JP2006289826A - 記録装置及びキャリッジ速度校正方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 エンコーダ信号波形に変化が生じても依然として正確にキャリッジ速度を得ることができる記録装置とキャリッジ速度校正方法とを提供することである。
【解決手段】 記録ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジモータの駆動力により往復移動させて記録媒体に記録を行なう記録装置において、キャリッジをキャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域において、異なる速度で移動させ、そのキャリッジの移動方向に沿って設けられ、所定の等間隔でスリットが設けられたスケールから、キャリッジと共に移動するエンコーダを用い、前記異なるキャリッジ速度各々についてスケールのスリットを読み取り、そのスリットを読み取った直後に得られる検出信号の立上がり時間と立下り時間との内いずれかの時間に基づいて、キャリッジ速度を校正する。
【選択図】 図8
【解決手段】 記録ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジモータの駆動力により往復移動させて記録媒体に記録を行なう記録装置において、キャリッジをキャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域において、異なる速度で移動させ、そのキャリッジの移動方向に沿って設けられ、所定の等間隔でスリットが設けられたスケールから、キャリッジと共に移動するエンコーダを用い、前記異なるキャリッジ速度各々についてスケールのスリットを読み取り、そのスリットを読み取った直後に得られる検出信号の立上がり時間と立下り時間との内いずれかの時間に基づいて、キャリッジ速度を校正する。
【選択図】 図8
Description
本発明は記録装置及びキャリッジ速度校正方法に関し、特に、例えば、インクジェット記録ヘッドをキャリッジに搭載したシリアル記録を行う記録装置及びキャリッジ速度校正方法に関する。
従来のシリアル記録装置では機構系の駆動源として、その制御の容易さからパルスモータが用いられてきた。この場合、目的とする位置での停止はモータに加えるパルス数で制御でき、そのスピードはパルスの周期で制御できる。また動作音の低減のため、モータに流れる電流をマイクロステップ等の手法を用いて正弦波状にするなどしている。
近年になり、より動作音の低減が求められるようになり、駆動源としてパルスモータからDCモータへ移行が進んでいる。しかし、DCモータを使用する場合にはパルスモータを使用する場合のようなデジタル的な制御は行えずアナログ制御を行う必要がなる。
例えば、記録ヘッドを搭載したキャリッジの駆動制御では、キャリッジの移動方向に沿って設けられたスケールのスリットをキャリッジに搭載したエンコーダにより読取り、その結果得られたエンコーダ信号などを基にして、キャリッジの位置と速度を求め、目標とする速度と位置と比較し合わせながら印加すべきDCモータに印加する電圧を決定する。
さて、上述のスケールには一定間隔でスリットが設けらており、スリット通過数、及び単位時間あたりのスリットの通過数で、キャリッジの位置と速度を知ることができる。また、その位置と速度を検出するときは、得られた二つの相をもつエンコーダ信号の内、片方の相を用い、そのときのもう片方の相のレベルでキャリッジの移動方向を知るようにしている。相の検出は相の片側のエッジを用いる。
しかしなから、このような方法ではキャリッジ停止直前の低速時にはスリットから次のスリットまでの移動時間が長くなり、位置情報及び速度情報の更新頻度が低下することにより、位置・速度検出の精度が低下する。
この問題の対策として、従来より次のような技術が知られている。
即ち、エンコーダ信号の両相各々の立上がり・立下りの両エッジを用いて、次々と発生するエッジ間隔を逐次記録し、現在にもっとも近いデータと過去3回のデータの合計からキャリッジ速度を求める。なお、現在にもっとも近いデータと過去3回のデータの合計は、従来の手法でのエンコーダの1周期分に相当する。このようにして、通常の検出に要した時間の1/4の時間ごとに情報が更新されるため、精度向上が期待できる(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に従えば、エンコーダの1/4周期ごとに速度情報が更新されるが、ある時点で得られる速度情報は、その情報を得る直前にキャリッジが通過するスリットともう1つ前のスリットとの間の移動時間に基づいて求めているので、このデータを用いて何らかの制御を決定する時はエンコーダ周期の1/4以上の時間が経過した後となる。このように、キャリッジ移動が低速時の加減速中は、常にエンコーダの1/4周期前の情報を基に制御を行うことになる。
