JP2006286107A - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 エラーレートが低く、オフトラックが小さく、かつ出力変動が小さい磁気記録媒体の提供。
【解決手段】 非磁性支持体の一面に下塗層と磁性層の順に形成され、前記磁性層が、厚さが0.30μm以下、表面の中心線平均粗さRaが4.0nm以下、粗さ曲線の中心線をP0、最大の山部をP1、第20番目の山部をP20としたとき、中心線からの最大の山部P1の高さ(P1−P0)が25nm以下、最大の山部P1と第20番目の山部P20との高さの差(P1−P20)が5nm以下であり、かつESCA分析によって測定される前記磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲が95%以上である磁気記録媒体およびその製造方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、磁気記録媒体およびその製造方法に関し、特に、エラーレートが低く、オフトラックが小さく、かつ、出力変動の小さい磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
近年、IT技術の進展等に伴って、情報を記録する記録媒体は、益々、高記録容量化、高記録密度化が求められている。例えば、コンピュータのデータバックアップ用の磁気テープは、コンピュータの処理速度の増大、処理する情報の大容量化、ハードディスクの高容量化等に伴って、益々、高記録容量および高記録密度化が必要となってきている。こうした磁気テープの高容量化および高記録密度化は、磁気テープ上の狭トラックピッチ化によるトラック数の増加、磁性層の薄層化、テープの全厚さの減少による1巻きあたりのテープ全長を増加させる等によって進められている。
一方、こうした狭トラックピッチ化および磁性層の薄層化に伴って磁性層からの漏れ磁束が小さくなるため、微小磁束でも高い再生出力が得られる磁気抵抗効果型素子を用いた再生ヘッド(例えば、MRヘッド、GMRヘッド、TMRヘッド(トンネル磁気抵抗ヘッド))が用いられるようになってきている。
しかし、狭トラックピッチ化に伴って生じるオフトラック、再生ヘッドと磁性層との間のスペーシングロス等による出力変動およびエラーレートの増加を招く、という問題があった。
また、磁気テープをテープワインダ(磁気テープ巻取装置)、または、ドライブにおいて、テープリールに巻き取る際に、いわゆる巻き乱れが生じると、オフトラックによる出力変動およびエラーレートの増加の原因となることがある。これは、巻き乱れを有する磁気テープは、保管中に悪い巻き癖が付き、ドライブ内でのテープ走行精度に悪影響を与えるためである。
特開2003−346454号公報
そこで、本発明の目的は、前記した問題を解決し、オフトラックが小さく、エラーレートが低く、出力変動の小さいMRヘッド対応磁気記録媒体を提供することにある。
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、非磁性支持体と、前記非磁性支持体の一面に形成された下塗層と、前記下塗層の上に形成された磁性層と、前記非磁性支持体の他面に形成されたバックコート層とを備える磁気記録媒体であって、前記磁性層が、厚さが0.30μm以下および表面の中心線平均粗さRaが4.0nm以下であり、前記磁性層の表面について測定される粗さ曲線において、粗さ曲線の中心線をP0、最大の山部をP1、第20番目の山部をP20としたとき、中心線からの最大の山部P1の高さ(P1−P0)が25nm以下、最大の山部P1と第20番目の山部P20との高さの差(P1−P20)が5nm以下であり、かつESCA分析によって測定される前記磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲率が95%以上であることを特徴とする磁気記録媒体を提供する。
この磁気記録媒体では、磁性層の表面が前記の特有の形態(中心線平均粗さRa、P1−P0、P1−P20)を有し、磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲率が95%以上であることによって、狭トラックピッチ化、再生ヘッドと磁性層との間のスペーシングロス、磁気記録媒体の巻き乱れ等によって生じるオフトラックを抑制し、エラーレートが少なく、小さい出力変動を示す磁気記録媒体を得ることができる。
また、請求項2に係る発明は、前記磁気記録媒体において、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって、前記磁性層に記録された磁気記録信号が再生されることを特徴とする。
この磁気記録媒体では、前記のとおり、狭トラックピッチ化、再生ヘッドと磁性層との間のスペーシングロス、磁気記録媒体の巻き乱れ等によって生じるオフトラックを抑制し、エラーレートが少なく、小さい出力変動を示すため、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによる磁気記録信号の再生に好適である。
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体において、前記非磁性支持体上の少なくとも一面に、下塗層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記下塗層を形成した後、その下塗層の上に磁性層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記磁性層が形成されていることを特徴とする。
この磁気記録媒体では、下塗層と磁性層が順次形成されることによって、より均一な下塗層および磁性層を有する磁気記録媒体を得ることができる。
また、請求項4に係る発明は、非磁性支持体上に下塗層を形成する工程と、磁気記録媒体をテーパー状のハブに巻き取って熱処理して前記磁気記録媒体に巻き癖を付与する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
この磁気記録媒体の製造方法では、磁性層の厚さの2倍以下の大きさのフィラーを含む磁性層形成用塗布液を前記下塗層の上に塗布して磁性層を形成した後、加圧・加熱処理する工程と、磁気記録媒体をテーパー状のハブに巻き取って熱処理し前記磁気記録媒体に湾曲を付与することによって、磁性層の表面が前記の特有の形態(中心線平均粗さRa、P1−P0、P1−P20)を有し、磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲が95%以上である磁気記録媒体を製造することができる。
