JP2006296242A - 宿主微生物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 タンパク質等の生産性が高い微生物を提供すること。
【解決手段】 以下の(a)若しくは(b)のDNAからなる遺伝子、又はこれらに相当する遺伝子が染色体中に導入されてなるか、又はプラスミド上に含んでなることを特徴とする宿主微生物。(a)Bacillus clausiiのゲノムから見いだされた、特定の塩基配列からなるDNA (b)前項細菌の遺伝子から得られた、特定のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
【選択図】 なし

Description

本発明は、有用なタンパク質又はポリペプチドの生産に用いる宿主微生物、組換え微生物、及びタンパク質又はポリペプチドの生産方法に関する。
微生物による有用物質の工業的生産は、アルコール飲料や味噌、醤油等の食品類をはじめとし、アミノ酸、有機酸、核酸関連物質、抗生物質、糖質、脂質、タンパク質等、その種類は多岐に渡っており、またその用途についても食品、医薬品、洗浄剤、化粧品等の日用品、或いは各種化成品原料に至るまで幅広い分野に広がっている。
こうした微生物による有用物質の工業生産においては、その生産性の向上が重要な課題の一つであり、その手法として、突然変異等の遺伝学的手法による生産菌の育種が行われてきた。特に最近では、微生物遺伝学、バイオテクノロジーの発展により、遺伝子組換え技術等を用いたより効率的な生産菌の育種が行われるようになっている。さらに、近年のゲノム解析技術の急速な発展を受けて、対象とする微生物のゲノム情報を解読し、これらを積極的に産業に応用しようとする試みもなされている。ゲノム情報の公開されている産業的に有用な宿主微生物としては、枯草菌Bacillus subtilis Marburg No.168(非特許文献1)、大腸菌Escherichia coli K-12 MG1655(非特許文献2)、コリネバクテリウムCorynebacterium glutamicum ATCC132032などが挙げられ、これらのゲノム情報を利用し、改良を加えた菌株が開発されている。しかしながら、上記のような取り組みにも関わらず、生産効率は必ずしも満足できるものではなかった。
Nature,390,249,1997 Science,277,1453,1997
本発明は、目的タンパク質又は目的ポリペプチドの生産性が向上する微生物を提供することを目的とする。
本発明者らは、バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16株(FERM BP-3376)由来の配列番号1記載の塩基配列からなる遺伝子を導入することにより、その宿主微生物の目的タンパク質又は目的ポリペプチドの生産性を向上させることができることを見出した。
すなわち、本発明は、以下の(a)若しくは(b)のDNAからなる遺伝子又はこれらに相当する遺伝子が染色体中に導入されてなるか、又はプラスミド上に含んでなることを特徴とする宿主微生物を提供するものである。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
また、本発明は、上記宿主微生物に、異種のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物を提供するものである。
さらに、本発明は、上記組換え微生物を用いるタンパク質又はポリペプチドの製造方法を提供するものである。
本発明の宿主微生物は、目的タンパク質又はポリペプチド生産性が向上されており、これを用いて目的タンパク質又はポリペプチドの生産を行えば、当該物質の生産に必要な時間やコストを削減することができ有用である。
この明細書においてアミノ酸配列および塩基配列の同一性はLipman-Pearson法 (Science,227,1435,1985)によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことにより算出される。またこの明細書において該方法により配列同一性を算出するにあたり、文献(生物化学実験法46 ホールゲノムショットガン法によるゲノム解析とアノテーション, 2001年6月8日初版, 著者 小笠原直毅 他, pp232, ISBN 4-7622-2974-1)に示される一般的な基準を採用し、それぞれの配列は60%以上の領域にわたって比較した。
本発明の宿主微生物は、以下の(a)若しくは(b)のDNAからなる遺伝子又はこれらに相当する遺伝子が染色体中に導入されてなるか、又はプラスミド上に含んでなるものである。
(a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA、
(b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
配列番号1で示される塩基配列からなる遺伝子(以下orf1遺伝子ともいう)は、本発明者らが、それまで未知であったバチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16株(FERM BP-3376)のゲノムの塩基配列を解析した際に、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードすることが推定されるDNAとして見出されたものであり、また、後記実施例3に示すとおり、一定のプロモーター制御下におくことで、タンパク質の分泌生産が向上したという実験結果から、配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質を実際にコードすることが確かめられたものである。そして、かかるタンパク質と、既知のタンパク質との同一性は、そのアミノ酸配列と最も高い配列同一性を示すものでも、36.2%であった(実施例4)。
