JP4337755B2 - 脱脂体の製造方法および焼結体の製造方法 - Google Patents

脱脂体の製造方法および焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、脱脂体の製造方法および焼結体の製造方法に関するものである。
無機材料の脱脂体は、一般に、無機材料粉末と結合材を混合した原料粉末(混合粉末)を、射出成形法等の各種成形方法を用いて成形体とし、この成形体に対して、結合材の融解温度より高く、無機材料の焼結温度より低い温度で加熱処理を施すことにより得ることができる。
ところが、例えば、射出成形法に供される原料粉末には、その射出成形時の流動性を向上させる目的等で結合材を多く含有している。この結合材を除去するためには、長時間の加熱が必要となり、生産効率が低下したり、加熱処理中に脱脂体が変形する等の問題がある。
また、加熱処理で脱脂体中の結合材を十分に除去することができず、焼結工程において残留した結合材が気化して、焼結体に割れが発生する等の問題もある。
かかる問題点を解決するために、無機材料粉末とポリアセタールを含有する結合材とを混合した原料粉末で構成された成形体を、気体状の酸含有雰囲気または三フッ化ホウ素含有雰囲気で加熱処理する脱脂体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、一般に、酸は劇物、三フッ化ホウ素は毒物であるため、人体にとって有害であり、その取り扱いに際しては、厳重な保護具を必要とするなど大変な手間がかかる。
また、酸および三フッ化ホウ素は、金属溶解性が高く、設備に耐食性の高い材料を用いる必要があるため、コスト高となる。
さらに、酸含有雰囲気は、加熱処理後に大気中に放出されると、大気汚染の原因となり、これを防ぐためのコストがかかる。
一方、結合材としてポリ乳酸のような生分解性樹脂を用いる脱脂体および焼結体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
しかし、開示された方法では、酵素によるポリ乳酸の分解作用を利用して結合材の除去を行うため、除去に長い時間を要し、生産効率が低下するという問題がある。
また、ポリ乳酸の分解は、被処理物を液中に保持して行い、その後、被処理物を乾燥させる必要があるため、作業に多くの手間を必要とする。さらに、被処理物が粉体を固めた成形体である場合には、被処理物の形状が崩れる可能性が高い。
特許第3128130号公報 特開2000−38604号公報
本発明の目的は、優れた特性(寸法精度)を有する脱脂体を、安全、容易かつ安価に製造し得る脱脂体の製造方法および焼結体の製造方法、かかる焼結体の製造方法で得られる優れた特性を有する焼結体を提供することにある。
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の脱脂体の製造方法は、金属材料またはセラミックス材料で構成された粉末と、ポリ乳酸系樹脂および該ポリ乳酸系樹脂の融点より熱分解温度が高い第2の樹脂を含む結合材とを含有する組成物を所定の形状に成形し、成形体を得る成形体形成工程と、
該成形体を、温度が50〜180℃のオゾンを含有する雰囲気に曝すことにより、前記成形体中から前記ポリ乳酸系樹脂を選択的に分解・除去し、脱脂体を得る第1の脱脂工程と
前記脱脂体を、還元性雰囲気、不活性雰囲気および減圧雰囲気のいずれかの雰囲気下で、180〜600℃の温度で加熱することにより、前記脱脂体中から前記第2の樹脂を分解・除去する第2の脱脂工程とを有することを特徴とする。
これにより、優れた特性(寸法精度)を有する脱脂体を、安全、容易かつ安価に製造することができる。
また、これにより、効率よく確実にポリ乳酸系樹脂の分解・除去を行うことができる。また、成形体の保形性が低下するのを防止することができる。
また、これにより、成形体中のポリ乳酸系樹脂と第2の樹脂とを、それぞれ第1の脱脂工程と第2の脱脂工程とに分けて、選択的に脱脂することができる。その結果、成形体の脱脂の進度を制御することができ、保形性、すなわち寸法精度に優れた脱脂体を容易かつ確実に得ることができる。
本発明の脱脂体の製造方法では、前記第1の脱脂工程において、前記雰囲気中の前記オゾン濃度は、50〜10000ppmであることが好ましい。
これにより、効率よく確実にポリ乳酸系樹脂の分解・除去を行うことができる
本発明の脱脂体の製造方法では、前記ポリ乳酸系樹脂は、乳酸のホモポリマーを主成分とするものであることが好ましい。
乳酸ホモポリマーは、その分解性が特に高く、脱脂工程において、より確実に脱脂を行うことができる。
本発明の脱脂体の製造方法では、前記ポリ乳酸系樹脂は、その重量平均分子量が1〜30万のものであることが好ましい。
これにより、ポリ乳酸系樹脂の融点および粘度が最適なものとなり、成形体の形状の安定性(保形性)向上を図ることができる。
本発明の脱脂体の製造方法では、前記結合材中の前記ポリ乳酸系樹脂の含有率は、20wt%以上であることが好ましい。
これにより、ポリ乳酸系樹脂が分解・除去される効果がより確実に得られ、結合材全体の脱脂をより促進させることができる
発明の脱脂体の製造方法では、前記第2の樹脂は、ポリスチレンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種を主成分とするものであることが好ましい。