請求項5に係る発明は、前記非磁性支持体上の少なくとも一面に、下塗層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記下塗層を形成する工程と、その下塗層の上に磁性層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記磁性層を形成する工程とを含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
この磁気記録媒体の製造方法では、非磁性支持体上の少なくとも一面に、下塗層と磁性層を順次形成することによって、より均一な下塗層および磁性層を有する磁気記録媒体を得ることができる。
請求項6に係る発明は、前記磁気記録媒体の製造方法において、前記磁性層は、前記下塗層の上に、磁性層の厚さの2倍以下の大きさのフィラーを含む磁性層形成用塗布液を前記下塗層の上に塗布して磁性層を形成することを特徴とする。
この磁気記録媒体の製造方法では、前記磁性層を、前記下塗層の上に、磁性層の厚さの2倍以下の大きさのフィラーを含む磁性層形成用塗布液を前記下塗層の上に塗布して形成することが、後段の巻き癖を付与する工程における加圧・加熱処理において、前記フィラーの下層への沈み込みにより、前記特有の形態の表面形態を形成するために有効である。
請求項7に係る発明は、前記磁気記録媒体の製造方法において、ガラス転移温度が60〜90℃の結合剤を含み、塗膜形成後の塗膜のガラス転移温度が60〜90℃となるように調製された前記磁性層用塗布液を用いて磁性層を形成し、前記湾曲を付与するための熱処理を前記ガラス転移温度近傍の温度で行うことを特徴とする。
この磁気記録媒体の製造方法では、ガラス転移温度が60〜90℃の結合剤を含塗膜形成後の塗膜のガラス転移温度が60〜90℃となるように調製された前記磁性層用塗布液を用いて磁性層を形成し、前記湾曲を付与するための熱処理を前記ガラス転移温度近傍の温度で行うことが、磁気記録媒体の表面を前記特有の形態にするために有効である。
さらに、請求項8に係る発明は、非磁性支持体上に下塗層を形成する工程と、磁性層形成用塗布液を前記下塗層の上に塗布して磁性層を形成する工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、前記磁性層を研磨テープを用いて研磨する工程(a)、および回転ドラムを用いて磁性層を平滑化する工程(b)から選ばれる少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法を提供する。
この磁気記録媒体の製造方法では、磁性層の表面が前記の特有の形態(中心線平均粗さRa、P1−P0、P1−P20)を有し、磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲が95%以上である磁気記録媒体を製造することができる。
本発明の磁気記録媒体は、狭トラックピッチ化、再生ヘッドと磁性層との間のスペーシングロス、磁気記録媒体の巻き乱れ等によって生じるオフトラックを抑制し、エラーレートが少なく、小さい出力変動を示す。そのため、本発明の磁気記録媒体は、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによる磁気記録信号の再生に好適である。
また、本発明の製造方法によれば、前記特有の表面形態、および磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)、および特有の湾曲を有し、より均一な下塗層および磁性層を有する磁気記録媒体を製造することができる。
以下、本発明の磁気記録媒体およびその製造方法について詳細に説明する。
本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に設けられた磁性層に磁気的変化としてデータ信号を記録し、また、その磁気的変化を読み取ってデータ信号を再生することができる記録媒体である。この磁気記録媒体の形状は特に限定されるものではなく、テープ状、シート状、ディスク状等のいずれの形態であってもよい。シート状、テープ状の磁気テープでは、磁気記録再生方向がそれに直交する方向に比べて長い形態を有する。
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、単に「実施形態」という)として、本発明を磁気テープに適用した場合について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る磁気テープを示す模式断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る磁気テープの磁性層の表面の粗さ曲線を示す概念図である。図3は、本発明の実施形態に係る磁気テープの湾曲値を説明する概念図である。
図1に示す磁気テープ1は、例えば、コンピュータの記憶媒体として使用されるテープであり、主として、非磁性のベースフィルム(非磁性支持体)2と、ベースフィルム2の一面に形成された下塗層3と、下塗層3の上に形成された磁性層4と、ベースフィルム2の他面に形成されたバックコート層5とを有する。
ベースフィルム2は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル類、ポリオレフィン類、セルローストリアセテート、ポリカーボネート、ポリアミド(特に好ましくは芳香族ポリアミド)、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリスルフォン、アラミド、ポリフェニルスルホン、BPO(ポリベンゾオキサゾール)等からなる公知のフィルムが使用できる。ベースフィルムには、予めコロナ放電処理、プラズマ処理、易接着処理、熱処理、除塵処理等を施しても良い。なお、ベースフィルムは、加工性や機械特性および低コストが要求される場合には、ポリエステル類を用いることが望ましい。また、強度、剛性および耐熱性が要求される場合には、ポリエチレンテレフタレート(PET)よりもポリエチレンナフタレート(PEN)を用いることが望ましい。
このベースフィルム2の長手方向および幅方向の100℃、30分での熱収縮率は好ましくは3%以下、さらに好ましくは1.5%以下であり、80℃、30分での熱収縮率は好ましくは1%以下、さらに好ましくは0.5%以下である。また、その破断強度は長手方向および幅方向ともに、好ましくは5〜100kg/mm2であり、その弾性率は、長手方向および幅方向ともに、好ましくは100〜2000kg/mm2である。