これらの遺伝子に相当する遺伝子としては、以下の(1)〜(4)に示す遺伝子が含まれる。
(1)配列番号1で示される塩基配列と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上の同一性を有する塩基配列からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価な活性を有するタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。
(2)配列番号1で示される塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価なタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。なお、ここで、「ストリンジェントな条件下」としては、例えばMolecular Cloning −A LABORATORY MANUAL THIRD EDITION[Joseph Sambrook, David W. Russell., Cold Spring Harbor Laboratory Press]記載の方法が挙げられる。例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5% SDS、5xデンハート及び100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間恒温し、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
(3)配列番号2で示されるアミノ酸配列と90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価なタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。
(4)配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、且つ配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質と機能的に等価なタンパク質をコードするDNAからなる遺伝子。なお、ここで、配列番号2で示されるアミノ酸配列において、1若しくは2以上のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列には、1若しくは数個、好ましくは1〜10個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列が含まれ、付加には、両末端への1〜数個のアミノ酸の付加が含まれる。
そして、このような遺伝子としては、自然に生じる変換体の他、変異剤またはPCRを利用したランダム変異、特定部位変異誘発、エンドヌクレアーゼ若しくは制限酵素などによるDNA断片の変異、欠失、連結等の人為的手段によって構築されるものであってもよい。
ちなみに、配列番号2で示されるアミノ酸配列と最大の配列同一性を示したアミノ酸配列は、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)のprsA遺伝子がコードすると推定されるアミノ酸配列である(実施例4)。バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)のprsA遺伝子がコードするアミノ酸配列を有するタンパク質は、そのアミノ酸配列の同一性から、枯草菌(Bacillus subtilis)のPrsAと同様の機能を有することが予測されている。しかしながら、実験的な機能解析はなされておらず、その機能は実証されていない。ここで、PrsAは、枯草菌においてタンパク質の分泌過程に関与するタンパク質として発見され、これまでの研究から、PrsAは、細胞膜を通過して細胞質外に輸送された後のタンパク質の折りたたみを容易にするシャペロン様の機能を有することが推測されている。この枯草菌のPrsAと類似の機能を有することが実験により確認された枯草菌以外の微生物由来のタンパク質としては、バチルス アントラシス(Bacillus anthracis)由来のPrsAA(配列番号10)、PrsAB(配列番号11)、及びPrsAC(配列番号12)が知られている(ウィリアムス(Williams)ら、J. Biol. Chem. 278, 18056-18062 (2003))。そして、後記実施例で示すとおり、枯草菌のPrsAと、これらのタンパク質とのアミノ酸配列における同一性は、順に46.2%、38.3%、40.3%であった。これに対し、枯草菌PrsAと配列番号2で示されるアミノ酸配列の同一性は28.4%を示すにすぎなかった。枯草菌PrsAに対して、これよりも高い同一性を示すタンパク質として、ラクトコッカス ラクチスのPrtMタンパク質(Haandikman,A.J.et al, (1989) J.Bacteriol.,171:2789-2794; Vos,P., et al., (1989) J. Bacteriol., 171:2795-2802)が知られている(PrtMはPrsAと約30%の同一性を示す(特表平8−507207))。そして、このPrtMタンパク質の機能は、セリンプロテアーゼの成熟を助けるタンパク質であり、機能はPrsAとは異なることが知られている(特表平8−507207)。このことから、配列番号2で示されるアミノ酸配列も、枯草菌PrsAとは異なる機能を有することが考えられる。
