JP2006292420A - 標本試料の自動追尾機能を備えた顕微鏡観察装置 - Google Patents

標本試料の自動追尾機能を備えた顕微鏡観察装置 Download PDF

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Abstract

【課題】試料追尾のためのビデオカメラやメモリーを必要とすることなく、標本試料の自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置を提供する。
【解決手段】顕微鏡観察装置100は、レーザー走査型共焦点顕微鏡110と、これに励起光のビームを供給する四系統の光走査系130を有している。光走査系130は、XY走査機構135を駆動する駆動装置141と、励起光ビームの収束点の位置を求める位置算出装置142とを有している。顕微鏡観察装置100は、光走査系130の光検出器138から出力される電気信号を二値化パルスに変換する信号処理装置151と、信号処理装置151から出力される二値化パルスから自己相関関数を求める相関解析装置152と、求められた自己相関関数に基づいて、試料ステージ122を移動させる試料ステージコントローラー125を制御するコンピューター126とを有している。
【選択図】 図3

Description

本発明は、共焦点光学顕微鏡をベースとして蛍光の強度ゆらぎの相関分光解析(FCS)を行なう顕微鏡観察装置に関する。
試料中の特定部位から統計的な性質や分子レベルの機能を解析する測定装置として、例えば特表11−502608号公報では、共焦点光学顕微鏡をベースとし、レーザー光を顕微鏡対物レンズを通して蛍光標識された試料に照射し、試料内の蛍光分子による蛍光強度ゆらぎを解析し(蛍光相関分光を行ない)、蛍光分子の並進拡散係数などの統計的な性質や分子間の相互作用などを求める方法と装置を開示している。
共焦点光学顕微鏡に関しては、例えば、”Confocal Microscopy” T. Wilson(ed.) Academic press (London)、主に生物試料を対象とした解説として、”Handbook of Biological confocal Microscopy” J. B. Pawley(ed.) Plenum Press (New York)、大出孝博らによる解説(「光学」Vol.18, Vol.8, p.p.392〜398)や、河田聡による解説(「光学」Vol.18, Vol.8, p.p.380〜391)などがある。蛍光相関分光法に関しては、例えば、”Fluorescence correlation spectroscopy” R. Rigler, E. S. Elson (eds.) Springer (Berlin)などの解説がある。
蛍光相関分光法ではレーザー走査型共焦点顕微鏡の視野の中で蛍光物質で標識されたタンパク質や担体粒子を溶液中に浮遊させ、これらの微粒子のブラウン運動に基づく蛍光強度のゆらぎを解析して自己相関関数を求め、対象とする微粒子の数や並進拡散速度などを推測する。この技術については、金城政孝「蛋白質 核酸 酵素」(1999) Vol.44, No.9, p1431-1437に論じられている。
さらにこの技術に関して、いくつか特許も出願されている。レーザー走査型共焦点顕微鏡については、例えば特開平10−206742号公報に記述されている。また特開平10−206742号公報ではレーザー走査型共焦点顕微鏡において、標本画像を観察しながら、標本の所望の位置にレーザー光を照射し、標本の動的特性を求める方法について記述している。
特表11−502608号公報 特開平10−206742号公報 特開平7−253548号公報 特開平5−80255号公報 特開平7−261097号公報 "Confocal Microscopy" T. Wilson(ed.) Academic press (London) "Handbook of Biological confocal Microscopy" J. B. Pawley(ed.) Plenum Press (New York) 大出孝博ら「光学」Vol.18, Vol.8, p.p.392〜398 河田聡「光学」Vol.18, Vol.8, p.p.380〜391 "Fluorescence correlation spectroscopy" R. Rigler, E. S. Elson (eds.) Springer (Berlin) 金城政孝「蛋白質 核酸 酵素」(1999) Vol.44, No.9, p1431-1437
従来行なわれている光学顕微鏡における試料の追尾方法では、試料画像を観察しながら、観察者自ら、電動ステージをジョイスティックなどで操作し、試料画像がモニター画面のほぼ中央に来るようにしている。
あるいは特開平7−253548号公報では、試料画像をビデオカメラなどで撮影し、この画像データをフレームメモリーに記憶し、基準画像データとフレームメモリーに記憶した画像データを比較して標本の移動を検出して、電動ステージの位置を制御して標本の追尾を行なっている。この方法によると顕微鏡観察装置のほかに、試料追尾のためのビデオカメラやメモリーを必要とする。また、この方法では標本試料の移動に対して追尾を行なってから、標本試料の観察を行なう。従って標本試料の観察の前に標本試料の移動を測定しなければならない。
また特開平5−80255号公報では移動する試料に対して一定時間毎に連続的に試料画像を得て、これを二値化して二値化画像とした後、隣接する二枚の二値化画像を一枚ずつ時間軸に沿ってずらしていきながら、論理積画像を作成し、この論理積画像に基づいて、試料の移動を測定し、自動追跡を行なう。この方法では、試料の二値化画像を作成すると共に論理積画像も作成し、論理積による判断も必要とする。このため、計算量が多く、手間を要すると共に、多くのメモリーを必要とする。
また、特開平7−261097号公報では、移動前後の画像データを取得し、また試料内の複数の測定点(例えば三点)を予め指定し、ここで入力した値を補助画像データとし、移動後に入力した値(補助画像データ)との差分をとるなどして比較して試料の移動量を求める。この移動量データに基づいてステッピングモーターの駆動制御を行ない、可動ステージ観察視野の中心に移動する。この方法では画像データを用いて試料の移動の判断を行なっており、試料の移動の判断のために多くのメモリーを必要とする。
