JP2006283159A - 成形体形成用組成物、脱脂体および焼結体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の成形体形成用組成物(組成物10)は、主として無機材料で構成された粉末1と、オゾンにより分解可能なポリ乳酸系樹脂3を含有する結合材2とを含むものである。オゾンにより分解可能なポリ乳酸系樹脂3としては、50〜180℃程度の温度で分解するものが好ましく、具体的には、乳酸モノポリマーを主成分とするものが好ましい。また、結合材2には、さらに、ポリ乳酸系樹脂3に遅れて分解する第2の樹脂4を含むものが好ましく、その分解温度は180〜600℃程度であるのが好ましい。
【選択図】図1
Description
ところで、例えば、射出成形法に供される原料粉末には、その射出成形時の流動性を向上させる目的等で結合材を多く含有している。この結合材を除去するためには、長時間の加熱が必要となり、生産効率が低下したり、加熱処理中に脱脂体が変形する等の問題がある。
かかる問題点を解決するために、金属材料粉末と、酸含有雰囲気下での処理によって除去されるポリオキシメチレン樹脂を含有する結合材とを含む金属脱脂体(成形体)を製造するための組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、一般に、酸は劇物であるため、人体にとって有害であり、その取り扱いに際しては、厳重な保護具を必要とするなど大変な手間がかかる。
また、酸は、金属溶解性が高いため設備を劣化させる上、大気中に放出されると大気汚染の原因になるため、これらを防止するために多大なコストが必要となる。
本発明の成形体形成用組成物は、主として無機材料で構成された粉末と、オゾンにより分解可能なポリ乳酸系樹脂を含有する結合材とを含む成形体形成用組成物であって、
当該成形体形成用組成物を成形してなる成形体にオゾン含有雰囲気中で脱脂処理を施すことにより、前記ポリ乳酸系樹脂の少なくとも一部を分解・除去して脱脂体を得るのに用いられることを特徴とする。
これにより、安価かつ安全に脱脂体を得ることができる。
これにより、成形性(成形し易さ)よく成形体を形成することができるとともに、成形体の密度をより高いものとし、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を小さくすることができるため、脱脂体および焼結体の寸法精度を向上させることができる。
これにより、効率よく確実にポリ乳酸系樹脂の分解・除去を行うことができる。また、成形体の保形性が低下するのを防止することができる。
本発明の成形体形成用組成物では、前記ポリ乳酸系樹脂は、乳酸のホモポリマーを主成分とするものであることが好ましい。
乳酸ホモポリマーは、その分解性が特に高く、第1の脱脂工程において、より確実に脱脂を行うことができる。したがって、脱脂工程トータルに要する時間をより短縮することができる。
これにより、ポリ乳酸系樹脂の融点および粘度が最適なものとなり、成形体の形状の安定性(保形性)向上を図ることができる。
本発明の成形体形成用組成物では、前記結合材中の前記ポリ乳酸系樹脂の含有率は、20wt%以上であることが好ましい。
これにより、ポリ乳酸系樹脂が分解・除去される効果がより確実に得られ、結合材全体の脱脂をより促進することができる。
これにより、成形体中のポリ乳酸系樹脂と第2の樹脂は、脱脂工程のそれぞれ異なる温度領域で分解される。すなわち、脱脂工程を第1の脱脂工程と、その後に行われる第2の脱脂工程とに分けることにより、成形体中のポリ乳酸系樹脂と第2の樹脂とを選択的に分解・除去(脱脂)することができる。その結果、成形体の脱脂の進度を制御することができ、保形性、すなわち寸法精度に優れた脱脂体を容易かつ確実に得ることができる。
これにより、効率よく確実に結合材の分解・除去を行うことができる。
本発明の成形体形成用組成物では、前記第2の樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニル系樹脂およびアクリル系樹脂のうちの少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。
これらの材料は、脱脂体中での結合強度が高く、脱脂体が変形するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、流動性が高く、加熱により分解し易いことから、容易に脱脂することができる。その結果、寸法精度に優れた脱脂体をより確実に得ることができる。
これにより、結合材に添加剤が有する種々の機能を発揮させることができる。
