JP2006282409A - 多元元素化合物の結晶成長方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】IIa・III2・VI4組成の化合物のバルク単結晶の確実で安全な作製方法、及び、そのための好適な作製装置を提供する。
【解決手段】(a)VI族元素の蒸気存在下で、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解して一般式IIa・III・VI4の組成を有する化合物を合成する段階、(b)IIa・III・VI4化合物を過冷却点以下まで冷却して該IIa・III・VI4化合物を凝固する段階、(c)凝固した該IIa・III・VI4化合物を再加熱した後徐冷することにより種結晶を作製する段階、(d)該種結晶を用いて、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階、を含む。
【選択図】図8

Description

本発明は多元元素化合物のバルク結晶成長方法及びバルク結晶成長装置に関し、詳しくは、生成物が高融点であり、原料成分間の激しい発熱反応のため系内の原料成分の気相の蒸気圧が急激に上昇し勝ちであり、かつ過冷却を伴って凝固する多元元素化合物のバルク結晶成長方法及びバルク結晶成長装置に関し、特に、多元カルコゲナイド化合物の結晶成長に好適に応用される。
単結晶成長の典型的商用方法であるCz(チョクラルスキー)法は、ルツボ内の加熱融解した原料融液表面に結晶成長の元となる種結晶を接触させ、接触界面で結晶を成長させつつ、結晶成長に見合って徐々に引き上げることにより大口径の結晶棒を育成するものであって、単元素結晶およびコングルエントと呼ばれる組成点をもつ化合物結晶のみの育成が可能なものであるけれども、完成度の高い実用的結晶成長法として知られているがしかし、それでも、100%乱れなく完全に構成元素が整列している訳でなく、現在でも結晶の不完全性を避けることが難しく、また、甚だしいときにはクラックを生じる。その原因は、系内での不均一または不充分な輻射伝熱、伝導伝熱(特に凝固潜熱を逃がすための放熱)、輻射伝熱、及び/又は対流伝熱によること、例えば典型的には、結晶が完全に引き上がる「融液から固体結晶にすべて変わる」までの三次元空間の不均一な熱履歴、熱ストレス(熱膨張及び収縮)による内部応力、不均一温度の原因となる融液のルツボ内垂直方向対流、及び、融液表面の水平方向対流(種結晶と融液とのメニスカス界面でのマランゴニ対流)等によることが知られ、このように、完成度が高く融液―結晶の単純系であるCz(チョクラルスキー)法でさえも熱管理、特にこの場合は結晶体生成時の潜熱の円滑な放熱、が良質の単結晶体を得るためには非常に重要になる。
他に従来から、幾多の結晶成長方法が提案されているが、その大部分は、融液から結晶を育成する単純系のためのものであり、特にIII-V族間化合物、例えばGa-AsやGa-N、Al-N化合物の結晶成長に関するものが多い。気相、液相及び固相の3相が問題となる結晶育成系からの結晶育成法の例としては、古くからVLS法が知(例えば非特許文献1のR.S.Wagner & W.C.Ellis, Trans. AIME,233(1965),pp1053参照)られているが、VLS法は、先端部以外は転移を含まないひげ結晶を育成するためのものである。
また、高温及び低温の2つの加熱帯を有する装置を用い、高温(例えば1150℃)で気相にした(昇華させた)材料を不活性ガスにより低温領域(例えば950℃)に送り込んで単結晶をつくることが古くから知られ(非特許文献2の千川純一、中山忠久,物理学会誌,19(1964)、pp602参照)ているが、この結晶化は、例えば既存の硫化カドミウム粉体から硫化カドミウム結晶を得るための方法であって、IIaIII2VI4の組成のバルク結晶を合成するためのものではない。また、パイパー法(非特許文献3のW.W.Piper & S.J.Polish, J. Appl. Phys., 32(1961),pp1278参照)では、図1(i)に示されるように、原料の焼結体を、一端を尖らせた石英ないしムライトのルツボの中に、空間をつくって入れ、アルゴン雰囲気中で、ルツボの尖端を高温(1200℃)に保持し、0.3〜1.5mm/hrの速度で、高温部を反対側後端方向に徐々に移していくことにより、ルツボの尖端部に結晶を育成(同図(ii))するが、このパイパー法は、既存のCdS、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnxCd(1-x)S、ZnSexTe(1-x)Xsの粉体を用いて単結晶を得るための方法であって、IIa族、III族及びVI族の3元素からなるIIaIII2VI4の組成のバルク結晶化合物を合成するためのものではない。CdS、ZnS、ZnSe、ZnTe の融液が凝固する際に放出される内部線熱消散の問題もさることながら、それ以前に、IIaIII2VI4の組成の化合物を合成する際には、SやTeのようなVI族(カルコゲン)元素は、GaのようなIII族元素と結合反応する際に著しく発熱し、また、生成化合物は、高融点である上、結晶成長の際に融解すると過冷却を生じ易い。
本発明は、このIIa−III-VI族間化合物のバルク結晶を成長する方法を対象とする。ここでIIa−III-VI族間化合物というのはMgGa2S4、CaGa2O4、SrGa2O4、BaGa2O4、 MgAl2O4(スピネル)、CaAl2S4、 CaGa2S4、SrAl2O4、 BaAl2O4、 CaGa2Se4、 CaGa2Te4、 SrGa2Se4などIIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物を意味する。
本発明の成長方法においては、高温により昇華した気相、融解した融液、及びこれらから成長した結晶がいずれも問題を有する。
バルク成長法というのは薄膜成長(DVD、スパッタリング、或いはさらに高エネルギーのイオンインジェクション等)、エピタキシャル成長などではないということである。薄膜の場合は0.1μmとか1μmとかせいぜい数μmの厚さの結晶を成長させるのである。本発明はそうでなくて、数mm〜数十cmというような結晶の塊を成長させるものである。
大きい結晶を成長させる手法だから熱管理が重要であり、IIa・III・VI4(=IIa VI+IIIVI)の組成を有する化合物は過冷却を示し易いことが分かったので熱管理がより重要になる。さらに、IIa・III・VI4)の組成を有する化合物は、一般に高融点(ルツボ等の容器の軟化をきたし易い)である。GaAsやInPは原料多結晶を加熱して融液から徐々に凝固する方法(縦型ブリッジマン;VB法)を使うことができる。また、ZnSe、ZnSなど2−6族は原料を加熱しても融液にならないので、原料を気化して種結晶まで輸送し堆積させる昇華法(化学的輸送法)が使われる。
