JP2006264261A - 静電式液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 各駆動パルスによる液体滴の吐出特性(吐出速度及び吐出質量)を良好に維持することができる静電式液体噴射装置を提供すること。
【解決手段】 本発明は、略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、前記液体室に連通するノズル開口と、駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して前記振動板電極を振動させて前記ノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、を備えた静電式液体噴射装置である。単位領域当たりの液体噴射は、最大n回の連続した液体滴の吐出によって行われる。各液体滴を吐出させるために印加される各駆動電圧パルスの各パルス間隔が個別に設定され、各駆動電圧パルスのパルス幅が当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて個別に設定される。
【選択図】 図6
【解決手段】 本発明は、略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、前記液体室に連通するノズル開口と、駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して前記振動板電極を振動させて前記ノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、を備えた静電式液体噴射装置である。単位領域当たりの液体噴射は、最大n回の連続した液体滴の吐出によって行われる。各液体滴を吐出させるために印加される各駆動電圧パルスの各パルス間隔が個別に設定され、各駆動電圧パルスのパルス幅が当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて個別に設定される。
【選択図】 図6
Description
本発明は、振動板電極と固定電極との間に駆動電圧パルスを印加して振動板電極を振動させることにより液体圧力変動を発生させ、この液体圧力変動を利用して液体ノズルから液体滴を吐出させる静電式液体噴射装置に関するものである。更に詳しくは、1画素印字を複数回の液体滴の吐出により行う多ショット/画素印字を、優れた印字品質を保持した状態で高速に行うことのできる静電式液体噴射装置に関するものである。
インクジェットプリンタのインクジェットヘッドとしては、静電気力を利用してインクを貯留したインク室の容積を変化させて、インク室に連通しているインクノズルからインク滴を吐出させる静電アクチュエータを備えた静電式インクジェットヘッドが知られている。静電アクチュエータは、インク室の一部を形成している振動板電極と、これに対向配置されている固定電極と、を備える。これらの間に駆動電圧パルスが印加されると、振動板電極が固定電極に吸引される。駆動電圧パルスの印加が解除されると、振動板電極が固定電極から開放されて弾性復帰する。このような振動板電極の振動によって、インク室のインク圧力が変動し、振動板電極が固定電極から開放されて弾性復帰する過程で、インク室に連通しているインクノズルからインク滴が吐出する。
ここで、1画素印字をインク滴の連続吐出により行う多ショット/画素印字の場合、特に、当該多ショット/画素印字を高い駆動周波数(高速)で行う場合、インク圧力の残留振動の影響によって、各インク滴吐出時のインク吐出特性が変化し得る。すなわち、インク滴を吐出する圧力振動は、振動板電極の駆動による圧力振動とインク滴吐出後の残留振動との重ね合わせであるから、残留振動によって、振動板電極を固定電極に吸引する動作を開始する時点における振動板電極の変位状態は変化し得る。この結果、インク吐出特性が大幅に変動し得る。当該変動は、残留振動の振幅が大きいほど顕著であり、印字品質が大幅に劣化し得る。
インク圧力の残留振動は、従来、振動板電極を固定側電極から開放した状態の固有振動に主として依存すると考えられていた。この固有振動は、静電式インクジェットヘッドの製造誤差などに起因して、各静電式インクジェットヘッド毎に所定のばらつきがある。
そこで、従来においては、インク滴の連続吐出により1画素分の印字を行う場合に、駆動電圧パルスを印加し終わった時点から次の駆動電圧パルスを印加するまでの駆動間隔を、静電式インクジェットヘッドの前記固有振動の振動周期に基づいて決定するという方法が提案されている。また、駆動電圧パルスのパルス幅も前記固有振動の振動周期に基づいて決定するという方法が提案されている。これらの方法は、例えば、特許文献1に開示されている。
インクジェットプリンタの印刷速度の向上のために、静電式インクジェットヘッドのより一層の高周波数駆動が求められている。高周波数駆動の実現のためには、静電式インクジェットヘッドのインク室の圧力変動の前記固有振動の固有振動数を高める必要がある。しかしながら、当該固有振動数を高めると、その振動波形は急峻な波形になるため、インク圧力変動に応じた適切なタイミングで駆動電圧パルスを印加する等の駆動条件の設定が困難になる。特に、静電式インクジェットヘッド毎に前記固有振動数のばらつきがあると、適切な駆動条件の設定は更に困難になる。