これらの材料は、脱脂体中での結合強度が高く、脱脂体が変形するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、流動性が高く、加熱により分解し易いことから、容易に脱脂することができる。その結果、寸法精度に優れた脱脂体をより確実に得ることができる。
本発明の脱脂体の製造方法では、前記結合材は、さらに、前記粉末の前記組成物中での分散性を向上させるための分散剤を含み、
前記第2の脱脂工程において、前記成形体中から前記第2の樹脂とともに、前記分散剤を分解・除去することが好ましい。
これにより、結合材に、分散剤が有する機能を発揮させるとともに、脱脂体の保形性や寸法精度に悪影響を与えることなく分散剤を分解・除去することができる。
発明の脱脂体の製造方法では、前記分散剤は、高級脂肪酸を主成分とするものであることが好ましい。
高級脂肪酸は、粉末の分散性に特に優れるものである。
本発明の脱脂体の製造方法では、前記高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30のものであることが好ましい。
これにより、組成物は、成形性の低下を防止しつつ、保形性に優れたものとなる。
本発明の脱脂体の製造方法では、前記成形体形成工程において、前記成形体を射出成形法または押出成形法により形成することが好ましい。
射出成形法は、成形金型の選択により、複雑で微細な形状の成形体を容易に形成することができる。
また、押出成形法は、成形金型の選択により、所望の押出面形状を有する柱状または板状の成形体を、特に容易かつ安価に形成することができる。
本発明の焼結体の製造方法は、本発明の脱脂体の製造方法により得られた脱脂体を焼結して、焼結体を得ることを特徴とする。
これにより、優れた特性を有する焼結体が得られる
以下、本発明の脱脂体の製造方法および焼結体の製造方法について、好適な実施形態に基づいて説明する。
図1は、本発明の脱脂体の製造方法および焼結体の製造方法の実施形態を示す工程図、図2は、本実施形態で用いる脱脂体製造用の組成物を模式的に示す図である。
<脱脂体製造用の組成物>
まず、脱脂体の製造に用いる組成物(脱脂体製造用の組成物)10について説明する。
組成物10は、主として無機材料で構成された粉末1と、ポリ乳酸系樹脂3を含む結合材2とを含有するものである。
(1)粉末
粉末1は、主として無機材料で構成されたものである。
この無機材料としては、特に限定されないが、例えば、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属材料、アルミナ、マグネシア、ベリリア、ジルコニア、イットリア、フォルステライト、ステアタイト、ワラステナイト、ムライト、コージライト、フェライト、サイアロン、酸化セリウムのような酸化物系セラミックス材料、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのような非酸化物系セラミックス材料、グラファイト、ナノカーボン(カーボンナノチューブ、フラーレン等)の炭素系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
後述するように、組成物10は、成形性に優れることから、本発明は、最終的に得られる焼結体が比較的高硬度または難加工性となるような材料を用いる場合に好適に適用される。
その具体例としては、SUS304、SUS316、SUS316L、SUS317、SUS329J1、SUS410、SUS430、SUS440、SUS630のようなステンレス鋼、ダイス鋼、高速度工具鋼等に代表されるFe系合金、TiまたはTi系合金、WまたはW系合金、Co系超硬合金、Ni系サーメット等が挙げられる。
また、組成の異なる2種以上の材料を組み合わせて用いることにより、従来、鋳造では製造できなかった組成の焼結体を得ること可能となる。また、新規の機能や多機能を有する焼結体が容易に製造でき、焼結体の機能・用途の拡大を図ることができる。
粉末1の平均粒径は、特に限定されないが、0.3〜100μm程度であるのが好ましく、0.5〜50μm程度であるのがより好ましい。粉末1の平均粒径が前記範囲内の値であることにより、優れた成形性(成形のし易さ)で脱脂体(成形体)を製造することができる。また、脱脂体の密度をより高いものとすることができ、脱脂体の機械的強度、寸法精度等の特性をより優れたものとすることができる。これに対し、粉末1の平均粒径が前記下限値未満であると、脱脂体(成形体)の成形性が低下する。また、粉末1の平均粒径が前記上限値を超えると、脱脂体の密度を十分に高めるのが困難となり、最終的に得られる焼結体の特性が低下するおそれがある。なお、本発明において、「平均粒径」とは、対象となる粉末の粒度分布において、体積の累積で50%の部分に分布する粉末の粒径を指す。
また、組成物10中における粉末1の含有率は、特に限定されないが、60〜98wt%程度であるのが好ましく、70〜95wt%程度であるのがより好ましい。
粉末1の含有率が前記範囲内であることにより、優れた成形性(成形のし易さ)で脱脂体(成形体)を製造することができるとともに、脱脂体の密度をより高いものとし、焼結体の特性をより高めることができる。これに対し、粉末1の含有率が前記下限値未満であると、脱脂体(成形体)の成形性が低下する。また、粉末1の含有率が前記上限値を超えると、脱脂体の密度を十分に高めるのが困難となり、焼結体の特性が低下するおそれがある。