従って、このような方法では、キャリッジ低速時の特に、キャリッジの加減速中は検出誤差が大きくなるので、この対策として、ある速度の時のエンコーダ信号の立ち上がり時間、立下り時間をテーブルとして記憶しておき、このテーブルとエンコーダの波形から速度を求めることも提案されている。このようにすると、例えば、エンコーダ信号に立ち上がりが発生した場合、それ以降のエンコーダ周期の1/4周期中に速度情報を得られるため、より現時点に近い情報から速度予測が出来る。
特開2001−219613号公報
しかしながら上記従来例でも依然として次のような問題点がある。
即ち、キャリッジがある速度で移動している時のエンコーダ信号の立ち上がり時間、或いは立下り時間は、予め記憶領域内に格納されているため、エンコーダそのものの個体差や機構的な取り付け精度などにより、エンコーダ信号の波形に変化が生じる場合がある。この変化は、キャリッジ速度予測において大きな誤差となり得る。
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、エンコーダ信号波形に変化が生じても依然として正確にキャリッジ速度を得ることができる記録装置とキャリッジ速度校正方法とを提供することを目的としている。
上記目的を達成するために本発明の記録装置は、以下のような構成からなる。
即ち、記録ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジモータの駆動力により往復移動させて記録媒体に記録を行なう記録装置であって、前記キャリッジの移動方向に沿って設けられ、所定の等間隔でスリットが設けられたスケールと、前記キャリッジに装着され前記キャリッジと共に移動し、前記スケールのスリットを読み取ってキャリッジの位置を検出するエンコーダと、前記キャリッジを前記キャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域において、異なる速度で移動させるキャリッジ移動制御手段と、前記キャリッジ移動制御手段により前記キャリッジが異なるキャリッジ移動速度夫々で移動するときに、前記エンコーダが前記スリットを読み取った直後に得られる、検出信号の立上がり時間と立下り時間との内、いずれかの時間に基づいて前記キャリッジ速度を校正する校正手段とを有することを特徴とする。
前記スリットはキャリッジ方向に2列設けられ、それら2列のスリットは前記エンコーダが位相が90度異なる2つの検出信号を発生するように、互いに対してずらされていることが好ましい。
また、前記キャリッジモータはDCモータであることが好ましい。
さらに、前記校正手段は、キャリッジ移動速度と前記検出信号の立上がり時間或いは立下り時間との関係が一次関数で表される関係にあるとし、前記異なるキャリッジ移動速度と、前記異なるキャリッジ移動速度夫々に対応した前記検出信号の立上がり時間と立下り時間との内いずれかの時間に基づいて、前記一次関数の比例係数と定数とを求める。
そして、その比例係数と定数とを格納する記憶手段をさらに備えると良い。
なお、前記キャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域に関する情報についても、これ格納する第2記憶手段をさらに備えると良い。
前記記録ヘッドは、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドでも良く、そのインクジェット記録ヘッドは、熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えていることがより好ましい。
また他の発明に従えば、記録ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジモータの駆動力により往復移動させて記録媒体に記録を行なう記録装置で用いるキャリッジ速度校正方法であって、前記キャリッジを前記キャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域において、異なる速度で移動させるキャリッジ移動工程と、前記キャリッジの移動方向に沿って設けられ、所定の等間隔でスリットが設けられたスケールから、前記キャリッジと共に移動するエンコーダを用い、前記異なるキャリッジ速度各々について前記スケールのスリットを読み取り、前記スリットを読み取った直後に得られる検出信号の立上がり時間と立下り時間との内いずれかの時間に基づいて、前記キャリッジ速度を校正する校正工程とを有することを特徴とするキャリッジ速度校正方法を備える。