本発明は、この様な実状を考慮して成されたものであり、その主な目的は、試料追尾のためのビデオカメラやメモリーを必要とすることなく、標本試料の自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置を提供することである。
本発明は、標本試料(例えば細胞)内部の被検物質の動態を測定する、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡装置に向けられている。本発明の顕微鏡装置は、標本試料を保持する試料保持手段と、標本試料の測定可能領域(例えば細胞核)を含む顕微画像を取得する画像取得手段と、取得した顕微画像の測定可能領域内に少なくとも一つの被検物質に対して限定的に照準するように測定点を設定する測定点設定手段と、設定された測定点を更新する測定点更新手段と、更新された測定点から得られる複数時点の測定データに基づいて被検試料の動的特性を出力する動的特性出力手段を備えていることを特徴とする。
本発明によれば、試料追尾のためのビデオカメラやメモリーを必要とすることなく、標本試料の自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置が提供される。
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
第一実施形態
本実施形態は、共焦点光学顕微鏡を利用して蛍光の強度ゆらぎの相関分光解析(FCS)を行なう顕微鏡観察装置に向けられている。より詳しくは、四つの測定点における蛍光強度ゆらぎの自己相関関数を利用する試料自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置に向けられている。図1は、本発明の第一実施形態における試料自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置の基本構成を概略的に示している。
図1に示されるように、本実施形態の顕微鏡観察装置100は、レーザー走査型共焦点顕微鏡110を含んでいる。レーザー走査型共焦点顕微鏡110は、顕微鏡本体111と、試料121が載せられる試料ステージ122と、試料ステージ122の下方に配置された対物レンズ112と、観察者による試料121の目視観察を可能にする接眼レンズ118と、試料121の光学像を取得するためのCCDカメラ128とを有している。対物レンズ112と接眼レンズ118と試料ステージ122とCCDカメラ128は共に顕微鏡本体111に取り付けられている。
レーザー走査型共焦点顕微鏡110はさらに試料ステージ122を移動させるための二つのステッピングモーター123と124を有しており、顕微鏡観察装置100はさらに、ステッピングモーター123と124を制御する試料ステージコントローラー125と、試料ステージコントローラー125を制御するコンピューター126とを有している。
ステッピングモーター123と124は、駆動軸が互いに直交するように配置されており、試料ステージ122を互いに直交する二方向、いわゆるX方向とY方向に移動させ得る。試料ステージコントローラー125は、コンピューター126に接続されており、コンピューター126からの指令により、ステッピングモーター123と124を駆動して、試料ステージ122をX方向とY方向に移動させる。
顕微鏡観察装置100はさらに、蛍光を発生させるための励起光のビームをレーザー走査型共焦点顕微鏡110に供給する光走査系130を有している。図2は、図1に示される顕微鏡観察装置の光走査系の全体構成を示している。
図2に示されるように、顕微鏡観察装置100は、励起光のビームを射出すると共にそれを走査する四系統の光走査系130Aと130Bと130Cと130Dを有している。四系統の光走査系130A〜130Dは共に同様の構成を有している。以下の説明において、それらを区別する必要がない場合には、参照符号の末尾の英字を省略して単に光走査系130と記す。これに伴い、光走査系を構成している部材についても参照符号の末尾の英字を省略して記す。
光走査系130は、励起光ビームを射出するレーザー光源131と、レーザー光源131から励起光ビームを平行化するレンズ132と、レンズ132からの励起光ビームを偏向するミラー133と、ミラー133からの励起光ビームを反射して偏向するダイクロイックミラー134と、ダイクロイックミラー134からの励起光ビームをXY走査するXY走査機構135とを有している。ダイクロイックミラー134は、励起光を反射する一方、その励起光によって発生された蛍光を選択的に透過する特性を有している。
XY走査機構135は、これに限定されないが、例えば、光ビームを一本の軸に沿って走査し得る二つのガルバノスキャナーを組み合わせて構成されてよい。二つのガルバノミラーは好ましくはそれぞれの走査軸が互いに直交するように配置される。あるいは、音響光学変調素子(AOM)やポリゴンミラーやホログラムスキャナーなど利用して構成されてもよい。
光走査系130はさらに、光走査系130から射出された励起光のビームによって発生された蛍光を収束させるレンズ136と、光走査系130から射出された励起光のビームの収束点に対して共焦点の位置関係にあるピンホール137と、ピンホール137を通過した蛍光を検出するための光検出器138とを有している。光検出器138は、これに限定されないが、例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)(Avalanche Photo Diode)で構成されてよい。あるいは、光電子増倍管で構成されてもよい。
顕微鏡本体111の内部には、それぞれの光走査系130に対して、光走査系130からの励起光ビームを対物レンズ112に方向付けると共に、その励起光ビームによって発生された蛍光のビームをその光走査系130に方向付ける偏向素子116が設けられている。偏向素子116は、例えばダイクロイックミラーで構成されてよい。一番下に配置される偏向素子116Dは、選択機能が不要なため、通常のミラーで構成されてもよい。
試料121は、予め四種類の蛍光物質で標識されている。四系統の光走査系130は、それぞれ、それらの蛍光物質の種類に適した波長の励起光のビームを射出する。
