JP2006283700A - 可変動弁システム - Google Patents

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学 立野
Shuichi Ezaki
修一 江▲崎▼
Toshiyuki Maehara
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Abstract

【課題】 この発明は、バルブの開弁特性のうちの少なくともリフト量を連続的または多段階に変更可能な可変動弁システムに関し、広範囲の運転領域で、機構の正常な運動性の確保と低フリクションロス化を実現することを目的とする。
【解決手段】 リフト量などのバルブの開弁特性を連続的または多段階に変更可能な可変動弁機構10を備える。揺動カムアーム22とメインカム14との機械的な連結が維持されるように、揺動カムアーム22をメインカム14に向けて付勢するロストモーションスプリング42を備える。バルブを閉弁方向に付勢するバルブスプリング60を備える。バルブのリフト量およびメインカム回転速度(エンジン回転速度N)に応じて、ロストモーションスプリング42およびバルブスプリング60のそれぞれが発する付勢力に加えるアシスト力を制御するアシスト力制御手段を備える。
【選択図】 図1

Description

この発明は、可変動弁システムに係り、特に、内燃機関のバルブの開弁特性を変更可能な可変動弁システムに関する。
に関する。
従来、例えば特許文献1には、バルブのリフト量を2段階に切り換え可能な可変動弁装置が開示されている。より具体的には、この従来の可変動弁装置では、バルブの小リフト動作を実現するための低速型カムと、当該バルブの大リフト動作を実現するための高速型カムとを備えている。そして、この装置は、選択されるカムに応じてバネ定数が2段階に変化するバルブスプリングを備えている。このような構成によれば、リフト量の変化に伴うバルブスプリングのたわみ量の変化に応じて、バルブスプリングのバネ定数を変化させることで、高速域でのバルブの正常な運動性を確保できると共に、フリクションロスを低減することができる。
特開平10−141027号公報 実開昭64−46407号公報
ところで、カムとバルブとの間に備えた可変機構によって、揺動部材の揺動範囲を変化させることで、リフト量などのバルブの開弁特性を連続的または多段階に変更可能な可変動弁装置(この欄では、「リフト連続可変動弁装置」と称する)が知られている。このようなリフト連続可変動弁装置は、一般に、バルブを閉弁方向に付勢するバルブスプリングと、カムとバルブとの間で可変機構および揺動部材を機械的な当接状態に維持するためのロストモーションスプリングとを備えている。
上記のような構成を有するリフト連続可変動弁装置では、バルブスプリングやロストモーションスプリングのたわみ量は、リフト量の変更に伴って変化することとなる。より具体的には、リフト量が小さくなる側に変更されると、一般に、これらのバネのたわみ量は小さくなり、バネ力(バネ荷重)が小さくなる。その一方で、バルブのリフト動作時に可動する可動部の慣性力は、エンジン回転数が高くなるほど大きくなるが、リフト量の変化に関してはほぼ一定となるという特性を有している。従って、上記のリフト連続可変動弁装置において、バルブスプリングやロストモーションスプリングは、小リフト制御時には、大リフト制御時に比して弱いバネ力しか発生させることができないにも関わらず、当該大リフト制御時とほぼ変わらない慣性力に対処しなければならなくなる。その結果、機構の正常な運動性の確保が困難となる。
上述した特許文献1の技術では、リフト量の大きさに応じてバネ特性が2段階に変化するバルブスプリングを有している。しかしながら、この特許文献1の技術において変更されるバネ特性は、静的なものである。リフト連続可変動弁装置では、上記のように、リフト量の変更に伴ってバネのたわみ量が連続的に変化するため、特許文献1の技術では、エンジン回転速度の変化に伴ってバルブスプリングやロストモーションスプリングに要求される必要バネ力を、広範囲なリフト量の制御領域において適切に得ることができない。また、リフト連続可変動弁装置において、リフト量が小さく制御され、かつ、エンジン回転数が高い領域に対して、必要バネ力が得られるようにバネ特性を設定すると、大リフト制御時には、バネ力が過剰となり、フリクションロスが無駄に発生してしまう。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、バルブの開弁特性のうちの少なくともリフト量を連続的または多段階に変更可能な可変動弁システムにおいて、広範囲の運転領域で、機構の正常な運動性の確保と低フリクションロス化を実現し得る可変動弁システムを提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、バルブの開弁特性のうちの少なくともリフト量を変更可能な可変動弁装置であって、
メインカムとバルブの間に介在し、メインカムの回転と同期して揺動することにより当該メインカムの押圧力を前記バルブに伝達する揺動部材と、
前記揺動部材の揺動範囲を変化させる可変機構と、
前記揺動部材と前記メインカムとの機械的な連結が維持されるように、前記揺動部材を前記メインカムに向けて付勢する第1付勢手段と、
前記バルブを閉弁方向に付勢する第2付勢手段と、
前記バルブのリフト量およびまたはメインカム回転速度に応じて、前記第1付勢手段および前記第2付勢手段の少なくとも一方が発する付勢力に加えるアシスト力を制御するアシスト力制御手段と、
を備えることを特徴とする。
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1付勢手段は、金属バネであるロストモーションスプリングを備え、