従って本発明によれば、エンコーダの個体差、取り付け精度を含めた記録装置全体での校正ができるため、依然として精度の高いキャリッジ速度を得ることが可能となるという効果がある。
以下添付図面を参照して本発明の好適な実施例について、さらに具体的かつ詳細に説明する。
なお、この明細書において、「記録」(「プリント」という場合もある)とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、また人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、または媒体の加工を行う場合も表すものとする。
また、「記録媒体」とは、一般的な記録装置で用いられる紙のみならず、広く、布、プラスチック・フィルム、金属板、ガラス、セラミックス、木材、皮革等、インクを受容可能なものも表すものとする。
さらに、「インク」(「液体」と言う場合もある)とは、上記「記録(プリント)」の定義と同様広く解釈されるべきもので、記録媒体上に付与されることによって、画像、模様、パターン等の形成または記録媒体の加工、或いはインクの処理(例えば記録媒体に付与されるインク中の色剤の凝固または不溶化)に供され得る液体を表すものとする。
またさらに、「ノズル」とは、特にことわらない限り吐出口ないしこれに連通する液路およびインク吐出に利用されるエネルギーを発生する素子を総括して言うものとする。
<インクジェット記録装置の説明(図1)>
図1は本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
図1は本発明の代表的な実施形態であるインクジェット記録装置の構成の概要を示す外観斜視図である。
図1に示すように、インクジェット記録装置(以下、記録装置という)は、インクジェット方式に従ってインクを吐出して記録を行なう記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2にキャリッジモータM1によって発生する駆動力を伝達機構4より伝え、キャリッジ2を矢印A方向に往復移動させるとともに、例えば、記録紙などの記録媒体Pを給紙機構5を介して給紙し、記録位置まで搬送し、その記録位置において記録ヘッド3から記録媒体Pにインクを吐出することで記録を行なう。
また、記録ヘッド3の状態を良好に維持するためにキャリッジ2を回復装置10の位置まで移動させ、間欠的に記録ヘッド3の吐出回復処理を行う。
記録装置1のキャリッジ2には記録ヘッド3を搭載するのみならず、記録ヘッド3に供給するインクを貯留するインクカートリッジ6を装着する。インクカートリッジ6はキャリッジ2に対して着脱自在になっている。
図1に示した記録装置はカラー記録が可能であり、そのためにキャリッジ2にはマゼンタ(M)、シアン(C)、イエロ(Y)、ブラック(K)のインクを夫々、収容した4つのインクカートリッジを搭載している。これら4つのインクカートリッジは夫々独立に着脱可能である。
さて、キャリッジ2と記録ヘッド3とは、両部材の接合面が適正に接触されて所要の電気的接続を達成維持できるようになっている。記録ヘッド3は、記録信号に応じてエネルギーを印加することにより、複数の吐出口からインクを選択的に吐出して記録する。特に、この実施形態の記録ヘッド3は、熱エネルギーを利用してインクを吐出するインクジェット方式を採用し、熱エネルギーを発生するために電気熱変換体を備え、その電気熱変換体に印加される電気エネルギーが熱エネルギーへと変換され、その熱エネルギーをインクに与えることにより生じる膜沸騰による気泡の成長、収縮によって生じる圧力変化を利用して、吐出口よりインクを吐出させる。この電気熱変換体は各吐出口のそれぞれに対応して設けられ、記録信号に応じて対応する電気熱変換体にパルス電圧を印加することによって対応する吐出口からインクを吐出する。
図1に示されているように、キャリッジ2はキャリッジモータM1の駆動力を伝達する伝達機構4の駆動ベルト7の一部に連結されており、ガイドシャフト13に沿って矢印A方向に摺動自在に案内支持されるようになっている。従って、キャリッジ2は、キャリッジモータM1の正転及び逆転によってガイドシャフト13に沿って往復移動する。また、キャリッジ2の移動方向(矢印A方向)に沿ってキャリッジ2の絶対位置を示すためのスケール8が備えられている。この実施形態では、スケール8は透明なPETフィルムに必要なピッチで黒色のバー(スリット)を印刷したものを用いており、その一方はシャーシ9に固着され、他方は板バネ(不図示)で支持されている。そして、キャリッジ2にはスケール8のスリットを読み取るためのエンコーダ(不図示)が設けられている。