また、このベースフィルム2の厚さは、1〜100μm、好ましくは4〜80μmである。特に、コンピュータの記憶媒体として使用される高記録容量の磁気テープの場合には、ベースフィルムの厚さを、4〜8μm程度とすることが、磁気テープの機械的強度、磁気テープ1巻き当たりの記録容量を向上するために有効である。
次に、下塗層3は、ベースフィルム2と磁性層4の間に形成され、ベースフィルム2と磁性層4との間の密着性を向上させる役割を有する。この下塗層3は、結合剤、カーボンブラック、酸化チタン、酸化鉄、アルミナ等の非磁性粒子などを用いて形成される。前記のカーボンブラック、非磁性粒子等は、導電性の改良、テープの剛性、磁性層4との密着性の向上、下塗層形成用塗料の塗布時の粘度調整などの各種の目的で、所定の組成に調整される。例えば、カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等を使用でき、分散性、導電性等を考慮してその粒径および粒径分布、さらに粒子形状、含有量等を選択することができる。また、非磁性粒子は、分散性、下塗層3の強度、下塗層3中での配向性、下塗層3と磁性層4との界面の凹凸等を考慮して、針状、粒状または無定形の粒子形状、粒径、含有量を選択することができる。
また、下塗層3に用いる結合剤は、磁性層4と同じく公知のものが用いられる。さらに、下塗層3には、必要に応じて、帯電防止剤、潤滑剤等を含有させることができる。
この下塗層3の厚さは、磁気テープの耐久性、および磁気テープ1巻き当たりの記録容量の観点から、通常、0.01〜2μm程度であり、好ましくは0.02〜0.5μmである。
磁性層4は、磁性粉末と結合剤とを必須成分として形成され、磁気的変化としてデータ信号を記録し、また、その磁気的変化を再生ヘッドによって読み取ってデータ信号を再生することができるものである。
この磁性層4の構成成分である磁性粉末は、高密度記録を可能とするため、強磁性金属粉末または六方晶フェライト磁性粉末が好ましい。強磁性金属粉末は、例えば、Feを主体とした針状粉末であり、Co、Mn、Ni、Sm、Nb等が含まれる合金粉末が用いられる。また、Al、Y等の化合物を焼結防止剤として用いることができる。
強磁性金属粉末の平均長軸長は10〜100nmであることが好ましく、20〜90nmであることがより好ましく、30〜80nmであることがさらに好ましい。平均長軸長を100nm以下とすることで、ノイズが低減でき、良好なサーボ信号およびデータ信号のSN比が得られる。また、平均長軸長を30nm以上とすることで良好な保持力Hcが確保できる。
また、強磁性金属粉末の平均針状比は3〜10であることが好ましく、3〜8であることがより好ましく、4〜8であることがさらに好ましい。
強磁性金属粉末の長軸長の変動率[(長軸長の標準偏差)/(長軸長の平均値)]は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。長軸長の変動率を30%以下とすることで、長軸長の異なった磁性粒子が混在することによるノイズを低減して磁性層4に記録されるデータ信号のSN比を向上できる。
強磁性金属粉末の飽和磁化量σsは70〜150A・m2/kgであることが好ましく、80〜140A・m2/kgであることがより好ましく、90〜125A・m2/kgであることがさらに好ましい。また、その保磁力Hcは127〜356kA/mであることが好ましく、142〜316kA/mであることがより好ましく、158〜200kA/mであることがさらに好ましい。
強磁性金属粉末のBET法による比表面積(SBET)は、40〜80m2/gであることが好ましく、より好ましくは45〜70m2/gである。BET法による比表面積(SBET)が40m2/g以上であれば、ノイズが低減され、80m2/g以下であれば、良好な表面性を得ることができる。
六方晶フェライト磁性粉末の場合は、Baフェライトが適している。また、置換元素としてTi等を含んでいても良い。六方晶フェライト磁性粉末の平均板径は10〜50nmであることが好ましく、15〜45nmであることがより好ましく、20〜40nmであることがさらに好ましい。強磁性金属粉末を用いる場合と同様、平均板径を50nm以下とすることで、ノイズが低減でき、良好なサーボ信号およびデータ信号のSN比が得られる。また、平均板径を15nm以上とすることで良好な保持力Hcが確保できる。
また、六方晶フェライト磁性粉末の平均板状比は2〜7であることが好ましく、3〜5であることがより好ましい。
六方晶フェライト磁性粉末の板径の変動率[(板径の標準偏差)/(板径の平均値)]は30%以下であることが好ましく、25%以下であることがより好ましく、20%以下であることがさらに好ましい。板径の変動率を30%とすることで、板径の異なった磁性粒子が混在することによるノイズを低減して磁性層4に記録されるデータ信号のSN比を向上できる。
六方晶フェライト磁性粉末の飽和磁化量σsは、40〜80A・m2/kgであることが好ましく、45〜75A・m2/kgであることがより好ましく、45〜65A・m2/kgであることがさらに好ましい。また、その保磁力Hcは127〜356kA/mであることが好ましく、142〜316kA/mであることがより好ましく、158〜200kA/mであることがさらに好ましい。
上記粒子サイズの範囲内におけるBET法による比表面積は10〜200m2/gである。この比表面積は、概ね粒子板径と板厚からの計算値と符合する。
また、磁性層4に用いられる結合剤には公知のものを使用できる。例えば、塩化ビニル共重合体、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂等、またはこれらの混合物が挙げられる。また、これらの樹脂の数平均分子量は2〜10万、好ましくは3〜8万である。なお、これらの樹脂には磁性粉末の分散性を向上させるために極性基を導入すると良い。極性基としては−COOM、−SO3M、−P=O(OM)2(Mは水素原子またはアルカリ金属)が知られている。ここで、結合剤として、ガラス転移温度が60〜90℃の結合剤を含み、塗膜形成後の塗膜のガラス転移温度が60〜90℃となるように調製された前記磁性層用塗布液を用いることが、磁気記録媒体の表面を前記特有の形態にするために有効である。
さらに、磁性層4には、必要に応じて、フィラー、研磨剤(アルミナ、酸化クロム、弁柄、ZrO2、ダイヤモンド等)、カーボンブラック、潤滑剤等を含有させることができる。研磨剤を含有させる場合は、平均粒子サイズが10〜300nm、かつ、磁性層厚みの2倍以下のものが好ましく、形状は粒状、平板状、紡錘状等のものが好ましい。
