JP2006276061A - 光学素子 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、配向層と位相差層を有する光学素子において、高温高湿雰囲気下においても、配向層と位相差層の層間剥離が生じたり、配向層に凝集破壊等が生じることなく使用できる光学素子を提供することを主目的とする。
【解決手段】 本発明は、透明基材と、上記透明基材上に形成され、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなる配向層と、上記配向層上に形成され、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層とを有する光学素子であって、上記配向層に、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする光学素子を提供することにより、上記目的を達成するものである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、液晶表示装置等に用いられる光学素子に関するものであり、より詳しくは、優れた耐湿熱性を備える光学素子に関するものである。
液晶は、屈折率、誘電率または磁化率等の物理的性質が方向によって異なる異方性を有するという特徴から、近年急速に普及している液晶表示装置の表示媒体に用いられるのみではなく、位相差板、偏光板、光偏光プリズム、各種光学フィルター等、広く液晶表示装置用途の光学素子を構成する材料として用いられている。
液晶の上記異方性を利用した、種々の光学素子を得るには、液晶分子を規則的に配列させることが不可欠である。このような液晶分子の規則的配列を実現するためには、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなる配向層を用いるのが一般的であり、このような配向層上に液晶性化合物を含む位相差層を積層して光学素子を形成する方法が広く用いられている。
しかしながら、上記のような配向層と位相差層とを有する光学素子は、高温高湿雰囲気下での長時間使用により、配向層と位相差層との境界で層間剥離が生じたり、配向層に凝集破壊が生じることがあり、配向層と位相差層との密着強度が低いという問題があった。このような問題は、上記配向層を形成する高分子として水溶性高分子を用いた場合に特に顕著であった。
特許文献1には、水溶性高分子をポリイソシアネート化合物を用いて架橋硬化する方法が開示されている。このような方法を、上記問題点の解決手段として用いる場合、配向層と位相差層との密着強度を向上できる点においては有効な手段であるが、ポリイソシアネート化合物の反応温度が120℃〜160℃と高温であるために、光学素子に用いることができる透明基材等の材料が限定されてしまう問題がある。
また、特許文献2には、ポリビニルアルコール系ポリマーを用いて配向層を形成し、配向層を2官能アルデヒド化合物を用いて架橋硬化することにより、上記問題点を解決する手段が開示されている。このような方法は、配向層の架橋により配向層の機械強度が向上するため、上記問題点の解決に寄与できる点においては有効であるが、2官能アルデヒド化合物は反応により人体に有害なホルムアルデヒドを発生する問題点があった。
特開平3−81380号公報 特開平10−218938号公報
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、少なくとも配向層と位相差層とを有する光学素子であって、高温高湿雰囲気下においても、配向層と位相差層とが層間剥離したり、配向層に凝集破壊等が生じることなく使用できる光学素子を提供することを主目的とするものである。
上記目的を達成するために、本発明は、透明基材と、上記透明基材上に形成され、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなる配向層と、上記配向層上に形成され、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層とを有する光学素子であって、上記配向層に、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする光学素子を提供する。
本発明によれば、位相差層がアクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなり、配向層がアミノ基を有するシランカップリング剤を含むことにより、位相差層と配向層との密着力が向上し、高温高湿雰囲気下においても位相差層と配向層との層間剥離が生じることのない、密着強度に優れた光学素子を容易に得ることができる。このような位相差層と配向層との密着力の向上は、位相差層と配向層との界面において、上記アクリロイル基と上記アミノ基とが反応し、これらの官能基を介して位相差層と配向層とが結合することに起因すると考えられる。
また、本発明においては、上記液晶分子の配向能を有する高分子化合物が、水酸基を有する高分子化合物であることが好ましい。水酸基を有する高分子化合物は吸湿性が高いことから、高温高湿雰囲気下において上記配向層と上記位相差層とに層間剥離を生じやすい特徴がある。したがって、上記液晶分子の配向能を有する高分子化合物として、水酸基を有する高分子化合物を用いることにより、本発明による密着強度の向上効果をより一層得ることができるからである。
また、本発明における配向層にはアミノ基を有するシランカップリング剤を含むことから、当該アミノ基が位相差層を構成する重合性液晶化合物が有するアクリロイル基と反応することに加えて、シラノール基が配向層を形成する高分子が有する水酸基と反応するため、上記配向層と上記位相差層との密着強度をより強固にすることができるからである。
さらに、水酸基を有する高分子化合物がシラノール基と反応することにより、配向層の機械強度を向上させることが可能となるため、高温高湿雰囲気下における配向層の凝集破壊を防止することも可能になるからである。
また、本発明においては、上記水酸基を有する高分子化合物が、セルロース誘導体であることが好ましい。セルロース誘導体は液晶分子を配向させる配向能に優れるため、水酸基を有する高分子化合物として、セルロース誘導体を用いることにより液晶分子の配列性に優れた光学素子を得ることができるからである。また、セルロース誘導体は工業的に数多くの種類が広く用いられているため、入手容易性等の点において有利だからである。
また、本発明においては、上記位相差層が位相差性を有することが好ましい。液晶分子は方向によって屈折率が異なる屈折率異方性(複屈折性)を示し、規則的に配列させることにより位相差性を発現しやすい特徴を有するため、本発明における重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層においては、位相差性を容易に発現することが可能だからである。また、液晶表示装置は視野角特性が狭いという固有の欠点を有することから、このような視野角特性を改善できる位相差性を有する光学素子が広く求められているからである。
さらに、本発明においては上記透明基材が、トリアセチルセルロースフイルムであることが好ましい。トリアセチルセルロースフイルムは光学的等方性に優れた透明基材であることから、上記透明基材にトリアセチルセルロースを用いることにより、本発明の光学素子をより光学的特性の優れたものにすることができるからである。
本発明によれば、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層と、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなり、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む配向層とを有することにより、高温高湿雰囲気下においても位相差層と配向層とに層間剥離が生じない、密着強度に優れた光学素子を容易に得ることができるといった効果を奏する。
以下、本発明に係る光学素子について詳細に説明する。
本発明の光学素子は、透明基材と、上記透明基材上に形成され、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなる配向層と、上記配向層上に形成され、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層とを有する光学素子であって、上記配向層にアミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とするものである。
