JP2005331773A - 光学補償シート、偏光板、及び液晶表示装置 - Google Patents

光学補償シート、偏光板、及び液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】視野角を拡大するために必要な光学特性を示し、かつ偏光板と併用した場合に薄型性に優れ、Re値およびRth値のバラツキを低減した光学補償シート、上記特性に優れる光学補償シートを備えた偏光板、及びこの偏光板を具備する液晶表示装置を提供する。
【解決手段】ポリマーフィルムと塗布により形成されるポリマー層との積層体からなり、下記数式(I)から(IV)を満たす光学補償シート、この光学補償シートを備えた偏光板、及びこの偏光板を具備する液晶表示装置。
数式(I):0≦Re(590)≦200nm
数式(II):0≦Rth(590)≦400nm
数式(III):〔ΔRe(590)/Re(590)ave〕×100≦20%
数式(IV):(ΔRth(590)/Rth(590)ave)×100≦10
【選択図】 なし

Description

本発明は、液晶セルの視野角を拡大する光学補償シート、該光学補償シートを保護膜として有する偏光板、及び該偏光板を設けた液晶表示装置に関する。
VAモード、OCBモードおよびTNモードの液晶セルにおける視角を倒した場合の複屈折の補償、およびクロスニコル配置した偏光板の透過軸の2等分線方向で視角を倒した場合の光漏れ抑制のためには、面内の最大屈折率方向の屈折率をnx、最大屈折率方向に直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnzとしたときにその三方向の屈折率を制御してnx≧ny>nzの特性を付与した位相差板が有用なことが知られている。
従来、前記したnx≧ny>nzの特性を付与した位相差板としては、ポリマーからなる一軸延伸フィルムの一対を面内の遅相軸方向が直交するように積層してなる積層位相差板や、高分子フィルムにテンターによる横延伸又は二軸延伸を施してなる単層の位相差板が知られていた〔(特許文献1(特開平3−33719号公報)、特許文献2(特開平3−24502号公報)〕。
従来の積層位相差板では、厚さが大きくて偏光板と併用した場合に更に厚さが増し、また1枚毎の接着処理を要して製造効率に乏しい問題点があった。一方、後者の単層位相差板では付与できる位相差の範囲が狭く、厚さ方向の位相差値(Rth)が、面内の位相差値(Re)よりも著しく大きくなる場合には単層では対処できず、所望の位相差値を得るために2枚以上を積層した積層位相差板とする必要があり、前者と同様に厚型化する問題点があった。薄型化についてはポリマー系延伸フィルム、又はポリマー層の塗工膜の一方または両方からなる位相差板により実現されている〔(特許文献3(特開2004−4474号公報)〕。
近年画面の大型化、高輝度化が進み、光学補償シートのムラが視認されやすくなってきており、表示の均一性の要求レベルが上がってきている。その要求レベルに対して、前記のポリマー系延伸フィルム、又はポリマー層の塗工膜の一方または両方からなる位相差板では塗工膜の厚みムラによるRe値およびRth値の面内ばらつきは十分なレベルには至っていない。
特開平3−33719号公報 特開平3−24502号公報 特開2004−4474号公報
本発明の目的は、液晶表示装置の視野角を拡大するために必要な光学特性を示し、かつ偏光板と併用した場合に薄型性に優れ、さらにRe値およびRth値のバラツキを低減した光学補償シート、上記特性に優れる光学補償シートを備えた偏光板、及びこの偏光板を具備する液晶表示装置を提供することにある。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、ポリマーフィルムと塗布により形成されるポリマー層との積層体からなる光学補償シートのRe値およびRth値のばらつきを、ポリマー層の塗布液にレベリング剤を添加することにより低減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明によれば、下記構成の光学補償シート、偏光板及び液晶表示装置が提供され、本発明の上記目的が達成される。
1.ポリマーフィルムAと塗布により形成されるポリマー層Bとの積層体からなる光学補償シートであって、該光学補償シート面内の最大屈折率方向の屈折率をnx、最大屈折率方向に直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnz、シートの厚さをd(単位:nm)、Re(λ)を(nx−ny)dで算出される値、Rth(λ)を[(nx+ny)/2−nz]dで算出される値、フィルム面内のRe(λ)の最大値と最小値の差をΔRe(λ)、フィルム面内のRe(λ)の平均値をRe(λ)ave、そしてλを測定波長としたときに、測定波長590nmにおいて、Re(λ)、Rth(λ)、ΔRe(λ)及びRe(λ)aveが、下記数式(I)から数式(III)を満たすことを特徴とする光学補償シート。
数式(I) :0≦Re(590)≦200nm
数式(II) :0≦Rth(590)≦400nm
数式(III):〔ΔRe(590)/Re(590)ave〕×100≦20%
2.ポリマーフィルムAと塗布により形成されるポリマー層Bとの積層体からなる光学補償シートであって、該光学補償シート面内の最大屈折率方向の屈折率をnx、最大屈折率方向に直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnz、シートの厚さをd(単位:nm)、Re(λ)を(nx−ny)dで算出される値、Rth(λ)を[(nx+ny)/2−nz]dで算出される値、フィルム面内のRth(λ)の最大値と最小値の差をΔRth(λ)、フィルム面内のRth(λ)の平均値をRth(λ)ave、そしてλを測定波長としたときに、測定波長590nmにおいて、Re(λ)、Rth(λ)、ΔRth(λ)及びRth(λ)aveが、下記数式(I)、(II)および(IV)を全て満たすことを特徴とする光学補償シート。
数式(I):0≦Re(590)≦200nm
数式(II):0≦Rth(590)≦400nm
数式(IV):(ΔRth(590)/Rth(590)ave)×100≦10%
3.ポリマー層Bのフィルム面内の厚みdの最大値と最小値の差Δdと面内のdの平均値daveとが下記数式(V)を満たすことを特徴とする上記1または
2に記載の光学補償シート。
数式(V):(Δd/dave)×100≦10(%)
4.ポリマー層Bが液晶性化合物の配向状態を固定化した層であることを特徴とする上記1乃至3に記載の光学補償シート。
5.ポリマー層Bが非液晶性化合物からなる層であることを特徴とする上記1乃至3のいずれかに記載の光学補償シート。
6.ポリマー層Bがポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリエステルイミドの少なくとも1種よりなることを特徴とする上記5に記載の光学補償シート。
7.ポリマー層Bがレべリング剤を含む溶液の塗布により形成された層であることを特徴とする上記4乃至6のいずれかに記載の光学補償シート。
8.ポリマーフィルムA上にポリマー層B形成用塗布液を塗布した後に延伸することを特徴とする上記1乃至7のいずれかに記載の光学補償シート。
9.ポリマーフィルムAを延伸した後に、ポリマー層B形成用塗布液を塗布することを特徴とする上記1乃至7のいずれかに記載の光学補償シート。
10.延伸して作製したポリマーフィルムA上に、ポリマー層Bを転写して形成されたことを特徴とする上記1乃至7のいずれかに記載の光学補償シート。
11.延伸処理がテンター横延伸であることを特徴とする上記8乃至10のいずれかに記載の光学補償シート。
12.ポリマーフィルムAがセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする上記1乃至11のいずれかに記載の光学補償シート。
13.ポリマーフィルムAが、下記数式(VI)〜(IX)を全てみたすことを特徴とする上記1乃至12記載の光学補償シート。
数式(VI) :0nm≦Re(590)≦10nm
数式(VII) :|Rth(590)|≦25nm
数式(VIII):|Re(400)−Re(700)|≦10
数式(IX) :|Rth(400)−Rth(700)|≦35nm
14.ポリマーフィルムAが、延伸処理前であることを特徴とする上記13に記載の光学補償シート。
15.鹸化処理によりポリマー層B表面のレベリング剤量が鹸化処理前よりも少なくなることを特徴とする上記7乃至14のいずれかに記載の光学補償シート。
16.上記1乃至15記載の光学補償シートを少なくとも一方の面に保護膜として有する偏光板。
17.液晶セルの少なくとも一方の面に上記16記載の偏光板を有する液晶表示装置。
18.液晶セルの両面に一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、一方のみが上記16記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
19.上記16記載の偏光板がバックライト側に配置されたことを特徴とする上記18記載の液晶表示装置。
20.液晶モードがVAモードまたはIPSモードであることを特徴とする上記17乃至19記載の液晶表示装置。
本発明によれば、ポリマーフィルムAと塗布により形成されるポリマー層Bとの積層体からなる光学補償シートのRe値およびRth値を満足し、さらにRe値およびRth値のばらつきを、ポリマー層Bの塗布液にレベリング剤の添加により低減することにより、広視野角でかつ表示特性のバラツキを改善した液晶表示装置を提供することができる。
本発明による光学補償シートは、ポリマーフィルムAと塗布により形成されるポリマー層Bとの積層体からなり、本発明の光学補償シートが下記数式(I)から数式(III)を満たすもの、または下記数式(I)、(II)および(IV)を満たすものである。さらに、本発明の光学補償シートでは、数式(I)、(II)、(III)および(IV)を満たすことが好ましい。
数式(I) :0≦Re(590)≦200nm
数式(II) :0≦Rth(590)≦400nm
数式(III):〔ΔRe(590)/Re(590)ave〕×100≦20%
数式(IV) :〔ΔRth(590)/Rth(590)ave〕×100≦10%
上記数式中、該光学補償シート面内の最大屈折率方向の屈折率をnx、最大屈折率方向に直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnz、シートの厚さをd(単位:nm)、Re(λ)を(nx−ny)dで算出される値、Rth(λ)を[(nx+ny)/2−nz]dで算出される値、フィルム面内のRe(λ)の最大値と最小値の差をΔRe(λ)、フィルム面内のRe(λ)の平均値をRe(λ)ave、フィルム面内のRth(λ)の最大値と最小値の差をΔRth(λ)、フィルム面内のRth(λ)の平均値をRth(λ)ave、そしてλを測定波長(590nm)とする。
本発明の光学補償シートが上記条件を満たすことにより、液晶表示装置の視野角を拡大することができ、かつ表示ムラを非常に小さくすることができる。本発明の光学補償シートが上記条件を満たすようにするには、光学補償シートを作製する際の延伸条件、ポリマーB層に添加するレターデーション調節剤など添加剤の種類と量を選択することにより、可能である。
さらに、本発明の光学補償シートは、ポリマー層Bのフィルム面内の厚みdの最大値と最小値の差Δdと面内のdの平均値daveとが下記数式(V)を満たすことが、数式(III)および(IV)を実現するために好ましい。
数式(V):(Δd/dave)×100≦10%
上記数式(V)を満たすようにするには、ポリマーB層を塗布形成の際に、均一に塗布し、厚みの変動を少なくすることにより達成できる。
ポリマーフィルムAを形成するポリマーについては特に限定はなく、光透過性の適宜なものを1種又は2種以上を混合して用いことができる。就中、光透過率が75%以上、特に85%以上の透光性に優れ、表面平滑性、複屈折の均一性、耐熱性に優れるフィルムを形成しうるポリマーが好ましい。また前記した位相差特性Re(λ)、Rth(λ)を示す延伸フィルムの安定した量産性等の点より、延伸方向の屈折率が高くなる正の複屈折性を示すポリマーが好ましく用いうる。
前記した正の複屈折性を示すポリマーの例としては、ノルボルネン系ポリマーやポリカーボネート、ポリエーテルスルホンやポリスルホン、ポリオレフィンやアクリル系ポリマー、セルロース系樹脂やポリアリレート、ポリスチレンやポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、アセテート系ポリマーなどがあげられる。中でも、延伸ポリビニルアルコールフィルムからなる偏光膜との接着性、偏光板作製において要求される適度な透湿性の点でセルロースアシレートフィルムが好ましい。なお、後記するポリマー層Bを形成するポリマー等の延伸方向の屈折率が低くなる負の複屈折性を示すポリマーも用いうる。
以下に本発明に使用するのに好ましいセルロースアシレートフィルムについて説明する。
本発明に使用するのに好ましいセルロースアシレートフィルムは、特定のセルロースアシレートを原料として用いて形成されている。光学異方性の発現性を大きくする場合と、小さくする場合とで使用するセルロースアシレートを使い分ける。
(光学異方性を大きくする場合のセルロースアシレート)
まず、本発明において用いられる光学異方性の発現性を大きくする場合のセルロースアシレートについて詳細に記載する。本発明においては異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して用いても良い。
前記の特定のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基および炭素原子数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記式(X)及び(XI)を満足するセルロースアシレートである。
数式(X):2.0≦A+B≦3.0
数式(XI):0<B
ここで、式中A及びBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換度を表し、Aはアセチル基の置換度、またBは炭素原子数3以上のアシル基の置換度である。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
本発明では、水酸基のAとBとの置換度の総和(A+B)は、上記数式(X)に示すように、2.0〜3.0であり、好ましくは2.2〜2.9であり、特に好ましくは2.40〜2.85である。また、Bの置換度は上記数式(XI)に示すように、0より大きいことが好ましく、0.6以上であることがさらに好ましい。A+Bが上記範囲であれば、親水性が適度であり環境湿度の影響を受け難い。
さらにBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるのが好ましいが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%以上がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。
また更に、セルロースアシレートの6位のAとBの置換度の総和が0.75以上であるのが好ましく、さらには0.80以上が、特には0.85以上が好ましい。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性、濾過性の好ましいフィルム調製用の溶液が作製でき、非塩素系有機溶媒においても、良好な溶液の作製が可能となる。更に粘度が低くろ過性のよい溶液の作成が可能となる。
前記炭素原子数3以上のアシル基(B)としては、脂肪族基でも芳香族炭化水素基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、好ましくはプロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などである。特に好ましくはプロピオニル、ブタノイル基である。また、プロピオニル基の場合には置換度Bは1.3以上であるのが好ましい。
前記混合脂肪酸セルロースアシレートとしては、具体的には、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートが挙げられる。
(光学異方性を小さくする場合のセルロースアシレート)
光学異方性を小さくする場合、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.50〜3.00であることがのぞましい。さらには置換度が2.75〜3.00であることがのぞましく、2.85〜3.00であることがよりのぞましい。
セルロースの水酸基に置換する炭素数2〜22のアシル基としては、脂肪族基でもアリル基でもよく特に限定されず、単一でも2種類以上の混合物でもよい。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいアシル基としては、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、へプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso−ブタノイル、t−ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることが出来る。これらの中でも、アセチル、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t−ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどが好ましく、アセチル、プロピオニル、ブタノイルがより好ましい。
本発明の発明者が鋭意検討した結果、上述のセルロースの水酸基に置換するアシル置換基のうちで、実質的にアセチル基/プロピオニル基/ブタノイル基の少なくとも2種類からなる場合においては、その全置換度が2.50〜3.00の場合にセルロースアシレートフィルムの光学異方性が低下できることがわかった。より好ましいアシル置換度は2.60〜3.00であり、さらにのぞましくは2.65〜3.00である。
(セルロースアシレートの合成方法)
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法である。
前記セルロースアシレートを得るには、具体的には、綿花リンタや木材パルプ等のセルロース原料を適当量の酢酸で前処理した後、予め冷却したカルボン酸化混液に投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する。上記カルボン酸化混液は、一般に溶媒としての酢酸、エステル化剤としての無水カルボン酸および触媒としての硫酸を含む。無水カルボン酸は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが普通である。エステル化反応終了後に、系内に残存している過剰の無水カルボン酸の加水分解およびエステル化触媒の一部の中和のために、中和剤(例えば、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛の炭酸塩、酢酸塩または酸化物)の水溶液を添加する。次に、得られた完全セルロースアシレートを少量の酢化反応触媒(一般には、残存する硫酸)の存在下で、50〜90℃に保つことによりケン化熟成し、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートまで変化させる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、系内に残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく水または希硫酸中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または希硫酸を投入)してセルロースアシレートを分離し、洗浄および安定化処理を行う等して、前記の特定のセルロースアシレートを得ることができる。
前記セルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の特定のセルロースアシレートからなることが好ましい。『実質的に』とは、ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。
前記セルロースアシレートは、粒子状で使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で、好ましくは200〜700、より好ましくは250〜550、更に好ましくは250〜400であり、特に好ましくは250〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
低分子成分が除去されると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は通常のセルロースアシレートよりも低くなるため、前記セルロースアシレートとしては低分子成分を除去したものが有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。 低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、酢化反応における硫酸触媒量を、セルロースアシレート100質量部に対して0.5〜25質量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、分子量分布の点でも好ましい(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。セルロースアシレートの製造時に使用される際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは1質量%以下であり、特には0.7質量%以下である。一般に、セルロースアシレートは、水を含有しており含水率2.5〜5質量%が知られている。本発明でこのセルロースアシレートの含水率にするためには、乾燥することが必要であり、その方法は目的とする含水率になれば特に限定されない。
前記セルロースアシレートの原料綿や合成方法は、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.7−12に詳細に記載されている原料綿や合成方法を採用できる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記の特定のセルロースアシレートと必要に応じて添加剤とを有機溶媒に溶解させた溶液を用いてフィルム化することにより得ることができる。
ポリマーフィルムAの光学異方性の影響を小さくする必要がある場合には、好ましくは延伸処理前において、Re(λ)、Rth(λ)が下記数式(VI)〜(IX)を満たすことが好ましい。延伸処理後においても下記数式(VI)〜(IX)を満たすことが更に好ましい。
数式(VI) :0nm≦Re(590)≦10nm
数式(VII) :|Rth(590)|≦25nm
数式(VIII):|Re(400)−Re(700)|≦10
数式(IX) :|Rth(400)−Rth(700)|≦35nm
延伸処理対象のフィルムは、例えば流延成膜法やロールコート法やフローコート法等のキャスティング法、押出法などの適宜なフィルム形成方式を適用して形成することができる。就中、厚さムラや配向歪ムラ等の少ない延伸フィルムの量産性などの点より、キャスティング法等の溶液製膜法によるフィルムが好ましく用いうる。フィルムの形成に際しては安定剤や可塑剤や金属類等からなる種々の添加剤を必要に応じて配合することができる。
以下に本発明に使用するのに好ましい添加剤について説明する。
本発明において前記セルロースアシレート溶液に用いることができる添加剤としては、例えば、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、レターデーション(光学異方性)発現剤、レターデーション(光学異方性)低下剤、波長分散調整剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤などを挙げることができる。本発明においては、レターデーションの調整を行うためにレターデーション発現剤、レターデーション低下剤、波長分散調整剤を用いるのが好ましい。また、可塑剤、紫外線吸収剤及び剥離促進剤の少なくとも1種以上を用いるのが好ましい。
それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収剤を混合して用いたり、同様に可塑剤を混合して用いることができ、例えば特開平2001−151901号公報などに記載されている。
紫外線吸収剤としては、目的に応じ任意の種類のものを選択することができ、サリチル酸エステル系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、ニッケル錯塩系等の吸収剤を用いることができ、好ましくはベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、サリチル酸エステル系である。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−アセトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等をあげることができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等をあげることができる。サリチル酸エステル系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート等をあげることができる。これら例示した紫外線吸収剤の中でも、特に2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジ−ヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾールが特に好ましい。
