JP2006266435A - ウオームギヤ減速機 - Google Patents

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Abstract

【課題】 合成樹脂製の歯車にも適用可能で、かつ、歯の強度が維持でき、潤滑性が向上できること。
【解決手段】 ウオームホイール2の回転に伴って歯面へ移動した潤滑油は、鼓形ウオーム1の回転によってウオームホイール2の歯面と鼓形ウオーム1の歯面との間で挟まれて移動を繰り返し、かつ、ウオームホイール2と鼓形ウオーム1との噛み合いによって、歯末面及び歯先面に潤滑油を運ぶことができる。特に、鼓形ウオーム1とウオームホイール2との歯面に潤滑油が付着すると、鼓形ウオーム1がウオームホイール2の歯面をベクトル的に歯幅方向の成分により、両者間で潤滑油を挟み込むから、スクイズ効果が高まり、鼓形ウオーム1とウオームホイール2との噛み合い部分の潤滑性能が向上する。
【選択図】 図4

Description

本発明は、潤滑油を保持させるウオームと噛み合うウオームホイールとからなる潤滑油を保持させるウオームギヤ減速機に関するものである。
この種のウオームギヤ減速機の従来例として特許文献1に掲載の技術がある。
即ち、特許文献1に掲載の技術は、鼓形ウオームの歯面とウオームホイールの歯面を数種の曲面で構成し、前記両歯面間に同時に表れる接触線ループ状となって閉鎖された空間を形成し、該空間が噛み合い進行によって移動し、かつ、噛み合いの進行と共に容積が減少し、ポンプ効果を生じるようにしたものである。
したがって、歯面の間に潤滑油を保持させ、かつ、スクイズ効果が高まるので、歯車の噛み合い部分の潤滑性能が向上する。
また、特許文献2に掲載の技術は、歯面に潤滑油を溜める溝が設けられた歯車において、溝は歯面の噛み合い有効面の歯末側の端部付近に位置され、かつ、歯幅の全幅に配設されていることを特徴とするものである。したがって、歯面のピッチ円から離れて歯末側に位置された溝の潤滑油歯、連続した噛み合いで押出され、歯面の相対滑り接触面圧力とで互いの歯面の歯幅の全幅に塗布するように供給される。
そして、特許文献3には、歯面の歯幅方向端部を部分的に切り欠いて潤滑油を貯留するポケット部を構成したギアが開示されている。
特開平5−196115 特開2004−92697 実開平4−58654号公報
ところが、特許文献1は、歯面を数種の曲面で構成し、両歯面間に同時に表れる接触線ループ状となって閉鎖された空間を形成するという精度の高いものを要求するものであるから、ウオームホイールを樹脂成形する場合には、その成形精度及び樹脂の剛性が金属に比較して低くなり、その撓み等により、その実用化が困難であった。
また、特許文献2の技術においては、ウオームとウオームホイールとが噛み合うものであるから、平歯車の噛み合いと異なり、ウオームホイールの歯幅方向とウオームの摺動方向とのなす角が小さく接触面積が小さいことから、論理的に、潤滑油の供給性能が上がらない可能性がある。
そして、特許文献3の技術においては、歯面の歯幅方向端部を部分的に切り欠いて潤滑油を貯留するポケット部を構成することから、歯の強度の低下、潤滑油の供給むらが発生する可能性がある。
そこで、本発明はこれらの問題点を解消すべく、合成樹脂製の歯車にも適用可能で、かつ、歯の強度が維持でき、潤滑性が向上できるウオームギヤ減速機の提供を課題とするものである。
請求項1にかかるウオームギヤ減速機において、本来のウオームとウオームホイールとの噛み合いで決定される前記ウオームの歯たけが入り込む前記ウオームホイールの歯底部に、前記ウオームホイールの径方向の内側に窪ませてなる潤滑油収容部を具備するものである。ここで、潤滑油収容部は、ウオームホイールの歯底部に潤滑油の入る空間を形成したものであり、ウオームホイールの歯溝毎に形成してもよいし、2以上のピッチに1個とすることもできる。また、潤滑油収容部の深さは、任意の深さとすることができ、潤滑油収容部の幅も歯幅の長さまたは歯幅よりも短く形成することもできる。この潤滑油収容部は、潤滑油の粘度と潤滑油の供給能力、潤滑油の供給量、歯面間での保持量、使用時間等に応じて大きさ及び形状を設定することができる。
