JP2006274255A - 低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル、成形品及びフィルム - Google Patents

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弘 片山
Hisayoshi Ito
久義 伊藤
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Abstract

【課題】 生分解性の制御性等に優れた特性を有する高分子量で低分岐度の脂肪族ポリエステルを提供する。
【解決手段】 分子鎖が脂肪族ジカルボン酸残基、脂肪族ジオール残基及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基からなり、脂肪族ジカルボン酸残基100mol%のうち100〜75mol%がコハク酸残基で、脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基の、脂肪族ジカルボン酸残基及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基の和に対するモル分率が0〜0.25であるMw5,000以上の低分子量脂肪族ポリエステル100重量部に対し、0.1〜5重量部の2官能性連結剤により連結されてなる、Mwが40,000以上であり、かつ、リンゴ酸に基づく分岐構造の含有率が10×10−6mol/g以下である低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
【選択図】 なし

Description

本発明は、脂肪族ジカルボン酸残基、脂肪族ジオール残基及び必要に応じて加えられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基からなり、脂肪族ジカルボン酸残基のうちの特定比率がコハク酸残基であり、かつ、特定の分岐構造の含有率が少ない低分子量脂肪族ポリエステルを2官能性の連結剤により連結されてなる、重量平均分子量が40,000以上であり、低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル、成形品及びフィルムに関する。
近年、自然環境中で生分解可能なプラスチックとして、汎用性の高い脂肪族ポリエステルが注目されており、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(ε−カプロラクトン)(PCL)、ポリブチレンサクシネート(PBS)、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート)共重合体(PBSA)、ポリ(ブチレンサクシネート−ε−カプロラクトン)共重合体(PBSC)、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート−乳酸)共重合体、ポリエチレンサクシネート(PES)などが上市されている。
これら生分解性脂肪族ポリエステルの用途の一つとして包装用、農業用、食品用などのフィルム分野があり、用途に応じた高強度、耐熱性及び生分解性が、基本性能として要求されている。
上記脂肪族ポリエステルの中で、PLAは、延伸あるいは高結晶化させたフィルムあるいは成形品は、高いものでは170℃付近に融点を持ち高耐熱性であるが、硬くあるいは脆いために成形品の伸度は低く、また土中で分解しにくいためコンポスト化設備が必要である。
一方、PCLは柔軟性に富み、土中でも容易に分解する代表的な生分解性プラスチックであるが、融点が約60℃と低く、そのままで実用的に広く使用することは困難である。その他の脂肪族ポリエステルは、いずれもコハク酸と1,4−ブタンジオール又はエチレングリコールを主原料として得られる柔軟性の高い結晶性高分子で、土中での生分解性も良好であり、必要に応じて他の重縮合又は重付加可能な原料を加えることによって融点を115〜75℃付近に制御し、実用上十分な耐熱性を確保することができる。
これらコハク酸系の脂肪族ポリエステルは特開平4−189822号公報、及び特開平5−287043号公報に開示されている。(特許文献1及び2)
これらの公報には、数平均分子量が5000以上、望ましくは10,000以上で、末端基が実質的にヒドロキシル基であるポリエステルジオールに、その融点以上の溶融状態において、カップリング剤としてのジイソシアナート類を添加することにより、ウレタン結合を含む高分子量の脂肪族ポリエステルが得られることが記載されている。しかし、低分岐度の高分子量脂肪族ポリエステルについては、何も述べていない。
また、同様のコハク酸系脂肪族ポリエステルの改良については、数多くの改良も報告されている。
例えば、特開平8−311181号公報には、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステルと、脂肪族ジオールと、ヒドロキシカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸エステル又はラクトンを触媒の存在下で重縮合反応させることにより数平均分子量が15,000〜80,000である生分解性高分子量脂肪族ポリエステル共重合体が開示されている(特許文献3)。
特開平9−272789号公報には、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸を共重合して数平均分子量が1〜30万である脂肪族ポリエステルと、数平均分子量が3万以上のポリ乳酸を溶融ブレンドした樹脂組成物が開示されている(特許文献4)。
WO 02−44249号公報には、脂肪族ジオール、脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族ヒドロキシカルボン酸又はその無水環状化合物(ラクトン類)の3成分からなる混合物の重縮合反応により合成した重量平均分子量40,000以上の高分子量脂肪族ポリエステル共重合体と他の生分解性樹脂を使用することにより、フィルム等の成形時の分子量安定性が良く、成形が良好であることが開示されている(特許文献5)。
特開2004-277715には、リンゴ酸を0.25重量%含むコハク酸を使用し、さらにアジピン酸、乳酸を加え、コハク酸/アジピン酸/乳酸/リンゴ酸−1,4−ブタンジオールからなる脂肪族ポリエステルで結晶化温度が結晶核剤無添加では25℃、結晶核剤入りでは25から43℃に上昇することが開示されている(特許文献6)。
しかしながら、上記各技術ではフィルムの耐衝撃強度が不十分であり、買い物袋等にした場合に破けやすいという問題があった。
一方、成形品の物性は、弱いところがあるとそこに応力が集中して、著しく低下させることは周知であり、物性を均一に保つことが重要である。
特開平4−189822号公報(請求項、実施例) 特開平5−287043号公報(請求項、実施例) 特開平8−311181号公報(請求項、実施例) 特開平9−272789号公報(請求項、実施例) WO 02-44249号公報(請求項、発明の開示の項の最終段落、表VII−1) 特開2004-277715号公報([0021]、[実施例])
本発明の目的は、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸類及び必要に応じて加えられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸類とから、成形性に優れ、強度及び伸度等の力学特性に優れているとともに、生分解性の制御性に優れた特性を有する高分子量で低分岐度の脂肪族ポリエステルを提供することにある。
本発明者らは、脂肪族ジカルボン酸残基、脂肪族ジオール残基及び必要に応じて加えられる脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基に基づくエステル結合を有する脂肪族ポリエステルに含まれる、特定構造の分岐点の濃度を特定の値以下に制御した低分子量脂肪族ポリエステルを2官能性の連結剤により連結することにより低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルが得られることを見い出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の第1は、分子鎖が、下記一般式(1)及び(2)で示される構造単位((1)及び(2)で示される構造単位の量は実質的に等モルである)、
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
−O−R2−O− (2)
(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)、並びに
下記一般式(3)で示される構造単位
−CO−R3−O− (3)
(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
からなる低分子量脂肪族ポリエステルであって、
上記一般式(1)で示される構造単位100mol%のうち100〜75mol%がコハク酸残基であり、
上記一般式(3)で示される構造単位量の上記一般式(1)及び(3)で示される構造単位量の和に対するモル分率が0〜0.25である重量平均分子量(Mw)5,000以上の低分子量脂肪族ポリエステル(D)が、
該低分子量体(D)100重量部に対し、0.1〜5重量部の一般式(7):
1−R7−X2 (7)
(式中、X1、X2は水酸基又はカルボキシル基と作用して共有結合を形成可能な反応基、R7は単結合、炭素数1〜20の脂肪族基又は芳香族基を表し、X1、X2は同一の化学構造であってもよいし、異なってもよい。)
で表される2官能性の連結剤(E)により連結されてなる、
重量平均分子量が40,000以上であり、かつ、下記式(4)で示される分岐構造の1H−NMR測定によるCH基:
−O−C(=O)−CH(O−C(=O)−)CH2−C(=O)O− (4)
の含有率が10×10−6mol/g以下である低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第2は、酸価が2.0mgKOH/g以下である本発明の第1に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第3は、1H−NMR測定による水酸基末端濃度が40×10−6mol/g以下である本発明の第1又は2に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第4は、一般式(1)で示される構造単位100mol%のうち、0〜25mol%がアジピン酸残基である本発明の第1〜3のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第5は、一般式(2)で示される構造単位が、エチレングリコール残基及び/又は1,4−ブタンジオール残基である本発明の第1〜4のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第6は、一般式(3)で示される構造単位が、ε−カプロラクトン、4−メチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトン、3,5,5−トリメチル−ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトン、グリコール酸、乳酸、及び3−ヒドロキシ酪酸からなる群から選ばれた少なくとも1種に基づく残基である本発明の第1〜5のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第7は、一般式(3)で示される構造単位量の、一般式(1)及び(3)で示される構造単位の合計量に対するモル分率が0.04〜0.25である本発明の第1〜6のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル樹脂組成物を提供する。
本発明の第8は、一般式(7)で示される2官能性の連結剤(E)の反応基がイソシアネート基;イソチオシアネート基;エポキシ基;オキサゾリン基;オキサゾロン基もしくはオキサジノン基;アジリジン基;又はこれらの混基であることを特徴とする本発明の第1〜7のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第9は、低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−ε−カプロラクトン)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート−乳酸)共重合体、及び/又はポリエチレンサクシネートである本発明の第1〜8のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを提供する。
本発明の第10は、本発明の第1〜9のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを成形してなる低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品を提供する。