本発明の成形体形成用組成物では、前記添加剤は、前記粉末の分散性を向上させるための分散剤であることが好ましい。
これにより、粉末と、ポリ乳酸系樹脂および第2の樹脂とがより均一に分散し、得られる脱脂体および焼結体は、その特性にバラツキが少なく、より均一なものとなる。
高級脂肪酸は、粉末の分散性および潤滑性に特に優れるものである。
本発明の成形体形成用組成物では、前記高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30のものであることが好ましい。
これにより、成形体形成用組成物は、成形性の低下を防止しつつ、保形性に優れたものとなる。また、高級脂肪酸は、比較的低温でも容易に分解し得るものとなる。
これにより、優れた特性を有する脱脂体が得られる。
本発明の脱脂体では、前記成形は、射出成形法または押出成形法により行われることが好ましい。
射出成形法は、成形金型の選択により、複雑で微細な形状の脱脂体を形成し得る成形体を容易に形成することができる。
また、押出成形法は、成形金型の選択により、所望の押出面形状を有する柱状または板状の脱脂体を形成し得る成形体を、特に容易かつ安価に形成することができる。
本発明の焼結体は、本発明の脱脂体を焼結してなることを特徴とする。
これにより、優れた特性を有する焼結体が得られる。
図1は、本実施形態で用いる成形体形成用組成物を模式的に示す図、図2は、図1に示す成形体形成用組成物を用いて脱脂体および焼結体を製造する方法の実施形態を示す工程図である。
まず、脱脂体の形成、または、脱脂体の前段階である成形体の形成に用いる組成物(成形体形成用組成物)10について説明する。
組成物10は、主として無機材料で構成された粉末1と、結合材2とを含むものである。さらに、本実施形態では、結合材2は、第2の樹脂4および分散剤(添加剤)5を含んでなるものである。
粉末1は、主として無機材料で構成されたものである。
この無機材料としては、特に限定されないが、例えば、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属材料、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、イットリア、フォルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ムライト、コージライト、フェライト、サイアロン、酸化セリウムのような酸化物系セラミックス材料、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのような非酸化物系セラミックス材料、グラファイト、ナノカーボン(カーボンナノチューブ、フラーレン等)の炭素系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
その具体例としては、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS329J1、SUS410、SUS430、SUS440、SUS630のようなステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼等に代表されるFe系合金、TiまたはTi系合金、WまたはW系合金、Co系超硬合金、Ni系サーメット等が挙げられる。
粉末1の平均粒径は、特に限定されないが、0.3〜100μm程度であるのが好ましく、0.5〜50μm程度であるのがより好ましい。粉末1の平均粒径が前記範囲内の値であることにより、優れた成形性(成形のし易さ)で脱脂体(成形体)を製造することができる。また、脱脂体の密度をより高いものとすることができ、脱脂体の機械的強度、寸法精度等の特性をより優れたものとすることができる。
このような粉末1としては、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、粉末1が金属材料で構成されている場合、水アトマイズ法等の液体アトマイズ法(例えば、高速回転水流アトマイズ法、回転液アトマイズ法等)、ガスアトマイズ法等の各種アトマイズ法や、粉砕法、カルボニル法、還元等の化学的方法等で得られたものを用いることができる。
結合材2は、後述する成形体を得る工程における、組成物10の成形性(成形のし易さ)、脱脂体の形状の安定性(保形性)に大きく寄与する成分である。
本発明では、結合材2は、オゾンにより分解可能なポリ乳酸系樹脂3を含有し、さらに、本実施形態では、ポリ乳酸系樹脂3に遅れて分解する第2の樹脂4を含有してなるものである。
ポリ乳酸系樹脂は、乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合させて得られるポリエステルとして得ることができるものである。