このような粉末1としては、いかなる方法で製造されたものでもよいが、例えば、粉末1が金属材料で構成されている場合、水アトマイズ法等の液体アトマイズ法(例えば、高速回転水流アトマイズ法、回転液アトマイズ法等)、ガスアトマイズ法等の各種アトマイズ法や、粉砕法、カルボニル法、還元等の化学的方法等で得られたものを用いることができる。
(2)結合材
結合材2は、後述する成形体を得る工程における、組成物10の成形性(成形のし易さ)、成形体の形状の安定性(保形性)に大きく寄与する成分である。組成物10が、このような成分を含むことにより、寸法精度に優れた脱脂体を容易かつ確実に製造することができる。
結合材2は、ポリ乳酸系樹脂3を含有するものである。
このポリ乳酸系樹脂3は、オゾンを含有する雰囲気に曝すことにより、分解する性質を有するため、後述する第1の脱脂工程において、容易かつ速やかに除去、すなわち、脱脂することができるものである。その結果、脱脂体の保形性を維持しつつ、脱脂工程トータルに要する時間を短縮して、脱脂体の生産効率を向上させることができる。
ポリ乳酸系樹脂3としては、例えば、ポリ−L−乳酸樹脂、ポリ−D−乳酸樹脂、ポリ−L/D−乳酸樹脂のような乳酸重合体樹脂(乳酸ホモポリマー)の他、グリコール酸、ヒドロキシブチルカルボン酸のような脂肪族ヒドロキシカルボン酸、グリコリド、ブチロラクトン、カプロラクトンのような脂肪族ラクトン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオールのような脂肪族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレンエーテル、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレン/プロピレングリコールのようなポリアルキレンエーテル、ポリブチレンカーボネート、ポリヘキサンカーボネート、ポリオクタンカーボネートのような脂肪族ポリカーボネート、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカンジカルボン酸のような脂肪族ジカルボン酸等と乳酸との共重合体樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、結合材2は、乳酸ホモポリマー(乳酸ホモポリマーまたはその誘導体)を主成分とするものが好ましい。
ここで、ポリ乳酸系樹脂3は、オゾンと接触することにより分解し、その分解物が気化して成形体の外部にガスとして放出される。なお、この分解物としては、例えば、乳酸分子やその分解物、水、二酸化炭素等が挙げられる。乳酸ホモポリマーは、その分解性が特に高く、第1の脱脂工程において、より確実に脱脂を行うことができる。したがって、脱脂工程トータルに要する時間をより短縮することができる。
また、ポリ乳酸系樹脂3としては、その重量平均分子量が、1〜30万程度のものが好ましく、2〜20万程度のものがより好ましい。これにより、ポリ乳酸系樹脂3の融点および粘度が最適なものとなり、成形体の形状の安定性(保形性)向上を図ることができる。
また、ポリ乳酸系樹脂3の結合材2における含有率は、20wt%以上であるのが好ましく、30wt%以上であるのがより好ましく、40wt%以上であるのがさらに好ましい。ポリ乳酸系樹脂3の結合材2における含有率が前記範囲内であることにより、ポリ乳酸系樹脂3が分解・除去される効果がより確実に得られ、結合材2全体の脱脂をより促進させることができる。
このようなポリ乳酸系樹脂3のうち、例えばポリ乳酸は、乳酸の環状二量体であるラクチドを開環重合させて得られるポリエステルとして得ることができる。
また、本実施形態では、結合材2は、ポリ乳酸系樹脂3の融点より熱分解温度の高い第2の樹脂4を含有する。この第2の樹脂4は、前記第1の脱脂工程より後で行われる第2の脱脂工程において、成形体を加熱することにより、分解・除去されるものである。結合材2がこのような第2の樹脂4を含有することにより、成形体中のポリ乳酸系樹脂3と第2の樹脂4とを、それぞれ第1の脱脂工程と第2の脱脂工程とに分けて、選択的に脱脂することができる。その結果、成形体の脱脂の進度を制御することができ、保形性、すなわち寸法精度に優れた脱脂体を容易かつ確実に得ることができる。
第2の樹脂4としては、特に限定されないが、その重量平均分子量が0.1〜40万程度であるのが好ましく、0.4〜30万程度であるのがより好ましい。これにより、前記効果がより顕著なものとなる。
このような第2の樹脂4としては、結合材2が含有するポリ乳酸系樹脂3の融点より熱分解温度が高いものであればよく、特に限定されないが、例えば、ポリスチレンの他、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリビニルアルコール、またはこれらの共重合体等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を混合して用いることができる。
これらの中でも、第2の樹脂4としては、ポリスチレンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種を主成分とするものが好ましい。これらの材料は、脱脂体中での結合強度が高く、脱脂体が変形するのを確実に防止することができる。また、これらの材料は、流動性が高く、加熱により分解し易いことから、容易に脱脂することができる。その結果、寸法精度に優れた脱脂体をより確実に得ることができる。
さらに、結合材2は、添加剤を含有してもよい。