蛍光物質は、これに限定されないが、例えば、ローダミン・グリーン(RhG)(Rhodamine Green)とTMR(Tetramethylrhodamine)と5−Tamra(5-carboxytetramethylrhodamine)とサイファイヴ(Cy5)である。蛍光物質は、これらの他に、FITC(Fluorescein-isothiocyanate)やTOTO1、Acridine-Orange、Texas-Redなどが適用されてもよい。
先に述べた蛍光物質に対応して、例えば、レーザー光源131Aは、ローダミン・グリーン(RhG)を励起するために、波長488nmの光を発するアルゴンレーザーであり、レーザー光源131Bは、TMRを励起するために、波長514.5nmの光を発するアルゴンレーザーであり、レーザー光源131Cは、5−Tamraを励起するために波長543.5nmの光を発するHe・Neレーザーであり、レーザー光源131Dは、サイファイヴ(Cy5)を励起するために、波長632.8nmの光を発するHe・Neレーザーである。
レーザー光源131から射出された励起光ビームは、ミラー133とダイクロイックミラー134で反射され、XY走査機構135を経て顕微鏡本体111の中に入り、偏向素子116によって対物レンズ112に方向付けられる。対物レンズ112に入射した励起光ビームは、対物レンズ112により、試料121の内部に収束される。
励起光ビームの収束点は、XY走査機構135によって、二次元的に移動され得る。また、対物レンズ112はNA1.0程度の大きい開口数を有しており、励起光ビームの収束点の近傍に、直径0.6μm程度、長さ2μm程度の略円柱状の共焦点領域が形成される。
この領域内に存在する蛍光物質は、励起光により励起され、蛍光信号(フォトンパルス)を発生させる。蛍光物質から発生された蛍光の一部(信号光)は、対物レンズ112に入射し、偏向素子116に方向付けられた蛍光ビーム(蛍光信号)となる。偏向素子116に入射した蛍光ビームは、光走査系130に方向付けられる。
光走査系130に戻った蛍光ビームは、XY走査機構135を経て、ダイクロイックミラー134に入射する。前述したように、ダイクロイックミラー134はそれが反射した励起光によって発生された蛍光を選択的に透過する特性を有しているため、ダイクロイックミラー134に入射した蛍光ビームはこれを透過する。ダイクロイックミラー134を透過した蛍光ビームは、レンズ136により収束され、ピンホール137を通過した成分のみが光検出器138に入射する。光検出器138は、入射した光の強度を反映した電気信号を出力する。
図3は、図1に示される蛍光観察装置の全体構成を示している。図3に示されるように、光走査系130は、前述の構成に加えて、XY走査機構135を駆動する駆動装置141と、XY走査機構135の駆動信号に基づいて励起光ビームの収束点の位置を求める位置算出装置142とを有している。
顕微鏡観察装置100は、レーザー走査型共焦点顕微鏡110と四系統の光走査系130に加えて、光走査系130の光検出器138から出力される電気信号を波形整形してオン・オフの二値化パルスに変換する信号処理装置151と、信号処理装置151から出力される二値化パルスに対して相関演算を行なって自己相関関数を求める相関解析装置152と、相関解析装置152で得られた自己相関関数から蛍光物質の並進拡散速度や測定領域中の蛍光分子の数の変化などを求めるためのコンピューター126とを有している。あるいは相関解析装置152を用いず、コンピューター126で相関演算を実施してもよい。
顕微鏡観察装置100はさらに、信号処理装置151で得られた結果に、位置算出装置142からの信号をあわせて処理して、試料の二次元蛍光画像を形成すると共に、コントラスト向上や輪郭強調などの画像処理を行なう画像処理装置155と、画像処理装置155で得られた画像を表示するTVモニター156とを有している。
図3において、光検出器138で光電変換された電気信号は、信号処理装置151で波形整形され二値化パルス信号に変換される。二値化パルス信号は相関解析装置152に送られ、相関解析装置152において例えば自己相関関数が求められる。自己相関関数はコンピューター126に送られ、蛍光物質の並進拡散速度や測定領域中の蛍光分子の数の変化などの算出に利用される。
光検出器138から出力される電気信号は時系列信号となる。この場合、信号処理装置151でAD変換し、波形整形を行ない、先と同様に二値化パルス信号に変換する。この二値化パルス信号をコンピューター126に導くことによって相関演算が行なわれ、自己相関関数が求められる。
また、対物レンズ112を光軸に沿って移動させることにより、励起光の収束点の位置を光軸に沿って移動させることができる。励起光の各収束位置で二次元光走査を行ない、蛍光信号を捉えることにより、三次元蛍光画像を得ることができる。
次に、このようにして求められる蛍光強度ゆらぎの自己相関関数に基づいて、試料の移動をリアルタイムに測定する方法について述べる。
1.試料121内に複数の測定点を定め、XY走査機構により励起光のビームの光スポットを移動させて、それらの測定点に励起光のビームの光スポットが当たるようにする。
2.この光スポット位置で固定し、蛍光の強度ゆらぎを測定し、自己相関関数を求める。
3.蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数を記憶する。
4.測定点を4ヶ所固定し、それぞれの測定点について、蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数を一定時間間隔を置いて繰り返し求める。
5.4の測定において、時間経過によって蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数に変化が生じた場合は、試料内の分子の反応や結合などによる蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数の変化なのか、試料の移動による蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数の変化なのかを見極める。