請求項2にかかるウオームギヤ減速機において、潤滑油収容部はウオームホイールの歯溝方向に対して平行する窪みとしたものである。ここで、ウオームホイールの歯溝方向に対して平行する窪みとした潤滑油収容部は、歯溝の長さとすることも、また、歯溝よりも短い窪みとすることもできる。
請求項3にかかるウオームギヤ減速機において、潤滑油収容部はウオームホイールの歯溝方向に対して平行する歯溝の歯幅よりも短い窪みとしたものである。ここで、前記ウオームホイールの歯幅の両側または片側を歯底に形成することができる。
請求項4にかかるウオームギヤ減速機において、潤滑油収容部はウオームホイールのピッチ円上で交じり合う半径線と歯面の接線との角度である噛み合い圧力角よりも、前記ウオームホイールの半径線と前記潤滑油収容部の歯面の接線との角度が小さい角度で形成されている。ここで潤滑油収容部は、歯元面から更に、当該ウオームホイールの半径線の角度に近くなるような歯面側の壁面を形成するものであればよい。
請求項5にかかるウオームギヤ減速機において、潤滑油収容部はウオームホイールの歯底面よりもその深さ方向に穿設した収容穴としたものである。即ち、前記潤滑油収容部は、歯底面に所定の径の穴を1以上穿設して構成することができる。
請求項1にかかるウオームギヤ減速機は、本来のウオームとウオームホイールとの噛み合いで決定されるウオームの歯たけが入り込む前記ウオームホイールの歯底部に、前記ウオームホイールの径方向の内側に窪ませてなる潤滑油収容部を設けたものである。
したがって、潤滑油収容部に供給した潤滑油は、ウオームホイールの回転によって歯底面から歯面へと繰り返し移動し、かつ、ウオームとの噛み合いによって、歯末面及び歯先面に潤滑油を運ぶことができる。特に、ウオームとウオームホイールとの歯面の間に潤滑油が入り、スクイズ効果が高まり、歯車の噛み合い部分の潤滑性能が向上し、しかも、潤滑性能の選定が自由となる。また、潤滑油収容部は、力を伝達する歯幅のピッチ円よりも離れた歯元面よりも更に下部に位置するものであるから、機械的強度を低下させることがない。そして、ウオームホイールを合成樹脂で形成しても、格別、機械的強度を上げることなく使用でき、また、潤滑性が向上できる。また、成型金型の製作が容易であり、かつ、成形も容易である。
請求項2にかかるウオームギヤ減速機の前記潤滑油収容部は、ウオームホイールの歯溝方向に対して平行する窪みとしたものであるから、請求項1に記載の効果に加えて、潤滑油収容部に供給した潤滑油は、回転によって歯底面から歯元面へと移動を繰り返すから、相手のウオームとの噛み合いによって、連続して歯末面、歯先面へと潤滑油を効率よく運ぶことができる。
請求項3にかかるウオームギヤ減速機の前記潤滑油収容部は、ウオームホイールの歯溝方向に対して平行する歯溝よりも短い窪みとしたものであるから、請求項1または請求項2に記載の効果に加えて、前記潤滑油収容部を前記ウオームホイールの歯溝の長さよりも短くでき、歯幅の一方または両側に本来の歯底面からなる堤を形成でき、潤滑油の収容容積を大きくすることができ、かつ、潤滑油が容易に流れ出ない構造とすることができる。
請求項4にかかるウオームギヤ減速機の前記潤滑油収容部は、ウオームホイールのピッチ円上で交じり合う半径線と歯面の接線との角度である噛み合い圧力角よりも、ウオームホイールの半径線と前記潤滑油収容部の歯面の接線との角度が小さい角度で形成されているから、請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載の効果に加えて、見かけ上、高歯となるような形状に構成すれば、前記潤滑油収容部を形成でき、機械的強度の低下もない。