駆動条件の設定が適切でないと、複数のインク滴の吐出によって1画素印字を行う場合、後続のインク滴の吐出速度が低下したり、吐出質量が少なくなったりする。この結果、インク滴の記録紙上への着弾位置がずれたり、1画素印字に必要な充分なインク吐出量を確保できなかったりして、印字品質が大幅に劣化してしまう。
このような点に鑑みて、本件出願人による特願2004−126929は、多ショット/画素印字を、各インク滴の吐出特性をインク残留振動の影響を受けることなく良好に保持した状態で、高速に行うことのできる静電式インクジェットヘッドの駆動方法を提案している。
特願2004−126929による静電式インクジェットヘッドの駆動方法は:一定間隔で対向配置されている振動板電極および固定電極の間に駆動電圧パルスを印加し、これらの間に発生する静電気力によって前記振動板電極を振動させることによりインク圧力変動を発生させ、当該インク圧力変動を利用してインクノズルからインク滴を吐出させ;1画素印字を、最大n回(nは2以上の整数)の連続したインク滴の吐出により行い;各インク滴の吐出のために印加される第1〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔が、インク滴吐出後の前記振動板電極の残留振動波形に基づき、個別に設定されていることを特徴とするものである。
当該駆動方法では、各駆動電圧パルスの各パルス間隔が、振動板電極の残留振動波形に基づいて、個別に設定される。したがって、残留振動が残っている振動板電極を、第2番目から第n番目までの各駆動電圧パルスによって、それぞれ適切なタイミングで駆動することができる。この結果、第2番目から第n番目までの各駆動電圧パルスによる振動板電極の振動状態を、残留振動によって影響されることなく、良好に保持することが可能になる。このようにすれば、第2番目から第n番目までの各インク滴の吐出が、十分な吐出質量および吐出速度で行われるので、高速印字においても印字品質を良好に保持することが可能である。
特開2002−67358号公報
本件発明者は、第2番目から第n番目までの各インク滴の吐出が十分な吐出質量および吐出速度で行われるためには、各駆動電圧パルスの各パルス間隔のみならず、各駆動電圧パルスの各パルス幅をも調整すべきであることを知見した。
前記のように、従来の技術常識では、インク圧力の残留振動は振動板電極が固定側電極から開放された状態の固有振動に主として依存すると考えられていた。しかしながら、本件発明者による実験によって、インク圧力の残留振動は、振動板電極が固定側電極から開放された状態の固有振動のみならず、振動板電極が固定側電極に当接した状態の固有振動にも依存することが知見された。実験結果を図1に示す。
図1に示すように、振動板電極が固定側電極から開放された状態の固有振動の振動周期Tc1のみならず、振動板電極が固定側電極に当接した状態の固有振動の振動周期Tc2も、ノズルメニスカスの変位(インク圧力の残留振動に対応)として明瞭に現れている。
振動板電極が固定側電極から開放された状態の固有振動については、図2(a)乃至図2(c)に示すようなモデルによって説明される。図2(a)は、振動板電極が固定側電極から開放された状態の静電アクチュエータの概略断面図であり、図2(b)は、図2(a)をモデル化した図であり、図2(c)は、図2(b)のモデルに基づく運動方程式である。
一方、振動板電極が固定側電極に当接した状態の固有振動については、図3(a)乃至図3(c)に示すようなモデルによって説明される。図3(a)は、振動板電極が固定側電極に当接した状態の静電アクチュエータの概略断面図であり、図3(b)は、図3(a)をモデル化した図であり、図3(c)は、図3(b)のモデルに基づく運動方程式である。
さて、特願2004−126929においては、各駆動電圧パルスの各パルス間隔、すなわち、各駆動電圧パルスの印加タイミングによって、吐出されるインク滴の吐出質量や吐出速度が影響されるというモデルを想定している。しかしながら、駆動電圧パルスのパルス幅が吐出されるインク滴の吐出質量や吐出速度にどのように影響するのかについては、特別な考慮をしていない。駆動電圧パルスのパルス幅が吐出されるインク滴の吐出質量や吐出速度に影響を与えないと仮定すれば、駆動パルスの印加タイミング−駆動パルスのパルス幅−インク滴の吐出速度の関係を表す立体グラフは、図4のようになると想定される。
ところが、本件発明者による実際の装置(JH−128D)を用いた測定実験のデータについて、駆動パルスの印加タイミング−駆動パルスのパルス幅−インク滴の吐出速度の関係を立体グラフに表すと、図5のようになることが知見された。図5の駆動パルスの印加タイミング−駆動パルスのパルス幅の関係について、吐出速度を等高線表示すると、図6のようになる。すなわち、最大の吐出速度を実現する駆動条件としては、各駆動電圧パルスの印加タイミングのみならず、当該駆動電圧パルスのパルス幅をも考慮すべきであることが理解される。
そこで、本件発明者は、上記のような知見に基づいて、特願2004−126929によって提案された技術を更に発展させ、本件発明を想到するに至ったものである。
本発明は、各駆動パルスによる液体滴の吐出特性(吐出速度及び吐出質量)をより良好に維持することができる静電式液体噴射装置を提供することを目的とする。