6.5で得られた蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数を解析することにより、試料121内の測定対象物の移動が確認された場合には、試料ステージ122と対物レンズ112とを相対的に移動させて、最初に定めた測定点に励起光のビームの光スポットが当たるように、試料121内の測定対象物の位置を調整する。
7.試料121内の測定対象物の移動と共に試料内の分子の反応や結合などが確認された場合は、測定結果をコンピューター126内のメモリーに記憶し、TVモニターに表示する。
図4は、四つの光スポットaとbとcとdと試料121内の測定対象物の位置関係の一例を示し、左側が試料の移動前を、右側が試料の移動後を示している。図4に示される例では、試料の移動前では、四つの光スポットaとbとcとdは共に試料内に位置しているが、試料の移動後では、三つの光スポットaとbとdは試料内に位置しているが、光スポットcは試料から外れている。
光スポットaはローダミン・グリーン(RhG)を励起するためのものであり、光スポットbはTMRを励起するためのものであり、光スポットcはタムラ(Tamra)を励起するためのものであり、光スポットdはサイファイヴ(Cy5)を励起するためのものである。
図5(a)と図5(b)と図5(c)と図5(d)はそれぞれ、図4の左側に示される試料の移動前の四つの光スポットaとbとcとdにおける蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数を示している。図6(a)と図6(b)と図6(c)と図6(d)はそれぞれ、図4の右側に示される試料の移動後の四つの光スポットaとbとcとdにおける蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数を示している。
図7(a)と図7(b)と図7(c)と図7(d)はそれぞれ、図4の左側に示される試料の移動前の四つの光スポットaとbとcとdにおける蛍光の強度ゆらぎの変化を示している。図8(a)と図8(b)と図8(c)と図8(d)はそれぞれ、図4の右側に示される試料の移動後の四つの光スポットaとbとcとdにおける蛍光の強度ゆらぎの変化を示している。
図4に示されるように、光スポットcは試料の移動後に試料から外れている。このため、試料の移動後は、蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数が測定不能になり、図6(c)に示されるように、蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数が得られなくなる。また、試料の移動後は、蛍光の強度ゆらぎも測定不能になり、図8(c)に示されるように蛍光の強度ゆらぎはノイズ信号となっている。
このように、光スポットが試料から外れると、その光スポットに対応する蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数が得られなくなる。従って、それぞれの光スポットに対応する蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数に基づいて、試料が光スポットを外れたこと、すなわち、試料が移動したことが分かる。例えば、特定の光スポットに対応する蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数が得られなくなった場合には、その光スポットから試料が外れたことが分かる。
蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数は、試料内の分子の反応や結合などによっても変化するが、その変化は、蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数が得られなくなる程ではなく、プロファイルが変わる程度であるため、試料内の分子の反応や結合などによる変化か試料の移動による変化かは容易に判別可能である。
図9は、四つの光スポットaとbとcとdの配置例を示している。図9に示される例では、四つの光スポットaとbとcとdが共に同心円上に位置し、そのうちの二つの光スポットaとbはX軸上に位置し、残りの二つの光スポットcとdはY軸上に位置している。このような、光スポットaとbとcとdの配置は、試料の移動方向の判断を容易にするという利点を有する。例えば、試料が光スポットaから外れことが分かった場合、試料がおおよそ−X方向に移動したと判断してよく、試料が光スポットdから外れことが分かった場合、試料がおおよそ+Y方向に移動したと判断してよい。
図10と図11は、本実施形態における試料の移動の検出のフローチャートを示している。ここでは測定点を四点とした場合について、また測定点と試料の移動の検出点が一致している場合について説明する。
工程1.まず、試料の蛍光顕微鏡画像を取得し、次に、観察視野内の試料内に四つの測定点を決める。これは、観察者が、取得した顕微鏡画像を観ながら、それぞれの光走査系130内のXY駆動機構135により光スポットを所望の位置まで移動させることにより行なわれる。さらに、測定点の位置座標をコンピューター126内のメモリーに記憶させる。それぞれの測定点において、FCS測定を行ない、蛍光強度ゆらぎの自己相関関数を求め、それらの値をコンピューター126のメモリーに記憶させる。また、これらのプロファイルを理論曲線とのカーブフィッティングにより近似的に求め、これも合わせて記憶させる。カーブフィッティングについては最小自乗法により求めても良いし、非線形最小自乗法の一つであるレーベンバーグ・マーカート(Levenberg Marquard)法を用いて最適化してもよい。(”Numerical Recipes in C”, William H. Pressら著、丹慶勝市ら訳、技術評論社、1994)
工程2.一定時間経過後あるいは予め設定された時間経過後に再び、全く同じ四つの測定点において、FCS測定を行ない、蛍光強度ゆらぎの自己相関関数を求め、それらの値をコンピューター126内のメモリーに記憶させる。