この添加剤は、前述の第2の脱脂工程において、第2の樹脂4とともに分解・除去されるものが好ましい。これにより、結合材に、添加剤が有する機能を発揮させるとともに、脱脂体の保形性や寸法精度に悪影響を与えることなく添加剤を分解・除去することができる。
ここで、添加剤としては、例えば、分散剤(滑剤)、可塑剤、酸化防止剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、分散剤5は、図2に示すように、粉末1の周囲に付着し、組成物10中における粉末1の分散性を向上させる機能を有するものである。すなわち、組成物10が分散剤を含有することにより、粉末1と、ポリ乳酸系樹脂3および第2の樹脂4とがより均一に分散し、得られる脱脂体および焼結体は、その特性にバラツキが少なく、より均一なものとなる。
また、分散剤5は、滑剤としての機能、すなわち、後述する成形体形成工程において、組成物10の流動性を高める機能を有している。これにより、成形金型内への充填性を高め、均一な密度の成形体を得ることが可能となる。
分散剤5としては、例えば、ステアリン酸、ジステアリン酸、トリステアリン酸、リノレン酸、オクタン酸、オレイン酸、パルミチン酸、ナフテン酸のような高級脂肪酸またはその金属塩、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ポリスチレンスルホン酸等のアニオン性有機分散剤、4級アンモニウム塩等のカチオン性有機分散剤、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール等の非イオン性有機分散剤、燐酸三カルシウム等の無機系分散剤等が挙げられる。
これらの中でも、分散剤5としては、高級脂肪酸を主成分とするものが好ましい。高級脂肪酸は、粉末1の分散性および潤滑性に特に優れるものである。
また、高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30であるのが好ましく、16〜24であるのがより好ましい。高級脂肪酸の炭素数が前記範囲内であることにより、組成物10は、成形性の低下を防止しつつ、保形性に優れたものとなる。また、炭素数が前記範囲内であることにより、高級脂肪酸は、比較的低温でも容易に分解し得るものとなる。
また、可塑剤は、組成物10に柔軟性を与え、後述する成形体形成工程における成形を容易にする機能を有するものである。
可塑剤としては、例えば、フタル酸エステル(例:DOP、DEP、DBP)、アジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、セバシン酸エステル等が挙げられる。
また、酸化防止剤は、結合材を構成する樹脂の酸化を防止する機能を有するものである。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒドラジン系酸化防止剤等が挙げられる。
このような結合材2の形態は、特に限定されず、いかなる形態であってもよいが、例えば、粉末状、液状、ゲル状等が挙げられる。
また、組成物10中における結合材2の含有率は、特に限定されないが、2〜40wt%程度であるのが好ましく、5〜30wt%程度であるのがより好ましい。結合材2の含有率が前記範囲内であることにより、成形性よく成形体を形成することができるとともに、成形体の密度をより高いものとし、成形体の形状の安定性等を特に優れたものとすることができる。また、これにより、成形体と脱脂体との大きさの差、いわゆる収縮率を小さくすることができるため、脱脂体および焼結体の寸法精度を向上させることができる。
上記のような各成分を含む組成物10は、例えば、各成分に対応する粉末を混合することにより調製することができる。各成分の混合は、いかなる雰囲気中で行ってもよいが、真空または減圧状態下(例えば、3kPa以下)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、組成物10中に含まれる、特に金属材料の酸化を防止することができる。
また、必要に応じて、混合の後に、混練等を行ってもよい。これにより、例えば、組成物10の嵩密度が高くなり組成の均一性も向上するため、成形体をより高密度のものとして得ることができ、脱脂体、焼結体の寸法精度も向上する。
組成物10の混練は、加圧または双腕ニーダー式混練機、ロール式混練機、バンバリー型混練機、1軸または2軸押出機等の各種混練機を用いて行うことができるが、特に加圧ニーダー式混練機を用いるのが好ましい。加圧ニーダー式混練機は、組成物10に高い圧力を付与することができるため、高硬度の粉末1を含む組成物10や粘度の高い組成物10をより確実に混練することができる。
混練条件は、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、混練温度:70〜200℃程度、混練時間:15〜210分程度とすることができる。また、混練の際の雰囲気は、前記混合と同様に、いかなる雰囲気中で行ってもよいが、真空または減圧下(例えば、3kPa以下)、あるいは窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等の不活性ガス中のような非酸化性雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、前述と同様に、組成物10中に含まれる、特に金属材料の酸化を防止することができる。