このようなポリ乳酸系樹脂3としては、オゾンにより分解可能なものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリ−L−乳酸樹脂、ポリ−D−乳酸樹脂、ポリ−L/D−乳酸樹脂のような乳酸重合体樹脂(乳酸ホモポリマー)の他、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸のような脂肪族ヒドロキシカルボン酸、グリコリド、ブチロラクトン、カプロラクトンのような脂肪族ラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールのような脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレン/プロピレングリコールのようなポリアルキレンエーテル、ポリブチレンカーボネート、ポリヘキサンカーボネート、ポリオクタンカーボネートのような脂肪族ポリカーボネート、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸のような脂肪族ジカルボン酸等と乳酸との共重合体樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ここで、ポリ乳酸系樹脂3は、オゾンと接触することにより分解し、その分解物が気化して成形体の外部にガスとして放出される。なお、この分解物としては、例えば、乳酸分子やその分解物、水、二酸化炭素等が挙げられる。乳酸ホモポリマーは、その分解性が特に高く、第1の脱脂工程において、より確実に脱脂を行うことができる。したがって、脱脂工程トータルに要する時間をより短縮することができる。
また、ポリ乳酸系樹脂3としては、その重量平均分子量が、1〜30万程度のものが好ましく、2〜20万程度のものがより好ましい。これにより、ポリ乳酸系樹脂3の融点および粘度が最適なものとなり、成形体の形状の安定性(保形性)向上を図ることができる。
また、後に詳述するが、第1の脱脂工程でポリ乳酸系樹脂3のみを分解・除去した脱脂体(以下、「中間脱脂体」と言う。)は、この中間脱脂体中の粉末1の粒子同士が第2の樹脂4により結合されていることから、全体に靭性を有しつつも、硬度は焼結体ほど高くない。したがって、中間脱脂体には、各種機械加工を容易に施すことができる。
このような第2の樹脂4としては、結合材2が含有するポリ乳酸系樹脂3の融点より熱分解温度が高いものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、ポリ酢酸ビニルのようなポリビニル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、またはこれらの共重合体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
また、分散剤5は、第2の脱脂工程において、第2の樹脂4とともに分解・除去されるものが好ましい。これにより、脱脂体の保形性や寸法精度に悪影響を与えることなく添加剤を分解・除去することができる。
分散剤5としては、例えば、ステアリン酸、ジステアリン酸、トリステアリン酸、リノレン酸、オクタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ナフテン酸のような高級脂肪酸またはその金属塩、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤等が挙げられる。なお、これらは滑剤としても用いることができる。
また、高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30であるのが好ましく、16〜24であるのがより好ましい。高級脂肪酸の炭素数が前記範囲内であることにより、組成物10は、成形性の低下を防止しつつ、保形性に優れたものとなる。また、炭素数が前記範囲内であることにより、高級脂肪酸は、比較的低温でも容易に分解し得るものとなる。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられる。
また、添加剤として酸化防止剤を添加することにより、結合材2が含有するポリ乳酸系樹脂3の酸化を防止することができる。
このような結合材2の形態は、特に限定されず、いかなる形態であってもよいが、例えば、粉末状、液状、ゲル状等が挙げられる。