工程3.四つの測定点のすべてにおいて蛍光強度ゆらぎの自己相関関数が得られた場合には、それらを記憶する。それらのプロファイルをカーブフィッティングにより近似的に求め、コンピューターにより工程1で記憶した測定結果と照合して変化があるか調べる。照合の結果、四つの蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のいずれにも変化がない場合には、試料の移動はなく、状態変化もないと判断する。一方、四つの測定点における蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のいずれかに変化がある場合には、試料の移動はないが、状態変化はあると判断し、その結果をコンピューター126内のメモリーに記憶させると共にTVモニター上に表示させる。
工程4.また、四つの測定点のいずれかにおいて蛍光強度ゆらぎの自己相関関数が得られない場合には、試料が移動したと判断し、測定点をすべて同時に二次元的あるいは三次元的に移動させ、工程1で記憶した測定結果と照合し、比較演算しながら差分が最小になる位置を求め、その位置に配置する。測定点の移動は、試料ステージコントローラー125により試料ステージ122を移動させることにより、さらに必要であれば、対物レンズ112を光軸に沿って移動させることにより行なう。
以下、蛍光強度ゆらぎの自己相関関数について説明する。
光検出器で受光される蛍光物質からの蛍光強度ゆらぎの自己相関関数R(τ)は次式で表される。
Figure 2006292420
ただし、Iは光検出器で受光される蛍光物質からの蛍光の強度、tは時間、τは相関時間である。<>はアンサンブル平均を表わす。
蛍光強度ゆらぎの自己相関関数を規格化すると、次のようになる。
Figure 2006292420
Figure 2006292420
ただし、G(τ)は規格化した蛍光強度ゆらぎの自己相関関数、Nは共焦点領域内に存在する平均粒子数である。共焦点領域内に存在する粒子の存在はポアソン分布に従うと仮定している。
入射光がガウス分布を有する光(アルゴンレーザーやヘリウムネオンレーザーなど)であるとすると、光強度ゆらぎの自己相関関数G(τ)は次のようになる。
Figure 2006292420
ただし、Dは蛍光分子の並進拡散係数、ω1は共焦点領域を円柱と近似したときの高さの1/2、ω2は半径である。
このとき、τを蛍光物質の分子の拡散時間とすると、次のようになる。
Figure 2006292420
測定により、蛍光強度ゆらぎの自己相関関数が得られれば、これらのプロファイルをカーブフィッティングして、共焦点領域内に存在する平均粒子数(N)や蛍光分子の拡散時間(τ)を求めて、これらの時間経過を各測定点でモニターすればよい。
観測の時間経過と共に、試料のいずれかの測定点で各種の生物学的な反応や状態変化が生じた場合は、その測定点について蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のプロファイルが変化する。このプロファイルの変化から拡散時間の変化、蛍光分子の観測領域内での平均存在数の変化などを求めることができる。蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のプロファイルの変化を調べるには自己相関関数を規格化し、すなわち、蛍光強度ゆらぎの自己相関関数を蛍光強度ゆらぎの時間平均値の二乗で割って、カーブフィッティングを行なって拡散時間、及びY軸切片(自己相関関数がy軸と交差する点のy軸座標)を求める。なお、蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のY軸切片の値は(3)式から分かるように、共焦点領域内に存在する平均の蛍光分子の数に対応する。
試料の移動のみが起きた場合は、複数の試料内測定点で得られた蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のプロファイルは基本的には変化しないか、または試料の移動が大きい場合は蛍光強度ゆらぎの自己相関関数そのものを得ることが不可能になるので、この変化を捉えることができる。
一方、試料内の複数の測定点で時間経過と共に生物学的な反応や状態変化が起こった場合は、必ず自己相関関数のプロファイルが変化する。従って、これを捉えることができる。
試料内の複数の測定点で、時間経過と共に生物学的な反応や状態変化が起き、かつ試料の移動も同時に起こった場合は、試料内の生物学的な反応や状態変化が起きた箇所で蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のプロファイルに変化が生じ、試料の移動が起きた箇所では蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のプロファイルは基本的には変化しない。これに試料の移動が伴う場合は蛍光強度ゆらぎの自己相関関数の測定をさらに何回かデータを蓄積して試料の移動量と方向を検出する。実際に複数箇所で測定を実施しているので、試料内の複数の測定点で、時間経過と共に生物学的な反応や状態変化が起き、かつ試料の移動や変形も同時に起こった場合でも、これを捉えることができる。この場合は、測定点ができるだけ多いことが望ましい。
なお、測定点をさらに増やして同様に測定することにより、試料の変形についても測定可能となる。
また蛍光の強度ゆらぎの変化、例えば蛍光の強度ゆらぎの時間平均値と分散に着目し、これらの値の測定点すべてについての初期値と一定時間経過後の値を求め、これらを比較することにより、試料の移動と方向を推定することも可能である。さらに、この推定結果に基づいて試料ステージを必要量移動させればよい。
今回は測定点と試料の移動の検出点が一致している場合について説明したが、測定点と試料の移動の検出点が必ずしも一致していなくてもよい。この場合は、試料内の四つの測定点において測定値を取得する際に、試料の生物学的な反応や状態変化の測定と、試料そのものの移動を把握するための測定を時間的なラグを与えて実施し、それぞれの測定結果をコンピューター126内のメモリーに記憶させると共にTVモニター上に蛍光画像を表示すればよい。
これまでの説明から分かるように、本実施形態においては、試料追尾のためのビデオカメラやメモリーを必要とすることなく、標本試料の自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置が得られる。
第二実施形態