前記アシスト力制御手段は、前記ロストモーションスプリングが発する付勢力をアシストすることを特徴とする。
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第2付勢手段は、金属バネであるバルブスプリングを備え、
前記アシスト力制御手段は、前記バルブスプリングが発する付勢力をアシストすることを特徴とする。
また、第4の発明は、第1または第2の発明において、前記アシスト力制御手段は、前記メインカムの押圧力が前記揺動部材に作用し、かつ、前記バルブのリフト量が生じていないゼロリフト運転領域下で、前記第1付勢手段が発する付勢力をアシストすることを特徴とする。
また、第5の発明は、第4の発明において、前記アシスト力制御手段は、前記バルブのリフト量が所定量以下に制御されている場合に、前記ゼロリフト運転領域下で、前記第1付勢手段が発する付勢力をアシストすることを特徴とする。
また、第6の発明は、第4または第5の発明において、前記アシスト力制御手段は、前記バルブのリフト量が小さく制御される領域ほど、前記ゼロリフト運転領域下でのアシスト期間を長くすることを特徴とする。
また、第7の発明は、第4または第5の発明において、前記アシスト力制御手段は、前記バルブのリフト量が所定の大リフト量より小さくなるように制御されているときに前記揺動部材に与えられる合計の付勢力が、前記バルブのリフト量が前記所定の大リフト量となるように制御されているときに第1付勢手段のみが発する付勢力となるように、前記第1付勢手段をアシストすることを特徴とする。
第1の発明によれば、バルブのリフト量およびまたはメインカム回転速度の変化に応じて適切にアシスト力を調整することにより、広範囲の運転領域で、機構の正常な運動性の確保と低フリクションロス化を実現することができる。
第2の発明によれば、金属バネであるロストモーションスプリングが発する付勢力を、バルブのリフト量およびまたはメインカム回転速度の変化に応じた適切なアシスト力でアシストすることにより、広範囲の運転領域で、機構の正常な運動性の確保と低フリクションロス化を実現することができる。
第3の発明によれば、金属バネであるバルブスプリングが発する付勢力を、バルブのリフト量およびまたはメインカム回転速度の変化に応じた適切なアシスト力でアシストすることにより、広範囲の運転領域で、機構の正常な運動性の確保と低フリクションロス化を実現することができる。
メインカムの押圧力が揺動部材に作用し、かつ、バルブのリフト量が生じていないゼロリフト運転領域下においても、揺動部材等の部材は可動しており、その可動部の慣性力は、メインカム回転速度の増加に伴って増大する。その一方で、当該ゼロリフト運転領域下で、第1付勢手段が発する付勢力は、特に小リフト制御時では小さいものとなる。第4の発明によれば、そのような慣性力の変化を考慮して、第1付勢手段の付勢力の大小に関わらず、揺動部材とメインカムとの機械的な連結を確実に維持させることができる。
第5の発明によれば、第1付勢手段の付勢力が不足しがちとなる小リフト制御域において、必要な付勢力の確保をすることができると共に、大リフト制御域での余計なアシスト力の消費を抑制することができる。
上記のゼロリフト運転領域は、リフト量の大小に応じて変化する。第6の発明によれば、リフト量の変更に伴うゼロリフト運転領域の変化に応じた適切なアシストを実現することができる。
第7の発明によれば、所定の大リフト量における第1付勢手段の付勢力を基準値として、当該所定の大リフト量よりバルブのリフト量が小さく制御される場合に、上記基準値が得られるようにアシスト力を利用することで、大リフト制御域において、第1付勢手段による無駄な付勢力が発生するのを回避することができる。
実施の形態1.
[実施の形態1のシステム構成]
図1は、本発明の実施の形態1の可変動弁システム1の全体構成を説明するための図である。本実施形態のシステムは、直列4気筒式の内燃機関に組み合わされるものであり、#1〜#4の各気筒に対応して4つの可変動弁機構10を有している。尚、図1においては、#1気筒に対応する可変動弁機構10のみを代表して図示し、その他の気筒の可変動弁機構10の図示を省略している。
可変動弁機構10は、図1に示すように、ロッカーアーム方式の機械式動弁機構である。可変動弁機構10におけるカム軸12の回転運動は、カム軸12に設けられたメインカム14によってロッカーアーム16の揺動運動に変換され、ロッカーアーム16に支持されるバルブ18(図2参照)のリフト運動に変換される。この可変動弁機構10では、メインカム14によってロッカーアーム16を直接駆動するのではなく、メインカム14とロッカーアーム16との間に可変機構20および揺動カムアーム22(揺動部材)を介在させている。
可変機構20は、揺動カムアーム22の揺動範囲を変化させることで、メインカム14の回転運動とロッカーアーム16の揺動運動との連動状態を連続的に変化させることができる機構である。このため、本実施形態の可変動弁機構10によれば、この可変機構20を可変制御することによりロッカーアーム16の揺動量や揺動タイミングを変化させて、バルブ18のリフト量やバルブタイミングを連続的に変更することができる。
可変機構20は、以下に説明するように、制御軸24、制御アーム26、および中間アーム28を主たる構成部材として構成されている。制御軸24は、カム軸12と平行に配置されている。制御軸24は、図示しないアクチュエータ(例えばモータ)によって回転駆動される。また、制御アーム26は、カム軸12に回転可能に取り付けられている。制御軸24と制御アーム26とは、双方にそれぞれ設けられたギヤ(図示省略)を介して組み合わされており、制御軸24の回転に同期して制御アーム26を回転させられるように構成されている。また、中間アーム28は、制御アーム26の揺動支点30に回動可能に取り付けられている。中間アーム28には、メインカム14と当接するカムローラ32と、このカムローラ32と同軸上に配置され、揺動カムアーム22に設けられたスライド面34と当接するスライドローラ36(図1では、カムローラ32と同軸上であって、カムローラ32の奥に配置されている)とが組み込まれている。