本発明は、略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、前記液体室に連通するノズル開口と、駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して、両電極の間に発生する静電気力によって前記振動板電極を振動させることにより前記液体室内の液体の圧力変動を発生させ、当該液体の圧力変動を利用して前記液体室に連通するノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、を備え、単位領域当たりの液体噴射を、最大n回(nは2以上の整数)の連続した液体滴の吐出によって行うようになっており、各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔が個別に設定されており、各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅が、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて、個別に設定されていることを特徴とする静電式液体噴射装置である。
本発明によれば、駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて当該駆動電圧パルスのパルス幅が個別に設定されることにより、各駆動電圧パルスによる液体滴の吐出特性(吐出速度及び吐出質量)をより良好に維持することができる。
例えば、各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、少なくとも全てが同一ではないように、個別に設定され、各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅は、少なくとも全てが同一ではないように、個別に設定され得る。
より具体的には、例えば、各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(k)は、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔Pwi(k−1)に基づいて、
を満たすように、個別に設定され得る。
あるいは、パルス間隔Pwi(k−1)毎に
を満たす駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(k)を予め割り当てたテーブルデータを記憶する記憶部が設けられて、当該テーブルデータに基づいて、各駆動電圧パルスのパルス幅が個別に設定され得る。
各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、各液体滴吐出後の前記振動板電極の残留振動波形に基づいて、個別に設定されることが好ましい。
より具体的には、各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの印加開始時点における前記振動板電極の残留振動による変位位置が当該振動板電極が前記固定電極の側に変位を開始する直前における変位零の中立位置であるように、個別に設定されることが好ましい。
また、本発明は、略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、前記液体室に連通するノズル開口と、を備えた静電式液体噴射装置を制御する制御装置であって、駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して、両電極の間に発生する静電気力によって前記振動板電極を振動させることにより前記液体室内の液体の圧力変動を発生させ、当該液体の圧力変動を利用して前記液体室に連通するノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、を備え、前記静電式液体噴射装置に、単位領域当たりの液体噴射を、最大n回(nは2以上の整数)の連続した液体滴の吐出によって行わせるようになっており、各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔が個別に設定されており、各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅が、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて、個別に設定されていることを特徴とする制御装置である。
前記の制御装置あるいは当該制御装置の各要素手段は、コンピュータシステムによって実現され得る。
また、コンピュータシステムに各装置または各手段を実現させるためのプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体も、本件の保護対象である。
ここで、記録媒体とは、フロッピーディスク等の単体として認識できるものの他、各種信号を伝搬させるネットワークをも含む。