また、後記実施例で示すとおり、当該アミノ酸配列が枯草菌PrsAのアミノ酸配列に対して示す同一性と同程度にオーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)のPrsA(当該微生物において枯草菌PrsAと同様の機能を有すると予測されているタンパク質)への同一性(20.4%)を示すタンパク質(Orf2)を発現するように改変した枯草菌では、配列番号2のアミノ酸配列が示す様な目的タンパク質生産性向上効果は見られなかった。このことから、当該アミノ酸配列により奏されるタンパク質生産性向上効果は、PrsAとしての機能に由来するものではない可能性が疑われる。
かような遺伝子の取得は、例えばバチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16株(FERM BP-3376)の染色体DNAから以下のようにして行うことができる。すなわち、上記の菌体から、例えばマーマーの方法[Marmur, J., J. Mol. Biol., 3, 208(1961)] や斉藤と三浦の方法[Saito, H. and Miura, K., Biochim. Biophys. Acta, 72, 619(1963)]により染色体DNAを得られるが、他の類似の方法を用いることもできる。得られた染色体DNAと適当なプライマーとを用いてPCR法[Mullis, K. B. and Faloona, F. A., Methods Enzymol., 155, 335(1987);Saiki, R. K. et al., Science, 239, 487(1988)]によるDNA増幅法により上記遺伝子を取得できる。斯かるPCR法の採用に際して使用されるプライマーは、本発明によって明らかにされた遺伝子の配列情報に基づいて適宜設定することができ、常法に従って合成することができる。尚、増幅させたDNA断片の単離精製は、例えばゲル電気泳動法等により行うことができる。
なお、増幅されたDNA断片は、例えばDNAリガーゼによってベクターへ結合させる方法等により必要に応じてクローニングすることができ、TOPO PCR Cloning Kit(Invirogen)等の市販のクローニングキットを用いてクローニングしてもよい。クローニングされたDNA断片の塩基配列の確認は、蛍光プライマーを用いるジデオキシ法により行うことができ、簡便には、市販のシークエンスキット等を用いてその塩基配列を決定すればよい。
以上に述べた遺伝子に宿主微生物において機能するプロモーター、及び宿主微生物が有する適切な塩基配列を適切に付加してなるDNA断片を構築し、この断片で微生物を形質転換し、微生物中において相同組換えをおこすことにより、当該遺伝子が染色体上に導入された宿主微生物を製造することができる。ここで、上記DNA断片は、公知のSOE−PCR法などを応用することにより作製することができる。以下、より具体的にSOE(splicing by overlap extension)−PCR法(Gene,77,61,1989)によって調製される導入用DNA断片を用いた二重交差法によって前述の遺伝子の一例であるorf1遺伝子を導入する方法について説明するが、本発明に於ける遺伝子導入方法は下記に限定されるものではない。
本方法で用いる導入用DNA断片は、amyE遺伝子などの宿主微生物が有する遺伝子の上流側約0.5〜3、好ましくは0.5〜1kb断片と、同じく下流側約0.5〜3、好ましくは0.5〜1kb断片の間に、宿主微生物において機能するプロモーター断片、orf1遺伝子断片及び薬剤耐性マーカー遺伝子断片を順に挿入した断片である。まず、1回目のPCRによって、プロモーター断片、orf1遺伝子断片及び薬剤耐性マーカー遺伝子断片の3断片を調製するが、この際、例えば、プロモーター断片の下流末端にorf1遺伝子の上流側10〜30塩基対配列、薬剤耐性マーカー遺伝子断片の上流末端にはorf1遺伝子の下流側10〜30塩基対配列が付加される様にデザインしたプライマーを用いる(図1)。
次いで、1回目に調製した3種類のPCR断片を鋳型とし、プロモーター断片の上流側プライマーと薬剤耐性マーカー遺伝子断片の下流側プライマーを用いて2回目のPCRを行う。これにより、プロモーター断片の下流末端に付加したorf1遺伝子配列に於いて、orf1遺伝子断片とのアニールが生じ、また、薬剤耐性マーカー遺伝子断片の上流末端に付加したorf1遺伝子配列に於いて、orf1遺伝子断片とのアニールが生じ、PCR増幅の結果、プロモーター断片と薬剤耐性マーカー遺伝子断片との間にorf1遺伝子を挿入したDNA断片を得ることができる(図1)。
一方、3回目のPCRによって、宿主微生物遺伝子の上流側断片及び下流側断片の2断片を調製するが、この際、例えば、上流側断片の下流末端にプロモーター断片の上流側10〜30塩基対配列、逆に下流側断片の上流末端には薬剤耐性マーカー遺伝子の下流側10〜30塩基対配列が付加される様にデザインしたプライマーを用いる(図1)。
次いで、2回目によって調製されたPCR断片と、3回目に調製された2種類のPCR断片とを鋳型とし、宿主微生物遺伝子上流側断片の上流側プライマーと下流側断片の下流側プライマーを用いて4回目のPCRを行う。これにより、宿主微生物遺伝子上流側断片の下流末端に付加したプロモーター断片の配列において、プロモーター断片とのアニールが生じ、また下流側断片の上流末端に付加したマーカー遺伝子配列に於いて、マーカー遺伝子断片とのアニールが生じ、PCR増幅の結果、宿主微生物遺伝子の上流側断片と下流側断片との間に、2回目のPCRによって調製したPCR断片を挿入したDNA断片を得ることができる(図1)。
薬剤耐性マーカー遺伝子として、クロラムフェニコール耐性遺伝子を用いる場合、例えば表1に示したプライマーセットを用い、Pyrobest DNAポリメラーゼ(宝酒造)などの一般のPCR用酵素キット等を用いて、成書(PCR Protocols. Current Methods and Applications, Edited by B.A.White, Humana Press pp251 ,1993、Gene,77,61,1989)等に示される通常の条件によりSOE−PCRを行うことによって、上記遺伝子の導入用DNA断片が得られる。