また、組成物10中における結合材2の含有率は、特に限定されないが、2〜40wt%程度であるのが好ましく、5〜30wt%程度であるのがより好ましい。結合材2の含有率が前記範囲内であることにより、成形性よく成形体を形成することができるとともに、成形体の密度をより高いものとし、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、これにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を小さくすることができるため、脱脂体および焼結体の寸法精度を向上させることができる。
組成物10の混練は、加圧または双腕ニーダー式混練機、ロール式混練機、バンバリー型混練機、1軸または2軸押出機等の各種混練機を用いて行うことができるが、特に加圧ニーダー式混練機を用いるのが好ましい。加圧ニーダー式混練機は、組成物10に高い圧力を付与することができるため、高硬度の粉末1を含む組成物10や粘度の高い組成物10をより確実に混練することができる。
また、得られた混練物(コンパウンド)は、必要に応じ、粉砕されてペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば、1〜10mm程度とされる。
混練物のペレット化には、ペレタイザ等の粉砕装置を用いて行うことができる。
[A] 成形体形成工程
次に、前記で得られた混練物または該混練物より造粒されたペレットを所定の形状に成形して、図3に示すような成形体20を得る。
成形体20の形成は、例えば、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法(プレス成形法)、カレンダ成形法等の各種成形法により行うことができる。例えば、圧縮成形法の場合の成形圧力は、5〜100MPa程度であるのが好ましい。
射出成形法は、混練物またはペレットを用いて、射出成形機により射出成形し、所望の形状、寸法の成形体20を形成する。この場合、成形金型の選択により、複雑で微細な形状の成形体20をも容易に形成することができる。
射出成形の成形条件としては、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、材料温度は、好ましくは80〜200℃程度、射出圧力は、好ましくは2〜15MPa(20〜150kgf/cm2)程度とされる。
押出成形の成形条件としては、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、材料温度は、好ましくは
80〜200℃程度、押出圧力は、好ましくは1〜10MPa(10〜100kgf/cm2)程度とされる。
なお、形成される成形体20の形状寸法は、以後の各脱脂工程および焼結工程における成形体20の収縮分等を見込んで決定される。
前記成形体形成工程で得られた成形体20を、オゾンを含有する雰囲気に曝すことにより、前記成形体20中からポリ乳酸系樹脂3を分解・除去し、図4に示すような成形体30を得る。
ポリ乳酸系樹脂3は、オゾンに接触することにより、その分解物がガスとなり、容易かつ速やかに成形体20中から除去(脱脂)される。これにより、保形性を維持しつつ、脱脂工程トータルに要する時間を短縮することができる。また、オゾンは腐食性を有しないため、第1の脱脂工程を行う設備の腐食等を生じるおそれがなく、設備の維持・管理が容易であるという利点も有する。
なお、この流路31は、後述する焼結工程において消滅するかあるいは微小ポアとして残るだけであるため、得られる焼結体の美的外観が低下したり、機械的強度が低下する等の問題が生じるおそれは極めて少ない。
また、このような雰囲気の温度は、オゾン含有雰囲気中において、50〜180℃程度であるのが好ましく、70〜170℃程度であるのがより好ましい。雰囲気の温度が前記範囲内の値であることにより、効率よく確実にポリ乳酸系樹脂3の分解・除去を行うことができる。また、これにより、ポリ乳酸系樹脂3が軟化するのを避けられるため、成形体30の保形性が低下するのを防止することができる。その結果、脱脂体および焼結体の寸法精度が低下するのをより確実に防止することができる。
なお、必要に応じて、第1の脱脂工程の後に、加工工程を行ってもよい。
前述したように、第1の脱脂工程でポリ乳酸系樹脂3のみを分解・除去して得られる中間脱脂体には、各種機械加工を容易に施すことができる。この中間脱脂体に対する加工工程は、WやMoのような硬度の高い金属材料、セラミックスのような脆性材料等の、焼結体での加工が困難な材料で構成されたものに対して好適に適用される。
前記第1の脱脂工程でポリ乳酸系樹脂3を脱脂した成形体30を、加熱することにより、成形体30中から第2の樹脂4および添加剤(例えば、分散剤5)で構成される結合材2’を分解・除去し、図5に示すような脱脂体40を得る。