紫外線吸収剤は、吸収波長の異なる複数の吸収剤を複合して用いることが、広い波長範囲で高い遮断効果を得ることができるので好ましい。液晶用紫外線吸収剤は、液晶の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。特に好ましい紫外線吸収剤は、先に上げたベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
また、紫外線吸収剤については、特開昭60−235852号、特開平3−199201号、同5−1907073号、同5−194789号、同5−271471号、同6−107854号、同6−118233号、同6−148430号、同7−11056号、同7−11055号、、同7−11056号、同8−29619号、同8−239509号、特開2000−204173号の各公報に記載の化合物も用いることができる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロースアシレートに対し0.001〜5質量%が好ましく、0.01〜1質量%がより好ましい。添加量が上記範囲であれば、添加効果を十分に発揮することができ、しかもフィルム表面へ紫外線吸収剤がブリードアウトすることが殆どない。
また、紫外線吸収剤はセルロースアシレート溶解時に同時に添加しても良いし、溶解後のドープに添加しても良い。特にスタティックミキサ等を用い、流延直前にドープに紫外線吸収剤溶液を添加する形態が、分光吸収特性を容易に調整することができ、好ましい。
前記劣化防止剤は、セルローストリアセテート等が劣化、分解するのを防止することができる。劣化防止剤としては、ブチルアミン、ヒンダードアミン化合物(特開平8−325537号公報)、グアニジン化合物(特開平5−271471号公報)、ベンゾトリアゾール系UV吸収剤(特開平6−235819号公報)、ベンゾフェノン系UV吸収剤(特開平6−118233号公報)などの化合物がある。
可塑剤としては、リン酸エステル、カルボン酸エステルであることが好ましい。また、前記可塑剤が、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレートから選ばれたものであることがより好ましい。さらに、前記可塑剤が、(ジ)ペンタエリスリトールエステル類、グリセロールエステル類、ジグリセロールエステル類であることが好ましい。
剥離促進剤としてはクエン酸のエチルエステル類が例として挙げられる。さらにまた、赤外吸収剤としては例えば特開平2001−194522号公報に記載されている。
これらの添加剤を添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層である場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。これら添加剤の種類や添加量の選択によって、セルロースアシレートフィルムの動的粘弾性測定機(バイブロン:DVA-225(アイティー計測制御(株)))で測定するガラス転移点Tgを70〜150℃に、引張試験機(ストログラフ−R2(東洋精機))で測定する弾性率を1500〜4000MPaすることが好ましい。より好ましくは、ガラス転移点Tgが80〜135℃、弾性率が1500〜3000MPaである。すなわち、本発明のセルロースアシレートフィルムは、偏光板加工や液晶表示装置組立ての工程適性の点で、ガラス転移点Tg、弾性率を上記の範囲とすることが好ましい。
さらに添加剤については、発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.16以降に詳細に記載されているものを適宜用いることができる。
(レターデーション発現剤)
本発明では光学異方性を大きく発現させ、好ましいレターデーション値を実現する場合に、レターデーション発現剤を用いるのが好ましい。
本発明において用いることができるレターデーション発現剤としては、棒状又は円盤状化合物からなるものを挙げることができる。
上記棒状又は円盤状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
棒状化合物からなるレターデーション発現剤の添加量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.1乃至30質量部であることが好ましく、0.5乃至20質量部であることがさらに好ましい。
円盤状のレターデーション発現剤は、前記セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して、0.05乃至20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1乃至10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2乃至5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5乃至2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。
円盤状化合物はRthレターデーション発現性において棒状化合物よりも優れているため、特に大きなRthレターデーションを必要とする場合には好ましく使用される。
二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
棒状または円盤状化合物からなる前記レターデーション発現剤は、250乃至400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。
円盤状化合物について説明する。円盤状化合物としては少なくとも二つの芳香族環を有する化合物を用いることができる。
本明細書において、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。
芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が好ましく、特に1,3,5−トリアジン環が好ましく用いられる。具体的には例えば特開2001−166144号公報に開示の化合物が円盤状化合物として好ましく用いられる。
前記円盤状化合物が有する芳香族環の数は、2乃至20であることが好ましく、2乃至12であることがより好ましく、2乃至8であることがさらに好ましく、2乃至6であることが最も好ましい。
二つの芳香族環の結合関係は、(a)縮合環を形成する場合、(b)単結合で直結する場合、および(c)連結基を介して結合する場合に分類できる(芳香族環のため、スピロ結合は形成できない)。結合関係は、(a)〜(c)のいずれでもよい。
(a)の縮合環(二つ以上の芳香族環の縮合環)の例には、インデン環、ナフタレン環、アズレン環、フルオレン環、フェナントレン環、アントラセン環、アセナフチレン環、ビフェニレン環、ナフタセン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、インドリジン環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、プリン環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、キノリジン環、キナゾリン環、シンノリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、カルバゾール環、アクリジン環、フェナントリジン環、キサンテン環、フェナジン環、フェノチアジン環、フェノキサチイン環、フェノキサジン環およびチアントレン環が含まれる。ナフタレン環、アズレン環、インドール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環およびキノリン環が好ましい。
(b)の単結合は、二つの芳香族環の炭素原子間の結合であることが好ましい。二以上の単結合で二つの芳香族環を結合して、二つの芳香族環の間に脂肪族環または非芳香族性複素環を形成してもよい。
(c)の連結基も、二つの芳香族環の炭素原子と結合することが好ましい。連結基は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−CO−、−O−、−NH−、−S−またはそれらの組み合わせであることが好ましい。組み合わせからなる連結基の例を以下に示す。なお、以下の連結基の例の左右の関係は、逆になってもよい。
c1:−CO−O−
c2:−CO−NH−
c3:−アルキレン−O−
c4:−NH−CO−NH−
c5:−NH−CO−O−
c6:−O−CO−O−
c7:−O−アルキレン−O−
c8:−CO−アルケニレン−
c9:−CO−アルケニレン−NH−
c10:−CO−アルケニレン−O−
c11:−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−
c12:−O−アルキレン−CO−O−アルキレン−O−CO−アルキレン−O−
c13:−O−CO−アルキレン−CO−O−
c14:−NH−CO−アルケニレン−
c15:−O−CO−アルケニレン−
芳香族環および連結基は、置換基を有していてもよい。
置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、スルファモイル基、ウレイド基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、脂肪族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アルキルスルホニル基、脂肪族アミド基、脂肪族スルホンアミド基、脂肪族置換アミノ基、脂肪族置換カルバモイル基、脂肪族置換スルファモイル基、脂肪族置換ウレイド基および非芳香族性複素環基が含まれる。
アルキル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。環状アルキル基よりも鎖状アルキル基の方が好ましく、直鎖状アルキル基が特に好ましい。アルキル基は、さらに置換基(例、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アルキル置換アミノ基)を有していてもよい。アルキル基の(置換アルキル基を含む)例には、メチル基、エチル基、n−ブチル基、n−ヘキシル基、2−ヒドロキシエチル基、4−カルボキシブチル基、2−メトキシエチル基および2−ジエチルアミノエチル基が含まれる。
アルケニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルケニル基よりも鎖状アルケニル基の方が好ましく、直鎖状アルケニル基が特に好ましい。アルケニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルケニル基の例には、ビニル基、アリル基および1−ヘキセニル基が含まれる。
アルキニル基の炭素原子数は、2乃至8であることが好ましい。環状アルキケニル基よりも鎖状アルキニル基の方が好ましく、直鎖状アルキニル基が特に好ましい。アルキニル基は、さらに置換基を有していてもよい。アルキニル基の例には、エチニル基、1−ブチニル基および1−ヘキシニル基が含まれる。
脂肪族アシル基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシル基の例には、アセチル基、プロパノイル基およびブタノイル基が含まれる。
脂肪族アシルオキシ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アシルオキシ基の例には、アセトキシ基が含まれる。
アルコキシ基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルコキシ基は、さらに置換基(例、アルコキシ基)を有していてもよい。アルコキシ基の(置換アルコキシ基を含む)例には、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびメトキシエトキシ基が含まれる。
アルコキシカルボニル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニル基の例には、メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基が含まれる。
アルコキシカルボニルアミノ基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。アルコキシカルボニルアミノ基の例には、メトキシカルボニルアミノ基およびエトキシカルボニルアミノ基が含まれる。
アルキルチオ基の炭素原子数は、1乃至12であることが好ましい。アルキルチオ基の例には、メチルチオ基、エチルチオ基およびオクチルチオ基が含まれる。
アルキルスルホニル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。アルキルスルホニル基の例には、メタンスルホニル基およびエタンスルホニル基が含まれる。
脂肪族アミド基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族アミド基の例には、アセトアミド基が含まれる。
脂肪族スルホンアミド基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族スルホンアミド基の例には、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基およびn−オクタンスルホンアミド基が含まれる。
脂肪族置換アミノ基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましい。脂肪族置換アミノ基の例には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基および2−カルボキシエチルアミノ基が含まれる。
脂肪族置換カルバモイル基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換カルバモイル基の例には、メチルカルバモイル基およびジエチルカルバモイル基が含まれる。
脂肪族置換スルファモイル基の炭素原子数は、1乃至8であることが好ましい。脂肪族置換スルファモイル基の例には、メチルスルファモイル基およびジエチルスルファモイル基が含まれる。
脂肪族置換ウレイド基の炭素原子数は、2乃至10であることが好ましい。脂肪族置換ウレイド基の例には、メチルウレイド基が含まれる。
非芳香族性複素環基の例には、ピペリジノ基およびモルホリノ基が含まれる。
円盤状化合物からなるレターデーション発現剤の分子量は、300乃至800であることが好ましい
本発明では前述の円盤状化合物の他に、直線的な分子構造を有する棒状化合物も好ましく用いることができる。直線的な分子構造とは、熱力学的に最も安定な構造において棒状化合物の分子構造が直線的であることを意味する。熱力学的に最も安定な構造は、結晶構造解析または分子軌道計算によって求めることができる。例えば、分子軌道計算ソフト(例、WinMOPAC2000、富士通(株)製)を用いて分子軌道計算を行い、化合物の生成熱が最も小さくなるような分子の構造を求めることができる。分子構造が直線的であるとは、上記のように計算して求められる熱力学的に最も安定な構造において、分子構造で主鎖の構成する角度が140度以上であることを意味する。
棒状化合物としては、少なくとも二つの芳香族環を有するものが好ましく、少なくとも二つの芳香族環を有する棒状化合物としては、下記一般式(I)で表される化合物が好ましい。
一般式(I):Ar1−L1−Ar2
上記一般式(I)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。
本明細書において、芳香族基は、アリール基(芳香族性炭化水素基)、置換アリール基、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基を含む。
アリール基および置換アリール基の方が、芳香族性ヘテロ環基および置換芳香族性ヘテロ環基よりも好ましい。芳香族性へテロ環基のヘテロ環は、一般には不飽和である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性へテロ環は一般に最多の二重結合を有する。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が好ましく、窒素原子または硫黄原子がさらに好ましい。
芳香族基の芳香族環としては、ベンゼン環、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、チアゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、ピリジン環、ピリミジン環およびピラジン環が好ましく、ベンゼン環が特に好ましい。
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基の例には、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、アルキルアミノ基(例、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基)、ニトロ基、スルホ基、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例、N−メチルカルバモイル基、N−エチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基)、スルファモイル基、アルキルスルファモイル基(例、N−メチルスルファモイル基、N−エチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基)、ウレイド基、アルキルウレイド基(例、N−メチルウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N,N,N'−トリメチルウレイド基)、アルキル基(例、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、イソプロピル基、s−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基)、アルケニル基(例、ビニル基、アリル基、ヘキセニル基)、アルキニル基(例、エチニル基、ブチニル基)、アシル基(例、ホルミル基、アセチル基、ブチリル基、ヘキサノイル基、ラウリル基)、アシルオキシ基(例、アセトキシ基、ブチリルオキシ基、ヘキサノイルオキシ基、ラウリルオキシ基)、アルコキシ基(例、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基)、アリールオキシ基(例、フェノキシ基)、アルコキシカルボニル基(例、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ペンチルオキシカルボニル基、ヘプチルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例、フェノキシカルボニル基)、アルコキシカルボニルアミノ基(例、ブトキシカルボニルアミノ基、ヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アルキルチオ基(例、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、ペンチルチオ基、ヘプチルチオ基、オクチルチオ基)、アリールチオ基(例、フェニルチオ基)、アルキルスルホニル基(例、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、ペンチルスルホニル基、ヘプチルスルホニル基、オクチルスルホニル基)、アミド基(例、アセトアミド基、ブチルアミド基、ヘキシルアミド基、ラウリルアミド基)および非芳香族性複素環基(例、モルホリル基、ピラジニル基)が含まれる。
置換アリール基および置換芳香族性ヘテロ環基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アミノ基、アルキル置換アミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アミド基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基およびアルキル基が好ましい。
アルキルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基およびアルキルチオ基のアルキル部分とアルキル基とは、さらに置換基を有していてもよい。アルキル部分およびアルキル基の置換基の例には、ハロゲン原子、ヒドロキシル、カルボキシル、シアノ、アミノ、アルキルアミノ基、ニトロ、スルホ、カルバモイル、アルキルカルバモイル基、スルファモイル、アルキルスルファモイル基、ウレイド、アルキルウレイド基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アミド基および非芳香族性複素環基が含まれる。アルキル部分およびアルキル基の置換基としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル、アミノ、アルキルアミノ基、アシル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニル基およびアルコキシ基が好ましい。
一般式(I)において、L1は、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基から選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造を有していてもよい。環状アルキレン基としては、シクロヘキシレンが好ましく、1,4−シクロへキシレンが特に好ましい。鎖状アルキレン基としては、直鎖状アルキレン基の方が分岐を有するアルキレン基よりも好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至20であることが好ましく、より好ましくは1乃至15であり、さらに好ましくは1乃至10であり、さらに好ましくは1乃至8であり、最も好ましくは1乃至6である。
アルケニレン基およびアルキニレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルケニレン基およびアルキニレン基の炭素原子数は、好ましくは2乃至10であり、より好ましくは2乃至8であり、さらに好ましくは2乃至6であり、さらに好ましくは2乃至4であり、最も好ましくは2(ビニレンまたはエチニレン)である。
アリーレン基は、炭素原子数は6乃至20であることが好ましく、より好ましくは6乃至16であり、さらに好ましくは6乃至12である。
一般式(I)の分子構造において、L1を挟んで、Ar1とAr2とが形成する角度は、140度以上であることが好ましい。
棒状化合物としては、下記式一般式(II)で表される化合物がさらに好ましい。
一般式(II):Ar1−L2−X−L3−Ar2
上記一般式(II)において、Ar1およびAr2は、それぞれ独立に、芳香族基である。芳香族基の定義および例は、一般式(I)のAr1およびAr2と同様である。
一般式(II)において、L2およびL3は、それぞれ独立に、アルキレン基、−O−、−CO−およびそれらの組み合わせからなる基より選ばれる二価の連結基である。
アルキレン基は、環状構造よりも鎖状構造を有することが好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造を有することがさらに好ましい。
アルキレン基の炭素原子数は、1乃至10であることが好ましく、より好ましくは1乃至8であり、さらに好ましくは1乃至6であり、さらに好ましくは1乃至4であり、1または2(メチレンまたはエチレン)であることが最も好ましい。
2およびL3は、−O−CO−または−CO−O−であることが特に好ましい。
一般式(II)において、Xは、1,4-シクロへキシレン、ビニレンまたはエチニレンである。
一般式(I)又は(II)で表される化合物の具体例としては、特開2004−109657号公報の〔化1〕乃至〔化11〕に記載の化合物が挙げられる。
その他、好ましい化合物を以下に示す。
Figure 2005331773
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溶液の紫外線吸収スペクトルにおいて最大吸収波長(λmax)が250nmより短波長である棒状化合物を、二種類以上併用してもよい。