なお、そのスリットはキャリッジ移動方向に沿って上下2列のスリットからなり、それら2列のスリットは90度異なる位相(A相、B相)のエンコーダ信号を発生するために、そのスリット位置がずらされている。
また、記録装置には、記録ヘッド3の吐出口(不図示)が形成された吐出口面に対向してプラテン(不図示)が設けられており、キャリッジモータM1の駆動力によって記録ヘッド3を搭載したキャリッジ2が往復移動されると同時に、記録ヘッド3に記録信号を与えてインクを吐出することによって、プラテン上に搬送された記録媒体Pの全幅にわたって記録が行われる。
さらに、図1において、14は記録媒体Pを搬送するために搬送モータM2によって駆動される搬送ローラ、15はバネ(不図示)により記録媒体Pを搬送ローラ14に当接するピンチローラ、16はピンチローラ15を回転自在に支持するピンチローラホルダ、17は搬送ローラ14の一端に固着された搬送ローラギアである。そして、搬送ローラギア17に中間ギア(不図示)を介して伝達された搬送モータM2の回転により、搬送ローラ14が駆動される。
またさらに、20は記録ヘッド3によって画像が形成された記録媒体Pを記録装置外ヘ排出するための排出ローラであり、搬送モータM2の回転が伝達されることで駆動されるようになっている。なお、排出ローラ20は記録媒体Pをバネ(不図示)により圧接する拍車ローラ(不図示)により当接する。22は拍車ローラを回転自在に支持する拍車ホルダである。
またさらに、記録装置には、図1に示されているように、記録ヘッド3を搭載するキャリッジ2の記録動作のための往復運動の範囲外(記録領域外)の所望位置(例えば、ホームポジションに対応する位置)に、記録ヘッド3の吐出不良を回復するための回復装置10が配設されている。
回復装置10は、記録ヘッド3の吐出口面をキャッピングするキャッピング機構11と記録ヘッド3の吐出口面をクリーニングするワイピング機構12を備えており、キャッピング機構11による吐出口面のキャッピングに連動して回復装置内の吸引手段(吸引ポンプ等)により吐出口からインクを強制的に排出させ、それによって、記録ヘッド3のインク流路内の粘度の増したインクや気泡等を除去するなどの吐出回復処理を行う。
また、非記録動作時等には、記録ヘッド3の吐出口面をキャッピング機構11によるキャッピングすることによって、記録ヘッド3を保護するとともにインクの蒸発や乾燥を防止することができる。一方、ワイピング機構12はキャッピング機構11の近傍に配され、記録ヘッド3の吐出口面に付着したインク液滴を拭き取るようになっている。
これらキャッピング機構11及びワイピング機構12により、記録ヘッド3のインク吐出状態を正常に保つことが可能となっている。
この実施例では、キャリッジモータM1としてDCモータを採用している。
<インクジェット記録装置の制御構成(図2)>
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図2は図1に示した記録装置の制御構成を示すブロック図である。
図2に示すように、コントローラ600は、MPU601、後述する制御シーケンスに対応したプログラム、所要のテーブル、その他の固定データを格納したROM602、キャリッジモータM1の制御、搬送モータM2の制御、及び、記録ヘッド3の制御のための制御信号を生成する特殊用途集積回路(ASIC)603、画像データの展開領域やプログラム実行のための作業用領域等を設けたRAM604、MPU601、ASIC603、RAM604を相互に接続してデータの授受を行うシステムバス605、以下に説明するセンサ群からのアナログ信号を入力してA/D変換し、デジタル信号をMPU601に供給するA/D変換器606などで構成される。
また、図2において、610は画像データの供給源となるコンピュータ(或いは、画像読取り用のリーダやデジタルカメラなど)でありホスト装置と総称される。ホスト装置610と記録装置1との間ではインタフェース(I/F)611を介して画像データ、コマンド、ステータス信号等を送受信する。
さらに、620はスイッチ群であり、電源スイッチ621、プリント開始を指令するためのプリントスイッチ622、及び記録ヘッド3のインク吐出性能を良好な状態に維持するための処理(回復処理)の起動を指示するための回復スイッチ623など、操作者による指令入力を受けるためのスイッチから構成される。630はホームポジションhを検出するためのフォトカプラなどの位置センサ631、環境温度を検出するために記録装置の適宜の箇所に設けられた温度センサ632等から構成される装置状態を検出するためのセンサ群である。
さらに、640はキャリッジ2を矢印A方向に往復走査させるためのキャリッジモータM1を駆動させるキャリッジモータドライバ、642は記録媒体Pを搬送するための搬送モータM2を駆動させる搬送モータドライバである。
