JP2006276558A - 液晶表示素子とその製造方法 - Google Patents

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千里 梶山
Hirotsugu Kikuchi
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Yumiko Kawamichi
由美子 川路
Tokai Hasuo
東海 蓮尾
Masahiro Yamaguchi
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Abstract

【課題】低電圧で駆動でき、単純マトッリクス駆動にも適したシャープネスの優れたPLCCモードの液晶表示素子を提供する。
【解決手段】少なくとも一方が透明電極を備える一対の電極付基板間に、シアノフェニル系ネマチック液晶混合物が高分子マトリックス中に連続相として分散され、電圧の印加に応じて液晶の屈折率と高分子マトリックスの屈折率がほぼ一致し光が透過する状態と、それらの屈折率が一致せず光が散乱する高分子/液晶複合体を挟持した液晶表示素子において、高分子マトリックスとして2種以上の単官能アクリレートモノマーと1種以上の多官能アクリレートモノマーの混合物であって溶解性パラメータSp値(Small法)が8.3〜8.6のものを原料とする共重合体を用いる。シアノフェニル系ネマチック液晶混合物及びアクリレートモノマー混合物を含有する組成物を均一に溶解した状態で、光照射することによって製造できる。
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶ディスプレイの技術分野に属し、特に、PLCCモードの液晶表示素子とその製造方法に関するものである。
多くの液晶表示素子が多くの分野に使用されているが、大部分の液晶表示素子はツイステッドネマチック、あるいは、スーパーツイステッドネマチック液晶表示素子のように、光の透過率制御のため偏光板を使用する。偏光板は光の偏光方向をそろえるため、理論的にも入射光の半分を無駄にしている。このため、表示が暗くなる欠点がある。
これに対して、光散乱を動作原理とする液晶光学素子には動的散乱(DS)、相転移(PC)及び、(高分子/液晶)複合体(PLCC:Polymer/Liquid Crystal Composite)の3つのモードが知られている。DSモードは水平もしくは垂直配向処理を行なった透明電極付基板に、導電性物質を添加した誘電異方性が負の液晶を封入したものであり、電圧を印加しない透過状態と、しきい値電圧より高い電圧印加により動的散乱を生じさせ、透過率を低下させた状態との二状態を制御するものである。またPCモードは、必要に応じて配向処理した透明電極付基板にコレステリック液晶を封入し、電圧印加の有無によりホメオトロビック配列のネマチック相(透過)とフォーカルコニック配列もしくはプレーナ配列のコレステリック相(散乱)の二状態を制御するものである。DSモード、PCモードのいずれも偏光板を使用しないため、広い視角が得られる利点はあるものの、前者は液晶中に導電性物質を添加した電流効果型であるため、消費電力が大きくなり、液晶の信頼性が低下するといった欠点を有している。また、後者においても動作電圧が、電極間距離/液晶のピッチに依存するため、大面積化しようとする場合、高い精度で均一なギャップを必要とするといった困難な問題を有している。
PLCCについてはいくつかの提案がなされており、Appl.Phys.Lett.,40(1)22(1982)(非特許文献1)には、液晶を多孔体に含浸させ、電界印加の有無により液晶の屈折率を変化させ、多孔体の屈折率とのマッチングとミスマッチングとを調節することにより、透過と散乱とを制御することが提案されている。この方法は偏光板を用いることなく原理的にDSモード、PCモードがもつ欠点を克服することが可能であり有用な方法である。同様の素子はポリビニルアルコールを使ってマイクロカプセル化したネマチック液晶により(特表昭58−501631号公報)(特許文献1)、また種々のラテックス取り込み液晶により(特開昭60−252687号公報)(特許文献2)、また、エポキシ樹脂中に液晶を分散硬化させる方法(特表昭61−502128号公報)(特許文献3)においても作製されている。また、特開昭63−271233号公報(特許文献4)には光硬化性ビニル化合物を使用してPLCCを製造する方法が開示されている。この方法は生産性に優れた方法である。しかしながら、これらPLCCの共通の欠点はこれら素子を駆動した場合に、印加電圧と透過率の関係において、印加電圧の増加に対していかに鋭く透過率増加するかを示すシャープネスがツイステッドネマチック、あるいは、スーパーツイステッドネマチック液晶表示素子のそれに比べて良くないことである。