請求項5にかかるウオームギヤ減速機の前記潤滑油収容部は、ウオームホイールの歯元面よりもその深さ方向に穿設した1以上の収容穴としたものであるから、請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載の効果に加えて、収容穴の径、数、深さによって、潤滑油の粘度、潤滑油の供給能力、潤滑油の供給量、歯面間での保持量、使用時間等に応じた条件設定が容易となる。
次に、本発明の実施の形態のウオームギヤ減速機について、図を用いて説明する。
なお、本実施の形態2以降において、実施の形態1と同一記号または同一符号は、上記実施の形態1と同一または相当する構成部分を示すものであるから、その重複する説明を省略し、主に相違点のみ説明する。
[実施の形態1]
図1は本発明の実施の形態のウオームギヤ減速機を備えたシートスライド装置の駆動装置の構成を示す説明図であり、図2は本発明の実施の形態のウオームギヤ減速機の全体構成図である。
図1及び図2は、本実施の形態のウオームギヤ減速機100をシートスライド装置に組み付けたもので、車両用シートを特定のスライド位置に定めるシートスライド装置の前後位置を調整可能にするための駆動を行なうものである。
シートスライド装置の駆動装置は、駆動源となるモータ110及びウオームギヤ減速機100を有して構成されている。モータ110は出力軸120を備えている。ウオームギヤ減速機100はハウジング180に取り付けられている。ハウジング180内には鼓形ウオーム1及び鼓形ウオーム1と噛み合うウオームホイール2が配設されている。このウオームギヤ減速機100の鼓形ウオーム1は、ハウジング180に回転自在に支持される入力軸150を有している。ウオームホイール2は、ハウジング180に軸支されており、回転軸170と一体となって回転自在に支持されるように結合されている。
モータ110の出力軸120は、ウオームギヤ減速機100の入力軸150にケーブル130を介して連結されている。このケーブル130は、鋼線を縒って製造された弾性と可撓性を備えるものであって、その両端の連結部はプレス成形されている。また、ウオームギヤ減速機100の入力軸150は、その両端部が軸受140及び軸受160で支承されている。そして、モータ110の出力軸120からウオームギヤ減速機100の入力軸150に回転トルクが伝達されるように連結された構成となっている。更に、ケーブル130の撓みにより出力軸120と入力軸150との軸心ずれが吸収されて、良好な回転トルクの伝達が確保されている。
図3は本発明の実施の形態1のウオームギヤ減速機を示す正面からみた要部説明図、図4は本発明の実施の形態1のウオームギヤ減速機の構成を示す図2の垂直要部断面の説明図である。
図3において、鼓形ウオーム1は、中間部分の直径よりも両端部分の直径の方が大きく形成されたウオームである。ウオームホイール2は、鼓形ウオーム1と噛み合い、鼓形ウオーム1からの回転を伝えるものであり、構造上、鼓形ウオーム1の回転を減速することになる。本実施の形態のウオームギヤ減速機は、この鼓形ウオーム1からウオームホイール2に回転を減速して伝える機構を意味する。
これらの鼓形ウオーム1とウオームホイール2からなるウオームギヤ減速機100は、公知であるので、その機能的説明は省略する。
図4において、ウオームホイール2Aは鼓形ウオーム1と噛み合う破線で示した通常の設計で得られる歯の形状を示すものである。また、2点鎖線で示したウオームホイール2Bは、公知の高歯として設計した場合の歯の形状を示すものである。そして、実線で示したウオームホイール2は、本発明の実施の形態1で使用するウオームホイールとして設計した歯の形状を示すものである。
本実施の形態1で使用するウオームホイール2は、破線で示した通常の設計で得られるウオームホイール2Aの歯先から歯底面11Aまでの間で形成される歯溝Nを、ウオームホイール2Aの歯底面11Aに形成した潤滑油収容部10によって深くしている。
