JP3799664B2 - 液晶光学素子、液晶表示素子およびそれを用いた投射型液晶表示装置 - Google Patents
液晶光学素子、液晶表示素子およびそれを用いた投射型液晶表示装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対の電極付基板間に、液晶と樹脂とを含む複合体が挟持された液晶光学素子、液晶表示素子およびそれを用いた投射型液晶表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶ディスプレイは、その低消費電力性、低電圧駆動等の特長を生かしてパーソナルワードプロセッサ、ハンドヘルドコンピュータ、ポケットTV等に近年広く利用されている。なかでも注目され、盛んに開発されているのが、視角性がよく、高速かつ高密度表示が可能な能動素子を備えた液晶表示素子である。
【0003】
当初、動的散乱型(DSM)の液晶表示素子(LCD)が提案されていた。しかし、DSM−LCDでは液晶中を流れる電流値が高いため、消費電流が大きいという欠点があった。現在では偏光板を用いたツイストネマチック型(TN)のLCDが主流となっており、ポケットTVや可搬型の情報機器の表示素子として市場で用いられている。TN−LCDでは、漏れ電流はきわめて小さく、消費電力が少ないので、電池を電源とする用途に適する。
【0004】
能動素子を備えたDSM−LCDの場合には液晶自身の漏れ電流が大きい。このため、各画素と並列に大きな蓄積容量を設けなくてはならない。かつ、液晶表示素子自体の消費電力が大きくなるという問題があった。
【0005】
TN−LCDにおいては、液晶自身の漏れ電流はきわめて小さいので、大きな蓄積容量を付加する必要はなく、液晶表示素子自体の消費電力は小さくできる。しかし、TN−LCDでは、二枚の偏光板を必要とするので、光の透過率が小さくなるという問題がある。特に、カラーフィルタを用いてカラー表示を行う場合には、入射する光の数%しか利用できず、強い光源を必要とし、そのため結果として消費電力を増加させてしまう。
【0006】
また、画像の投影を行う際にはきわめて強い光源を必要とし、投影スクリーン上で高いコントラストを得にくいことや、光源からの発熱が液晶表示素子の動作状態を変えてしまうという問題がある。
【0007】
そこで、これらの課題を解決すべく、ネマチック液晶を樹脂などのマトリクス中に分散保持したり、連続の液晶相に網目状形態の樹脂を複合して形成せしめた液晶/樹脂複合体が提案された。そして、その散乱−透過特性を利用し、偏光板を用いずに直接光のオンとオフの制御を行いうる液晶表示素子が得られた。分散型液晶表示素子、高分子分散型液晶表示素子などと呼ばれている。その基本的構造や製造方法について以下に説明する。
【0008】
この液晶光学素子には、正の誘電異方性を有するネマチック液晶が用いられ、高分子相の屈折率が液晶の常光屈折率(no )とほぼ一致するように通常設けられる。そして、一対の電極付基板の間に液晶/樹脂複合体が挟持される。
【0009】
電極付基板とは、ガラス、プラスチック、セラミック等の基板上に透明な電極、たとえばITO(In2 O3 −SnO2 )やSnO2 等が形成されたものである。さらに必要に応じて、クロム、アルミニウム等の金属電極を併用してもよい。反射型の動作モードで用いられる場合には、反射電極としてもよい。
【0010】
この液晶/樹脂複合体は、電極基板間電圧の印加状態により、液晶/樹脂複合体中の液晶の屈折率が変化する。そして、その樹脂相の屈折率が、液晶の屈折率とほぼ一致した時に光が透過し、一致しない時に光が散乱する。この液晶光学素子は、偏光板を用いないので、基本的に明るい表示が得られる。
【0011】
電圧印加時には、液晶分子が電界方向に平行に配列するので、屈折率が制御しやすく、この液晶光学素子は透過時に高い透過率が得られる。次に、液晶/樹脂複合体を用いた液晶光学素子の従来例を説明する。
【0012】
特開昭63−271233(従来例1)には高分子材料にビニル系化合物、具体的には、高分子量のアクリルウレタン化合物を含むアクリロイル系化合物を用いて液晶と高分子材料との混合物から光重合相分離のプロセスによって液晶相と樹脂相とを形成させ、高性能の液晶/樹脂複合体が形成できることが開示されている。そして、液晶/樹脂複合体の層を通過する光のオン・オフを外部の電気信号で制御し、外観性のよい高性能の調光体が得られると示している。
【0013】
従来例1では、2−ヒドロキシエチルアクリレート(2−HEA)、つまり、後述する式(1)でRがエチレン基に対応する化合物、からなる−OH基含有ビニル系モノマーを含む硬化性材料を液晶/複合体の製造に用いることが提案された。−OH基含有ビニル系モノマーを含む硬化性材料の硬化物を樹脂相とすることは、液晶/樹脂複合体における液晶相と樹脂相との界面での、接触相互作用を調節し、適切な相分離構造を得るうえで重要な技術的要件であった。
【0014】
また、特開昭61−196229(従来例2)には高分子と液晶からなる液晶/樹脂複合体層とアクティブマトリクス基板とが組み合わされた液晶表示素子についての一般的な記載がある。
【0015】
アクティブマトリクス基板とは、基板上に電極と、薄膜トランジスタ(TFT)、薄膜ダイオード、金属絶縁体金属非線形抵抗素子(MIM)等の能動素子が形成された基板である。各画素電極には夫々に一個又は複数個の能動素子が接続されている。また、対向電極基板には、共通電極やパターン化された電極が形成され、アクティブマトリクス基板と組み合わされて表示が行われる。
【0016】
能動素子としてTFT等の三端子素子を使用する場合、対向電極基板は全画素共通のベタ電極が設けられる。MIM素子、PINダイオード等の二端子素子を用いる場合には、対向電極基板はストライプ状のパターニングが施される。
【0017】