本発明の第11は、成形が、押出成形、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、トランスファ成形、注型成形、スタンパブル成形、ブロー成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、積層成形、カレンダー成形、発泡成形、RIM成形、FRP成形、粉末成形又はペースト成形である本発明の第10に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品を提供する。
本発明の第12は、厚み1.5mmの圧縮成形品にした場合に、ASTM D3763に基づく落錐衝撃試験(但し、落錐高さ80cm)により、歪み−応力曲線における降伏点までの弾性変形エネルギーEp(単位:J)と、降伏点以降破壊点までの伝播エネルギーEg(単位:J)を測定した場合に、EpとEgの和(全吸収エネルギーEtot)が10J以上である本発明の第10又は11に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品を提供する。
本発明の第13は、伝播エネルギーEg(単位:J)が5.5J以上である本発明の第12に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品を提供する。
本発明の第14は、本発明の第10〜13のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品が、厚みが5μm〜0.5mmのフィルムであって、無延伸又は一軸もしくは二軸延伸されてなる低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルムを提供する。
本発明の第15は、直径19mm、重さ28gの球を用いた落球衝撃試験高さH(d=厚み)が、フィルム厚み20μmに換算した場合に20cm以上である本発明の第14に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルムを提供する。
本発明の第16は、MD方向の熱収縮応力(SMD)が0.4MPa以下であり、TD方向の熱収縮応力(STD)との比SMD/STDが10以下である本発明の第14又は15に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルムを提供する。
本発明の第17は、フィルムのTD方向の高速引張試験(ダイセル法)による、破断点伸度の平均値が750%以上で、その変動率が15%以下である本発明の第14〜16のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルムを提供する。
本発明の第18は、フィルムのTD方向のシャルピー衝撃試験(ダイセル法)による、吸収エネルギーの平均値が150MPa以上で、その変動率が50%以下である本発明の第14〜17のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル樹脂組成物フィルムを提供する。
本発明によれば、成形性に優れ、強度及び伸度等の力学特性に優れているとともに、生分解性の制御性に優れた特性を有する高分子量で低分岐度の脂肪族ポリエステルが容易に得られる。
<低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル>
本発明に係る低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル(以下、単に「脂肪族ポリエステル(a)」と呼ぶ場合がある。)は、以下に示す低分子量脂肪族ポリエステル(D)の100重量部に対し、0.1〜5重量部の一般式(7):
1−R7−X2 (7)
(式中、X1、X2は水酸基又はカルボキシル基と作用して共有結合を形成可能な反応基、R7は単結合、炭素数1〜20の脂肪族基又は芳香族基を表し、X1、X2は同一の化学構造であってもよいし、異なってもよい。)
で表される2官能性の連結剤(E)により連結されてなる低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルであり、
重量平均分子量(Mw)が40,000以上、好ましくは100,000以上、特に好ましくは200,000以上であり、
重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が好ましくは2.7以下、より好ましくは2.5以下であり、
下記式(4)で示される分岐構造の1H−NMR測定によるCH基:
−O−C(=O)−CH(O−C(=O)−)CH2−C(=O)O− (4)
の含有率が、10×10−6mol/g以下、好ましくは8.0×10−6mol/g以下である低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルである。
前記低分子量脂肪族ポリエステル(D)は、分子鎖が、下記一般式(1)及び(2)で示される構造単位((1)及び(2)で示される構造単位の量は実質的に等モルである)、
−CO−R1−CO− (1)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
−O−R2−O− (2)
(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
並びに下記一般式(3)で示される構造単位
−CO−R3−O− (3)
(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
からなる低分子量脂肪族ポリエステルであって、
上記一般式(1)で示される脂肪族ジカルボン酸残基100mol%のうち100〜75mol%、好ましくは100〜80%、さらに好ましくは100〜85mol%がコハク酸残基であり、
上記一般式(3)で示される構造単位量の、上記一般式(1)及び(3)で示される構造単位量の和に対するモル分率が0〜0.25であり、特に(3)で示される構造単位を含む場合は、好ましくは0.04〜0.25、さらに好ましくは0.06〜0.23、特に好ましくは0.08〜0.20であり、
重量平均分子量(Mw)が5,000以上の低分子量脂肪族ポリエステルである。
上記一般式(1)で示される構造単位と上記一般式(2)で示される構造単位は、通常、隣り合って連結して下記一般式(6)で示される繰り返し単位(P):
−CO−R1−COO−R2−O− (6)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表し、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
を形成する。上記繰り返し単位(P)中では、式(1)及び(2)で示される構造単位の量は等モルである。
なお、式(1)で示される構造単位は、繰り返し単位(P)中以外に、例えば、水酸基末端や、副反応で生じるエーテル結合部分に含まれることがある。また、式(2)で示される構造単位は、繰り返し単位(P)中以外に、例えば、酸末端部分に含まれることがある。
よって、式(1)及び(2)で示される構造単位の量の間にわずかな差が生じうるが、本発明の脂肪族ポリエステル(a)に含まれる、式(1)及び(2)で示される構造単位の量の差異は、その比率を、下記式(X)によって示されるRM:
Figure 2006274255
で表した場合に、RMの値が、通常1.030〜0.980、例えば、1.025〜0.995となる範囲である。従って、本発明の脂肪族ポリエステル(a)に含まれる、式(1)及び(2)で示される構造単位の量は、モル分率が十分に近い数値範囲内であり、実質的に等モルである。
また、脂肪族ポリエステル(a)が式(3)で示される構造単位を含む共重合体である場合には、共重合成分の繰り返し単位(Q)は式(3)で示される構造単位と同一であり、前記式(6)で示される繰り返し単位(P)と式(3)で示される構造単位(すなわち、繰り返し単位(Q))のモル比は、式(1)で示される構造単位と式(3)で示される構造単位のモル比に等しい。
一般的には、上記数値はその範囲外であると次のような問題点を生じやすい。コハク酸残基の比率が上記範囲外である場合、又は一般式(3)で示される構造単位のモル分率が上記範囲外である場合、得られる脂肪族ポリエステルの融点が80℃よりも低くなる。或いはその両方が同時に上記範囲外である場合には、得られる脂肪族ポリエステルの融点が80℃よりも低くなり、実用上の耐熱性を保てなくなる。さらに、双方が上記範囲内であっても、得られる脂肪族ポリエステルの融点が80℃以上となるよう条件を選ぶことが好ましい。
以下に、式(2)として1,4−ブタンジオール残基が含まれる場合を具体例に説明する。本発明に係る低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル(a)がコハク酸残基、1,4−ブタンジオール残基及び、式(1)〜(3)で示されるその他の少なくとも1種以上の構造単位で構成される場合、下記式(Y)によって示される共重合組成比率(R):
R={[B]・[SA]+([A]+[C])・([BG]+[B])}/{([SA]+[A]+[C])・([BG]+[B])} (Y)
(式中、[SA]は、式(1)〜(3)で示される構造単位それぞれの平均モル数の総和(この総和を以下では(S)と略記することがある)を分母とするコハク酸単位のモル濃度、[BG]は(S)を分母とする1,4−ブタンジオール単位のモル濃度、[A]〜[C]は、コハク酸残基と1,4−ブタンジオール残基を除くそれぞれ式(1)〜(3)で示される構造単位の、(S)を分母とするモル濃度を表す。)
の値が0〜0.25であり、共重合成分を使用する場合は、好ましくは0.04〜0.25、さらに好ましくは0.06〜0.23、特に好ましくは0.08〜0.20となるように選ぶことが好ましい。
分子量が小さい場合、具体的には、重量平均分子量(Mw)が前記数値範囲より小さい場合、例えばフィルムの成形時、特にインフレーション成形や二軸延伸のような延伸成形性が大きく低下する。延伸成形性を改良する目的で、脂肪族ポリエステルに分岐構造を導入し、溶融状態での歪み硬化性を持たせるなどの手法が開示されているが、この方法では、衝撃強度などの実用物性を向上させることが出来無い。一方、分子量が十分に高い場合、成形性の確保のために、分岐構造をもたせる必要はなく、むしろ分岐構造の含有率が上記範囲を超えて大きい場合、延性、耐衝撃性が低下するなど、分岐構造の増加による実用物性の低下を引き起こす。
Mw/Mn比が大きすぎる場合は、たとえ重量平均分子量が十分な大きさであっても、低分子量成分の含有率の高い組成物となり、脂肪族ポリエステル中に含まれる低分子量成分の影響により実用物性が低下する。
さらに、酸価が上記範囲外であると、樹脂中の酸成分の濃度が高く、加水分解によって分子量の低下が起こりやすくなり、成形時の品質低下などの原因となる。
本発明に係る脂肪族ポリエステル(a)は、上記組成からなり、重量平均分子量5,000以上の低分岐度の低分子量脂肪族ポリエステル(D)が、該低分子量脂肪族ポリエステル(D)100重量部に対し、0.1〜5重量部の下記一般式(7)で表される2官能性の連結剤(E)により連結されて、重量平均分子量が上記高分子量となるようにしたものである。
1−R7−X2 (7)
(式中、X1、X2は水酸基又はカルボキシル基と作用して共有結合を形成可能な反応基、R7は単結合、炭素数1〜20の脂肪族基又は芳香族基を表し、X1、X2は同一の化学構造であってもよいし、異なってもよい。)
本発明に係る低分子量脂肪族ポリエステル(D)は、一般式(1)で示される構造単位を与える脂肪族ジカルボン酸類(A)と、一般式(2)で示される構造単位を与える脂肪族ジオール(B)、及び、必要に応じて加えられる一般式(3)で示される構造単位を与えるモノマー成分(C)を実質的な原料とする重縮合反応によって得られる。
(A)成分
式(1)で示される構造単位のうち100〜75mol%がコハク酸残基であるために、原料(A)の100〜75mol%はコハク酸又は重合に関与し得るその誘導体(A’)でなければならない。コハク酸又は重合に関与し得るその誘導体(A’)としては、コハク酸、無水コハク酸、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチルなどが挙げられる。このうち工業的経済性の観点からコハク酸又は無水コハク酸を用いるのが好ましく、コハク酸を用いるのが特に好ましい。
式(1)のコハク酸残基以外の脂肪族ジカルボン酸残基を与える脂肪族ジカルボン酸類(A)としては、脂肪族ジカルボン酸、その無水物、又はそのモノ又はジエステル体が挙げられ、下記一般式(1’)で表される。
−OCO−R1−COO−R (1’)
(式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基、R4及びR5は水素原子、又は炭素数1〜6の脂肪族基もしくは芳香族基を表す。R4及びR5は同一でも異なっていてもよい。)
1で示される二価脂肪族基としては、好ましくは2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基であり、−(CH2)4−、−(CH2)6−等の炭素数2〜6の直鎖状低級アルキレン基が挙げられる。また、R1は反応に不活性な置換基、例えば、アルコキシ基やケト基等を有することができるし、R1は酸素やイオウ等のヘテロ原子を主鎖に含有することができ、例えばエーテル結合、チオエーテル結合等で隔てられた構造を含有することもできる。