本実施形態は、レーザー走査型共焦点顕微鏡を利用して蛍光の強度ゆらぎの相関分光解析を行なう顕微鏡観察装置に向けられている。より詳しくは、三つの測定点における蛍光強度ゆらぎの相互相関関数を利用する試料自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置に向けられている。
本実施形態の顕微鏡観察装置も、基本的には、第一実施形態と同様の構成(つまり図1に示される構成)を有している。
図12は、本発明の第二実施形態における試料自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置の全体構成を示している。
図12に示されるように、本実施形態の顕微鏡観察装置200は、レーザー走査型共焦点顕微鏡110を含んでいる。レーザー走査型共焦点顕微鏡110は、顕微鏡本体111と、試料121が載せられる試料ステージ122と、試料ステージ122の下方に配置された対物レンズ112とを有している。
顕微鏡観察装置200はさらに、蛍光を発生させるための励起光のビームをレーザー走査型共焦点顕微鏡110に供給する三系統の光走査系230Aと230Bと230Cとを有している。三系統の光走査系230A〜230Cは共に同様の構成を有している。以下の説明において、それらを区別する必要がない場合には、参照符号の末尾の英字を省略して単に光走査系230と記す。これに伴い、光走査系を構成している部材についても参照符号の末尾の英字を省略して記す。
光走査系230は、第一の励起光のビームを射出する第一のレーザー光源231と、第二の励起光のビームを射出する第二のレーザー光源232と、第一のレーザー光源231からの励起光ビームを偏向するミラー233と、ミラー233からの励起光ビームを反射して偏向するダイクロイックミラー234と、第二のレーザー光源232からの励起光ビームを偏向するミラー235と、ミラー235からの励起光ビームを反射して偏向するダイクロイックミラー236と、第一の励起光ビームと第二の励起光ビームを共にXY走査するXY走査機構237とを有している。
ダイクロイックミラー234は、第一の励起光を反射する一方、第一の励起光によって発生された蛍光を選択的に透過する特性を有している。また、ダイクロイックミラー236は、第二の励起光を反射する一方、第一の励起光と第一の励起光によって発生された蛍光と第二の励起光によって発生された蛍光とを透過する特性を有している。
XY走査機構237は、第一実施形態と同様に、例えば、光ビームを一本の軸に沿って走査し得る二つのガルバノスキャナーを組み合わせて構成されてよい。二つのガルバノミラーは好ましくはそれぞれの走査軸が互いに直交するように配置される。あるいは、音響光学変調素子(AOM)やポリゴンミラーやホログラムスキャナーなど利用して構成されてもよい。
光走査系230はさらに、第一の励起光によって発生された第一の蛍光を検出するための第一の光検出器238と、第二の励起光によって発生された第二の蛍光を検出するための第二の光検出器239と、第一の蛍光を透過し第二の蛍光を反射して第一の蛍光と第二の蛍光とを分離する分離素子240と、分離素子240で反射された第二の蛍光を反射するミラー241とを有している。
図示されていないが、第一の光検出器238の手前には、第一の励起光のビームの収束点に対して共焦点の位置関係にあるピンホールが配置され、第二の光検出器239の手前には、第二の励起光のビームの収束点に対して共焦点の位置関係にあるピンホールが配置されている。
光検出器238と光検出器239は、第一実施形態と同様に、例えば、アバランシェ・フォトダイオード(APD)(Avalanche Photo Diode)で構成されてよい。あるいは、光電子増倍管で構成されてもよい。
光走査系230はさらに、XY走査機構237を駆動する駆動装置242と、XY走査機構237の駆動信号に基づいて励起光ビームの収束点の位置を求める角度検出装置243とを有している。
顕微鏡本体111の内部には、それぞれの光走査系230に対して、光走査系230からの励起光ビームを対物レンズ112に方向付けると共に、その励起光ビームによって発生された蛍光のビームをその光走査系230に方向付ける偏向素子216が設けられている。
顕微鏡観察装置200はさらに、光走査系230の光検出器238と光検出器239から出力される電気信号を波形整形してオン・オフの二値化パルスに変換する信号処理装置251と、信号処理装置251から出力される二値化パルスに対して相関演算を行なって、蛍光強度ゆらぎの相互相関関数を求めるための相関解析装置252とコンピューター126とを有している。
顕微鏡観察装置200はさらに、信号処理装置251で得られた結果に、角度検出装置243からの信号をあわせて処理して、試料の二次元蛍光画像を形成すると共に、コントラスト向上や輪郭強調などの画像処理を行なう画像処理装置255と、画像処理装置255で得られた画像を表示するTVモニター256とを有している。
試料121は、予め二種類の蛍光物質で標識されている。蛍光物質は、これに限定されないが、例えば、ローダミン・グリーン(RhG)(Rhodamine Green)とサイファイヴ(Cy5)である。これに対応して、例えば、レーザー光源231は、ローダミン・グリーン(RhG)を励起するために、波長488nmの光を発するアルゴンレーザーであり、レーザー光源232は、サイファイヴ(Cy5)を励起するために、波長632.8nmの光を発するHe・Neレーザーである。
第一のレーザー光源231から射出された第一の励起光ビームは、ミラー233とダイクロイックミラー234で反射され、ダイクロイックミラー236を透過し、XY走査機構237を経て顕微鏡本体111の中に入る。また、第二のレーザー光源232から射出された第二の励起光ビームは、ミラー235とダイクロイックミラー236で反射され、XY走査機構237を経て顕微鏡本体111の中に入る。顕微鏡本体111に入った第一と第二の励起光ビームは、偏向素子216によって対物レンズ112に方向付けられる。対物レンズ112に入射した第一と第二の励起光ビームは、対物レンズ112により、試料121の内部に収束される。
第一と第二の励起光ビームの収束点は、XY走査機構237によって、二次元的に移動され得る。また、対物レンズ112はNA1.0程度の大きい開口数を有しており、第一と第二の励起光ビームの収束点の近傍に、直径0.6μm程度、長さ2μm程度の略円柱状の共焦点領域が形成される。