棒状化合物は、文献記載の方法により合成できる。文献としては、Mol. Cryst. Liq. Cryst., 53巻、229ページ(1979年)、同89巻、93ページ(1982年)、同145巻、111ページ(1987年)、同170巻、43ページ(1989年)、J. Am. Chem. Soc.,113巻、1349ページ(1991年)、同118巻、5346ページ(1996年)、同92巻、1582ページ(1970年)、J. Org. Chem.,40巻、420ページ(1975年)、Tetrahedron、48巻16号、3437ページ(1992年)を挙げることができる。
(レターデーション低下剤)
セルロースアシレートフィルムの光学的異方性を低下させる化合物について説明する。本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、フイルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制する化合物を用いて光学的異方性を十分に低下させ、ReがゼロかつRthがゼロに近くなるようにした。このためには光学的異方性を低下させる化合物はセルロースアシレートに十分に相溶し、化合物自身が棒状の構造や平面性の構造を持たないことが有利である。具体的には芳香族基のような平面性の官能基を複数持っている場合、それらの官能基を同一平面ではなく、非平面に持つような構造が有利である。
(LogP値)
本発明のセルロースアシレートフィルムを作製するにあたっては、上述のようにフィルム中のセルロースアシレートが面内および膜厚方向に配向するのを抑制して光学異方性を低下させる化合物のうち、オクタノール−水分配係数(logP値)が0ないし7である化合物が好ましい。logP値が0ないし7の範囲にある化合物は、セルロースアシレートとの相溶性が良好で、フィルムの白濁や粉吹きが生じ難く、しかも親水性が適度でセルロースアシレートフィルムの耐水性が良好である。logP値としてさらに好ましい範囲は1ないし6であり、特に好ましい範囲は1.5ないし5である。
オクタノール−水分配係数(logP値)の測定は、JIS日本工業規格Z7260−107(2000)に記載のフラスコ浸とう法により実施することができる。また、オクタノール−水分配係数(logP値)は実測に代わって、計算化学的手法あるいは経験的方法により見積もることも可能である。計算方法としては、Crippen's fragmentation法( J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)、Viswanadhan's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,29,163(1989).)、Broto's fragmentation法(Eur.J.Med.Chem.- Chim.Theor.,19,71(1984).)などが好ましく用いられるが、Crippen's fragmentation法(J.Chem.Inf.Comput.Sci.,27,21(1987).)がより好ましい。
ある化合物のlogPの値が測定方法あるいは計算方法により異なる場合に、該化合物が本発明の範囲内であるかどうかは、Crippen's fragmentation法により判断することが好ましい。
[光学的異方性を低下する化合物の物性]
光学異方性を低下させる化合物は、芳香族基を含有しても良いし、含有しなくても良い。また光学異方性を低下させる化合物は、分子量が150以上3000以下であることが好ましく、170以上2000以下であることが好ましく、200以上1000以下であることが特に好ましい。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
光学異方性を低下させる化合物は、好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜250℃の固体であり、さらに好ましくは、25℃で液体であるか、融点が25〜200℃の固体である。また光学異方性を低下させる化合物は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
光学異方性を低下させる化合物の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、1ないし25質量%であることがより好ましく、5ないし20質量%であることが特に好ましい。
光学異方性を低下させる化合物は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
光学異方性を低下させる化合物を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
光学異方性を低下させる化合物は、少なくとも一方の側の表面から全膜厚の10%までの部分における該化合物の平均含有率が、該セルロースアシレートフイルムの中央部における該化合物の平均含有率の80−99%である。本発明の化合物の存在量は、例えば、特開平8−57879号公報に記載の赤外吸収スペクトルを用いる方法などにより表面および中心部の化合物量を測定して求めることができる。
以下に本発明で好ましく用いられる、セルロースアシレートフィルムの光学異方性を低下させる化合物(レターデーション低下剤)の具体例を示すが、本発明はこれら化合物に限定されない。
Figure 2005331773
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[波長分散調整剤]
セルロースアシレートフィルムの波長分散を低下させる化合物について説明する。本発明の発明者らは、鋭意検討した結果、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物を少なくとも1種、セルロースアシレート固形分に対して0.01〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調整した。添加量としては0.1〜30質量%含むことによってセルロースアシレートフィルムのRe(λ)、Rth(λ)の波長分散を調整した。
セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの値は一般に短波長側よりも長波長側が大きい波長分散特性となる。したがって相対的に小さい短波長側のRe(λ)、Rth(λ)を大きくすることによって波長分散を平滑にすることが要求される。一方200〜400nmの紫外領域に吸収を持つ化合物は短波長側よりも長波長側の吸光度が大きい波長分散特性をもつ。この化合物自身がセルロースアシレートフィルム内部で等方的に存在していれば、化合物自身の複屈折性、ひいてはRe(λ)、Rth(λ)の波長分散は吸光度の波長分散と同様に短波長側が大きいと想定される。
したがって上述したような、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、化合物自身のRe(λ)、Rth(λ)の波長分散が短波長側が大きいと想定されるものを用いることによって、セルロースアシレートフィルムのRe、Rthの波長分散を調製することができる。このためには波長分散を調整する化合物はセルロースアシレートに十分均一に相溶することが要求される。このような化合物の紫外領域の吸収帯範囲は200〜400nmが好ましいが、220〜395nmがより好ましく、240〜390nmがさらに好ましい。
また、近年テレビやノートパソコン、モバイル型携帯端末などの液晶表示装置ではより少ない電力で輝度を高めるために、液晶表示装置に用いられる光学部材の透過率が優れたものが要求されている。その点においては、200〜400nmの紫外領域に吸収を持ち、フィルムの|Re(400)−Re(700)|および|Rth(400)−Rth(700)|を低下させる化合物をセルロースアシレートフイルムに添加する場合、分光透過率が優れている要求される。本発明のセルロースアシレートフィルムにおいては、波長380nmにおける分光透過率が45%以上95%以下であり、かつ波長350nmにおける分光透過率が10%以下であることがのぞましい。
上述のような、本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤は揮散性の観点から分子量が250〜1000であることが好ましい。より好ましくは260〜800であり、更に好ましくは270〜800であり、特に好ましくは300〜800である。これらの分子量の範囲であれば、特定のモノマー構造であっても良いし、そのモノマーユニットが複数結合したオリゴマー構造、ポリマー構造でも良い。
波長分散調整剤は、セルロースアシレートフィルム作製のドープ流延、乾燥の過程で揮散しないことが好ましい。
(化合物添加量)
上述した本発明で好ましく用いられる波長分散調整剤の添加量は、セルロースアシレートの0.01ないし30質量%であることが好ましく、0.1ないし20質量%であることがより好ましく、0.2ないし10質量%であることが特に好ましい。
(化合物添加の方法)
またこれら波長分散調整剤は、単独で用いても、2種以上化合物を任意の比で混合して用いてもよい。
またこれら波長分散調整剤を添加する時期はドープ作製工程中の何れであってもよく、ドープ調製工程の最後に行ってもよい。
本発明に好ましく用いられる波長分散調整剤の具体例としては、例えばベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノ基を含む化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられるが、本発明はこれら化合物だけに限定されるものではない。
[マット剤微粒子]
本発明のセルロースアシレートフィルムには、マット剤として微粒子を加えることが好ましい。本発明に使用される微粒子としては、二酸化珪素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムを挙げることができる。微粒子はケイ素を含むものが濁度が低くなる点で好ましく、特に二酸化珪素が好ましい。二酸化珪素の微粒子は、1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。1次粒子の平均径が5〜16nmと小さいものがフィルムのヘイズを下げることができより好ましい。見かけ比重は90〜200g/リットル以上が好ましく、100〜200g/リットル以上がさらに好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
前記二酸化珪素微粒子を用いる場合の使用量は、セルロースアシレートを含むポリマー成分100質量部に対して0.01〜0.3質量部とするのが好ましい。
これらの微粒子は、通常平均粒子径が0.1〜3.0μmの2次粒子を形成し、これらの微粒子はフィルム中では、1次粒子の凝集体として存在し、フィルム表面に0.1〜3.0μmの凹凸を形成させる。2次平均粒子径は、ヘイズの強さ及びきしみ防止効果の観点から、0.2μm以上1.5μm以下が好ましく、0.4μm以上1.2μm以下がさらに好ましく、0.6μm以上1.1μm以下が最も好ましい。
1次、2次粒子径はフィルム中の粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒径とする。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子径とする。
二酸化珪素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上日本アエロジル(株)製)などの市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上日本アエロジル(株)製)の商品名で市販されており、使用することができる。
これらの中でアエロジル200V、アエロジルR972Vが1次平均粒子径が20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化珪素の微粒子であり、光学フィルムの濁度を低く保ちながら、摩擦係数をさげる効果が大きいため特に好ましい。
本発明において2次平均粒子径の小さな粒子を有するセルロースアシレートフィルムを得るために、微粒子の分散液を調製する際にいくつかの手法が考えられる。例えば、溶剤と微粒子を撹拌混合した微粒子分散液をあらかじめ作成し、この微粒子分散液を別途用意した少量のセルロースアシレート溶液に加えて撹拌溶解し、さらにメインのセルロースアシレートドープ液と混合する方法がある。この方法は二酸化珪素微粒子の分散性がよく、二酸化珪素微粒子が更に再凝集しにくい点で好ましい調製方法である。ほかにも、溶剤に少量のセルロースエステルを加え、撹拌溶解した後、これに微粒子を加えて分散機で分散を行いこれを微粒子添加液とし、この微粒子添加液をインラインミキサーでドープ液と十分混合する方法もある。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化珪素微粒子を溶剤などと混合して分散するときの二酸化珪素の濃度は5〜30質量%が好ましく、10〜25質量%が更に好ましく、15〜20質量%が最も好ましい。分散濃度が高い方が添加量に対する液濁度は低くなり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。最終的なセルロースアシレートのドープ溶液中でのマット剤の添加量は1m2あたり0.01〜1.0gが好ましく、0.03〜0.3gが更に好ましく、0.08〜0.16gが最も好ましい。
使用される溶剤は低級アルコール類としては、好ましくはメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等が挙げられる。低級アルコール以外の溶媒としては特に限定されないが、セルロースエステルの製膜時に用いられる溶剤を用いることが好ましい。
次に、本発明のセルロースアシレートが溶解される前記有機溶媒について記述する。
本発明においては、有機溶媒として、塩素系有機溶媒を主溶媒とする塩素系溶媒と塩素系有機溶媒を含まない非塩素系溶媒とのいずれをも用いることができる。
(塩素系溶媒)
本発明のセルロースアシレートの溶液を作製するに際しては、主溶媒として塩素系有機溶媒が好ましく用いられる。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りはその塩素系有機溶媒の種類は特に限定されない。これらの塩素系有機溶媒は、好ましくはジクロロメタン、クロロホルムである。特にジクロロメタンが好ましい。また、塩素系有機溶媒以外の有機溶媒を混合することも特に問題ない。その場合は、ジクロロメタンは有機溶媒全体量中少なくとも50質量%使用することが必要である。本発明で塩素系有機溶剤と併用される他の有機溶媒について以下に記す。すなわち、好ましい他の有機溶媒としては、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテル、アルコール、炭化水素などから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトン、エーテルおよびアルコールは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を同時に有していてもよい。二種類以上の官能基を有する溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテート等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノン等が挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等が挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
また塩素系有機溶媒と併用されるアルコールとしては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。
塩素系有機溶媒と他の有機溶媒との組合せ例としては以下の組成を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・ジクロロメタン/メタノール/エタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メタノール/プロパノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/10/5/7、質量部)
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/8、質量部)
・ジクロロメタン/酢酸メチル/ブタノール(80/10/10、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/1、3ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(70/10/10/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ジクロロメタン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・ジクロロメタン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
などをあげることができる。
(非塩素系溶媒)
次に、本発明のセルロースアシレートの溶液を作製するに際して好ましく用いられる非塩素系有機溶媒について記載する。本発明においては、セルロースアシレートが溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは非塩素系有機溶媒は特に限定されない。本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶媒が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。エステル、ケトンおよびエーテルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを2つ以上有する化合物も、主溶媒として用いることができ、たとえばアルコール性水酸基のような他の官能基を有していてもよい。2種類以上の官能基を有する主溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する化合物の規定範囲内であればよい。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶媒の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。
以上のセルロースアシレートに用いられる非塩素系有機溶媒については、前述のいろいろな観点から選定されるが、好ましくは以下のとおりである。すなわち、非塩素系溶媒としては、前記非塩素系有機溶媒を主溶媒とする混合溶媒が好ましく、互いに異なる3種類以上の溶媒の混合溶媒であって、第1の溶媒が酢酸メチル、酢酸エチル、蟻酸メチル、蟻酸エチル、アセトン、ジオキソラン、ジオキサンから選ばれる少なくとも一種あるいは或いはそれらの混合液であり、第2の溶媒が炭素原子数が4〜7のケトン類またはアセト酢酸エステルから選ばれ、第3の溶媒として炭素数が1〜10のアルコールまたは炭化水素、より好ましくは炭素数1〜8のアルコールから選ばれる、混合溶媒である。なお第1の溶媒が、2種以上の溶媒の混合液である場合は、第2の溶媒がなくてもよい。第1の溶媒は、さらに好ましくは酢酸メチル、アセトン、蟻酸メチル、蟻酸エチルあるいはこれらの混合物であり、第2の溶媒は、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、アセチル酢酸メチルが好ましく、これらの混合溶媒であってもよい。
第3の溶媒であるアルコールは、直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪族炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。アルコールの例には、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、1−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノールおよびシクロヘキサノールが含まれる。なおアルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。さらに炭化水素は、直鎖であっても分岐を有していても環状であってもよい。芳香族炭化水素と脂肪族炭化水素のいずれも用いることができる。脂肪族炭化水素は、飽和であっても不飽和であってもよい。炭化水素の例には、シクロヘキサン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンおよびキシレンが含まれる。これらの第3の溶媒であるアルコールおよび炭化水素は単独でもよいし2種類以上の混合物でもよく特に限定されない。第3の溶媒としては、好ましい具体的化合物は、アルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、およびシクロヘキサノール、シクロヘキサン、ヘキサンを挙げることができ、特にはメタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノールである。
以上の3種類の混合溶媒の混合割合は、混合溶媒全体量中、第1の溶媒が20〜95質量%、第2の溶媒が2〜60質量%さらに第3の溶媒が2〜30質量%の比率で含まれることが好ましく、さらに第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜50質量%、さらに第3のアルコールが3〜25質量%含まれることが好ましい。また特に第1の溶媒が30〜90質量%であり、第2の溶媒が3〜30質量%、第3の溶媒がアルコールであり3〜15質量%含まれることが好ましい。以上の本発明で用いられる非塩素系有機溶媒は、さらに詳細には発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.12−16に詳細に記載されている。本発明の好ましい非塩素系有機溶媒の組合せは以下挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/ブタノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/エタノール/プロパノール(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メタノール/ブタノール/シクロヘキサン(75/10/5/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(82/10/4/4、質量部)
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(80/10/4/6、質量部)
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(80/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/メチルエチルケトン/エタノール/イソプロパノール(75/10/10/5/7、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/メタノール/イソプロパノール(80/10/5/8、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/ブタノール(85/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/シクロペンタノン/アセトン/メタノール/ブタノール(60/15/15/5/6、質量部)、
・酢酸メチル/シクロヘキサノン/メタノール/ヘキサン(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/1、3−ジオキソラン/メタノール/エタノール(70/20/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/ジオキサン/アセトン/メタノール/エタノール(60/20/10/5/5、質量部)、
・酢酸メチル/アセトン/シクロペンタノン/エタノール/イソブタノール/シクロヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/メチルエチルケトン/アセトン/メタノール/エタノール(50/20/20/5/5、質量部)、
・ギ酸メチル/アセトン/酢酸エチル/エタノール/ブタノール/ヘキサン(65/10/10/5/5/5、質量部)、
・アセトン/アセト酢酸メチル/メタノール/エタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/シクロペンタノン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・アセトン/1,3−ジオキソラン/エタノール/ブタノール(65/20/10/5、質量部)、
・1、3−ジオキソラン/シクロヘキサノン/メチルエチルケトン/メタノール/ブタノール(55/20/10/5/5/5、質量部)
などをあげることができる。
更に下記の方法で調整したセルロースアシレート溶液を用いることもできる。