次に、本発明の光学素子について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の光学素子の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の光学素子11は、透明基材1と、上記透明基材上に形成され、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなり、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む配向層2と、上記配向層上に形成され、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層3とを有するものである。
本発明の光学素子は、上記位相差層がアクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなり、上記配向層が液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなり、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことにより、位相差層と配向層との密着力を向上することができる。本発明の光学素子がこのような作用効果を奏する機構は明確ではないが、位相差層と配向層との境界面において、位相差層に含まれるアクリロイル基と、配向層に含まれるシランカップリング剤のアミノ基とが反応して化学結合を形成するため、両者の密着強度を従来にない強固なものにすることができると考えられる。
液晶分子の配列によって光学的機能を発現する光学素子においては、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなる配向層上に、液晶分子を含む位相差層を積層し、配向層の作用により液晶分子を配列させる方法が広く用いられている。このような構成を有する光学素子を、例えば液晶表示装置に用いる場合、液晶表示素子を構成する偏光板と張り合わせて使用することが一般的であるが、このような使用態様においては高温高湿雰囲気下において上記位相差層と上記配向層とに層間剥離が生じたり、配向層に凝集破壊が生じる問題があった。このような問題は、配向層を形成する高分子として、吸湿性が高い水溶性高分子を用いた場合に特に顕著であった。このようなことから、上記配向層と上記位相差層を有する光学素子においては、高温高湿雰囲気下での使用に耐え得る密着強度を達成することが必要であった。
本発明によれば、位相差層に含まれるアクリロイル基と、配向層に含まれるシランカップリング剤が有するアミノ基とが作用し、位相差層と配向層の境界において化学結合を形成することが想定される。このようにして形成される化学結合は、分子間引力による結合や水素結合等と比較して、結合力が強いため、本発明を用いることにより上記位相差層と上記配向層の密着力を従来にない強固なものにすることができる。したがって、本発明によれば、高温高湿雰囲気下においても位相差層と配向層とが剥離することのない、密着強度に優れた光学素子を容易に得ることができる。
以下、本発明の光学素子の各構成について詳細に説明する。
A.配向層
本発明における配向層について説明する。本発明における配向層は、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなり、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とするものである。
1.アミノ基を有するシランカップリング剤
本発明における配向層は、アミノ基を有するシランカップリング剤(以下、単にシランカップリング剤と称する場合もある。)を含むことを特徴とするものである。以下、本発明に用いられるアミノ基を有するシランカップリング剤について詳細に説明する。
本発明に用いられるアミノ基を有するシランカップリング剤は、配向層の液晶分子を配向させる機能を害するものでなければ特に限定されるものではない。本発明に用いられるシランカップリング剤としては、下記式1〜3で表されるものを挙げることができる。
Figure 2006276061
上記式1〜3において、−ORは、加水分解反応を生じる官能基であり、(A)はアミノ基を有する原子団である。本発明に用いられるORの具体例としては、メトキシ基(−OCH)、エトキシ基(−OCHCH)を挙げることができる。また、上記式1〜3におけるR、Rは、配向層の液晶分子を配向させる機能を害するものでなければ、特に限定されるものではないが、炭素数1〜12の低級炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数1〜6の低級炭化水素鎖であることがより好ましい。さらに、R、Rは同一である必要はなく、配向層を形成する高分子化合物の種類等に応じて、任意に選択することができるが、すべて同一であることが好ましい。シランカップリング剤の合成が容易になる点において利点を有するからである。
ここで、本発明における配向層を形成する高分子化合物とは、上記液晶分子の配向能を有する高分子化合物を意味するものとする。
上記式1〜3に示すシランカップリング剤は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、特に上記式2または3に示すシランカップリグ剤が好ましく、中でも上記式3に示すシランカップリング剤が特に好ましい。シランカップリング剤の1分子中に複数の加水分解性官能基(OR)を有することにより、一分子で複数の結合を形成することができることから、例えば、上記式3で示されるシランカップリング剤を、水酸基を有する高分子化合物からなる配向層に含ませた場合、脱水縮合反応によりシランカップリング剤の一分子で3つの化学結合を形成することができ、上記位相差層と上記配向層との密着強度をより強固にすることができるからである。また、シランカップリング剤の一分子で複数の化学結合を形成できることから、上記式1または2に示すシランカップリング剤を用いた場合と比較して、シランカップリング剤の使用量を削減することができ、配向層の液晶分子を配向させる機能を害する可能性が低くなるからである。さらに、コスト面においても有利だからである。
上記式1〜3において、(A)はアミノ基を少なくとも一つ有する原子団である。(A)が有するアミノ基の数は、1つである必要は無く、配向層を形成する高分子化合物の種類等に応じて、2以上のアミノ基を有する(A)を適宜選択して用いることができる。
上記式1〜3において(A)がアミノ基を有する態様として、下記式4〜6で表される化合物を例示することができる。
Figure 2006276061
上記式4〜6において、R、R、R、R、およびRは、配向層の液晶分子を配向させる機能を害するものでなければ、特に限定されるものではないが、炭素数1〜12の低級炭化水素鎖であることが好ましく、炭素数1〜6の低級炭化水素鎖であることがより好ましい。また、R、R、R、R、およびRは、配向層を形成する高分子化合物や、上記位相差層を形成する重合性液晶化合物の種類等に応じて、1級アミノ基(−NH)や2級アミノ基(−NH−)を含んでも良い。これらのアミノ基を含む場合はR、R、R、R、およびRそれぞれについて一つのアミノ基に限らず、複数のアミノ基を含んでいても良い。また複数のアミノ基を含む場合は、1級アミノ基(−NH)と2級アミノ基(−NH−)のいずれかのみを含んでも良いし、両方を含んでも良い。
ここで、本発明における位相差層を形成する重合性液晶化合物とは、上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物を意味するものとする。
上記式4〜6に示すシランカップリング剤は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、中でも上記式4または5に示す、一級アミノ基(−NH)を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。一般的に、一級アミノ基(−NH)は、二級アミノ基(−NH−)と比較して反応性が高いため、これらの一級アミノ基(−NH)を有するシランカップリング剤を用いることにより、容易に上記位相差層に存在するアクリロイル基との反応を進行させることができるからである。
上記のシランカップリング剤のうち、本発明に好適に用いられるものとして、下記式のものを例示することができる。
