘着層の厚さが25μmとなるように調整した。さらに、PETフィルム上に塗設された粘着層を上記で作製した偏光板に転写した。このようにして、保護膜1〜13を用いた偏光板14〜26を作製した。
(実施例17)偏光板の耐久性試験
実施例14及び実施例16で作製した偏光板1〜26を32”ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように長方形に打抜いた。前記偏光板を無アルカリガラス板(#1737、コーニング製)に貼り付け、貼り付け後、50℃5kg/cmで20分間保持し、接着させた。ガラス板に貼り付けた偏光板を60℃90%RHおよび80℃で湿度成行き条件に1000時間保管し、1000時間後に常温常湿環境に取り出し、偏光子と保護膜との間の剥離の有無を観察した。その結果を表4に示した。
Figure 2006297831
表4から偏光子と接するポリマーフィルム表面の表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下である本発明の態様のポリマーフィルムは優れた密着性を有することが分かる。
本発明に関する偏光板の製造時におけるセルロースアシレートフィルムの貼り合わせ方法を示す模式図である。 本発明に関する偏光板の断面構造を模式的に示す図である。 本発明の液晶表示装置の断面構造を模式的に示す図である。
符号の説明
1:偏光子
2:透過軸
3:TAC1:光学補償機能を有するポリマーフィルム
4:遅相軸
11:偏光子
12:光学補償機能を有するポリマーフィルム(液晶セル側保護膜)
13:液晶セルとは反対側の保護膜
14:機能性膜(ハードコート層、防眩層、反射防止層)
(22−21−23:視認側偏光板)
21:偏光子
22:TAC1:液晶セル側保護膜
23:TAC2:液晶セルとは反対側の保護膜
(32−31−33:バックライト側偏光板)
31:偏光子
32:TAC3:液晶セル側保護膜
33:TAC2:液晶セルとは反対側の保護膜
40:VAモード液晶セル
50:視認側
60:バックライト側

Claims (22)

  1. 表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層A上に、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bが形成されていることを特徴とするポリマーフィルム。
  2. 表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bの厚みが5μm以下であることを特徴とする請求項1記載のポリマーフィルム。
  3. 表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層A上に、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bが形成されているポリマーフィルムであって、表面エネルギーが45mN/m以上のポリマー層Aの表面エネルギーの分散力成分γA d、極性力成分γA p、表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bの表面エネルギーの分散力成分γB d、極性力成分γB pがそれぞれ下記式(1)〜(4)を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリマーフィルム。
    式(1) γA d≧30mN/m
    式(2) γA p≧10mN/m
    式(3) γB d<35mN/m
    式(4) γB p<15mN/m
  4. 上記ポリマー層Aの表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  5. 表面エネルギーが20mN/m以上45mN/m未満の層Bが形成されている面と反対の面にさらに表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層Cが形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  6. 表面エネルギーが50mN/m以上75mN/m以下の層Cの表面エネルギーの分散力成分γC d、極性力成分γC pがそれぞれ下記式(5)、(6)を満たすことを特徴とする請求項4に記載のポリマーフィルム。
    式(5) γC d≧30mN/m
    式(6) γC p≧20mN/m
  7. 上記層B 上に光学機能層を塗布により形成したポリマーフィルムであって、層Bが有する表面エネルギーγBと該光学機能層の塗布液の溶剤の表面張力γLが下記式(7)を満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のポリマーフィルム。
    式(7) γL≦γB≦γL+10
  8. 上記層B上に光学機能層を塗布により形成したポリマーフィルムであって、層Bが有する表面エネルギーγBと該光学機能層を形成するポリマー成分の表面エネルギーγPが下記式(8)を満足することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のポリマーフィルム。
    式(8) γP−10≦γB≦γP+10
  9. 上記層B上および層Cが共流延で形成されたことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  10. ポリマーフィルムAポリマー層Aが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(9)、(10)を満たすことを特徴とする請求項1〜9項のいずれかに記載のポリマーフィルム。
    数式(9):2.5≦A+B<2.95
    数式(10):0≦B
    (ただし、本明細書においては、式(10)が等号の場合のアシル置換エステルも混合脂肪酸エステルに含まれるものとする。)
  11. 上記層Bが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(11)、(12)を満たすことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載のポリマーフィルム。
    数式(11):2.95≦A+B<3.0
    数式(12):0≦B≦0.5
    (ただし、本明細書においては、式(12)が等号の場合のアシル置換エステルも混合脂肪酸エステルに含まれるものとする。)
  12. 上記層Bが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(13)、(14)を満たすことを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載のポリマーフィルム。
    数式(13):2.5≦A+B<3.0
    数式(14):0.5<B
  13. 上記層Bが、(メタ)アクリル酸エステルポリマーまたはビニルエステルポリマーの炭素原子数が2以上の置換基を有するポリマーからなることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  14. 上記層Cが、セルロースの水酸基がアセチル基及び炭素原子数3以上のアシル基で置換された、セルロースの混合脂肪酸エステルであるセルロースアシレートを主たるポリマー成分とするセルロースアシレートフィルムであって、該セルロースアシレートのアセチル基の置換度Aと、炭素原子数が3以上のアシル基の置換度Bとが下記数式(15)、(16)を満たすことを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載のポリマーフィルム。
    数式(15):0.5≦A+B<2.2
    数式(16):0≦B
    (ただし、本明細書においては、式(16)が等号の場合のアシル置換エステルも混合脂肪酸エステルに含まれるものとする。)
  15. ポリマーフィルムの厚みムラがピッチ5mm以上、高さ3μm以下であることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  16. ポリマーフィルムの厚みムラの傾斜が0.3μm/mm以下であることを特徴とする請求項1〜15のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  17. ポリマーフィルムが延伸フィルムであることを特徴とする請求項1〜16のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  18. ポリマーフィルムが溶液流延により製膜されたものであり、支持体から剥離されるときの残留溶剤量が100質量%以下であることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の光学フィルム。
  19. 光学機能層とポリマーフィルムの密着がJIS K5600−5−6に定められたクロスカットセロテープ剥離試験で2点以下であることを特徴とする請求項1〜18のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  20. 光学機能層が反射防止層、防眩層、ハードコート層、光学異方層のうちのいずれか、または前記のこれらの複数層が積層された層であることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載のポリマーフィルム。
  21. 偏光子を保護フィルムで狭持してなる偏光板であって、保護フィルムの少なくとも一方が請求項20に記載のポリマーフィルムであることを特徴とする偏光板。
  22. 液晶セルの少なくとも一方に偏光板を配置してなる液晶表示装置であって、偏光板のうち少なくとも一枚が請求項21記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
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