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(81/8/7/4、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に2質量部のブタノールを追加添加する方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール/ブタノール(84/10/4/2、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に4質量部のブタノールを追加添加する方法
・酢酸メチル/アセトン/エタノール(84/10/6、質量部)でセルロースアシレート溶液を作製しろ過・濃縮後に5質量部のブタノールを追加添加する方法
本発明に用いるドープには、上記本発明の非塩素系有機溶媒以外に、ジクロロメタンを本発明の全有機溶媒量の10質量%以下含有させてもよい。
(セルロースアシレート溶液特性)
セルロースアシレートの溶液は、前記有機溶媒にセルロースアシレートを10〜30質量%の濃度で溶解させた溶液であるのが製膜流延適性の点で好ましく、より好ましくは13〜27質量%であり、特に好ましくは15〜25質量%である。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液とした後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
次に、本発明ではセルロースアシレート溶液を同一組成の有機溶媒で0.1〜5質量%にした希釈溶液中のセルロースアシレートの会合体分子量が15万〜1500万であることが、好ましい。さらに好ましくは、会合分子量が18万〜900万である。この会合分子量は静的光散乱法で求めることができる。その際に同時に求められる慣性自乗半径は10〜200nmになるように溶解することが好ましい。さらに好ましい慣性自乗半径は20〜200nmである。更にまた、第2ビリアル係数が−2×10-4〜+4×10-4となるように溶解することが好ましく、より好ましくは第2ビリアル係数が−2×10-4〜+2×10-4である。
ここで、本発明での会合分子量、さらに慣性自乗半径および第2ビリアル係数の定義について述べる。これらは下記方法に従って、静的光散乱法を用いて測定する。測定は装置の都合上希薄領域で測定するが、これらの測定値は本発明の高濃度域でのドープの挙動を反映するものである。
まず、セルロースアシレートをドープに使用する溶剤に溶かし、0.1質量%、0.2質量%、0.3質量%、0.4質量%の溶液を調製する。なお、秤量は吸湿を防ぐためセルロースアシレートは120℃で2時間乾燥したものを用い、25℃,10%RHで行う。溶解方法は、ドープ溶解時に採用した方法(常温溶解法、冷却溶解法、高温溶解法)に従って実施する。続いてこれらの溶液、および溶剤を0.2μmのテフロン製フィルターで濾過する。そして、ろ過した溶液を静的光散乱を、光散乱測定装置(大塚電子(株)製DLS−700)を用い、25℃に於いて30度から140度まで10度間隔で測定する。得られたデータをBERRYプロット法にて解析する。なお、この解析に必要な屈折率はアッベ屈折系で求めた溶剤の値を用い、屈折率の濃度勾配(dn/dc)は、示差屈折計(大塚電子(株)製DRM−1021)を用い、光散乱測定に用いた溶剤、溶液を用いて測定する。
(ドープ調製)
次にセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製について述べる。セルロースアシレートの溶解方法は特に限定されず、室温でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388号各公報などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.22−25に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.25に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
セルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率が以下に述べる範囲であることが、流延しやすく好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instruments社製)を用いて測定する。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n*(Pa・s)および−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求める。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。本発明では、40℃での粘度が1〜400Pa・sであり、15℃での動的貯蔵弾性率が500Pa以上であるのが好ましく、より好ましくは40℃での粘度が10〜200Pa・sで、15℃での動的貯蔵弾性率が100〜100万Paである。さらには低温での動的貯蔵弾性率が大きいほど好ましく、例えば流延支持体が−5℃の場合は動的貯蔵弾性率が−5℃で1万〜100万Paであることが好ましく、支持体が−50℃の場合は−50℃での動的貯蔵弾性率が1万〜500万Paが好ましい。
本発明においては、前述の特定のセルロースアシレートを用いているので、高濃度のドープが得られるのが特徴であり、濃縮という手段に頼らずとも高濃度でしかも安定性の優れたセルロースアシレート溶液が得られる。更に溶解し易くするために低い濃度で溶解してから、濃縮手段を用いて濃縮してもよい。濃縮の方法としては、特に限定するものはないが、例えば、低濃度溶液を筒体とその内部の周方向に回転する回転羽根外周の回転軌跡との間に導くとともに、溶液との間に温度差を与えて溶媒を蒸発させながら高濃度溶液を得る方法(例えば、特開平4−259511号公報等)、加熱した低濃度溶液をノズルから容器内に吹き込み、溶液をノズルから容器内壁に当たるまでの間で溶媒をフラッシュ蒸発させるとともに、溶媒蒸気を容器から抜き出し、高濃度溶液を容器底から抜き出す方法(例えば、米国特許第2,541,012号、米国特許第2,858,229号、米国特許第4,414,341号、米国特許第4,504,355号各明細書等などに記載の方法)等で実施できる。
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。セルロースアシレート溶液の濾過には絶対濾過精度が0.1〜100μmのフィルタを用いることが好ましく、さらには絶対濾過精度が0.5〜25μmであるフィルタを用いることが好ましい。フィルタの厚さは、0.1〜10mmが好ましく、更には0.2〜2mmが好ましい。その場合、ろ過圧力は1.6MPa 以下が好ましく、より好ましくは1.2MPa以下、更には1.0MPa以下、特に0.2MPa以下で濾過することが好ましい。濾材としては、ガラス繊維、セルロース繊維、濾紙、四フッ化エチレン樹脂などのフッ素樹脂等の従来公知である材料を好ましく用いることができ、特にセラミックス、金属等が好ましく用いられる。セルロースアシレート溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常10Pa・s〜2000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、30Pa・s〜1000Pa・sがより好ましく、40Pa・s〜500Pa・sが更に好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜+70℃であり、より好ましくは−5〜+55℃である。
(製膜)
本発明のセルロースアシレートフィルムは、前記セルロースアシレート溶液を用いて製膜を行うことにより得ることができる。製膜方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。以下に各製造工程について簡単に述べるが、これらに限定されるものではない。
まず、調製したセルロースアシレート溶液(ドープ)は、ソルベントキャスト法によりセルロースアシレートフィルムを作製される際に、ドープをドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が5〜40質量%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が30℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましく用いられ、特には−10〜20℃の金属支持体温度であることが好ましい。さらに特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平07−032391号、特開平03−193316号、特開平05−086212号、特開昭62−037113号、特開平02−276607号、特開昭55−014201号、特開平02−111511号、および特開平02−208650号の各公報に記載の方法を本発明では用いることができる。
(重層流延)
セルロースアシレート溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のセルロースアシレート液を流延してもよい。複数のセルロースアシレート溶液を流延する場合、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、および特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、および特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。また、特開昭56−162617号公報に記載の高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出すセルロースアシレートフィルム流延方法でもよい。更に又、特開昭61−94724号および特開昭61−94725号の各公報に記載の外側の溶液が内側の溶液よりも貧溶媒であるアルコール成分を多く含有させることも好ましい態様である。或いはまた2個の流延口を用いて、第一の流延口により金属支持体に成型したフィルムを剥離し、金属支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製することでもよく、例えば特公昭44−20235号公報に記載されている方法である。流延するセルロースアシレート溶液は同一の溶液でもよいし、異なるセルロースアシレート溶液でもよく特に限定されない。複数のセルロースアシレート層に機能を持たせるために、その機能に応じたセルロースアシレート溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。さらにセルロースアシレート溶液は、他の機能層(例えば、接着層、染料層、帯電防止層、アンチハレーション層、UV吸収層、偏光層など)を同時に流延することも実施しうる。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のセルロースアシレート溶液を押出すことが必要であり、その場合セルロースアシレート溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のセルロースアシレート溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に金属支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できるばかりでなく、濃厚なセルロースアシレート溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、フィルムの生産スピードを高めることができた。共流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。ここで、3層以上の共流延の場合は金属支持体に接した層と空気側に接した層のトータル膜厚を外側の厚さと定義する。共流延の場合、前述の可塑剤、紫外線吸収剤、マット剤等の添加物濃度が異なるセルロースアシレート溶液を共流延して、積層構造のセルロースアシレートフィルムを作製することもできる。例えば、スキン層/コア層/スキン層といった構成のセルロースアシレートフィルムを作ることができる。例えば、マット剤は、スキン層に多く、又はスキン層のみに入れることができる。可塑剤、紫外線吸収剤はスキン層よりもコア層に多くいれることができ、コア層のみにいれてもよい。又、コア層とスキン層で可塑剤、紫外線吸収剤の種類を変更することもでき、例えばスキン層に低揮発性の可塑剤及び紫外線吸収剤の少なくともいずれかを含ませ、コア層に可塑性に優れた可塑剤、或いは紫外線吸収性に優れた紫外線吸収剤を添加することもできる。また、剥離促進剤を金属支持体側のスキン層のみ含有させることも好ましい態様である。また、冷却ドラム法で金属支持体を冷却して溶液をゲル化させるために、スキン層に貧溶媒であるアルコールをコア層より多く添加することも好ましい。スキン層とコア層のTgが異なっていても良く、スキン層のTgよりコア層のTgが低いことが好ましい。又、流延時のセルロースアシレートを含む溶液の粘度もスキン層とコア層で異なっていても良く、スキン層の粘度がコア層の粘度よりも小さいことが好ましいが、コア層の粘度がスキン層の粘度より小さくてもよい。
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。加圧ダイにはコートハンガータイプやTダイタイプ等があるがいずれも好ましく用いることができる。また、ここで挙げた方法以外にも従来知られているセルローストリアセテート溶液を流延製膜する種々の方法で実施でき、用いる溶媒の沸点等の違いを考慮して各条件を設定することによりそれぞれの公報に記載の内容と同様の効果が得られる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造するのに使用されるエンドレスに走行する金属支持体としては、表面がクロムメッキによって鏡面仕上げされたドラムや表面研磨によって鏡面仕上げされたステンレスベルト(バンドといってもよい)が用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムの製造に用いられる加圧ダイは、金属支持体の上方に1基或いは2基以上の設置でもよい。好ましくは1基又は2基である。2基以上設置する場合には流延するドープ量をそれぞれのダイに種々な割合にわけてもよく、複数の精密定量ギヤアポンプからそれぞれの割合でダイにドープを送液してもよい。流延に用いられるセルロースアシレート溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
(乾燥)
セルロースアシレートフィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(ドラム或いはベルト)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはベルトの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をベルトやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはベルトを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶媒の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶媒の内の最も沸点の低い溶媒の沸点より1〜10℃低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
(延伸処理)
本発明に使用されるポリマーフィルムAは、延伸処理によりレターデーションを調整することができる。更には、積極的に幅方向に延伸する方法もあり、例えば、特開昭62−115035号、特開平4−152125号、特開平4−284211号、特開平4−298310号、および特開平11−48271号の各公報などに記載されている。これは、ポリマーフィルムAの面内レターデーション値を高い値とするために、製造したフィルムを延伸する。
フィルムの延伸は、常温または加熱条件下で実施する。加熱温度は、フィルムのガラス転移温度以上であることが好ましい。フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。延伸は1〜200%の延伸が行われる。好ましくは1〜100%の延伸が、特に好ましくは1から50%延伸を行う。光学フィルムの複屈折は幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。また、延伸処理は製膜工程の途中で行ってもよいし、製膜して巻き取った原反を延伸処理しても良い。前者の場合には残留溶剤量を含んだ状態で延伸を行っても良く、残留溶剤量が2乃至30%で好ましく延伸することができる。
乾燥後得られるポリマーフィルムAの膜厚は、使用目的によって異なり、通常5から500μmの範囲であることが好ましく、更に20〜300μmの範囲が好ましく、特に30〜150μmの範囲が好ましい。また、光学用として特にVA液晶表示装置用としては40〜110μmであることが好ましい。フィルム厚さの調製は、所望の厚さになるように、ドープ中に含まれる固形分濃度、ダイの口金のスリット間隙、ダイからの押し出し圧力、金属支持体速度等を調節すればよい。以上のようにして得られたポリマーフィルムAの幅は0.5〜3mが好ましく、より好ましくは0.6〜2.5m、さらに好ましくは0.8〜2.2mである。長さは1ロールあたり100〜10000mで巻き取るのが好ましく、より好ましくは500〜7000mであり、さらに好ましくは1000〜6000mである。巻き取る際、少なくとも片端にナーリングを付与するのが好ましく、幅は3mm〜50mmが好ましく、より好ましくは5mm〜30mm、高さは0.5〜500μmが好ましく、より好ましくは1〜200μmである。これは片押しであっても両押しであっても良い。
ポリマー層Bは、固体ポリマーを液状化してそれを展開し、その展開層を固体化させてなる塗工膜として形成される。これにより厚さを1〜20μmとすることができる。上記した延伸フィルム方式では、フィルム強度の点より厚さを20μm以下とすることが困難であり、特にその厚さで目的とする位相差特性を付与することが困難である。薄型化や目的とする位相差特性の付与性の点より好ましいポリマー層Bの厚さは、15μm以下、就中12μm以下、特に2〜10μmである。
ポリマー層Bの形成には、塗工方式でRe(590)が0〜200nm、かつRth(590)が0〜400の範囲にある層を形成しうる適宜な固体ポリマーを用いうる。光透過率が75%以上、特に85%以上の透光性に優れる層を形成しうる耐熱性の良好な固体ポリマーが好ましい。就中その塗工層形成性等の点よりポリエーテルケトン、特にポリアリールエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド又はポリエステルイミドの1種、又は2種以上を混合したものなどが好ましく用いられる。
また、ポリマー層Bの固体ポリマーは、液晶性化合物の配向状態を重合などの手段により固定化したポリマーであってもよい。
前記したポリエーテルケトン、特にポリアリールエーテルケトンの具体例としては、例えば下記の一般式(1)で表される繰返し単位を有するものなどがあげられる(特開2001−49110号公報)。
Figure 2005331773
上記の一般式(1)において、Xはハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基であり、ベンゼン環へのXの結合数q、すなわちp−テトラフルオロベンゾイレン基とオキシアルキレン基が結合しない、残る位置での水素原子の置換数qの値は、0〜4の整数である。また、R1は下記の一般式(2)で表される基であり、mは0又は1である。さらにnは、重合度を表し、2〜5000、就中5〜500が好ましい。
Figure 2005331773
なお、上記一般式(1)におけるXとしてのハロゲンとしては、例えばフッ素原子や臭素原子、塩素原子やヨウ素原子などがあげられ、就中フッ素原子が好ましい。またアルキル基としては、例えばメチル基やエチル基、プロピル基やイソプロピル基、ブチル基の如き炭素数が1〜6、就中1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基などがあげられ、就中メチル基やエチル基、それらのトリフルオロメチル基の如きハロゲン化アルキル基が好ましい。
さらにアルコキシ基としては、例えばメトキシ基やエトキシ基、プロポキシ基やイソプロポキシ基、ブトキシ基の如き炭素数が1〜6、就中1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルコキシ基などがあげられ、就中メトキシ基やエトキシ基、それらのトリフルオロメトキシ基の如きハロゲン化アルコキシ基が好ましい。前記において特に好ましいXは、フッ素原子である。
一方、前記一般式(2)で表される基において、X’はハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基であり、ベンゼン環へのX’の結合数q’の値は、0〜4の整数である。X’としてのハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基としては、前記したXと同じものが例示できる。
好ましいX’は、フッ素原子、メチル基やエチル基、それらのトリフルオロメチル基の如きハロゲン化アルキル基、メトキシ基やエトキシ基、それらのトリフルオロメトキシ基の如きハロゲン化アルコキシ基であり、就中フッ素原子が好ましい。
なお前記の一般式(1)においてXとX’は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。また一般式(1)、(2)においてq又はq’が2以上であることに基づいて分子中に2個以上存在するX又はX’は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
特に好ましいR1は、下記の一般式(3)で表される基である。
Figure 2005331773
前記の一般式(2)、(3)においてR2は、2価の芳香族基であり、Pは0又は1である。その2価の芳香族基としては、例えば(o,m又はp−)フェニレン基、ナフタレン基、ビフェニル基、アントラセン基、(o,m又はp−)テルフェニル基、フェナントレン基、ジベンゾフラン基、ビフェニルエーテル基、ビフェニルスルホン基、下記の式で表される2価の芳香族基などがあげられる。なお、当該2価の芳香族基は、その芳香環に直接結合する水素が前記したハロゲン、アルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよい。
Figure 2005331773
前記において好ましい2価の芳香族基(R2)は、下記の式で表されるものである。
Figure 2005331773
前記した一般式(1)で表されるポリアリールエーテルケトンは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。後者の場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
上記を踏まえて一般式(1)で表されるポリアリールエーテルケトンの内の好ましいものは、下記の一般式(4)で表されるものである。
Figure 2005331773
また分子末端の基を含めた場合の好ましいポリアリールエーテルケトンは、一般式(1)に対応して下記の一般式(5)で表されるものであり、一般式(4)に対応するものは下記の一般式(6)で表されるものである。これらは分子内のp−テトラフルオロベンゾイレン基側にフッ素原子が結合し、オキシアルキレン基側に水素原子が結合したものである。
Figure 2005331773
Figure 2005331773
一方、上記したポリアミド又はポリエステルの具体例としては、例えば下記の一般式(7)で表される繰返し単位を有するものなどがあげられる。
Figure 2005331773
前記の一般式(7)において、Bは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、それらの1種若しくは2種以上で置換されたフェニル基、又は非置換のフェニル基である。zは0〜3の整数である。
Eは、共有結合、炭素数2のアルケニル基若しくはそのハロゲン化物、CH2基、C(CX32基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(R)2基、又はNR基である。 前記のC(CX32基におけるXは、水素原子又はハロゲンであり、Si(R)2基及びNR基におけるRは、炭素数1〜3のアルキル基又はそのハロゲン化物である。なおEは、カルボニル基又はY基に対してメタ位又はパラ位にある。またハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(7)において同じ)。
さらにYは、O原子又はNH基である。Aは、水素原子、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、ニトロ基、シアノ基、炭素数1〜3のチオアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基若しくはそのハロゲン化物、アリール基若しくはそのハロゲン化物、炭素数1〜9のアルキルエステル基、炭素数1〜12のアリールエステル基若しくはその置換誘導体、又は炭素数1〜12のアリールアミド基若しくはその置換誘導体である。