また、特開平1−33523(従来例3)に記載されているように、液晶/樹脂複合体を光重合によって形成せしめる際に、外部から電界を印加して、液晶/樹脂複合体中の液晶に一定の配向規制を行い、常透過部分や半透過部分をあらかじめ形成することも行われている。固定表示したいものがある場合には、そのような常透過部分を形成できる。
【0018】
しかし、上述の従来例1、2に見られる液晶/樹脂複合体を備えた初期の液晶表示素子においては、電気光学的特性のうちの電圧−透過率特性(V−Tカーブ)にヒステリシスが存在していた。実質的に二値状態で用いる窓やシャッタではほとんど問題にならないが、中間調を必要とする高機能の表示素子では、駆動電圧の昇圧時と降圧時において光の透過率が異なるという課題があった。そのため、表示画面の変化時に前画面の情報が数秒以上にわたって残ってしまうという焼付き現象が生ずることがあった。
【0019】
そこで、特開平6−186535(従来例4)では用いる液晶の物性値と液晶セル内での液晶ドメインの空間的分散に着目し、液晶材料の物性値と樹脂相の構造制御に関する提案がなされ、表示素子として必要なヒステリシス低減が達成されたとの記載がある。たとえば、液晶の屈折率異方性△nが0.18以上で、かつ誘電率異方性△εが5〜13の間が好ましいとの記載がある。また、同時に液晶ドメインの形状に一定の歪みがあることと液晶セル内でのランダムな液晶ドメインのディレクタ配置がヒステリシス低減に寄与するとの記載がある。
【0020】
また、特開平5−134238(従来例5)では用いる樹脂相の弾性率に着目し、その弾性率が20℃で3×107 N/m2 以下、40℃で1×103 N/m2 以上となるような樹脂材料を用いることが示されている。そして、樹脂相の弾性率の制御がヒステリシス低減に大きな寄与があり、動画表示であっても残像や焼付きのないきわめて美しい表示が得られるとの記載がある。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の液晶/樹脂複合体においては、その電圧−透過率特性に大きな温度依存性が依然として存在し、特に周囲温度が20℃以下の低温域では、液晶光学素子の散乱能が低下するとともに、電圧−透過率特性での昇圧時と降圧時の透過率差で示されるヒステリシスが大きくなり、そのため、表示画面のコントラストが低下し、また、表示画面の変化時に前画面の情報が数秒以上にわたって残ってしまうという焼付き現象が生ずることがあるという問題があった。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、20℃以下といった低温域においても、散乱特性を維持し、高コントラスト比で中間調表示がきれいにでき、液晶/樹脂複合体のヒステリシスに基づく焼付き現象を低減した液晶光学素子および液晶表示素子を提供する。
【0023】
すなわち、本発明は、一対の電極付基板間に、液晶と樹脂とを含む液晶/樹脂複合体が挟持された液晶光学素子において、樹脂相が下記式(1)で表される付加重合性化合物(以下、式(1)の化合物ともいう)を含む重合硬化性材料の重合硬化物であることを特徴とする液晶光学素子である。
【0024】
【化2】
【0025】
(ただし、Zは−H又は−CH3 を示す。Rは炭素−炭素結合間にエーテル結合、エステル結合およびカーボネート結合から選ばれる少くとも一種の結合を含んでいてもよく、かつ全炭素数が4〜8であり、かつ式(1)のエステル結合に結合した炭素原子と水酸基に結合した炭素原子との間に一個以上の炭素原子を含む2価の炭化水素基を示す。)
【0026】
この液晶光学素子においては、たとえば、電圧印加時又は非印加時に樹脂相の屈折率(np )が使用する液晶の常光屈折率(no )又は異常光屈折率(ne )とほぼ一致するように設定される。
【0027】
また、本発明は、重合硬化性材料中の全付加重合性化合物に対する式(1)の化合物の割合が、10〜70重量%である上記液晶光学素子である。
また、本発明は、Rが−(CH2 )n −(ただし、nは4〜8の整数)である上記液晶光学素子である。
【0028】
また、本発明は、重合硬化性材料が熱又は光により硬化する官能基を一つ以上有する高分子量化合物をさらに含む上記液晶光学素子である。
【0029】
また、本発明は、画素電極毎に能動素子を設けたアクティブマトリクス基板と、対向電極を設けた対向電極基板とを備え、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に、上記液晶光学素子の液晶/樹脂複合体を挟持してなることを特徴とする液晶表示素子である。
【0030】
また、本発明は、上記液晶表示素子と、投射用光源と投射光学系とを組み合わせたことを特徴とする投射型液晶表示装置である。
【0031】
本発明によれば上記の構成をとることにより、低温域においても、ヒステリシスに基づく焼付き現象を低減し、かつ高コントラストを有し、低電圧で駆動できる液晶光学素子および液晶表示素子が得られる。
【0032】
本発明の最も大きな目的は、液晶/樹脂複合体のヒステリシスに基づく焼付き現象を低減し、かつ低駆動電圧で高コントラストを発現する液晶光学素子を提供する。次に、液晶/樹脂複合体の微小構造を説明し、ヒステリシスとの関係について述べる。
【0033】
これらの3次元的相分離構造は、樹脂相を介して60〜100%の液晶相が連続又は連通した連続液晶相構造と、連続又は連通した液晶相が30%以下である独立液晶相を呈する相分離構造に大別される。粒子状のもしくは分離したカプセル、すなわちディスクリートな液晶カプセルに液晶が相分離したような、内部連続した液晶相が少ない相分離構造においては、散乱性を発現する界面が液晶相と樹脂相との界面に限定される。そのような場合は、液晶/樹脂複合体としての散乱能を増大させるには、分離する液晶カプセルの数を多くする必要があるが、ある最適な平均粒子径を保った状態で、カプセルの密度を高くすることは、空間的な配置から考えて限界がある。