また、本発明は、略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、前記液体室に連通するノズル開口と、駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して、両電極の間に発生する静電気力によって前記振動板電極を振動させることにより前記液体室内の液体の圧力変動を発生させ、当該液体の圧力変動を利用して前記液体室に連通するノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、を備え、単位領域当たりの液体噴射を、最大n回(nは2以上の整数)の連続した液体滴の吐出によって行うようになっている静電式液体噴射装置の初期設定または調整を行う方法であって、各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔を個別に設定するパルス間隔設定工程と、各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅を、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて、個別に設定するパルス幅設定工程と、を備えたことを特徴とする方法である。
本発明によれば、駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて当該駆動電圧パルスのパルス幅が個別に設定されることにより、各駆動電圧パルスによる液体滴の吐出特性(吐出速度及び吐出質量)をより良好に調整することができる。
好ましくは、前記パルス幅設定工程は、各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(k)を、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔Pwi(k−1)に基づいて、
を満たすように、個別に設定する工程である。
前記パルス幅設定工程は、5つのパラメータA、γ、ωc 、φ、Bを求めるパラメータ決定工程を含み得る。
前記パラメータ決定工程は、各液体滴の吐出速度を測定する工程を含み得る。吐出速度のピークに対応する5組のPwb(k)及びPwi(k−1)が得られれば、前記5つのパラメータを求めることができる。
あるいは、前記パラメータ決定工程は、各液体滴の吐出重量を測定する工程を含み得る。吐出重量のピークに対応する5組のPwb(k)及びPwi(k−1)が得られれば、前記5つのパラメータを求めることができる。本件発明者は、吐出重量のピークと吐出速度のピークとが概ね重なることを知見している。
以下に、図面を参照して、本発明を適用した静電式インクジェットヘッド(静電式液体噴射ヘッドの一例)を備えたインクジェットプリンタ(液体噴射装置の一例)の実施の形態を説明する。
(インクジェットプリンタの全体構成)
図7は、本実施の形態に係る静電式インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタを示す概略構成図である。
図7は、本実施の形態に係る静電式インクジェットヘッドを備えたインクジェットプリンタを示す概略構成図である。
本実施の形態に係るインクジェットプリンタ100は、記録紙102を主走査方向Yに向けて搬送するプラテン103と、プラテン103にインクノズル面が対峙しているインクジェットヘッド110と、インクジェットヘッド110を副走査方向Xに向けて往復移動させるためのキャリッジ105と、インクジェットヘッド110の各インクノズルにインクを供給するインクタンク106と、を有している。プラテン103から副走査方向Xに外れた位置には、ノズルキャップ107が配置されている。ノズルキャップ107は、インクポンプ108を介して、廃インク回収部109に連通している。
(静電式インクジェットヘッド)
図8は、静電式インクジェットヘッド110の概略構成図である。静電式インクジェットヘッド110は、半導体からなるキャビティ基板112と、同じく半導体からなるノズル基板113と、ガラス製の電極基板114と、を図8に示すように積層することにより構成されている。ノズル基板113には、複数のインクノズル115(ノズル開口)が形成されている。ノズル基板113とキャビティ基板112との間には、各インクノズル115に連通する独立したインク室116(液体室)が区画形成されている。各インク室116は、細いインクオリフィス117を介して、単一の共通インク室118に連通している。共通インク室118には、外部から不図示のインク供給経路を介してインクが供給されるようになっている。
図8は、静電式インクジェットヘッド110の概略構成図である。静電式インクジェットヘッド110は、半導体からなるキャビティ基板112と、同じく半導体からなるノズル基板113と、ガラス製の電極基板114と、を図8に示すように積層することにより構成されている。ノズル基板113には、複数のインクノズル115(ノズル開口)が形成されている。ノズル基板113とキャビティ基板112との間には、各インクノズル115に連通する独立したインク室116(液体室)が区画形成されている。各インク室116は、細いインクオリフィス117を介して、単一の共通インク室118に連通している。共通インク室118には、外部から不図示のインク供給経路を介してインクが供給されるようになっている。
各インク室116の底壁部分は、図8の上下方向に振動可能な振動板電極119を構成している。各振動板電極119は、共通電極として機能する。各振動板電極119に対峙している電極基板114の表面部分には、それぞれ凹部120が形成されている。各凹部120には、振動板電極119に所定の間隔で対峙する個別電極121(固定電極)が配置されている。各振動板電極119と各個別電極121とにより、静電アクチュエータが構成されている。