またnは0〜4の整数、pは0〜3の整数、qは1〜3の整数、rは0〜3の整数である。好ましいポリアミド又はポリエステルは、前記のrとqが1であり、そのビフェニル環の少なくとも1個が2位及び2’位で置換されてなる下記の一般式(8)で表される繰返し単位を有するものである。
Figure 2005331773
前記の一般式(8)においてmは0〜3の整数、好ましくは1又は2であり、x及びyは0又は1で、かつ共に0であることはない。なお、他の記号は前記の一般式(7)の場合と同義であるが、Eはカルボニル基又はY基に対してパラ配向の共有結合である。
前記の一般式(7)、(8)において、B、E、Y又はAが分子中に複数存在する場合、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。z、n、m、x、yも同様に同じであってもよいし、異なっていてもよい。なおその場合、B、E、Y、A、z、n、m、x、yは、それぞれ独立に判断される。
前記の一般式(7)で表されるポリアミド又はポリエステルは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。後者の場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
他方、上記したポリイミドの具体例としては、例えば9,9−ビス(アミノアリール)フルオレンと芳香族テトラカルボン酸二無水物との縮合重合生成物を含み、下記の一般式(9)で表される繰返し単位を1単位以上有するものなどがあげられる。
Figure 2005331773
前記一般式(9)において、Rは、水素原子、ハロゲン、フェニル基、1〜4個のハロゲン若しくは1〜10個の炭素原子を有するアルキル基で置換されたフェニル基、又は1〜10個の炭素原子を有するアルキル基である。4個のRは、各々独立に決定でき、0〜4個の範囲で置換することができる。その置換基は、前記のものであることが好ましいが、一部に異なるものを含んでいてもよい。なおハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(9)において同じ)。
Zは、6〜20個の炭素原子を有する三置換芳香族基である。好ましいZは、ピロメリット基、あるいはナフチレン基やフルオレニレン基、ベンゾフルオレニレン基やアントラセニレン基の如き多環式芳香族基若しくはその置換誘導体、又は下記の一般式(10)で表される基である。なお前記多環式芳香族基の置換誘導体における置換基としては、ハロゲン、1〜10個の炭素原子を有するアルキル基又はそのフッ素化物などがあげられる。
Figure 2005331773
前記の一般式(10)において、Dは、共有結合、C(R2)2基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C25)2基、N(R3)2基又はそれらの組合せであり、mは1〜10の整数である。なお、上記の2個のR2は、各々独立に、水素原子又はC(R4)3基である。また、上記の2個のR3は、各々独立に、水素原子、1〜約20個の炭素原子を有するアルキル基、又は約6〜約20個の炭素原子を有するアリール基である。上記3個のR4は、各々独立に、水素原子、フッ素原子又は塩素原子である。
また、前記以外のポリイミドとして下記の一般式(11)、(12)で表される単位を有するものなどもあげることができる。就中、一般式(13)で表される単位を有するポリイミドが好ましい。
Figure 2005331773
Figure 2005331773
Figure 2005331773
上記の一般式(11)、(12)、(13)において、T及びLは、ハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基若しくはそのハロゲン化物、それらの1種若しくは2種以上で置換されたフェニル基、又は非置換のフェニル基である。前記のハロゲンは、フッ素原子、塩素原子、ヨウ素原子又は臭素原子である(以下、一般式(11)、(12)、(13)において同じ)。zは0〜3の整数である。
またG及びJは、共有結合若しくは結合ボンド、CH2基、C(CX32基、CO基、O原子、S原子、SO2基、Si(C25)2基、又はN(CH3)基である。前記C(CX3)2基におけるXは、水素原子又はハロゲンである(以下、一般式(11)、(12)、(13)において同じ)。
Aは、水素原子、ハロゲン、アルキル基若しくはそのハロゲン化物、ニトロ基、シアノ基、チオアルキル基、アルコキシ基若しくはそのハロゲン化物、アリール基若しくはそのハロゲン化物、又はアルキルエステル基若しくはその置換誘導体である。
Rは、水素原子、ハロゲン、フェニル基若しくはそのハロゲン化物等の置換フェニル基、又はアルキル基若しくはそのハロゲン化物等の置換アルキル基である。nは0〜4の整数、pは0〜3の整数、qは1〜3の整数である。
なお、前記の一般式(11)、(12)、(13)においてT、A、R又はLは、それぞれ独立に、分子中に複数存在する場合、それらは同じであってもよいし、異なっていてもよい。z、n、mも同様に同じであってもよいし、異なっていてもよい。なおその場合、T、A、R、L、z、n、mは、それぞれ独立に判断される。
前記した一般式(9)、(11)、(12)、(13)で表されるポリイミドは、同じ繰返し単位からなっていてもよいし、異なる繰返し単位の2種又は3種以上を有するものであってもよい。その異なる繰返し単位は、前記以外の酸二無水物及びジアミンの少なくともいずれかを共重合させて形成したものであってもよい。ジアミンとしては、特に芳香族ジアミンが好ましい。後者の異なる繰返し単位を有する場合、各繰返し単位は、ブロック状に存在していてもよいし、ランダムに存在していてもよい。
前記した異なる繰返し単位を形成するための酸二無水物としては、例えばピロメルト酸二無水物、3,6−ジフェニルピロメルト酸二無水物、3,6−ビス(トリフルオロメチル)ピロメルト酸二無水物、3,6−ジブロモピロメルト酸二無水物、3,6−ジクロロピロメルト酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボフェニル)メタン二無水物があげられる。
またビス(2,5,6−トリフルオロ−3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−1,1,1,3,3−ヘキサフルオロプロパン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(4,4’−オキシジフタル酸無水物)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物(3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸無水物)、4,4’−〔4,4’−イソプロピリデン−ジ(p−フェニレンオキシ)〕ビス(フタル酸無水物)も前記酸二無水物の例としてあげられる。
さらにN,N−(3,4−ジカルボキシフェニル)−N−メチルアミン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ジエチルシラン二無水物、2,3,6,7−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物や1,2,5,6−ナフタレン−テトラカルボン酸二無水物、2,6−ジクロロ−ナフタレン−1,4,5,8−テトラカルボン酸二無水物の如きナフタレンテトラカルボン酸二無水物、チオフェン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物やピラジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ピリジン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物の如き複素環式芳香族テトラカルボン酸二無水物なども前記酸二無水物の例としてあげられる。
好ましく用いうる酸二無水物は、2,2’−ジブロモ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物や2,2’−ジクロロ−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’−トリハロ置換二無水物の如き2,2’−置換二無水物などであり、特に2,2−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’,5,5’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
一方、前記した異なる繰返し単位を形成するためのジアミンとしては、例えば(o,m又はp−)フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−ジアミノ−2−メトキシベンゼン、1,4−ジアミノ−2−フェニルベンゼン、1,3−ジアミノ−4−クロロベンゼンの如きベンゼンジアミン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンがあげられる。
また4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルチオエ一テル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、1,8−ジアミノナフタレンや1,5−ジアミノナフタレンの如きナフタレンジアミン、2,6−ジアミノピリジンや2,4−ジアミノピリジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジンの如き複素環式芳香族ジアミンなども前記したジアミンの例としてあげられる。
好ましく用いうるポリイミドは、例えば2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物や4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物、ナフタレンテトラカルボン酸二無水物やビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物などの芳香族系酸二無水物を用いて調製された、耐熱性で溶媒可溶性のポリイミドである。
またジアミンとして、例えば4,4−(9−フルオレニリデン)−ジアニリンや2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジクロロ−4,4’−ジアミノジフェニルメタンや2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’,5,5’−テトラクロロベンジジンや2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンや1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼンや1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンなどの芳香族系ジアミンを用いて調製された、耐熱性で溶媒可溶性のポリイミドも好ましく用いうる。
他方、上記したポリアミドイミド又はポリエステルイミドとしては、特に限定はなく適宜なものを1種又は2種以上用いうる。就中、特開昭61−162512号公報に記載されたポリアミドイミドや、特開昭64−38472号公報に記載されたポリエステルイミドなどが好ましく用いうる。
一般式(9)に示すように主鎖に対してフルオレン環のような環構造の盤面が垂直に立つユニットを導入することで、ポリマー層Bを延伸した場合に延伸方向と直交方向の屈折率が増大し、ロールフィルムにおいて縦一軸延伸によって、幅方向の屈折率が大きなフィルムを得ることが出来る。このようなフィルムを使用することで縦一軸延伸フィルムでも、偏光膜とRoll−to―Rollで貼り合わせて光学補償機能を有する偏光板を作製することができる。
また、一般式(9)に示すように主鎖に対してフルオレン環のような環構造の盤面が垂直に立つユニットと、主鎖方向に沿って芳香族環が並んだユニットの割合を調整することで、ポリマー層Bの波長分散を調整することができる。
ポリマー層B形成用の固体ポリマーの分子量は、特に限定はないが溶剤に可溶であることが好ましい。就中、塗工膜の厚さ制度や表面精度ないし表面平滑性、膜強度、フィルム化した場合の伸縮や歪等によるクラック発生の防止性、溶剤に対する溶解性(ゲル化防止)などの点より質量平均分子量に基づいて1万〜100万、就中2万〜50万、特に5万〜20万が好ましい。なお質量平均分子量は、ポリエチレンオキサイドを標準試料とし、ジメチルホルムアミド溶媒を使用してゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した値である。
ポリマー層Bの形成には上記のポリアリールエーテルケトンやポリアミド、ポリエステルやポリイミド等の固体ポリマーを単独で用いてもよいし、同種物を2種以上混合して用いてもよい。また、例えばポリアリールエーテルケトンとポリアミドの混合物の如く、異なる官能基を持つ2種以上のポリマーの混合物として用いてもよい。
またポリマー層Bを形成する上記固体ポリマーの配向性が著しく低下しない範囲で、上記以外の適宜なポリマーの1種又は2種以上を併用してもよい。その併用ポリマーの例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂及びAS樹脂、ポリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリイミド、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー(光重合性液晶モノマーを含む)などの熱可塑性樹脂があげられる。
またエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ノボラック樹脂の如き熱硬化性樹脂なども前記併用ポリマーの例としてあげられる。併用ポリマーの使用量は、配向性が著しく低下しない範囲であれば特に制限されないが、通常50質量%以下、就中40質量%以下、特に30質量%以下とされる。
上記のように複数のポリマーを併用することで、光学異方性、波長分散特性、強度・弾性率等の力学物性、透水性、平面性、ポリマーフィルムAとの密着性、粘着剤との密着性等の種々の物性を好ましい範囲に調整することができる。
ポリマー層Bを形成する固体ポリマーの液状化には、熱可塑性ポリマーを加熱して溶融させる方式や、固体ポリマーを溶媒に溶解させて溶液とする方法などの適宜な方式を採ることができる。従って当該展開層の固体化は、前者の溶融液ではその展開層を冷却させることにより、また後者の溶液ではその展開層より溶媒を除去して乾燥させることにより行うことができる。ポリマー層Bの形成に際しては、安定剤や可塑剤や金属類等からなる種々の添加剤を必要に応じて配合することができる。
また、ポリマー層Bの固体ポリマーは、液晶性化合物の配向状態を重合などの手段により固定化したポリマーであってもよい。液晶性化合物としては特許第2587398号公報に例示される低分子液晶性ディスコティック化合物、特開平8−334621号公報に記載される高分子液晶性ディスコティク化合物、特許第2853068号公報に記載の液晶性ポリエステル、特開2000−304930号公報に例示される低分子棒状液晶化合物等、種々の液晶性化合物を用いることができる。
特にポリマー層の膜厚ムラは光学補償シートのRe(λ)およびRth(λ)のムラの原因となるため低減することが好ましい。ポリマー層Bの膜厚ムラは塗布手段の調整、乾燥手段の調整によって低減が可能であり、またポリマー層Bを塗布する支持体の平滑性を向上させることによっても低減が可能である。本発明では、特にポリマー層Bの塗布液中にレベリング剤を添加することにより著しく膜厚ムラを低減できることを見出した。レベリング剤としては、ポリマー層Bの塗布液の表面張力を低下させる界面活性能のある材料を用いる。
このようなレベリング剤としては、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ステアリン酸エチレンオキサイド付加物等のポリエチレングリコール型非イオン系界面活性剤;ソルビタンパルチミン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸トリエステル等の多価アルコール型非イオン系界面活性剤;パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルベタイン等のフッ素系界面活性剤;アルキル変成シリコーンオイル、ポリエーテル変成シリコーンオイル等のシリーコンオイル等があげられる。具体的にはシリコーン系界面活性剤としてはディスパロンLS−009(楠本化成製)、フッ素系界面活性剤としてはディフェンサーMCF−323、メガファックF−171、F−172、F−177、F−142D、F−144D、F−140NK(以上、大日本インキ化学工業製)、フロラードFC−430、FC−170、FC−170C(以上、住友スリーエム製)、アクリル系界面活性剤としてはディスパロンL−1980(楠本化成製)、モダフロー(日本モンサント製)等があげられる。また、特開平9−230143号公報記載のものも使用できる。
上記のレベリング剤は界面活性能があるためポリマー層Bの表面に多く分布する。形成されたポリマー層Bの表面にレベリング剤が多く存在すると、液晶セルに偏光板を貼り付ける際に使用する粘着剤とポリマー層Bとの接着性が弱くなり、偏光板に不具合があった場合に偏光板を液晶セルから剥がすリワーク作業において粘着剤が液晶セルに残ってしまい、別途粘着剤を有機溶剤でふき取る等作業性が悪くなる。特にフッ素系界面活性剤を使用する場合、粘着剤と接着性が弱くなる場合がある。レベリング剤はポリマー層Bの厚みムラを低減するために非常に有効であるが、ポリマー層Bが形成された後にポリマー層B表面に残存している必要はなく、むしろポリマー層B表面からはなくなったほうが好ましい。ポリマー層Bを有する光学補償シートを偏光膜に貼り合せる際に行う鹸化処理によって、ポリマー層B表面のレベリング剤は除去されることが好ましい。また、有機溶剤でレベリング剤を洗い流してもよい。
前記の乾燥には自然乾燥(風乾)方式や加熱乾燥方式、特に40〜200℃の加熱乾燥方式、減圧乾燥方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を採ることができる。乾燥時の乾燥ムラによる厚みムラ低減のためには、塗布直後の環境の風を層流とすることが好ましく、また風速を1m/min以下とすることが好ましい。さらに、塗布直後に吹かせる乾燥風の動きによる塗布膜の厚みムラ発生を抑えるために乾燥風を吹かせない凝縮乾燥を行うことが好ましい。
前記の溶媒としては、例えばクロロホルムやジクロロメタン、四塩化炭素やジクロロエタン、テトラクロロエタンやトリクロロエチレン、テトラクロロエチレンやクロロベンゼン、オルソジクロロベンゼンの如きハロゲン化炭化水素類、フェノールやパラクロロフェノールの如きフェノール類、ベンゼンやトルエン、キシレンやメトキシベンゼン、1,2−ジメトキシベンゼンの如き芳香族炭化水素類、アセトンやメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンやシクロヘキサノン、シクロペンタノンや2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンの如きケトン類、酢酸エチルや酢酸ブチルの如きエステル類があげられる。
また、t−ブチルアルコールやグリセリン、エチレングリコールやトリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルやジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールやジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオールの如きアルコール類、ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドの如きアミド類、アセトニトリルやブチロニトリルの如きニトリル類、ジエチルエーテルやジブチルエーテル、テトラヒドロフランの如きエーテル類、その他、塩化メチレンや二硫化炭素、エチルセロソルブやブチルセロソルブなども前記溶媒の例としてあげられる。
溶媒は、単独で、あるいは2種以上を適宜な組合せで混合して用いることができる。溶液は、塗工粘度等の点より、溶媒100質量部に対して固体ポリマーを2〜100質量部、就中5〜50質量部、特に10〜40質量部溶解させたものが好ましい。
上記の溶剤はポリマー層Bを形成する材料を溶解する機能を有するものを選択することはもちろんであるが、ポリマー層B溶液を塗布する支持体を犯さないものを選択することが好ましい。
液状化したポリマーの展開には、例えばスピンコート法やロールコート法、フローコート法やプリント法、ディップコート法や流延成膜法、バーコート法やグラビア印刷法等のキャスティング法、押出法などの適宜なフィルム形成方式を採ることができる。就中、厚さムラや配向歪ムラ等の少ないフィルムの量産性などの点より、キャスティング法等の溶液製膜法が好ましく適用することができる。
光学補償効果の点からポリマー層BのRe(590)は0〜200nmが好ましく、20〜150nmがさらに好ましく、40〜100nmが特に好ましい。また、ポリマー層BのRth(590)は0〜400nmが好ましく、50〜350nmが好ましく、100〜300nmが特に好ましい。
ポリマー層Bは、展開層を固体化させた後、そのRe等の制御を目的に必要に応じて、面内における分子を配向させる処理を施したものであってもよい。すなわち当該展開層を固体化させただけの状態では、nx≒ny>nzでReが小さいことが普通である。ちなみに層厚を10μmとした場合、Reは通例、30nm以下、就中1〜20nmである。
一方、前記の配向処理を施すことにより、面内における配向軸の精度を高めることができて、nx>ny>nzの特性を付与することができ、特にReを増大させることができる。従ってRth(λ)、Re(λ)等の位相差特性を制御することができる。
前記した面内で分子を配向させる処理は、伸張処理及び収縮処理の少なくともいずれかの処理として施すことができ、その伸張処理は、例えば延伸処理などとして施すことができる。延伸処理には逐次方式や同時方式等にる二軸延伸方式、自由端方式や固定端方式等の一軸延伸方式などの適宜な方式の1種又は2種以上を適用することができる。ボーイング現象を抑制する点よりは一軸延伸方式が好ましい。
一方、収縮処理は、例えばポリマー層Bの塗工形成を基材上で行って、その基材の温度変化等に伴う寸法変化を利用して収縮力を作用させる方式などにより行うことができる。その場合、熱収縮性フィルムなどの収縮能を付与した基材を用いることもでき、そのときには延伸機等を利用して収縮率を制御することが望ましい。
ポリマー層Bの好ましい形成方式は、溶媒に溶解させて液状化したポリマー溶液を支持基材上に展開して乾燥させ、必要に応じて支持基材を介しその固体化物に伸張処理又は収縮処理の一方又は両方を施す方式である。この方式によれば、ポリマー層Bを基材で支持した状態で処理できて製造効率や処理精度などに優れており、連続製造も可能である。
前記の支持基材には適宜なものを用いることができ、特に限定はない。ポリマー層Bは、その支持基材との一体化物として用いうるし、支持基材より分離して用いることもできる。前者の支持基材一体型の場合、延伸処理等で支持基材に生じた位相差を利用することもできる。後者の分離方式は、延伸処理等で支持基材に生じた位相差が不都合な場合などに有利である。なお前者の支持基材一体型の場合、その支持基材としては透明なポリマー基材が好ましく用いられる。
前記のポリマー基材を形成するものの例としては、上記のポリマーフィルムA、固体ポリマーで例示したものやアセテート系ポリマー、ポリエーテルスルホンやポリスルホン、ポリカーボネートやポリノルボルネン、ポリオレフィンやアクリル系ポリマー、セルロース系樹脂やポリアリレート、ポリスチレンやポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン、液晶ポリマー、あるいはアクリル系やウレタン系、アクリルウレタン系やエポキシ系やシリコーン系等の熱硬化型ないし紫外線硬化型の樹脂などがあげられる。
また特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマー、例えば(A)側鎖に置換イミド基及び非置換イミド基の少なくともいずれかのイミド基を有する熱可塑性樹脂と、(B)側鎖に置換のフェニル基及び非置換のフェニル基の少なくともいずれかの基並びにニトリル基を有する熱可塑性樹脂とを含有する樹脂組成物などもポリマー基材の形成に用いうる。斯かる樹脂組成物の具体例としては、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体とアクリロニトリル・スチレン共重合体とを含有する樹脂組成物があげられる。ポリマー基材は、樹脂組成物の混合押出品等からなるフィルムなどとして得ることができる。支持基材による位相差の影響を抑制する点よりは、アセテート系ポリマーの如く等方性に優れるものが好ましい。