磁性層4の厚さは、磁気テープの高記録密度化および高容量化の観点から、0.30μm以下、好ましくは10〜250nm、さらに好ましくは30〜230nm、特に好ましくは40〜200nmである。
磁性層4の表面の中心線平均粗さRaは、エラーレートの低減に有効であることから、4.0nm以下であり、好ましくは1.0〜3.5nmである。この磁性層4の表面の中心線平均粗さは、例えば、図2に示すとおり、表面粗さ測定装置によって測定された粗さ曲線から求められる(粗さ曲線Fを中心線で折り返し、その粗さ曲線と中心線によって得られた面積を測定長さLで割った値(μm)をいう:JIS B 0601−1994)。表面粗さ測定装置の具体例としては、WYKO社製 HD−2000が挙げられる。
また、磁性層4は、前記磁性層4の表面Aについて測定される粗さ曲線において、図2に示すとおり、粗さ曲線の中心線をP0、最大の山部をP1、第20番目の山部をP20としたとき、中心線からの最大の山部P1の高さ(P1−P0)が25nm以下、好ましくは1〜20nmであり、さらに、最大の山部P1と第20番目の山部P20との高さの差(P1−P20)が5nm以下であり、好ましくは0.01〜3nmである。ここで、(P1−P20)は、図2に示す(P1−P0)と(P20−P0)の差から求められる。(P1−P0)および(P1−P20)がこの範囲にあることによって、磁気テープと再生ヘッドとの当たり及びスペーシングが改善されて磁気テープの走行安定性が向上し、エラーレートおよび出力変動の抑制に有効である。
また、磁性層4中の結合剤によって形成されるネットワーク構造(架橋構造)の目安となる表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)は、0.2以下、好ましくは0.01〜0.18である。この範囲にすることによって、磁性層4の表面に存在する未反応の架橋剤および結合剤に起因して、再生ヘッドおよび記録ヘッドと磁気テープとの間のスペーシングロスや摩擦係数の増大によるオフトラックを抑制し、エラーレートの増大を防止するために有効である。この磁性層4の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)は、ESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)分析によって測定される。具体的には、X線光電子分光分析装置(X−Ray Photoelectron Spectroscopy:XPS)を用いて、軟X線(AlKα線、MgKα線)を照射することによって磁性層4の表面から数nmの深さまでの領域に存在する窒素原子と鉄原子から放出される光電子のスペクトル強度を計測することによって測定することができる。
また、磁性層4の保磁力Hcは127〜356kA/m、好ましくは142〜316kA/m、さらに好ましくは158〜240kA/mである。Hcを127kA/m以上とすることで、高い出力が得られ、記録波長が小さくなっても反磁界の影響を低減することができる。Hcが356kA/mを超えると磁気ヘッドでの記録が困難になるため、Hcを356kA/m以下とすることが好ましい。
さらに、磁性層4の残留磁化と厚みとの積(Mrt)は5×10-10〜7.5×10-8T・m、好ましくは5×10-10〜5×10-8T・m、さらに好ましくは5×10-10〜3×10-8T・mである。Mrtを5×10-10〜7.5×10-8T・mとすることで、MR素子が飽和するのを防ぎ、ノイズを低減させることができる。
また、下塗層3と磁性層4との間に、非磁性粉末と結合剤とを主要成分として形成される非磁性層を介設することが望ましい。
この非磁性層の成分である非磁性粉末としては公知のものが使用可能で、例えば、TiO2、Fe23、Al23、CeO2、ZrO2、BaSO4、ZnO、カーボンブラック、グラファイト、ダイヤモンド等が挙げられる。これらの中でもTiO2、α−Fe23が好ましく、これらとカーボンブラックを併用することがより好ましい。また、極性基が導入された樹脂を結合剤に用いる場合は、金属酸化物が分散性の点で優れる。これら非磁性粉末の平均粒子サイズ(針状の場合は平均長軸長)は10〜300nm、好ましくは30〜200nmであり、形状は粒状、針状、サイコロ状、板状、紡錘状のいずれでも良い。また、非磁性粉末は必要に応じて複数種類用いられる。例えば導電性付与のために非磁性酸化物、カーボンブラック等を混合することも可能である。
バックコート層5は、磁気テープ1の走行耐久性向上のために、磁性層4が設けられた側と反対側のベースフィルム2上に形成される。このバックコート層5は、結合剤、およびカーボンブラックを含有するものであることが好ましい。バックコート層5は、微粒子で電気伝導性が優れたカーボンブラックを主なフィラーとし、平均粒子サイズの異なる二種類のカーボンブラックを含有させたり、必要により無機質粉末を含有してもよい。例えば、モース硬度5〜9の無機質粉末を含有させることができる。無機質粉末のバックコート層への配合量は、カーボンブラック100質量部に対して、通常、0.5〜150質量部であり、好ましくは0.5〜100質量部である。
前述のように、バックコート層5には、平均粒子サイズの異なる二種類のカーボンブラックを含有させることができる。例えば、平均粒子サイズが15〜50nmの微粒子状カーボンブラックと平均粒子サイズが80〜300nmの粗粒子状カーボンブラックを用いることができる。このように、二種類のカーボンブラックを使用することにより、バックコート層を粗面化しても磁性層4への裏写りの少ない磁気テープを得ることができる。
また、一般に、上記のような微粒子状のカーボンブラックの添加により、バックコート層5の表面電気抵抗を低く設定でき、また光透過率も低く設定できる。磁気記録の装置によっては、テープの光透過率を利用し、動作の信号に使用しているものが多くあるため、このような場合には特に微粒子状のカーボンブラックの添加は有効になる。また、微粒子状カーボンブラックは、一般に潤滑剤の保持力に優れ、潤滑剤併用時、摩擦係数の低減化に寄与する。
一方、平均粒子サイズ80〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、固体潤滑剤としての機能を有しており、またバックコート層5の表面に微小突起を形成し、接触面積を低減化して、摩擦係数の低減化に寄与する。
本発明で用いることができる微粒子状カーボンブラックの具体的な商品としては、以下のものを挙げることができる。括弧内は、平均粒子サイズを示す。REGAL 99R(38nm)、RAVEN2000B(18nm)、RAVEN1500B(17nm)(以上、コロンビアカーボン社製)、BP800(17nm)(キャボット社製)、PRINTEX90(14nm)、PRINTEX95(15nm)、PRINTEX85(16nm)、PRINTEX75(17nm)(以上、デグサ社製)、#3950(16nm)(三菱化学(株)製)。