ASIC603は、記録ヘッド3による記録走査の際に、RAM602の記憶領域に直接アクセスしながら記録ヘッドに対して記録素子(吐出ヒータ)の駆動データ(DATA)を転送する。
キャリッジ2に装着されているエンコーダ2aからのエンコーダ信号は位置検出機構641を経てコントローラ600のMPU601へと転送される。
図3は位置検出機構641の詳細な構成とその周辺部の制御構成を示すブロック図である。
図3に示すように、位置検出機構641は、エンコーダ2aからのエンコーダ信号の立上がり時間(tr)及び立下り時間(tf)を測定するtr、tf測定部641aと、エンコーダ信号に基づいてスケール8のスリット数をカウントしてキャリッジ位置を検出する位置検出部641bとから構成されている。そして、検出されたエンコーダ信号の立上がり時間(tr)及び立下り時間(tf)とキャリッジ位置とはMPU601へと出力される。
ここで、この実施例に従うキャリッジ速度・位置検出について、従来の検出方法と比較しながら説明する。
図4はキャリッジ速度・位置検出の概略を示す信号タイムチャートである。ここで、図4(a)は従来例の概略を、図4(b)はこの実施例の概略を示している。
まず従来例について説明する。
図4(a)にはエンコーダ出力信号であるA相及びB相と、速度情報が更新される様子が図示されている。図4(a)から分かるように、A相の立ち上がりからA相の次の立上がりまでを360度とすると、B相の信号は位相が90度遅れている。
従来は、A相及びB相の両方の信号の立上がり及び立下りの全ての変化点の各々について、それぞれの間隔を測定し、エンコーダの1周期の1/4毎に位置・速度情報を求めていた。速度情報に関しては、最新の情報とその前の連続した過去3回分の情報を合わせることでエンコーダの1周期分の情報としていた。そして、A相或いはB相の出力信号のデューティが異なる場合などは、必要に応じて最適な手法で速度情報を求めていた。なお、ある時点で得られている速度情報は位相が90度前の情報、即ち、直前のスリットともう1つ前のスリットとの間の移動時間を基に求めたものであり、特にキャリッジが低速で加減速中は検出誤差が大きくなる可能性がある。
次にこの実施例の概略を説明する。
図4(b)にも同様にエンコーダ出力信号であるA相及びB相と、速度情報が更新される様子が図示されている。さて、従来例では各相の変化点間の時間を測定することで速度を予測していたが、この実施例では各変化点での波形の立上がり時間、或いは立下り時間から速度を予測する。この方法では、ある時点の速度情報は直前の変化点の情報から求められており、従来例よりも時間的な誤差が少ないので、キャリッジが低速で加減速中の速度予測に有効である。
ここで、この実施例に従うtr、tf測定部641aの構成とエンコーダ信号の立上がり時間(tr)と立下り時間(tf)を求める手順の概略を説明する。
図5はエンコーダ信号の立上がり時間(tr)と立下り時間(tf)の算出に関係する信号のタイムチャートである。
図5(a)はエンコーダ波形を表しており、HレベルとLレベルの閾値として90%レベルと10%レベルの位置を記してある。図5(b)は図5(a)で示したエンコーダ波形がHレベル以上であるか、或いはLレベル以上であるかを示す信号であり、エンコーダ信号がLレベル以上にある区間を示す信号をLevel10といい、Hレベル以上にある区間を示す信号をLevel90という。
この実施例では2つ信号Level10とLevel90の排他的論理和をとることでエンコーダ信号の立上がり時間(tr)と立下り時間(tf)の期間とを求めている。また、この実施例では、立上がり時間(tr)或いは立下り時間(tf)の期間へ入る直前の信号Level10をモニタしておくことで、その期間が立上がり時間(tr)の期間(tr期間)であるか或いは立下り時間(tf)の期間(tf期間)であるかの判別を行っている。
図5(c)はtr期間或いはtf期間の時間を測定する様子を示している。
図5(b)に示した2つ信号(Level10、Level90)からtr期間とtf期間を判別できるので、その期間だけカウンタを動作させ、その期間が終了したらカウンタを停止させそのときの値をラッチする。従って、そのカウンタ出力(counter)がtr期間とtf期間となり、その結果はtr期間が終了直後にtr信号として、また、tf期間が終了直後にtf信号として出力される。
図6は2つ信号(Level10、Level90)を測定するために用いる回路の概略を示す図である。