揺動カムアーム22は、制御軸24に回転可能に保持されている。上記のスライド面34は、揺動カムアーム22上に、メインカム14と対向するように形成されている。スライド面34は、揺動カムアーム22がスライドローラ36と接するための面であり、そのスライドローラ36が揺動カムアーム22の先端側から制御軸24の軸中心側に向かって移動するほど、メインカム14との間隔が徐々に狭まるような曲面で形成されている。また、スライド面34の反対側には、ロッカーアーム16のロッカーローラ38と接する面として、揺動カム面40が形成されている。揺動カム面40は、揺動カムアーム22の揺動中心からの距離が一定となるように形成された非作用面40aと、非作用面40aから離れた位置ほど制御軸24の軸中心からの距離が遠くなるように形成された作用面40bとで構成されている。
また、揺動カムアーム22には、ロストモーションスプリング42(第1付勢手段)を掛けるためのバネ座44が設けられている。ロストモーションスプリング42は一定のバネ特性を有する金属バネであり、ここでは、コイルバネが用いられている。このロストモーションスプリング42の付勢力は、スライド面34がスライドローラ36を付勢し、カムローラ32をメインカム14に押し当てる力として作用する。換言すると、この付勢力は、メインカム14と揺動カムアーム22との機械的接触を常に維持するための力として作用する。
上述したロストモーションスプリング42は、一端が開口端とされた円筒状に形成されたリフター46の内部に収まるように配置されており、このリフター46を介して揺動カムアーム22と当接するように組み付けられている。ロストモーションスプリング42の他端は、シリンダヘッド48に組み付けられたキャップ50によって位置決めされている。ロストモーションスプリング42の周囲には、リフター46、キャップ50、およびシリンダヘッド48によって囲まれた第1の空気室52が形成されている。リフター46とシリンダヘッド48との摺動部には、第1の空気室52からの空気漏れを防ぐためのシール材54が組み込まれている。
ロッカーアーム16の一端には、ステムエンドキャップ56を介して、バルブ18を支持するバルブシャフト58が当接している。バルブシャフト58は、一端がシリンダヘッド48に固定されたバルブスプリング60(第2付勢手段)によって、閉弁方向に、すなわち、ロッカーアーム16を押し上げる方向に付勢されている。バルブスプリング60も、一定のバネ特性を有する金属バネであり、ここでは、コイルバネが用いられている。メインカム14の押圧力が可変機構20および揺動カムアーム22を介してロッカーアーム16に伝達され、バルブスプリング60のバネ力に抗しながらロッカーアーム16からバルブシャフト58にメインカム14の押圧力が伝達されることによって、バルブ18の開閉動作が実現される。ステムエンドキャップ56とシリンダヘッド48の間には、バルブスプリング60を覆うように金属製のベローズ62が組み込まれている。すなわち、バルブスプリング60の周囲には、シリンダヘッド48とステムエンドキャップ56とベローズ62とにより囲まれた第2の空気室64が形成されている。また、ロッカーアーム16の他端は油圧ラッシュアジャスタ66によって回動可能に支持されている。
本実施形態の可変動弁システム1は、空気ポンプ68を備えている。空気ポンプ68の吐出口には、第1の空気室52および第2の空気室64にそれぞれ圧縮空気を送り込むための第1のエア供給管70および第2のエア供給管72が連通している。第1のエア供給管70の他端は、第1の空気制御弁74を介して第1のエアデリバリパイプ76に連通している。第1の空気制御弁74の残りの接続口は、大気と連通している。第1のエアデリバリパイプ76には、当該パイプ76内の圧力を検出するための第1の圧力センサ78が取り付けられている。また、第1のエアデリバリパイプ76は、キャップ50を介して、各気筒の第1の空気室52に連通している。
もう一方の第2のエア供給管72の他端は、第2の空気制御弁80を介して第2のエアデリバリパイプ82に連通している。第2の空気制御弁80の残りの接続口は、大気と連通しており、第2のエアデリバリパイプ82には、第2の圧力センサ84が取り付けられている。また、第2のエアデリバリパイプ82は、各気筒の第2の空気室64に連通している。
本実施形態のシステムは、ECU86を備えている。ECU86には、上述した第1および第2の圧力センサ78、84等の各種センサの出力が供給されている。また、ECU86には、制御軸24を駆動するための図示しないアクチュエータが接続されている。このため、ECU86は、そのアクチュエータを制御することによって制御軸24の回転角度を任意の角度に調整することで、可変機構20の回転角度を任意に変更させることができる。また、ECU86には、上述した空気ポンプ68、空気制御弁74および80が接続されている。このため、ECU86は、上記圧力センサ78、84の出力に基づいて上記空気制御弁74、80を適当に制御しつつ、空気ポンプ68を制御することで、第1の空気室52および第2の空気室64内の圧力を所望の圧力に調整することができる。
以上の構成によれば、ロストモーションスプリング42のバネ力やバルブスプリング60が発するバネ力を、空気バネの原理によりアシストすることが可能となる。上述した空気ポンプ68、空気制御弁74および80、並びに、エアデリバリパイプ76および82等を主たる要素とする構成を、以下、「アシスト力制御手段」と称する。尚、空気バネのみを付勢力発生手段とすると、エンジン始動時において空気圧が発生するまでに、動弁機構の良好な作動安定性を確保することができなくなるが、本実施形態の構成によれば、基本的に金属バネによってエンジンの状態に関係なしに付勢力を担わせつつ、必要に応じて、空気バネを利用した高自由度なバネ特性を得ることができる。