また従来から、バルク結晶成長を行うためには、上述のように結晶成長容器内に高温部と低温部を設けることが知られている。そのため、結晶成長容器を加熱炉内に配置し、加熱炉に備え付けたヒータを発熱させ、所望の温度分布を結晶成長容器内に形成する。ここで、結晶が成長する方向(結晶成長方向)に沿って、所望の温度分布を形成するため、一般に結晶成長方向に沿ってヒータが配置される。配置方向として、縦置きにされることも横置きにされることもあるが、温度分布形成の容易さや結晶成長容器内での結晶成長の諸事情から縦置きにされることが多かった。
そして従来、化合物誘電体もしくは半導体のバルク結晶成長では、一般にルツボもしくはアンプルのような結晶成長用の容器内に原料多結晶を充填し、原料多結晶を高温にして、一旦液相または気相に相変態させ、ルツボ若しくはアンプル内の低温部において、その液相、若しくは気相から結晶を再凝固させることによって単結晶を得る。原料は高温部に、成長単結晶は低温部にあるということが条件になる。
ここで、ルツボとはその内部の原料多結晶が充填され、結晶がその内壁に接するように成長する容器のことである。アンプルとはその内部に原料多結晶が充填された封管を意味する。結晶がアンプル内壁に接しながら成長する場合もある。それはルツボを用いない場合である。ルツボがないのでルツボ固定の問題はない。ルツボ、アンプルのいずれにしても、非常に高温の下では材質が軟化または少なくとも強度低下して変形し易くなり、アンプルの場合には、密閉下で、蒸気相の高温による膨張によって破裂を来たすことになる。
また従来、結晶がアンプル内壁に接触しないで成長する場合もある。アンプル内にルツボを配置し、結晶がそのルツボ内壁に接しながら結晶を成長させるのである。ルツボとアンプルが二重になる場合は、アンプル内でルツボがぐらつかないように、アンプル内径とルツボ外径をほぼ同じにするか、ルツボ保持具を用いる必要があると従来はされていた。
ところで、前記IIa-III2-VI4の組成の化合物のうち、或る部分については、従来既に検討がされている。例えば、SrIn2 VI 4(VI=S,Se等)の組成を有する化合物結晶自体は、最初に1979年にklee(非特許文献4のRepresentation and crystal structure of SrIn2Se4 and BaIn2Se4, Klee, W. a; Schaefer, H. Revue de Chimie Minerale. Volume 16, Issue 5 , 1979, Pages 465-472)により、次にKipp(非特許文献5のSynthesis and characterization of alkaline-earth indium sulfides, Kipp, D.O. a; Lowe-Ma, C.K.; Vanderah, T.A.,Chemistry of Materials, Volume 2, Issue 5 , 1990, Pages 506-511)、Donohue(非特許文献6のSYNTHESIS AND PHOTOLUMINESCENCE OF MIIM2III(S,Se)4,Donohue, P. C.; Hanlon, J. E., J. Electrochem. Soc., Volume 121, Issue 1 , January 1974, Pages 137-142)、そしてEisenmann(非特許文献7のB. Eisenmann and A. Hofmann, Z. Kristallogr. 197 (1991), p. 167.)により検討されたが、しかし、主に前記のような理由により、現在まで光学特性を評価するのに充分なサイズを有する単結晶は得られていない。
特許文献1の特表2004−528465公報には、希土類金属(特に好適にはGd)で賦活されたチオガレート系化合物が記載されているが、このチオガレート系化合物は、蒸着またはスパッタリングによる高輝度蛍光薄膜にすぎない。特許文献2の特開2005−64233公報には、希土類をドープしたチオガレート系化合物を用いたLED素子が開示されているが、しかし、この文献記載の技術においては、青色または紫外光を発光する励起素子として平均粒径D50が5〜20μmのMg・Zn-O系またはIn・Al・Ga-N系のものを用い、希土類をドープしたチオガレート系化合物は、受光した青色または紫外光を長波長光に変換するための樹脂―蛍光体微粒子の塗工層における微粒子蛍光体であってバルク結晶体ではない。
該IIa-III2-VI4の組成の化合物結晶体の光電素子としての有用性に関し、固体レーザとしては、バンドギャップ間の遷移を利用した半導体レーザ(GaAs等)は、母体の光学遷移に基くものであるので、濃度消光の点を別にして、光学利得が大きい反面、発振波長も母体固有ものに限られ、また、母体中の不純物中心の遷移を利用した不純物レーザ(Al2O3:Ti等)では、不純物の種類によりフォノンが関与する遷移幅を変えて波長可変性が達成できる反面、母体ではなく不純物の光学遷移を用いるため光学利得は小さいという問題を解決するものとして、本発明者らは、先にMGa2S4:Ce(MはCa,Ba,SrのIIa族元素)で表され、Ceを添加したチオガレート化合物を光学利得媒体とする光増幅作用及び波長可変特精を有するチオガレートレーザを提案(特許文献3の特開2001−257408号公報)し、さらに、これを改良したものとして、チオガレート化合物CaGa2S4のCaをEuに100%置換したストイキオ メトリック希土類硫化物EuGa2S4を用い、高利得、波長可変、全方位性のレーザ媒質を提案(特許文献4の特開2004−111705号公報)し、さらに、このレーザ媒質の問題点(発光中心としてEu100%であるため濃度消光がある点、及び、高出力化を意図して結晶内部の発光中心(Eu元素)を結晶表面から強く励起したときの結晶劣化及び破壊)を防止することができるものとして、M1-xEuxGaS4(MはCa,Sr,Baで、0.01≦x<1)を提案(特許文献5の特願2004−055465号明細書)したが、これらは主に、ブリッジマン法(非特許文献8のG.Tammann,Lehrbuch Acta der Metallographie L.Voss.leipzig(1923),P.W.Bridgeman,Proc,Amer.Acad.,60(1925),pp306)を改良したいわゆる改良ブリッジマン法(種結晶を納めるルツボの先端領域を小さく絞り込むことと、結晶の成長方向に沿ってルツボに温度勾配を設けることの改良を加えたもの)より、先端領域に連なる大領域に単結晶を成長させることを意図した方法により得られたものである。