Figure 2006276061
2.液晶分子の配向能を有する高分子化合物
本発明における配向層は、液晶分子の配向能を有する高分子化合物(以下、単に高分子化合物とする)からなり、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とするものである。以下、本発明に用いられる液晶分子の配向能を有する高分子化合物について詳細に説明する。
本発明における配向層に用いられる液晶分子の配向能を有する高分子化合物は、液晶分子の配向能を有する高分子化合物であれば特に限定されず使用することができる。このような高分子化合物としては、ポリイミド、アクリル酸/メタクリル酸共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリ(N−メチロールアクリルアミド)、セルロース誘導体等の多糖類、ビニルアルコール・ビニルアミン共重合体、または、ゼラチン等を例示することができるが、本発明においては、中でも水酸基を有する高分子化合物を用いることが好ましい。シランカップリング剤は水酸基と脱水縮合反応することよって結合を形成する性質を有しているため、配向層に水酸基を有する高分子化合物を用いることによって、上記アミノ基を有するシランカップリング剤は、上記高分子化合物とも結合を形成することができる。したがって、配向層に水酸基を有する高分子化合物を用いることによって、上記アミノ基を有するシランカップリング剤が、上記位相差層と上記配向層とに化学結合を形成するため、両層の密着強度をより強固にすることができるからである。
上記水酸基を有する高分子化合物としては、液晶分子の配向能を有する高分子化合物であれば、特に限定されることなく用いることができるが、中でもセルロース誘導体を用いることがより好ましい。セルロース誘導体は、単位モノマー当たりに複数の水酸基を有するため、上記アミノ基を有するシランカップリング剤と縮合反応を生じやすいからである。また、セルロース誘導体は液晶分子を配向させる配向能に優れるため、液晶分子の配列性に優れた光学素子を得ることができるからである。さらに、セルロース誘導体は工業的に数多くの種類が広く用いられているため、入手容易性等の点において有利だからである。
本発明に好適に用いられるセルロース誘導体としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等を例示することができるが、これらに限られるものではない。
3.配向層
本発明における配向層は、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなり、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする層である。
本発明における配向層の厚みは、配向層を形成する高分子化合物の種類に応じて、液晶分子の配向能を発現することができる範囲内であれば特に限られないが、通常、0.01μm〜20μmの範囲内が好ましく、特に0.05μm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも0.1μm〜5μmの範囲内が好ましい。配向層の厚みが上記範囲よりも薄いと、液晶分子に対する十分な配向能を得ることができない場合があり、また、上記範囲よりも厚みが厚いとコスト的に不利になる可能性があるからである。
本発明における配向層の透明度は、本発明の光学素子の用途や上記位相差層を形成する重合性液晶化合物や上記透明基材の種類に応じて、所望の光学的性質を達成できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。透過率が上記の値よりも低いと、本発明の光学素子の光学的性質を損なってしまう可能性があるからである。ここで、配向層の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
4.配向層の形成方法
本発明における配向層の形成方法は、上記位相差層を均質に積層することが可能な平面性を実現できる方法であれば、特に限定されるものではない。このような配向層の形成方法としては、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなり、アミノ基を有するシランカップリング剤を含む高分子フイルムを作成し、当該高分子フイルムを上記透明基材上に貼り合わせる方法や、配向層形成用組成物を上記透明基材上に塗工する方法を挙げることができるが、本発明においては、配向層形成用組成物を上記透明基材上に塗工する方法が好ましい。このような方法によれば、平面性に優れた配向層を容易に形成することが可能だからである。以下、このような配向層の形成方法について説明する。
(1)配向層形成用組成物
本発明に用いられる配向層形成用組成物は、通常、アミノ基を有するシランカップリング剤と、液晶分子の配向能を有する高分子化合物と、溶媒とからなり、必要に応じて他の化合物を含んでも良い。
a.アミノ基を有するシランカップリング剤
配向層形成用組成物に用いられるアミノ基を有するシランカップリング剤は、「1.アミノ基を有するシランカップリング剤」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
配向層形成用組成物中の、アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量は、上記配向層を形成する高分子化合物や、上記位相差層を形成する重合性液晶化合物の種類に応じて、高温高湿雰囲気下においても上記配向層と上記位相差層とに層間剥離等を生じることのない密着強度を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、後述する配向層形成用組成物に含まれる液晶分子の配向能を有する高分子化合物1g当たりに、アミノ基の量が、0.1mmol〜10mmolとなる範囲内であることが好ましく、特に0.2mmol〜5mmolの範囲内であることが好ましい。アミノ基を有するシランカップリング剤の含有量が、上記範囲よりも少ないと上記配向層と上記位相差層との密着強度が不十分になる場合があり、また、上記範囲よりも含有量が多いと配向層の液晶分子を配向する機能を損なう可能性があるからである。
b.液晶分子の配向能を有する高分子化合物
配向層形成用組成物に用いられる液晶分子の配向能を有する高分子化合物は、「2.液晶分子の配向能を有する高分子化合物」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
c.溶媒
配向層形成用組成物に用いられる溶媒としては、上記アミノ基を有するシランカップリング剤と上記液晶分子の配向能を有する高分子化合物を所望の濃度に溶解できるものであれば特に限定されないが、水、低級アルコール溶剤、または水と低級アルコール溶剤との混合溶剤であることが好ましい。本発明に用いるアミノ基を有するシランカップリング剤は、水、低級アルコール溶剤中では安定的に存在できるため、配向層形成用組成物の経時安定性を向上することができ、生産性の面において有利だからである。また、上記液晶分子の配向能を有する高分子化合物として、水酸基を有する高分子化合物を用いる場合に、良好な溶解性を得ることができるからである。
上記低級アルコール溶剤は、炭素数が1〜5の鎖式アルコールを指す。本発明においては、中でもメタノールまたはエタノールを用いることが好ましい。メタノールまたはエタノールは水との相溶性に特に優れるからである。
上記配向層形成用組成物の溶媒として、水と低級アルコール溶剤との混合溶媒を用いる場合は、低級アルコール溶剤の比率が質量比で、5〜100の範囲内が好ましく、特に10〜100の範囲内が好ましい。質量比を上記の範囲内とすることにより、透明基材上への配向層形成用組成物の塗布工程における泡の発生を抑制することができ、生産面において有利だからである。
また、上記配向層形成用組成物の溶媒としては、配向層形成用組成物の経時安定性や、上記液晶分子の配向能を有する高分子化合物の溶解性を損なわない範囲で、水、低級アルコール溶剤以外に、ケトン系、エーテル系、エステル系等の他の溶媒を含んでもよい。このような他の溶媒の含有量は、溶媒全体に対して30質量%以下が好ましく、特に20質量%以下であることが好ましい。含有量が多いと、配向層形成用組成物の経時安定性や、上記液晶分子の配向能を有する高分子化合物の溶解性を損なう可能性があるからである。
上記他の溶媒としては、水および低級アルコールと相溶性を示すものであれば、特に限定されることなく、一般的な溶媒を用いることができる。