【0034】
ディスクリートな液晶カプセル構造と、連続相の形態中に液晶が存在するような構造とを比較すると、散乱状態でのヘイズ値が高く(低い透過率)、かつ高コントラスト比の液晶光学素子を得るためには、連続液晶相を用いることが好ましい。連続液晶相の構造は樹脂と液晶との界面だけではなく、液晶ドメインの界面においても光を散乱せしめる。電界の影響下になく、ある表面に接している液晶はランダムに配列したドメインという形態で存在し、光の散乱に寄与することが知られている。液晶/樹脂複合体中に連続相として液晶が存在する場合には、ディスクリートなカプセル形態として液晶が存在するのではなく、連続体の液晶が複数の液晶ドメインに分割されて液晶が存在すると考えられる。
【0035】
従来の液晶/樹脂複合体においては、電圧−透過率特性にヒステリシスが存在しそれが階調表示をする際の問題であった。ヒステリシスとは、電圧を上昇させる過程と電圧を降下させる過程において透過率が異なる現象である。ヒステリシスが存在すると、階調性の画面を表示する際に前画面の情報が残る、すなわち、画像が焼付くという現象が生じ、これが画質を低下させていた。
【0036】
液晶/樹脂複合体においてヒステリシスが存在する原因の一つは、液晶が樹脂相中に分散保持されていたり、樹脂の介在により液晶相に複数のドメインが形成されるといった構造である。すなわち、分離して樹脂相中に存在する液晶同士の相互作用や、液晶相中に形成された複数の液晶ドメイン間の相互作用によってヒステリシスが存在すると考えられる。樹脂相と液晶相との間の相互作用の性質は電界が印加された場合と、電界が印加されていない場合とで異なる。電界が印加されていない場合には、液晶と樹脂との間の相互作用は境界に発生する表面張力によって制御される。電界が印加された場合、相互作用は境界効果だけではなく、液晶の再配列によって引き起こされるエネルギー、すなわち弾性エネルギーをも含むのである。
【0037】
このヒステリシスの大小は、分散保持される液晶中や隣接する液晶ドメイン内に蓄えられる弾性エネルギー、外から印加される電界による電気的エネルギー、分離して樹脂相中に存在する液晶同士の相互作用エネルギーや、液晶相中に形成された複数の液晶ドメイン間の相互作用エネルギーによって決定される。したがって、このエネルギーバランスを最適化することによってヒステリシスは低減でき、階調表示の際にも焼付きのない優れた表示が得られる。
【0038】
本発明の目的は、高いコントラスト、高い輝度、優れた応答性を有し、ヒステリシスを低減した液晶光学素子を得ることである。さらには、低電圧動作の能動素子や駆動回路で駆動できる液晶光学素子を得ることである。
【0039】
樹脂相の果たす役割としては、液晶配列の安定化、弾性エネルギーの蓄積、液晶/樹脂複合体全体の構造安定性があり、これらの点を加味して、樹脂相の材質は最適化される。
【0040】
電気光学特性上重要なのは、弾性エネルギーの蓄積と液晶と樹脂相との相互作用、すなわち液晶と樹脂との境界における表面張力である。この表面張力は、中間調の表示において特に問題となる画像の焼付きの一因である液晶/樹脂複合体の電圧−透過率特性上のヒステリシスや、電圧変化時の応答性、透過率特性の再現性などと密接に関連する。
【0041】
なかでも、液晶/樹脂複合体のヒステリシスの解消は精細な中間調表示には欠かせないものであり、重要な要件として挙げられる。また、樹脂相は、個々の液晶粒子又は液晶ドメインの安定性や、液晶/樹脂複合体全体としての構造安定性とも関連するため、液晶との表面張力や樹脂相の弾性率などをも考慮して樹脂相の材質を決定することが求められる。
【0042】
式(1)で表される化合物において、Rはアルキレン基等の炭化水素基を表す。この炭化水素基は、アルキレン基の炭素−炭素結合間にエーテル結合、エステル結合、およびカーボネート結合から選ばれる結合を1以上有していてもよい。
【0043】
本発明において、式(1)におけるRの炭素数は4〜8であることが必要であり、それ未満でもそれを超えても発明の目的を達成しえない。Rは種々のジオールから2個の水酸基を除いた残基であることが好ましい。Rは、シクロアルキレン基であってもよく、シクロアルキル基やシクロアルキレン基を含む鎖状炭化水素基であってもよい。
【0044】
さらに、Rはフェニル基やフェニレン基を含む鎖状炭化水素基であってもよい。しかし、好ましくはRはこのような炭化水素環を含まない。また、Rは上記のようにエーテル結合、エステル結合又はカーボネート結合を鎖状炭化水素基の炭素−炭素結合間に含んでいてもよい。なお、エステル結合やカーボネート結合の炭素原子はRの炭素数の要件に数えられる炭素原子に含まれる。
【0045】
Rがエーテル結合等の結合を有していない場合、Rは通常の2価アルコールの残基である。この2価アルコールとしては、種々の炭素数4〜8の2価アルコールがある。この2価アルコールは直鎖状であっても分枝状であってもよい。水酸基は1級の水酸基であっても、2級、3級の水酸基であってもよい。
【0046】
エーテル結合を1以上含むジオールとしては、ジアルキレングリコールやトリアルキレングリコールなどの多量化グリコール、2価アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドなどのモノエポキシドを付加して得られる2価アルコールモノエポキシド付加物などがある。
【0047】
エステル結合を1以上含むジオールとしては、2価アルコールにカプロラクトンなどの環状エステルを付加して得られる2価アルコール環状エステル付加物など、ジカルボン酸1分子と2価アルコール2分子とのジエステルなどがある。
【0048】
カーボネート結合を有するジオールとしては、2価アルコールにエチレンカーボネートなどの環状カーボネートを付加して得られる2価アルコール環状カーボネート付加物などがある。