液晶表示素子の駆動方法は薄膜トランジスター(TFT)法と単純マトリックス法があり、TFTは各画素に薄膜トランジスターを設けたものであり、高精細の動画表示に適しているが、製造コストが高い欠点を有する。一方、単純マトリックス法は行電極(走査電極)群と列電極(データ電極)群の交差部分を画素とし、行電極を順に選択しながら画素に電圧を時分割して印加する駆動方法であり、駆動回路および素子の製造コストが安価である。
この単純マトリックス法は広く、ツイステッドネマチック、あるいは、スーパーツイステッドネマチック液晶表示素子の駆動に使用されている。また、原理的にはPLCCの駆動にも適している。さらに、単純マトリックス駆動は数多くの改良がなされており、電圧平均化法、マルチラインアドレッシング法などがその例として挙げられる。電圧平均化法は、例えば、佐々木昭夫編「液晶エレクトロニクスの基礎と応用」(オーム社書店、昭和54年4月25日第1版第1刷発行92ページ)(非特許文献2)に詳しく述べられている。この駆動法では、走査線数をN、フレーム周期をTとしたとき、選択期間にはT/N、非選択期間には(N−1)T/Nの時間が割り当てられる(後述の図3参照)。すなわち、1フレーム内に、N本中に1本の選択パルスが存在し、ほかは、ON電圧選択パルスの1/bの波高値をもつバイアス波で構成される印加波形で成り立っている。この方法は液晶が電圧実効値に応答することが前提である。選択画素にVonの電圧が印加され、非選択画素にVoffの電圧が印加され、走査線数がN本の場合、
Figure 2006276558
となり、走査線数Nが大きいほどVon/Voffは小さくならざるをえないので、印加電圧の変化に対していかに鋭く透過率が変化するかを示すシャープネスが良くなければならない。すなわち、単純マトリックス駆動においてはシャープネスが悪ければ走査線数を大きくすることができず、従って、高精細な表示ができない。
特表昭58−501631号公報 特開昭60−252687号公報 特表昭61−502128号公報 特開昭63−271233号公報 Appl.Phys.Lett.,40(1)22(1982) 佐々木昭夫編「液晶エレクトロニクスの基礎と応用」(オーム社書店、昭和54年4月25日第1版発行92ページ)
本発明は、PLCCモードの新規な液晶表示素子、特に、低電圧で駆動できる光シャッターとしてだけではなく、単純マトリックス駆動にも適したシャープネスの優れた液晶表示素子とその製造方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、検討を重ねた結果、PLCCモードの液晶表示素子において、液晶としてシアノフェニル系ネマチック液晶混合物を用い、この液晶混合物のマトリックスとなる高分子として2種以上の単官能アクリレートモノマーと1種以上の多官能アクリレートモノマーとの混合物であって該モノマー混合物の溶解性パラメータSp値(Small法)が8.3〜8.6であるものを原料とする共重合体を用いることによって上記の目的が達成されることを見出し、本発明を導き出したものである。
本発明で用いる溶解性パラメータSp値は、Small法に従って計算し組成物の重量比によって平均した値を用いた(非特許文献3)。溶解性パラメータδはHildebrand−Scatchardの式で現されるが、蒸発エネルギーの実測値が必要であり、一般的にSp値が既知の液体分子の値から分子を構成する原子または原子団、結合型などの構成グループについてモル吸引力を算出し、これを用いて分子構造に応じて容易にSp値が算出可能であるSmall法が用いられている。Sp値の計算例を以下に示す。
<Sp値計算例>
計算式 δ=ΣFi/V
δ:溶解度パラメータ、Fi:モル吸引力定数、V:モル容積
モノマー:3,5,5−Trimethylhexyl acrylate(TMHA)
δ={214(CH3-)×4+133(−CH2-)×3+28(−CH<)×1+(−93)(>C<)×1+190(CH2=)×1+111(−CH=)×1+310(−COO−)×1}/225.6=7.98