また、粗粒子カーボンブラックの具体的な商品の例としては、旭#51(91nm)(旭カーボン社製)、サーマルブラック(270nm)(カーンカルブ社製)、RAVENMTP(275nm)(コロンビアカーボン社製)を挙げることができる。平均粒子サイズ80〜300nmの粗粒子状カーボンブラックは、ゴム用カーボンブラックや、カラー用カーボンブラックより選択することができる。
本発明において、バックコート層における微粒子状カーボンブラックと粗粒子状カーボンブラックの含有比率(質量比)は、前者:後者=98:2〜75:25の範囲とすることが好ましく、さらに好ましくは、95:5〜85:15である。また、バックコート層におけるカーボンブラックの含有量(二種類のカーボンブラックを使用する場合は、微粒子状カーボンブラックと粗粒子状カーボンブラックの合計量)は、結合剤100質量部に対して、通常30〜80質量部の範囲とすることができ、好ましくは、45〜65質量部の範囲である。
バックコート層に添加することができる無機質粉末としては、平均粉体サイズが80〜250nmでモース硬度が5〜9の無機質粉末が挙げられる。無機質粉末としては、上述した下塗層に使用される非磁性粉末や研磨剤などと同様のものを使用することができ、中でもα−酸化鉄、α−アルミナ等を用いることが好ましい。無機質粉末のバックコート層への添加量は、結合剤100質量部に対して、好ましくは0.5〜40質量部の範囲であり、さらに好ましくは1〜30質量部の範囲である。
バックコート層に使用する結合剤は、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、反応型樹脂等を用いることができる。好ましい結合剤は、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース等の繊維素系樹脂、フェノキシ樹脂、ポリウレタン樹脂である。その中でも、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、またはポリエステルポリウレタン樹脂を用いるのがより好ましい。
バックコート層には、前述の成分以外に、他の任意の成分として、分散剤、潤滑剤を添加することもできる。分散剤としては、例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、エライジン酸、リール酸、リノレン酸、ステアロール酸等の炭素数12〜22個の脂肪酸(RCOOH;Rは炭素数11〜17個のアルキル基、またはアルケニル基)、前記脂肪酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属からなる金属石けん、前記の脂肪酸エステルのフッ素を含有した化合物、前記脂肪酸のアミド、ポリアルキレンオキサイドアルキルリン酸エステル、レシチン、トリアルキルポリオレフィンオキシ第四級アンモニウム塩(アルキルは炭素数1〜5個、オレフィンは、エチレン、プロピレンなど)、硫酸エステル、銅フタロシアニン、沈降性硫酸バリウム等を使用することができる。分散剤は、結合剤樹脂100質量部に対して、0.5〜20質量部の範囲で添加することができる。
バックコート層は、その平均表面粗さRaが、20〜30nmであることが好ましく、より好ましくは22〜28nmである。バックコート層の表面粗さは、テープが巻かれた状態でバックコート層の表面が磁性層の表面に転写されることで、再生出力に影響を与えたり、ガイドポールに対する摩擦係数に影響を与えるため、上記の範囲に調整することが好ましい。なお、この表面粗さRaの調整は、バックコート層を形成後、カレンダーによる表面処理工程において、用いるカレンダーロールの材質、その表面性、圧力等の調整により行うことができる。このバックコート層の厚さは0.1〜2μm、好ましくは0.3〜1.0μm、さらに好ましくは0.3〜0.6μmである。
また、磁気テープ1には、前記の下塗層3、磁性層4、バックコート層5以外の層が含まれていても良い。例えば、第2の磁性層、クッション層、オーバーコート層、接着層、保護層を有していても良い。これらの層は、その機能を有効に発揮することができるように適切な位置に設けることができる。
この磁気テープ1は、1000巻き当たりの+湾曲率が95%以上、好ましくは98%以上である。この磁気テープの+湾曲率は、図3に示すように、巻き解いた磁気テープ1を平面視して、長手方向(矢印A方向)の長さのL(m)、通常、1mの任意地点E,Fにおいて、任意地点Eと任意地点Fとを結ぶ基準線gから磁気テープ1の短い方のエッジ1cまでの距離dが+0.2〜2.0mmである比率をいう。このような湾曲を付与することによって、巻き乱れによって生じるオフトラックを抑制し、エラーレートの少ない磁気テープを得ることができる。
この磁気テープは、狭トラックピッチ化、再生ヘッドと磁性層との間のスペーシングロス、磁気記録媒体の巻き乱れ等によって生じるオフトラックを抑制し、エラーレートが少なく、小さい出力変動を示すため、磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによる磁気記録信号の再生に好適である。
この磁気テープ1の製造は、磁性層の表面が前記の特有の形態(中心線平均粗さRa、P1−P0、P1−P20)を有し、磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲が95%以上である磁気テープを製造できる方法であれば、特に制限されない。例えば、(1)広幅のベースフィルム原反の一面に、下塗層3および磁性層4を形成し、さらに、ベースフィルム原反の他面にバックコート層5を形成する工程、(2)ベースフィルム原反を所定の幅に裁断(スリット)して所定の幅の磁気テープ原反を製造する工程、(3)磁気テープ原反の磁性層4の表面を前記の特有の形態に形成する工程、(4)磁気テープ原反に湾曲を付与して巻き癖を付ける工程を含む方法によって、磁気テープ1を製造することができる。得られた磁気テープは、所定の長さでテープリールに巻き取られ、カートリッジ等の所定の筐体に、リール駆動機構、テープ取り出し機構等とともに収納されて使用に供される。