この静電アクチュエータに駆動電圧パルスを印加することによって発生する静電気力を利用して、振動板電極119が振動されるようになっている。振動板電極119の振動によって、インク室116の容積が増減する。これによってインク室116内のインク圧力が変動して、インク室116に連通しているインクノズル115からインク滴122が吐出される。
静電式インクジェットヘッド110は、例えば、ノズル基板113に一列に形成された64個のインクノズル115を備えている。これら64個のインクノズル115から選択的にインク滴が吐出されることにより、所望の文字や画像が印刷され得る。
なお、図8の静電式インクジェットヘッド110は、ノズル基板113の上面に設けられたインクノズル115からインク滴を吐出させるフェイスエジェクトタイプのヘッドである。しかしながら、本発明の対象となる静電式インクジェットヘッドは、基板の側端部に設けられたインクノズルからインク滴を吐出させるエッジエジェクトタイプのヘッドをも含む。
(インクジェットプリンタの制御系)
図9は、インクジェットプリンタ100の制御系を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係るインクジェットプリンタ100は、静電式インクジェットヘッド110を駆動制御するためのインクジェットヘッド駆動制御装置1を有している。インクジェットヘッド駆動制御装置1は、CPU2aを有するインクジェットヘッド制御部2(駆動制御部の一部)を備えている。CPU2aには、外部装置3からバス3aを介して印刷情報が供給されるようになっている。また、内部バス2bを介してROM4a、RAM4bおよびキャラクタジェネレータ4cが接続されている。
図9は、インクジェットプリンタ100の制御系を示す概略ブロック図である。本実施の形態に係るインクジェットプリンタ100は、静電式インクジェットヘッド110を駆動制御するためのインクジェットヘッド駆動制御装置1を有している。インクジェットヘッド駆動制御装置1は、CPU2aを有するインクジェットヘッド制御部2(駆動制御部の一部)を備えている。CPU2aには、外部装置3からバス3aを介して印刷情報が供給されるようになっている。また、内部バス2bを介してROM4a、RAM4bおよびキャラクタジェネレータ4cが接続されている。
インクジェットヘッド制御部2は、RAM4b内の記憶領域を作業領域として用いて、ROM4a内に格納されている制御プログラムを実行し、キャラクタジェネレータ4cから発生されるキャラクタ情報に基づき、インクジェットヘッド駆動用の制御信号を生成する。当該制御信号は、論理ゲートアレイ5および駆動パルス発生回路6を介して、印刷情報に対応した駆動制御信号となる。当該駆動制御信号は、コネクタ7を経由して、ヘッド基板8に形成されたヘッドドライバIC9(駆動制御部の一部)に供給される。また、ヘッドドライバIC9には、印字用の駆動電圧パルス信号V3、制御信号LP、極性反転制御信号REVなども供給される。
ヘッドドライバIC9は、供給される上記の各信号および電源回路10から供給される駆動電圧Vpに基づき、静電式インクジェットヘッド110の各振動板電極119(共通電極)に印加すべき駆動電圧パルスを、その共通出力端子COMから出力する。そして、各インクノズル115に対応する各個別電極121に印加すべき駆動電圧パルスを、各個別電極121に対応した各個別出力端子SEGから出力する。これにより、共通出力端子COMの出力と各個別出力端子SEGの出力との電位差が振動板電極119と各個別電極121の間に印加される。具体的には、静電アクチュエータ駆動時(インク滴の吐出時)には指定された向き(極性)の駆動電位差波形が与えられ、非駆動時には駆動電位差が与えられないようになっている。
図10は、ヘッドドライバIC9の内部構成の一例を示す概略ブロック図である。図10のヘッドドライバIC9は、電源回路10から高電圧系の駆動電圧Vpおよび論理回路系の駆動電圧Vccが供給されて動作するCMOSの64ビット出力の高耐圧ドライバである。ヘッドドライバIC9は、供給される駆動制御信号に応じて、駆動電圧パルスとGND電位のうちの一方を、インクジェットヘッド110の各インクノズル115に対応する対向電極119、121間に印加する。
ヘッドドライバIC9は64ビットのシフトレジスタ91を有している。シフトレジスタ91は、シリアルデータとして論理ゲートアレイ5より送信される64ビット長のDI信号入力を、当該DI信号に同期する基本クロックパルスであるXSCLパルス信号の入力によりシフトアップし、シフトレジスタ91内のレジスタに格納するようになっている(スタティクシフトレジスタとして機能する)。DI信号は、64個のインクノズルのそれぞれを選択するための選択情報をオン/オフにより示す制御信号である。このDI信号はシリアルデータとして送信される。
64ビットのラッチ回路92は、シフトレジスタ91内に格納された64ビットデータをラッチパルスLPによりラッチして格納し、格納された当該データを64ビット反転回路93に信号出力するようになっている(スタティクラッチとして機能する)。ラッチ回路92では、シリアルデータのDI信号が、各インクノズルを駆動するための64セグメント出力を行うための64ビットのパラレル信号へと変換される。
反転回路93は、ラッチ回路92から入力される信号とREV信号との排他的論理和をレベルシフタ94へ出力する。レベルシフタ94は、反転回路93からの信号の電圧レベルをロジック系の電圧レベル(5Vレベルまたは3.3Vレベル)からヘッド駆動系の電圧レベル(0V〜45Vレベル)に変換するレベルインターフェイス回路である。