d.他の化合物
配向層形成用組成物中には、上記アミノ基を有するシランカップリング剤の反応性を向上させるために、水溶液中において酸性を示す酸性化合物を含むことが好ましい。上記配向層形成用組成物中に酸性化合物を含むことにより、上記アミノ基を有するシランカップリング剤の反応を促進することができ、生産性の面において有利だからである。
上記酸性化合物としては、上記シランカップリング剤の反応性を向上できる化合物であれば特に限定されないが、中でも25℃の水溶液中における酸解離定数(pKa)が6以下であることが好ましく、特に5以下であることが好ましい。pKaが上記の範囲よりも大きいと、上記シランカップリング剤の反応性を向上できない場合があるからである。
上記酸性化合物の具体例としては、塩酸、硫酸、硝酸、燐酸、亜硫酸、炭酸等の無機酸類、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、モノクロル酢酸、ジクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、安息香酸、サリチル酸等の有機カルボン酸類、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機スルホン酸類を挙げることができるがこれらに限られない。これらの酸性化合物は通常1種類を用いるが、必要に応じて2以上の種類を用いても良い。本発明においては、上記酸性化合物の中でも酢酸が特に好ましい。
配向層形成用組成物中の上記酸性化合物の含有量は、上記アミノ基を有するシランカップリング剤の反応性を向上できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、上記アミノ基を有するシランカップリング剤100重量部に対して、5重量部〜100重量部の範囲内が好ましく、中でも10重量部〜50重量部の範囲内であることが好ましい。酸性化合物の含有量が上記範囲よりも少ないと、アミノ基を有するシランカップリング剤の反応性を向上することができない場合があり、また含有量が上記範囲よりも多いとアミノ基を有するシランカップリング剤同士が反応し、凝集する可能性があるからである。
配向層形成用組成物には、必要に応じて上記以外の他の化合物を含んでも良い。他の化合物としては、配向層の液晶分子を配列させる機能を損なうものでなければ、その種類、含有量等において特に限定されるものではない。
e.配向層形成用組成物
配向層形成用組成物の固形分濃度は、後述する透明基材上への配向層形成用組成物の塗布方式等に応じて、上記位相差層を均質に積層することが可能な平面性を実現できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1質量%〜10質量%の範囲内が好ましく、特に0.1質量%〜5質量%の範囲内がより好ましく、中でも0.5質量%〜3質量%の範囲内がさらに好ましい。固形分濃度が上記範囲よりも濃いと、平面性に優れた配向層を得ることができない場合があり、また固形分濃度が上記範囲よりも薄いと、溶媒の乾燥負荷が増加するため、生産性の面において不利になる可能性があるからである。
(2)配向層の形成方法
本発明における配向層は、通常、上記配向層形成用組成物を透明基材上に塗布し、塗膜を乾燥することによって配向層を成膜した後、アミノ基を有するシランカップリング剤の反応を促進するための加熱処理を実施することにより形成する。以下、本発明における配向層の形成方法について説明する。
本発明における配向層形成用組成物を透明基材上に塗工する塗布方式としては、上記位相差層を均質に積層することが可能な平面性を達成できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これらに限られるものではない。
上記配向層形成用組成物の塗膜の厚みについても、均質な位相差層を積層することが可能な平面性を達成できる範囲内であれば、特に限定されるものではないが、通常、0.01μm〜20μmの範囲内が好ましく、特に0.05μm〜10μmの範囲内が好ましく、中でも0.1μm〜5μmの範囲内が好ましい。塗膜の厚みが上記範囲より薄いと配向層の平面性を損なってしまう場合があり、また、塗膜の厚みが上記範囲より厚いと溶媒の乾燥負荷が増大し、生産性が低下してしまう可能性があるからである。
配向層形成用組成物の塗膜の乾燥温度は、溶媒を所望の乾燥時間内に乾燥除去することができる範囲内であれば特に限定されないが、通常、10℃〜150℃の範囲内が好ましく、特に40℃〜120℃の範囲内が好ましい。乾燥温度が上記の範囲よりも高いと、発泡や急激な乾燥収縮等により、配向層の平面性が損なわれる場合があり、また、乾燥温度が上記範囲よりも低いと、乾燥時間が長くなり、生産面において不利となる可能性があるからである。
配向層形成用組成物の塗膜の乾燥時間は、配向層中の溶媒を所望の残留量まで除去できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、30秒〜10分の範囲内が好ましく、特に1分〜2分の範囲内が好ましい。乾燥時間が上記範囲よりも短いと、乾燥方法によっては溶媒を所望の残留量まで削減できない場合があり、また、上記範囲よりも長いと生産性の面において不利となる可能性があるからである。
上記配向層形成用組成物の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本発明における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて、順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
透明基材に塗工した配向層形成用組成物に対して、アミノ基を有するシランカップリング剤の反応を促進させるために行う加熱処理は、アミノ基を有するシランカップリング剤の縮合反応を向上できる範囲内であれば、乾燥時間・乾燥温度共に特に限定されない。本発明における上記加熱処理としては、加熱温度が30℃〜150℃の範囲内であることが好ましく、特に40℃〜120℃の範囲内であることが好ましく、中でも40℃〜80℃の範囲内であることが好ましい。加熱温度が上記範囲より高いと、透明基材や配向層に熱損傷が生じる場合があり、また加熱温度が上記範囲より低いと上記アミノ基を有するシランカップリング剤の縮合反応を所望の程度まで促進できない場合があるからである。また、上記加熱処理における加熱時間は、上記加熱温度に応じて任意に調整して決定することができる。
また本発明においては、上記のアミノ基を有するシランカップリング剤の反応を促進するために行う加熱処理を、上記配向層形成用組成物の塗膜の乾燥と同一の工程において実施しても良い。
本発明における配向層は必要に応じて、加熱処理またはエネルギー線照射処理等により硬化させても良い。このようなエネルギー線としては、紫外線や電子線を挙げることができる。
本発明の配向層は液晶分子の配向能を付与しても良い。液晶分子の配向能を付与する方法としては、ラビング処理、電場の付与、磁場の付与、および光照射による方法等を挙げることができるが、本発明においてはラビング処理による方法が好ましい。このようなラビング処理には、一般的に用いられるラビング方法を用いることができる。
B.位相差層
次に、本発明における位相差層について説明する。本発明における位相差層は、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなることを特徴とするものである。
1.アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物
本発明における位相差層は、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなることを特徴とする。このような重合物を構成するアクリロイル基を有する重合性液晶化合物は、所定温度において液晶性を示す化合物であれば特に限定されるものではない。本発明に用いられるアクリロイル基を有する重合性液晶化合物としては、重合性液晶モノマー、重合性液晶オリゴマー、および重合性液晶高分子を挙げることができるが、本発明においては中でも、重合性液晶モノマーが好適に用いられる。重合性液晶モノマーは、重合性液晶オリゴマーや重合性液晶高分子と比較して、より低温で配向が可能であり、かつ配向に際しての感度も高いことから、容易に配向させることができるからである。