この製造方法の(1)の工程において、下塗層3の形成は、ベースフィルム原反の表面に、結合剤、非磁性粒子等の下塗層3の構成成分を、有機溶媒等の適当な溶媒に分散または溶解させて調製された塗布液を塗布・乾燥して行うことができる。また、バックコート層5の形成も、同様に、結合剤、カーボンブラックおよびその他の成分を、溶媒に分散または溶解させて調製された塗布液を塗布・乾燥して行うことができる。さらに、非磁性層を、下塗層3と磁性層4との間に設ける場合、その非磁性層の形成も同様にして行うことができる。
また、磁性層4は、磁性粉末、結合剤等を含む塗布液を下塗層3の上に塗布することにより形成される。また、磁性層4は、金属、合金等の強磁性材を、真空蒸着やスパッタリングなどの手段で下塗層3に被着させることにより形成することもできる。
磁性層を塗布液の塗布によって形成する場合、塗布の方法には、ベースフィルム原反に下塗層3を形成した後に磁性層用塗布液を塗布する方法、ベースフィルム原反上に下塗層用塗布液と磁性層用塗布液とを同時に塗布する方法等がある。下塗層3の乾燥後、磁性層用塗布液を塗布する前にカレンダ処理工程を設けてもよい。
次に、図4および図5を参照して、磁気テープ1の製造方法について説明する。
前記のとおり、図示しない塗布工程、配向工程、乾燥工程、カレンダ処理工程を経て製造された幅広の磁気テープ原反を、巻芯に巻き取る。
次に、この磁気テープ原反をスリッタ装置(図示せず)によって、図4に示すように、この磁気テープ原反6が最終的に製品化されるその製品(磁気テープカートリッジ)の規格で定められたテープ幅に裁断される。このスリット工程で所定寸法のテープ幅に裁断された各磁気テープ1は、次に、パンケーキ巻取工程で、各ハブにそれぞれ巻き取り、パンケーキにする。このパンケーキに巻き取られた磁気テープ1は、幅方向の厚さにムラがある形状で、ばらつきがあるため、もともと磁気テープ原反6のどこに位置していたかによって湾曲極性が異なる。
次に、(3)磁気テープ原反の磁性層4の表面を前記の特有の形態に形成する工程、(4)磁気テープ原反に巻き癖を付ける工程が行われる。この工程によって、磁性層の表面が特有の形態(中心線平均粗さRa、(P1―P0)、(P1―P20))に形成され、さらに、磁性層の表面に存在する未反応の架橋剤等が除去されて、磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲が95%以上である磁気テープを得ることができる。この(3)の工程および(4)の工程は、次のいずれかの方法に従って行うことができる。
(i)前記非磁性層の形成に際して、磁気記録媒体をテーパー状のハブに巻き取って熱処理して前記磁気テープに湾曲を付与する工程を含む方法
(ii)前記磁性層を研磨テープを用いて研磨する工程(a)、および回転ドラムを用いて磁性層を平滑化する工程(b)から選ばれる少なくとも1つの工程と、磁気テープに巻き癖を付与する工程とを含む方法
前記の(i)の方法は、スリッタ装置で所定のテープ幅に裁断されて、湾曲極性が正または負のいずれか一方向になるように巻き取られたパンケーキ7を、熱処理工程(図示せず)で湾曲する巻き癖を付けた後、磁気テープ巻取装置によってテープリールに巻き取ることによって行うことができる。
ここで、パンケーキ7および磁気テープ1の巻き癖の付与について、図5を参照しながらその一例を説明する。
まず、図5に示すように、パンケーキ7のハブ7aの直径Dは、例えば、115mm以上とし、パンケーキ7の直径Cに対するハブ7aの直径Dの比は、0.3〜0.99(望ましくは、0.50〜0.99)とする。
そして、パンケーキ7の大きい方のエッジ(上側のエッジ)7bの半径C1と、小さい方のエッジ(下側のエッジ)7cの半径C2との上下エッジ半径の比Rは、磁気テープ1に付与する湾曲値Bに対して表1に示すような値とする。
ここで、表1は、磁気テープに湾曲値と磁気テープの上下エッジ半径の比を示す表である。
Figure 2006286107
表1に示すように、湾曲値Bが0.5mm/mのときには、パンケーキ7の上下エッジ半径の比Rが1.00007であり、湾曲値Bが1.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00010であり、湾曲値Bが2.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00030であり、湾曲値Bが4.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00060であり、湾曲値Bが8.0mm/mのときには、上下エッジ半径の比Rが1.00120である。
例えば、厚み18mmのハブ7aのテーパ量は、表1に従い、直径が250mmで、テーパ量は、18μmとすればよい。
次に、前記の工程によって湾曲が付与された磁気テープ1からなるパンケーキ7を、例えば、恒温槽(図示せず)などに所定時間置いて、熱処理工程(図示せず)で、湾曲値Bの湾曲形状を付ける。このとき、予め、磁性層の厚さの2倍以下の大きさのフィラーを含む磁性層形成用塗布液を前記非磁性層の上に塗布して磁性層4を形成しておくと、巻き癖を付与する工程における加圧・加熱処理において、前記フィラーの下層への沈み込みにより、前記特有の形態の表面形態を形成するために有効である。また、ガラス転移温度が60〜90℃の結合剤を含む磁性層用塗布液を用いて磁性層を形成し、前記ガラス転移温度近傍の温度で前記熱処理を行うことによって、磁気記録媒体の表面を前記特有の形態にするために有効である。
なお、この熱処理工程での熱処理条件は、熱処理するときの温度をT(℃)、熱処理する時間をt(H)、kを定数とすると、
t=k×1010×T-5
であることが好ましい。PETの場合は、k≧1が好ましい。熱処理の温度Tの範囲は、ベースフィルムのガラス転移温度直下の温度であり、例えば、PETやPENであれば、40〜69℃で、好ましくは55〜65℃であり、熱処理する時間tは、3〜72時間とする。また、この熱処理温度を、磁性層の成分である結合剤のガラス転移温度Tgの近傍の温度にすれば、熱処理後の結合剤の復元によって、凹部による欠落信号の発生を低減できる。
なお、熱処理工程(図示せず)を行う装置は、例えば、恒温槽(図示せず)が利用されるが、磁気テープ1を所定の温度で一定時間熱処理することができれば、特に限定しない。また、熱処理の温度T(℃)や熱処理時間t(H)は、磁気テープ1のベースフィルムの材料によって相違するため、その材料に合わせて適宜に設定すればよい。
また、前記(ii)の方法において、前記工程(a)および前記工程(b)は、それぞれ単独で行ってもよいし、(a)および(b)の順で2工程を組み合わせて行ってもよい。