SEGドライバ95は、64チャンネルのトランスミッションゲート出力を有していて、レベルシフタ94の入力により、SEG1〜SEG64の各セグメント出力に対して、駆動電圧パルス入力かGND入力かの何れかを出力する。
COMドライバは、REV入力により、駆動電圧パルス入力かGND入力かの何れかを出力端子COMへ出力する。
XSCL、DI、LP、REVの各信号は、ロジック系の電圧レベルの信号であり、論理ゲートアレイ5よりヘッドドライバIC9に送信される。
以上のようにヘッドドライバIC9を構成することにより、駆動するセグメント数(ノ
ズル数)が増加した場合においても、ヘッドの各インクノズルを駆動する駆動電圧パルスとGNDとの切り換え、及び、後述の正逆交互駆動を、容易に実現することが可能となる。
ズル数)が増加した場合においても、ヘッドの各インクノズルを駆動する駆動電圧パルスとGNDとの切り換え、及び、後述の正逆交互駆動を、容易に実現することが可能となる。
(印字動作)
以上のように構成されたインクジェットヘッド駆動制御装置1は、印字1画素を連続の複数回のインク滴の吐出により形成するように、静電式インクジェットヘッド110を駆動制御可能となっている。例えば、最大3回のインク滴を吐出することにより1画素を印字するように制御可能である。また、1画素印字期間におけるインク滴の吐出回数を変更することにより、各画素の階調制御を行うことも可能である。
以上のように構成されたインクジェットヘッド駆動制御装置1は、印字1画素を連続の複数回のインク滴の吐出により形成するように、静電式インクジェットヘッド110を駆動制御可能となっている。例えば、最大3回のインク滴を吐出することにより1画素を印字するように制御可能である。また、1画素印字期間におけるインク滴の吐出回数を変更することにより、各画素の階調制御を行うことも可能である。
図11は、外部装置3からの印字モード指令信号により1画素を最大3回のインク滴の吐出により形成する印字モード(3ショット/画素モード)が指定された場合のタイミングチャートである。図11において、V3は、インクジェットヘッド制御部2の駆動パルス発生回路6からヘッドドライバIC9に供給される印字用の駆動電圧パルス信号である。LPおよびREVは、上述のように、インクジェットヘッド制御部2の論理ゲートアレイ5からヘッドドライバIC9に供給される制御信号(ラッチパルス)および極性反転制御信号である。ドライバCOM出力は共通端子COMの出力であり、ドライバSEG出力は各個別端子SEGの出力である。COM−SEG電位差は、共通電極(振動板電極119)と個別電極121との間に発生する電位差(ノズル駆動電圧波形)である。なお、制御信号LPによって1画素印字期間Tが規定され、1画素を3ショットで形成するように制御される。
ドライバCOM出力には、各1画素印字期間Tに現れる第1〜第3の印字用の駆動電圧パルスPw(1)、Pw(2)、Pw(3)のうち、第2の駆動電圧パルスPw(2)が現れ、それ以外はGNDに保持される。
これに対して、ドライバSEG出力には、1画素を3回のインク滴の吐出により形成する3ショット/画素による印字の場合には、第1および第3の駆動電圧パルスPw(1)、Pw(3)が現れ、1画素を2回のインク滴の吐出により形成する2ショット/画素による印字の場合には、第1の駆動電圧パルスPw(1)のみが現れ、1画素を1回のインク滴の吐出により形成する1ショット/画素による印字の場合には、第1および第2の駆動電圧パルスPw(1)およびPw(2)が現れる。
このように、本実施の形態では、1画素印字用の複数のタイミング(図11の例では連続する3回の吐出タイミング)を利用して階調表現を行うようになっている。
また、振動板電極119と個別電極121との間に印加されるノズル駆動波形、すなわちCOM−SEG電位差は、逆方向、正方向および逆方向の順序で切り替わる。よって、3ショット/画素による印字の場合(図11の左の1画素印字期間T)には、逆駆動、正駆動および逆駆動による3回のインク滴の吐出動作が行われ、2ショット/画素による印字の場合(図11の中央の1画素印字期間T)には、第1および第2のインク滴の吐出時点において逆駆動および正駆動の順序でインク滴の吐出動作が行われ、1ショット/画素による印字の場合(図11の右の1画素印字期間T)には、第1のインク滴の吐出時点において逆駆動によりインク滴の吐出動作が行われる。
以上のような正逆交互駆動は、極性反転信号REVを利用することによって実現される。このような正逆交互駆動により、振動板電極119と個別電極121との間に残留電荷が発生することを抑制あるいは回避できる。
(駆動電圧パルスのパルス間隔の設定方法)
図12は、駆動電圧パルス信号V3における駆動電圧パルスPwを示している。図12に示すように、各駆動電圧パルスPw(Pw(1)〜Pw(4))は台形波形であり、1周期分の幅、すなわち、駆動電圧パルスPwの立ち上がり時点(印加開始時点)から次の駆動電圧パルスPwの立ち上がり時点(印加開始時点)までの間隔がパルス間隔Pwi(Pwi(1)〜Pwi(3))である。各駆動電圧パルスPwの電圧波形において、一定の勾配で立ち上がる充電部分の幅がPwcpであり、立ち上がり後に一定電圧に保持されるホールド部分の幅がPwhpであり、この後に一定の勾配で立ち下がる放電部分の幅がPwdpである。また、駆動電圧パルスPwの立ち上がり開始時点から立ち下がり開始時点までの幅、すなわちパルス幅がPwb(Pwb(1)〜Pwb(3))である。