上記重合性液晶モノマーが示す液晶性としては、特に限定されるものではなく、本発明の光学素子の用途等に応じて所望の光学的性質を発現できるものを適宜選択して用いることができる。このような液晶性としては、ネマチック液晶性、スメクチック液晶性、コレステリック液晶性、ディスコチック液晶性などを挙げることができるが、本発明においては、中でも、ネマチック液晶性またはコレステリック液晶性の重合性液晶モノマーを好適に用いることができる。また、本発明に用いられる重合性液晶モノマーは1種類に限らず、2種類以上の重合性液晶モノマーを混合して用いることもできる。
上記ネマチック液晶性を示す重合性液晶モノマーとしては、例えば下記式で示される化合物が挙げられる。
Figure 2006276061
Figure 2006276061
Figure 2006276061
上記化合物(I)において、R21、R22は、それぞれ水素(H)またはメチル基(−CH)を示すが、R21、R22は共に水素であることが好ましい。上記化合物(I)が液晶層を示す温度範囲が広くなるからである。上記化合物(I)におけるXは、水素、炭素数1〜20のアルキル、炭素数1〜20のアルケニル、炭素数1〜20のアルキルオキシ、炭素数1〜20のアルキルオキシカルボニル、ホルミル、炭素数1〜20のアルキルカルボニル、炭素数1〜20のアルキルカルボニルオキシ、ハロゲン、シアノまたはニトロを表す。また、上記化合物(I)におけるa、bは2〜20の範囲内の整数を表す。
また、コレステリック液晶性を示す重合性液晶モノマーとしては、例えば上記化合物(I)、あるいは、下記式で示される化合物が挙げられる。
Figure 2006276061
Figure 2006276061
2.位相差層
本発明における位相差層は、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなり、本発明の光学素子の用途に応じて、所望の光学的性質を発現する機能を有する層である。
本発明における位相差層の厚みは、上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の種類や、本発明の光学素子の用途等に応じて、所望の光学的性質を実現できる範囲内で任意に決定することができるが、通常、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、特に0.5μm〜30μmの範囲内が好ましく、中でも0.5μm〜10μmの範囲内が好ましい。厚みが上記範囲よりも厚いと、透過率の低下や、液晶の配列の乱れが生じる場合があり、厚みが上記範囲より薄いと所望の光学的性質を得ることができない可能性があるからである。
本発明における位相差層の構成は、位相差層に求められる光学的性質や、本発明の光学素子の用途に応じて任意の構成とすることができ、単層構造であっても、複数の層からなる構成としても良い。位相差層を複数の層からなる構成とする場合の具体例としては、同一の液晶性を示す重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層を積層して構成する態様や、互いに異なる液晶性を示す重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層を積層して構成する態様を挙げることができる。
互いに異なる液晶性を示す重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層を積層する構成としては、例えばネマチック液晶性を示す重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層と、コレステリック液晶性やスメクチック液晶性等の異なる液晶性を示す重合性液晶性化合物の重合物からなる位相差層とを積層する構成を例示することができるが、これらに限られるものではない。
本発明における位相差層が示す光学的性質は、本発明の光学素子の用途等に応じて任意の特性を付与することができるが、中でも位相差性を有することが好ましい。位相差層を構成する上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物は、方向によって屈折率が異なる屈折率異方性(複屈折性)を示し、規則的に配列させることにより位相差性を発現しやすい特徴を有するため、本発明によれば位相差性を容易に発現することが可能だからである。ここで、本発明における位相差性とは、方向によって屈折率が異なる屈折率異方性(複屈折性)を有することを意味するものとする。
位相差層の透明度は、本発明の光学素子の用途や上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の種類等に応じて、所望の光学的性質を達成できる範囲内であれば特に限定されないが、通常、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。透過率が上記の値よりも低いと、本発明の光学素子の光学的性質を損なってしまう可能性があるからである。ここで、位相差層の透過率は、JIS K7361−1(プラスチック−透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
3.位相差層の形成方法
本発明における位相差層の形成方法は、本発明の光学素子の用途や位相差層に付与する光学的性質等に応じて、膜厚が均一で平面性に優れた層を形成できる方法であれば、特に限定されるものではないが、位相差層形成用組成物を上記配向層上に塗工する方法が好ましい。このような方法によれば、平面性に優れた位相差層を容易に形成することが可能だからである。以下、このような位相差層の形成方法について説明する。
(1)位相差層形成用組成物
上記位相差層形成用組成物は、通常、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物と、溶媒とからなり、必要に応じて他の化合物を含んでも良い。以下、位相差層形成用組成物の各構成について説明する。
a.アクリロイル基を有する重合性液晶化合物
位相差層形成用組成物に用いられるアクリロイル基を有する重合性液晶化合物は、「1.アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物」の項に記載したものと同様であるので、ここでの説明は省略する。
b.溶媒
位相差層形成用組成物に用いられる溶媒としては、上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物を所望の濃度に溶解できるものであれば特に限定されない。本発明に用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、ヘキサン等の炭化水素系溶媒、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、クロロホルム、ジクロロメタン等のハロゲン化アルキル系溶媒、酢酸メチル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、およびジメチルスルホキシド等のスルホキシド系溶媒を例示することができるが、これらに限られるものではない。また、本発明に用いられる溶媒は、1種類でもよく、2種類以上の溶媒の混合溶媒でもよい。
c.他の化合物
位相差層形成用組成物には、必要に応じてカイラル剤を含んでも良い。特に位相差層に、コレステリック規則性を付与する場合にはカイラル剤を含むことが好ましい。本発明に用いられるカイラル剤としては、分子内にキラリティーを有する化合物であれば特に限定されないが、重合性官能基を有する重合性カイラル剤を用いることが好ましい。重合性カイラル剤を用いることにより、重合性カイラル剤が上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物と重合物を形成することができるため、位相差層をより緻密で、耐熱性に優れたものにすることができるからである。このようなカイラル剤としては下記式で表される化合物を例示することができるが、これらに限られない。また、本発明に用いられるカイラル剤は1種類でもよく、2種類以上を混合して用いても良い。
Figure 2006276061
Figure 2006276061
Figure 2006276061