光学補償偏光板は、偏光板の片側にポリマーフィルムAおよびポリマー層Bからなる光学補償シートを、必要に応じ接着層ないし粘着層を介して積層することにより形成でき、液晶セルの視野角の拡大やコントラストの向上などを目的とした複屈折による位相差の補償などに好ましく用いうる。その実用に際しては、例えば液晶セルや他の光学部材と接着することを目的にその片面又は両面に接着層ないし粘着層を設けることができる。
前記した粘着層の形成には、例えばアクリル系重合体やシリコーン系ポリマー、ポリエステルやポリウレタン、ポリエーテルや合成ゴムなどの適宜なポリマーを用いてなる透明粘着剤を用いることができる。就中、光学的透明性や粘着特性、耐候性などの点よりアクリル系粘着剤が好ましい。就中、吸湿による発泡現象や剥がれ現象の防止、熱膨張差等による光学特性の低下や液晶セルの反り防止、ひいては高品質で耐久性に優れる表示装置の形成性等の点より、吸湿率が低くて耐熱性に優れる粘着層が好ましく用いうる。
粘着層には必要に応じて例えば天然物や合成物の樹脂類、ガラス繊維やガラスビーズ、金属粉やその他の無機粉末等からなる充填剤や顔料、着色剤や酸化防止剤などの適宜な添加剤を配合することもできる。また透明微粒子を含有させて光拡散性を示す粘着層とすることもできる。
光学補償偏光板や光学部材に設けた粘着層ないし接着層が表面に露出する場合には、その粘着層等を実用に供するまでの間、汚染防止等を目的にセパレータにて仮着カバーすることが好ましい。セパレータは、上記の支持基材等に準じた適宜な薄葉体に、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデン等の適宜な剥離剤によるコート層を設ける方式などにより得ることができる。また反射防止機能を有する透明保護層の表面には実際の使用までの表面保護のためにプロテクトフィルムを設けることが好ましい。
なお前記の透明微粒子には、例えば平均粒径が0.5〜20μmのシリカや酸化カルシウム、アルミナやチタニア、ジルコニアや酸化錫、酸化インジウムや酸化カドミウム、酸化アンチモン等の導電性のこともある無機系微粒子や、ポリメチルメタクリレートやポリウレタンの如き適宜なポリマーからなる架橋又は未架橋の有機系微粒子などの適宜なものを1種又は2種以上用いうる。
光学補償偏光板の形成は、液晶表示装置等の製造過程で順次別個に積層する方式にても行いうるが、予め積層することにより、品質の安定性や積層作業性等に優れて液晶表示装置等の製造効率を向上させうる利点などがある。積層に際しポリマーフィルムAとポリマー層Bと偏光板の進相軸や透過軸等の光軸の配置角度については特に限定はなく、適宜に決定することができる。一般には偏光板の透過軸と位相差層面内の最大屈折率nx方向を平行関係又は直交関係に配置することが、正面方向の特性に影響を与えずに斜視方向の特性を制御して視野角の拡大等を図る点より好ましい。特に位相差層のnx方向を偏光板の透過軸と平行に配置するのが好ましく、nx方向と透過軸のなす角度は−1°から+1°の間とするのが好ましい。
本発明の光学補償シートを偏光膜と積層する際には、光学補償シートと偏光膜との接着性が高くなるように、光学補償シートの表面を処理することが好ましい。表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報公技番号2001−1745号(2001年3月15日発行、発明協会)p.30−32に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、セルロースアシレートフィルムを鹸化液の槽に直接浸漬する方法または鹸化液をセルロースアシレートフィルム塗布する方法で実施することが好ましい。 塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法およびE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液をセルロースアシレートフィルムに対して塗布するために、濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によってセルロースアシレートフィルム表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、5秒以上5分以下がさらに好ましく、20秒以上3分以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。上記の表面処理は光学補償シートを偏光膜に接着するときだけでなく、ポリマー層BをポリマーフィルムA上に塗工する際に、ポリマーフィルムAに対して行っても効果がある。
通常、光学補償シートを偏光膜に貼り合わせる前に、光学補償シートと偏光膜との接着性を良くするために光学補償シートをアルカリ鹸化処理するが、ポリマーフィルムA上に形成したポリマー層Bがアルカリ鹸化処理で溶解、変質する場合には、ポリマーフィルムAを鹸化処理した後にポリマー層Bを形成することが好ましい。
ポリマーフィルムA上にポリマー層Bを塗布により形成する場合、ポリマーフィルムA上にポリマー層Bとの接着性を高める層を設けてもよい。また、ポリマー層Bの溶液をポリマーフィルムA上に塗布する際に、ポリマー層B溶液の溶剤がポリマーフィルムAを侵さないように耐溶剤層を設けてもよい。対溶剤層としてはポリビニルアルコールのような有機溶剤に溶解しにくい材料を使うことができる。
光学補償偏光板の形成には、適宜な偏光板を用いることができ、その種類について特に限定はない。就中ポリビニルアルコール系フィルムや部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムの如き親水性高分子フィルムにヨウ素及び二色性染料の少なくともいずれかの二色性物質を吸着させて延伸したものや架橋処理したもの、ポリビニルアルコールの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物の如きポリエン配向フィルム等からなる偏光フィルムなどの如く、自然光を入射させると直線偏光を透過する特性を示す吸収型の偏光板が高い偏光度の達成などの点より好ましく用いうる。偏光フィルムの厚さは、1〜80μmが一般的であるがこれに限定されない。
偏光板は、偏光フィルムの片側又は両側に透明保護層を設けたものや、ワイヤーグリッド型偏光子などであってもよい。透明保護層は、偏光フィルムの補強、耐熱性や耐湿性の向上などの種々の目的で設けられ、その形成には透明性や機械的強度、熱安定性や水分遮蔽性等に優れるポリマーなどが好ましく用いられる。ちなみにその例としては上記した支持基材で例示したものなどがあげられる。偏光特性や耐久性などの点より特に好ましい透明保護層は、表面をアルカリ等でケン化処理したトリアセチルセルロースフィルムである。
透明保護層の厚さは、任意であるが、一般には偏光板の薄型化などを目的に200μm以下、就中5〜150μm、特に10〜100μmとされる。なお偏光フィルムの両側に透明保護層を設ける場合、その表裏で異なるポリマー等からなる透明保護層とすることもできる。
透明保護層は、樹脂の塗布層や樹脂フィルムのラミネート層などとして形成でき、透明微粒子の含有によりその表面が微細凹凸構造に形成されていてもよい。また本発明の光学補償シートに透明保護膜を兼ねさせることもでき、その場合には光学補償偏光板、ひいては液晶表示装置等をより薄型化することができる。
本発明の偏光板の視認側の透明保護フィルム表面にはハードコート層、防眩層、反射防止層の少なくとも一層を設けたものであるのが好ましい。なお、各層はそれぞれ別個の層として設ける必要はなく、例えば、反射防止層に防眩層の機能を持たせることにより、反射防止層を反射防止層及び防眩層として機能させることにより設けても良い。
(反射防止層)
本発明では保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層されてなる反射防止層又は保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。以下にそれらの好ましい例を記載する。
保護膜上に光散乱層と低屈折率層を設けた反射防止層の好ましい例について述べる。
光散乱層には、マット粒子が分散されているのが好ましく、光散乱層のマット粒子以外の部分の素材の屈折率は1.50〜2.00の範囲にあることが好ましく、低屈折率層の屈折率は1.20〜1.49の範囲にあることが好ましい。本発明において光散乱層は、防眩性とハードコート性を兼ね備えており、1層でもよいし、複数層、例えば2層〜4層で構成されていてもよい。
反射防止層は、その表面凹凸形状として、中心線平均粗さRaが0.08〜0.40μm、10点平均粗さRzがRaの10倍以下、平均山谷距離Smが1〜100μm、凹凸最深部からの凸部高さの標準偏差が0.5μm以下、中心線を基準とした平均山谷距離Smの標準偏差が20μm以下、傾斜角0〜5度の面が10%以上となるように設計することで、十分な防眩性と目視での均一なマット感が達成され、好ましい。また、C光源下での反射光の色味がa*値−2〜2、b*値−3〜3、380nm〜780nmの範囲内での反射率の最小値と最大値の比0.5〜0.99であることで、反射光の色味がニュートラルとなり、好ましい。またC光源下での透過光のb*値が0〜3とすることで、表示装置に適用した際の白表示の黄色味が低減され、好ましい。また、面光源上と本発明の反射防止フィルムの間に120μm×40μmの格子を挿入してフィルム上で輝度分布を測定した際の輝度分布の標準偏差が20以下であると、高精細パネルに本発明のフィルムを適用したときのギラツキが低減され、好ましい。
本発明で用いることができる反射防止層は、その光学特性として、鏡面反射率2.5%以下、透過率90%以上、60度光沢度70%以下とすることで、外光の反射を抑制でき、視認性が向上するため好ましい。特に鏡面反射率は1%以下がより好ましく、0.5%以下であることが最も好ましい。ヘイズ20%〜50%、内部ヘイズ/全ヘイズ値の比が0.3〜1、光散乱層までのヘイズ値から低屈折率層を形成後のヘイズ値の低下が15%以内、くし幅0.5mmにおける透過像鮮明度20%〜50%、垂直透過光/垂直から2度傾斜方向の透過率比が1.5〜5.0とすることで、高精細LCDパネル上でのギラツキ防止、文字等のボケの低減が達成され、好ましい。
(低屈折率層)
本発明で用いることができる低屈折率層の屈折率は、好ましくは1.20〜1.49であり、更に好ましくは1.30〜1.44の範囲にある。さらに、低屈折率層は下記数数式(XII)を満たすことが低反射率化の点で好ましい。
数式(XII):(m/4)×0.7<n1d1<(m/4)×1.3
式中、mは正の奇数であり、n1は低屈折率層の屈折率であり、そして、d1は低屈折率層の膜厚(nm)である。また、λは波長であり、500〜550nmの範囲の値である。
低屈折率層を形成する素材について以下に説明する。
低屈折率層は、低屈折率バインダーとして、含フッ素ポリマーを含むことが好ましい。 フッ素ポリマーとしては動摩擦係数0.03〜0.20、水に対する接触角90〜120°、純水の滑落角が70°以下の熱または電離放射線により架橋する含フッ素ポリマーが好ましい。本発明の偏光板を画像表示装置に装着した時、市販の接着テープとの剥離力が低いほどシールやメモを貼り付けた後に剥がれ易くなり好ましく、引張り試験機で測定した場合に500gf以下が好ましく、300gf以下がより好ましく、100gf以下が最も好ましい。また、微小硬度計で測定した表面硬度が高いほど、傷がつき難く、0.3GPa以上が好ましく、0.5GPa以上がより好ましい。
低屈折率層に用いられる含フッ素ポリマーとしてはパーフルオロアルキル基含有シラン化合物(例えば(ヘプタデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロデシル)トリエトキシシラン)の加水分解、脱水縮合物の他、含フッ素モノマー単位と架橋反応性付与のための構成単位を構成成分とする含フッ素共重合体が挙げられる。
含フッ素モノマー単位の具体例としては、例えばフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、パーフルオロオクチルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(大阪有機化学製)やM−2020(ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。
架橋反応性付与のための構成単位としてはグリシジル(メタ)アクリレート、グリシジルビニルエーテルのように分子内にあらかじめ自己架橋性官能基を有するモノマーの重合によって得られる構成単位、カルボキシル基やヒドロキシ基、アミノ基、スルホ基等を有するモノマー(例えば(メタ)アクリル酸、メチロール(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アリルアクリレート、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、マレイン酸、クロトン酸等)の重合によって得られる構成単位、これらの構成単位に高分子反応によって(メタ)アクリルロイル基等の架橋反応性基を導入した構成単位(例えばヒドロキシ基に対してアクリル酸クロリドを作用させる等の手法で導入できる)が挙げられる。
また上記含フッ素モノマー単位、架橋反応性付与のための構成単位以外に溶剤への溶解性、皮膜の透明性等の観点から適宜フッ素原子を含有しないモノマーを共重合することもできる。併用可能なモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート等)、スチレン誘導体(スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、アクリルアミド類(N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類、アクリロ二トリル誘導体等を挙げることができる。
上記のポリマーに対しては特開平10−25388号および特開平10−147739号各公報に記載のごとく適宜硬化剤を併用しても良い。
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱および内部散乱の少なくともいずれかによる光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。また、このような光散乱層を設けることにより、該光散乱層が防眩層としても機能し、偏光板が防眩層を有することになる。
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する目的で、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。薄すぎるとハード性が不足し、厚すぎるとカールや脆性が悪化して加工適性が不足となる。
光散乱層のバインダーとしては、飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。また、バインダーポリマーは架橋構造を有することが好ましい。 飽和炭化水素鎖を主鎖として有するバインダーポリマーとしては、エチレン性不飽和モノマーの重合体が好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。バインダーポリマーを高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むものを選択することもできる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、上記のエチレンオキサイド変性体、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4'−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を保護膜上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。これらの光ラジカル開始剤等は公知のものを使用することができる。
ポリエーテルを主鎖として有するポリマーは、多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
従って、多官能エポシキシ化合物、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤、マット粒子および無機フィラーを含有する塗液を調製し、該塗液を保護膜上に塗布後電離放射線または熱による重合反応により硬化して反射防止膜を形成することができる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、本発明において架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
光散乱層には、防眩性付与の目的で、フィラー粒子より大きく、平均粒径が1〜10μm、好ましくは1.5〜7.0μmのマット粒子、例えば無機化合物の粒子または樹脂粒子が含有される。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO2粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋アクリルスチレン粒子、シリカ粒子が好ましい。マット粒子の形状は、球状あるいは不定形のいずれも使用できる。
また、粒子径の異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。より大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成された光散乱層のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m2、より好ましくは100〜700mg/m2となるように光散乱層に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
光散乱層には、層の屈折率を高めるために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機フィラーが含有されることが好ましい。
また逆に、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いた光散乱層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機フィラーと同じである。
光散乱層に用いられる無機フィラーの具体例としては、TiO2、ZrO2、Al23、In23、ZnO、SnO2、Sb23、ITOとSiO2等が挙げられる。TiO2およびZrO2が高屈折率化の点で特に好ましい。該無機フィラーは表面をシランカップリング処理又はチタンカップリング処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機フィラーの添加量は、光散乱層の全質量の10〜90%であることが好ましく、より好ましくは20〜80%であり、特に好ましくは30〜75%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
光散乱層のバインダーおよび無機フィラーの混合物のバルクの屈折率は、1.50〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.51〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機フィラーの種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
光散乱層は、特に塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状均一性を確保するために、フッ素系、シリコーン系の何れかの界面活性剤、あるいはその両者を光散乱層形成用の塗布組成物中に含有する。特にフッ素系の界面活性剤は、より少ない添加量において、本発明の反射防止フィルムの塗布ムラ、乾燥ムラ、点欠陥等の面状故障を改良する効果が現れるため、好ましく用いられる。面状均一性を高めつつ、高速塗布適性を持たせることにより生産性を高めることが目的である。
次に保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層された反射防止層について述べる。
保護膜上に少なくとも中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層(最外層)の順序の層構成から成る反射防止層は、以下の関係を満足する屈折率を有する様に設計される。
高屈折率層の屈折率>中屈折率層の屈折率>保護膜の屈折率>低屈折率層の屈折率
又、保護膜と中屈折率層の間に、ハードコート層を設けてもよい。更には、中屈折率ハードコート層、高屈折率層及び低屈折率層からなってもよい。
例えば、特開平8−122504号公報、同8−110401号公報、同10−300902号公報、特開2002−243906号公報、特開2000−111706号公報等に記載の反射防止層が挙げられる。
又、各層に他の機能を付与させてもよく、例えば、防汚性の低屈折率層、帯電防止性の高屈折率層としたもの(例、特開平10−206603号公報、特開2002−243906号公報等)等が挙げられる。
反射防止層のヘイズは、5%以下あることが好ましく、3%以下がさらに好ましい。又膜の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
(高屈折率層および中屈折率層)
反射防止膜の高い屈折率を有する層は、平均粒径100nm以下の高屈折率の無機化合物微粒子及びマトリックスバインダーを少なくとも含有する硬化性膜から成る。
高屈折率の無機化合物微粒子としては、屈折率1.65以上の無機化合物が挙げられ、好ましくは屈折率1.9以上のものが挙げられる。例えば、Ti、Zn、Sb、Sn、Zr、Ce、Ta、La、In等の酸化物、これらの金属原子を含む複合酸化物等が挙げられる。
このような微粒子とするには、粒子表面が表面処理剤で処理されること(例えば、シランカップリング剤等:特開平11−295503号公報、同11−153703号公報、特開2000−9908、アニオン性化合物或は有機金属カップリング剤:特開2001−310432号公報等)、高屈折率粒子をコアとしたコアシェル構造とすること(特開2001−166104等)、特定の分散剤併用(例、特開平11−153703号公報、特許番号US6210858B1、特開2002−2776069号公報等)等挙げられる。
マトリックスを形成する材料としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂皮膜等が挙げられる。
更に、ラジカル重合性及びカチオン重合性の重合性基を少なくとも2個以上含有の多官能性化合物含有組成物、加水分解性基を含有の有機金属化合物及びその部分縮合体組成物から選ばれる少なくとも1種の組成物が好ましい。例えば、特開2000−47004号公報、同2001−315242号公報、同2001−31871号公報、同2001−296401号公報等に記載の組成物が挙げられる。
又、金属アルコキドの加水分解縮合物から得られるコロイド状金属酸化物と金属アルコキシド組成物から得られる硬化性膜も好ましい。例えば、特開2001−293818号公報等に記載されている。
高屈折率層の屈折率は、1.70〜2.20であることが好ましい。高屈折率層の厚さは、5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
中屈折率層の屈折率は、低屈折率層の屈折率と高屈折率層の屈折率との間の値となるように調整する。中屈折率層の屈折率は、1.50〜1.70であることが好ましい。また、厚さは5nm〜10μmであることが好ましく、10nm〜1μmであることがさらに好ましい。
(低屈折率層)
低屈折率層は、高屈折率層の上に順次積層して成る。低屈折率層の屈折率は1.20〜1.55であることが好ましい。より好ましくは1.30〜1.50である。
耐擦傷性、防汚性を有する最外層として構築することが好ましい。耐擦傷性を大きく向上させる手段として表面への滑り性付与が有効で、従来公知のシリコーンの導入、フッ素の導入等から成る薄膜層の手段を適用できる。
また、含フッ素化合物はフッ素原子を35〜80質量%の範囲で含む架橋性若しくは重合性の官能基を含む化合物が好ましい。
例えば、特開平9−222503号公報、段落番号[0018]〜[0026]、同11−38202号公報、段落番号[0019]〜[0030]、特開2001−40284号公報、段落番号[0027]〜[0028]、特開2000−284102号公報等に記載の化合物が挙げられる。
含フッ素化合物の屈折率は1.35〜1.50であることが好ましい。より好ましくは1.36〜1.47である。
シリコーン化合物としてはポリシロキサン構造を有する化合物であり、高分子鎖中に硬化性官能基あるいは重合性官能基を含有して、膜中で橋かけ構造を有するものが好ましい。例えば、反応性シリコーン(例、サイラプレーン(チッソ(株)製等)、両末端にシラノール基含有のポリシロキサン(特開平11−258403号公報等)等が挙げられる。
架橋又は重合性基を有する含フッ素ポリマー又はシロキサンポリマーの架橋又は重合反応は、重合開始剤、増感剤等を含有する最外層を形成するための塗布組成物を塗布と同時または塗布後に光照射や加熱することにより低屈折率層を形成することが好ましい。