殊に、本発明の実施の形態1で使用する実線で示したウオームホイール2は、歯底面11からウオームホイール2の歯面は、立ち上がり面11Bを介して連続的に形成し、立ち上がり面11Bを不連続にならないように形成することによって歯元強度の低下が発生しないようにしている。この立ち上がり面11Bを不連続にならないように形成することとは、歯面に加えられた力が、特定の部位に集中しないようにして歯車の破損を防止するものであり、ウオームホイール2の歯底面11から急激な立ち上がり面11Bを経て歯面を形成するものではなく、ウオームホイール2の歯底面11から滑らかな立ち上がり面11Bを経て歯面を形成するものであればよい。また、ウオームホイール2の立ち上がり面11Bから歯面に至る面が滑らかに形成するものであればよい。
即ち、本実施の形態1で使用するウオームホイール2の歯車の歯形は、歯相互間の歯溝Nの最下部の歯底面11までを、次のように形成している。
本実施の形態1の歯先から潤滑油収容部10を形成する歯底面11までの距離は、普通の歯溝Nの歯底面11Aよりも深くするために、ウオームホイール2のピッチ円β上で交じり合う半径線(ウオームホイール2の中心を通過する直線)と歯面の接線との角度である噛み合い圧力角δより、ウオームホイール2の半径線と潤滑油収容部10の壁面である歯面側の接線との角度θが小さく形成されている。
このように、潤滑油収容部10の壁面がピッチ円β上で交じり合う噛み合い圧力角δよりも小さい角度θで形成されているから、破線で示す通常の対向する歯面の歯先から歯底面11Aまでの深さを深くすることができる。この本来の破線で示す歯底面11Aから本実施の形態1の歯底面11までの深さを、本実施の形態1の潤滑油収容部10とすることができる。
潤滑油収容部10に供給した潤滑油は、ウオームホイール2の回転に伴って、潤滑油収容部10から歯面の歯元の面へ、歯先へと繰り返し移動する。その移動距離は、潤滑油の粘度及びウオームホイール2の回転条件等によって決定される。ウオームホイール2の回転に伴って歯面へ移動した潤滑油は、鼓形ウオーム1の回転によってウオームホイール2の歯面と鼓形ウオーム1の歯面との間で挟まれて移動を繰り返し、かつ、ウオームホイール2と鼓形ウオーム1との噛み合いによって、歯末面及び歯先面に潤滑油を運ぶことができる。
特に、鼓形ウオーム1とウオームホイール2との歯面に潤滑油が付着すると、鼓形ウオーム1がウオームホイール2の歯面をベクトル的に歯幅W(図6参照)方向の成分を有し、両者間で潤滑油を挟み込むから、スクイズ効果が高まり、鼓形ウオーム1とウオームホイール2との噛み合い部分の潤滑性能が向上する。しかも、潤滑性能の選定が自由となる。また、潤滑油収容部10は、力を伝達する歯幅Wのピッチ円βよりも離れた歯元面よりも更に下部で、しかも、本来の歯底面11A以下に狭くなって形成するものであるから、各歯の機械的強度を低下させることがない。そして、ウオームホイール2を合成樹脂で形成しても、格別、機械的強度を低下することなく成形でき、また、潤滑性が向上できる。
本実施の形態1において、ウオームホイール2の半径線と潤滑油収容部10の壁面である歯面側の接線との角度θが、ウオームホイール2のピッチ円β上で交じり合う半径線と歯面の接線との角度である噛み合い圧力角δより小さく形成されているのは、その歯先から歯底面11までの距離を普通の歯車の歯底面11Aよりも深くし、かつ、潤滑油収容部10の容積を大きくするためである。この容積を大きくすることにより、潤滑油収容部10に潤滑油を多く収容することができることとなる。
特に、ウオームホイール2の半径線と潤滑油収容部10の壁面である歯面側の接線との角度θが、ウオームホイール2のピッチ円β上で交じり合う半径線と歯面の接線との角度である噛み合い圧力角δより小さく形成されている。したがって、図4の従来の高歯(図4の2点差線)のようにウオームホイール2Bを形成した場合には、歯の厚みが薄くなってしまうが、逆に、本実施の形態では実線で示したウオームホイール2のように、歯の厚みを低歯のように厚くできるから、歯車の機械的強度を強くすることができる。