それぞれの励起光ビームの収束点はXY走査機構237を停止させることによって被検物質内の測定点に決められる。そして再びXY走査機構237の電源を入れて動作させることによって励起光ビームが二次元走査される。再び所望の位置でXY走査機構237の電源を切ることによって励起光ビームの収束点は被検物質内の異なる位置に一義的に決められる。この動作を繰り返し実施することにより収束点すなわち測定点を順次移動させることができる。
この領域内に存在する二種類の蛍光物質は、それぞれ、対応する励起光により励起され、蛍光信号(フォトンパルス)を発生させる。二種類の蛍光物質から発生された蛍光の一部(信号光)は、それぞれ、対物レンズ112に入射し、偏向素子216に方向付けられた第一の蛍光ビームと第二の蛍光ビームとなる。偏向素子216に入射した第一の蛍光ビームと第二の蛍光ビームは共に、光走査系230に方向付けられる。
光走査系230に戻った第一の蛍光ビームと第二の蛍光ビームは、XY走査機構237を経て、ダイクロイックミラー236とダイクロイックミラー234を透過し、分離素子240によって分離される。分離素子240を透過した第一の蛍光ビームは、図示しないピンホールを通過した成分のみが第一の光検出器238に入射する。分離素子240で反射された第二の蛍光ビームは、ミラー241を経て、図示しないピンホールを通過した成分のみが第二の光検出器239に入射する。光検出器238と光検出器239は、それぞれ、入射した光の強度を反映した電気信号を出力する。
光検出器238と光検出器239から出力される電気信号は、信号処理装置151で波形整形され二値化パルス信号に変換される。画像処理装置255は、二値化パルス信号に、角度検出装置243からの信号をあわせて処理して、試料の二次元蛍光画像または三次元蛍光画像を形成する。画像処理装置255はさらに、コントラスト向上や輪郭強調などの画像処理を行なう。その顕微鏡画像は、TVモニター256に表示される。
信号処理装置151からの二値化パルス信号はまた、信号処理装置251を相関解析装置252を経てコンピューターに入力され、蛍光強度ゆらぎの相互相関関数が求められる。
本実施形態の顕微鏡観察装置200においては、蛍光画像を観察しながら、蛍光強度ゆらぎの相互相関関数を求めることができると共に、試料の移動を測定することができる。
試料の移動を測定し、測定値に基づいて試料ステージを移動させる方法についても、第一実施形態と同様にして行なうことができる。以下、試料の測定点と試料の移動の測定点が一致している場合について説明する。
測定観測の時間経過と共に、試料のいずれかの測定点で対象となる二種類の蛍光物質で標識されたタンパク質などの分子が生物学的な反応などのために結合した割合が変化した場合は、その測定点について蛍光強度ゆらぎの相互相関関数のプロファイルが変化する。このプロファイルの変化から対象となる二種類の分子の結合体の観測領域内での平均存在数の変化などを求めることができる。
蛍光強度ゆらぎの相互相関関数のプロファイルの変化を調べるには相互相関関数を規格化し、すなわち、蛍光強度ゆらぎの相互相関関数をそれぞれの光検出器で受光された蛍光強度ゆらぎの時間平均値の積で割って、カーブフィッティングを行ない、Y軸切片の値を求める。すなわち、(6)式を用いて二種類の分子の結合体の数が得られる。
Figure 2006292420
ただし、NABは二種類の分子の結合体の数、GAB(0)は二種類の分子の結合体による蛍光強度ゆらぎの相互相関関数のY軸切片の値、GA(0)は蛍光物質Aによる蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のY軸切片の値、GB(0)は蛍光物質Bによる蛍光強度ゆらぎの自己相関関数のY軸切片の値である。
本実施形態は、測定点の数を三つであるが、測定点の数は、これに限定されるものではなく、四つ以上であってよい。測定点の数が多いほど、測定精度は向上する。
また、本実施形態においては、試料の移動量、移動方向についても、ガルバノスキャナーの回動角を回転角度センサー、例えばエンコーダーなどを用いて測定することにより、求めることができる。従って、リアルタイムで試料内複数の観察箇所の状態変化や生物学的な反応を捉えることができると共に、試料そのもの移動量、移動方向も同時に知ることができる。
試料の移動のみが起きた場合は、複数の試料内測定点で得られた蛍光強度ゆらぎの相互相関関数のプロファイルは基本的には変化しないか、または試料の移動が大きい場合は蛍光強度ゆらぎの相互相関関数そのものを得ることが不可能になるので、この変化を捉えることができる。
一方、試料内の複数の測定点で時間経過と共に二種類の蛍光物質で標識された結合体の数に変化が起こった場合は、必ず相互相関関数のプロファイルが変化する。従って、これを捉えることができる。
試料内の複数の測定点で、時間経過と共に二種類の蛍光物質で標識された結合体の数に変化が起き、かつ試料の移動も同時に起こった場合は、試料内の二種類の蛍光物質で標識された結合体の数に変化が起きた箇所で蛍光強度ゆらぎの相互相関関数のプロファイルに変化が生じ、試料の移動が起きた箇所では蛍光強度ゆらぎの相互相関関数のプロファイルは基本的には変化しない。これに試料の移動が伴う場合は蛍光強度ゆらぎの相互相関関数の測定をさらに何回かデータを蓄積して試料の移動量と方向を検出する。実際に複数箇所で測定を実施しているので、試料内の複数の測定点で、時間経過と共に二種類の蛍光物質で標識された結合体の数に変化が起き、かつ試料の移動や変形も同時に起こった場合でも、これを捉えることができる。この場合は、測定点ができるだけ多いことが望ましい。
測定点と試料の移動の検出点が一致していない場合は、試料内の三つの測定点において測定値を取得する際に、試料内の二種類の蛍光物質で標識された結合体の数の変化の測定と、試料そのものの移動や変形を把握するための測定を時間的なラグを与えて実施し、それぞれの測定結果をコンピューター126内のメモリー上に記憶させると共にTVモニター上に蛍光画像を表示する。
なお、蛍光強度ゆらぎの相互相関関数の測定においては、同時に蛍光強度ゆらぎの自己相関関数も得られるので、蛍光強度ゆらぎの相互相関関数、自己相関関数双方のデータを基に試料の移動を測定してもよい。