又、シランカップリング剤等の有機金属化合物と特定のフッ素含有炭化水素基含有のシランカップリング剤とを触媒共存下に縮合反応で硬化するゾルゲル硬化膜も好ましい。
例えば、ポリフルオロアルキル基含有シラン化合物またはその部分加水分解縮合物(特開昭58−142958号公報、同58−147483号公報、同58−147484号公報、特開平9−157582号公報、同11−106704号公報記載等記載の化合物)、フッ素含有長鎖基であるポリ「パーフルオロアルキルエーテル」基を含有するシリル化合物(特開2000−117902号公報、同2001−48590号公報、同2002−53804号公報記載の化合物等)等が挙げられる。
低屈折率層は、上記以外の添加剤として充填剤(例えば、二酸化珪素(シリカ)、含フッ素粒子(フッ化マグネシウム,フッ化カルシウム,フッ化バリウム)等の一次粒子平均径が1〜150nmの低屈折率無機化合物、特開平11−3820公報の段落番号[0020]〜[0038]に記載の有機微粒子等)、シランカップリング剤、滑り剤、界面活性剤等を含有することができる。
低屈折率層が最外層の下層に位置する場合、低屈折率層は気相法(真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法等)により形成されても良い。安価に製造できる点で、塗布法が好ましい。
低屈折率層の膜厚は、30〜200nmであることが好ましく、50〜150nmであることがさらに好ましく、60〜120nmであることが最も好ましい。
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けた保護膜に物理強度を付与するために、保護膜の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光及び熱の少なくともいずれかの手段で硬化する硬化性化合物の架橋反応、又は、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性化合物における硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましい。又加水分解性官能基含有の有機金属化合物や有機アルコキシシリル化合物も好ましい。
これらの化合物の具体例としては、高屈折率層で例示したと同様のものが挙げられる。ハードコート層の具体的な構成組成物としては、例えば、特開2002−144913号公報、同2000−9908号公報、WO00/46617号公報等記載のものが挙げられる。
高屈折率層はハードコート層を兼ねることができる。このような場合、高屈折率層で記載した手法を用いて微粒子を微細に分散してハードコート層に含有させて形成することが好ましい。
ハードコート層は、平均粒径0.2〜10μmの粒子を含有させて防眩機能(アンチグレア機能)を付与した防眩層を兼ねることもできる。
ハードコート層の膜厚は用途により適切に設計することができる。ハードコート層の膜厚は、0.2〜10μmであることが好ましく、より好ましくは0.5〜7μmである。
ハードコート層の強度は、JIS K5400に従う鉛筆硬度試験で、H以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。又、JIS K5400に従うテーバー試験で、試験前後の試験片の摩耗量が少ないほど好ましい。
(反射防止層の他の層)
さらに、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。金属酸化物には着色しているものがあるが、これらの金属酸化物を導電性層素材として用いるとフィルム全体が着色してしまい好ましくない。着色のない金属酸化物を形成する金属としてZn,Ti,Al,In,Si,Mg,Ba,Mo,W,又はVをあげることができ、これれを主成分とした金属酸化物を用いることが好ましい。具体的な例としては、ZnO,TiO2,SnO2,Al23,In23,SiO2,MgO,BaO,MoO3,V25等、あるいはこれらの複合酸化物がよく、特にZnO,TiO2,及びSnO2が好ましい。異種原子を含む例としては、例えばZnOに対してはAl,In等の添加物、SnO2に対してはSb,Nb,ハロゲン元素等の添加、またTiO2に対してはNb,TA等の添加が効果的である。更にまた、特公昭59−6235号に記載の如く、他の結晶性金属粒子あるいは繊維状物(例えば酸化チタン)に上記の金属酸化物を付着させた素材を使用しても良い。尚、体積抵抗値と表面抵抗値は別の物性値であり単純に比較することはできないが、体積抵抗値で10-8(Ωcm-3)以下の導電性を確保するためには、該導電層が概ね10-10(Ω/□)以下の表面抵抗値を有していればよく更に好ましくは10-8(Ω/□)である。導電層の表面抵抗値は帯電防止層を最表層としたときの値として測定されることが必要であり、積層フィルムを形成する途中の段階で測定することができる。
前記した樹脂フイルムのラミネート処理は、限定するものではないが、例えばアクリル系ポリマーやビニルアルコール系ポリマーからなる接着剤、あるいはホウ酸やホウ砂、グルタルアルデヒドやメラミンやシュウ酸等のビニルアルコール系ポリマーの水溶性架橋剤から少なくともなる接着剤等を介して行うことができる。これにより湿度や熱の影響で剥がれにくく光透過率や偏光度に優れるものとすることができる。斯かる接着層は、水溶液の塗工乾燥層等として形成されるものであるが、その水溶液の調製に際しては必要に応じて他の添加剤や、酸等の触媒も配合することができる。特にポリビルアルコール系フィルムとの接着性に優れる点より、ポリビニルアルコール系接着剤を用いることが好ましい。
なお上記の如くポリマーフィルムAとポリマー層Bの積層体の形成に際しては、延伸したもしくは未延伸のポリマーフィルムAを支持基材としてその上にポリマー層Bを塗工形成し、必要に応じて延伸する方式や、別体の支持基材上に塗工形成したポリマー層Bを接着層等を介して延伸したもしくは未延伸のポリマーフィルムA上に転写し、必要に応じて延伸する方式などの適宜な方式を採りうるが、その前者の場合には、ポリマー層Bを形成することとなる塗工層の乾燥工程で延伸処理を加えて、支持基材をポリマーフィルムAに変化させることもできる。
前記した接着処理には必要に応じて、例えばアクリル系やシリコーン系、ポリエステル系やポリウレタン系、ポリエーテル系やゴム系等の透明な粘着剤などの適宜な接着剤を用いうる。構成部材の光学特性の変化を防止する点より、硬化や乾燥の際に高温プロセスを要しないものが好ましく、長時間の硬化処理や乾燥時間を要しないものが望ましい。また加熱や加湿条件下に剥離等を生じない接着剤が好ましく用いられる。
本発明による光学補償偏光板は、液晶表示装置等の各種表示装置の形成などに好ましく用いうる。その適用に際しては必要に応じ接着層ないし粘着層を介して、例えば輝度向上フィルムや他の位相差板、拡散制御フィルムや偏光散乱フィルムなどの他の光学層の1層又は2層以上を積層してなる光学部材として用いることもできる。積層には、上記した粘着層等の適宜な接着手段を用いることができる。
一方、上記した輝度向上フィルムは、偏光板による吸収ロスなどを抑制して輝度の向上を図ることなどを目的に用いられるものである。輝度向上フィルムとしては適宜なものを用いうる。その例としては、誘電体の多層薄膜や屈折率異方性が相違する薄膜フィルムの多層積層体の如き、所定偏光軸の直線偏光を透過して他の光は反射する特性を示すものがあげられる(例えば3M社製、「D−BEF」等)。
また輝度向上フィルムの他の例としては、コレステリック液晶層、就中コレステリック液晶ポリマーの配向フィルムやその配向液晶層をフィルム基材上に支持したもの(例えば日東電工社製、「PCF350」や、Merck社製、「Transmax」等)の如き、左回り又は右回りのいずれか一方の円偏光を反射して他の光は透過する特性を示すものなどがあげられる。後者のコレステリック液晶系のものでは、円偏光を直線偏光に変換することを目的に必要に応じて1/4波長板と組合せて用いることもできる。
また位相差板としては、前記した1/4波長板のほか一軸や二軸等の適宜な方式による各種ポリマーの延伸フィルム、Z軸配向処理したポリマーフィルム、液晶性高分子層、低分子液晶の配向固定化層などの適宜な位相差を有するものを用いうる。拡散制御フィルムは、視野角や解像度に関わるギラツキ、散乱光等の制御を目的に用いられるものであり、拡散、散乱及び屈折の少なくともいずれかを利用した光学機能フィルムが用いられる。さらに偏光散乱フィルムは、フィルム中に散乱性物質を含有させて偏光がその振動方向により散乱異方性を生じるようにしたものであり、偏光の制御などに用いられる。
上記した光学補償偏光板や光学部材等を形成する位相差層や偏光フィルム、透明保護層や粘着層などの各層は、例えばサリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物やシアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等の紫外線吸収剤で処理する方式などの適宜な方式により紫外線吸収能をもたせたものなどであってもよい。
(液晶表示装置)
本発明の液晶表示装置は、前述の本発明の偏光板を用いた液晶表示装置(第1形態)、前述の本発明の偏光板のいずれかをセル上下に2枚用いたVAモード、OCBモードおよびTNモード液晶表示装置(第2形態)、及び前述の本発明の偏光板のいずれか1枚をバックライト側に用いたVAモード液晶表示装置(第3形態)である。
すなわち、本発明の光学補償シートを用いた偏光板は、液晶表示装置に有利に用いられる。本発明の光学補償シートは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、VAモードまたはIPSモードに好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード、CPA モード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
VAモードの液晶表示装置としては、図3に示すように、液晶セル(VAモードセル)およびその両側に配置された二枚の偏光板(TAC1、偏光子及びTAC2からなる偏光板)からなるものが挙げられる。液晶セルは、特に図示しないが二枚の電極基板の間に液晶を担持している。
本発明の透過型液晶表示装置の一つの態様では、本発明の光学補償シートを液晶セルと一方の偏光板との間に、一枚配置するか、あるいは液晶セルと双方の偏光板との間に二枚配置する。
本発明の透過型液晶表示装置の別の態様では、液晶セルと偏光子との間に配置される偏光板の保護膜として、本発明の光学補償シートが用いられる。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護膜のみに上記の光学補償シートを用いてもよいし、あるいは双方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)二枚の保護膜に、上記の光学補償シートを用いてもよい。液晶セルへの貼り合わせは、本発明の光学補償シート(TAC1)をVAセル側にすることが好ましい。一方の偏光板の(液晶セルと偏光子との間の)保護膜のみに上記の光学補償シートを用いた場合、これが、上側偏光板(観察側)、下側偏光板(バックライト側)のどちら側でもよく、機能的には何ら問題がない。ただし、上側偏光板として使用すると機能性膜を観察側(上側)に設ける必要性があり生産得率が下がる可能性があるため、下側偏光板として使用する場合が高いと考えられ、より好ましい実施形態であると考えられる。
そして、図3の光源側及び観察者側の両方を本発明の偏光板で形成したものが第2形態の液晶表示装置であり、光源側のみを本発明の偏光板で形成したものが第3形態の液晶表示装置である。
図3の保護膜(TAC2)は通常のセルレートアシレートフィルムでもよい。たとえば、40〜80μmが好ましく、市販のKC4UX2M(コニカオプト(株)製40μm)、KC5UX(コニカオプト(株)製60μm)、TD80UL(富士写真フイルム製80μm)等が挙げられるが、これらに限定されない。
また前記において液晶表示装置の形成部品は、積層一体化されていてもよいし、分離状態にあってもよい。また液晶表示装置の形成に際しては、例えばプリズムアレイシートやレンズアレイシート、光拡散板や保護板などの適宜な光学素子を適宜に配置することができる。かかる素子は、光学補償偏光板と積層してなる上記した光学部材の形態にて液晶表示装置の形成に供することもできる。
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明は、実施例に限定されない。
Re(590)およびRth(590)の値は、自動複屈折計(KOBRA 21ADH、新王子計測器(株)製)の位相差測定の標準モードで測定した。Rth(590)は平均屈折率を1.48として算出した。
Re(400)およびRe(700)の値は自動複屈折計(KOBRA 21ADH、新王子計測器(株)製)の波長分散測定の標準モードで測定した。
ポリマー層Bの膜厚は干渉式膜厚計で測定した。
作製した光学補償シートの両端から25mmを除く部分(幅1290mm)を幅方向で10mm間隔、長手方向に1000mmを10mm間隔でRe(590)、Rth(590)、膜厚dを測定し、平均値および面内の最大値および最小値の差を算出した。
[実施例1]
市販の幅1340mmで厚み80μmのセルロースアセテートのロールフィルム(TD80UL、富士写真フイルム(株)製)上に2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’一ジアミノビフェニルから合成された質量平均分子量5.9万のポリイミドの15質量%シクロヘキサノン溶液にフッ素系界面活性剤(ディフェンサーMCF−323、大日本インキ化学工業(株)製)を0.5質量部添加した塗布液を乾燥後の厚みが5μmとなるように連続的に塗布し、150℃で10分間乾燥し、ロール形態で巻き取った。
上記のポリイミドを塗布したセルロースアセテートフィルムを送り出し、150℃の雰囲気化で2分間加熱し、150℃の雰囲気中でテンター延伸機で幅方向に15%延伸した。その後、テンタークリップで把持した部分を含む両端を切り落として幅1340mmとして、端から2〜12mmの範囲にナーリングを付け、巻き取った。作製した光学補償シート1のRe(590)、Rth(590)、Re(400)、Re(700)、dを測定した。結果を表1に示す。
[比較例1]
フッ素系界面活性剤を添加しなかった以外は実施例1と同様にして光学補償シート2を作製した。作製した光学補償シート6のRe(590)、Rth(590)、Re(400)、Re(700)、dを測定した。結果を表1に示す。
[実施例2]
アセチル置換度が2.92のセルロースアセテート100質量部、レターデーション低下剤(A−19)15質量部、波長分散調整剤(2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン)2質量部を次の混合溶剤、ジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に綿の質量濃度が17質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解させた。このとき、同時にセルロースアシレート100質量部に対して微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製)0.05質量部を投入し、加熱しながら攪拌しドープを調整した。
上記のように調整したドープをバンド流延機で乾燥後の膜厚が80μmとなるように流延し、残留溶剤量40質量%(残留溶剤を含むフィルムを100質量%として)でバンドから剥離し、130℃で25分間乾燥させ、両端を切り落として幅1340mmとし巻き取り、セルロースアシレートフィルム1を作製した。
上記の幅1340mmのセルロースアシレートフィルム1のロールフィルム上に2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’一ジアミノビフェニルから合成された質量平均分子量5.9万のポリイミドの15質量%シクロヘキサノン溶液にシリコーン系界面活性剤(ディスパロンLS−009、楠本化成製)を1.0質量部添加した塗布液を乾燥後の厚みが6μmとなるように連続的に塗布し、150℃で10分間乾燥し、そのまま連続して150℃の雰囲気中でテンター延伸機で幅方向に17%延伸した。その後、テンタークリップで把持した部分を含む両端を切り落として幅1340mmとして、端から2〜12mmの範囲にナーリングを付け、巻き取った。作製した光学補償シート3のRe(590)、Rth(590)、Re(400)、Re(700)、dを測定した。結果を表1に示す。
[実施例3]
(鹸化処理)
実施例2で作製したセルロースアシレートフィルム1を温度60℃の誘電式加熱ロールを通過させ、フイルム表面温度を40℃に昇温した後に、下記の組成のアルカリ溶液をバーコータを用いて、14ml/m2塗布し、110℃に加熱したスチーム式遠赤外線ヒーター((株)ノリタケカンパニー製)の下に10秒間滞留させた後、同じくバーコーターを用いて純水を3ml/m2塗布した。このときのフイルム温度は40℃であった。次いでファウンテンコーターによる水洗とエアナイフによる水切りを3回繰り返して後に、70℃の乾燥ゾーンに2秒滞留させて乾燥した。
<アルカリ溶液組成>
水酸化カリウム 4.7質量部
水 15.7質量部
イソプロパノール 64.8質量部
プロピレングリコール 14.9質量部
1633O(CH2CH2O)10H(界面活性剤) 1.0質量部
(配向膜の形成)
鹸化処理したセルロースアシレートフィルム1上に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。
<配向膜塗布液組成>
下記の変性ポリビニルアルコール 40質量部
水 728質量部
メタノール 228質量部
グルタルアルデヒド(架橋剤) 2質量部
クエン酸エステル(AS3、三共化学(株)) 0.69質量部
Figure 2005331773
(光学異方性層の形成)
配向膜上に、下記のディスコティック液晶化合物41.01質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)4.06質量部、光重合開始剤(イルガキュアー907、チバガイギー社製)1.35質量部、増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.45質量部、下記のメラミン系ポリマー0.12質量部を75質量部のメチルエチルケトンに溶解した塗布液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)を0.1質量部を加え、#5のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されているセルロースアシレートフィルム1の配向膜面に連続的に塗布した。室温から100℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、135℃の乾燥ゾーンで、ディスコティック液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、ディスコティック液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、ディスコティック液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態にした。
Figure 2005331773
Figure 2005331773
上記のロールフィルムを160℃で2分間加熱し、テンター延伸機で幅方向に15%延伸した。その後、テンタークリップで把持した部分を含む両端を切り落として幅1340mmとして、端から2〜12mmの範囲にナーリングを付け、巻き取った。作製した光学補償シート4のRe(590)、Rth(590)、Re(400)、Re(700)、dを測定した。結果を表1に示す。
[実施例4]
実施例2で作製したセルロースアシレートフィルム1のロール形態のフィルム上を後述する実施例9の鹸化処理を行った後、下記のポリイミドのN−メチルピロリドン/ブチルセロソルブ溶液を、#5のバーコーターを用いて連続的に塗布し、140℃で3分間加熱して、厚さ0.5μmの配向膜を形成し、巻き取った。
Figure 2005331773
配向膜を設けたロール状セルロースアシレートフィルムを搬送しながら、長手方向(搬送方向)に連続的にラビング処理を実施した。下記の棒状液晶分子100質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)1質量部、光重合増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.3質量部をメチレンクロライド900質量部に溶解した塗布液に、フルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)を0.1質量部を加え、#7のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されているロール状セルロースアシレートフィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から70℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、110℃の乾燥ゾーンで、棒状液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、棒状液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態とし光学補償シート5を作製した。棒状液晶はその長軸方向がセルロースアシレートフィルム平面に平行であり、かつ幅方向に平行に配向していた。この棒状液晶を塗布した光学補償シート5の光学特性は、Re(590)ave=141nm、Rth(590)ave=71nm、dave=1.5μm、ΔRe(590)=7nm、ΔRth(590)=4nm、Δd=0.08μmであった。
Figure 2005331773
厚み100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に下記ポリイミドを、N−メチル−2−ピロリドン、ブトキシエタノールおよびメチルエチルケトンの混合溶媒に溶解して得られた4質量%溶液を、#3のバーコーターを用いて塗布した。得られた塗布層を140℃で2分、さらに62℃で5分間加熱乾燥した。
Figure 2005331773
配向膜を設けた二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを搬送しながら、光学補償シート5の作製に使用した化38の棒状液晶化合物100質量部、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)1質量部、光重合増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.3質量部、をメチレンクロライド900質量部に溶解した塗布液に、下記の界面活性剤を0.1質量部を加え、#5のワイヤーバーを391回転でフィルムの搬送方向と同じ方向に回転させて、20m/分で搬送されているロール状二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムの配向膜面に連続的に塗布した。室温から70℃に連続的に加温する工程で、溶媒を乾燥させ、その後、110℃の乾燥ゾーンで、棒状液晶化合物層にあたる膜面風速がフィルム搬送方向に平行に1.5m/secとなるようにし、約90秒間加熱し、棒状液晶化合物を配向させた。次に、80℃の乾燥ゾーンに搬送させて、フィルムの表面温度が約100℃の状態で、紫外線照射装置(紫外線ランプ:出力160W/cm、発光長1.6m)により、照度600mWの紫外線を4秒間照射し、架橋反応を進行させ、棒状液晶化合物をその配向に固定した。その後、室温まで放冷し、円筒状に巻き取ってロール状の形態とし二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に光学補償シート6を形成した。棒状液晶はその長軸方向が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム法線方向に平行に配向していた。この棒状液晶を塗布した層を厚さ15μmのアクリル系粘着剤を介してガラス板上に転写したフィルムの光学特性はRe(590)ave=2nm、Rth(590)ave=102nm、dave=1.1μm、ΔRe(590)=0.3nm、ΔRth(590)=4nm、Δd=0.06μmであった。
Figure 2005331773
光学補償シート5上に厚さ15μmのアクリル系粘着剤を介して、二軸延伸ポリエステルフィルム上に形成した棒状液晶からなる光学補償シート6を転写し、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離し、光学補償シート5上に光学補償シート6を積層した光学補償シート7を作製した。作製した光学補償シート7のRe(590)、Rth(590)、Re(400)、Re(700)、dを測定した。結果を表1に示す。
[比較例2]