[実施の形態2]
図5は本発明の実施の形態2のウオームギヤ減速機に使用するウオームホイールの要部斜視図、図6は本発明の実施の形態2のウオームギヤ減速機の構成を示す図3の切断線I
−I、切断線II−IIによる断面の説明図である。
ここで、鼓形ウオーム1におけるAは歯先円、Bはピッチ円、Cは歯底円であり、切断線I−Iの断面における軌跡位置を示し、aは歯先円、bはピッチ円、cは歯底円であり、切断線II−IIの断面における軌跡位置を示すものである。また、ウオームホイール2におけるαは歯先円、βはピッチ円、γは歯底円である。
具体的には、切断線I−Iの断面における歯先円Aは、ウオームホイール2の歯底円γに対向する鼓形ウオーム1側の最大径の軌跡位置にある歯先の軌跡であり、鼓形ウオーム1の両端部分の直径が大きい歯先の軌跡円である。ピッチ円Bは噛み合うウオームホイール2の歯の基準ピッチを整数倍した長さのピッチ円βに対抗する鼓形ウオーム1側の最大径側の軌跡からなり、歯車の具体的設計上のモジュール、歯数と共に歯車の基準となる重要な要件である。歯底円Cはウオームホイール2の歯先円αに対向する鼓形ウオーム1側の直径が大きく形成された両端部分の歯底の軌跡からなる円である。また、切断線II−IIの断面における歯先円aは、鼓形ウオーム1の中央部分の最小径位置の歯先の軌跡からなる円、ピッチ円bはピッチ円Bと同様、ウオームホイール2の歯の基準ピッチを整数倍した長さの円周を持つ円からなるピッチ円βに対抗する鼓形ウオーム1側の最小径位置にある軌跡の円、歯底円cはウオームホイール2の歯底に対向する鼓形ウオーム1側の中央部分の最小径位置の歯底の軌跡からなる円である。なお、これらは、鼓形ウオーム1についてもウオームホイール2と同様、歯車の一般化された用語の趣旨で表現するものである。
上記実施の形態1では、ウオームホイール2のピッチ円β上での噛み合い圧力角δよりも小さい角度θで潤滑油収容部10を形成し、その歯元の面から歯底面11までの距離を普通の歯底面(歯底円γ)11Aよりも深くするものである。しかし、本発明を実施する場合には、ウオームホイール2の歯幅Wの全体を潤滑油収容部10とすることもできる。即ち、図5及び図6に示すように、歯幅Wの両側を従来の歯底面(歯底円γ)11Aとし、その中央部のみを潤滑油収容部10の歯底面11として形成することもできる。
このとき、潤滑油収容部10について、ウオームホイール2のピッチ円β上での噛み合い圧力角δよりも小さい角度θで形成しなければないという限定は、必ずしも存在するものではない。歯底面(歯底円γ)11までの距離を普通の歯底面11Aよりも深くするものであればよい。
勿論、上記実施の形態1は、ウオームホイール2の歯をピッチ円β上での噛み合い圧力角δよりも小さい角度θで両歯面側を形成し、潤滑油収容部10を構成している。しかし、上記実施の形態1についても、ウオームホイール2の歯幅Wの歯底面11全体の面積を潤滑油収容部10とすることもできるし、歯幅Wの両側または片側を従来の歯底面11Aとし、その中央部のみまたは複数箇所を歯底面11を有する窪みとすることもできる。このとき、潤滑油収容部10の幅は、歯幅Wに対するものだけではなく、歯と歯の間の歯底面11Aの幅よりも狭くすることができる。何れにせよ、機械的強度が低下し難いから歯溝Nに平行な溝とするのが望ましい。
なお、潤滑油収容部10の幅を歯溝Nの長さとしたものにおいては、両側が開放されているから、潤滑油の粘度が比較的高いものを使用することになる。
このように、潤滑油収容部10は、ウオームホイール2の歯幅W方向に対して平行する窪みとすることができる。このとき、潤滑油収容部10に供給した潤滑油は、回転によって歯元の面から歯先への間で移動を繰り返し、かつ、相手の鼓形ウオーム1との噛み合いによって、連続して歯元面から歯先へと潤滑油を運ぶことができる。