液晶:4−pentyl 4’−cyanobiphenyl(図1参照)
δ={214(CH3-)×1+133(−CH2-)×4+685(Phenylene)×2+410(−CN)×1}/241.4=11.46
秋山三郎、井上隆、西敏夫「ポリマーブレンド−相溶性と界面−」(シーエムシー、1992年8月7日第5刷発行127ページ)
本発明で用いられる単官能アクリレートモノマー及び多官能アクリレートモノマーとしては、光照射(光露光)、すなわち、紫外線照射または電子線照射にて重合可能な市販されているものを好ましく用いることが出来る。多官能アクリレートモノマーとは一般に2官能アクリレートモノマーであり、高分子マトリックスの安定性や耐久性を増すために架橋剤として混合して用いることが望ましい。この様な紫外線や電子線にて重合可能な単官能モノマーとしては、例えば、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレ−ト、n−オクチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソオクチルアクリレート、3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ペンタエチレングリコールメチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールnブチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールイソブチルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールnへキシルエーテルアクリレート、ジエチレングリコールエチルヘキシルエーテルアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、テトラフロロプロピルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、5−ヒドロキシペンチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、7−ヒドロキシヘプチルアクリレート、8−ヒドロキシオクチルアクリレート等のアクリレートが挙げられる。多官能アクリレートモノマーとしては、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが上げられる。
本発明の液晶表示素子において高分子マトリックスとなる共重合体は、如上の単官能アクリレートモノマーの2種以上と如上の多官能アクリレートモノマーの1種との混合物を原料とするものであるが、実用的には、2種の単官能アクリレートモノマーと1種以上の多官能アクリレートモノマーとの混合物を用いるのが便宜である。特に好ましい態様は、モノマー混合物が2種の単官能アクリレートモノマーと1種の多官能アクリレートモノマーとから成り、前記単官能アクリレートモノマーの少なくとも1種がエーテル結合をもつモノマーであり、そのモノマー混合物の溶解性パラメータSp値が既述の範囲にある場合である(後述の実施例参照)。
本発明で用いられる液晶は、シアノフェニル系ネマチック液晶混合物であるが、重量比にて75%以上がシアノフェニル又はシアノターフェニル骨格の液晶を含有し溶解性パラメータSp値(Small法)が10.5〜11.5であることを特徴とするものであり、他に含有される液晶は特に限定されるものではなく、ネマチック液晶
、スメクチック液晶 、コレステリック液晶等いずれが混合されていても問題はない。
本発明に従えば、上記のごとき液晶表示素子を製造する方法であって、液晶(シアノフェニル系ネマチック液晶混合物)および2種以上の単官能アクリレートモノマーと1種以上の多官能アクリレートモノマーとの混合物であってその溶解性パラメータSp値(Small法)が8.3〜8.6である混合物を含有する組成物を均一に溶解した状態で、少なくとも一方が透明電極を備える一対の電極付基板間に保持して光照射(光露光)する工程を含むことを特徴とする液晶表示素子の製造方法が提供される。本発明の液晶表示素子の製造方法における好ましい態様においては、光照射は紫外線照射または電子線照射によるものであり、また、組成物に光硬化開始剤が含有されても良い。