また、本発明者らは、IIa・III・VI4(=IIaVI・IIIVI)の組成を有する化合物の物性について鋭意検討してきたが、先に、このIIa・III・VI4(=IIaVI・IIIVI)の組成を有する化合物の合成過程および結晶成長過程における熱収支の詳細、および相平衡の温度依存性の詳細を、示差熱分析(Differential thermal Analysis, DTA)、および粉末X線回析(X−Ray Diffraction, XRD)により検討し、報告(非特許文献9の"Single Crystal growth of SrIn2VI4 (VI=S,Se) Compounds Solidifying through Supercooling" T.Takizawa, M.Kubo, C. Hidaka:Journal of Crystal Growth 275巻 (2005),pp. e433-e437)した。その概要は図2〜図6に示される。ここで、元素間の化学反応熱は、図2に示されるように、DTAシグナルの積分面積を、融解熱が既知(下の*印の式)の元素のシグナルで得られる積分面積を比較することで求めた。
(*) Ca+S → CaS + 1190KJ/mol
(*) Sr+S→ SrS + 1590KJ/mol
2Ga+3S→ Ga + 3030KJ/mol
CaS+Ga→ CaGa + 220KJ/mol
SrS+Ga→ SrGa + 90KJ/mol
Srは、Sと約250℃で、Seと約450℃で、それぞれ激しい発熱を伴って反応するが、この反応は、時には強い熱ショックを齎し石英アンプルを破壊する。Inとカルコゲン元素(S及びSe)とは、それぞれ、約650℃及び約250℃で激しい放熱を伴って反応してIn2S3及びIn2Seを生成し、特に、前者は、高圧S蒸気生成により石英アンプルをしばしば破壊し、後者は、In2Se3滴が激しい化学反応によりアンプル全内壁に飛散する。
図3は、CaGaS及びSrGaSのDTAシグナルチャートを示す。この図では、各発熱反応のピーク及び吸熱反応の鋭いV型谷がよく分かる。図4は、SrIn2Se4における過冷却を昇温と共に示すXRD チャート及びXRD のBragg 角(2θ)チャートを示す。図5は、前図のようなXRD チャート及びXRDチャートを用いて作成されたSrS-In2S3系とSrSIn2Se3系の擬二元状態図を示す。(A)(B)両図とも共晶反応が現われ、両図から、SrInS4の場合コングルエントであり、これに対してSrIn2Se4は包晶反応を有する非コングルエントであることが分かる。図6は、CaS-Ga2S3系、及びSrS-Ga2S3系の擬二元状態図を示す。これらは、本発明のための基礎的事項になったものであるので、若干詳細に引用説明することにした。
特表2004−528465公報 特開2005−64233公報 特開2001−257408号公報 特開2004−111705号公報 特願2004−055465号明細書 R.S.Wagner & W.C.Ellis, Trans. AIME,233(1965),pp1053 千川純一、中山忠久,物理学会誌,19(1964)、pp602 W.W.Piper & S.J.Polish, J. Appl. Phys., 32(1961),pp1278 Representation and crystal structure of SrIn2Se4 and BaIn2Se4, Klee, W. a; Schaefer, H. Revue de Chimie Minerale. Volume 16, Issue 5 , 1979, Pages 465-472 Synthesis and characterization of alkaline-earth indium sulfides, Kipp, D.O. a; Lowe-Ma, C.K.; Vanderah, T.A.,Chemistry of Materials, Volume 2, Issue 5 , 1990, Pages 506-511 SYNTHESIS AND PHOTOLUMINESCENCE OF MIIM2III(S,Se)4,Donohue, P. C.; Hanlon, J. E., J. Electrochem. Soc., Volume 121, Issue 1 , January 1974, Pages 137-142 B. Eisenmann and A. Hofmann, Z. Kristallogr. 197 (1991), p. 167 G.Tammann,Lehrbuch Acta der Metallographie L.Voss.leipzig (1923), & P.W.Bridgeman,Proc, Amer. Acad., 60(1925),pp306) "Single Crystal growth of SrIn2VI4 (VI=S,Se) Compounds Solidifying through Supercooling" T.Takizawa, M.Kubo, C. Hidaka:Journal of Crystal Growth 275巻 (2005),pp. e433-e437
本発明は、上述の従来技術の問題に鑑みて、前記熱収支の詳細検討の結果を基にして、その後さらに検討を重ねてなされたものであり、その目的は、IIaIII2VI4組成の化合物のバルク単結晶の確実で安全な作製方法を提供することにあり、また、そのための好適な作製装置を提供することにある。
本発明者らは上記課題を解決すべく様々な検討を行なった結果、CaS、SrSのようなIIaVIの式で表される中間体(本発明の各段階においてはこのようなIIa金属化合物の中間体は実際には単離されない)、GaSのようなIII2VI3式で表される中間体のうち、後者が、発生反応熱量が大であること、図5、図6に示されるように後者の濃度が過剰(50mol%以上)な領域で共晶反応が優勢になること等を注目、最善策を熟考して、後者を予め別に合成し次にこれを用いて、IIa・III・VI4化合物合成のための避け難い長時間の反応期間中、VI族元素の蒸気圧を制御しつつ合成することを意図して、上述のように従来公知の結晶成長容器内に高温部と低温部を設けるという技術的概念を、従来用いられているバルク結晶成長のための適用でなく、III2VI3式で表される中間体の合成に適用し、最後の結晶成長容器ではカーボン製ルツボをアンプルに封入して用いることにより、前記目的が好適裡に達成されることを知見するに到った。そのため、各アンプル容器を加熱炉内に配置し、加熱炉に備え付けたヒータを発熱させ、それぞれ所望の温度分布を結晶成長容器内に形成する。ここで、本発明においては、結晶が成長する方向(結晶成長方向)に沿って、所望の温度分布を形成すべく、従来のように結晶成長方向に沿ってヒータを縦置きにすることは、かならずしも必要でない。