上記式において、R51は、水素またはメチル基を示す。Yは本発明の光学素子の用途等に応じて、上記式(i)〜(xxiv)までに示す原子団の中から任意に採用することができるが、中でも(i)、(ii)、(iii)、(v)および(vii)のいずれかを用いることが好ましい。また、上記式中において、cおよびdは任意の整数とすることができるが、通常、それぞれ個別に2〜12の範囲内が好ましく、特に4〜10の範囲内が好ましい。cおよびdが上記範囲よりも小さいと安定性に欠ける場合があり、また、上記範囲よりも大きいと融点が低くなり、上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物と相分離を生じる可能性があるからである。
位相差層形成用組成物中におけるカイラル剤の含有量は、カイラル剤の螺旋ピッチ誘起能力や、本発明の光学素子に付与するコレステリック性に応じて、任意に決定することができる。本発明における位相差層形成用組成物中のカイラル剤含有量は、上記アクリロイル基を有する重合性液晶材料の種類によって異なるが、通常、アクリロイル基を有する重合性液晶材料の100重量部当り、0.01重量部〜60重量部の範囲内が好ましく、特に0.1重量部〜40重量部の範囲内が好ましく、さらに0.5重量部〜30重量部の範囲内が好ましい。中でも本発明においては、1重量部〜20重量部の範囲内が最も好ましい。位相差層形成用組成物中におけるカイラル剤の含有量が、上記範囲よりも少ないと、重合性液晶材料に所望のコレステリック性を付与できない場合があり、また上記範囲よりも多いと、上記アクリロイル基を有する重合性液晶材料の配向が阻害され、活性放射線によって硬化する際に悪影響が生じる可能性があるからである。
上記位相差層形成用組成物中には、必要に応じて光重合開始剤を含んでも良い。特に紫外線照射により位相差層を硬化させる処理を実施する場合には、光重合開始剤を含むことが好ましい。本発明に用いられる光重合開始剤としては、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミン)ベンゾフェノン、α−アミノ・アセトフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ベンジルメトキシエチルアセタール、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、アントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンズスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンジルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラーケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、n−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホスフィン、カンファーキノン、アデカ社製N1717、四臭化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン、エオシン、メチレンブルー等の光還元性色素とアスコルビン酸やトリエタノールアミンのような還元剤との組み合わせ等を例示できる。本発明では、これらの光重合開始剤を1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
さらに、上記光重合開始剤を用いる場合には、光重合開始助剤を併用することができる。このような光重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン等の3級アミン類や、2−ジメチルアミノエチル安息香酸、4−ジメチルアミド安息香酸エチル等の安息香酸誘導体を例示することができるが、これらに限られるものではない。
上記光重合開始剤の含有量は、位相差層形成用組成物の固形分中、0.5〜30質量%の範囲内、特に1〜10質量%の範囲内とすることが好ましい。
上記位相差層形成用組成物には、本発明の目的を損なわない範囲内で、下記に示すような化合物を添加することができる。添加できる化合物としては、例えば、多価アルコールと1塩基酸または多塩基酸を縮合して得られるポリエステルプレポリマーに、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリエステル(メタ)アクリレート;ポリオール基と2個のイソシアネート基を持つ化合物を互いに反応させた後、その反応生成物に(メタ)アクリル酸を反応させて得られるポリウレタン(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ポリカルボン酸ポリグリシジルエステル、ポリオールポリグリシジルエーテル、脂肪族または脂環式エポキシ樹脂、アミノ基エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシベンゼン型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂と、(メタ)アクリル酸を反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート等の光重合性化合物;アクリル基やメタクリル基を有する光重合性の液晶性化合物等が挙げられる。上記位相差層形成用組成物に対するこれら化合物の添加量は、本発明の目的が損なわれない範囲で決定することができる。上記のような化合物を添加することにより位相差層の機械強度が向上し、安定性が改善される場合がある。
上記位相差層形成用組成物には、必要に応じて上記以外の他の化合物を含んでもよい。他の化合物としては、本発明の光学素子の用途等に応じて、位相差層の光学的性質を害さないものであれば特に限定されるものではない。
d.位相差層形成用組成物
位相差層形成用組成物の固形分濃度は、本発明の光学素子の用途や位相差層に付与する光学的性質等に応じて、所望の膜厚と平面性を達成できる方法であれば特に限定されないが、通常、0.01質量%〜60質量%の範囲内が好ましく、特に1質量%〜40質量%の範囲内が好ましく、中でも5質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましい。位相差層形成用組成物の固形分濃度が上記範囲よりも濃いと、所望の平面性を得ることができない場合があり、また濃度が上記範囲よりも薄いと、溶媒の乾燥負荷が増加し、生産性の面において不利となる可能性があるからである。
(2)位相差層の形成方法
本発明における位相差層は、通常、上記位相差層形成用組成物を配向層上に塗布し、乾燥した後、硬化処理を実施することにより形成する。以下、このような位相差層の形成方法について説明する。
位相差層形成用組成物を配向層上に塗工する塗布方式としては、所望の平面性を達成できる方法であれば、特に限定されるものではない。具体的には、グラビアコート法、リバースコート法、ナイフコート法、ディップコート法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、スピンコート法、ロールコート法、プリント法、浸漬引き上げ法、カーテンコート法、ダイコート法、キャスティング法、バーコート法、エクストルージョンコート法、E型塗布方法などを例示することができるが、これに限られるものではない。
上記位相差層形成用組成物の塗膜の厚みについても、所望の平面性を達成できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、通常、0.1μm〜50μmの範囲内が好ましく、特に0.5μm〜30μmの範囲内が好ましく、中でも0.5μm〜10μmの範囲内が好ましい。位相差層形成用組成物の塗膜の厚みが上記範囲より薄いと位相差層の平面性を損なってしまう場合があり、また厚みが上記範囲より厚いと、溶媒の乾燥負荷が増大し、生産性が低下してしまう可能性があるからである。
上記位相差層形成用組成物の塗膜の乾燥方法は、加熱乾燥方法、減圧乾燥方法、ギャップ乾燥方法等、一般的に用いられる乾燥方法を用いることができる。また、本発明における乾燥方法は、単一の方法に限られず、例えば残留する溶媒量に応じて順次乾燥方式を変化させる等の態様により、複数の乾燥方式を採用してもよい。
上記位相差層形成用組成物の硬化方法は、上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物を重合することができる方法であれば特に限定されないが、活性放射線の照射により硬化させる方法が好ましい。活性放射線としては、上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物を重合させることが可能な放射線であれば特に限定されるものではないが、通常は装置の容易性等の観点から紫外光または可視光を使用することが好ましく、中でも、波長が150〜500nm、好ましくは250〜450nm、さらに好ましくは300〜400nmの照射光を用いることが好ましい。