加熱により分解された結合材2’は、第1の脱脂工程において形成された小さな流路31を介して、成形体30の外部に放出され、容易かつ速やかに脱脂が行われる。これにより、成形体30の内部に多量の結合材2’が残留するのを防止することができるため、得られる脱脂体40の変形や割れ等の発生を確実に防止しつつ、脱脂工程トータルに要する時間を短縮することができる。その結果、寸法精度、機械的強度等に優れる脱脂体40および焼結体を得ることができる。
また、雰囲気の温度は、180〜600℃程度であるのが好ましく、250〜550℃程度であるのがより好ましい。雰囲気の温度が前記範囲内の値であることにより、効率よく確実に結合材2’の分解・除去を行うことができる。これに対し、雰囲気の温度が前記下限値未満であると、結合材2’の分解・除去の効率が低下するおそれがある。また、雰囲気の温度が前記上限値を超えても、結合材2’の分解の速度はほとんど向上しないため、効率的でない。
なお、前記第1の脱脂工程と前記第2の脱脂工程は、それぞれ単独で行ってもよいが、連続に行われるのが好ましい。これにより、成形体30の昇温および降温に伴って成形体30内部に生じる残留応力をより低減することができる。
また、第2の脱脂工程は、必要に応じて行えばよく、例えば、組成物10中に第2の樹脂4および添加物を含有しない場合は、省略することもできる。この場合、第1の脱脂工程のみを経て、脱脂体40を得ることができる。
前記第2の脱脂工程で得られた脱脂体40を焼結する。これにより、脱脂体40中の粉末1は、接しているもの同士の界面において、相互に拡散が生じ、粒成長して、結晶粒となる。その結果、全体として緻密な、すなわち高密度、低空孔率である図6に示すような焼結体50が得られる。
なお、焼結工程における焼結温度は、前述した範囲内または範囲外で、経時的に変動(上昇または下降)してもよい。
また、焼結工程を行う雰囲気は、粉末1を構成する無機材料の組成に応じても適宜選択され、特に限定されないが、大気、酸素のような酸化性雰囲気、水素、一酸化炭素のような還元性雰囲気、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性雰囲気、これら各雰囲気を減圧した減圧雰囲気、または加圧した加圧雰囲気等が挙げられる。
この場合、減圧不活性雰囲気の圧力としては、特に限定されないが、3kPa(22.5Torr)以下であるのが好ましく、2kPa(15Torr)以下であるのがより好ましい。
また、無機材料が非酸化物系セラミックス材料である場合、焼結工程を行う雰囲気は、不活性雰囲気であるのが好ましい。これにより、非酸化物系セラミックス材料の酸化に伴う焼結体50の特性の劣化を容易かつ確実に防止することができる。さらに、加圧された不活性雰囲気で焼結を行うことにより、より短時間で前記効果を得ることができる。
なお、焼結工程を行う雰囲気は、工程の途中で変化してもよい。例えば、最初に3kPa程度の減圧雰囲気とし、途中で前記のような不活性雰囲気に切り替えることができる。
また、焼結工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、粉末1の焼結の効率が向上し、より短い焼結時間で焼結を行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本実施形態では、結合材2が第2の樹脂4および分散剤5を含有しているが、これらは必要に応じて添加すればよく、省略することもできる。
1.成形体の作製
以下では、各実施例の成形体をそれぞれ所定数量ずつ作製した。
(サンプルNo.1)
水アトマイズ法により製造されたSUS316L粉末と、ポリ−L−乳酸樹脂(重量平均分子量:15万)とを混合し、以下に示す混練条件で、加圧ニーダー(混練機)で混練した。
なお、SUS316L粉末の平均粒径は10μmであった。
また、粉末と結合材との混合比は、重量比で92:8とした。
・混練温度:190℃
・混練時間:0.75時間
・雰囲気 :窒素ガス
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径3mmのペレットとし、該ペレットを用い、以下に示す成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、サンプルNo.1の成形体を作製した。
なお、成形体は、15×15×15mmの立方体形状に成形した。また、この成形体は、その対向する2面の中央部に内径5mmの貫通穴を有している。
<成形条件>
・材料温度:210℃