図6には2つのコンパレータ671、672が図示されており、コンパレータ671には信号Level10の閾値信号(Vref10)が入力され、コンパレータ672には信号Level90の閾値信号(Vref90)が入力されている。また、エンコーダ信号は両方のコンパレータに入力されている。即ち、エンコーダ信号がVref10に達すれば制御信号Level10がアクティブになり、Vref90に達すれば制御信号Level90がアクティブとなる。
次に、以上のようにしてキャリッジ位置を検出する構成において、どのようにその検出位置を校正するのかについて説明する。
校正は、それを行っている最中のキャリッジ速度が一定である必要がある。しかし、この実施例のキャリッジモータにはDCモータを採用しているために機械的な負荷により速度は一定ではなくなる。そのため校正は機械的な負荷が一定な領域で行う必要がある。
図7はキャリッジ位置と機械的負荷との関係を示す図である。
図7において、横軸はキャリッジ位置、縦軸はキャリッジ(即ち、DCモータ)にかかる機械的な負荷を示している。校正はDCモータが速度的に安定して動作させるための移動量、校正そのものに要する移動量が必要なため、図7に示す通り、機械的負荷が一定で且つこの状態がある幅以上連続する領域で行う。この領域は装置の機械的な設計をする時点で知り得るので、予めROM102に記憶させておく。また、校正時のキャリッジ速度は、機械的な負荷が一定な領域なので、通常のキャリッジ速度の検知同様に単位時間当たりのエンコーダ信号の変化数で知ることができる。
図8はエンコーダ信号の立上がり時間とキャリッジ速度との関係を示す図である。図8において、縦軸はキャリッジ速度(V)、横軸はキャリッジエンコーダ信号の立上がり時間(tr)である。ここで、図8を参照して、校正結果から速度を予測するための方法を説明する。
機器の実際の動作ではさまざまなキャリッジ速度を予測する必要があり、その全ての速度について上記の校正を行うことは困難である。従って、この実施例では、複数のキャリッジ速度に対して校正を行い、これをグラフ化することで校正を行っていないキャリッジ速度に対して予測を行う。
上述のように、キャリッジに速度指令値を与えてキャリッジを動作させ、そのキャリッジに対して負荷が一定なる領域で校正を行う。例えば、速度V1の指令値を与えてキャリッジを走査させて校正を行い、同様の処理を速度V2、速度V3……についても夫々キャリッジを走査させて校正を行い、立上り時間(tr)とキャリッジ速度(V)との関係についての情報を取得する。この時、キャリッジ速度は、単位時間当たりのエンコーダ信号の変化数で知ることができる。従って、その校正において、キャリッジ速度を変化させると、その変化した速度に応じて、単位時間当たりのエンコーダ信号の変化数も変化する。例えば、キャリッジ速度(V)をあるキャリッジ速度(V1)の2分の1の速度にするとその値も2分の1に、4分の1の速度にすると、その値も4分の1になる。このことを、図7に示す一定負荷領域にあるキャリッジ位置(即ち、あるスリット)で検出されるエンコーダ信号のエンコーダ信号の立上がり時間(tr)から見ると、キャリッジ速度が1/2倍になると、その検出時間はある基準時刻から見て2倍になり、1/4倍になると4倍になる。図8はその様子を示している。
以上の理由から、キャリッジ速度(V)はエンコーダ信号の立上がり時間(tr)の一次関数として式(1)のように表すことができる。
V = tr × a + b ……(1)
V : キャリッジ速度
tr : エンコーダ波形の立ち上がり時間
a : 比例係数
b : 定数
従って、エンコーダ信号の立上がり時間(tr)とその時のキャリッジ速度(V)から、式(1)の比例係数aと定数bを求めることができれば、任意のキャリッジ速度はエンコーダ信号の立上がり時間(tr)を式(1)へ代入することで求めることができる。
V : キャリッジ速度
tr : エンコーダ波形の立ち上がり時間
a : 比例係数
b : 定数
従って、エンコーダ信号の立上がり時間(tr)とその時のキャリッジ速度(V)から、式(1)の比例係数aと定数bを求めることができれば、任意のキャリッジ速度はエンコーダ信号の立上がり時間(tr)を式(1)へ代入することで求めることができる。
図9はキャリッジ速度の校正処理を示すフローチャートである。
まず、ステップS702では、校正処理が済みであるかどうかを調べる。この処理は記録装置のコントローラ600に搭載された、例えば、EEPROMなどの不揮発性メモリ(不図示)にフラグをセットしておき、そのフラグを調べることで実行される。ここで、校正済みであると判断されたなら、これ以降の処理は実行ぜすに処理を終了する。これに対して、校正前であると判断されたなら、処理はステップS703に進み、以後の処理で用いる測定回数を示すカウンタ(n)の値をゼロクリアする。