而して、上記目的は、本発明の(1)IIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する方法であって、(a)VI族元素の蒸気存在下で、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解して一般式IIa・III・VI4の組成を有する化合物を合成する段階、(b)IIa・III・VI4化合物を過冷却点以下まで冷却して該IIa・III・VI4化合物を凝固する段階、(c)凝固した該IIa・III・VI4化合物を再加熱した後徐冷することにより種結晶を作製する段階、(d)該種結晶を用いて、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階、を含むことを特徴とするIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(2)前記(a)の段階で使用される前記III2VI化合物が、(a1)VI族元素の蒸気存在下でIII族元素を融解して、一般式III2VIで表される化合物を形成した後冷却してIII2VI化合物の凝固物を作製する段階により作製されたものであることを特徴とする前記第(1)項に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(3)前記(a1)のIII2VI化合物の凝固物を作製する段階が、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III族元素を融解する金属融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と金属融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする前記第(2)項に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(4)前記(a)の一般式IIa・III・VI4化合物を合成する段階が、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解する中間体融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と中間体融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(3)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(5)前記(d)の種結晶を用いて、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階が、前記III2VI化合物をフラックスとして、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物から、前記種結晶を用いてIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(4)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(6)前記(d)のIIa・III・VI4の化合物のバルク単結晶を作製する段階が、ガラス質カーボンルツボとこれを封入するアンプルからなり、該カーボンルツボが、バルク単結晶成長のための大径部とその端面に設けられ前記種結晶を配置する小径部とからなるルツボを封入したアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(5)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(7)前記ガラス質カーボンルツボが、円筒状の外形を有し、両端外周に着脱自在なフランジを外すことにより長軸方向に分割可能な2個の半月洞部材からなるものであることを特徴とする前記第(6)項に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(8)前記(c)の再加熱が、細部(キャピラリー)に一部の凝固結晶を溶かさず残し、それ以外の残部を溶解させ、その後、冷却することにより細部に種結晶を成長させるものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(7)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(9)前記(a)の段階が、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解する中間体融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と中間体融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする前記第(1)項乃至第(8)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(10)前記IIa族金属元素が、Mg,Ca,Sr,Baからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(9)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(11)前記III族元素が、Ga、Inからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(10)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(12)前記VI族元素が、S,Se,Teからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする前記第(1)項乃至第(11)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(13)ランタン系希土類元素が添加されていることを特徴とする前記第(1)項乃至第(12)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(14)IIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する装置であって、少なくとも(a1)VI族元素の蒸気存在下でIII族元素を融解して、一般式III2VIで表される化合物を形成した後冷却してIII2VI化合物の凝固物を作製するためのアンプルと、(a)一般式IIa・III・VI4化合物を合成する段階が、前記VI族元素の蒸気存在下でIII2VI化合物とIIa金属元素とを融解して一般式IIa・III・VI4の組成を有する化合物を合成するためのアンプルと、(d) ガラス質カーボンルツボとこれを封入するアンプルの(a1)、(a)及び(d)の3つのアンプルキッドからなり、(d)のアンプル中に封入される該カーボンルツボが、バルク単結晶成長のための大径部とその端面に設けられ前記種結晶を配置する小径部とからなることを特徴とするIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(15)前記ガラス質カーボンルツボが、円筒状の外形を有し、両端外周に着脱自在なフランジを外すことにより長軸方向に分割可能な2個の半月洞部材からなるものであることを特徴とする前記第(14)項に記載のIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(16)前記(a1)のアンプルが、VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III族元素を融解する金属融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と金属融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するものであることを特徴とする前記第(14)項または第(15)項に記載のIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置、により達成される。
また、上記目的は、本発明の(17)前記(a)のアンプルが、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解する中間体融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と中間体融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するものであることを特徴とする前記第(14)項乃至第(16)項のいずれか1に記載のIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置、により達成される。
以下の詳細かつ具体的な説明から理解されるように、本発明によれば、IIaIII2VI4の組成の化合物のバルク単結晶の確実で安全な作製方法が提供され、バルク単結晶は、発光波長領域が広範であって有用性が高く、また、そのバルク単結晶製造のための好適な作製装置が提供されるという極めて優れた効果が発揮される。
以下に、本発明のIIaIII2VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法および、そのための作製装置について詳細かつ具体的に説明する。
本発明は、上記のように、IIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する方法であって、(a)VI族元素の蒸気存在下で、III2VI化合物とIIa金属元素とを加熱融解して一般式IIa・III・VI4の組成を有する化合物を合成する段階、(b)IIa・III・VI4化合物を過冷却点以下まで冷却して該IIa・III・VI4化合物を凝固する段階、(c)凝固した該IIa・III・VI4化合物を再加熱した後徐冷することにより種結晶を作製する段階、(d)該種結晶を用いて、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階、を含むことを特徴とするものであり、また、前記(a)の段階で使用される前記III2VI化合物が、(a1)VI族元素の蒸気存在下でIII族元素を加熱融解して、一般式III2VIで表される化合物を形成した後冷却してIII2VI化合物の凝固物を作製する段階により作製されたものであることを特徴とするものであるが、この本発明の要諦部分をさらに要約して次に手短かに説明する。
周期律表のIIa族元素、III族元素及びVI族元素のIIa-III2-VI4(ここで、IIaはCa、Sr等を、IIIはGa、In等を、VIはS、Se等を、それぞれ表わす)からなる組成のカルコゲナイド化合物のような、原料成分間の激しい発熱を伴う反応のため系内の原料成分の気相の蒸気圧が急激に上昇し勝ちな場合には、温度制御がより難かしくなる。また、一般的に1100℃以上の高い融点を有する上記化合物は、上記熱管理の問題もあって、結晶生育が難かしい。さらに、原料成分が気相であるときに1100℃以上の高温に急激に温度上昇すれば、反応系の著しい昇圧を齎らし、容器の破壊を招く。
融液の過冷却状態を生じがちな場合も取り扱いが難かしい。過冷却状態から一瞬のうちに凝固する傾向があり、したがって、多結晶体(甚だしい急冷のときにはアモルファス体生成をも伴う)を生じがちである。
つまり、前記IIa-III2-VI4組成のカルコゲナイド化合物のうち1部、例えばSrIn2VI4(VI=S、Se)は、既に上で見たように、融液の過冷却状態を生じがちである。本発明者らは、石英アンプル中に封入された前記IIa-III2-VI4の組成の化合物の結晶育成に、アモルフアス炭素製ルツボを用いて、前記IIa-III2-VI4組成の過冷却を避け、融点付近で反応させることができた。すなわち、該炭素製ルツボとして、小キャピラリー部分に続く大単結晶を得るための大容積空洞部を有する構造のものを創作し、前記カルコゲナイド化合物のための配合物を該ルツボの空洞部に入れて薄層状にセットし、これを初めに融点以上に加熱、融解し、過冷却点以下まで冷却して凝固させた。
次に、ルツボの小キャピラリー部分の底部にこの凝固物を配置し、再度加熱したが、しかし今度は融点より僅かに低い温度を保持し、ついで融解物をゆっくり冷却し、低温により前記薄層状部分の跡に種結晶を精製させた。そして、この種結晶の助けにより、前記ルツボの大容積空洞部に単結晶連続相を育成した。
このような化合物の各構成成分は、化合物合成の際、時には密封された容器の爆破を起こすほど、互いに非常に化学的に活性である。加えて、得られた化合物は1100℃以上の高融点であることも、これら化合物の合成を難かしくしている。さらに、これらのうち、一部例えばSrIn2VI4(VI=S,Se等)は、過冷却を示し勝ちであり、これも、結晶成長を極めて難しくする原因となる。
しかし、本発明においては、石英アンプル中に封入されたカーボン製ルツボを採用することにより、前記過冷却と、容器内壁への融点付近の温度にある融解物の付着とを回避し、最初にIIa-III2-VI4組成の単結晶を成長させることに成功した。