次に、図2を参照して、図1に示す可変動弁機構10の動作を説明する。
図2(A)および図2(B)は、可変動弁機構10がバルブ18に対して小さなリフトを与えるように動作している様子を示しており、図2(A)は閉弁状態を、図2(B)はバルブ18が最大リフト位置に達した状態を、それぞれ示している。また、図2(C)および図2(D)は、可変動弁機構10がバルブ18に対して大きなリフトを与えるように動作している様子を示しており、図2(C)は閉弁状態を、図2(D)はバルブ18が最大リフト位置に達した状態を、それぞれ示している。尚、図2においては、制御アーム26の図示を省略している。
(1)可変動弁機構のリフト動作
先ず、図2(A)および図2(B)を参照して、可変動弁機構10のリフト動作について説明する。
図2(A)に示す状態は、メインカム14の押圧力がカムローラ32に作用しておらず、揺動カム面40とロッカーローラ38との接触点X(以下、「ローラ接触点X」と称する)が、ロストモーションスプリング42の付勢力によって、非作用面40a上の所定位置に維持されている状態を示している。この状態では、揺動カムアーム22は、バルブスプリング60から揺動カムアーム22を回転させる力を受けていない。本実施形態の可変動弁機構10では、ローラ接触点Xが非作用面40aに位置しているときに、バルブ18が閉弁状態となるように各構成要素の位置関係が設定されている。
上記の状態において、メインカム14の回転に伴ってカムノーズがカムローラ42を押圧すると、その力はスライドローラ36を介してスライド面34に伝達され、揺動カムアーム22には、制御軸24を中心とする図2(B)における右回り方向の回転が生ずる。この際、ローラ接触点Xが非作用面40aである間は、ロッカーアーム16にメインカム14の押圧力が伝達されることはないが、揺動カムアーム22が更に回転することにより、ローラ接触点Xが作用面40bにまでおよぶと、ロッカーアーム16が押し下げられ、バルブ18に開弁方向の動きが与えられる。
図2(B)に示す状態は、カムノーズの頂部がカムローラ32を押圧した状態を示している。この状態において揺動カムアーム22の回転量が最大となる。ロストモーションスプリング42に作用するバネ荷重は、図2(A)に示す閉弁状態を基準とした場合のバネ荷重に対して、たわみ量Laに相当する分だけ増大する。ロッカーアーム16の押し下げ量、すなわち、バルブスプリング60のたわみ量Vaも、この状態において最大となり、ローラ接触点Xは、揺動カムアーム22の最も先端側に位置することとなる。一方、与えられたメインカム14の押圧力が減少に転ずると、揺動カムアーム22がそれまでとは反対方向に回転することとなる。その結果、ローラ接触点Xが作用面40bから非作用面40aに向かって変化することで、ロッカーアーム16が押し戻され、その後、バルブ18が閉弁することとなる。可変動弁機構10は、以上説明したように、メインカム14の押圧力を、カムローラ32およびスライドローラ36を介してスライド面34に伝達することでバルブ18に対してリフトを与えることができる。
(2)可変動弁機構の作用角およびリフト量の変更動作
図2(C)に示す大リフト状態は、図2(A)に示す小リフト状態に比して、制御軸24を図2(C)における左回り方向により大きく回転させた状態を示している。制御軸24を図2(A)における左回り方向に回転させると、制御アーム26は、ギヤを介して、図2(C)における右回り方向に回転し、揺動支点30に支持されたスライドローラ36は、スライド面34およびメインカム14との接触を維持しながら制御軸24に近づく方向に、言い換えれば、カム軸12の回転方向に移動する。
揺動カムアーム22は、常にロストモーションスプリング42によりスライドローラ36に向けて付勢されているため、スライドローラ36とスライド面34との接触点Y(以下、「ローラ接触点Y」と称する)が変化すれば、その変化に追従して自己の回転位置も変化させられる。図2(C)に示す閉弁状態においては、スライドローラ36が制御軸24に近づく方向に移動することで、揺動カムアーム22は、ローラ接触点Xの初期位置(メインカム14の押圧力が作用していない状態におけるローラ接触点X)がより作用面40bに近づく方向に回転する。そして、その揺動カムアーム22の回転位置の変化に伴って、ロストモーションスプリング42には、図2(A)に示す閉弁状態を基準とするたわみ量Lbに相当するたわみが生ずる。また、ローラ接触点Xの初期位置が作用面40bにより近い位置にあると、揺動カムアーム22の揺動角度幅が同一であるとした場合に、ローラ接触点Xの最終位置(カムノーズの頂部がカムローラ32と接触した状態におけるローラ接触点X)が揺動カムアーム22の先端側までより大きく移動することとなる。
更に、スライドローラ36が制御軸24に近づく方向に移動すると、揺動カムアーム22の揺動中心(制御軸24の軸中心)からローラ接触点Yまでの距離が短くなる。メインカム14の押圧力によってスライドローラ36を介してスライド面34に変位が与えられた場合に、上記の距離が短くなるほど、揺動カムアーム22の揺動角度幅が大きくなる。揺動カムアーム22の揺動角度幅が大きくなると、ローラ接触点Xの初期位置が同一であるとした場合に、ローラ接触点Xの最終位置が揺動カムアーム22の先端側までより大きく移動することとなる。すなわち、図2(D)に示すカムノーズの頂部がカムローラ32を押圧した状態において、揺動カムアーム22の回転量が最大となり、ロストモーションスプリング42には、図2(A)に示す閉弁状態を基準とするたわみ量Lcに相当するたわみが生ずる。