【0049】
式(1)で表される化合物におけるXとYはいずれも水素原子であることが、その化合物の重合性が高い故に好ましい。XとYがいずれも水素原子の場合、Zが水素原子である不飽和カルボン酸残基(CH2 =CH−CO−O−)はアクリロイルオキシ基であり、Zがメチル基である不飽和カルボン酸残基はメタクリロイルオキシ基である。
【0050】
後述のように光による重合硬化を行うためには、光重合性の高いアクリロイルオキシ基が好ましい。熱重合を行う場合にはメタクリロイルオキシ基やXやYがメチル基である化合物であってもよい。以下の説明では、不飽和カルボン酸残基がアクリロイルオキシ基である化合物について説明する。しかし、式(1)で表される化合物はこれに限られないことは上記の通りである。
【0051】
以下に、具体的に用いられる式(1)の化合物の一例として、アクリロイルオキシ基を有する化合物を示す。
【0052】
式(1)において、Rがアルキレン等の炭化水素基のみからなり、Rの全炭素数が4〜8であるビニル系モノマーの一例を示す。以下の式中のAはアクリロイルオキシ基(CH2 =CH−CO−O−)とすると、Rの全炭素数が4の場合、次の化3の物質が例示される。同様に、全炭素数が5の場合には化4、全炭素数が6の場合には化5、全炭素数が7の場合には化6、全炭素数が8の場合には化7の物質が例示される。
【0053】
【化3】
【0054】
【化4】
【0055】
【化5】
【0056】
【化6】
【0057】
【化7】
【0058】
また、Rがエーテル結合を含み炭素数4の場合、A-(CH2)2-O-(CH2)2OH (ジエチレングリコールモノアクリレート)が例示される。
【0059】
同様に炭素数6の場合、A-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2OH(トリエチレングリコールモノアクリレート)や A-CH2CH(CH3)-O-CH2CH(CH3)OH(ジプロピレングリコールモノアクリレート)、同様に炭素数8の場合、A-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2-O-(CH2)2OH (テトラエチレングリコールモノアクリレート)や A-(CH2)4-O-(CH2)4OH(ジテトラメチレングリコールモノアクリレート)などが例示される。
【0060】
また、Rがエステル結合を含み炭素数8の化合物としては、A-(CH2)2-O-CO(CH2)5OH (2−ヒドロキシエチルアクリレート−カプロラクトン1分子付加物)などが例示される。
【0061】
式(1)の化合物は適度な長さのRと、極性部位としての−OH基とを有しており、液晶/樹脂複合体が形成される際の、液晶相と樹脂相との接触相互作用を最適化するうえで好ましい。かつ、樹脂自身のガラス転移温度が低く、弾性的エネルギーの点でも、低温域でも高い散乱能を有し、また、ヒステリシスを低減した液晶/樹脂複合体を形成でき、能動素子での駆動においても、表示コントラストが高く、焼付き現象のない液晶パネルが得られる。
【0062】
これまでにも、従来例1に開示されたように、2−HEAのような、−OH基を含む付加重合性化合物の硬化物を液晶/樹脂複合体に用いていた。これは、液晶/樹脂複合体における液晶相と樹脂相との界面での、接触相互作用を調節し、適切な相分離構造を得るうえで基本となっている。
【0063】
しかし、2−HEAでは、極性基である−OH基に対して、非極性部位であるエステル部アルキレンの炭素数はわずかに2つであり、硬化物の極性が高く、液晶相と樹脂相との界面での相分離構造の制御が難しく、また、樹脂のガラス転移温度が高くなるため、低温域でのヒステリシスが増大する。
【0064】
そこで、液晶/樹脂複合体に用いる−OH基含有の付加重合性化合物の硬化物において、−OH基に対する非極性部位の大きさを鋭意検討したところ、2−HEAに代表されるようなRの炭素数の少ない化合物は、極性部位の比率が高すぎて、硬化物の極性が高く、液晶相と樹脂相との界面での安定な相分離構造を形成することが難しく、20℃以下といった低温域では、得られる液晶/樹脂複合体のコントラストが低く、ヒステリシスは大きなものとなった。
【0065】
また、Rの炭素数が大きくなるほど、付加重合性化合物の硬化物における極性部位の比率は低下するが、樹脂の極性が低すぎると、液晶が硬化した樹脂に一部溶解するなどして、得られる液晶/樹脂複合体の駆動電圧は上昇し、コントラストは低いものとなった。
【0066】
すなわち、本発明における式(1)の化合物の硬化物を含む液晶/樹脂複合体は、樹脂相の極性部に対する非極性部割合が、液晶と樹脂界面での接触相互作用を調節するのに適切で、良好な相分離構造を形成でき、低い駆動電圧で高いコントラストを発現し、低温域でのヒステリシスが小さいことがわかった。
【0067】
本発明における重合硬化性材料は、式(1)の化合物を含む。全重合硬化性材料中の式(1)の化合物の割合は、10〜70重量%であることが好ましい。特に好ましい割合は15〜50重量%である。この割合が70重量%を超えると樹脂相における−OH基の密度が高くなりすぎ、使用する液晶種によっては、未硬化時の重合硬化性材料と液晶との混合物における組成の安定性に問題を生じるおそれがある。この割合が少なすぎると本発明の効果が充分発揮されない。
【0068】
本発明における重合硬化性材料は、「式(1)の化合物以外の重合硬化性化合物」(以下、「硬化性化合物」ともいう)を含む。この硬化性化合物は式(1)の化合物と共重合性の化合物が好ましいが、必ずしもこれに限定されず、たとえば式(1)の化合物と共重合性ではなくてもそれ自身で重合硬化しうる化合物を使用できる。
【0069】