実施例4の光学補償シート5の作製でフルオロ脂肪族基含有共重合体(メガファックF780 大日本インキ(株)製)を添加しない以外は実施例4と同様にし、光学補償シート7を作製した。棒状液晶はその長軸方向がセルロースアシレートフィルム平面に平行であり、かつ幅方向に平行に配向していた。この棒状液晶を塗布した光学補償シート8の光学特性はRe(590)ave=138nm、Rth(590)ave=68nm、dave=1.5μm、ΔRe(590)=30nm、ΔRth(590)=8nm、Δd=0.18μmであった。
実施例4の光学補償シート6の作製で使用した化40の界面活性剤を添加しない以外は実施例4と同様にし、光学補償シート9を作製した。棒状液晶はその長軸方向が二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム法線方向に平行に配向していた。この棒状液晶を塗布した層を厚さ15μmのアクリル系粘着剤を介してガラス板上に転写したフィルムの光学特性はRe(590)ave=3nm、Rth(590)ave=98nm、dave=1.1μm、ΔRe(590)=1nm、ΔRth(590)=12nm、Δd=0.13μmであった。
光学補償シート8上に厚さ15μmのアクリル系粘着剤を介して、二軸延伸ポリエステルフィルム上に形成した棒状液晶からなる光学補償シート9を転写し、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離し、光学補償シート8上に光学補償シート9を積層した光学補償シート10を作製した。作製した光学補償シート9のRe(590)、Rth(590)、Re(400)、Re(700)、dを測定した。結果を表1に示す。
[実施例5]
アセチル置換度1.9、プロピオニル置換度0.8のセルロースアシレート100質量部、可塑剤としてトリフェニルフォスフェート7.8質量部およびビフェニルジフェニルフォスフェート3.9質量部、紫外線吸収剤として2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール)0.7質量部および2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)0.3質量部をジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に綿の質量濃度が17質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解させた。このとき、同時にセルロースアシレート100質量部に対して微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製)0.05質量部を投入し、加熱しながら攪拌させた。
上記のように調整したドープをバンド流延機で乾燥後の膜厚が105μmとなるように流延し、残留溶剤量37質量%(残留溶剤を含むフィルムを100質量%として)でバンドから剥離し、連続してテンター延伸機で140℃の雰囲気下で幅方向に31%延伸した。その後130℃で25分間乾燥させ、両端を切り落として幅1340mmとし端から2〜12mmの範囲にナーリングを付けて巻き取り、セルロースアシレートフィルム2を作製した。
作製した幅1340mm、厚み80μmのセルロースアシレートフィルム2上に2,2’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’一ジアミノビフェニルから合成された質量平均分子量5.9万のポリイミドの15質量%シクロヘキサノン溶液にフッ素系界面活性剤(ディフェンサーMCF−323、大日本インキ化学工業(株)製)を0.5質量部添加した塗布液を乾燥後の厚みが3μmとなるように連続的に塗布し、150℃で10分間乾燥し、ロール形態で巻き取った。作製した光学補償シート11のRe(590)、Rth(590)、Re(400)、Re(700)、dを測定した。結果を表1に示す。
[実施例6]
アセチル置換度1.0、ブチリル置換度1.66のセルロースアシレート100質量部、可塑剤としてトリフェニルフォスフェート7.8質量部およびビフェニルジフェニルフォスフェート3.9質量部、紫外線吸収剤として2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール)0.7質量部および2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−アミルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール)0.3質量部をジクロロメタン/メタノール(87/13質量部)に綿の質量濃度が17質量%となるように攪拌しながら投入して加熱攪拌し溶解させた。このとき、同時にセルロースアシレート100質量部に対して微粒子であるマット剤(AEROSIL R972、日本エアロジル(株)製)0.05質量部を投入し、加熱しながら攪拌させた。
上記のように調整したドープをバンド流延機で乾燥後の膜厚が129μとなるように流延し、残留溶剤量37質量%(残留溶剤を含むフィルムを100質量%として)でバンドから剥離し、連続してテンター延伸機で140℃の雰囲気下で幅方向に40%延伸した。その後130℃で25分間乾燥させ、両端を切り落として幅1340mmとし端から2〜12mmの範囲にナーリングを付けて巻き取り、セルロースアシレートフィルム3を作製した。
4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)−2,2−ジフェニルプロパン二無水物と、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノビフェニルから合成された質量平均分子量6.2万のポリイミドをシクロペンタノンに溶解して得た20質量%溶液にアクリル系界面活性剤(ディスパロンL−1980、楠本化成製)を0.1質量部添加した塗布液を、厚み100μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上に乾燥後の膜厚が3.5μmとなるように塗布し、140℃で10分間乾燥させた後、巻き取った。セルロースアシレートフィルム3を実施例9で後述する鹸化処理を行い、その片側に厚さ15μmのアクリル系粘着層を介して上記のポリイミド層を接着した後、二軸延伸ポリエステルフィルムを剥離して、光学補償シート12を作製した。
[実施例7:反射防止機能付き保護膜1の作製]
(光散乱層用塗布液の調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PETA、日本化薬(株)製)50gをトルエン38.5gで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2g添加し、混合攪拌した。 この溶液を塗布、紫外線硬化して得られた塗膜の屈折率は1.51であった。
さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリスチレン粒子(屈折率1.60、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.7gおよび平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.3g加え、最後に、フッ素系表面改質剤(FP−1)0.75g、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10gを加え、完成液とした。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光散乱層の塗布液を調製した。
(低屈折率層用塗布液の調製)
まず初めに、次のようにしてゾル液aを調製した。攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103、信越化学工業(株)製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1600であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN−7228、固形分濃度6%、JSR(株)製)13g、シリカゾル(シリカ、MEK−STの粒子サイズ違い、平均粒径45nm、固形分濃度30%、日産化学(株)製)1.3g、ゾル液a0.6gおよびメチルエチルケトン5g、シクロヘキサノン0.6gを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
(反射防止層付き透明保護膜の作製)
80μmの厚さのトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTDY80UL、富士写真フィルム(株)製)をロール形態で巻き出して、上記の機能層(光散乱層)用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度30m/分の条件で塗布し、60℃で150秒乾燥の後、さらに窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量250mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ6μmの機能層を形成し、巻き取った。
該機能層(光散乱層)を塗設したトリアセチルセルロースフィルムを再び巻き出してその光散乱層側に、該調製した低屈折率層用塗布液を線数180本/インチ、深度40μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、グラビアロール回転数30rpm、搬送速度15m/分の条件で塗布し、120℃で150秒乾燥の後、更に140℃で8分乾燥させてから窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量900mJ/cm2の紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成し、巻き取り、反射防止機能付き保護膜1を作製した。
[実施例8:反射防止機能付き保護膜2の作製]
(ハードコート層用塗布液の調製)
トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA、日本化薬(株)製)750.0質量部に、質量平均分子量3000のポリ(グリシジルメタクリレート)270.0質量部、メチルエチルケトン730.0g、シクロヘキサノン500.0g及び光重合開始剤(イルガキュア184、日本チバガイギー(株)製)50.0gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層用の塗布液を調製した。
(二酸化チタン微粒子分散液の調製)
二酸化チタン微粒子としては、コバルトを含有し、かつ水酸化アルミニウムと水酸化ジルコニウムを用いて表面処理を施した二酸化チタン微粒子(MPT−129、石原産業(株)製)を使用した。
この粒子257.1gに、下記分散剤38.6g、およびシクロヘキサノン704.3gを添加してダイノミルにより分散し、質量平均径70nmの二酸化チタン分散液を調製した。
Figure 2005331773
(中屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液88.9gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA)58.4g、光重合開始剤(イルガキュア907)3.1g、光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)1.1g、メチルエチルケトン482.4gおよびシクロヘキサノン1869.8gを添加して攪拌した。十分に攪拌ののち、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して中屈折率層用塗布液を調製した。
(高屈折率層用塗布液の調製)
上記の二酸化チタン分散液586.8gに、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)47.9g、光重合開始剤(イルガキュア907、日本チバガイギー(株)製)4.0g、光増感剤(カヤキュア−DETX、日本化薬(株)製)1.3g、メチルエチルケトン455.8g、およびシクロヘキサノン1427.8gを添加して攪拌した。孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して高屈折率層用の塗布液を調製した。
(低屈折率層用塗布液の調製)
下記共重合体(P−1)をメチルイソブチルケトンに7質量%の濃度になるように溶解し、末端メタクリレート基含有シリコーン樹脂X−22−164C(信越化学(株)製)を固形分に対して3%、光ラジカル発生剤イルガキュア907(商品名)を固形分に対して5質量%添加し、低屈折率層用塗布液を調製した。
共重合体P−1
Figure 2005331773
(反射防止層付透明保護膜の作製)
膜厚80μmのトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTD80UL、富士写真フィルム(株)製)上に、ハードコート層用塗布液をグラビアコーターを用いて塗布した。100℃で乾燥した後、酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量300mJ/cm2の紫外線を照射して塗布層を硬化させ、厚さ8μmのハードコート層を形成した。
ハードコート層の上に、中屈折率層用塗布液、高屈折率層用塗布液、低屈折率層用塗布液を3つの塗布ステーションを有するグラビアコーターを用いて連続して塗布した。
中屈折率層の乾燥条件は100℃、2分間とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら180W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm2、照射量400mJ/cm2の照射量とした。硬化後の中屈折率層は屈折率1.630、膜厚67nmであった。
高屈折率層および低屈折率層の乾燥条件はいずれも90℃、1分の後、100℃、1分とし、紫外線硬化条件は酸素濃度が1.0体積%以下の雰囲気になるように窒素パージしながら240W/cm2の空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度600mW/cm2、照射量600mJ/cm2の照射量とした。
硬化後の高屈折率層は屈折率1.905、膜厚107nm、低屈折率層は屈折率1.440、膜厚85nmであった。このようにして、反射防止層付き透明保護膜を作製した。作製した反射防止機能付き保護膜の機械方向の弾性率、吸湿膨張係数を測定した。
[実施例9]
(偏光板の作製)
厚さ80μmのポリビニルアルコール(PVA)フィルムを、ヨウ素濃度0.05質量%のヨウ素水溶液中に30℃で60秒浸漬して染色し、次いでホウ酸濃度4質量%濃度のホウ酸水溶液中に60秒浸漬している間に元の長さの5倍に縦延伸した後、50℃で4分間乾燥させて、厚さ20μmの偏光膜を得た。
実施例1、2、3、5および比較例1で作製した光学補償シート1、2、3、4、11および反射防止層付透明保護膜1および2を1.5モル/Lで55℃の水酸化ナトリウム水溶液中に浸漬した後、水で十分に水酸化ナトリウムを洗い流した。その後、0.005モル/Lで35℃の希硫酸水溶液に1分間浸漬した後、水に浸漬し希硫酸水溶液を十分に洗い流した。 最後に試料を120℃で十分に乾燥させた。
前記のように鹸化処理を行った光学補償シート1、2、3、4、11、反射防止層付透明保護膜1および2、鹸化処理を行わなかった光学補償シート7、10、12および市販のセルロースアシレートを表2に示す組合せで前記の偏光膜を挟むようにポリビニルアルコール系接着剤を用いて貼り合せ偏光板1から8を得た。
光学補償シート1を鹸化処理せずに、アクリル系粘着剤を用いて、上記の偏光膜と貼り合わせ偏光板9を作製した。
ここで市販のセルロースアシレートフィルムとしてはフジタックT40UZ、TF80UL(富士写真フイルム(株)製)、およびKC80UVSFD(それぞれコニカオプト(株)製)を用いた。このとき、偏光膜および偏光膜両側の保護膜はロール形態で作製されてるため各ロールフィルムの長手方向が平行となっており連続的に貼り合わされる。また図1に示すように、セル側に配置される保護膜においては偏光子の透過軸と実施例1で作製したセルロースアシレートフィルムの遅相軸とは平行になっている。
上記で作製した偏光板のセル側の面にはアクリル系の粘着材、さらにその粘着材の上にセパレートフィルムを貼り付けた。セルと反対側の面にはプロテクトフィルムを貼り付けた。
[実施例9]
分光光度計(日本分光(株)製)を用いて、380〜780nmの波長領域において、入射角5°における分光反射率を機能性膜側から測定し、450〜650nmの積分球平均反射率を求めたところ、反射防止層付き透明保護膜1を使用した偏光板1および3では2.3%、反射防止層付き透明保護膜2を使用した偏光板2では0.4%であった。ここで反射防止層付き透明保護膜上のプロテクトフィルムは剥がして反射率測定を行った。
[実施例10]
VAモードの液晶TV(LC30−AD1、シャープ(株)製)のパネルの表裏の偏光板および光学補償シートを剥がし、視認側に実施例8で作製した偏光板1、2、3、4、7、9を偏光板の透過軸が画面の鉛直方向となるように貼り付けた。バックライト側には市販のスーパーハイコントラスト偏光板(HLC2−5618HC、(株)サンリッツ製)を偏光板の透過軸が画面の水平方向になるように貼り付けた。本発明の偏光板1、3、5、7、8、9を貼り付けた液晶TVの画面は黒表示時および全256階調中の20階調のグレー表示時のムラが視認されず均一な画像が得られた。偏光板2を貼り付けた液晶TVでは黒表示時および全256階調中の20階調のグレー表示時にムラが見られた。
[実施例11]
IPSモードの液晶モニター(FLATRON L2010P、LG電子製)のパネルの表裏の偏光板および光学補償シートを剥がし、視認側に実施例8で作製した偏光板5、6を偏光板の透過軸が画面の鉛直方向となるように貼り付けた。バックライト側には市販のスーパーハイコントラスト偏光板(HLC2−5618HC、(株)サンリッツ製)を偏光板の透過軸が画面の水平方向になるように貼り付けた。本発明の偏光板5を貼り付けた液晶TVの画面は黒表示時および全256階調中の20階調のグレー表示時のムラが視認されず均一な画像が得られた。偏光板6を貼り付けた液晶TVでは黒表示時および全256階調中の20階調のグレー表示時にムラが見られた。
[実施例12]
実施例10で液晶TVの視認側に貼り付けた偏光板を剥がすリワーク作業を実施したところ、偏光板1、2、3、4、7、8は液晶TV表面に粘着剤が残らなかったが、偏光板9は粘着剤が液晶TV表面に残った。
偏光板1、2、3、4、7に使用した光学補償シー1、2、3、4、11は偏光膜に貼り合せる前の鹸化処理後におけるポリマー層B表面のレベリング剤量が、鹸化処理前の1/10以下となっていた。また、偏光板8に使用した光学補償シート12では転写によりセルロースアシレートフィルム上にポリマー層Bが形成されており、ポリマー層B液晶セル側の面にはレベリング剤がセルロースアシレートフィルム側の面のレベリング剤量の1/10以下である。偏光板9に使用した光学補償シート1は鹸化処理を行っていないため表面のレベリング剤量はポリマー層B形成時のままであった。
Figure 2005331773
Figure 2005331773
本発明の偏光板の製造時におけるセルロースアシレートフィルムの貼り合わせ方法を示す模式図である。 本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。 本発明の偏光板の断面構造を模式的に示す断面図である。

Claims (20)

  1. ポリマーフィルムAと塗布により形成されるポリマー層Bとの積層体からなる光学補償シートであって、該光学補償シート面内の最大屈折率方向の屈折率をnx、最大屈折率方向に直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnz、シートの厚さをd(単位:nm)、Re(λ)を(nx−ny)dで算出される値、Rth(λ)を[(nx+ny)/2−nz]dで算出される値、フィルム面内のRe(λ)の最大値と最小値の差をΔRe(λ)、フィルム面内のRe(λ)の平均値をRe(λ)ave、そしてλを測定波長としたときに、測定波長590nmにおいて、Re(λ)、Rth(λ)、ΔRe(λ)及びRe(λ)aveが、下記数式(I)から数式(III)を満たすことを特徴とする光学補償シート。
    数式(I) :0≦Re(590)≦200nm
    数式(II) :0≦Rth(590)≦400nm
    数式(III):〔ΔRe(590)/Re(590)ave〕×100≦20%
  2. ポリマーフィルムAと塗布により形成されるポリマー層Bとの積層体からなる光学補償シートであって、該光学補償シート面内の最大屈折率方向の屈折率をnx、最大屈折率方向に直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnz、シートの厚さをd(単位:nm)、Re(λ)を(nx−ny)dで算出される値、Rth(λ)を[(nx+ny)/2−nz]dで算出される値、フィルム面内のRth(λ)の最大値と最小値の差をΔRth(λ)、フィルム面内のRth(λ)の平均値をRth(λ)ave、そしてλを測定波長としたときに、測定波長590nmにおいて、Re(λ)、Rth(λ)、ΔRth(λ)及びRth(λ)aveが、下記数式(I)、(II)および(IV)を全て満たすことを特徴とする光学補償シート。
    数式(I):0≦Re(590)≦200nm
    数式(II):0≦Rth(590)≦400nm
    数式(IV):(ΔRth(590)/Rth(590)ave)×100≦10%
  3. ポリマー層Bのフィルム面内の厚みdの最大値と最小値の差Δdと面内のdの平均値daveとが下記数式(V)を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の光学補償シート。
    数式(V):(Δd/dave)×100≦10(%)
  4. ポリマー層Bが液晶性化合物の配向状態を固定化した層であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の光学補償シート。
  5. ポリマー層Bが非液晶性化合物からなる層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の光学補償シート。
  6. ポリマー層Bがポリエーテルケトン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド及びポリエステルイミドの少なくとも1種よりなることを特徴とする請求項5記載の光学補償シート。
  7. ポリマー層Bがレべリング剤を含む溶液の塗布により形成された層であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の光学補償シート。
  8. ポリマーフィルムA上にポリマー層B形成用塗布液を塗布した後に延伸することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光学補償シート。
  9. ポリマーフィルムAを延伸した後に、ポリマー層B形成用塗布液を塗布することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光学補償シート。
  10. 延伸して作製したポリマーフィルムA上に、ポリマー層Bを転写して形成されたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光学補償シート。
  11. 延伸処理がテンター横延伸であることを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の光学補償シート。
  12. ポリマーフィルムAがセルロースアシレートフィルムであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の光学補償シート。
  13. ポリマーフィルムAが、下記数式(VI)〜(IX)を全てみたすことを特徴とする請求項1乃至12記載の光学補償シート。
    数式(VI) :0nm≦Re(590)≦10nm
    数式(VII) :|Rth(590)|≦25nm
    数式(VIII):|Re(400)−Re(700)|≦10
    数式(IX) :|Rth(400)−Rth(700)|≦35nm
  14. ポリマーフィルムAが、延伸処理前であることを特徴とする請求項13に記載の光学補償シート。
  15. 鹸化処理によりポリマー層B表面のレベリング剤量が鹸化処理前よりも少なくなることを特徴とする請求項7乃至14のいずれかに記載の光学補償シート。
  16. 請求項1乃至15記載の光学補償シートを少なくとも一方の面に保護膜として有する偏光板。
  17. 液晶セルの少なくとも一方の面に請求項16記載の偏光板を有する液晶表示装置。
  18. 液晶セルの両面に一対の偏光板を有する液晶表示装置であって、一方のみが請求項16記載の偏光板であることを特徴とする液晶表示装置。
  19. 請求項16記載の偏光板がバックライト側に配置されたことを特徴とする請求項18記載の液晶表示装置。
  20. 液晶モードがVAモードまたはIPSモードであることを特徴とする請求項17乃至19記載の液晶表示装置。
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