特に、図6に示すように、鼓形ウオーム1のウオームホイール2からなるウオームギヤ減速機においては、鼓形ウオーム1のウオームホイール2側と接する側の歯先円α、ピッチ円β、歯底円γは同じ位置となり、潤滑油収容部10に供給した潤滑油を同一条件で繰り返し、鼓形ウオーム1とウオームホイール2とで挟み、歯元面から歯先との間で、特に、鼓形ウオーム1の両端の範囲では、広く潤滑油を移動させ、潤滑油を満遍なく歯面に供給することができる。
なお、本実施の形態1のウオームギヤ減速機は、中間部分の直径よりも両端部分の直径の方が大きい鼓形ウオーム1と、鼓形ウオーム1と噛み合って回転力の伝達を受けるウオームホイール2からなるウオームギヤ減速機100において、本来の鼓形ウオーム1とウオームホイール2との噛み合いで決定されるウオームホイール2の歯たけHに対して、その歯底面11をウオームホイール2の中心軸方向の内側に窪ませてなる潤滑油収容部10を設けたものである。
したがって、潤滑油収容部10に供給した潤滑油は、ウオームホイール2の回転によって歯底面11から歯先へと繰り返し移動し、かつ、鼓形ウオーム1との噛み合いによって、歯元の面から歯先の面に潤滑油を運ぶことができる。特に、鼓形ウオーム1とウオームホイール2との歯面の間に潤滑油が入り、スクイズ効果が高まり、鼓形ウオーム1とウオームホイール2との噛み合い部分の潤滑性能が向上する。しかも、潤滑性能の選定が潤滑油収容部10の形状及び容積等によって自由となる。また、潤滑油収容部10は、力を伝達する歯幅Wのピッチ円βよりも離れた歯元の面よりも更に下部に位置するものであるから、機械的強度を低下させることがない。そして、ウオームホイールを合成樹脂で形成しても、格別、機械的強度を上げる必要性はなく潤滑性が向上できる。
ここでは、鼓形ウオーム1のウオームホイール2からなるウオームギヤ減速機について説明したが、特に、鼓形ウオーム1の両端によって、ウオームホイール2の歯面が広い範囲で潤滑油が供給される点を除けば、同一径からなるウオームにも適用できる。
[実施の形態3]
図7は本発明の実施の形態3のウオームギヤ減速機の構成を示す図3の切断線I−I、切断線II−IIによる断面に相当する説明図である。
上記実施の形態2では、歯溝Nに平行な溝とすればよいことを説明した。しかし、潤滑油の収容は、必ずしも、歯溝Nに平行な溝に限定される必要はない。
即ち、図7において、潤滑油収容部10は、ウオームホイール2の歯溝N方向に対して平行する比較的浅い潤滑油の収容溝10xと、その底面に形成した3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cから構成されている。3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cは、その穴の径、数、深さが、潤滑油の粘度、潤滑油の供給能力、潤滑油の供給量、歯面間での保持量、使用時間等に応じた条件設定によって決定される。
この実施の形態においても、実施の形態2と同様に作用するが、3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cに収容された潤滑油は、簡単に歯先まで辿り着かないので、一般に、実施の形態1の実施物よりも、給油のタイミングを長くすることができる。なお、比較的浅い潤滑油の収容溝10xは、3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cに給油する場合に効果的である。
[実施の形態4]
ところで、本実施の形態3では、潤滑油収容部10を比較的浅い潤滑油の収容溝10xとその底面の3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cからなる構成で説明したが、実施の形態3の収容溝10xは省略することができる。