本発明で使用される、2種以上の単官能アクリレートモノマーと1種以上の多官能アクリレートモノマーの混合物のモノマーは、硬化速度(重合速度)を速めるために、既述のように、光硬化開始剤(光重合開始剤)を加えるなどしても良い。このような光硬化開始剤(光重合開始剤)としては、ベンゾインエーテル系、ベンゾフェノン系、アセトフェノン系、チオキサントン系などが例示される。使用可能な具体的な光硬化開始剤(光重合開始剤)としては、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(メルク社製、商品名:ダロキュア1173)、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノプロパノン−1(チバ・ガイギ−社製、商品名:イルガキュア907)などが挙げられる。
以下、本発明の実施の形態を液晶表示素子の基本構成と製造方法に沿って具体的に説明する。
図1は液晶表示素子の基本構成を示す模式図であり、ここでは断面模式図が示されている。この図において、1および2は基板、3および4は電極、5はPLCC、6および7はシール材(スペーサー)を示す。
本発明の液晶表示素子において、基板1および2は少なくとも一方が透明であり、その材質としては硝子、硬質硝子やポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルホンなどの高分子フィルムを用いることができる。基板1および2の向かい合う面には電極3および4が形成されており、電極が透明な場合にはその材質はITOと称されるインジウムチンオキサイドが好ましい。素子を反射型で用いる場合、電極の材質はアルミニウム、チタンなどの金属が好ましい。
本発明の素子を製造する際、使用する液晶とモノマーの比率は性能に大きく影響し、液晶65重量部から85重量部に対してモノマーを35重量部から15重量部使用することが好ましい。液晶の比率が大きすぎれば、素子の駆動電圧は小さいけれども、その素子の散乱性能が良くない。また、液晶の比率が少なすぎれば駆動電圧が高く、また、そのシャープネスも良くない。モノマーと液晶は液状ないしは粘糊物として使用されれば良い。
本発明の液晶表示素子は、如上のシアノフェニル系ネマチック液晶と複数のアクリレートモノマーを含有する組成物を均一に溶解した状態で、少なくとも一方が透明電極を備える一対の電極付基板間に保持して光照射(光露光)することによって製造される。すなわち、この組成物は溶解した均一状態から、基板間に保持されて光露光工程を経ることにより、複数のアクリレートモノマーが共重合して硬化し、液晶と高分子マトリックスとが相分離した状態で固定化され、かくして、ネマチック液晶が高分子マトリックス中におたがいが連続相として分散された(高分子/液晶)複合体が基板間に挟持された表示素子が得られる。
ここで言う光照射とは、一般に紫外線照射あるいは、電子線照射を意味する。光照射前は、基板に保持された内容物は均一に溶解しているため無色透明であるが、光照射後は配列していないネマチック液晶と高分子マトリックスによる屈折率散乱のため白濁状態となる。光照度は5mW/cm2から100mW/cm2、特に10mW/cm2から70mW/cm2が好ましい。光照度が小さすぎれば駆動電圧が高くなる傾向にあり、また、シャープネスも良くなく、他方、大きすぎれば、素子の耐久性が小さい傾向にある。照射時間は5秒から600秒、特に、10秒から500秒が好ましい。大きすぎても小さすぎても素子の耐久性が小さい傾向にある。重合温度は10℃から55℃、特に、25℃から45℃が好ましい。低すぎても高すぎても光照射時の作業性が悪い。
このようにして作製された本発明の液晶表示素子は、電圧の印加に応じて、液晶と高分子マトリックスの屈折率がほぼ一致して光が透過する状態と、液晶と高分子マトリックスの屈折率が一致せず光が散乱する(白濁)状態とを呈する。
本発明の液晶表示素子の製造方法は、一方の電極付基板にシアノフェニル系ネマチック液晶と複数のアクリレートモノマーを含有する組成物を供給し、さらにその上に他方の電極付基板を重ね合せ、その後、光を照射して硬化させるという簡単な操作により実施できるので、生産性が良い。特に、電極付基板にプラスチック基板を使用することにより、連続プラスチックフィルムを使用した長尺の液晶光学素子が容易に製造できる。
なお、光の透過状態のムラを少なくするためには、基板間隙はある程度一定である方が良い。このため、ガラス粒子、プラスチック粒子、セラミック粒子などの間隙制御用のスペーサーを基板間隙に配置する方が好ましい。具体的には、電極付基板上にシアノフェニル系ネマチック液晶と複数のアクリレートモノマーを含有する組成物に基板間隙制御用のスペーサーを含有させて供給するか、組成物を供給前または後にスペーサーを供給して、他方の電極付基板を重ね合わせるようにすれば良い。この場合、重ね合わせた後に加圧し、その後、硬化させることにより、より均一な基板間隙になりやすい。