また、得られた混練物(コンパウンド)は、必要に応じ、粉砕されてペレット(小塊)化される。ペレットの粒径は、例えば、1〜10mm程度とされる。
混練物のペレット化には、ペレタイザ等の粉砕装置を用いて行うことができる。
<脱脂体および焼結体の製造>
[A] 成形体形成工程
次に、前記で得られた混練物または該混練物より造粒されたペレットを所定の形状に成形して、図3に示すような成形体20を得る。
成形体20の形成は、例えば、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法(プレス成形法)、カレンダ成形法等の各種成形法により行うことができる。例えば、圧縮成形法の場合の成形圧力は、5〜100MPa程度であるのが好ましい。
このような各種成形法の中でも、成形体20は、射出成形法または押出成形法により形成されるのが好ましい。
射出成形法は、混練物またはペレットを用いて、射出成形機により射出成形し、所望の形状、寸法の成形体20を形成する。この場合、成形金型の選択により、複雑で微細な形状の成形体20をも容易に形成することができる。
射出成形の成形条件としては、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、材料温度は、好ましくは80〜200℃程度、射出圧力は、好ましくは2〜15MPa(20〜150kgf/cm)程度とされる。
また、押出成形法は、混練物またはペレットを用いて、押出成形機により押出成形し、所望の長さに切断して、成形体20を形成する。この場合、成形金型の選択により、所望の押出面形状を有する柱状または板状の成形体20を、特に容易かつ安価に形成することができる。
押出成形の成形条件としては、用いる粉末1の組成や粒径、結合材2の組成、およびこれらの配合量等の諸条件により異なるが、その一例を挙げると、材料温度は、好ましくは
80〜200℃程度、押出圧力は、好ましくは1〜10MPa(10〜100kgf/cm)程度とされる。
なお、形成される成形体20の形状寸法は、以後の各脱脂工程および焼結工程における成形体20の収縮分等を見込んで決定される。
[B] 第1の脱脂工程
前記成形体形成工程で得られた成形体20を、オゾンを含有する雰囲気に曝すことにより、前記成形体20中からポリ乳酸系樹脂3を分解・除去し、図4に示すような成形体30を得る。
本発明は、この第1の脱脂工程に特徴を有している。すなわち、ポリ乳酸系樹脂3は、オゾンに接触することにより、その分解物がガスとなり、容易かつ速やかに成形体20中から除去(脱脂)される。これにより、保形性を維持しつつ、脱脂工程トータルに要する時間を短縮することができる。また、オゾンは腐食性を有しないため、第1の脱脂工程を行う設備の腐食等を生じるおそれがなく、設備の維持・管理が容易であるという利点も有する。
また、このとき、ポリ乳酸系樹脂3の分解物が成形体20の内部から外部へ放出されるが、これに伴い、成形体30中に前記分解物が通過した跡に極めて小さな流路31が形成される。この流路31は、後述する第2の脱脂工程において、第2の樹脂4および添加剤で構成される結合材2の分解物が、放出される際の流路となり得るものである。したがって、これにより第2の樹脂4および添加剤は、より効率よく分解・除去することができる。
なお、この流路31は、後述する焼結工程において消滅するかあるいは微小ポアとして残るだけであるため、得られる焼結体の美的外観が低下したり、機械的強度が低下する等の問題が生じるおそれは極めて少ない。
第1の脱脂工程を行う雰囲気には、オゾンを含有していればよく、オゾン以外の組成として、例えば、大気、酸素のような酸化性ガス、水素、一酸化炭素のような還元性ガス、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性ガス、またはこれらの1種または2種以上を含有する混合ガス等を含有していてもよい。このうち、前記雰囲気は、オゾン以外に不活性ガスを含有するのが好ましく、窒素を主成分とする不活性ガスを含有するのがより好ましい。不活性ガスは、粉末1の構成材料との反応性が乏しいため、粉末1がその不本意な化学反応等により変質・劣化するのを防止する。
雰囲気中のオゾン濃度は、50〜10000ppm程度であるのが好ましく、80〜8000ppm程度であるのがより好ましく、100〜5000ppm程度であるのがさらに好ましい。オゾン濃度が前記範囲内の値であることにより、効率よく確実にポリ乳酸系樹脂3の分解・除去を行うことができる。なお、オゾン濃度が前記上限値を超えても、オゾンによるポリ乳酸系樹脂3の分解の効率のそれ以上の増大は期待できない。
また、このようなオゾンを含有する雰囲気は、成形体20の周囲に新たなガスを供給し、ポリ乳酸系樹脂3の分解物を排出しつつ脱脂を行うのが好ましい。これにより、成形体20の周囲において、脱脂の進行に伴って成形体20から放出される分解ガスの濃度が上昇し、オゾンによるポリ乳酸系樹脂3の分解の効率が低下するのを防止することができる。
このとき、供給するガスの流量は、脱脂を行う設備の容積に応じて適宜設定され、特に限定されないが、1〜30m/h程度であるのが好ましく、3〜20m/h程度であるのがより好ましい。
また、このような雰囲気の温度は、50〜180℃程度であるのが好ましく、70〜170℃程度であるのがより好ましい。雰囲気の温度が前記範囲内の値であることにより、効率よく確実にポリ乳酸系樹脂3の分解・除去を行うことができる。また、これにより、ポリ乳酸系樹脂3が軟化するのを避けられるため、成形体30の保形性が低下するのを防止することができる。その結果、脱脂体および焼結体の寸法精度が低下するのをより確実に防止することができる。