次に、処理はステップS704において、校正を行うための領域である校正開始位置(図7で示した一定負荷領域)へキャリッジを移動させ、さらにステップS705では、校正対象であるキャリッジを速度(Vn)で校正終了位置に向かって移動させる。
そして、ステップS706では、キャリッジ速度(Vn)時のエンコーダ信号の立上がり時間(tr)を測定し、ステップS707では、このときの測定時間(tr)をRAM604の記憶領域へ格納する。さらに、ステップS708では、測定回数が所定数(nn)に達したかどうかを調べる。ここで、n=nnであれば、所定回数、(nn+1)回の異なるキャリッジ速度に対して測定を行ったと判断し、処理はステップS710に進み、前述の比例係数aと定数bを求め、その後、処理を終了する。これに対して、n<nnであれば、処理はステップS709に進み、カウンタの値(n)を(+1)インクリメントし、その後処理はステップS704へ戻る。
以上のようにして求められた比例係数aと定数bの値は例えば、EEPROMなどの不揮発性メモリに格納され、次に校正が行われるまで、記録装置の動作中に、適宜、読み出されエンコーダ信号の立ち上がり時間(tr)とともに用いられて、キャリッジ速度を求める。
なお、この校正処理は記録装置に備えられた所定のスイッチを押下するか、或いは、記録装置を接続したホスト装置から指示を与えることにより実行できる。また、記録装置に備えられたタイマに基づいて、所定時間間隔で自動的に実行させることもできる。
従って以上説明した実施例に従えば、エンコーダそのものの個体差やエンコーダをキャリッジに取り付ける時の機構的な取り付け精度などによりエンコーダ信号波形に変化が生じた場合でも、校正されたキャリッジ速度が得られるので、速度予測において大きな誤差を防ぐことができ、キャリッジが低速で加減速中においても依然として正確な速度予測ができる。
なお以上説明した実施例ではエンコーダ信号の波形の立ち上がり時間を用いた例について説明しているが、本発明はこれによって限定されるものではなく、その波形の立下り時間を用いても同様に校正、制御ができる。
さらに、以上の実施例において、記録ヘッドから吐出される液滴はインクであるとして説明し、さらにインクタンクに収容される液体はインクであるとして説明したが、その収容物はインクに限定されるものではない。例えば、記録画像の定着性や耐水性を高めたり、その画像品質を高めたりするために記録媒体に対して吐出される処理液のようなものがインクタンクに収容されていても良い。
以上の実施例は、特にインクジェット記録方式の中でも、インク吐出を行わせるために利用されるエネルギーとして熱エネルギーを発生する手段(例えば電気熱変換体やレーザ光等)を備え、前記熱エネルギーによりインクの状態変化を生起させる方式を用いることにより記録の高密度化、高精細化が達成できる。
また以上の実施例はシリアルスキャンタイプのインクジェット記録装置を例として説明したが、本発明はこれに限らず、他の記録方式、例えば、熱転写記録方式などを採用した記録装置にも本発明は有効に適用できる。
加えて、以上の実施例のようなシリアルスキャンタイプのものでも、装置本体に固定された記録ヘッド、あるいは装置本体に装着されることで装置本体との電気的な接続や装置本体からのインクの供給が可能になる交換自在のカートリッジタイプの記録ヘッドを用いた場合にも本発明は有効である。
さらに加えて、本発明のインクジェット記録装置の形態としては、コンピュータ等の情報処理機器の画像出力装置として用いられるものの他、リーダ等と組合せた複写装置、さらには送受信機能を有するファクシミリ装置の形態を採るもの等であってもよい。
2 キャリッジ
2a エンコーダ
8 スケール
601 MPU
640 キャリッジモータドライバ
641 位置測定機構
641a tr、tf測定部
641b 位置測定部
671、672 コンパレータ
M1 キャリッジモータ
2a エンコーダ
8 スケール
601 MPU
640 キャリッジモータドライバ
641 位置測定機構
641a tr、tf測定部
641b 位置測定部
671、672 コンパレータ
M1 キャリッジモータ
Claims (9)
- 記録ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジモータの駆動力により往復移動させて記録媒体に記録を行なう記録装置であって、
前記キャリッジの移動方向に沿って設けられ、所定の等間隔でスリットが設けられたスケールと、
前記キャリッジに装着され前記キャリッジと共に移動し、前記スケールのスリットを読み取ってキャリッジの位置を検出するエンコーダと、
前記キャリッジを前記キャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域において、異なる速度で移動させるキャリッジ移動制御手段と、