かくして得られた導入用DNA断片を、公知の方法によって細胞内に導入すると、同一性のある宿主微生物遺伝子の相同領域において、細胞内での遺伝子組換えが生じ、orf1遺伝子が宿主微生物遺伝子中に挿入された細胞を薬剤耐性マーカーによる選択によって分離することができる(図1)。即ち、表1に示したプライマーセットを用いて調製したDNA断片を導入した場合、クロラムフェニコールを含む寒天培地上に生育するコロニーを分離し、ゲノムを鋳型としたPCR法などによって前記amyE遺伝子部位等のゲノム上の目的部位に上記導入用DNA断片が導入されていることを確認すれば良い。具体的に導入用DNA断片を細胞内に導入する方法としては、コンピテントセル形質転換方法(J. Bacterial. 93, 1925 (1967))、プロトプラスト形質転換法(Mol. Gen. Genet. 168, 111 (1979))、或いはエレクトロポレーション法(FEMS Microbiol. Lett. 55, 135 (1990))等が挙げられ、特にコンピテントセル形質転換方法が好ましい。
ここで、宿主微生物として利用される微生物としては、特に限定されず、野生型のものでも変異を施したものでものよいが、遺伝子を挿入する為の適当な遺伝子、例えば前述のamyE遺伝子等を有する微生物が好ましい。具体的には、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバチルス(Bacillus)属細菌や、クロストリジウム(Clostridium)属細菌、或いは酵母等が挙げられ、中でもバチルス(Bacillus)属細菌が好ましく、バチルス(Bacillus)属細菌としては、公知の枯草菌(Bacillus subtilis)168株なる株が好ましい。
また、前述の(a)若しくは(b)のDNAからなる遺伝子又はこれらに相当する遺伝子を、pUB110(Plasmid, 15, 93, 1986)やpTP5(Gene, 24, 255, 1983)の様な適当なベクターに導入して発現用の組換えベクターを構築し、このベクターで前述のような微生物を形質転換することにより、プラスミド上に当該遺伝子を含んでなる宿主微生物を作ることができる。ここで用いられる適当なベクターとしては、宿主菌中で複製可能であり、組み込んだ当該遺伝子を安定に保持できるものであれば、いかなるものも使用することができる。また、ベクターに導入する遺伝子としては、宿主微生物において機能するプロモーター遺伝子断片をその上流に結合してなる遺伝子が好ましい。
かようにして作製された宿主微生物に、目的とするタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子をコンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、或いはエレクトロポレーション法等の公知の方法により導入することによって本発明の組換え微生物を得ることができる。
目的タンパク質又は目的ポリペプチド遺伝子は特に限定されず、食品用、医薬品用、化粧品用、洗浄剤用、繊維処理用、医療検査薬用等として有用な酵素や生理活性因子等のタンパク質やポリペプチドが挙げられ、洗剤、食品、繊維、飼料、化学品、医療、診断など各種産業用酵素や、生理活性ペプチドなどが含まれるが、産業用酵素が好ましい。また、産業用酵素の機能別には、酸化還元酵素 (Oxidoreductase) 、転移酵素 (Transferase) 、加水分解酵素 (Hydrolase) 、脱離酵素 (Lyase)、異性化酵素 (Isomerase) 、合成酵素 (Ligase/Synthetase) 等が含まれるが、好適にはセルラーゼ、α-アミラーゼ、プロテアーゼ等の加水分解酵素の遺伝子が挙げられる。具体的には、α-アミラーゼが挙げられ、中でも微生物由来、好ましくはバチルス(Bacillus)属細菌由来、より好ましくはバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-K38株(FERM BP-6946)由来のα-アミラーゼが挙げられる。バチルス エスピー(Bacillus sp.) KSM-K38株(FERM BP-6946)由来のα-アミラーゼのより具体的な例としては、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるバチルス(Bacillus)属細菌由来のアルカリアミラーゼや、当該アミノ酸配列と70%、好ましくは80%、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなるアミラーゼが挙げられる。尚、アミノ酸配列の同一性はLipman-Pearson法 (Science,227,1435,1985)によって計算される。また、セルラーゼの具体例としては、多糖加水分解酵素の分類(Biochem. J., 280, 309 (1991))中でファミリー5に属するセルラーゼが挙げられ、中でも微生物由来、特にバチルス(Bacillus)属細菌由来のセルラーゼが挙げられる。プロテアーゼの具体例としては、微生物由来、特にバチルス(Bacillus)属細菌由来のセリンプロテアーゼや金属プロテアーゼ等が挙げられる。