既述した通り、本実施形態の揺動カムアーム22の作用面40bは、非作用面40aから離れた位置ほど制御軸24の軸中心からの距離が遠くなるように形成されている。このため、ローラ接触点Xの最終位置が揺動カムアーム22の先端側までより大きく移動することで、図2(D)に示すように、バルブ18の押し下げ量、およびその押し下げ期間、すなわち、バルブ18のリフト量および作用角が増大する。この図2(D)に示す状態におけるバルブスプリング60のたわみ量をVcとする。以上のように、本実施形態の可変動弁機構10によれば、制御軸24を回転駆動して制御アーム26の回転角度を変更することで、揺動カムアーム22の揺動範囲が変更され、その結果として、バルブ18の作用角およびリフト量を連続的に変更することができる。
図3は、図1に示すロストモーションスプリング42のバネ特性を説明するための図であり、より具体的には、ロストモーションスプリング42が発するバネ力(バネ荷重)とたわみ量との関係を示している。そのバネ力は、図3に示すように、たわみ量に比例する。従って、ロストモーションスプリング42に作用する最大バネ荷重(最大リフト位置におけるバネ荷重)は、小リフト側に制御されるほど、たわみ量が小さくなることで小さくなる。また、小リフト制御時におけるロストモーションスプリング42に作用する初期バネ荷重(閉弁状態におけるバネ荷重)は、大リフト制御時に比してたわみ量Lb分だけ小さくなるという特性を有しているため、小リフト制御時における最大バネ荷重は、このたわみ量Lb分に相当するバネ力だけ小さくなってしまう(不足してしまう)。
図4は、図1に示すバルブスプリング60のバネ特性を説明するための図であり、バルブスプリング60が発するバネ力(バネ荷重)とたわみ量との関係を示している。バルブスプリング60に作用する最大荷重は、バルブのリフト量に比例し、小リフト側に制御されるほど、たわみ量が小さくなることで小さくなってしまう。しかし、バルブスプリング60の場合は、上記のロストモーションスプリング42の場合と異なり、閉弁時におけるバネ力(初期バネ荷重)がバルブ18のリフト量に応じて変化することはない。
ロストモーションスプリング42またはバルブスプリング60による付勢力を受ける可動部の慣性力Fe(N)は、次の(1)式の関係に従って算出することができる。
Fe=We・A・(N/(60・2)・360)2 (1)
但し、上記(1)式において、We(kg)は当該可動部の慣性質量、A(mm/deg2)はバルブリフト加速度、N(rev/min)はエンジン回転速度である。
上記(1)式において、慣性質量Weはバルブ18のリフト量に関わらずにほぼ一定である。上記(1)式によれば、リフト量が小さく制御されるに従ってバルブリフト加速度Aを下げていくこととすれば、小リフト量に制御される領域での慣性力Feを小さくすることができる。しかしながら、リフト量の大小に関係なくバルブ18の開口面積を十分に確保したいという要求があるため、バルブリフト加速度Aをリフト量に応じてあまり下げることはできず、結果的にはリフト量の大小に依らずにほぼ一定とされる。従って、上記慣性力Feは、エンジン回転速度N(メインカム回転速度)の増加に伴って増大する特性となる。
上述したロストモーションスプリング42の特性によれば、小リフト制御域では、慣性力Feに対処するための必要バネ力が大リフト制御域に比して不足する傾向となる。どのリフト量域であっても、ロストモーションスプリング42に対応する可動部の揺動量はほぼ同じであるため、慣性力Feはリフト量に依らずに一定となる。従って、小リフト制御域では、エンジン回転速度の増加に伴って増大する慣性力Feに対応できず、機構の運動性が悪化する。その一方で、そのような小リフトかつ高回転域で必要バネ力を十分に確保するバネ特性とすると、ロストモーションスプリング42のバネ定数は静的であるため、大リフト制御域でのバネ力が過剰となり、フリクションロスが無駄に発生してしまう。
また、上述したバルブスプリング60の特性によれば、ロストモーションスプリング42の場合と同様に、小リフト制御域では、必要バネ力が不足する傾向となる。バルブスプリング60に対応する可動部の慣性質量はリフト量に応じて変化しないため、慣性力Feはリフト量に応じて大きく変化しない。従って、小リフト制御域では、エンジン回転速度の増加に伴って増大する慣性力Feに対応できず、機構の運動性が悪化する。また、ロストモーションスプリング42の場合と同様に、大リフト制御域での無駄なフリクションロスが発生してしまう。
そこで、本実施形態のシステムでは、エンジン回転速度Nの高低に依らずに広範囲な運転領域で、機構の正常な運動性の確保と低フリクションロス化を実現すべく、以下の図5に示す手法を用いて、上記アシスト力制御手段によって、ロストモーションスプリング42やバルブスプリング60のバネ力を最適化させている。図5は、本発明のアシスト力制御手段によって実現されるバネ特性を説明するための図であり、より具体的には、ロストモーションスプリング42とバルブ18のリフト量との関係を示している。尚、図5では、ロストモーションスプリング42を例に説明しているが、バルブスプリング60の場合の手法も同様である。
図5に示す手法は、エンジン回転速度Nに応じたバネ特性が得られるように、第1の空気室52に一定の圧力を供給する手法である。この手法によれば、アシスト力制御手段によるバネ力が加算された後のバネ特性(図5中に実線で示す直線)は、金属バネであるロストモーションスプリング42の静的なバネ特性(図5中に一点鎖線で示す直線)に対して、エンジン回転速度Nに応じて付加されたアシスト制御手段のバネ力が加算された値を示すことになる。このため、エンジン回転速度の増加に伴って増大する慣性力Feに対応する必要バネ力を、第1の空気室52の圧力を制御するという比較的容易な手法で得ることができる。また、上記手法は、エンジン回転速度Nのみに応じてバネ特性を変化させるものを示しているが、これに限らず、エンジン回転速度Nとリフト量とに基づいて、バネ特性を変化させてもよい。