これらの硬化性化合物は一個以上の硬化部位を有する。硬化部位としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、チオール基などがある。アクリロイル基やメタクリロイル基などの式(1)の化合物と共重合性の硬化部位を有する化合物が用いられるのが好ましく、後述のように光硬化性の高いアクリロイル基を有する化合物が用いられるのが特に好ましい。以下、このアクリロイル基を有する化合物について説明する。
【0070】
アクリロイル基を有する硬化性化合物としては、式(1)の化合物以外の種々の化合物を使用できる。特に、−OH基を有しないアクリレート類が好ましい。このアクリレート類としては、アルキルアクリレートなどの比較的低分子量の化合物であってもよく、いわゆるアクリルウレタンと称される化合物などの高分子量の化合物であってもよい。特に、硬化性化合物の少なくとも一部はこの高分子量の化合物であることが好ましい。
【0071】
上記アクリロイル基を有する化合物におけるアクリロイル基の数は1以上、特に1〜4であることが好ましい。最も好ましいアクリロイル基の数は1〜2である。高分子量の化合物においては、2〜4であることが好ましい。
【0072】
アクリロイル基を有する硬化性化合物としては、1価アルコールや多価アルコールのアクリレートが好ましい。1価アルコールのアクリレートとしては、たとえば炭素数1〜22程度のアルカノールのアクリレートがある。具体的には、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、オクチルアクリレート、ドデシルアクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ベヘニルアクリレートなどがある。
【0073】
また、シクロアルキルアルコール、シクロアルキル置換アルカノール、アリール基置換アルコール、テトラヒドロフルフリルアルコールなどの複素環含有アルコールなど、種々の1価アルコールのアクリレートがある。さらに、フッ素や塩素などのハロゲンで置換されたアルカノールのアクリレートも使用できる。
【0074】
多価アルコールのアクリレートとしては、多価アルコールのすべての水酸基がエステル化されたポリアクリレートが好ましい。具体的には、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、オクタンジオールジアクリレート、グリセリントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートなどがある。
【0075】
アクリロイル基を有する硬化性化合物は、比較的高分子量の化合物であってもよい。たとえば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどの高分子量ポリオールのモノアクリレートやポリアクリレートがある。また、これらポリオールを用いたウレタン結合含有アクリレートも好ましい。具体的には、たとえばこれらポリオール、ポリイソシアネート化合物、および2−HEAなどの水酸基含有アクリレートからなる3種の化合物の反応生成物がウレタン結合含有アクリレートとして好ましい。
【0076】
ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート、無黄変性芳香族ジイソシアネート、それらのプレポリマー型変性物、その他の変性物などがある。この高分子量アクリレートの分子量は500〜50000であることが、硬化に伴う相分離の均一性、液晶の拡散性、系の安定性などの面から好ましい。
【0077】
本発明における重合硬化性材料としては、式(1)の化合物、低分子量アクリレート、および上記のような高分子量のアクリレート(特に2以上のアクリロイル基を有する化合物)の3種以上の混合物からなるものが好ましい。重合硬化性材料中の高分子量アクリレートの割合は5重量%以上、特に10重量%以上が好ましい。低分子量のアクリレートの割合も5重量%以上、特に10重量%以上が好ましい。これら硬化性化合物を併用することにより、重合硬化性材料と液晶の混合物の安定性が向上し、また重合硬化性材料の硬化に伴う液晶の相分離を制御して、良好な液晶/樹脂複合体を形成できる。
【0078】
重合硬化性材料と液晶との均一な混合物から重合硬化性材料を硬化させるとともに、液晶をその硬化物から析出させる。又は、液晶から硬化物を析出させて、液晶と樹脂(硬化した重合硬化性材料)とによる相分離構造を形成し、液晶/樹脂複合体が得られる。
【0079】
重合硬化性材料の硬化は、熱重合による硬化であってもよいが、熱による液晶の影響を少なくするために紫外線、電子線、その他のエネルギー線による硬化が好ましい。特に、紫外線を用いる光重合により重合硬化性材料を硬化させることが好ましい。このため、光重合開始剤や光重合促進剤を重合硬化性材料に配合して用いることが好ましい。
【0080】
この液晶/樹脂複合体を備えた液晶光学素子は、人間が視認する表示素子として主に用いられる。全面ベタ電極や単純マトリクスなどの駆動方法を用いて調光窓や光シャッタとしても用いられる。また、この液晶光学素子は、直視型表示素子、投射型表示素子の両方で使用できる。直視型表示素子として用いる場合、得たい表示特性に応じて、バックライト、レンズ、プリズム、ミラー、拡散板、光吸収体、カラーフィルタなどを組み合わせて表示装置が構成される。
【0081】
このほか赤外線カットフィルタ、紫外線カットフィルタ等を積層したり、文字、図形等を印刷したりしてもよい。また、液晶光学素子を複数枚用いて構成できる。
【0082】
さらに、調光体として用いる場合、液晶光学素子の外側にガラス板、プラスチック板等の保護板を積層する。これにより、その表面を加圧しても、破損する危険性が低くなり、安全性が向上する。
【0083】