4及びR5が水素原子であるときには脂肪族ジカルボン酸を表わす。脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、スベリン酸、デカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、セバシン酸、ジグリコール酸、ケトピメリン酸、マロン酸、メチルマロン酸などが挙げられる。
4及びR5で示される脂肪族基としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基の他、シクロヘキシル基等の炭素数5〜12のシクロアルキル基が挙げられる。
4及びR5で示される芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。中でも、R4及びR5は炭素数1〜6、好ましくは炭素数1〜3の低級アルキル基である。このようなジアルキルエステルとしては、例えば、グルタル酸ジメチル、グルタル酸ジエチル、アジピン酸ジメチル、アジピン酸ジエチル、ピメリン酸ジメチル、アゼライン酸ジメチル、スベリン酸ジメチル、スベリン酸ジエチル、セバシン酸ジメチル、セバシン酸ジエチル、デカンジカルボン酸ジメチル、ドデカンジカルボン酸ジメチル、ジグリコール酸ジメチル、ケトピメリン酸ジメチル、マロン酸ジメチル、メチルマロン酸ジメチル等が挙げられる。これらのものは単独で用いてもよいし2種以上組合わせて用いてもよい。
(B)成分
式(2)の脂肪族ジオール残基を与える(B)成分としては、脂肪族ジオールが挙げられる。脂肪族ジオールは下記一般式(2’)で表わされる。
HO−R2−OH (2’)
(式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)
二価の脂肪族基としては、炭素数2〜12、好ましくは2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。好ましいアルキレン基は、−(CH2)2−、−(CH2)3−、−(CH2)4−等の炭素数2〜6の直鎖状低級アルキレン基である。また、二価脂肪族基R2は反応に不活性な置換基、例えば、アルコキシ基やケト基等を有することができる。R2は酸素やイオウ等のヘテロ原子を主鎖に含有することができ、例えばエーテル結合、チオエーテル結合等で隔てられた構造を含有することもできる。
脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,3‐プロパンジオール、1,2‐プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2−メチル−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタメチレングリコール、へキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、分子量1000以下のポリエチレングリコール等を用いることができる。これらのものは単独でも、2種以上組合せて用いてもよい。
(C)成分
式(3)の脂肪族ヒドロキシカルボン酸残基を与える(C)成分としては、下記一般式(3’)で表されるヒドロキシカルボン酸もしくはヒドロキシカルボン酸エステル、又はその環状エステルであるラクトン類が挙げられる。
6OCO−R3−OH (3’)
(式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基、R6は水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族基又は芳香族基を表す。)
式(3’)で、二価脂肪族基R3としては、炭素数2〜10、好ましくは2〜8の鎖状又は環状のアルキレン基が挙げられる。また、R3は反応に不活性な置換基、例えば、アルコキシ基やケト基等を有することができる。R3は酸素やイオウ等のヘテロ原子を主鎖に含有することができ、例えばエーテル結合、チオエーテル結合等で隔てられた構造を含有することもできる。
式(3’)で、R6は水素、又は脂肪族基もしくは芳香族基である。脂肪族基としては、炭素数1〜6、好ましくは1〜4の直鎖状又は分岐鎖状の低級アルキル基や、シクロヘキシル基等の炭素数5〜12のシクロアルキル基、芳香族基としては、フェニル基、ベンジル基等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、L−乳酸、D−乳酸、D,L−乳酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸等を挙げることができる。
前記ヒドロキシカルボン酸はその2分子が脱水縮合した環状二量体エステルであることができる。その具体例としては、乳酸から得られるラクチドや、グリコール酸から得られるグリコリド等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸エステルとしては、例えば、上記ヒドロキシカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル等や、酢酸エステル等が挙げられる。
ラクトン類としては、二価脂肪族基として、炭素数4〜10、好ましくは4〜8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレン基のものが挙げられる。また、二価脂肪族基は反応に不活性な置換基、例えば、アルコキシ基やケト基等を有することができ、酸素やイオウ等のヘテロ原子を主鎖に含有することができ、例えばエーテル結合、チオエーテル結合等で隔てられた構造を含有することもできる。
ラクトン類の具体例としては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、β−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、δ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトンなどの各種メチル化カプロラクトン;β−メチル−δ−バレロラクトン、エナントラクトン、ラウロラクトン等のヒドロキシカルボン酸の環状1量体エステル;グリコリド、L−ラクチド、D−ラクチド等の上記ヒドロキシカルボン酸の環状2量体エステル;その他、1,3−ジオキソラン−4−オン、1,4−ジオキサン−3−オン、1,5−ジオキセパン−2−オン等の環状エステル−エーテル等を挙げることができる。これらは2種以上のモノマーを混合して使用してもよい。
(コハク酸類に含まれるリンゴ酸)
本発明の脂肪族ポリエステル(a)は、特定構造の分岐点濃度が特定の値以下に制御されている。係る特定の分岐構造は、下記一般式(4)
−O−C(=O)−CH(O−C(=O)−)CH2−C(=O)O− (4)
で表される、リンゴ酸に由来する三叉分岐構造である。式(1)〜(3)で示される構造単位で構成される直鎖状の高分子量脂肪族ポリエステルにおいて、式(4)で示される分岐構造が混入し、その混入比率が高くなると、延性という成形品の機械的特性上の特徴の低下を招き、直鎖状、すなわち低分岐度の脂肪族ポリエステルの特徴である耐衝撃性、引張破断点伸度のような重要な物性を低下させる。
係る分岐構造は、仕込み原料中にリンゴ酸が存在することにより生成するので、存在量を減らす又は無くすことによって低減させることが可能である。
しかし一方、無水マレイン酸を水和してマレイン酸にした後、マレイン酸を水素添加して工業的に製造されるコハク酸中には、無視できない量のリンゴ酸が不純物として含まれている。かかる製造方法によって得られるコハク酸は水などを主たる溶媒とする晶析法などによって通常精製されるが、不純物となるリンゴ酸が完全に除去されることはない。従って、従来、工業用原料として入手可能なコハク酸を主たる原料として使用して得られた脂肪族ポリエステルには、全てリンゴ酸に起因する分岐構造が含まれている。
なお、係る分岐構造は、仕込み原料中にリンゴ酸が存在することにより生成するが、生成ポリマー中に分岐点として取り込まれる量は、使用する原料種・触媒や反応条件・プロセスによって変化する。
また、特開平11−196888号公報、及び特開2005−27533号公報に開示されているような発酵法によってコハク酸を生化学的に効率良く製造する場合においてもリンゴ酸の副生は避けることが出来ない問題である。
すなわち、成形品の機械物性的に優れた低分岐度の高分子量脂肪族ポリエステルを工業的に供給するには、工業用原料として入手可能なコハク酸中のリンゴ酸濃度の低減が重要である。
本発明では、主な原料となるコハク酸又は重合に関与し得るその誘導体(A’)(例えば無水コハク酸)に対するリンゴ酸の混入比率を特定の値以下とすることにより、成形品の延性、耐衝撃性を改善すると共に、そのバラツキを飛躍的に改善することができる。
本発明では、原料(A)と原料(C)の合計100mol%中に、リンゴ酸の混入比率を、0.60mol%以下、好ましくは0.35mol%以下、さらに好ましくは0.21mol%以下にする。
これにより、採用する反応条件やプロセスを最適化することによって、得られる低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル(a)中の前記式(4)で示される分岐構造の含有率を前記数値範囲以下にすることができる。
特に、コハク酸又は重合に関与し得るその誘導体(A’)がコハク酸又は無水コハク酸である場合、通常リンゴ酸は0.005モル%以上混入している。工業的に安価に入手するために、リンゴ酸の混入比率は、上記範囲の中であれば0.05モル%以上であっても好ましく使用できる。
例えば、コハク酸を工業的に製造して使用する場合には、溶媒再結晶して精製して、リンゴ酸の混入比率を上記範囲内に低下させることが必要である。再結晶溶媒としては、コハク酸とリンゴ酸を溶解するものであれば、特に制限はなく、水、アルコール、エーテル、ケトン、エステル、エーテルエステルなどの有機溶媒、これらの混合物などが、使用できるが、水又は水と上記有機溶媒との混合物が好ましく使用できる。
本発明における上記(A)成分、(B)成分、及び必要に応じて加えられる(C)成分の重合反応によって得られる低分子量の脂肪族ポリエステル(a’)が共重合体である場合、その共重合様式は、ランダムであっても、ブロックであってもよいが、ランダム共重合体であるのが好ましい。上記モノマーの仕込は、一括仕込み(ランダム)、分割仕込み(ブロック)、あるいは、ジカルボン酸−ジオールのポリマーにラクトン類を重合させたり、あるいは、ポリラクトンにジカルボン酸とジオールを加えて重合させてもよい。
本発明における上記(A)、(B)及び(C)の3成分の重合反応によって低分子量脂肪族ポリエステル(D)を合成する場合には、合成工程は、使用する原料の種類によって、例えば、前半の脱水反応が主に進行するエステル化工程と、後半のエステル交換反応が主に進行する重縮合工程とに分けることができる。
エステル化工程は80℃〜250℃、好ましくは100℃〜240℃、さらに好ましくは145℃〜230℃の反応温度で、0.5〜5時間、好ましくは1〜4時間、760〜100Torrの条件下で行うことが望ましい。触媒は、必ずしも必要としないが、原料として用いられる脂肪族ジカルボン酸又はジエステル1モルに対して、10−7〜10−3モル、好ましくは10−6〜5×10−4モルの量で用いてもよい。
後半の重縮合工程は、反応系を減圧しながら反応温度を高めて2〜10時間、好ましくは3〜6時間で終了することが望ましく、最終的には180℃〜270℃、好ましくは190℃〜240℃の反応温度で減圧度3Torr以下、好ましくは1Torr以下とすることが望ましい。この工程では、一般的なエステル交換反応触媒を用いる方が好ましく、原料として用いられる脂肪族ジカルボン酸又はジエステル1モルに対して、10−7〜10−3モル、好ましくは10−6〜5×10−4モルの量で用いる。この範囲より触媒量が少なくなると反応がうまく進行せず、反応に長時間を要するようになる。一方、この範囲より多くなると重合時のポリマーの熱分解、架橋、着色等の原因となり、また、ポリマーの成形加工において熱分解等の原因となり好ましくない。
重縮合工程の温度が240℃を超えると、反応は速く進むが、副反応が激しくなり、得られるポリマーの酸価が増大したり分子量の低下が生じるだけでなく、異種結合の生成が無視できなくなり品質が悪化する。反応温度が190℃よりも低い場合、脱グリコール反応の進行が遅く分子量が所定の数値まで増大しない。また、反応系の粘度が高くなり、撹拌が困難となるので好ましくない。かつ、反応時間が長くなることにより異種結合が増大するため好ましくない。
合成工程において、脱水反応が主に進行するエステル化工程と、後半のエステル交換反応が主に進行する重縮合工程との両者において用いることのできる触媒としては、以下のような具体例を挙げることができるが、これらの触媒は単独で用いても、2種以上組合せて用いてもよい。触媒としては、WO 02-44249号公報に記載のものが使用可能である。中でも、触媒としてチタン化合物とリン化合物及び/又はマグネシウム化合物とからなる混合触媒を使用することにより、重合速度が速くなるため、副反応により形成される異種結合の少ないものが得られるので、特に好ましい。