基板間隙は、最終的に得られる表示素子において、5マイクロメーターから50マイクロメーター、特に、7マイクロメーターから40マイクロメーターが好ましい。小さすぎればその素子の散乱性能が良くない。また、大きすぎれば駆動電圧が高くなる傾向にある。
大型の液晶光学素子の場合には、基板がプラスチックや薄いガラスの場合にさらに保護のためにプラスチックやガラスなどの保護板を積層したり、基板を強化ガラス、合せガラス、線入ガラスなどにしても良いなど種々の応用が可能である。
本発明の素子は、表示用素子、とりわけ従来の液晶表示素子が困難であった、大面積表示素子、湾曲状での表示素子などに利用できる。また、液晶表示素子の観察者側の裏側に透明プラスチック板あるいはガラス板を密着して設置し、エッジライトによって照明しても良い。また、本発明では、一方の電極を鏡面反射電極として鏡として使用しても良く、この場合には裏側の基板は不透明なガラス、プラスチック、セラミック、金属製としても良い。さらに、PLCC型の液晶表示素子である本発明の素子は、他のディスプレイであるTN液晶表示素子、エレクトロクロミック表示素子、エレクトロルミネッセンス表示素子などと積層して使用してもよ良く、種々の応用が可能である。
本発明の液晶表示素子は、シャープネス(すなわち、電圧変化に対する透過率変化の急峻性)がきわめて良好であり、単純マトリックス駆動にも適したPLCCモードの液晶表示素子である。
また、最近、エッジライト照明光として赤緑青のLEDを順次点灯して、PLCCをカラー表示する試みがNTTの中平篤らによって提案(2001年日本液晶討論会講演予稿集、515ページ)されている。本発明の液晶表示素子はシャープネスに優れているためこのような用途にも好適である。本発明の液晶表示素子は以下に記すような単純マトリックス駆動に適していることは言うまでもないが、その駆動電圧が10V以下と低いので、TFT駆動にも適している。
次に、図2を参照して、本発明の液晶表示素子を単純マトリックス駆動する例について説明する。既述したように単純マトリックス駆動法は行電極(走査電極)群と列電極(データ電極)群の交差部分を画素とし電圧を印加するディスプレイの駆動方法である。すなわち、図2において、行は走査電極、列はデータ電極の一部を示しており、単純マトリックス駆動される液晶表示素子の画素構成は、走査電極R1〜Rmとデータ電極C1〜Cnのm×nのマトッリクスで表すことができる。走査電極Raとデータ電極Cb(a、bはa≦m、b≦nを満たす自然数)との交差部分の画素をPa−bとする。また、これらの電極群はそれぞれ走査駆動IC(走査駆動部)10、データ駆動IC(信号駆動部)11の出力端子に接続されており、これらの駆動IC10、11から各電極に電圧を印加する。
詳述すると、単純マトリックス駆動される液晶表示素子においては、走査駆動部の出力端子に接続された走査電極群と、データ駆動部の出力端子に接続されたデータ電極群によりマトリックス状に画素が構成され、走査電極とデータ電極の間に液晶が配置されている。そして、走査駆動部が走査電極に、データ駆動部がデータ電極にそれぞれ電圧を印加し、それらの電圧の差を液晶複合組成物に印加する。走査電極を走査選択電極に選び、その他の走査電極を走査非選択電極に選び、走査選択電極に書き込みのための走査選択信号を印加し、同時に走査非選択電極には走査非選択信号を印加し、走査選択信号に同期してデータ電極に書き込みのためのデータ信号を印加し、走査選択信号とデータ信号の差からなる選択信号を走査選択電極上の画素を構成する(高分子/液晶)複合体に印加して表示状態を選択し、また走査非選択信号とデータ信号の差からなる非選択信号を走査非選択電極上の画素を構成する(高分子/液晶)複合体に印加する書き換え動作を行う。その後、次の走査電極を走査選択電極に選んで前記書き換え動作を行い、この書き換え動作を繰り返すことで全ての画素を構成する高分子/液晶複合体の表示状態を書き換えて保持する。
以下に、本発明の特徴をさらに具体的に明らかにするため実施例を記す。