また、目的タンパク質又は目的ポリペプチド遺伝子は、その上流に当該遺伝子の転写、翻訳、分泌に関わる制御領域、即ち、プロモーター及び転写開始点を含む転写開始制御領域、リボソーム結合部位及び開始コドンを含む翻訳開始領域及び分泌シグナルペプチド領域から選ばれる1以上の領域が適正な形で結合されていることが望ましい。特に、転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が結合されていることが好ましく、更に分泌シグナルペプチド領域がバチルス(Bacillus)属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始領域及び翻訳開始領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1 kb領域であるものが、目的タンパク質又は目的ポリペプチド遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。例えば、特開2000-210081号公報や特開平4-190793号公報等に記載されているバチルス(Bacillus)属細菌、すなわちKSM-S237株(FERM BP-7875)、KSM-64株(FERM BP-2886)由来のセルラーゼ遺伝子と当該セルラーゼ遺伝子の転写開始制御領域、翻訳開始領域及び分泌用シグナルペプチド領域が目的タンパク質又は目的ポリペプチドの構造遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。より具体的には配列番号5で示される塩基配列の塩基番号1〜659の塩基配列、または、配列番号7で示される塩基配列の塩基番号1〜696の塩基配列、或いは当該塩基配列に対して70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、特に好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、あるいは上記いずれかの塩基配列の一部が欠失、置換、もしくは付加した塩基配列からなるDNA断片が、目的タンパク質又は目的ポリペプチドの構造遺伝子と適正に結合されていることが望ましい。尚、ここで、上記塩基配列の一部が欠失、置換、若しくは付加した塩基配列からなるDNA断片とは、上記塩基配列の一部が欠失、置換、若しくは複数個の塩基配列が付加されているが、遺伝子の転写、翻訳、分泌に関わる機能を保持しているDNA断片を意味する。
上記の目的タンパク質又はポリペプチド遺伝子を含むDNA断片と適当なプラスミドベクターを結合させた組換えプラスミドを、コンピテントセル形質転換方法、プロトプラスト形質転換法、或いはエレクトロポレーション法等の一般的な形質転換法によって宿主微生物細胞に取り込ませることによって、導入することができる。また、当該DNA断片に宿主微生物ゲノムとの適当な相同領域を結合したDNA断片を用い、宿主微生物ゲノムに直接組み込むことによっても導入することができる。
本発明の組換え微生物を用いれば有用なタンパク質又はポリペプチドを効率的に生産することができる。本発明の組換え微生物を用いた目的タンパク質又はポリペプチドの生産は、当該菌株を同化性の炭素源、窒素源、その他の必須成分を含む培地に接種し、通常の微生物培養法にて培養し、培養終了後、タンパク質又はポリペプチドを採取・精製することにより行えばよい。
実施例1 バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)のゲノムの塩基配列決定
好アルカリ性バチルス属細菌バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16(FERM BP-3376)株を染色体DNA調製に使用した。染色体DNAのライブラリー構築に使用する宿主菌には、大腸菌(Escherichia coli)DH5α(タカラバイオ)を使用した。
(ホールゲノムショットガンライブラリーの作製)
バチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16株(FERM BP-3376)を、10%炭酸ナトリウムでpH8.5に調整したTSB培地(BD BBL Trypticase Soy BrothTM ;BD Diagnostic Systems)100mL中で30℃において培養した。対数増殖期の菌体から、斉藤と三浦(Saito & Miura)の方法(フェノール法;サイトウ(Saito)ら、 Biochem. Biophys. Acta. 72, 619-629 (1963))により染色体DNAを得た。
20μgの染色体DNA(100ng/μL)を超音波破砕により断片化した。断片化DNAは、30℃、5分間のBAL31ヌクレアーゼ(タカラバイオ)処理により、突出末端を平滑化した後、フェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿により精製した。次にDNA Blunting Kit(タカラバイオ)でT4 DNAポリメラーゼ処理後、フェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿により精製した。続いて、精製DNA断片のアガロース電気泳動を行い、1-2kbの画分をQiaquick Gel Extraction Kit(QIAGEN)を用いて回収した。
このDNA画分と等量のベクターpUC18/SmaI/BAP(Amersham Pharmacia Biotech)を1:1の比率で混合し、DNA Ligation Kit Ver.1(タカラバイオ)を用いて、16℃で一晩、ライゲーションを行った。その後、このDNAにてコンピテントセル大腸菌E.coli DH5αを形質転換した。形質転換体は、100μg/mLのアンピシリン含むLB寒天培地に塗布し、30℃で一晩培養した。この方法により、約1x106クローン/μgベクターの形質転換効率のホールゲノムショットガンライブラリーを作製した。
(ショットガンシーケンシング用鋳型DNAの増幅)