この場合、好ましくはMg/Ti原子比が0.05〜2.0モル倍の範囲であり、好ましくは0.1〜1.2モル倍、より好ましくは0.2〜0.8モル倍の範囲である。Mg/Ti原子比が0.05モル倍未満では、得られる樹脂が着色することがあり、逆に2.0モル倍を超えると反応速度が遅くなる。
低分子量脂肪族ポリエステルを合成する工程において、原料(A)成分及び(B)成分の仕込み比は、以下の条件式(i)に合致するように選択することが望ましい。
1.0≦[B]/[A]≦2.0 (i)
(式中、[A]は(A)成分のモル数、[B]は(B)成分のモル数を表す。)
[B]/[A]の値が1より小さいと、両末端がカルボン酸末端の低分子量オリゴマーが多く生成し、それ以上のエステル化反応又は重縮合反応が進行せず、所望の分子量の脂肪族ポリエステル(a)又は(D)を得ることが難しく、また[B]/[A]の値が2より大きい場合は前半のエステル化工程終了時点でのグリコール末端濃度が過度に大きく、後半の重縮合工程に長時間の反応時間が必要となる。
本発明では、最終的に実用的な強度を有する脂肪族ポリエステル(a)を得るために、溶融状態の低分子量脂肪族ポリエステル(D)に前記式(7)で表される2官能性の連結剤(E)を加えて重量平均分子量を前記高分子量に高める。
重合工程で得られる低分子量脂肪族ポリエステル(D)は、重量平均分子量が5,000以上、好ましくは10,000以上である。
前記分子量が5,000より小さい場合、低分子量脂肪族ポリエステル(D)の末端基濃度が高く、多量の連結剤が必要となる。連結剤の使用量が多い場合には、ゲル化などの問題が生じやすい。
本発明に用いる連結剤(E)は前記式(7)によって表される。但し、3官能以上の働きをするものは除く。連結剤(E)の反応基X1、及びX2としては、水酸基と反応して共有結合を形成可能な式(9)〜(11):
Figure 2006274255
で表される反応基群及び/又は、カルボキシル基と反応して共有結合を形成可能な一般式(12)〜(15)
Figure 2006274255
(R8〜R10は2価の脂肪族基又は芳香族基を表し、環に直接結合している水素は脂肪族及び/又は芳香族基で置換されてもよい。)で表される3〜8員環の環状反応基群から選ぶことができる。X1とX2は同一の化学構造であってもよいし、異なってもよい。
連結剤(E)としては、一連のジイソシアネート化合物のような、WO 02-44249号公報に記載の各種の連結剤が使用可能である。
上記ジイソシアネート化合物としては、好ましくは脂肪族ジイソシアネート化合物であり、具体的にはヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル{OCN-(CH24-CH(-NCO)(-COOCH3)}、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等が例示されるが、中でもヘキサメチレンジイソシアネートが好ましい。
連結剤(E)と低分子量脂肪族ポリエステル(D)の反応は、低分子量脂肪族ポリエステル(D)が均一な溶融状態又は少量の溶剤を含有した状態で、容易に攪拌可能な条件下で行われることが望ましい。用いる連結剤(E)の量は、低分子量脂肪族ポリエステル(D)100重量部に対し、0.1〜5重量部であることが望ましい。これより連結剤(E)の量が少ないと、所望の分子量の最終生成物を得ることが困難であり、多いと、ゲル化などの問題が生じやすい。
連結剤(E)を用いて高分子量化する反応は、低分子量脂肪族ポリエステル(D)の融点以上で行い、270℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは、230℃以下で行うことができる。この反応は、低分子量脂肪族ポリエステルを製造した反応器に連結剤(E)を添加することにより、重縮合反応と同じ反応器内で実施することができる。また、低分子量脂肪族ポリエステルと連結剤を、通常の押出機あるいはスタティックミキサー等を用いて混合することにより実施することもできる。
本発明の低分子量脂肪族ポリエステル(D)の重縮合工程及び/又は(D)と連結剤(E)と反応させる連結反応工程においては、反応液の粘度が10Pa・sec以上の高粘度領域において、反応を二軸連続重合反応装置を使用することもできる。
また、二軸連続反応装置を使用する工程の減圧度は5mmHg(665Pa)であるが、好ましくは3mmHg以下、さらに好ましくは1.5mmHg以下である。減圧度が高いほど、異種結合の生成を抑制することができるので、好ましい。
使用することができる二軸連続重合反応装置としては、例えば、撹拌翼が偏芯ディスク状のセルフクリーニング式リアクター(三菱重工業株式会社製「SCR」)、撹拌翼が中空円板翼又は三枚羽翼(三菱重工業株式会社製「HVR」)、横型二軸式リアクター(三菱重工業株式会社製)、KRCニーダー(株式会社栗本鐵工所製)、TEX-K(株式会社日本製鋼所製)、ハイブリッド型反応機(株式会社日立製作所製)、日立メガネ翼重合機(株式会社日立製作所製)、日立格子翼重合機(株式会社日立製作所製)等が挙げられる。これらの装置は、内部において重合物の表面の更新が効率よく行なわれるため、脱グリコール反応がスムーズに進行し、所望の分子量まで増大させるのに好都合である。
本発明において、成分(C)が用いられる場合は、分子鎖が、原料(A)成分及び(C)成分の仕込み比は以下の条件式(ii)に合致するように選択することが好ましい。
0≦[C]/([A]+[C])≦0.25 (ii)
(式中、[A]は(A)成分の使用モル数、[C]は(C)成分の使用モル数を示す。)
上記式中の[C]/([A]+[C])は、脂肪族ポリエステル(a)又は(a’)が前記繰り返し単位(P)及び繰り返し単位(Q)から構成される場合には、繰り返し単位Qのモル分率を表している。
特に繰り返し単位(Q)(すなわち、(3)で示される構造単位)を含む場合は、好ましくは0.04〜0.25、さらに好ましくは0.06〜0.23、特に好ましくは0.08〜0.20である。
この値が0.25より大きい場合は、得られるポリマーの融点が低く、さらに結晶性が極端に低下するために耐熱性が無く実用に不向きである。また、この値が0.04より大きい場合は、適度な柔軟性と生分解性を兼ね備えたより実用性の高いポリマーが得られる。
本発明に係る脂肪族ポリエステル(a)は、特に好ましくは重量平均分子量が200,000以上である。また、融点は、通常80℃以上であり、熱成形も容易である。
前記本発明に使用される脂肪族ポリエステルにおいて、特に、前記一般式(1)〜(3)におけるR1及びR2が(CH22又は(CH24で、R3が(CH25であるものは、融点が高くかつ結晶性の高いものである。
具体的には、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−ε−カプロラクトン)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート−乳酸)共重合体、及び/又はポリエチレンサクシネート等が挙げられる。脂肪族ポリエステル(a)は耐熱性・柔軟性・生分解性などの用途条件によっては、ポリブチレンサクシネートが好ましい。
本発明では、必要に応じて、脂肪族ポリエステル(a)に対して下記の各種添加剤を配合した低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル組成物にすることができる。
添加剤としては可塑剤、熱安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、核剤、光分解剤、生分解促進剤、酸化防止剤、紫外線安定剤、帯電防止剤、難燃剤、流滴剤、抗菌剤、防臭剤、充填材、着色剤、又はこれらの混合物が挙げられる。
可塑剤としては、脂肪族二塩基酸エステル、フタル酸エステル、ヒドロキシ多価カルボン酸エステル、ポリエステル系可塑剤、脂肪酸エステル、エポキシ系可塑剤、又はこれらの混合物が例示される。具体的には、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DOP)、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジイソデシル(DIDP)等のフタル酸エステル、アジピン酸−ジ−2−エチルヘキシル(DOA)、アジピン酸ジイソデシル(DIDA)等のアジピン酸エステル、アゼライン酸−ジ−2−エチルヘキシル(DOZ)等のアゼライン酸エステル、アセチルクエン酸トリ−2−エチルヘキシル、アセチルクエン酸トリブチル等のヒドロキシ多価カルボン酸エステル、ポリプロピレングリコールアジピン酸エステル等のポリエステル系可塑剤であり、これらは一種又は二種以上の混合物で用いられる。
これら可塑剤の添加量としては、フィルムであると、5〜15重量部の範囲が好ましい。3重量部未満であると、破断伸びや衝撃強度が低くなり、また30重量部を超えると、破断強度や衝撃強度の低下を招く場合がある。
熱安定剤としては、脂肪族カルボン酸塩がある。脂肪族カルボン酸としては、特に脂肪族ヒドロキシカルボン酸が好ましい。脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、乳酸、ヒドロキシ酪酸等の天然に存在するものが好ましい。
塩としては、ナトリウム、カルシウム、アルミニウム、バリウム、マグネシウム、マンガン、鉄、亜鉛、鉛、銀、銅等の塩が挙げられる。これらは、一種又は二種以上の混合物として用いることができる。
添加量としては、脂肪族ポリエステル(a)100重量部に対して、0.5〜10重量部の範囲である。上記範囲で熱安定剤を用いると、衝撃強度(アイゾット衝撃値)が向上し、破断伸び、破断強度、衝撃強度のばらつきが小さくなる効果がある。
滑剤としては、内部滑剤、外部滑剤として一般に用いられるものが使用可能である。例えば、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂、パラフィン、高級脂肪酸、オキシ脂肪酸、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、脂肪酸低級アルコールエステル、脂肪酸多価アルコールエステル、脂肪酸ポリグリコールエステル、脂肪族アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、ポリクリセロール、金属石鹸、変性シリコーン又はこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、脂肪酸エステル、炭化水素樹脂等が挙げられる。
配合量は、フィルムとして、樹脂100重量部に対し、滑剤を0.05〜5重量部を添加する。0.05重量部未満であると効果が充分でなく、5重量部を超えるとロールに巻きつかなくなり、物性も低下する。
フィルム用として、環境汚染を防止する観点から、安全性が高く、且つFDA(米国食品医薬品局)に登録されているエチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドが好ましい。
上記光分解促進剤としては、例えば、ベンゾイン類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノンなどのベンゾフェノンとその誘導体;アセトフェノン、α,α−ジエトキシアセトフェノンなどのアセトフェノンとその誘導体;キノン類;チオキサントン類;フタロシアニンなどの光励起材、アナターゼ型酸化チタン、エチレン−ー酸化炭素共重合体、芳香族ケトンと金属塩との増感剤などが例示される。これらの光分解促進剤は、1種又は2種以上併用できる。
上記生分解促進剤には、例えば、オキソ酸(例えば、グリコール酸、乳酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの炭素数2〜6程度のオキソ酸)、飽和ジカルボン酸(例えば、修酸、マロン酸、コハク酸、無水コハク酸、グルタル酸などの炭素数2〜6程度の低級飽和ジカルボン酸など)などの有機酸;これらの有機酸と炭素数1〜4程度のアルコールとの低級アルキルエステルが含まれる。好ましい生分解促進剤には、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸などの炭素数2〜6程度の有機酸、及び椰子殻活性炭等が含まれる。これらの生分解促進剤は1種又は2種以上併用できる。
上記充填剤(増量剤、ブロッキング防止剤を含む)としては、種々の充填剤、例えば炭酸カルシウムやタルクの他に、マイカ、珪酸カルシウム、微粉末シリカ(無水物)、ホワイトカーボン(含水物)、石綿、陶土(焼成)、麦飯石、各種の酸化チタン、ガラス繊維等の無機充填剤や、天然素材の粒子等の有機充填剤を挙げることができる。
ブロッキングを防止する場合には、粒子径は0.1〜7μmのものが好ましい。
無機充填剤としての微粉末シリカは、湿式法でつくられたシリカや、四塩化ケイ素の酸水素焔中での高温加水分解により製造されたシリカでもよい。
無機充填材を添加することにより生分解性が更に向上すると共に溶融強度(粘度)が大きくなるので、溶融成形時のドローダウンが防がれ、真空成形、ブロー成形、インフレーション成形等の成形性が向上する。