また、第1の脱脂の時間は、ポリ乳酸系樹脂3の含有率や雰囲気の温度等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、1〜30時間程度であるのが好ましく、3〜20時間程度であるのがより好ましい。これにより、効率よく確実にポリ乳酸系樹脂3の分解・除去を行うことができる。
[C] 第2の脱脂工程
前記第1の脱脂工程でポリ乳酸系樹脂3を脱脂した成形体30を、加熱することにより、成形体30中から第2の樹脂4および添加剤(例えば、分散剤5)で構成される結合材2’を分解・除去し、図5に示すような脱脂体40を得る。
加熱により分解された結合材2’は、前記第1の脱脂工程において形成された小さな流路31を介して、成形体30の外部に放出され、容易かつ速やかに脱脂が行われる。これにより、成形体30の内部に多量の結合材2’が残留するのを防止することができるため、得られる脱脂体40の変形や割れ等の発生を確実に防止しつつ、脱脂工程トータルに要する時間を短縮することができる。その結果、寸法精度、機械的強度等に優れる脱脂体40および焼結体を得ることができる。
第2の脱脂工程を行う雰囲気には、特に限定されないが、大気、酸素のような酸化性雰囲気、水素、一酸化炭素のような還元性雰囲気、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性雰囲気、減圧雰囲気(真空)等が挙げられる。
また、雰囲気の温度は、180〜600℃程度であるのが好ましく、250〜550℃程度であるのがより好ましい。雰囲気の温度が前記範囲内の値であることにより、効率よく確実に結合材2’の分解・除去を行うことができる。これに対し、雰囲気の温度が前記下限値未満であると、結合材2’の分解・除去の効率が低下するおそれがある。また、雰囲気の温度が前記上限値を超えても、結合材2’の分解の速度はほとんど向上しないため、効率的でない。
また、第2の脱脂の時間は、結合材2’の組成や含有率、雰囲気の温度等に応じて適宜設定され、特に限定されないが、0.5〜10時間程度であるのが好ましく、1〜5時間程度であるのがより好ましい。これにより、効率よく確実に結合材2’の分解・除去(脱脂)を行うことができる。
なお、前記第1の脱脂工程と前記第2の脱脂工程は、それぞれ単独で行ってもよいが、連続に行われるのが好ましい。これにより、成形体30の昇温および降温に伴って成形体30内部に生じる残留応力をより低減することができる。
また、第2の脱脂工程は、必要に応じて行えばよく、例えば、組成物10中に第2の樹脂4および添加物を含有しない場合は、省略することもできる。この場合、第1の脱脂工程のみを経て、脱脂体40を得ることができる。
[D] 焼結工程
前記第2の脱脂工程で得られた脱脂体40を焼結する。これにより、脱脂体40中の粉末1は、接しているもの同士の界面において、相互に拡散が生じ、粒成長して、結晶粒となる。その結果、全体として緻密な、すなわち高密度、低空孔率である図6に示すような焼結体50が得られる。
焼結工程における焼結温度は、粉末1の組成等により若干異なるが、例えば、1000〜1800℃程度であるのが好ましく、1100〜1700℃程度であるのがより好ましい。焼結温度が前記範囲内の値であることにより、粉末1の拡散、粒成長が最適化され、優れた特性(機械的強度、寸法精度、外観等)を有する焼結体50を得ることができる。
なお、焼結工程における焼結温度は、前述した範囲内または範囲外で、経時的に変動(上昇または下降)してもよい。
焼結時間は、0.5〜7時間程度であるのが好ましく、1〜4時間程度であるのがより好ましい。
また、焼結工程を行う雰囲気は、粉末1を構成する無機材料の組成に応じても適宜選択され、特に限定されないが、大気、酸素のような酸化性雰囲気、水素、一酸化炭素のような還元性雰囲気、窒素、ヘリウム、アルゴンのような不活性雰囲気、これら各雰囲気を減圧した減圧雰囲気、または加圧した加圧雰囲気等が挙げられる。
具体例としては、粉末1を構成する無機材料が金属材料である場合、焼結工程を行う雰囲気は、減圧不活性雰囲気であるのが好ましい。これにより、金属材料の酸化に伴う焼結体50の特性の劣化をより確実に防止することができる。
この場合、減圧不活性雰囲気の圧力としては、特に限定されないが、3kPa(22.5Torr)以下であるのが好ましく、2kPa(15Torr)以下であるのがより好ましい。
無機材料が酸化物系セラミックス材料である場合、焼結工程を行う雰囲気は、酸化性雰囲気であるのが好ましい。これにより、酸化物系セラミックス材料の特性が変化することなく、焼結体50を得ることができる。
また、無機材料が非酸化物系セラミックス材料である場合、焼結工程を行う雰囲気は、不活性雰囲気であるのが好ましい。これにより、非酸化物系セラミックス材料の酸化に伴う焼結体50の特性の劣化を容易かつ確実に防止することができる。さらに、加圧された不活性雰囲気で焼結を行うことにより、より短時間で前記効果を得ることができる。
この場合、加圧不活性雰囲気の圧力としては、特に限定されないが、110〜1500kPa程度であるのが好ましく、200〜1000kPa程度であるのがより好ましい。