これまでの説明から分かるように、本実施形態においては、試料追尾のためのビデオカメラやメモリーを必要とすることなく、標本試料の自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置が得られる。
これまで、図面を参照しながら本発明の実施の形態を述べたが、本発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
本発明の第一実施形態における試料自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置の基本構成を概略的に示している。 図1に示される顕微鏡観察装置の光走査系の全体構成を示している。 図1に示される蛍光観察装置の全体構成を示している。 四つの光スポットと試料の位置関係の一例を示し、左側が試料の移動前と右側が試料の移動後を示している。 図4の左側に示される試料の移動前の四つの光スポットにおける蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数を示している。 図4の右側に示される試料の移動後の四つの光スポットにおける蛍光の強度ゆらぎの自己相関関数を示している。 図4の左側に示される試料の移動前の四つの光スポットにおける蛍光の強度ゆらぎの変化を示している。 図4の右側に示される試料の移動後の四つの光スポットにおける蛍光の強度ゆらぎの変化を示している。 四つの光スポットの配置例を示している。 本実施形態における試料の移動の検出のフローチャートの前半部を示している。 本実施形態における試料の移動の検出のフローチャートの後半部を示している。 本発明の第二実施形態における試料自動追尾機能を有する顕微鏡観察装置の全体構成を示している。
符号の説明
100…顕微鏡観察装置、110…レーザー走査型共焦点顕微鏡、111…顕微鏡本体、112…対物レンズ、116…偏向素子、122…試料ステージ、123…ステッピングモーター、125…試料ステージコントローラー、126…コンピューター、130…光走査系、131…レーザー光源、135…XY走査機構、137…ピンホール、138…光検出器、141…駆動装置、142…位置算出装置、151…信号処理装置、152…相関解析装置、200…顕微鏡観察装置、216…偏向素子、230A…光走査系、230A〜230C…光走査系、230…光走査系、231A…レーザー光源、231…一のレーザー光源、231…レーザー光源、232A…レーザー光源、232…レーザー光源、233…ミラー、234…ダイクロイックミラー、235…ミラー、236…ダイクロイックミラー、237…XY走査機構、238…光検出器、239…光検出器、240…分離素子、242…駆動装置、243…角度検出装置、251…信号処理装置、252…相関解析装置。

Claims (11)

  1. 標本試料(例えば細胞)内部の被検物質の動態を測定する顕微鏡装置であり、
    標本試料を保持する試料保持手段と、
    標本試料の測定可能領域(例えば細胞核)を含む顕微画像を取得する画像取得手段と、
    取得した顕微画像の測定可能領域内に少なくとも一つの被検物質に対して限定的に照準するように測定点を設定する測定点設定手段と、
    設定された測定点を更新する測定点更新手段と、
    更新された測定点から得られる複数時点の測定データに基づいて被検試料の動的特性を出力する動的特性出力手段を備えていることを特徴とする、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  2. 請求項1において、画像取得手段は取得した顕微画像を観察可能に表示する手段を有し、測定点設定手段は前記表示手段に表示された顕微画像の任意の点を指定するための入力手段を有する、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  3. 請求項1において、測定点更新手段は、保持手段に保持された標本試料と設定した測定点とを相対的に移動する手段を有する、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  4. 請求項3において、前記移動手段は、試料保持手段を移動する手段を有する、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  5. 請求項4において、測定点設定手段は取得した画像なしで設定済みの測定点を被検物質毎に移動する手段を有し、試料保持手段の移動と共働して測定点を更新するように更新手段を機能させる、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  6. 請求項4において、更新手段は、複数の少なくとも一つの測定点を測定可能領域の中心に近づけるように試料保持手段の移動手段を機能させる、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  7. 請求項1において、前記更新手段は、被検物質の動的信号を取得する手段を有し、この動的信号に基づいて測定点を更新する、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  8. 請求項1において、更新された測定点から得られる複数時点の測定データは、蛍光に由来する光信号である、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  9. 請求項1において、更新された測定点から得られる複数時点の測定データは、被検物質の動的信号に基づく自己相関関数の時間変化である、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  10. 請求項1において、更新された測定点から得られる複数時点の測定データは、被検物質の動的信号に基づく相互相関関数の時間変化である、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
  11. 請求項1において、画像取得手段は共焦点光学系から成る、標本試料の追尾機能を備えた顕微鏡観察装置。
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