前記キャリッジ移動制御手段により前記キャリッジが異なるキャリッジ移動速度夫々で移動するときに、前記エンコーダが前記スリットを読み取った直後に得られる、検出信号の立上がり時間と立下り時間との内、いずれかの時間に基づいて前記キャリッジ速度を校正する校正手段とを有することを特徴とする記録装置。 - 前記スリットは前記キャリッジ方向に2列設けられ、前記2列のスリットは前記エンコーダが位相が90度異なる2つの検出信号を発生するように、互いに対してずらされていることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
- 前記キャリッジモータはDCモータであることを特徴とする請求項1又は2に記載の記録装置。
- 前記校正手段は、
キャリッジ移動速度と前記検出信号の立上がり時間或いは立下り時間との関係が一次関数で表される関係にあるとし、
前記異なるキャリッジ移動速度と、前記異なるキャリッジ移動速度夫々に対応した前記検出信号の立上がり時間と立下り時間との内いずれかの時間に基づいて、前記一次関数の比例係数と定数とを求めることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の記録装置。 - 前記比例係数と定数とを格納する記憶手段をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の記録装置。
- 前記キャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域に関する情報を格納する第2記憶手段をさらに有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の記録装置。
- 前記記録ヘッドは、インクを吐出して記録を行うインクジェット記録ヘッドであることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
- 前記インクジェット記録ヘッドは、熱エネルギーを利用してインクを吐出するために、インクに与える熱エネルギーを発生するための電気熱変換体を備えていることを特徴とする請求項7に記載の記録装置。
- 記録ヘッドを搭載したキャリッジをキャリッジモータの駆動力により往復移動させて記録媒体に記録を行なう記録装置で用いるキャリッジ速度校正方法であって、
前記キャリッジを前記キャリッジへの機械的な負荷が一定となる領域において、異なる速度で移動させるキャリッジ移動工程と、
前記キャリッジの移動方向に沿って設けられ、所定の等間隔でスリットが設けられたスケールから、前記キャリッジと共に移動するエンコーダを用い、前記異なるキャリッジ速度各々について前記スケールのスリットを読み取り、前記スリットを読み取った直後に得られる検出信号の立上がり時間と立下り時間との内いずれかの時間に基づいて、前記キャリッジ速度を校正する校正工程とを有することを特徴とするキャリッジ速度校正方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005114768A JP2006289826A (ja) | 2005-04-12 | 2005-04-12 | 記録装置及びキャリッジ速度校正方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005114768A JP2006289826A (ja) | 2005-04-12 | 2005-04-12 | 記録装置及びキャリッジ速度校正方法 |
Publications (1)
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---|---|
JP2006289826A true JP2006289826A (ja) | 2006-10-26 |
Family
ID=37410928
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2005114768A Withdrawn JP2006289826A (ja) | 2005-04-12 | 2005-04-12 | 記録装置及びキャリッジ速度校正方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2006289826A (ja) |
-
2005
- 2005-04-12 JP JP2005114768A patent/JP2006289826A/ja not_active Withdrawn
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