この照射光の光源としては、低圧水銀ランプ(殺菌ランプ、蛍光ケミカルランプ、ブラックライト)、高圧放電ランプ(高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ)、ショートアーク放電ランプ(超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ)などが例示できる。中でも、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ灯等の使用が推奨される。また、照射強度は、光重合開始剤の含有量等によって適宜調整して照射することができる。
このような活性照射線の照射による位相差層形成用組成物の硬化処理は、上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物が液晶相となる温度条件で行ってもよく、また液晶相となる温度より低い温度で行ってもよい。
C.透明基材
次に、本発明に用いられる透明基材について説明する。
本発明に用いられる透明基材の透明度は、本発明の光学素子の用途や上記配向層および上記位相差層を構成する材料の種類等に応じて、所望の光学的性質を達成できるものを任意に用いることができるが、中でも、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。透過率が低いと、上記配向層や上記位相差層の構成材料の選択幅が狭くなってしまう場合があるからである。ここで、透明基材の透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
本発明に用いられる透明基材は、光学的等方性を有するものが好ましい。上記透明基材が、光学的等方性を有することにより本発明の光学素子を光学特性に優れたものにでき、本発明の光学素子の用途を広範にすることができるからである。
本発明に用いられる透明基材の光学的等方性は、本発明の光学素子の用途や上記配向層および上記位相差層を構成する材料の種類等に応じて、所望の光学特的性質を達成できるものを任意に採用できるが、中でも、レターデーション値(Re)が0nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、0nm〜50nmの範囲内がより好ましく、0nm〜10nmの範囲内がさらに好ましい。このような透明基材を用いることにより、本発明の光学素子の用途や上記配向層および上記位相差層の構成材料の選択の幅を広げることができるからである。ここで、レターデーション値(Re)とは、透明基材の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、透明基材の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率をny、透明基材の厚みをd(nm)とした場合に、Re=(nx−ny)×dで表される値をいう。
本発明に用いられる透明基材の厚みは、本発明の光学素子の用途に応じて、必要な自己支持性を有するものであれば特に限定されないが、通常、5μm〜500μmの範囲内が好ましい。厚みが上記の範囲よりも薄いと、本発明の光学素子に必要な自己支持性が得られない場合があるからである。また、厚みが上記の範囲よりも厚いと、例えば、本発明の光学素子を裁断加工する際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
また、本発明に用いられる透明基材は、上記光学的特性を具備するものであれば、可撓性を有するリジッド材でも、可撓性のないフレキシブル材を用いることもできるが、フレキシブル材を用いることが好ましい。フレキシブル材を用いることにより、本発明の光学素子の製造工程をロールトゥロールプロセスとすることができ、生産性に優れた光学素子を得ることができるからである。
上記フレキシブル材としては、セルロース誘導体、ノルボルネン系ポリマー、シクロオレフィン系ポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル類などを例示することができるが、中でもセルロース誘導体を用いることが好ましい。セルロース誘導体は特に光学的等方性に優れるため、光学的特性に優れた光学素子を得ることができるからである。
上記セルロース誘導体は、セルロースエステルを用いることが好ましく、さらに、セルロースエステル類の中では、セルロースアシレート類を用いることが好ましい。セルロースアシレート類は工業的に広く用いられていることから、入手容易性の点において有利だからである。
上記セルロースアシレート類としては、炭素数2〜4の低級脂肪酸エステルが好ましい。低級脂肪酸エステルとしては、例えばセルロースアセテートのように、単一の低級脂肪酸エステルのみを含むものでもよく、また、例えばセルロースアセテートブチレートやセルロースアセテートプロピオネートのような複数の脂肪酸エステルを含むものであっても良い。
本発明においては、上記低級脂肪酸エステルの中でもセルロースアセテートを特に好適に用いることができる。セルロースアセテートとしては、平均酢化度が57.5〜62.5%(置換度:2.6〜3.0)のトリアセチルセルロースを用いることが最も好ましい。このようなトリアセチルセルロースは数多くの種類が工業的に用いられていることから、本発明の光学素子の用途に適したトリアセチルセルロースを選択することが可能だからである。ここで、酢化度とは、セルロース単位質量当りの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験方法)におけるアセチル化度の測定および計算により求めることができる。
D.光学素子
本発明の光学素子の膜厚は、その用途等により適宜選択されるものであるが、通常、5μm〜500μmの範囲内が好ましい。厚みが上記の範囲より薄いと、必要な自己支持性が得られない場合があるからである。また、厚みが上記の範囲より厚いと、例えば、光学素子を裁断加工する際に、加工屑が増加したり、裁断刃の磨耗が早くなってしまう場合があるからである。
本発明の光学素子の透明性は、光学素子の用途等により適宜決定することができるが、中でも、可視光領域における透過率が80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。透過率は、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。
本発明の光学素子の用途は、上記位相差層が位相差性を有することにより、液晶表示装置用の位相差フイルムとして用いることが好ましい。このように本発明の光学素子を位相差フイルムとして用いる場合の態様としては、図2に示すように位相差層3において、ネマチック液晶性を示す上記アクリロイル基を有する重合性液晶化合物a(以下、単にネマチック液晶化合物と称する。)が、分子の長軸方向と透明基材1の表面とが平行になるように固定されている光学素子21を挙げることができる。このようなホモジニアス構造(平行配向構造)を有する光学素子21は、Aプレートとして用いることができる。
また、本発明の光学素子を位相差フイルムとして用いる場合の他の態様として、図3に示すように位相差層3において、ネマチック液晶化合物aが、分子の長軸方向と透明基材1の表面とが垂直となるように固定されている光学素子22を挙げることができる。このようなホメオトロピック構造(垂直配向構造)を有する光学素子22は、ポジティブ(+)Cプレートとして用いることができる。
さらに、本発明の光学素子を位相差フイルムとして用いる場合の他の態様として、図4に示すように、位相差層3にカイラル剤を含むことにより、ネマチック液晶化合物aが透明基材1に対してプラナー配向した螺旋構造で固定されている光学素子23を挙げることができる。このような、プラナー配向した螺旋構造を有する光学素子23は、ネガティブ(−)Cプレートとして用いることができる。
本発明の光学素子は、配向層にアミノ基を有するシランカップリング剤を有する特徴を有するが、配向層中のアミノ基は、例えば熱分解GC−MAS法等によりその存在を確認することができる。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と、実質的に同一の構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなる場合であっても本発明の技術的範囲に包含される。