図12は、駆動電圧パルス信号V3における駆動電圧パルスPwを示している。図12に示すように、各駆動電圧パルスPw(Pw(1)〜Pw(4))は台形波形であり、1周期分の幅、すなわち、駆動電圧パルスPwの立ち上がり時点(印加開始時点)から次の駆動電圧パルスPwの立ち上がり時点(印加開始時点)までの間隔がパルス間隔Pwi(Pwi(1)〜Pwi(3))である。各駆動電圧パルスPwの電圧波形において、一定の勾配で立ち上がる充電部分の幅がPwcpであり、立ち上がり後に一定電圧に保持されるホールド部分の幅がPwhpであり、この後に一定の勾配で立ち下がる放電部分の幅がPwdpである。また、駆動電圧パルスPwの立ち上がり開始時点から立ち下がり開始時点までの幅、すなわちパルス幅がPwb(Pwb(1)〜Pwb(3))である。
本実施の形態においては、1画素印字のための第1ないし第3の各駆動電圧パルスPw(Pw(1)〜PW(3))の各パルス間隔Pwi(1)、Pwi(2)、Pwi(3)が、インク滴吐出後の振動板電極119の残留振動波形に基づき、それぞれ個別に決定されている。
図13は、駆動電圧パルス信号波形と振動板電極119の挙動(残留振動波形)を示している。図13においては、理解を容易にするために、駆動電圧パルス波形のパルス間隔Pwi(1)〜Pwi(3)を広げてある。
図13に示すように、第1回目の駆動電圧パルスPw(1)が電極間に印加されると(時点T11)、変位零の中立位置にある振動板電極119が個別電極(固定電極)121の側(図13においては負の側)に吸引されて、当該個別電極121に当接する。振動板電極119の変位に伴って、インク室116のインク圧力が負圧側に変化し、インクノズル115のインクメニスカスが大きく引き込まれる。次に、駆動電圧パルスPw(1)が立ち下がると、振動板電極119が個別電極121から開放されて、その中立位置に向けて弾性変位を開始する(時点T12)。振動板電極119は中立位置を通り過ぎて正の側に変位する。これにより、インク室116のインク圧力が急激に高まり、インクノズル115からインク滴122が吐出される(時点T13)。振動板電極119は、静電式インクジェットヘッド110の固有周期で残留振動するインク圧力に伴って、残留振動を行う。
本実施の形態では、第1番目の駆動電圧パルスPw(1)と第2番目の駆動電圧パルスPw(2)との間のパルス間隔Pwi(1)を、かかる振動板電極119のインク滴吐出後の残留振動波形に基づいて定めている。具体的には、第2番目の駆動電圧パルスPw(2)の立ち上がり時点T21(印加開始時点)が、振動板電極119の位置が正側から負側に切り替わる中立位置となる時点に一致するように、当該パルス間隔Pwi(1)が定められている。したがって、パルス間隔Pwi(1)には、残留振動波形の山がN個(Nは正の整数)含まれることになる。図示の例では、2個の山が含まれている。2個目の山のゼロクロス点(中立位置)が、第2番目の駆動電圧パルスPw(2)の立ち上がり時点T21となっている。
このように、残留振動する振動板電極119が正側から負側に切り替わる中立位置の時点において第2番目の駆動電圧パルスPw(2)の印加が開始されれば、残留振動による振動板電極119の変位方向と駆動電圧パルスによる振動板電極119の変位方向とが一致する。よって、駆動電圧パルスPw(2)による振動板電極119の変位が残留振動によって阻害あるいは抑制されることが無い。したがって、第2番目のインク滴の吐出(時点T23)を十分な吐出質量および吐出速度で行うことができる。また、振動板電極119が中立位置の時点で駆動電圧パルスPw(2)が印加されると、同じく振動板電極119が中立位置の状態で駆動電圧パルスPw(1)が印加されて第1回目のインク滴が吐出された場合と略同様な挙動が再現される。このため、第2回目のインク滴の吐出特性を第1回目のインク滴の吐出特性と実質的に同一に保持することができる。
同様にして、第2番目の駆動電圧パルスPw(2)と第3番目の駆動電圧パルスPw(3)との間のパルス間隔Pwi(2)も決定されている。すなわち、第2番目のインク滴吐出後における振動板電極119の残留振動波形が正側から負側に切り替わるゼロクロス点(変位零の中立位置)に、第3番目の駆動電圧パルスPw(3)の立ち上がり時点T31(印加開始時点)が一致するように、パルス間隔Pwi(2)が定められている。図13の例では、パルス間隔Pwi(2)に、残留振動波形における2個の山が含まれている。2個目の山のゼロクロス点(中立位置)が、第3番目の駆動電圧パルスPw(3)の立ち上がり時点T31となっている。
同様にして、第3番目の駆動電圧パルスPw(3)と次の1画素印字のための第1番目の駆動電圧パルスPw(4)との間のパルス間隔Pwi(3)も決定されている。すなわち、第3番目のインク滴吐出後における振動板電極119の残留振動波形が正側から負側に切り替わるゼロクロス点(変位零の中立位置)に、第1番目の駆動電圧パルスPw(4)の立ち上がり時点T41(印加開始時点)が一致するように、パルス間隔Pwi(3)が定められている。