ショットガンクローンは、100μg/mLのアンピシリン含むLB液体培地を用いて、37℃で18時間培養した。この培養液を鋳型として、インサートDNAをTaKaRa Ex TaqTM(タカラバイオ)を用いたPCRにより増幅した。このPCRには、ベクターの塩基配列より設計したプライマーLF(5'-CAAGGCGATTAAGTTGGGTAACG-3')(配列番号37)とLR(5'-CTTCCGGCTCGTATGTTGTGTG-3')(配列番号38)を使用した。
(鋳型DNAの精製)
PCR産物に残存する未反応のプライマーを、exonuclease I(Amersham Pharmacia Biotech)により分解し、その分解物をshrimp alkaline phosphatase(Amersham Pharmacia Biotech)により脱リン酸化することでPCR産物の精製を行った。
(ショットガンクローンのシーケンシング)
ショットガンクローンのシーケンシングは、インサートDNAの精製PCR産物を鋳型とし、LFまたはLRをプライマーとして、DYEnamic ET terminator(Amersham Pharmacia Biotech)を使用して行った。反応産物は、エタノール沈殿により精製後、キャピラリー型DNAシーケンサーを用いてシーケンシングを行った。
(アセンブル(配列結合編集))
32,214個のショットガンクローンより得た配列データは、大型アセンブルソフトPhred/Phrap(エウィング(Ewing)ら、Genome Res. 8, 186-194 (1998))を使用してアセンブルした。その結果、コンティグの総塩基長は約4.19Mbpとなり、コンティグ数は472個であった。これら塩基長の総和は推定されるゲノムサイズの99%に達した。
実施例2 orf1遺伝子発現枯草菌の構築
実施例1にて得られたバチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16株(FERM BP-3376)のゲノム塩基配列情報より、配列番号1に示す塩基配列はタンパク質をコードする遺伝子領域であると考えられた。該遺伝子領域orf1について、以下の様にorf1にコードされるタンパク質を発現する様に改変した枯草菌(Bacillus subtilis)の構築を行った(図1参照)。枯草菌(Bacillus subtilis)168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したPVG-FWとPVG-Rのプライマーセットを用いてspoVG遺伝子のプロモーター領域とShine-Dalgarno(SD)配列(Proc. Natl. Acad. Sci. USA 74, 5463 (1974))を含む0.2kb断片(A)をPCRにより増幅した。またバチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16株(FERM BP-3376)から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したorf1/PVG-Fとorf1/Cm-Rのプライマーセットを用いてorf1を含む1.0kb断片(B)をPCRにより増幅した。更にプラスミドpC194(J. Bacteriol. 150 (2), 815 (1982))を鋳型として、表1に示したcatfとcatrのプライマーセットを用いてクロラムフェニコール耐性遺伝子を含む0.85kb断片(C)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(A)(B)(C)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したPVG-FW2とcatr2のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(A)(B)(C)の順になる様に結合させ、spoVGプロモーター及びSD配列がorf1の上流に連結し(spoVG遺伝子の開始コドンの位置にorf1の開始コドンが位置する様に連結)、更にその下流にクロラムフェニコール耐性遺伝子が結合した2.1kbのDNA断片(D)を得た。続いて枯草菌(Bacillus subtilis)168株から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示したamyEfw2とamyE/PVG2-R、及びamyE/Cm2-FとamyErv2のプライマーセットを用いてamyE遺伝子の5’側領域を含む1.0kb断片(E)、及びamyE遺伝子の3’側領域を含む1.0kb断片(F)をPCRにより増幅した。次いで、得られた(E)(F)(D)3断片を混合して鋳型とし、表1に示したamyEfw1とamyErv1のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、3断片を(E)(D)(F)の順になる様に結合させ、spoVGプロモーター及びSD配列の下流にorf1遺伝子が連結し、更にその下流にクロラムフェニコール耐性遺伝子が結合した2.1kbのDNA断片がamyE遺伝子の中央に挿入された総塩基長4.0kbのDNA断片(G)を得た。得られた4.0kbのDNA断片(G)を用いてコンピテントセル法により枯草菌(Bacillus subtilis)168株を形質転換し、クロラムフェニコール(10μg/mL)を含むLB寒天培地上に生育したコロニーを形質転換体として分離した。得られた形質転換体から抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示すamyEfw2とorf1/Cm-R、及びorf1/PVG-FとamyErv2のプライマーセットを用いたPCRを行うことによって2.2kb及び2.9kbのDNA断片の増幅を確認し、枯草菌(Bacillus subtilis)168株ゲノム上のamyE遺伝子部位にspoVGプロモーター及びSD配列の下流にorf1が連結したDNA断片が挿入されたことを確認した。この様にして得られた菌株を168PVGorf1株と命名した。