重要な点は、最初の結晶成長のための種結晶を如何に作製するかにあると考えられたが、本発明における前記解決の方向は、結果から見て、妥当なものであり、試行したSrIn2S4,SrInSe4,CaGa2S4,SrGa2S4について、100μm近いまたは100μm以上の単結晶成長が達成され、この単結晶の光吸収特性が測定された(図7参照)。
従来でも、この種の化合物例えばIIa金属硫化物―チオガレート化合物はX線回析可能(X線回析は平行X線が入射し反射して出てくる程度の広がりを持った結晶格子の大きさが少なくとも必要であるのは事実)な結晶として知られているが、その限界は非常に小さく、0.1〜10ナノメートルのサイズで充分測定可能である。
本発明においては、高圧蒸気による石英アンプルの破裂やIII2VI4中間体滴のアンプル内壁前面への飛散を避けるため、全成分元素を一度に反応させるのではなく、III2VI4中間体の合成過程をIIa-III2-VI4組成の化合物合成過程とに分け(つまり、予めIII2VI4中間体を合成)る。
さらに、IIa-III2-VI4組成の溶融した化合物の過冷却点は、これらの融点よりもはるかに低いことに着目し、この過冷却を避けるための具体的対応(温度制御プログラム)が種結晶生成のため採用される。つまり、(1)化合物を一旦融点以上に温度上昇させた後、冷却して凝固させ、(2)つぎに、再度、細部に一部の凝固結晶を溶かさず残し、それ以外の残部を溶解させ、(3)その後、冷却することにより細部に種結晶を成長させ、(4)この種結晶を元に単結晶を成長させる。
図8は、このような本発明のバルク単結晶作製方法の1例を説明する図である。
この例においては、IIa族の金属元素(M)としてCa, III族金属元素としてGa(mp=29.78℃、bp=2300±15℃)、VI族元素としてS(bp=444.6℃)が用いられたが、本発明においては、IIa族金属元素として、他にMg, Sr,Baを好適に用いることができ、これらMg, Ca, Sr,Baは単独であっても或いは併用されてもよい。
また、III族元素としては、Gaの他、In(mp=156℃、bp=2100℃)、が好適に用いられ、Ga、Inは単独であっても或いは併用されてもよい。さらに、VI族元素としては、Sの他、Se(bp=763℃),Te(bp=1087℃)が好適に用いられ、これらS、Se,Teは単独であっても或いは併用されてもよい。
さらに、本発明においては、これらIIa・III・VI4の組成に、希土類元素が添加されてもよい。希土類元素としては、ランタン系希土類元素が好ましく用いられる。
希土類を添加したIIa・III・VI4化合物の薄膜は、EL表示素子の発光母体として注目を浴びており、すでに実用化されたものもある。また、本願発明により、この化合物の大型単結晶が得られれば、波長可変のレーザ用母体としても期待される。図9には、各種波長可変レーザの発振波長域が参考までに示される。
再び図8に戻って、この例においては、中間体Ga2S3がアンプル(a1)を用いて予め合成されるが、このアンプル(a1)は、Sの蒸気を発生させる蒸気発生空洞部(図中右側)と、Ga元素を融解する金属融解空洞部(図中左側)と、蒸気発生空洞部と金属融解空洞部とを連結する蒸気移動路(図中、中央細部)とを有し、この例では、Sを収納する蒸気発生空洞部は400〜500℃に加熱されS蒸気を発生し、金属融解空洞部は980〜1120℃に保持される。発生したS蒸気は蒸気移動路を経て金属融解空洞部に至り、最初は液状Gaのみで途中からGa+生成Ga2S3中のGaと反応し最後には化学量論的に中間体Ga2S3が生成される。
この例では、Sの蒸気を発生させる蒸気発生空洞部を有するアンプル(a1)が用いられたが、本発明においては、予め別途作製された中間体Ga2S3(III2VI化合物)を用いることが必須であって、中間体Ga2S3が、どのように作製されたものかは発明の本質的部分ではないが、1つの選択肢として、S(VI族元素)の蒸気存在下でGa(III族元素)を融解して、Ga2S3(III2VI化合物)を形成した後冷却してIII2VI化合物の凝固物を作製する段階により作製することが、前記急激な発熱を伴いS蒸気の存在を必要とする反応の安全性の等の観点から、好ましく、前記アンプル(a1)が用いられることがより好ましい。
次に、アンプル(a)を用いて、CaGa2S4化合物が作製されるが、このアンプル(a)は、Sの蒸気を発生させる蒸気発生空洞部(図中右側)と、中間体Ga2S3及びCa(II族元素)を融解する中間体融解空洞部(図中左側)と、蒸気発生空洞部と中間体融解空洞部とを連結する蒸気移動路(図中、中央細部)とを有し、この例では、Sを収納する蒸気発生空洞部は300〜500℃に加熱されてS蒸気を発生し、中間体融解空洞部は450〜1120℃に保持される。発生したS蒸気は蒸気移動路を経て中間体融解空洞部に至り、中のGaと反応してCaSを生成すると共に、生成したCaSはGa2S3と反応してCaGa2S4化合物が生成される。
次に、前記のように、アンプル(d)において、単結晶成長操作に先立ち、種CaGa2S4結晶作製のための温度制御プログラムが適用される。つまり、(1)化合物を一旦融点以上に温度上昇させた後、冷却して凝固させ、(2)つぎに、再度、細部に一部の凝固結晶を溶かさず残し、それ以外の残部を溶解させ、(3)その後、冷却することにより細部に種結晶を成長させ、(4)この種結晶を元に、次段階で、単結晶を成長させる。
図10には、本発明における温度制御プログラムの1例と、これを実行するのに適した本発明に係る改良ルツボの1例が、図12の従来型のルツボを用いた従来型の温度制御例と対比して示される。この例の温度制御プログラムにおいて、図10中の温度プロフィル1に示されるように、温度は、最初、化合物の融点以上の1030℃に上昇させられ、この温度で24時間保持され、2時間で過冷却点以下の600℃まで温度低下させ、この温度で2時間一旦凝固させ、再度、一部の凝固部を残したまま、最初の1030℃より若干低い1014℃に2時間かけて上温(再加熱)させてこの温度で4時間融解する。
この再加熱は、細部に一部の凝固結晶を溶かさず残し、それ以外の残部を溶解させ、その後、冷却することにより細部に種結晶を成長させるためのものであり、そのような一部凝固結晶を溶かさず残し他は融解するような温度制御の態様は、時間と温度との双方に依存するので、温度プロフィル1に変えて、同図中の温度プロフィル2のようなものであってもよい。プロフィル1の場合もプロフィル2の場合も、凝固した後再加熱終了までの時間は、偶々、4時間であるが、本発明における再加熱開始―終了までの時間は、通常40分〜8時間、好ましくは1〜6時間である。
この種結晶を元に、アンプル(d)のルツボ内で、次段階の単結晶成長が行われるが、温度プロフィル1,2には、その具体的温度制御が例として示されている。