図8は本発明の実施の形態4のウオームギヤ減速機の構成を示す図3の切断線I−I、切断線II−IIによる断面に相当する説明図である。
即ち、本実施の形態4では、潤滑油収容部10として3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cを歯底面に直接穿設したものである。このように、歯底面に直接3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cを直接穿設したものでは、収容する潤滑油の量を多くすることができないが、一般に、給油のタイミングを長くすることができる。本実施の形態では3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cを穿設した事例で説明したが、本発明を実施する場合には、1個以上とすることができる。特に、本実施の形態の3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10cを歯底面に直接穿設したものにおいては、潤滑油収容部10を設けたことによる機械的強度の低下する要因がない。
上記各実施の形態においては、潤滑油収容部10を各ピッチの歯溝N毎に設ける事例で説明したが、本発明を実施する場合には、歯の2個間隔または2個以上の間隔に1個とすることができる。特に、噛み合いが全歯で行われるものであれば、任意の潤滑油収容部10の数とすることができる。
上記各実施の形態では、ウオームギヤ減速機について説明したが、本発明を実施する場合には、鼓形ウオーム1とウオームホイール2との噛み合い限定されるものではなく、平歯車、傘歯車、斜歯歯車、山歯歯車、内歯車、ラック、ピニオン等の各種歯車に使用することができる。
図9は本発明の参考実施例の歯車としての平歯車の噛み合いを示す要部断面を示す正面からみた説明図である。
本来の平歯車5と平歯車6との相互間の噛み合いで決定される平歯車5の歯たけmに対して、平歯車5の歯たけmが入り込む平歯車6の歯溝Nの歯底部に、歯たけMの平歯車6の径方向の内側に窪ませてなる潤滑油収容部10を形成したものである。
潤滑油収容部10に供給した潤滑油は、回転によって潤滑油収容部10の歯底面11側から歯先へと移動を繰り返し、かつ、平歯車5と平歯車6との噛み合いによって、歯底面11から歯先へと潤滑油を運ぶことができる。特に、平歯車5と平歯車6との歯面の間に潤滑油が浸透し、スクイズ効果が高まり、平歯車5と平歯車6との噛み合い部分の潤滑性能が向上し、しかも、潤滑性能の選定が自由となる。また、潤滑油収容部10は、力を伝達する歯幅Wのピッチ円よりも離れた位置の、歯元の面よりも下部に位置するものであり、その体積も大きいものを必要とせず、かつ、歯厚を薄くすることもないから、機械的強度を低下することがない。そして、平歯車5と平歯車6とを合成樹脂で形成しても、格別、機械的強度を上げることなく、潤滑性能が向上できる。また、金型の製作も成型も容易である。
ところで、図9に示す潤滑油収容部10は、平歯車5の歯幅W方向に対して平行する窪みとしたものであるが、斜歯歯車のような歯車であれば、歯溝Nに沿って形成されておればよい。また、潤滑油収容部10は、平歯車5の歯幅Wよりも狭い窪みとすることもできる。正確には、斜歯歯車のような歯車であれば、歯溝Nに沿った長さよりも短く形成できる。
そして、潤滑油収容部10は、平歯車5の噛み合いピッチ円上での噛み合い圧力角よりも小さい角度で形成することもできる。
更に、潤滑油収容部10は、平歯車5の歯元の面よりもその深さ方向に穿設した1以上の収容穴10a,10b,10cとすることもできる。加えて、潤滑油収容部10は、平歯車5の歯たけmが、他方の平歯車6の歯たけMよりも短く形成されておればよい。