また、この液晶表示素子は強い光源を用いる投射型表示装置に特に適しており、投射用光源、投射光学系などと組み合わせて、投射型液晶表示装置が構成される。投射用光源、投射光学系は従来から公知の投射用光源、レンズ等の投射光学系が使用でき、通常は上記液晶表示素子を投射用光源と投射レンズとの間に配置して用いられる。
【0084】
また、たとえば三個の液晶表示素子を用いて投射型液晶表示装置を構成し、RGB3色の光を各液晶表示素子に分けて透過させる場合には、各色毎に液晶の粒径、又は、液晶ドメインのサイズ、基板間隙、液晶の屈折率等を調整して、各色毎にその特性を揃えておくことが可能となる。
【0085】
液晶/樹脂複合体に使用する液晶は、ネマチック液晶又はスメクチック液晶が使用でき、ネマチック液晶の使用が好ましい。また、その一部にコレステリック液晶を添加したり、二色性色素や単なる色素を添加したりしてもよい。さらに、これに粘度調整剤、アルミナ粒子やセラミック粒子、プラスチック粒子、ガラス繊維等のスペーサ、顔料、色素、粘度調整剤、その他本発明の性能に悪影響を与えない添加剤を添加してもよい。
【0086】
本発明では、電圧を印加している状態で、(硬化後の)樹脂相の屈折率np が用いる液晶の常光屈折率no とほぼ一致するように設定することが好ましい。これにより、樹脂相の屈折率と液晶相の屈折率とがほぼ一致した時に高い透過率が得られる。両者が一致しない時に光がより散乱(白濁)することになる。この液晶/樹脂複合体を使用した液晶光学素子の透過状態での透過率は高く、また、散乱状態でのヘイズ値は80%以上が得られる。
【0087】
また、電圧印加時に液晶相と樹脂相との屈折率が一致するようにすることにより、透過時の透過率が高くなる。このため、正の誘電異方性のネマチック液晶を使用し、液晶の常光屈折率nO が樹脂相の屈折率np とほぼ一致するように設定される。このとき、電圧印加時に高い透明性が得られる。具体的にはno −0.03<np <no +0.05の関係を満たすようにされる。
【0088】
図1は、アクティブマトリクス基板を使用した場合の本発明の液晶表示素子の断面図である。図1において、1は液晶表示素子、2はアクティブマトリクス基板用のガラス、プラスチック等の基板、3はITO、SnO2 等の透明な画素電極、4はトランジスタ、ダイオード、非線形抵抗素子等の能動素子、5は対向電極基板用のガラス、プラスチック等の基板、6はITO、SnO2 等の透明対向電極、7は両基板間に挟持された液晶/樹脂複合体を示す。単板の液晶表示素子でフルカラー表示を行う場合には、さらにRGBのカラーフィルタやブラックマスクなどを設ける。
【0089】
図2は、図1の液晶表示素子を用いた投射型液晶表示装置の模式図である。図2において、11は投射用光源、12は液晶表示素子、13はレンズ、アパーチャ等を含む投射光学系、14は投射する投射スクリーンを示す。なお、投射光学系はこの例では、孔のあいた板であるアパーチャやスポット15、集光レンズ16、投射レンズ17を含んでいる。
【0090】
能動素子としてTFT等の三端子素子を使用する場合、対向電極基板は全画素共通のベタ電極を設ければよい。MIM素子、PINダイオード等の二端子素子を用いる場合には、対向電極基板はストライプ状のパターニングをされる。
【0091】
投射型液晶表示装置における拡散光を減ずる装置とは、液晶表示素子を通過した光のうち、入射光に対して直進する光(画素部分が透過状態の部分を透過する光)を取り出し、直進しない光(液晶/樹脂複合体が散乱状態の部分で散乱される光)を減ずるものであればよい。特に、直進する光は減ずることなく、直進しない光は拡散光を減ずることが好ましい。
【0092】
具体的な装置としては、図2のように、液晶表示素子と投射光学系とで構成され、液晶表示素子12、集光レンズ16、孔のあいた板であるアパーチャやスポット15、投射レンズ17を設けたものがある。
【0093】
この例によれば、投射用光源から出て液晶表示素子12を通過した光のうち、入射光に対して直進する光は集光レンズ16により集光され、アパーチャやスポット15に開けられた孔を通過して、投射レンズ17を通し投射される。一方、液晶表示素子12で散乱させられた直進しない光は、集光レンズ16により集光されても、アパーチャやスポット15に開けられた孔を通過しない。このため、散乱光が投射されないことになり、コントラストが向上する。
【0094】
また、他の例としては、アパーチャやスポット15の代りに、小さな面積を有する鏡を同じ位置に斜めに配置し、反射させてその光軸上に配置された投射レンズを通して投射させることもできる。また、このような集光レンズを用いることなく、投射レンズにより光線が絞られる位置にスポット、鏡等を設置してもよい。また、特別なアパーチャ等を用いなくとも、投射用レンズの焦点距離、口径を、散乱光が除去されるように選択してもよい。
【0095】
また、マイクロレンズ系なども使用できる。具体的には、液晶表示素子の投射光学系側にマイクロレンズアレイと細やかな穴がアレイ化されたスポットアレイを配置して、不要な散乱光を除去できる。この場合、散乱光除去に必要な光路長を非常に短かくできるため全体の投射型表示装置をコンパクトにできるという利点を持つ。光路長の短縮に関しては、投射光学系の中に散乱除去系を組み込むことも有効である。この場合、独立に投射光学系と散乱除去系を設置するより光学系がシンプルになるとともに、サイズを小さく抑えうる。
【0096】
これらの光学系は、ミラー、ダイクロイックミラー、プリズム、ダイクロイックプリズム、レンズなどと組み合わせ、画像の合成、カラー化ができる。また、カラーフィルタと組み合わせることによっても画像のカラー化ができる。
【0097】
投射スクリーン上に到達する直進成分と散乱成分との比は、スポット、鏡等の径およびレンズの焦点距離により制御でき、所望の表示コントラスト、表示輝度を得られるように設定すればよい。
【0098】