これに対して、図12の従来型のルツボを用いた従来型の温度制御例においては、過冷却があると、同図の温度プロフィルにて示されるように、ある温語で凝固が急激に生じ、単結晶は作製されず、全体が多結晶の塊になる。
ところで、前記図3のDTAチャート、図5,6のXRDチャートによれば、CaGa2S4,Sr Ga2S4のような本発明が対象とするカルコゲネート化合物はコングルーエント(調和融解性)であることが理解される。また、GaS2S3の濃度が過剰(50〜100mol%)の領域で共晶反応を示すことが理科される。これらの結果から、融液から成長させる融液成長法と、GaS2S3を自己フラックスとしてフラックス成長させる方法が考えられるが、SrGa2S4は、フラックス成長により融点よりも低い温度から成長させることができるため、このフラックス成長法が有利である。
さらに、単結晶成長の際の上記温度プロフィル1,2によれば、ルツボ及びこれを封入しているアンプル(d)は、長時間、高圧に曝されていることが理解されるが、この例に示される本発明のバルク単結晶作製段階は、ガラス質カーボンルツボとこれを封入するアンプル(d)からなる(PbTeの場合は問題にならないがPbS,PbSeの場合、石英管カルコゲン元素の蒸気圧で爆発の危険があることが知られている)。単結晶成長のための大径部とその端面に設けられ前記種結晶を配置する小径部とからなるルツボが用いられ、これをアンプル(d)に封入して用いる。
そして、このガラス質カーボンルツボは、図から理解されるように、円筒状の外形を有し、両端外周に着脱自在なフランジを外すことにより長軸方向に分割可能な2個の半月洞部材からなる。
また、以上の詳細化具体的な図面を含む説明から理解されるように、
本発明は、換言すれば、IIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する装置であって、少なくとも(a1)VI族元素の蒸気存在下でIII族元素を加熱融解して、一般式III2VIで表される化合物を形成した後冷却してIII2VI化合物の凝固物を作製するためのアンプルと、(a)一般式IIa・III・VI4化合物を合成する段階が、前記VI族元素の蒸気存在下でIII2VI化合物とIIa金属元素とを加熱融解して一般式IIa・III・VI4の組成を有する化合物を合成するためのアンプルと、(d) ガラス質カーボンルツボとこれを封入するアンプルの(a1)、(a)及び(d)の3つのアンプルキッドからなり、(d)のアンプル中に封入される該カーボンルツボが、バルク単結晶成長のための大径部とその端面に設けられ前記種結晶を配置する小径部とからなることを内容とするIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置、を提供し、また特に、前記ガラス質カーボンルツボが、円筒状の外形を有し、両端外周に着脱自在なフランジを外すことにより長軸方向に分割可能な2個の半月洞部材からなるものである場合を包含している。
そして、図11には、図10記載の具体的なルツボ例を用い、温度プロフィル1を適用したときのルツボの各領域における温度勾配が示されている。
また、換言すれば、本発明は、VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III族元素を加熱融解する金属加熱融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と金属加熱融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプル(a1)、VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III2VI化合物とIIa金属元素とを加熱融解する中間体加熱融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と中間体加熱融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプル(a)をも提案していることは、明らかである。
従来の結晶成長法の1例を示す図である。 従来のDTAシグナルから融解熱の算出法を示す図である。 従来のCaGaS及びSrGaSのDTAシグナルチャートを示す図である。 従来のSrIn2Se4における過冷却を示すXRD チャート及びXRD のBragg 角(2θ)チャートを示す。 従来のXRD チャート及びXRDチャートを用いて作成されたSrS-In2S3系とSrSIn2Se3系の擬二元状態図を示す。 従来のCaS-Ga2S3系、及びSrS-Ga2S3系の擬二元状態図を示す。 本発明による単結晶、及びこの単結晶の光吸収特性を示す。 本発明のバルク単結晶作製方法の1例を説明する図である。 各種波長可変レーザの発振波長域を示す図である。 本発明における温度制御プログラムの1例、本発明に係る改良ルツボの1例を示す図である。 本発明のルツボの各領域における温度勾配を示す図である。 従来のルツボを用いた従来の温度制御例を示す図である。

Claims (17)

  1. IIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する方法であって、(a)VI族元素の蒸気存在下で、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解して一般式IIa・III・VI4の組成を有する化合物を合成する段階、(b) IIa・III・VI4化合物を過冷却点以下まで冷却して該IIa・III・VI4化合物を凝固させる段階、(c)凝固した該IIa・III・VI4化合物を再加熱した後徐冷することにより種結晶を作製する段階、(d)該種結晶を用いて、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階、を含むことを特徴とするIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  2. 前記(a)の段階で使用される前記III2VI化合物が、(a1)VI族元素の蒸気存在下でIII族元素を融解し、一般式III2VIで表される化合物を形成した後冷却してIII2VI化合物の凝固物を作製する段階により作製されたものであることを特徴とする請求項1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  3. 