図6は、本実施の形態1において、上記図5の手法を実現するために、ECU86が実行するルーチンのフローチャートである。尚、本ルーチンでは、ロストモーションスプリング42側の構成についての制御を代表して説明するものとし、バルブスプリング60側の構成についても同様の制御により実現可能であるため、その詳細な説明を省略する。
図6に示すルーチンでは、先ず、現在の慣性力Feが算出される(ステップ100)。可動部の慣性質量Weやバルブリフト加速度Aは、設計により決まった値であり、ECU84は、それらの値を記憶している。このため、慣性力Feは、上述した(1)式に従って、エンジン回転速度Nをリアルタイムに取得することにより算出することができる。
次に、上記ステップ100において算出された慣性力Feに応じた必要バネ力を得るための必要空気圧P0が算出される(ステップ102)。より具体的には、算出される慣性力Feの値が大きいほど、必要空気圧P0がより大きくなるように算出される。次いで、第1の圧力センサ78に基づいて、空気室圧力(第1のデリバリパイプ76の内圧)Pが必要空気圧P0より低いか否かが判別される(ステップ104)。
上記ステップ104において、空気室圧力Pが必要空気圧P0より低い場合には、空気室を加圧すべく、空気制御弁74がON状態(空気ポンプ68と第1のデリバリパイプ76とが連通された状態)に制御される(ステップ106)。次いで、空気室圧力P≧P0が成立するか否かが判別され(ステップ108)、その成立が認められた場合には、空気制御弁74がOFF(空気室圧力Pを保持)とされる(ステップ110)。
一方、上記ステップ104において、空気室圧力P<上記空気圧P0が不成立であると判定された場合には、空気室を減圧すべく、空気制御弁74が大気開放可能状態に制御される(ステップ112)。次いで、空気室圧力P≦P0が成立するか否かが判別され(ステップ114)、その成立が認められた場合には、空気制御弁74の大気開放可能状態がOFF(空気室圧力Pを保持)とされる(ステップ116)。
以上説明した通り、図6に示すルーチンによれば、エンジン回転速度Nの増加に伴う慣性力Feに対応した一定量のアシスト力を、アシスト力制御手段によってロストモーションスプリング42が発するバネ力に加算して発生させることができる。このため、本実施形態のシステムによれば、ロストモーションスプリング42のバネ定数の設定を大きくすることなく、すなわち、大リフト制御域で無駄な過剰バネ力を発生させることなく、小リフトかつ高回転域での必要バネ力を確保できるバネ特性を得ることができる。また、リフト量に関わらずに第1の空気室52に一定圧力を加える手法であるため、エンジン回転速度Nに応じた不足バネ力を比較的簡便に得ることができる。
ところで、上述した実施の形態1においては、空気バネの原理を利用したアシスト力制御手段を用いた例を説明したが、本発明におけるアシスト力制御手段を実現する構成はこれに限定されるものではなく、例えば、以下の図7乃至図9を参照して説明する油圧式のアシスト力制御手段であってもよい。
図7は、ロストモーションスプリングが発するバネ力をアシストするアシスト力制御手段の変形例の構成を説明するための図である。この変形例では、図7に示すように、ロストモーションスプリング90は、ボディ92の内部に設置されている。そして、ロストモーションスプリング90の一端がリフター94を介して揺動カムアーム22(図1参照)に当接し、かつ、その他端がピストン96に当接するように構成されている。ボディ92の内部は、ピストン96によって2つの空間に分割されており、ロストモーションスプリング90が設けられていない側の空間は、第1の油圧室98として機能している。第1の油圧室98内には、ピストン96の変位を計測するための第1のギャップセンサ100が組み込まれている。
第1の油圧室98には、第1の油路102が連通している。第1の油路102には、その途中に油圧コントロールバルブ104が設けられており、また、その他端は、油圧ポンプ106に接続されている。このような構成によれば、ECU108が油圧コントロールバルブ104を適当に調整することで、第1の油圧室98内の油圧を所望の圧力に制御することができる。図7(B)の状態は、図7(A)の状態に比して高い油圧が供給されたことにより、図7(A)の状態に対してピストン96にΔH分の変位量が生じた状態を示している。
図8は、ロストモーションスプリング90が発するバネ力とたわみ量の関係を示している。以上の構成によれば、第1の油圧室98内の油圧を制御して、第1のギャップセンサ100により検出されるピストン96の変位ΔHを可変とすることにより、ロストモーションスプリング90が発するバネ力が可変するようにアシストすることができる。具体的には、上述した図6に類似するルーチンにおいて、空気圧の制御に代えて、慣性力Feに応じて変位ΔHを可変に制御することで、所望の必要バネ力を得ることができる。
図9は、バルブスプリングが発するバネ力をアシストするアシスト力制御手段の変形例の構成を説明するための図である。この変形例では、図9に示すように、バルブスプリング110の一端は、シリンダヘッド112に直接固定されるのではなく、ピストン114に当接するように構成されている。そして、ピストン114とシリンダヘッド112によって囲まれた空間が形成されており、この空間は第2の油圧室116として機能している。第2の油圧室116は、その途中に第2の油圧コントロールバルブ118が設けられた第2の油路120を介して、油圧ポンプ106に接続されている。以上の構成によれば、上記図7に示す構成と同様に、第2のギャップセンサ122により検出されるピストン114の変位ΔHに基づいて、バルブスプリング110が発するバネ力が可変するようにアシストすることができる。
実施の形態2.