また、無機充填剤、例えばタルクを添加することにより、耐衝撃性を大きく損なうことなく、すべり性に優れたフィルムを得ることができる。具体的には、フィルムの表面・裏面とも、JIS K7125に準拠する摩擦係数が、動摩擦係数・静摩擦係数共に好ましくは0.1〜0.5、さらに好ましくは0.15〜0.4、最も好ましくは0.2〜0.3であるフィルムを得ることができる。
摩擦係数が大きすぎる場合は、フィルムをロール状から巻き解く際に、巻き解きがスムーズに行えず、使用性の悪化を招き、フィルムの破断を引き起こす場合もある。摩擦係数が小さすぎる場合には、フィルムの製造時などにロール状に巻き取る際にロールがずれるなどの取り扱い上の問題が起こる。
充填剤の添加量は特に限定するものではないが、脂肪族ポリエステル(a)に対して、充填剤/脂肪族ポリエステル(a)の重量比が0.01〜60/99.99〜40、例えば、0.1〜60/99.9〜40、1〜60/99〜40、好ましくは3〜50/97〜50、さらに好ましくは5〜45/95〜55である。
有機充填剤としては、直径が50ミクロン以下の、紙より製造した微粉末粒子が挙げられる。有機充填剤の添加量や粒径は上記無機充填剤の場合と同じである。
増量剤としては、木粉、ガラスバルーン等が挙げられる。増量剤の添加量は無機充填剤の場合と同じである。
脂肪族ポリエステル(a)と充填剤は、混練しても混練せずに成形してもよい。混練方法は、一般的な方法が好ましく使用でき、具体的には原料樹脂ペレットや粉体、固体の細片等をヘンシェルミキサーやリボンミキサーで乾式混合し、単軸や2軸の押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミキシングロールなどの公知の溶融混合機に供給して溶融混練することができる。
<低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品>
本発明の成形品は、上記脂肪族ポリエステル(a)又はそれを含む組成物を、押出成形、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、トランスファ成形、注型成形、スタンパブル成形、ブロー成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、積層成形、カレンダー成形、発泡成形、RIM成形、FRP成形、粉末成形又はペースト成形して得られる。
本発明のフィルムは、上記組成物をT−ダイ成形、インフレーション成形、カレンダー成形、押出ラミネート成形等によりフィルム成形して得られる。本発明のフィルムは、厚みが5μm〜1mm、好ましくは5μm〜0.5mm、さらに好ましくは10〜100μmである。
本発明のフィルムとしては、シート、フィルム、テープを含む。またフィルムは単層でも用いられるが、他の基材との積層体であってもよい。積層フィルムを得る場合には、本発明に係る樹脂組成物から得られる熱融着性を有するフィルムと他の基材とを多層ダイを用いて共押出フィルムとしてよい。また予め得られた基材に該樹脂組成物を押出しラミネートして積層フィルムとしてもよいし、あるいは夫々別個に得たフィルム等を貼り合わせて積層フィルムとしてもよい。尚、基材としてはポリ乳酸などの脂肪族ポリエステル、又はポリエチレンテレフタレートなどの芳香族ポリエステルから得られるフィルム、シート、カップ、トレー状物、あるいはその発泡体、ガラス、金属、アルミニウム箔、紙等が挙げられる。基材が熱可塑性樹脂からなるフィルムの場合は、無延伸であっても一軸あるいは二軸延伸フィルムであってもよい。勿論、基材は1層でも2層以上としてもよい。
本発明のフィルムは透明性に優れており、買い物袋製袋用原反フィルム、包装袋製袋用原反フィルム、又はごみ袋製袋用原反フィルムや、2次成形して農業用ハウスフィルム、農業用マルチフィルム、ラベル用フィルム等に加工することができる。
本発明の成形品は次のような特徴を有する。厚み1.5mmのプレス成形板をASTM D3763に基づく落錐衝撃試験により、弾性変形エネルギーEp(単位:J)と弾性変形後の伝播エネルギーEg(単位:J)を測定した場合に、Ep+Egが10J以上、好ましくは11J以上、さらに好ましくは12J以上である。また、伝播エネルギーEgが5.5J以上、好ましくは6.0J以上、更に好ましくは7.0J以上である。
アニール処理
上記で得られたフィルムは、アニール処理を行ってもよい。アニール処理温度としては、組成比にもよるが、通常、30〜60℃、好ましくは35〜50℃、さらに好ましくは35〜45℃の範囲にある。60℃より高すぎるとフィルムが軟かくなりすぎてブロッキングするおそれがある。
アニール処理時間としては、温度にもよるが、通常、10時間以上、好ましくは24〜480時間、さらに好ましくは72〜360時間である。上限は特には限定されないが、480時間を超えると効果の発現が飽和する。
成形品の物性
本発明の成形品は、次のような特徴を有する。
(1)フィルムのTD方向の高速引張試験(ダイセル法)による、破断点伸度の平均値が750%以上好ましくは770%以上、さらに好ましくは800%以上である。また、バラツキが変動率で、15%以下、好ましくは13%以下、さらに好ましくは10%以下である。
(2)フィルムのTD方向のシャルピー衝撃試験(ダイセル法)による、吸収エネルギーの平均値が150MPa(1530kg/cm2)以上、好ましくは170MPa(1734kg/cm2)以上、さらに好ましくは200MPa(2040kg/cm2)以上である。また、バラツキが変動率で50%以下、好ましくは45%以下、さらに好ましくは40%以下である。
フィルムの物性
本発明のフィルムは、機械物性が次のようである。
(i)厚さ20μmのフィルムにおいて、後述の引張試験(JIS K6781に基づく)で得られる各物性値が下記のとおり;
引張弾性率:50〜500MPa、好ましくは100〜400MPa
破断点応力:10〜40MPa、好ましくは15〜30MPa
破断点伸び:100〜2000%、好ましくは300〜1500%
引裂強度:0.2〜5N、好ましくは0.5〜3N
(ii)厚さ40μmのフィルムで、後述の引張試験(JIS K6781に基づく)で得られる各物性値が下記のとおり;
引張弾性率:50〜500MPa、好ましくは100〜400MPa
破断点応力:10〜40MPa、好ましくは15〜30MPa
破断点伸び:100〜3000%、好ましくは500〜2000%
引裂強度:0.2〜5N、好ましくは0.5〜3N。
本発明のインフレーションフィルムは、下記の特徴を有する。
(落球衝撃試験)
(i')厚さ20μmのフィルムにおいて、落球衝撃試験(試験方法は後述する)による数値は以下のとおり;
Φ41mm、286gの落球を用いた場合におけるH(d=厚み)が5cm以上、好ましくは10〜50cm
Φ19mm、28gの落球を用いた場合におけるH(d=厚み)が20cm以上、好ましくは30〜500cm
(ii')厚さ40μmのフィルムで、落球衝撃試験(試験方法は後述する)による数値は以下のとおり;
Φ41mm、286gの落球を用いた場合におけるH(d=厚み)が8cm以上、好ましくは10〜1000cm
Φ19mm、28gの落球を用いた場合におけるH(d=厚み)が30cm以上、好ましくは50〜2000cm。
(熱収縮試験)
(iii’)厚さ20μmのフィルムにおいて、MD方向の熱収縮応力(SMD)が0.35MPa以下、好ましくは0.3MPa以下、さらに好ましくは0.25MPa以下であり、TD方向の熱収縮応力(STD)との比SMD/STDが10以下、好ましくは7.5以下、さらに好ましくは5以下である。
任意の厚さのフィルムの上記各物性値を、厚さ20μm又は40μmのフィルムの物性値から正確に推算する式は無いので、或る任意の脂肪族ポリエステル樹脂のフィルムが本発明に係る脂肪族ポリエステルのフィルムの範囲内に入るか否かを判断する基準として、厚さ20μmのフィルムを成形した場合の物性値を判断基準とする。本発明では、「厚さ20μmに換算した場合に」とは、この意味のことである。
(実施例)
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本発明の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル組成物を製造実施例により具体的に説明するが、本発明の組成物はこれらに限定されるものではない。製造実施例又は製造比較例における各特性値は以下の方法により測定したものである。
(1)コハク酸中のリンゴ酸
検出器として電気伝導度検出器を備えたイオンクロマトグラフィー装置により、コハク酸中のリンゴ酸を定量した。溶離液には1mM/Lオクタンスルホン酸を用い、カラムは日本ダイオネクス(株)製IonPac ICE-AS1を用いた。
(2)分子量及び分子量分布
検出器として示差屈折率系と差圧粘度計を備えたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置により、標準ポリスチレンから作成した較正曲線を用いて、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。溶離液にはクロロホルムを用い、カラムは昭和電工(株)製Shodex 806Lを3本連結して用いた。
分子量(Mn、Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を溶出曲線から算出する際には、差圧粘度計による溶出曲線からピークの開始点と終点を決定し、開始点から終点までの各溶出時間における示差屈折計の応答強度から、分子量(Mn、Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を算出した。図5で、上段は示差屈折率計で得られた溶出曲線、下段は差圧粘度計で得られた溶出曲線である。
(3)酸価
JIS K0070に基づいて測定した。
(4)ポリマー組成、水酸基末端濃度、分岐点濃度
1H−NMRにより、使用した各モノマーに由来するピークの面積から、ポリマー中に含まれる各モノマー単位のモル分率を算出し、それらからポリマー組成を決定した。また、水酸基末端及び分岐構造に由来するピークから、水酸基末端濃度及び分岐点濃度を算出した。
図4は、1,4−ブタンジオール、コハク酸、ε−カプロラクトンを主原料とした本発明の脂肪族ポリエステル(a)の1H−NMRスペクトルの一例である。図4において、水酸基末端に由来するピークcは垂直方向100倍、水平方向2倍の倍率で拡大して示した。同様にコハク酸中に不純物として混入していたリンゴ酸由来の下記式(4)で示される分岐構造:
−O−C(=O)−CH(O−C(=O)−)CH2−C(=O)O− (4)
に基づくピークeは垂直方向500倍、水平方向2倍の倍率で拡大して示した。
同図から読取れるように、1,4−ブタンジオール残基の酸素原子に隣接するメチレン基2つ分のピークとε−カプロラクトン残基の酸素原子に隣接するε−メチレン基のピークは、重なって4.07ppmにピークd(triplet)として観測される。一方、ε−カプロラクトン残基のカルボニル基に隣接するα−メチレン基のピークは2.28ppmにピークa(triplet)として観測される。また、コハク酸残基の2つの等価なメチレン基のピークは2.57ppmにピークb(triplet)として観測される。
水酸基に隣接するα−メチレン基のピークは3.61ppmにピークc(triplet)として観測される。式(4)の分岐構造については、メチン基のピークが5.43ppmにピークe(triplet)として観測される。
(5)融点
示差走査熱量分析装置(DSC)により融点を求めた。具体的には、本発明の高分子量脂肪族ポリエステルペレットから3〜6mgを採取し、測定に供した。係るペレットをまず、室温から−120℃に20℃/分の速度で冷却し(冷却過程1)、次に3分間−120℃で保持し、その後20℃/分の速度で−120℃から220℃まで昇温した(昇温過程1)。引続き試料を220℃で3分間保持した後、再度20℃/分の速度で−120℃まで冷却し(冷却過程2)、−120℃で3分間保持した後、再び20℃/分の速度で−120℃から220℃まで昇温し(昇温過程2)、測定を終了した。融点は昇温過程2で現れる吸熱ピークのピークトップとして求めた。
低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルの製造
なお、原料の仕込み時におけるモル比は、下記式(i)及び、下記式(ii)で定義される。
1.0≦[B]/[A]≦2.0 (i)
(式中、[A]は脂肪族ジカルボン酸、その無水物、又はそのエステル体のモル数、[B]は脂肪族ジオールのモル数を表す)
0.02≦[C]/([A]+[C])≦0.40 (ii)
(式中、[A]は脂肪族ジカルボン酸、その無水物、又はそのエステル体の使用モル数、[C]はヒドロキシカルボン酸もしくはそのエステル体又はラクトン類の使用モル数を表す)
[製造実施例1]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸3.63kg、1,4−ブタンジオール2.91kg、ε−カプロラクトン0.62kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.05であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.15、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.21mol%であった。