上記実施の形態では、鼓形ウオーム1とウオームホイール2からなる構成、及び平歯車の構成で説明したが、論理的には、平歯車、傘歯車、斜歯歯車、山歯歯車、内歯車、ラック、ピニオン等の各種歯車に使用することができる。特に、鼓形ウオーム1では、両端の径が大きいので、効果的に機能させることができる。また、本発明の実施は、歯車の垂直配置に限定されるものではなく、水平配置の歯車にも適用できる。
また、上記実施の形態3及び実施の形態4では、潤滑油収容部10を3個の潤滑油の収容穴10a,10b,10c等からなる事例で説明したが、本発明を実施する場合には、歯車の歯たけの種類を異にすることによっても実施可能である。
図1は本発明の実施の形態のウオームギヤ減速機を備えたシートスライド装置の駆動装置の構成を示す説明図である。 図2は本発明の実施の形態のウオームギヤ減速機の構成図である。 図3は本発明の実施の形態1のウオームギヤ減速機を示す正面からみた要部説明図である。 図4は本発明の実施の形態1のウオームギヤ減速機の構成を示す図2の垂直要部断面の説明図である。 図5は本発明の実施の形態2のウオームギヤ減速機に使用するウオームホイールの要部斜視図である。 図6は本発明の実施の形態2のウオームギヤ減速機の構成を示す図3の切断線I−I、切断線II−IIによる断面の説明図である。 図7は本発明の実施の形態3のウオームギヤ減速機の構成を示す図3の切断線I−I、切断線II−IIによる断面に相当する説明図である。 図8は本発明の実施の形態4のウオームギヤ減速機の構成を示す図3の切断線I−I、切断線II−IIによる断面に相当する説明図である。 図9は本発明の参考実施例の歯車としての平歯車の噛み合いを示す要部断面を示す正面からみた説明図である。
符号の説明
1 鼓形ウオーム
2 ウオームホイール
10 潤滑油収容部
10x 収容溝
10a,10b,10c 収容穴
11 歯底面
N 歯溝
H,h 歯たけ
W 歯幅

Claims (5)

  1. ウオームと、当該ウオームと噛み合って回転力の伝達を受けるウオームホイールからなるウオームギヤ減速機において、
    前記ウオームと前記ウオームホイールとの噛み合いで決定される前記ウオームの歯たけが入り込む前記ウオームホイールの歯底部に、前記ウオームホイールの径方向の内側に窪ませてなる潤滑油収容部を具備することを特徴とするウオームギヤ減速機。
  2. 前記潤滑油収容部は、前記ウオームホイールの歯溝方向に対して平行する窪みとしたことを特徴とする請求項1に記載のウオームギヤ減速機。
  3. 前記潤滑油収容部は、前記ウオームホイールの歯溝方向に対して平行する前記歯溝の歯幅よりも短い窪みとしたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のウオームギヤ減速機。
  4. 前記潤滑油収容部は、前記ウオームホイールのピッチ円上で交じり合う半径線と半径線と歯面の接線との角度である噛み合い圧力角よりも、前記ウオームホイールの半径線と前記潤滑油収容部の歯面の接線との角度が小さい角度で形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載のウオームギヤ減速機。
  5. 前記潤滑油収容部は、前記ウオームホイールの歯底面よりもその深さ方向に穿設した1以上の収容穴としたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1つに記載のウオームギヤ減速機。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010075075A (ja) * 2008-09-25 2010-04-08 Shimano Inc スピニングリールのマスターギア、及び回転伝達機構
CN114273920A (zh) * 2022-01-24 2022-04-05 湖南电气职业技术学院 一种汽车蜗轮蜗杆减速器装配设备

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