前記磁性層4を研磨テープを用いて研磨する工程(a)は、研磨テープを、回転ロールによって磁気テープの送り方向と反対方向に一定の速さで移動させながら、ガイドブロックによって押圧して磁気テープの磁性層と接触させることによって行うことができる。このとき、磁気テープの巻き出し張力、研磨テープの張力を一定として処理を行う。使用する研磨テープは、例えば、MA20000番、WA10000番あるいはK10000番の細かい研磨砥粒が表面に付着されたテープである。
また、回転ホイールを用いて磁性層を平滑化する工程(b)は、摺動面に空気抜き用溝が刻設された回転ホイールを、磁気テープの走行方向と反対方向に一定の回転速度で回転させながら、磁気テープの磁性層に対して一定の接触角度(標準:90度)で接触させることにより、磁性層の表面処理を行う工程である。回転ホイールは、通常、アルミニウム金属、SUS鋼等で形成され、ホイールの表面粗さは、ベースフィルム、磁性層の材質等に応じて適宜調整される。
また、この工程(b)の後、磁性層の汚れ、または磁性層およびバックコート層の汚れを拭き取る工程(c)を行うと、好ましい。
この工程(c)は、ティッシュ(不織布)、超極細繊維からなる織布(例えば、東レ社製のトレシー)を、磁気テープの送り方向と反対方向に一定の速度で送り、回転棒でそれぞれ磁気テープのバックコート層5および磁性層4の表面に押し当ててクリーニング処理を行う工程である。この工程により、スリッタ工程、工程(a)、工程(b)等で発生した研磨屑や未反応の架橋剤が除去される。この工程(c)は、可能な限り工程(b)の直後で行うことが好ましい。これは、工程(b)で磁性層の表面に浮き出した未反応の架橋剤等が再び磁性層に染み込まないうちに未反応の架橋剤を拭き取れるためである。
次に、工程(c)の後、前記と同様にして、磁気テープに巻き癖を付与する工程を行う。この巻き癖を付与する工程は、前記(i)の方法について説明したとおりである。
以上のようにして、巻き癖が付けられた磁気テープ1は、サーボライタによってサーボ信号が書き込まれる等の所定の処理が施された後、テープワインダと呼ばれる専用の磁気テープ巻取装置8によって、テープリールに所定量巻き取り、切断される。
以上、本発明の磁気記録媒体の実施形態として、べースフィルム(非磁性支持体)上に下塗層と磁性層とを、この順で1層ずつ形成した形態の磁気テープを例にして説明したが、本発明の磁気記録媒体は、非磁性支持体上に下塗層と磁性層をこの順で交互に複数層を積層して、複数の下塗層と磁性層とを有する形態であってもよい。これによって、金属蒸着による磁性層を有する磁気記録媒体と同等の高出力を確保できる。また、1組の下塗層と磁性層と、他の組の下塗層と磁性層との間に、必要に応じて、非磁性層、潤滑層、磁性層、保護層等の層を設けてもよい。
以下、実施例によって本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例、比較例の「部」は質量部を示す。
実施例1〜6、比較例1〜5
下塗層用塗料、磁性層用塗料およびバックコート層用塗料の調製、ならびに磁気シートの製造を下記のようにして行った。
《下塗層用塗料成分》
(1)成分A1の組成
酸化鉄粉末(粒径:0.10×0.02μm) 68部
α−アルミナ(粒径:0.05μm) 8部
カーボンブラック(粒径:19nm、吸油量:200g/cc) 24部
パルミチン酸/ステアリン酸(3/7) 2.0部
塩化ビニル共重合体(含有−SO3Na基:0.7×10-4当量/g) 10部
ポリエステルポリウレタン樹脂(Tg:40℃、含有−SO3Na基:1×10-4当量/g)
4.4部
シクロヘキサノン 30部
メチルエチルケトン 50部
(2)成分A2の組成
ステアリン酸イソオクチル 1部
シクロヘキサノン 30部
メチルエチルケトン 90部
(3)成分A3の処方
ポリイソシアネート 4.4部
シクロヘキサノン 10部
メチルエチルケトン 15部
トルエン 10部
《磁性層用塗料成分》
(1)成分B1の組成
強磁性鉄系金属粉(Co/Fe:0.2原子比、Y/(Fe+Co):0.03原子比、Al/(Fe+Co):0.05原子比、Ca/Fe:0.0001、σs:155A・m2/kg、Hc:149.6kA/m、pH:9.4、長軸長:0.10μm)
100部
塩化ビニル−ヒドロキシプロピルアクリレート共重合体(Tg:82.5℃、含有−SO3Na基 :0.7×10―4当量/g)
12.3部
ポリエステルポリウレタン樹脂(含有−SO3Na基:1.0×10―4当量/g)
5.5部
α−アルミナ(平均粒径:0.2μm) 6部
α−アルミナ(平均粒径:0.05μm) 3部
カーボンブラック(平均粒径:50nm、DBP吸油量:120cc/100g)
1.0部
メルアシッドホスフェート 2部
ステアリン酸イソオクチル 1.0部
シクロヘキサノン 70部
メチルエチルケトン 320部
(2)成分B2の組成
ポリイソシアネート 2.0部
シクロヘキサノン 167部
前記の下塗層用塗料成分における成分A1をニーダで混練した後、成分A2を加えて撹拌した。次に、撹拌混合物を、サンドミルで滞留時間を90分として分散処理を行い、さらに成分A3を加えて撹拌した後、得られた混合物を濾過して、下塗層用塗料を得た。
これとは別に、前記の磁性層用塗料成分における成分B1をニーダで混練した後、サンドミルで滞留時間を60分として分散処理を行った。次に、成分B2を加えて撹拌した後、得られた混合物を濾過して、磁性塗料を得た。
前記の下塗層用塗料を、ポリエチレンナフタレートフイルム(厚さ5.0μm、長手方向のヤング率(MD):6.5Gpa、MD/TD=1.3、帝人(株)製)からなる支持体上に、乾燥およびカレンダ後の厚さが1.5μmとなるように塗布・乾燥した。さらにその上に、前記の磁性塗料を磁場配向処理、乾燥、カレンダー処理後の磁性層の厚さが0.12μmとなるようにドライ・オン・ウエットで塗布し、磁場配向処理後、ドライヤを用いて乾燥し、磁気シートを得た。なお、磁場配向処理は、ドライヤの前方にN−N対抗磁石(5kG)を設置し、ドライヤ内で塗膜の指蝕乾燥位置の手前側50cmからN−N対抗磁石(5kG)を2基50cm間隔で設置して行った。塗布速度は300m/分とした。
下記のバックコート層用塗料成分をサンドミルで滞留時間60分として分散させた後、ポリイソシアネート18部を加えてバックコート層用塗料を調製した。濾過した後、上記で作製した磁気シートの磁性層の反対面に、乾燥、カレンダ処理後の厚みが0.4μmとなるように塗布して乾燥した。
《バックコート層用塗料成分》
カーボンブラック(粒径:20nm) 80部
カーボンブラック(粒径:290nm) 10部
酸化鉄(長軸長:0.1μm、軸比:約10) 10部
ニトロセルロース 45部
ポリウレタン樹脂(−SO3Na基含有) 30部
シクロヘキサノン 260部
メチルエチルケトン 525部
テトラヒドロフラン 80部