前記(a1)のIII2VI化合物の凝固物を作製する段階が、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III族元素を融解する金属融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と金属融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする請求項2に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  4. 前記(a)の一般式IIa・III・VI4化合物を合成する段階が、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解する中間体融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と中間体融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  5. 前記(d)の種結晶を用いて、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階が、前記III2VI化合物をフラックスとして、IIa−III-VI族間のIIa・III・VI4の組成を有する化合物から、前記種結晶を用いてIIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する段階であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  6. 前記(d)のIIa・III・VI4の化合物のバルク単結晶を作製する段階が、ガラス質カーボンルツボとこれを封入するアンプルからなり、該カーボンルツボが、バルク単結晶成長のための大径部とその端面に設けられ前記種結晶を配置する小径部とからなるルツボを封入したアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  7. 前記ガラス質カーボンルツボが、円筒状の外形を有し、両端外周に着脱自在なフランジを外すことにより長軸方向に分割可能な2個の半月洞部材からなるものであることを特徴とする請求項6に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  8. 前記(c)の再加熱が、細部に一部の凝固結晶を溶かさず残し、それ以外の残部を溶解させ、その後、冷却することにより細部に種結晶を成長させるものであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  9. 前記(a)の段階が、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解する中間体融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と中間体融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するアンプルを用いて遂行されるものであることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  10. 前記IIa族金属元素が、Mg,Ca,Sr,Baからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  11. 前記III族元素が、Ga、Inからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  12. 前記VI族元素が、S,Se,Teからなる群から選択された少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  13. ランタン系希土類元素が添加されていることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1に記載のIIa・III・VI4の組成の化合物のバルク単結晶の作製方法。
  14. IIa・III・VI4の組成を有する化合物のバルク単結晶を作製する装置であって、少なくとも(a1)VI族元素の蒸気存在下でIII族元素を融解して、一般式III2VIで表される化合物を形成した後冷却してIII2VI化合物の凝固物を作製するためのアンプルと、(a)一般式IIa・III・VI4化合物を合成する段階が、前記VI族元素の蒸気存在下でIII2VI化合物とIIa金属元素とを融解して一般式IIa・III・VI4の組成を有する化合物を合成するためのアンプルと、(d) ガラス質カーボンルツボとこれを封入するアンプルの(a1)、(a)及び(d)の3つのアンプルキッドからなり、(d)のアンプル中に封入される該カーボンルツボが、バルク単結晶成長のための大径部とその端面に設けられ前記種結晶を配置する小径部とからなることを特徴とするIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置。
  15. 前記ガラス質カーボンルツボが、円筒状の外形を有し、両端外周に着脱自在なフランジを外すことにより長軸方向に分割可能な2個の半月洞部材からなるものであることを特徴とする請求項14に記載のIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置。
  16. 前記(a1)のアンプルが、VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III族元素を融解する金属融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と金属融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するものであることを特徴とする請求項14または15に記載のIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置。
  17. 前記(a)のアンプルが、前記VI族元素の蒸気を発生させる蒸気発生空洞部と、III2VI化合物とIIa金属元素とを融解する中間体融解空洞部と、該蒸気発生空洞部と中間体融解空洞部とを連結する蒸気移動路とを有するものであることを特徴とする請求項14乃至16のいずれか1に記載のIIa・III・VI4化合物のバルク単結晶作製装置。

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CN114134575B (zh) * 2021-12-08 2023-07-25 中国科学院新疆理化技术研究所 含碱土金属缺陷黄铜矿类型化合物和红外非线性光学晶体及制备方法和应用

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