ここに、チタン酸テトライソプロピルエステル4.37g、及び第二リン酸マグネシウム三水和物0.89gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が0.8kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液を220〜240℃の温度に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、3時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステル(D)の重量平均分子量は56,000、酸価は1.6mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステル(D)の190℃における溶融状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート60gを加え、攪拌すると、粘度は急速に増大したがゲル化はしなかった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルは、Mw15.9万、Mw/Mnは2.21、酸価は1.6mgKOH/gであり、フィルム成形可能であった。ポリマーの組成は、原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基45.9mol%、1,4−ブタンジオール残基46.0mol%、ε−カプロラクトン残基8.1mol%であり、水酸基末端濃度は18.7×10−6mol/g、分岐点濃度は2.9×10−6mol/gであった。
下記の条件にて成形して得たフィルムの機械的強度は、引張破断強度(MD)が31MPa、引張伸度が600%であった。この共重合体のDSC測定の結果、融点は98℃に単一のピークとして観測され、共重合体であることが確認できた。
[製造実施例2]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸43.18kg、1,4−ブタンジオール36.25kg、ε−カプロラクトン10.32kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.09であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.20、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.19mol%であった。
さらにチタン酸テトライソプロピルエステル52.01g、及び第二リン酸マグネシウム三水和物10.46gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液をほぼ230℃に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、4時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステル(D)の重量平均分子量は56,000、酸価は1.6mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステル(D)の190℃における溶融状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート600gを加え、攪拌すると、粘度は急速に増大したがゲル化はしなかった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルは、Mw18.2万、Mw/Mnは2.27、酸価は1.6mgKOH/gであった。DSCでは実施例1と同様に単一の融解ピークが現れ、融点は96℃であり、フィルム成形可能であった。ポリマーの組成は、原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基44.5mol%、1,4−ブタンジオール残基44.5mol%、ε−カプロラクトン残基11.0mol%であり、水酸基末端濃度は13.9×10−6mol/g、分岐点濃度は3.2×10−6mol/gであった。
下記の条件にて成形して得たフィルムの機械的強度は、引張破断強度(MD)が30MPa、引張伸度が660%であった。
[製造比較例1]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸43.18kg、1,4−ブタンジオール36.25kg、ε−カプロラクトン10.32kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.09であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.20、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.19mol%であった。
さらにチタン酸テトライソプロピルエステル52.01g、及び第二リン酸マグネシウム三水和物10.46gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液をほぼ230℃に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、4時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステル(D)の重量平均分子量は56,000、酸価は1.6mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステル(D)の190℃における溶融状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート30gを加えたが、系の粘度上昇は見られず、分子量も増大しなかった。
[製造比較例2]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸43.18kg、1,4−ブタンジオール36.25kg、ε−カプロラクトン10.32kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.09であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.20、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.19mol%であった。
さらにチタン酸テトライソプロピルエステル52.01g、及び第二リン酸マグネシウム三水和物10.46gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液をほぼ230℃に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、4時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステル(D)の重量平均分子量は56,000、酸価は1.6mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステル(D)の190℃における溶融状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート5,400gを加え攪拌すると、粘度の急速な増大とともにゲル化が進行し、得られたポリマーによるフィルム化が困難であった。
[製造比較例3]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸43.18kg、1,4−ブタンジオール36.25kg、ε−カプロラクトン10.32kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.09であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.20、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.19mol%であった。
さらにチタン酸テトライソプロピルエステル72.70g、及びリン酸5.02gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液をほぼ230℃に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、9時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は170,000、Mw/Mnは2.23、酸価は7.9mgKOH/g、融点は98℃であった。この鎖延長反応を行わない重合体でもフィルム成形は可能であったが、成形時に分子量の低下がみられた。
[製造実施例3]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸43.18kg、1,4−ブタンジオール36.25kg、ε−カプロラクトン7.37kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.09であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.15、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.21mol%であった。
さらにチタン酸テトライソプロピルエステル52.01g、及び第二リン酸マグネシウム三水和物10.46gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液をほぼ230℃に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、4時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステル(D)の重量平均分子量は63,000、酸価は1.8mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステル(D)の190℃における溶融状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート600gを加え、攪拌すると、粘度は急速に増大したがゲル化はしなかった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルは、Mw20.2万、Mw/Mnは2.31、酸価は1.8mgKOH/gであった。DSCでは実施例1と同様に単一の融解ピークが現れ、融点は101℃であり、フィルム成形可能であった。ポリマーの組成は、原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基45.9mol%、1,4−ブタンジオール残基46.0mol%、ε−カプロラクトン残基8.1mol%であり、水酸基末端濃度は6.8×10−6mol/g、分岐点濃度は3.4×10−6mol/gであった。
下記の条件にて成形して得たフィルムの機械的強度は、引張破断強度(MD)が36MPa、引張伸度が580%であった。
[製造実施例4]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸38.00kg、1,4−ブタンジオール30.44kg、ε−カプロラクトン12.24kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.05であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.25、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.18mol%であった。
さらにチタン酸テトライソプロピルエステル46.04g、及び第二リン酸マグネシウム三水和物9.41gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液をほぼ245℃に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、2.5時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステル(D)の重量平均分子量は64,000、酸価は1.7mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステル(D)の190℃における溶融状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート600gを加え、攪拌すると、粘度は急速に増大したがゲル化はしなかった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルは、Mw21.2万、Mw/Mnは2.35、酸価は1.7mgKOH/gであった。DSCでは実施例1と同様に単一の融解ピークが現れ、融点は85℃であり、フィルム成形可能であった。ポリマーの組成は、原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基42.8mol%、1,4−ブタンジオール残基42.9mol%、ε−カプロラクトン残基14.3mol%であり、水酸基末端濃度は7.4×10−6mol/g、分岐点濃度は3.1×10−6mol/gであった。