実施例3 orf1遺伝子発現枯草菌(Bacillus subtilis)のアルカリアミラーゼ分泌生産評価
実施例2にて得られた168PVGorf1株の異種タンパク質生産性評価は配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるバチルス(Bacillus)属細菌由来のアルカリアミラーゼの生産性を指標として以下の様に行った。
バチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-K38株(FERM BP-6946)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示されるK38matu-F2(ALAA)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリアミラーゼ(特開2000-184882号公報、Eur.J.Biochem.,268,2974,2001)をコードする配列番号3で示される塩基配列の1.5kbのDNA断片(H)を増幅した。またバチルス エスピー(Bacillus sp.)KSM-S237株(FERM BP-7875)より抽出したゲノムDNAを鋳型として、表1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とS237ppp-R2(ALAA)のプライマーセットを用いてPCRを行い、アルカリセルラーゼ遺伝子(特開2000-210081号公報)のプロモーター領域と分泌シグナル配列をコードする領域を含む0.6kbのDNA断片(I)を増幅した。次いで、得られた(H)(I)の2断片を混合して鋳型とし、表1に示されるS237ppp-F2(BamHI)とSP64K38-R(XbaI)のプライマーセットを用いたSOE-PCRを行うことによって、アルカリセルラーゼ遺伝子のプロモーター領域と分泌シグナル配列をコードする領域の下流にアルカリアミラーゼ遺伝子が連結した2.1kbのDNA断片(J)を得た。得られた2.2kbのDNA断片(J)をシャトルベクターpHY300PLK(ヤクルト)のBamHI-XbaI制限酵素切断点に挿入し、アルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を構築した。
実施例2にて得られた168PVGorf1株及び対照として枯草菌168株にアルカリアミラーゼ生産性評価用プラスミドpHYK38(S237ps)を、プロトプラスト形質転換法によって導入した。これによって得られた菌株を10mLのLB培地で一夜37℃で振盪培養を行い、更にこの培養液0.05mLを50mLの2xL−マルトース培地(2%トリプトン、1%酵母エキス、1%NaCl、7.5%マルトース、7.5ppm硫酸マンガン4-5水和物、15ppmテトラサイクリン)に接種し、30℃で5日間、振盪培養を行った。培養後、遠心分離によって菌体を除いた培養液上清のアルカリアミラーゼ活性を測定し、培養によって菌体外に分泌生産されたアルカリアミラーゼの量を求めた。この結果、表2に示した様に、宿主として168PVGorf1株を用いた場合、対照の168株(野生型)の場合と比較して高いアルカリアミラーゼの分泌生産が認められた。これはorf1によりコードされるタンパク質が枯草菌内にて発現し、該タンパク質の機能がアルカリアミラーゼの生産に好ましい影響を与えた為であると推測された。
実施例4 orf1がコードするタンパク質の機能予測
orf1がコードするタンパク質の機能を予測するため、配列番号1に示す塩基配列から推定されるアミノ酸配列(配列番号2)について、タンパク質データベース(nr(http://www.ncbi.nih.gov/))に対してホモロジー検索プログラムBLAST(アルチュール(Altschul)ら、J. Mol. Biol. 215, 403-410 (1990)参照)を用いて、ホモロジー検索を行った。その結果orf1がコードすると推定されるアミノ酸配列は、バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)のprsA遺伝子がコードすると推定される配列番号9で示されるアミノ酸配列と最も高い配列同一性を示した。この配列は、アミノ酸配列の同一性から、枯草菌(Bacillus subtilis)のPrsAと同様の機能を有することが予測されてはいるものの、機能解析はなされておらず、その機能は不明である。遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて上記2つのアミノ酸配列の同一性を解析したところ、同一性は36.2%と計算された。尚、PrsAは元来、枯草菌(Bacillus subtilis)においてタンパク質の分泌過程に関与するタンパク質として発見されたものである。これまでに枯草菌(Bacillus subtilis)のPrsAと類似の機能を有することが実験により確認された枯草菌(Bacillus subtilis)以外の微生物由来のタンパク質としては、バチルス アントラシス(Bacillus anthracis)由来のPrsAA(配列番号10)、PrsAB(配列番号11)、及びPrsAC(配列番号12)が報告されている(ウィリアムス(Williams)ら、 J. Biol. Chem. 278, 18056-18062 (2003))。しかしながら、上記バチルス ハロデュランス(Bacillus halodurans)を含め、他の微生物にてPrsAをコードするとされている遺伝子は、いずれも塩基配列より推定されるアミノ酸配列から機能予測されたものである。