液晶組成物(E7、Merck株式会社製シアノフェニル系ネマチック液晶:図1参照)80重量部に、3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート(TMHA)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(PEGMA)を変量として、1,4-ブタンジオールアクリレート(BDDA)2部としてモノマー組成物が20重量部となるよう加え、紫外線反応開始剤2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン(DMAP)1重量部を添加して、組成物の液体を作製した。この液体をギャップ(間隙)16.0マイクロメーターの2枚の透明電極付きガラス基板の間に自然注入し、25mW/cm2の紫外線光を40秒間ITOガラス板全体に均一に照射しモノマーの重合を行った。この素子の25℃における性能を表1にまとめて示す。
その性能測定は下記の条件下によって行った。集光角6度の光学系を使用し、作製した液晶表示素子に1000Hzの矩形波を0Vから100Vまで2V/秒の速度で昇圧しながら印加し、続いて、100Vから0Vまで降圧する。昇圧時、印加電圧が0Vの透過率をT0とし、透過率が飽和した時の透過率をT100と定義する。
V5は透過率がT5={(T100−T5)×0.05+T0}の時の印加電圧である。
V90は透過率がT90={(T100−T0)×0.9+T0}の時の印加電圧である。V80/V5を、電圧−透過率曲線の急峻性を示す指標であるシャープネスとする。
この値が小さく1に近いほどシャープネスが良好である。
Figure 2006276558
(実施例1〜4)
表1に示されるように、実施例1〜4はモノマー組成物のSp値が8.30〜8.60となるよう、単官能モノマーの量を変量とした。その性能はV90が6.5〜15.3Vと小さく優れており、15V以下のV90を達成するためにはモノマー組成物のSp値が8.3〜8.6である必要があることが解る。
そして、本実施例の素子は後述の比較例と比べてシャープネスが1.6と優れている。
(比較例1〜2)
表1に示されるように、比較例として単官能モノマーを複合系とせずに3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート(TMHA)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(PEGMA)をそれぞれ単独で使用した素子の性能を上げる。その性能はV90が100V以上であり良くなく、シャープネスも3以上であり良くない。
(比較例3〜4)
表1に示されるように、比較例としてモノマー組成物のSp値が8.3〜8.6を外れた場合の素子の性能を上げる。その性能はV90が30V以上であり良くない。
(実施例5〜8)
表2に液晶組成物(E7、Merck株式会社製シアノフェニル系ネマチック液晶)80重量部に、モノマー組成物のSp値が8.43〜8.57となるよう単官能モノマーである3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート(TMHA)、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(PEGMA)を組成重量比1:1として多官能モノマーである1,4−ブタンジオールアクリレート(BDDA)の量を変量としてモノマー量20部とした場合の素子の性能を上げる。4−ブタンジオールアクリレート(BDDA)の量が増えるに従ってV90も大きくなる傾向があるが、15V以下であり優れている。
また、何れの素子もシャープネスは1.6と優れている。
Figure 2006276558
(実施例9〜10)
表3の実施例9に液晶組成物(E7、Merck株式会社製シアノフェニル系ネマチック液晶)80重量部に、モノマー組成物のSp値が8.50となるよう単官能モノマーであるイソオクチルアクリレート(IOA)及びジエチレングリコールメチルエーテルアクリレート(DEGMA)、4−ブタンジオールアクリレート(BDDA)をモノマー組成物とした素子及び、実施例10にモノマー組成物のSp値が8.51となるよう単官能モノマーである2−エチルヘキシルアクリレ−ト(EHA)及びジエチレングリコールメチルエーテルアクリレート(DEGMA)、4−ブタンジオールアクリレート(BDDA)をモノマー組成物とした素子の性能を上げる。両素子ともV90は8V程度でありシャープネスも1.6と優れており、モノマー組成物のSp値が好適であれば性能の良い素子を作製可能である。