次に、図10乃至図14を参照して、本発明の実施の形態2について説明する。
本実施形態のシステムは、図1に示すハードウェア構成を用いて、ECU86に図6のルーチンに代えて、後述する図14のルーチンを実行させることにより実現されるものである。
上述した実施の形態1においては、エンジン回転速度Nに応じたバネ特性が得られるように、第1の空気室52等に一定の圧力を供給することとしているのに対し、本実施形態のシステムでは、エンジン回転速度Nに加え、制御軸24により変更されるバルブ18のリフト量に応じてアシスト力を変化させることにより、余計なアシスト力の発生を抑制させている点に特徴を有している。また、リフト動作中の各区間でアシスト力を変化させている点に特徴を有している。以下、バルブスプリング60およびロストモーションスプリング42のそれぞれについてのアシスト力の制御を具体的に説明する。
図10は、本実施形態におけるバルブスプリング60についてのアシスト手法について説明するための図である。より具体的には、図10(A)は、バルブ18のリフトカーブを、図10(B)は、第2の空気制御弁80の制御状態を表す波形を、図10(C)は、第2の空気室64内の圧力波形を、それぞれ示している。
本実施形態では、図10に示すように、リフト動作の全区間に対してアシスト力を加えるのではなく、最大リフト位置でアシスト力が最大となるように制御している。具体的には、第2の空気室64内の圧力上昇の遅れを見込んで、第2の空気制御弁80を所定時間だけ早めにONとしている。このような制御によれば、上述した実施の形態1の手法と比較して、リフト動作中以外に余計なアシスト力が発生するのを抑制することができる。また、本実施形態では、バルブ18のリフト量に応じたバネ荷重の不足分を補うように、リフト量が小さく制御されているときほど、アシスト力が大きくなるように制御する。このような制御によれば、リフト量に応じた必要バネ力の不足分を補うことができる。
次に、ロストモーションスプリング42についてのアシスト手法について説明する。
ロストモーションスプリング42の場合も、バルブ18のリフト動作が開始した後については、基本的に上記のバルブスプリング60と同様の制御を行う。そのうえで、ロストモーションスプリング42の場合は、以下の図11および図12を参照して説明する相違点を有するため、上記の制御に加えて新たな制御を行うこととしている。
図11は、バルブ18のリフト量に応じた揺動カムアーム22の空振り区間θの変化を説明するための図である。ここで、揺動カムアーム22の揺動カム面40における非作用面40aと作用面40bとの境界点を、「リフト開始点Z」と称する。そして、リフト開始点Zと揺動カムアーム22の回転中心とを結ぶ直線と、ローラ接触点Xと揺動カムアーム22の回転中心とを結ぶ直線とのなす角に対応する区間を「空振り区間θ(ゼロリフト運転領域)」と定義する。メインカム14の回転に伴って、揺動カムアーム22が当該空振り区間θを回転する間は、バルブ18にはリフトが生じない。
図11(A)は、小リフト制御時における閉弁状態を表している。この状態における空振り区間をθ1とする。図11(B)に示す大リフト制御時における閉弁状態では、制御軸24によって揺動カムアーム22の回転角度が変更されることで、空振り区間θは、θ1からθ2に減少する。図12のリフトカーブは、小リフト動作時の空振り区間θ1と大リフト動作時の空振り区間θ2との関係を、メインカム14のリフトカーブを基準として整理して表したものである。揺動カムアーム22の揺動位置が空振り区間θの範囲内にある場合であっても、中間アーム28および揺動カムアーム22はメインカム14の押圧力を受けて可動しているため、本来的には、リフト量の大小に関わらずに一定のロストモーションスプリング力で揺動カムアーム22を付勢する必要がある。
しかしながら、既述したように、ロストモーションスプリング42に作用するバネ荷重は、リフト量が小さく制御されるほど小さくなるため、当該スプリング42が発するバネ力は小リフトに制御されるほど小さくなる。更に、揺動カムアーム22の揺動位置が空振り区間θにある場合には、バルブスプリング60の反力がロッカーアーム16を介して揺動カムアーム22に作用しないため、ロストモーションスプリング力のみで、メインカム14と揺動カムアーム22との機械的接触を維持しなければならなくなる。このような状況下で、バネ力が不足する小リフト制御時ほど、エンジン回転速度Nの増大に伴う慣性力Feに対応することが困難となる。
そこで、本実施形態では、図13に示すように、リフト動作中にアシストを行う(図13中の符号「*1」を付して示す動作)と共に、リフト動作開始前の空振り区間θおよびリフト動作開始後の空振り区間θについてもアシストを行う(図13中の符号「*2」を付して示す動作)こととしている。ただし、当該空振り区間θでのアシストは、バルブ18のリフト量が所定量以下に制御されているときにのみ行うこととしている。このような制御によれば、バネ力が不足しがちとなる小リフト制御域において、必要なバネ力の確保をすることができると共に、大リフト制御域での余計なアシスト力の消費を抑制することができる。
また、本実施形態では、リフト量が小さく制御されるときほど、アシスト力を発生させる期間を長くすることとしている。このような制御によれば、リフト量の変更に伴う空振り区間θの変化に応じた適切なアシストを実現することができる。
図14は、本実施の形態1において、上記図10および図13の手法に対応したアシスト力を得るために、ECU86が実行するルーチンのフローチャートである。尚、本ルーチンは、図10(B)または図13(B)における空気制御弁の所定のONタイミングが到来した時点で実行されるものとする。また、本ルーチンでは、ロストモーションスプリング42側の構成についての制御を代表して説明するものとし、バルブスプリング60側の構成についても同様の制御により実現可能であるため、その詳細な説明を省略する。また、図14において、実施の形態1における図6に示すステップと同一のステップについては、同一の符号を付してその説明を省略または簡略する。
図14に示すルーチンでは、先ず、現在の慣性力Feが算出された後(ステップ100)、バルブ18のリフト量に基づいて、ロストモーションスプリング42が発するバネ力が算出される(ステップ200)。ECU86は、リフト量と、当該リフト量に制御された際の最大リフト位置でロストモーションスプリング42が発するバネ力との関係を記憶したマップを備えており、当該マップによって上記バネ力が算出される。
次に、上記バネ力から現在の慣性力Feを減算した値として、不足バネ力が算出され、当該不足バネ力がゼロより小さいか否かが判別される(ステップ202)。その結果、当該不足バネ力がゼロより小さいと判定された場合、すなわち、ロストモーションスプリング42が発するバネ力のみでは現在の慣性力Feに対応できないと判断された場合には、アシスト力制御手段によって、必要バネ力(上記不足バネ力)を得るために必要な空気圧P1が算出される(ステップ204)。