このようにして得られた磁気シートを金属ロールからなる7段カレンダで、温度100℃、線圧200kg/cmの条件で鏡面化処理した。次に、磁気シートを角度1度のテーパー付きコアにパラボラ状に巻いた状態で60℃で48時間エージングした後、1/2インチ(12.7mm)幅に裁断して磁気テープを得た。
比較例6
成分B2のポリイソシアネートの配合割合を6部とした以外は、実施例1と同様にして磁気テープを製造した。
得られた磁気テープについて、磁性層表面の形態(中心線平均粗さRa、P1−P0、P1−P20)、窒素/鉄の存在原子比、+湾曲率、および出力変動を、下記の方法に従って測定した。結果を表1に示す。
<磁性層の表面の中心平均粗さRa、P1−P0、P1−P20の測定>
光学式位相シフト干渉方式表面粗さ計(WYKO社製、HD−2000)を用いて、磁性層の表面を、測定面積250μm2、長手方向に粗さ曲線を測定した。得られた粗さ曲線から、中心線平均粗さRaを求めるとともに、磁性層の凹凸の中心値をP0 、最大の凸量(第1番目の凸量)をP1とし、順次第2番目、第3番目、第4番目、第5番目、・・・、第19番目、第20番目の凸量を、P2 、P3 、P4 、P5 、・・・、P19、P20とした時の(P1−P0)と(P1−P20)を求めた。
<ESCA測定>
X線光電子分光分析装置を用い、MgKα線をX線源とし、強度12kV−10mAの条件で磁性層の表面近傍のN/Feを測定した。測定は、塩素(2p)、窒素(1s)、鉄(2p)の順序でそれぞれの積算回数を5回、50回、20回に定め、光電子スペクトル強度を計測することにより行った。なお、測定に際しては、テープから脂肪酸アミド(N含有)を除去するため、テープをヘキサン中に16時間保存した後、真空乾燥してから測定を行った。
+湾曲率
1000本測定したときの1m定規で測定した+湾曲率を言い、テープリールに巻装された磁気テープを巻き解き、テープの幅方向の上端を上方向に載置させた時の1mのテープ長の両下端と中央下端との直線からの+0.2〜2.0mmでの値の比率である。測定は23℃、50RH%で1時間エージング後に行った。
出力変動
1000パス走行後のテープの出力変動を測定。出力最大値からの最小値をdBで表示した。
Figure 2006286107
本発明の実施形態に係る磁気テープを示す模式断面図である。 本発明の実施形態に係る磁気テープの磁性層の表面の粗さ曲線を示す概念図である。 本発明の実施形態に係る磁気テープの湾曲率を説明する概念図である。 本発明の実施形態に係る磁気テープの製造方法におけるスリット工程を説明する図である。 本発明の実施形態に係る磁気テープの製造方法における磁気テープに巻き癖を付与する工程を説明する図である。
符号の説明
1 磁気テープ
2 ベースフィルム
3 下塗層
4 磁性層
5 バックコート層

Claims (8)

  1. 非磁性支持体と、前記非磁性支持体の一面に形成された下塗層と、前記下塗層の上に形成された磁性層と、前記非磁性支持体の他面に形成されたバックコート層とを備える磁気記録媒体であって、前記磁性層が、厚さが0.30μm以下および表面の中心線平均粗さRaが4.0nm以下であり、前記磁性層の表面について測定される粗さ曲線において、粗さ曲線の中心線をP0、最大の山部をP1、第20番目の山部をP20としたとき、中心線からの最大の山部P1の高さ(P1−P0)が25nm以下、最大の山部P1と第20番目の山部P20との高さの差(P1−P20)が5nm以下であり、かつESCA分析によって測定される前記磁性層の表面近傍における窒素と鉄の存在原子比(N/Fe)が0.2以下であり、1000巻き当たりの+湾曲率が95%以上であることを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 磁気抵抗効果型素子を利用した再生ヘッドによって、前記磁性層に記録された磁気記録信号が再生される請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記非磁性支持体上の少なくとも一面に、下塗層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記下塗層を形成した後、その下塗層の上に磁性層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記磁性層が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 非磁性支持体上に下塗層を形成する工程と、磁性層形成用塗布液を前記下塗層の上に塗布して磁性層を形成した後、加圧・加熱処理する工程と、磁気記録媒体原反をテーパー状のハブに巻き取って熱処理して前記磁気記録媒体原反に巻き癖を付与する工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  5. 前記非磁性支持体上の少なくとも一面に、下塗層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記下塗層を形成する工程と、その下塗層の上に磁性層形成用塗布液を塗布・乾燥して前記磁性層を形成する工程とを含むことを特徴とする請求項4に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  6. 前記磁性層は、前記下塗層の上に、磁性層の厚さの2倍以下の大きさのフィラーを含む磁性層形成用塗布液を前記下塗層の上に塗布して磁性層を形成することを特徴とする請求項4または請求項5に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  7. 前記磁性層形成用塗布液は、ガラス転移温度が60〜90℃の結合剤を含み、塗膜形成後の塗膜のガラス転移温度が60〜90℃となるように調製された前記磁性層用塗布液を用いて磁性層を形成し、前記湾曲を付与するための熱処理を前記ガラス転移温度近傍の温度で行うことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  8. 非磁性支持体上に下塗層を形成する工程と、磁性層形成用塗布液を前記下塗層の上に塗布して磁性層を形成する工程とを含む磁気記録媒体の製造方法であって、
    前記磁性層を研磨テープを用いて研磨する工程(a)、および回転ドラムを用いて磁性層を平滑化する工程(b)から選ばれる少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
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