図2のような拡散光を減ずる装置を用いる場合、表示の輝度を上げるためには、投射用光源から液晶表示素子に入射される光はより平行であることが好ましい。そのためには、高輝度でかつできるだけ点光源に近い光源と、凹面鏡、コンデンサレンズ等を組み合わせて投射用光源を構成することが好ましい。
【0099】
また、上記の説明では、主として透過型液晶表示装置で説明したが、反射型の投射型液晶表示装置であってもよい。たとえば、スポットの代わりに小型の鏡を配置して必要な光のみを取り出すようになしうる。図2では単板構成のシステム構成の一例を示したが、本発明は特開平7−134295(透過型)や特開平7−5419(反射型)に示されたようなRGB3板構成のシステム構成にも適用できる。この場合、白色光源をRGBの色光に分離し、各色毎に液晶表示素子を設け、再び色合成するので光の利用効率が向上する。次に実施例を説明する。
【0100】
【実施例】
(例1(実施例))
分子量約1000のポリプロピレングリコール、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、および2−HEAの反応生成物である2官能アクリルウレタン、2−エチルヘキシルアクリレ−トおよび4−ヒドロキシブチルアクリレ−トを重量比5:2:3で混合して重合硬化性材料を調製した。さらに、微量の光重合開始剤をこれに添加した。この材料に、25℃での物性値がΔn=0. 215、Δε=12. 0、K33=1. 2×10-11 、η=25cStの液晶を、液晶の比率が62%となるように均一に溶解した。
【0101】
一方、多結晶シリコンTFTが画素毎に形成されたアクティブマトリクス基板と、全面ベタ電極が形成された対向電極基板とを、周辺部に配置したシール材でシールして、電極基板間隙10μmのセルを形成した。
【0102】
このセルに、前記の液晶と重合硬化性材料の未硬化の混合物を注入した後、紫外線露光により重合硬化性材料を硬化させ、液晶/樹脂複合体を形成せしめた。この樹脂のnp は液晶のno とほぼ一致するものとなった。この液晶表示素子と、投射用光源、投射光学系を組み合わせて投射型液晶表示装置とし、室温28℃の部屋で、約80万ルックスの光束をこの液晶表示素子に照射してスクリーン上に画像の投影を行った。
【0103】
このとき、投射型表示装置内に設けられた冷却ファンにより液晶表示素子を空冷して、液晶表示素子の平均的温度を約40℃に調節した。駆動電圧約8V、投射光学系の集光角5°で得られたスクリーン上でのコントラストは、約65であった。また、この液晶表示素子をビデオ信号で駆動したところ、画像の切り替え時にも焼付きのほとんどない動画像が得られた。
【0104】
この投射型液晶表示装置を室温15℃の部屋で、約80万ルックスの光束をこの液晶表示素子に照射してスクリーン上に画像の投影を行った。
【0105】
このとき、投射型液晶表示装置内に設けられた冷却ファンにより液晶表示素子を空冷して、液晶表示素子の平均的温度を約20℃に調節した。駆動電圧約8V、投射光学系の集光角5°で得られたスクリーン上でのコントラストは、75であった。また、この液晶表示素子をビデオ信号で駆動したところ、画像の切り替え時にも焼付きのほとんどない動画像が得られた。
【0106】
(例2(比較例))
例1における4−ヒドロキシブチルアクリレートを、2−ヒドロキシプロピルアクリレートに置き換えた以外は同様に未硬化の液晶/樹脂混合物を調製し、例1と同じ手法で液晶表示素子を得た。
【0107】
さらに、例1と同様に投射型液晶表示装置を構成し、室温28℃の部屋で、例1と同条件でスクリーン上に画像の投影を行った。駆動電圧約8V、投射光学系の集光角5°で、この液晶表示素子の平均温度を約40℃に調節した時に得られたスクリーン上でのコントラストは、80であった。また、この液晶表示素子をビデオ信号で駆動したところ、画像の切り替え時にも焼付きのほとんどない動画像が得られた。
【0108】
次に、例1と同様に、室温15℃の部屋で、液晶表示素子の平均温度を約20℃に調節したところ、この液晶表示素子のスクリーン上でのコントラストは22に低下し、ビデオ信号で駆動したところ、画像の切り替え時に、電圧−透過率特性上のヒステリシスによる前画面の焼付き現象が発生した。
【0109】
(例3(実施例))
例1における4−ヒドロキシブチルアクリレートを、6−ヒドロキシヘキシルアクリレートに置き換えた以外は同様に未硬化の液晶/樹脂混合物を調製し、例1と同じ手法で液晶表示素子を得た。
【0110】
(例4(実施例))
例1における4−ヒドロキシブチルアクリレートを、カプロラクトン変性(カプロラクトン1分子開環付加)した2−ヒドロキシエチルアクリレートに置き換えた以外は同様に未硬化の液晶/樹脂混合物を調製し、例1と同じ手法で液晶表示素子を得た。
【0111】
(例5(比較例))
例1における4−ヒドロキシブチルアクリレートを、2−ヒドロキシエチルアクリレートに置き換えた以外は同様に未硬化の液晶/樹脂混合物を調製し、例1と同じ手法で液晶表示素子を得た。
【0112】
(例6(比較例))
例1の4−ヒドロキシブチルアクリレートを、10−ヒドロキシデシルアクリレートに置き換えた以外は同様に未硬化の液晶/樹脂混合物を調製し、例1と同じ手法で液晶表示素子を得た。
【0113】
(例7(比較例))
例1の4−ヒドロキシブチルアクリレートを、式(1)でRの炭素数が14に対応するカプロラクトン変性(カプロラクトン2分子開環付加)した2−ヒドロキシエチルアクリレートに置き換えた以外は同様に未硬化の液晶/樹脂混合物を調製し、例1と同じ手法で液晶表示素子を得た。
【0114】
(例8(比較例))
例1の4−ヒドロキシブチルアクリレートを、n−ヘキシルアクリレートに置き換えた以外は同様に未硬化の液晶/樹脂混合物を調製し、例1と同じ手法で液晶表示素子を得た。
【0115】