・射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm2)
結合材の組成および混合比、粉末と結合材との混合比、混練条件を、それぞれ、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.2〜8、13、14の各成形体を作製した。
(サンプルNo.9、10、15、16)
粉末を、ジルコニア粉末に変更し、結合材の組成および混合比、粉末と結合材との混合比、混練条件を、それぞれ、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.9、10、15、16の成形体を作製した。
なお、ジルコニア粉末には、その平均粒径が0.6μmで、イットリアを5.3wt%含有するものを用いた。
粉末を、窒化ケイ素粉末に変更し、結合材の組成および混合比、粉末と結合材との混合比、混練条件を、それぞれ、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.11、12、17、18の成形体を作製した。
なお、窒化ケイ素粉末には、その平均粒径が0.6μmで、イットリアを4wt%、酸化セリウム4wt%を含有するものを用いた。
(実施例1)
次に、サンプルNo.1の成形体に対し、脱脂炉にて、以下に示す脱脂条件で第1の脱脂を行い、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :160℃
・脱脂時間 :20時間
・雰囲気 :窒素ガス
・オゾン濃度:20ppm
次いで、得られた脱脂体に対し、焼成炉にて、以下に示す焼結条件で焼結を行い、焼結体を得た。
・焼結温度 :1360℃
・焼結時間 :3時間
・雰囲気の組成:アルゴン(減圧雰囲気)
・雰囲気の圧力:1.3kPa
(実施例2〜18、比較例)
用いる成形体のサンプルNo.、脱脂条件を、それぞれ表2に示すように、また、焼結条件を、それぞれ表3に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして脱脂体を得て、さらに焼結体を得た。
3−1.混練物の流動性の評価
サンプルNo.1〜18の各混練物について、混練物の流動性を評価した。
混練物の流動性の評価は、各混練物について、それぞれ、成形条件の材料温度における混練物の粘度を測定する方法(JIS K 7199に規定)により行った。以下に粘度測定の条件を示す。
・粘度計 :キャピログラフ(東洋精機製作所製、型番:D−1)
・測定温度 :210[℃]
・せん断速度:1000[/sec]
次に、測定された粘度を、以下の基準にしたがって評価した。
○:500Pa・s(5000ポイズ)未満
×:500Pa・s(5000ポイズ)以上
サンプルNo.1〜18の各成形体について、成形体の美的外観を評価した。
成形体の美的外観の評価は、各成形体を目視にて観察する方法により行った。なお、評価は、以下の基準にしたがって行った。
◎:全数成形欠陥なし
○:1%未満に欠陥がある
△:1%以上5%未満に欠陥がある
×:5%以上に欠陥がある
3−1、3−2の各評価結果を表1に示す。
また、ポリ−L−乳酸樹脂の含有率が高いほど、より短時間の混練であっても、混練物は十分な流動性を示し、成形体は優れた美的外観を示した。
これに対し、比較例に相当する成形体形成用組成物であるサンプルNo.13〜18の各混練物は、流動性が低く、得られた各成形体の外観には、数%程度のものに欠陥が認められた。
実施例1〜9および比較例について、第1の脱脂における重量減少率をそれぞれ測定した。また、実施例10〜18について、第1の脱脂および第2の脱脂における重量減少率をそれぞれ測定した。
重量減少率の測定は、成形体の重量を、各脱脂の前後で電子天秤を用いて測定し、減少した重量の割合を算出する方法で行った。
また、各実施例および比較例について、第1の脱脂と第2の脱脂の各重量減少率のトータルを算出した。
この結果を表2に示す。
また、各実施例の第1の脱脂工程および第2の脱脂工程では、結合材の組成によって若干異なるが、ポリ乳酸系樹脂が比較的短い脱脂時間で分解・除去されたため、脱脂に要するトータルの時間も短縮することができた。
一方、比較例では、比較的高いオゾン濃度で長時間の加熱を行ったが、十分に脱脂することができず、脱脂工程トータルの結合材の除去率は90%未満であった。これは、ポリオキシメチレン樹脂のオゾン分解性が、ポリーL−乳酸より低いため、このような低温では、ポリオキシメチレン樹脂が分解し切れなかったためと推測される。
各実施例および比較例で得られた焼結体について、それぞれ密度を測定した。なお、密度の測定は、アルキメデス法(JIS Z 2505に規定)により、100個について行い、その平均値を測定値とした。