下記の条件にて成形して得たフィルムの機械的強度は、引張破断強度(MD)が28MPa、引張伸度が880%であった。
[製造実施例5]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸36.27kg、アジピン酸5.60kg、1,4−ブタンジオール32.70kg、ε−カプロラクトン4.37kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.05であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.10、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.19mol%であった。
さらにチタン酸テトライソプロピルエステル49.17g、及び第二リン酸マグネシウム三水和物10.11gを加え、常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。反応液をほぼ245℃に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、2.5時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステル(D)の重量平均分子量は64,000、酸価は1.3mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステル(D)の190℃における溶融状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート600gを加え、攪拌すると、粘度は急速に増大したがゲル化はしなかった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルは、Mw21.1万、Mw/Mnは2.34、酸価は1.3mgKOH/gであった。DSCでは実施例1と同様に単一の融解ピークが現れ、融点は92℃であり、フィルム成形可能であった。ポリマーの組成は、原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基42.1mol%、アジピン酸残基5.3mol%、1,4−ブタンジオール残基47.4mol%、ε−カプロラクトン残基5.2mol%であり、水酸基末端濃度は14.5×10−6mol/g、分岐点濃度は2.4×10−6mol/gであった。
下記の条件にて成形して得たフィルムの機械的強度は、引張破断強度(MD)が31MPa、引張伸度が800%であった。
[製造実施例6]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸34.54kg、1,4−ブタンジオール31.63kg、ε−カプロラクトン8.35kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.20であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.20、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.19mol%であった。
常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。さらに本重合槽にチタン酸テトライソプロピルエステル12.00gを加え、反応液を210〜220℃の温度に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、6時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステルDの重量平均分子量は30,000、酸価は1.3mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステルDの190℃における溶融状態で、イソホロンジイソシアネート600gを加え、攪拌すると、粘度は急速に増大したがゲル化はしなかった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルは、Mw21.6万、Mw/Mnは2.36、酸価は1.1mgKOH/g、融点は93℃であり、フィルム成形可能であった。ポリマーの組成は、原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基44.4mol%、1,4−ブタンジオール残基44.5mol%、ε−カプロラクトン残基11.1mol%であり、水酸基末端濃度は17.5×10−6mol/g、分岐点濃度は2.3×10−6mol/gであった。
下記の条件にて成形して得たフィルムの機械的強度は、引張破断強度(MD)が29MPa、引張伸度が800%であった。
[製造実施例7]
攪拌機、分留コンデンサー、温度調節装置を備えた予備重合槽に、リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸40.62kg、1,4−ブタンジオール31.63kg、ε−カプロラクトン8.35kgを一括仕込みした。ここで前記式(i)における[B]/[A]=1.02であり、前記式(ii)における[C]/([A]+[C])=0.18、仕込みの酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.20mol%であった。
常圧下、145〜225℃の温度にて攪拌し、エステル化反応を行った。留出液の量が10.0kgを超えたところで予備重合工程を終了し、反応液を本重合槽に移した。さらに本重合槽にチタン酸テトライソプロピルエステル12.00gを加え、反応液を210〜220℃の温度に保ち攪拌し、最終的に1.0mmHg(133Pa)にまで減圧し、6時間攪拌して脱グリコール反応(エステル交換反応)を行った。得られた低分子量ポリエステルDの重量平均分子量は30,000、酸価は6.0mgKOH/gであった。
脱グリコール反応終了後、ポリエステルDの190℃における溶融状態で、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)600gを加え、5時間攪拌すると粘度が増大した。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルは、Mw20.2万、Mw/Mnは2.31、酸価は2.1mgKOH/g、融点は94℃であり、フィルム成形可能であった。ポリマーの組成は、原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基45.3mol%、1,4−ブタンジオール残基45.1mol%、ε−カプロラクトン残基9.6mol%であり、水酸基末端濃度は1.5×10−6mol/g、分岐点濃度は2.8×10−6mol/gであった。
下記の条件にて成形して得たフィルムの機械的強度は、引張破断強度(MD)が32MPa、引張伸度が740%であった。
[製造実施例8](樹脂αの製造)
リンゴ酸を0.28重量%含むコハク酸40.00Kg、1,4−ブタンジオール32.05Kg、ε−カプロラクトン8.70Kg、チタンテトライソプロポキシド24.07g、リン酸水素マグネシウム三水和物4.92gを仕込み、窒素雰囲気下で、室温から徐々に240℃まで昇温した。仕込み時点における酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.20mol%であった。
昇温開始後、1.5時間で反応液温度が141℃になり、水の留出が開始した。昇温開始後、5.5時間で留出水の量が13.0Kgになった時点でエステル化反応を終了した。得られた脂肪族ポリエステル低分子量体を高粘度バッチ式重合機に移し、反応液の温度を245℃に保ち、常圧から徐々に減圧にして最終的に1.0mmHg(133Pa)で2.5時間撹拌して重縮合反応を行った。
重縮合反応終了後、処理液を190℃に温調した状態で、ヘキサメチレンジイソシアネート600gを加え、攪拌すると、粘度は急速に増大したがゲル化はしなかった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は228,000、分子量分布は2.24、酸価は1.0mgKOH/gであった。ポリマー共重合組成はブチレンサクシネート単位82.8mol%、ε−カプロラクトン単位17.2mol%(原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基45.0mol%、1,4−ブタンジオール残基45.6mol%、ε−カプロラクトン残基9.4mol%)であり、水酸基末端濃度は13.2×10−6mol/g、分岐点濃度は4.6×10−6mol/gであった。
[製造比較例4](樹脂βの製造)
リンゴ酸を0.75重量%含むコハク酸40.00Kg、1,4−ブタンジオール32.05Kg、ε−カプロラクトン8.26Kg、チタンテトライソプロポキシド24.07g、リン酸水素マグネシウム三水和物4.92gを仕込み、実施例8と同様にエステル化反応、高粘度バッチ式重合機での重縮合反応、連結剤投入による連結反応を順に行い、ペレット状の高分子量脂肪族ポリエステルを得た。仕込み時点における酸成分全体に対するリンゴ酸濃度は0.54mol%であった。
得られた高分子量脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は266,000であったが、分子量分布は2.93と広がった。ポリマー共重合組成はブチレンサクシネート単位83.5mol%、ε−カプロラクトン単位16.5mol%(原料モノマー由来の構造単位を100mol%として表すと、コハク酸残基45.1mol%、1,4−ブタンジオール残基46.0mol%、ε−カプロラクトン残基8.9mol%)であり、酸価は1.0mgKOH/g、水酸基末端濃度は21.5×10−6mol/g、分岐点濃度は11.5×10−6mol/gであった。
上記で得られた樹脂αと樹脂βの分析値及び物性値を表1に示す。
Figure 2006274255
次に、本発明の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル組成物の成形品について実施例により具体的に説明するが、本発明の成形品はこれらに限定されるものではない。
前記樹脂α及びβは下記の条件にて各種成形、及び、各種測定に供した。
フィルム成形:下記の押出機とインフレーションフィルム成形機を用い、下記条件でフィルムを得た。
(i)押出機仕様
スクリュー径:40mm、一軸
シリンダーL/D:28
ダイ径:50mmφ
ダイリップ開度:2.5mm
(ii)押出条件
スクリュー回転数:50rpm
押出機シリンダー設定温度:170℃
ブロー比(TD延伸倍率):4.0倍
MD延伸倍率:31倍(フィルム厚み20μm)及び15.5倍(フィルム厚み40μm)
引き取り速度:17.0(フィルム厚み20μm)及び8.5m/分(フィルム厚み40μm)
本発明における以下で使用する各種測定方法は以下の通りである。
(6)引張試験
JIS K6781に基づき、試験片の引張弾性率(MPa)、伸度(%(GL基準))を求めた。試験片は同規格の引張試験片を使用し、引張試験はクロスヘッドスピード500mm/分で行った。使用機器:オリエンテック社製テンシロン万能試験機UCT−5。測定値は20回の平均値である。
(7)高速引張試験(ダイセル法)
高速引張試験は、下記のフィルム試験片、及び、図6に例示されるような高速引張試験装置を用いて行い、フィルム試験片破断時の引張伸度を測定した。
フィルム試験片:試験片は、JIS K6781に定められた引張試験片を使用した。この試験片の標線間距離は40mmである。
試験装置:本高速引張試験に使用する試験装置は、前記フィルム試験片を一方向に一定速度で伸長可能な高速引張試験装置である。前記高速引張試験装置は、フィルム試験片を固定可能な2つのチャックを有し、片方のチャックは固定されており、他方のチャックを50mm/秒〜1000mm/秒の一定速度で移動させてフィルムを伸長することができる。
図6に例示されるような高速引張試験装置では、平らな試験台(5)上にフィルム試験片固定用のチャック(21、41)を備えた固定端(2)と非伸長性連結片(4)が一直線上に配置されている。非伸長性連結片(4)に備えられた移動端チャック(41)は、巻取り装置(3)がフィルム状の非伸長性連結帯(42)を巻き取ることによって、前記範囲の一定速度で巻取り装置の方向に移動する。固定端チャック(21)と移動端チャック(41)の間の最大距離は600mmである。
試験を開始するにあたっては、フィルム試験片は片端を固定端(2)のチャック(21)に、他端を移動端チャック(41)に、巻取り方向に対してゆがみがないように固定した。その後、巻取り装置(3)を作動させ、移動端チャック(41)を一定速度で移動し、フィルム試験片の伸長(高速引張試験)を行った。試験は、フィルム試験片が破断するか、チャック間距離が前記最大距離に達したところで終了とした。