なお、焼結工程を行う雰囲気は、工程の途中で変化してもよい。例えば、最初に3kPa程度の減圧雰囲気とし、途中で前記のような不活性雰囲気に切り替えることができる。
また、焼結工程は、2段階またはそれ以上に分けて行ってもよい。これにより、粉末1の焼結の効率が向上し、より短い焼結時間で焼結を行うことができる。
また、焼結工程は、前述の第2の脱脂工程と連続して行うのが好ましい。これにより、第2の脱脂工程は、焼結前工程を兼ねることができ、脱脂体40に予熱を与えて、粉末1をより確実に焼結させることができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、前記焼結工程は必要に応じて行えばよく、省略することもできる。
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.成形体の作製
以下では、各サンプルNo.の成形体をそれぞれ所定数量ずつ作製した。
(サンプルNo.1)
水アトマイズ法により製造されたSUS316L粉末と、ポリ−L−乳酸樹脂(重量平均分子量:15万)とを混合し、以下に示す混練条件で、加圧ニーダー(混練機)で混練した。
なお、SUS316L粉末の平均粒径は10μmであった。
また、粉末と結合材との混合比は、重量比で92:8とした。
<混練条件>
・混練温度:190℃
・混練時間:1時間
・雰囲気 :窒素ガス
次に、この混練物を粉砕して、平均粒径3mmのペレットとし、該ペレットを用い、以下に示す成形条件で、射出成形機にて射出成形を繰り返し行い、サンプルNo.1の成形体を作製した。
なお、成形体は、15×15×15mmの立方体形状に成形した。また、この成形体は、その対向する2面の中央部に内径5mmの貫通穴を有している。
<成形条件>
・材料温度:200℃
・射出圧力:10.8MPa(110kgf/cm
(サンプルNo.2〜10)
結合材の組成および混合比を、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.2〜10の各成形体をそれぞれ作製した。
(サンプルNo.11、12)
粉末を、ジルコニア粉末に変更し、結合材の組成および混合比を、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.11、12の成形体をそれぞれ作製した。
なお、ジルコニア粉末には、その平均粒径が0.6μmで、イットリアを5.3wt%含有するものを用いた。
また、粉末と結合材との混合比は、重量比で84:16とした。
(サンプルNo.13、14)
粉末を、窒化ケイ素粉末に変更し、結合材の組成および混合比を、表1に示すように変更した以外は、前記サンプルNo.1と同様にして、サンプルNo.13、14の成形体をそれぞれ作製した。
なお、窒化ケイ素粉末には、その平均粒径が0.6μmで、イットリアを4wt%、酸化セリウム4wt%を含有するものを用いた。
また、粉末と結合材との混合比は、重量比で76:24とした。
Figure 0004337755
2.脱脂体および焼結体の製造
(実施例1)
次に、サンプルNo.1の成形体に対し、脱脂炉にて、以下に示す脱脂条件で第1の脱脂を行い、脱脂体を得た。
<脱脂条件>
・脱脂温度 :160℃
・脱脂時間 :20時間
・雰囲気 :窒素ガス
・オゾン濃度:20ppm
次いで、得られた脱脂体に対し、焼成炉にて、以下に示す焼結条件で焼結を行い、焼結体を得た。
<焼結条件>
・焼結温度 :1360℃
・焼結時間 :3時間
・雰囲気の組成:アルゴン(減圧雰囲気)
・雰囲気の圧力:1.3kPa
(実施例2〜20、比較例1、2)
用いる成形体のサンプルNo.、脱脂条件を、それぞれ表2に示すように、また、焼結条件を、それぞれ表3に示すようにした以外は、前記実施例1と同様にして脱脂体を得て、さらに焼結体を得た。
3.評価
3−1.重量減少率の評価
実施例1〜11および比較例1、2について、第1の脱脂における重量減少率をそれぞれ測定した。また、実施例12〜20について、第1の脱脂および第2の脱脂における重量減少率をそれぞれ測定した。
重量減少率の測定は、成形体の重量を、各脱脂の前後で電子天秤を用いて測定し、減少した重量の割合を算出する方法で行った。
また、各実施例および各比較例について、第1の脱脂と第2の脱脂の各重量減少率のトータルを算出した。
この結果を表2に示す。
Figure 0004337755
表2から明らかなように、各実施例の第1の脱脂および第2の脱脂では、無機材料の組成による違いはあるが、重量減少率が大きくなり、97%以上の結合材が除去された。このことは、各脱脂が確実に行われていることを示している。一方、各比較例では、長い時間の第1の脱脂を行っても半分以上の結合材が残留し、脱脂が不十分であった。
また、各実施例の第1の脱脂工程および第2の脱脂工程では、結合材の組成によって若干異なるが、ポリ乳酸系樹脂が比較的短い脱脂時間で分解・除去されたため、脱脂に要するトータルの時間も短縮することができた。
特に、結合材中のポリ乳酸系樹脂の比率および脱脂雰囲気中のオゾン濃度が高いと、結合材全体としての分解効率が向上するため、処理時間の大幅な短縮が可能であった。一方、各比較例では、雰囲気中にオゾンが含有していないため、ポリ乳酸系樹脂の分解に長い時間を要した。
3−2.焼結体の密度の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、それぞれ密度を測定した。なお、密度の測定は、アルキメデス法(JIS Z 2505に規定)により、100個について行い、その平均値を測定値とした。