次に、空気室圧力Pが必要空気圧P1より低いか否かが判別される(ステップ206)。その結果、空気室圧力Pが必要空気圧P1より低い場合には、空気室を加圧すべく、空気制御弁74がON状態に制御される(ステップ208)。次いで、空気室圧力P≧必要空気圧P1が成立するか否かが判別され(ステップ210)、その成立が認められた場合には、空気制御弁74がOFFとされる(ステップ212)。
一方、上記ステップ206において、空気室圧力Pが必要空気圧P1以上であると判定された場合には、空気室を減圧すべく、空気制御弁74が大気開放可能状態に制御される(ステップ214)。次いで、空気室圧力P≦必要空気圧P1が成立するか否かが判別され(ステップ216)、その成立が認められた場合には、空気制御弁74の大気開放可能状態がOFFとされる(ステップ218)。
以上説明した図14に示すルーチンによれば、エンジン回転速度Nの増加に伴う慣性力Feに対応したアシスト力であって、バルブ18のリフト量に応じたバネ荷重の不足分を補うアシスト力を、アシスト力制御手段によってロストモーションスプリング42が発するバネ力に加算して発生させることができる。
ところで、上述した実施の形態2においては、リフト量が小さく制御されるときほど、アシスト力を発生させる期間を長くすることとしているが、本発明のアシスト力制御手段によって揺動カムアーム22の空振り区間θにアシストする手法は、これに限定されるものではない。例えば、バルブ18のリフト量が所定の大リフト量であるときのロストモーションスプリング42が発するバネ力を、機構の機械的接触の維持のために必要なバネ力(基準値)に設定し、バルブ18のリフト量が当該所定の大リフト量より小さいときに、その基準値を満たすような一定の必要バネ力が得られるように、アシスト力制御手段によってアシストを行うこととしてもよい。このような手法によれば、大リフト制御域での無駄なバネ力の発生を回避することができる。
また、アシスト力制御手段によってロストモーションスプリング42が発するバネ力をアシストする手法は、上記の手法に限定されるものではなく、例えば、常用域ではロストモーションスプリング力のみに揺動カムアーム22の付勢を担わせることとし、所定の小リフト制御域において、エンジン回転速度Nが所定の回転速度を上回ったときにのみアシスト力制御手段によるアシストを行うこととしてもよい。
本発明の実施の形態1の可変動弁システムの全体構成を説明するための図である。 図1に示す可変動弁機構が動作を行う様子を示す図である。 図1に示すロストモーションスプリングのバネ特性を説明するための図である。 図1に示すバルブスプリングのバネ特性を説明するための図である。 本発明のアシスト力制御手段によって実現されるバネ特性を説明するための図である。 本発明の実施の形態1において実行されるルーチンのフローチャートである。 ロストモーションスプリングが発するバネ力をアシストするアシスト力制御手段の変形例の構成を説明するための図である。 図7に示すロストモーションスプリングが発するバネ力とたわみ量の関係を示している。 バルブスプリングが発するバネ力をアシストするアシスト力制御手段の変形例の構成を説明するための図である。 本発明の実施の形態2におけるバルブスプリングについてのアシスト手法について説明するための図である。 バルブのリフト量に応じた揺動カムアームの空振り区間θの変化を説明するための図である。 バルブのリフト量に応じた揺動カムアームの空振り区間θの変化を説明するためのバルブのリフトカーブである。 本発明の実施の形態2におけるロストモーションスプリングについてのアシスト手法について説明するための図である。 本発明の実施の形態2において実行されるルーチンのフローチャートである。
符号の説明
1 可変動弁システム
10 可変動弁機構
14 メインカム
18 バルブ
20 可変機構
22 揺動カムアーム
24 制御軸
32 カムローラ
36 スライドローラ
42、90 ロストモーションスプリング
52 第1の空気室
60、110 バルブスプリング
64 第2の空気室
68 空気ポンプ
86、108 ECU(Electronic Control Unit)

Claims (7)

  1. バルブの開弁特性のうちの少なくともリフト量を連続的または多段階に変更可能な可変動弁システムであって、
    メインカムとバルブの間に介在し、メインカムの回転と同期して揺動することにより当該メインカムの押圧力を前記バルブに伝達する揺動部材と、
    前記揺動部材の揺動範囲を変化させる可変機構と、
    前記揺動部材と前記メインカムとの機械的な連結が維持されるように、前記揺動部材を前記メインカムに向けて付勢する第1付勢手段と、
    前記バルブを閉弁方向に付勢する第2付勢手段と、
    前記バルブのリフト量およびまたはメインカム回転速度に応じて、前記第1付勢手段および前記第2付勢手段の少なくとも一方が発する付勢力に加えるアシスト力を制御するアシスト力制御手段と、
    を備えることを特徴とする可変動弁システム。
  2. 前記第1付勢手段は、金属バネであるロストモーションスプリングを備え、
    前記アシスト力制御手段は、前記ロストモーションスプリングが発する付勢力をアシストすることを特徴とする請求項1記載の可変動弁システム。
  3. 前記第2付勢手段は、金属バネであるバルブスプリングを備え、
    前記アシスト力制御手段は、前記バルブスプリングが発する付勢力をアシストすることを特徴とする請求項1または2記載の可変動弁システム。
  4. 前記アシスト力制御手段は、前記メインカムの押圧力が前記揺動部材に作用し、かつ、前記バルブのリフト量が生じていないゼロリフト運転領域下で、前記第1付勢手段が発する付勢力をアシストすることを特徴とする請求項1または2記載の可変動弁システム。
  5. 前記アシスト力制御手段は、前記バルブのリフト量が所定量以下に制御されている場合に、前記ゼロリフト運転領域下で、前記第1付勢手段が発する付勢力をアシストすることを特徴とする請求項4記載の可変動弁システム。
  6. 前記アシスト力制御手段は、前記バルブのリフト量が小さく制御される領域ほど、前記ゼロリフト運転領域下でのアシスト期間を長くすることを特徴とする請求項4または5記載の可変動弁システム。
  7. 前記アシスト力制御手段は、前記バルブのリフト量が所定の大リフト量より小さくなるように制御されているときに前記揺動部材に与えられる合計の付勢力が、前記バルブのリフト量が前記所定の大リフト量となるように制御されているときに第1付勢手段のみが発する付勢力となるように、前記第1付勢手段をアシストすることを特徴とする請求項4または5記載の可変動弁システム。
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