次いで、各測定値から焼結体の相対密度を算出した。相対密度の算出に際しては、各無機材料の組成ごとに相対基準(理論密度)を設け、SUS316Lは7.98g/cm3、ジルコニアは6.07g/cm3、窒化ケイ素は3.30g/cm3とした。
各実施例および比較例で得られた焼結体について、それぞれ幅方向の寸法を測定し、その寸法のバラツキを算出した。寸法の測定は、マイクロメータを用いて100個について行い、そのバラツキを算出した。
次いで、各焼結体について、それぞれ中心穴の真円度を測定した。真円度の測定は、三次元測定器(ミツトヨ社製、型番:FT805)を用いて行い、平均値を真円度とした。
なお、比較例1の焼結体は、ほぼ全数に割れが発生していたため、密度・寸法の測定が行えなかった。
各実施例および比較例で得られた焼結体について、それぞれ美的外観を評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。
◎:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが全くない
○:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが若干ある
△:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが多数ある
×:ほぼ全数に割れがある
3−4、3−5、3−6の各評価結果を表3に示す。
さらに、各実施例で得られた焼結体は、いずれも、キズ、割れ等の欠陥が全く認められず、美的外観に優れていた。
これに対して、比較例で得られた焼結体は、その相対密度が90%未満と低く、また、その寸法精度も低いものであった。
また、比較例で得られた焼結体には、多数のものに割れが確認された。これは、脱脂工程で除去しきれなかった結合材が、焼結において急速に分解した際に生じたものと推測される。
Claims (16)
- 主として無機材料で構成された粉末と、オゾンにより分解可能なポリ乳酸系樹脂を含有する結合材とを含む成形体形成用組成物であって、
当該成形体形成用組成物を成形してなる成形体にオゾン含有雰囲気中で脱脂処理を施すことにより、前記ポリ乳酸系樹脂の少なくとも一部を分解・除去して脱脂体を得るのに用いられることを特徴とする成形体形成用組成物。 - 当該成形体形成用組成物中における前記結合材の含有率は、2〜40wt%である請求項1に記載の成形体形成用組成物。
- 前記ポリ乳酸系樹脂は、オゾン含有雰囲気中において、50〜180℃の温度で分解するものである請求項1または2に記載の成形体形成用組成物。
- 前記ポリ乳酸系樹脂は、乳酸のホモポリマーを主成分とするものである請求項1ないし3のいずれかに記載の成形体形成用組成物。
- 前記ポリ乳酸系樹脂は、その重量平均分子量が1〜30万のものである請求項1ないし4のいずれかに記載の成形体形成用組成物。
- 前記結合材中の前記ポリ乳酸系樹脂の含有率は、20wt%以上である請求項1ないし5のいずれかに記載の成形体形成用組成物。
- 前記結合材は、前記ポリ乳酸系樹脂に遅れて分解する第2の樹脂を含むものである請求項1ないし6のいずれかに記載の成形体形成用組成物。
- 前記第2の樹脂は、180〜600℃の温度で分解するものである請求項7に記載の成形体形成用組成物。
- 前記第2の樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニル系樹脂およびアクリル系樹脂のうちの少なくとも1種を主成分とするものである請求項7または8に記載の成形体形成用組成物。
- 前記結合材は、添加剤を含むものである請求項1ないし9のいずれかに記載の成形体形成用組成物。
- 前記添加剤は、前記粉末の分散性を向上させるための分散剤である請求項10に記載の成形体形成用組成物。
- 前記分散剤は、高級脂肪酸を主成分とするものである請求項11に記載の成形体形成用組成物。
- 前記高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30のものである請求項12に記載の成形体形成用組成物。
- 請求項1ないし13のいずれかに記載の成形体形成用組成物を成形して成形体を得た後、該成形体に脱脂処理を施してなることを特徴とする脱脂体。
- 前記成形は、射出成形法または押出成形法により行われる請求項14に記載の脱脂体。
- 請求項14または15に記載の脱脂体を焼結してなることを特徴とする焼結体。
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