次いで、各測定値から焼結体の相対密度を算出した。相対密度の算出に際しては、各無機材料の組成ごとに相対基準(理論密度)を設け、SUS316Lは7.98g/cm、ジルコニアは6.07g/cm、窒化ケイ素は3.30g/cmとした。
3−3.焼結体の寸法の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、それぞれ幅方向の寸法を測定し、その寸法のバラツキを算出した。寸法の測定は、マイクロメータを用いて100個について行い、そのバラツキを算出した。
次いで、各焼結体について、それぞれ中心穴の真円度を測定した。真円度の測定は、三次元測定器(ミツトヨ社製、型番:FT805)を用いて行い、平均値を真円度とした。
なお、比較例1の焼結体は、ほぼ全数に割れが発生していたため、密度・寸法の測定が行えなかった。
3−4.焼結体の美的外観の評価
各実施例および各比較例で得られた焼結体について、それぞれ美的外観を評価した。評価は、以下の基準にしたがって行った。
◎:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが全くない
○:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが若干ある
△:キズ、割れ(マイクロクラック含む)のあるものが多数ある
×:ほぼ全数に割れがある
3−2、3−3、3−4の各評価結果を表3に示す。
Figure 0004337755
表3から明らかなように、各実施例で得られた焼結体は、その相対密度がいずれも90%以上であり、焼結が確実に行われて低空孔率の緻密体となっていた。また、各実施例で得られた焼結体は、いずれもその寸法精度も比較的良好であった。
さらに、各実施例で得られた焼結体は、いずれもその美的外観に優れていた。
これに対して、各比較例で得られた焼結体は、その相対密度が90%未満と低く、また、その寸法精度も低いものであった。
また、各比較例で得られた焼結体には、キズおよび割れ等が確認された。これは、脱脂で除去しきれなかった結合材が、焼結において急速に分解した際に生じたものと推測される。
本発明の脱脂体の製造方法および焼結体の製造方法の実施形態を示す工程図である。 本発明の脱脂体の製造方法の実施形態で用いる脱脂体製造用の組成物を模式的に示す図である。 本発明の脱脂体の製造方法の実施形態で得られた成形体の縦断面を模式的に示す図である。 本発明の脱脂体の製造方法の実施形態で得られた成形体の縦断面を模式的に示す図である。 本発明の脱脂体の製造方法の実施形態で得られた脱脂体の縦断面を模式的に示す図である。 本発明の焼結体の製造方法により製造された焼結体の縦断面を模式的に示す図である。
符号の説明
1……粉末 2、2’……結合材 3……ポリ乳酸系樹脂 4……第2の樹脂 5……分散剤 10……組成物 20、30……成形体 31……流路 40……脱脂体 50……焼結体 A、B、C、D……工程

Claims (11)

  1. 金属材料またはセラミックス材料で構成された粉末と、ポリ乳酸系樹脂および該ポリ乳酸系樹脂の融点より熱分解温度が高い第2の樹脂を含む結合材とを含有する組成物を所定の形状に成形し、成形体を得る成形体形成工程と、
    該成形体を、温度が50〜180℃のオゾンを含有する雰囲気に曝すことにより、前記成形体中から前記ポリ乳酸系樹脂を選択的に分解・除去し、脱脂体を得る第1の脱脂工程と
    前記脱脂体を、還元性雰囲気、不活性雰囲気および減圧雰囲気のいずれかの雰囲気下で、180〜600℃の温度で加熱することにより、前記脱脂体中から前記第2の樹脂を分解・除去する第2の脱脂工程とを有することを特徴とする脱脂体の製造方法。
  2. 前記第1の脱脂工程において、前記雰囲気中の前記オゾン濃度は、50〜10000ppmである請求項1に記載の脱脂体の製造方法。
  3. 前記ポリ乳酸系樹脂は、乳酸のホモポリマーを主成分とするものである請求項1または2に記載の脱脂体の製造方法。
  4. 前記ポリ乳酸系樹脂は、その重量平均分子量が1〜30万のものである請求項1ないしのいずれかに記載の脱脂体の製造方法。
  5. 前記結合材中の前記ポリ乳酸系樹脂の含有率は、20wt%以上である請求項1ないしのいずれかに記載の脱脂体の製造方法。
  6. 前記第2の樹脂は、ポリスチレンおよびポリオレフィンのうちの少なくとも1種を主成分とするものである請求項1ないし5のいずれかに記載の脱脂体の製造方法。
  7. 前記結合材は、さらに、前記粉末の前記組成物中での分散性を向上させるための分散剤を含み、
    前記第2の脱脂工程において、前記成形体中から前記第2の樹脂とともに、前記分散剤を分解・除去する請求項1ないし6のいずれかに記載の脱脂体の製造方法。
  8. 前記分散剤は、高級脂肪酸を主成分とするものである請求項に記載の脱脂体の製造方法。
  9. 前記高級脂肪酸は、その炭素数が16〜30のものである請求項に記載の脱脂体の製造方法。
  10. 前記成形体形成工程において、前記成形体を射出成形法または押出成形法により形成する請求項1ないしのいずれかに記載の脱脂体の製造方法。
  11. 請求項1ないし10のいずれかに記載の脱脂体の製造方法により得られた脱脂体を焼結して、焼結体を得ることを特徴とする焼結体の製造方法。
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