Figure 2006276558
(実施例11〜14)
如上に実施例としてE7(Merck株式会社製シアノフェニル系ネマチック液晶)を用いた組成例上げたが、表4にシアノフェニル系ネマチック液晶の組成を替えてSp値を変化させた液晶組成物を用いた場合の実施例を上げる。E7の液晶組成を図1に示すがその組成を平均するとE7の相溶性パラメータSp値は11.35と計算される。
それに対して実施例11〜14は、シアノフェニル系ネマチック液晶組成物80部と、モノマー組成物のSp値が8.39となるよう3,5,5−トリメチルヘキシルアクリレート(TMHA)9部、メトキシポリエチレングリコールアクリレート(PEGMA)9部、1,4−ブタンジオールアクリレート(BDDA)2部を調整して、シアノフェニル系ネマチック液晶組成物の種類を変えてそのSp値を変化させた素子の性能である。
実施例11及び実施例12は、E7にフッ素系ネマチック液晶及びトラン系ネマチック液晶混合液晶でSp値7.98であるTL−205(Merck株式会社製)をそれぞれ重量比で25%、10%混合し液晶系のSp値を10.6と11.5とした素子であるが、
その性能はV90はそれぞれ9.2V、7.0V、シャープネスも1.6であり両素子とも優れている。
実施例13及び実施例14は、シアノフェニル系ネマチック液晶組成物としてSp値11.30であるE−7(関東化学株式会社製)とSp値11.41であるE8(Merck株式会社製)を用いた素子であるが、その性能はV90はそれぞれ7.1V、8.9V、シャープネスも1.6であり両素子とも優れている。
このように、本発明で用いるシアノフェニル系ネマチック液晶混合物は、重量比にて75%以上がシアノフェニル又はシアノターフェニル骨格の液晶を含有しSp値が10.5〜11.5であることを特徴とするものであり、他に含有される液晶は特に限定されるものではない。
Figure 2006276558
本発明によれば、シャープネスが優れているので視認性の高い画素から構成される液晶表示素子が得られる。本発明のPLCC型液晶表示素子は、単に低電圧で駆動できる光シャッターとしてだけではなく、シャープネスが優れているので単純マトリクス法によって好適に駆動されるのみならず、駆動電圧が低いのでTFT駆動にも適しており、ディスプレイ駆動法の適用範囲が広く順応性に富む。さらに本発明に従えば、電極付基板間で原料組成物を保持して光露光するという簡単な工程により、以上のような特性を有する液晶表示素子が生産性良く製造され、特に、大面積(長尺)の液晶表示素子を得ることも可能となる。
本発明で用いられる液晶混合物の1例を示す。 本発明の液晶表示素子の1例を示す断面図である。 本発明の液晶表示に適用される駆動回路の概略図である。
符号の説明
1、2 基板
3、4 電極
5 (高分子/液晶)複合体
6、7 シール材
10 走査駆動IC
11 データ駆動IC
R1〜Rm 走査電極
C1〜Cn データ電極

Claims (3)

  1. 少なくとも一方が透明電極を備える一対の電極付基板間に、シアノフェニル系ネマチック液晶混合物が高分子マトリックス中におたがいに連続相として分散され、電圧の印加に応じて液晶の屈折率が変化して、液晶と高分子マトリックスの屈折率がほぼ一致して光が透過する状態と、それらの屈折率が一致せず光が散乱する状態とを呈するようにされた(高分子/液晶)複合体を挟持した液晶表示素子において、高分子マトリックスとして、2種以上の単官能アクリレートモノマーと1種以上の多官能アクリレートモノマーとの混合物であって該モノマー混合物の溶解性パラメータSp値(Small法)が8.3〜8.6であるものを原料とする共重合体を用いることを特徴とする液晶表示素子。
  2. モノマー混合物が2種の単官能アクリレートモノマーと1種の多官能アクリレートモノマーとから成り、前記単官能アクリレートモノマーの少なくとも1種がエーテル結合をもつモノマーであることを特徴とする請求項1の液晶表示素子。
  3. 請求項1の液晶表示素子を製造する方法であって、液晶、および光重合し得る2種以上の単官能アクリレートモノマーと1種以上の多官能アクリレートモノマーの混合物を含有する組成物を均一に溶解した状態で、少なくとも一方が透明電極を備える一対の電極付基板間に保持して光照射する工程を含むことを特徴とする液晶表示素子の製造方法。
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