以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。なお、実施例においては、アクリロイル基を有する重合性液晶材料として、下記式で表される化合物(II)を用い、カイラル剤として下記式で表される化合物(III)を用いた。
Figure 2006276061
(実施例1)
厚み80μmのトリアセチルセルロースフイルムの片面に、下記組成の配向層形成用組成物を#12のワイヤーバーコーターにて塗布し、90℃で4分間乾燥することにより厚み0.2μmの配向層を成膜した後、さらに50℃で6日間加熱した。
その後、下記組成の位相差層形成用組成物を配向層上に#8のワイヤーバーコーターにて塗布し、80℃で2分間乾燥した後、高圧水銀灯を窒素雰囲気下で100mJ/cm照射して紫外線硬化することによって厚み2.0μmの位相差層を形成し、位相差性を有する光学素子を作製した。
<配向層形成用組成物の組成(実施例1)>
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製) 1重量部
・アミノプロピルトリメトキシシラン
(商品名 KBM903:信越化学工業社製) 0.35重量部
・メタノール 32.88重量部
・水 65.77重量部
<位相差層形成用組成物の組成(実施例1)>
・ネマチック液晶性を示す重合性液晶化合物(上記化合物(II))17.2重量部
・カイラル剤(上記化合物(III)) 2.8重量部
・反応開始剤
(商品名 Igr907:チバスペシャリティ・ケミカルズ社製) 0.8重量部
・反応禁止剤(商品名 BHT:関東化学社製) 0.004重量部
・シクロヘキサノン 71.27重量部
・イソプロピルアルコール 7.92重量部
(実施例2)
下記組成の配向層形成用組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様の方法により、位相差性を有する光学素子を作製した。
<配向層形成用組成物の組成(実施例2)>
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製) 1重量部
・アミノプロピルトリメトキシシラン
(商品名 KBM903:信越化学工業社製) 0.25重量部
・メタノール 32.92重量部
・水 65.83重量部
(実施例3)
配向層成膜後の加熱条件を、50℃で4日間としたこと以外は、実施例1と同様の方法により位相差性を有する光学素子を作製した。
(実施例4)
厚み80μmのトリアセチルセルロースフイルムの片面に、実施例1と同様の配向層形成用組成物を、実施例1と同様の方法により塗布し、110℃にて10分間することにより厚み0.2μmの配向層を形成した。
その後、実施例1と同様の方法により位相差層を形成し、位相差性を有する光学素子を作製した。
(比較例1)
厚み80μmのトリアセチルセルロースフイルムの片面に、下記組成の配向層形成用組成物を#12のワイヤーバーコーターにて塗布し、90℃で4分間乾燥することにより厚み0.2μmの配向層を形成した。
その後、実施例1と同様の方法により位相差層を形成し、位相差性を有する光学素子を作製した。
<配向層形成用組成物の組成(比較例1)>
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製) 1重量部
・メタノール 33重量部
・水 66重量部
(比較例2)
配向層形成後、50℃で4日間加熱すること以外は、比較例1と同様の方法により位相差性を有する光学素子を作製した。
(比較例3)
配向層形成後、50℃で6日間加熱すること以外は、比較例1と同様の方法により位相差性を有する光学素子を作製した。
(比較例4)
厚み80μmのトリアセチルセルロースフイルムの片面に、比較例1と同様の配向層形成用組成物を、比較例1と同様の方法により塗布し、110℃で10分間加熱することにより厚み0.2μmの配向層を形成した。
その後、比較例1と同様の方法により位相差層を形成し、位相差性を有する光学素子を作製した。
(比較例5)
位相差層形成後、50℃で6日間加熱すること以外は、比較例1と同様の方法により位相差性を有する光学素子を作製した。
(比較例6)
下記組成の配向層形成用組成物を用いること以外は、実施例1と同様の方法により位相差性を有する光学素子を作製した。
<配向層形成用組成物(比較例6)>
・ヒドロキシエチルセルロース(ダイセル化学工業社製) 1重量部
・アミノプロピルトリメトキシシラン
(商品名 KBM903:信越化学工業社製) 0.50重量部
・メタノール 32.83重量部
・水 65.67重量部
(比較例7)
アミノプロピルトリメトキシシランの代わりに、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(商品名 KBM403:信越化学工業社製)を用いること以外は、実施例1と同様の方法により、位相差性を有する光学素子を作製した。
(評価)
上記実施例および比較例で作成した光学素子について、以下の方法により位相差層と配向層との密着耐湿熱性、および液晶の配向性を評価した。その結果を表1に示す。
1.配向層と位相差層との密着耐湿熱性の評価方法
配向層と位相差層との密着の耐湿熱性評価は、光学素子を25℃の水に24時間浸漬した後、配向層と位相差層との密着状態を目視にて観察することにより評価した。
24時間浸漬後、配向層と位相差層とに剥離が全く観察されない場合は「◎」と評価し、部分的に剥離が生じたが、配向層と位相差層との密着状態が保持されている場合は「○」と評価し、水に浸漬中に配向層と位相差層とが剥離してしまった場合は「×」と評価した。
2.液晶の配向性の評価方法
液晶の配向性の評価は、目視にて光学素子の白濁の有無を観察することにより評価した。白濁が観察されない場合は「○」と評価し、白濁が観察される場合は「×」と評価した。
Figure 2006276061
表1に示すように、比較例1〜比較例5、および比較例7の光学素子は、液晶の配向性に優れるが、配向層と位相差層との密着耐湿熱性が劣り、また比較例6の光学素子は、配向層と位相差層との密着耐湿熱性に優れるが液晶の配向性が劣り、両方の品質を満足する光学素子を得ることができなかった。一方、実施例1〜実施例4では、液晶の配向性、および配向層と位相差層との密着耐湿熱性に優れた光学素子を得ることができた。このように、本発明によれば配向層と位相差層との密着耐湿熱性に優れ、液晶分子の配向性が良好な光学素子を容易に得ることができる。
本発明の光学素子の一例を示す概略断面図である。 本発明の光学素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の光学素子の他の例を示す概略断面図である。 本発明の光学素子の他の例を示す概略断面図である。
符号の説明
1 … 透明基材
2 … 配向層
3 … 位相差層
11 … 光学素子
21 … 光学素子
22 … 光学素子
23 … 光学素子
a … アクリロイル基を有する重合性液晶化合物

Claims (5)

  1. 透明基材と、前記透明基材上に形成され、液晶分子の配向能を有する高分子化合物からなる配向層と、前記配向層上に形成され、アクリロイル基を有する重合性液晶化合物の重合物からなる位相差層とを有する光学素子であって、
    前記配向層に、アミノ基を有するシランカップリング剤を含むことを特徴とする光学素子。
  2. 前記液晶分子の配向能を有する高分子化合物が、水酸基を有する高分子化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の光学素子。
  3. 前記水酸基を有する高分子化合物が、セルロース誘導体であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の光学素子。
  4. 前記位相差層が位相差性を有することを特徴とする、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の光学素子。
  5. 前記透明基材が、トリアセチルセルロースフイルムであることを特徴とする、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の光学素子。

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