配列番号13で示される枯草菌のPrsAに対するバチルス アントラシス(Bacillus anthracis)のPrsAA、PrsAB、及びPrsACのアミノ酸配列同一性はそれぞれ46.2%、38.3%、及び40.3%であった。一方、枯草菌(Bacillus subtilis)のPrsAに対するorf1がコードすると考えられるアミノ酸配列の同一性は28.4%と低く、また推定されるアミノ酸配列の等電点において、枯草菌のPrsAは9.18、orf1遺伝子がコードすると推定されるアミノ酸配列は3.48と大きく異なることから、当該アミノ酸配列を有するタンパク質の機能が枯草菌のPrsAと類似であるとは断定できず、orf1遺伝子は新規の遺伝子であると考えられた。尚、上記等電点は、文献(Trends in analytical chemistry, vol.5, No.4, 1986)記載の方法によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx-Win(ソフトウェア開発)の等電点解析(Isoelectric Point)プログラムを用いて、pKa valueをpKaとして解析を行うことにより算出される。
参考例 orf2遺伝子発現枯草菌のアルカリアミラーゼ分泌生産評価
実施例1にて得られたバチルス クラウジイ(Bacillus clausii)KSM-K16株(FERM BP-3376)のゲノム塩基配列情報より、配列番号16で示されるアミノ酸配列をコードすると推定される遺伝子orf2を見出した。遺伝子orf2がコードすると推定されるアミノ酸配列は、オーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)にてPrsAをコードするとされている遺伝子より推定されるアミノ酸配列(配列番号14)と20.4%の配列同一性を示した。orf2の塩基配列は配列番号15で示される。該orf2について、実施例2に示したorf1と同様に、orf2にコードされるタンパク質を発現するように改変した枯草菌168VGorf2株の構築を行った。該菌株の構築には表1に示すプライマーを使用し、orf1にコードされるタンパク質を発現するように改変した枯草菌(Bacillus subtilis)の構築に用いたプライマーとの対応を表3に示した。また菌株の構築を確認する為に行ったPCRに用いたプライマーと増幅DNA断片長を表4に示した。実施例3と同様に構築した菌株のアルカリアミラーゼ生産性評価を行ったところ、表5に示した様に168VGorf2株の生産性は対照として用いた168株(野生株)と同等であった。即ち、オーシャノバチルス イヘエンシス(Oceanobacillus iheyensis)のPrsAと推定されるアミノ酸配列と若干の同一性を示しながらも、orf2がコードすると推定されるタンパク質はアルカリアミラーゼの生産には寄与しないことが示された。
SOE−PCRによる遺伝子導入用DNA断片の調製、及び当該DNA断片を用いてorf1遺伝子を染色体中に導入する方法の一例を模式的に示したものである。

Claims (9)

  1. 以下の(a)若しくは(b)のDNAからなる遺伝子又はこれらに相当する遺伝子が染色体中に導入されてなるか、又はプラスミド上に含んでなることを特徴とする宿主微生物。
    (a)配列番号1で示される塩基配列からなるDNA、
    (b)配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするDNA。
  2. (a)若しくは(b)のDNAからなる遺伝子又はこれらに相当する遺伝子が、その上流に宿主微生物において機能するプロモーター遺伝子断片を結合してなるものである請求項1記載の宿主微生物。
  3. 請求項1又は2記載の宿主微生物に、異種のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子を導入した組換え微生物。
  4. 異種のタンパク質又はポリペプチドをコードする遺伝子の上流に転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域から選ばれる1以上の領域を結合した請求項3記載の組換え微生物。
  5. 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域を結合したものである請求項3記載の組換え微生物。
  6. 分泌シグナル領域がバチルス属細菌のセルラーゼ遺伝子由来のものであり、転写開始制御領域及び翻訳開始制御領域が当該セルラーゼ遺伝子の上流0.6〜1kb領域由来のものである請求項4又は5記載の組換え微生物。
  7. 転写開始制御領域、翻訳開始制御領域及び分泌シグナル領域からなる3領域が、配列番号5で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜659の塩基配列、配列番号7で示される塩基配列からなるセルラーゼ遺伝子の塩基番号1〜696の塩基配列又は当該塩基配列のいずれかと70%以上の同一性を有する塩基配列からなるDNA断片、又は当該塩基配列の一部を欠失、置換、若しくは付加した塩基配列からなるDNA断片である請求項5記載の組換え微生物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項記載の微生物を用いるタンパク質又はポリペプチドの製造方法。
  9. タンパク質が、配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるアルカリアミラーゼ、又は当該アミノ酸配列に対して70%以上の同一性を有し、かつアルカリアミラーゼ活性を有するタンパク質である請求項8記載の製造方法。
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