これらの液晶表示素子を例1で使用したものと同じ投射用光源、投射光学系を組み合わせて投射型液晶表示装置とし、室温15℃の部屋で、約80万ルックスの光束をこの液晶表示素子に照射してスクリーン上に画像の投影を行った。このとき、投射型液晶表示装置内に設けられた冷却ファンにより液晶表示素子を空冷して、液晶表示素子の平均的温度を約20℃に調節した。
【0116】
駆動電圧約8V、投射光学系の集光角5°で得られた、これらの液晶表示素子のスクリーン上でのコントラスト、および、ビデオ信号で駆動した際の画像の切り替え時の焼付き現象の有無を表1に示す。なお、表中のヒステリシス値は、液晶表示素子の電圧−透過率特性において、透過率が(電圧非印加時の透過率+電圧印加時の飽和透過率)/2となる電圧昇圧時での印加電圧値と電圧降圧時における印加電圧値との電圧差(VRMS )を示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【発明の効果】
本発明の液晶光学素子では、一対の電極付基板間に電気的に散乱状態と透過状態とを制御しうる改良された液晶/樹脂複合体を挟持する。この液晶/樹脂複合体を形成する重合硬化性材料を選択することによって、液晶/樹脂複合体の構造制御をきわめて精密に安定して行いうるようになったため、光の透過率を下げずに散乱性を大幅に向上できる。光学特性に最適な液晶/樹脂複合体、すなわち樹脂相中に相分離した液晶相が三次元的に連結したような空間構造や、液晶中に析出した三次元網目状形態の樹脂が液晶中に複数のドメインを形成するような空間構造を構築できる。
【0119】
また、樹脂材料を選択することにより、重合相分離の前後におけるそれぞれの状態制御が可能になった。特に、光重合相分離を用いる場合、液晶と樹脂材料(光硬化性硬化物)との混合物の相溶性が安定し、その後の液晶空セルへの注入工程と光照射による硬化工程を安定して行いうるようになった。
【0120】
また、形成された液晶/樹脂複合体は電気光学的に好ましい所望の微細構造をとりうるようになった。これは、用いた樹脂材料の分子構造に由来する弾性的性質や極性により、相分離時における液晶相と樹脂相との界面での相互作用が適切に調節されるためである。
【0121】
そして、広い温度範囲、言い換えると従来では容易に得られなかった常温より低い低温での動作時での、液晶/樹脂複合体におけるヒステリシスを低減でき、焼付き現象の発生しない、中間調表示がきれいな投射型液晶表示装置が得られた。具体的には、液晶表示素子に約50万ルクス以上の光束が照射される投射型液晶表示装置において、その周囲温度が+15〜40℃の範囲で良好な動作特性が得られる。
【0122】
また、本発明の液晶光学素子は、従来のTN−LCDの駆動用ICを用いた低電圧(〜10V)の駆動においても、高コントラストを有し、かつ高輝度の表示が可能になる。
【0123】
さらに、本発明によれば、階調駆動を行った際にも、きれいな中間調の階調表示ができ、ヒステリシスに基づく焼付き現象を低減できる。
【0124】
このため、本発明の液晶光学素子は、高輝度の画像を得ようとする投射型表示に有効であり、画像の焼付きがなく、明るくコントラストの高い投射型表示が得られる。また、光源も小型化できる。
【0125】
また、偏光板を用いなくてもよいため、光学特性の波長依存性が少なく、光源の色補正等がほとんど不要になるという利点もある。また、TN−LCDに必須のラビング等の配向処理やそれに伴う静電気の発生による能動素子の破壊といった問題も避けられるので、液晶光学素子の製造歩留りを大幅に向上させうる。
【0126】
さらに、この液晶/樹脂複合体は、硬化後はフィルム状になっているので、基板の加圧による基板間短絡やスペーサの移動による能動素子の破壊といった問題も生じにくい。
【0127】
また、この液晶/樹脂複合体は、比抵抗が従来のTN−LCDの場合と同等であり、従来のDSM−LCDのように大きな蓄積容量を画素電極毎に設けなくてもよい。このため、能動素子の設計が容易で、有効画素電極面積の割合を大きくしやすく、かつ、液晶光学素子の消費電力を少なく保てる。
【0128】
さらに、従来のTN−LCDの製造工程から、配向膜形成工程を除くだけで製造できるので、生産が容易である。
【0129】
また、この液晶/樹脂複合体を用いた液晶光学素子は、安定して生産を行うことができ、求められる性能を満たす製品を高い歩留りで得られる。
【0130】
本発明は、この外本発明の効果を損しない範囲内で種々の応用ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の液晶表示素子の基本的な構成を示す断面図。
【図2】本発明の投射型液晶表示装置の基本的な構成を示す模式図。
【符号の説明】
1、12:液晶表示素子
2、5:基板
3:画素電極
4:能動素子
6:対向電極
7:液晶/樹脂複合体
11:投射用光源
13:投射光学系
14:投射スクリーン
15:スポット
16:集光レンズ
17:投射レンズ
Claims (6)
- 重合硬化性材料中の全付加重合性化合物に対する式(1)で表される化合物の割合が、10〜70重量%である請求項1に記載の液晶光学素子。
- Rが−(CH2)n −(ただし、nは4〜8の整数)である請求項1又は2に記載の液晶光学素子。
- 重合硬化性材料が熱又は光により重合する官能基を一つ以上有する高分子量化合物をさらに含有する請求項1、2又は3に記載の液晶光学素子。
- 画素電極毎に能動素子を設けたアクティブマトリクス基板と、対向電極を設けた対向電極基板とを備え、アクティブマトリクス基板と対向電極基板との間に、請求項1、2、3又は4に記載の液晶光学素子の液晶/樹脂複合体を挟持してなることを特徴とする液晶表示素子。
- 請求項5に記載の液晶表示素子と、投射用光源と投射光学系とを組み合わせたことを特徴とする投射型液晶表示装置。
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