試験の開始から終了までの様子は、画像撮影装置(6)にて経時的に撮影し、得られた動画から、試験の開始から終了までの時間を測定し、所要時間と移動端チャック(41)の移動速度から、フィルム試験片の破断時における移動端チャック(41)の移動距離を算出し、前記移動距離をフィルム試験片の標線間距離で除した数値を本試験における引張破断伸度(%)とした。
その他の試験条件は下記のとおり;
試験雰囲気:室温23℃、湿度50%RH
チャック間距離:8cm
試験スピード:100mm/秒
引張条件:等速引張
試験回数:繰り返し回数20回の測定で得られた破断点伸度の平均値及び標準偏差を算出し、さらに変動率〔(標準偏差/平均値)×100(%)〕を求めた。
(8)落球衝撃試験
フィルムを直径12cmの円形の枠に固定し、23℃、50%RH雰囲気下で、下記球を電磁石方式の重錘離脱装置を用いて落下させた時の試験片の数の50%が破れる時の球の落下高さH(d)(ここで、dはフィルム厚さ(μm)を示す。)を測定する。繰り返し試験回数n=20である。
落球(イ)Φ41mm、質量286g
落球(ロ)Φ19mm、質量28g
以下の実施例では、「落球高さ(cm)」として表示してある。
(9)熱収縮応力
所定厚みのフィルム状試験片を幅1cm、長さ10cmの短冊状に切り出し、合計厚みが100〜200μmの範囲になるよう複数枚重ねたものを測定サンプルとして使用する。東洋精機(株)製伸張粘度計を用いて、チャック間距離を10cmとして、125℃のオイルバス中に浸漬した際にチャック間に発生する応力を測定し、応力が最大になった点を以って熱収縮応力とする。
(10)落錘衝撃試験
ASTM D3763よる。厚み1.5mmのプレス成形板を用いて、面衝撃落錘衝撃試験により荷重−歪み曲線を測定し、降伏点までの領域を弾性変形領域とし、降伏点以降破断点までの領域を伝播領域として、弾性変形エネルギーEp(単位:J)と伝播エネルギーEg(単位:J)を求めた。
プレス成形板成形条件:樹脂を190℃、5分予熱した後、同温度で、10MPa加圧下に5分プレスした後、20℃で10MPa加圧下に3分冷却した。
サンプル形状:100mm×100mm×1.5mm
計装式落錘衝撃試験機(図1):東洋精機(株)社製グラフィックインパクトテスタ(ロードセル付きストライカーの衝撃端部径12.7mm、サンプルホルダー径76mm、落錘重量6.5kgf、落錘高さ80cm)
図2は、落錘衝撃試験により得られたプレス成形板の荷重−歪み曲線の一例である。図2において、開始点(荷重0)から降伏点(荷重最大値)までの領域が弾性変形領域であり、降伏点から破壊点(荷重0)までの領域が伝搬領域である。
延性比は、弾性変形領域のエネルギーEp(単位:J)と、伝播領域のエネルギーEg(単位:J)の比Eg/(Eg+Ep)である。
(11)シャルピー衝撃試験(ダイセル法)
サンプル、及びその固定方法以外は、JIS K7111のシャルピー衝撃試験方法に準拠した。
フィルム試験片:JIS K6781準拠のダンベル形引張試験片。このときダンベル平行部の長尺方向をフィルムのTD方向に合わせた
使用機器:安田精機製作所(株)製インパクトテスター
フィルム状サンプルの固定器具を図3に示す。図3において、フィルム状サンプルは、一対の固定用治具1によって固定される。固定用治具1はボルト部2をレンチなどを用いて回転させることによりフィルム状サンプルを挟み込み固定する。締め付け強さは、試験実施時にフィルム状サンプルと固定用治具1の間に滑りが発生しない程度とする。
フィルム状サンプルを、つかみ治具間の間隔を40mmとして、インパクトテスターに取り付けられた衝撃刃の中央部に、衝撃刃に対して垂直にサンプルのダンベル平行部分の中央部が当るように、つかみ治具の高さ、位置を調整した。
ハンマー質量90kgf、衝撃速度2.9m/秒の条件で、サンプルの破壊によるハンマーのエネルギー損失を測定した。繰り返し回数20回。測定値の平均値及び標準偏差を算出し、さらに変動率=(標準偏差/平均値)×100を求めた。
〔実施例1、比較例1〕
樹脂α及びβを用いて、厚み1.5mmの圧縮成形品をASTM D3763に基づく落錐衝撃試験により、降伏点までの弾性変形エネルギーEp(単位:J)と、降伏点以降破壊点までの伝播エネルギーEg(単位:J)を測定し、延性比Eg/(Eg+Ep)を求めた。結果をまとめて表2に示す。
Figure 2006274255
以下、本発明の高分子量脂肪族ポリエステル組成物を使用した高耐衝撃フィルムについて説明する。
[実施例2、比較例2]
前記で得られた表2に示す樹脂を用い、インフレーション成形機を使用してフィルム引き取り速度17.0m/分で厚さ約20μmのフィルムを得た。上記のフィルムの組成及び物性を纏めて表3に示す。
Figure 2006274255
プレス成形品の落錘衝撃試験の概要を示す図である。 落錘衝撃試験により得られた荷重−歪み曲線の一例である。 シャルピー衝撃試験におけるフィルム状サンプル固定器具の一例を示す図である。 本発明の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルの1H−NMRスペクトルの一例である。 本発明の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルのGPC溶出曲線の一例である。 図6は、高速引張試験に使用する、試験装置の概念図の一例である。
符号の説明
1 試験片
2 固定端
21 固定端チャック
3 巻取り装置
31 回転ロール
32 モータ
33 巻取り紐
4 非伸長性連結片
41 移動端チャック
42 非伸長性連結帯
5 試験台
6 画像撮影装置

Claims (18)

  1. 分子鎖が、下記一般式(1)及び(2)で示される構造単位((1)及び(2)で示される構造単位の量は実質的に等モルである)、
    −CO−R1−CO− (1)
    (式中、R1は炭素数1〜12の二価脂肪族基を表す。)
    −O−R2−O− (2)
    (式中、R2は炭素数2〜12の二価脂肪族基を表す。)、並びに
    下記一般式(3)で示される構造単位
    −CO−R3−O− (3)
    (式中、R3は炭素数1〜10の二価脂肪族基を表す。)
    からなる低分子量脂肪族ポリエステルであって、
    上記一般式(1)で示される構造単位100mol%のうち100〜75mol%がコハク酸残基であり、
    上記一般式(3)で示される構造単位量の上記一般式(1)及び(3)で示される構造単位量の和に対するモル分率が0〜0.25である重量平均分子量(Mw)5,000以上の低分子量脂肪族ポリエステル(D)が、
    該低分子量体(D)100重量部に対し、0.1〜5重量部の一般式(7):
    1−R7−X2 (7)
    (式中、X1、X2は水酸基又はカルボキシル基と作用して共有結合を形成可能な反応基、R7は単結合、炭素数1〜20の脂肪族基又は芳香族基を表し、X1、X2は同一の化学構造であってもよいし、異なってもよい。)
    で表される2官能性の連結剤(E)により連結されてなる、
    重量平均分子量が40,000以上であり、かつ、下記式(4)で示される分岐構造の1H−NMR測定によるCH基:
    −O−C(=O)−CH(O−C(=O)−)CH2−C(=O)O− (4)
    の含有率が10×10−6mol/g以下である低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  2. 酸価が2.0mgKOH/g以下である請求項1に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  3. 1H−NMR測定による水酸基末端濃度が40×10−6mol/g以下である請求項1又は2に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  4. 一般式(1)で示される構造単位100mol%のうち、0〜25mol%がアジピン酸残基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  5. 一般式(2)で示される構造単位が、エチレングリコール残基及び/又は1,4−ブタンジオール残基である請求項1〜4のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  6. 一般式(3)で示される構造単位が、ε−カプロラクトン、4−メチル−ε−カプロラクトン、3,3,5−トリメチル−ε−カプロラクトン、3,5,5−トリメチル−ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトン、グリコール酸、乳酸、及び3−ヒドロキシ酪酸からなる群から選ばれた少なくとも1種に基づく残基である請求項1〜5のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  7. 一般式(3)で示される構造単位量の、一般式(1)及び(3)で示される構造単位の合計量に対するモル分率が0.04〜0.25である請求項1〜6のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  8. 一般式(7)で示される2官能性の連結剤(E)の反応基がイソシアネート基;イソチオシアネート基;エポキシ基;オキサゾリン基;オキサゾロン基もしくはオキサジノン基;アジリジン基;又はこれらの混基であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  9. 低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルが、ポリブチレンサクシネート、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−ε−カプロラクトン)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−乳酸)共重合体、ポリ(ブチレンサクシネート−ブチレンアジペート−乳酸)共重合体、及び/又はポリエチレンサクシネートである請求項1〜8のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルを成形してなる低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品。
  11. 成形が、押出成形、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、トランスファ成形、注型成形、スタンパブル成形、ブロー成形、延伸フィルム成形、インフレーションフィルム成形、積層成形、カレンダー成形、発泡成形、RIM成形、FRP成形、粉末成形又はペースト成形である請求項10に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品。
  12. 厚み1.5mmの圧縮成形品にした場合に、ASTM D3763に基づく落錐衝撃試験(但し、落錐高さ80cm)により、歪み−応力曲線における降伏点までの弾性変形エネルギーEp(単位:J)と、降伏点以降破壊点までの伝播エネルギーEg(単位:J)を測定した場合に、EpとEgの和(全吸収エネルギーEtot)が10J以上である請求項10又は11に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品。
  13. 伝播エネルギーEg(単位:J)が5.5J以上である請求項12に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品。
  14. 請求項10〜13のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステル成形品が、厚みが5μm〜0.5mmのフィルムであって、無延伸又は一軸もしくは二軸延伸されてなる低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルム。
  15. 直径19mm、重さ28gの球を用いた落球衝撃試験高さH(d=厚み)が、フィルム厚み20μmに換算した場合に20cm以上である請求項14に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルム。
  16. MD方向の熱収縮応力(SMD)が0.4MPa以下であり、TD方向の熱収縮応力(STD)との比SMD/STDが10以下である請求項14又は15に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルム。
  17. フィルムのTD方向の高速引張試験(ダイセル法)による、破断点伸度の平均値が750%以上で、その変動率が15%以下である請求項14〜16のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルム。
  18. フィルムのTD方向のシャルピー衝撃試験(ダイセル法)による、吸収エネルギーの平均値が150MPa以上で、その変動率が50%以下である請求項14〜17のいずれか1項に記載の低分岐度高分子量脂肪族ポリエステルフィルム。
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