ここで、第1番目および第2番目のパルス間隔Pwi(1)、Pwi(2)に含まれる振動板電極119の残留振動波形の山の数はそれぞれ「2」であるが、第3番目のパルス間隔Pwi(3)に含まれる残留振動波形の山の数は「3」である。あるいは、山の数が4個以上となるようにパルス間隔Pwi(3)を定めても良い。すなわち、パルス間隔Pwi(1)、Pwi(2)に含まれる残留振動波形の山の数がN(Nは正の整数)であるとすると、最後の第3番目のパルス間隔Pwi(3)に含まれる残留振動波形の山の数は(N+α)(αは正の整数)であることが好ましい。
次に、上記のように駆動電圧パルスPwのパルス間隔Pwi(1)〜Pwi(3)を決定するために、本実施の形態では、静電式インクジェットヘッド110の出荷前の段階などにおいて、製造ロット毎にサンプリングが行われ、インク滴吐出後の振動板電極119の残留振動周波数あるいは残留振動周期が計測あるいは算出されている。そして、計測あるいは算出された固有周期あるいは固有振動数に基づき、静電式インクジェットヘッド毎に最適な第1ないし第3番目のパルス間隔Pwi(1)、Pwi(2)およびPwi(3)がそれぞれ個別に決定されている。
静電式インクジェットヘッドの出荷前の段階においてその固有周期等を計測あるいは算出する方法としては、次のような方法を採用することができる。
(1)振動板電極119および固定側電極121の間の静電容量の変化に起因して変動する電流波形を測定し、これに基づき算出する方法。
(2)駆動電圧パルスPwのパルス間隔Pwiとインクノズルから吐出されるインク質量との関係を測定し、この関係に基づき算出する方法。
(3)駆動電圧パルスPwのパルス間隔Pwiとインクノズルから吐出されるインクの吐出速度との関係を測定し、この関係に基づき算出する方法。
(4)振動板電極119および固定側電極121の間の静電容量の変化に起因して変動する電圧波形を測定し、これに基づき算出する方法。
(1)振動板電極119および固定側電極121の間の静電容量の変化に起因して変動する電流波形を測定し、これに基づき算出する方法。
(2)駆動電圧パルスPwのパルス間隔Pwiとインクノズルから吐出されるインク質量との関係を測定し、この関係に基づき算出する方法。
(3)駆動電圧パルスPwのパルス間隔Pwiとインクノズルから吐出されるインクの吐出速度との関係を測定し、この関係に基づき算出する方法。
(4)振動板電極119および固定側電極121の間の静電容量の変化に起因して変動する電圧波形を測定し、これに基づき算出する方法。
また、本実施の形態のヘッド基板8には、図9に示すように、静電式インクジェットヘッド110のパルス間隔ランク識別回路11が搭載されている。また、インクジェットヘッド制御部2には、パルス間隔ランク識別回路11によって指定されるランクを判別するパルス間隔判別回路12が搭載されている。そして、静電式インクジェットヘッド110の出荷前の段階などにおいて計測あるいは算出された固有周期に基づき、パルス間隔ランク識別回路11を外部から操作することにより、駆動電圧パルス信号V3における1画素形成用の各パルス間隔のランクが設定される。
例えば、図14に示すように、均等幅の各固有周期の区分毎に予めパルス間隔が割り当てられたテーブル13が用意され、計測あるいは算出された固有周期に対応するランク番号201〜324が、第1番目ないし第3番目のパルス間隔に対応付けされて、パルス間隔ランク識別回路11に設定される。インクジェットヘッド駆動制御装置1は、パルス間隔ランク判別回路12により、パルス間隔ランク識別回路11に設定されている3種類のランクを読み込み、これに基づき、第1番目ないし第3番目のパルス間隔Pwi(1)〜Pwi(3)を設定する。
そして、図15に示すように、静電式インクジェットヘッド110の本体側面110aなどの部位に、割り当てられたパルス間隔ランクが印刷される。この場合、最も左側の数字「238」が第1番目のパルス間隔Pwi(1)のランクであり、次の数字「236」が第2番目のパルス間隔Pwi(2)であり、最も左の数字「311」が第3番目のパルス間隔Pwi(3)である。また、これらの数字の下側位置に、製造ロット番号「AB−040226」が印刷される。
なお、図15のようにランクが印刷あるいは表示されている場合には、パルス間隔ランク判別回路12及びパルス間隔ランク識別回路11を省略し、ディップスイッチなどを介してインクジェットヘッド駆動制御装置1に各ランクに基づくパルス間隔Pwi(1)〜Pwi(3)の設定を行わせるようにしてもよい。
なお、図10に示すように、本実施の形態では、インク滴の吐出回数に拘わりなく、1画素印字における1回目のインク滴の吐出は先頭の吐出タイミングで行われ、2回目のインク滴の吐出は2番目の吐出タイミングで行われ、3回目のインク滴の吐出は3番目の吐出タイミングで行われる。よって、各吐出タイミングにおける駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(1)〜Pwb(3)をそれぞれ別個に適切な値に設定できる。
次に、本発明の特徴として、1番目、2番目、3番目の駆動電圧パルスのパルス幅を異なるものとする場合について説明する。
前述のように、本件発明者による実際の装置(JH−128D)を用いた測定実験により、駆動パルスの印加タイミング−駆動パルスのパルス幅−インク滴の吐出速度の関係を立体グラフに表すと、図5のようになることが知見された。図5の駆動パルスの印加タイミング−駆動パルスのパルス幅の関係について、吐出速度を等高線表示すると、図6のようになる。図6のグラフから、最大の吐出速度が実現され得る条件では、駆動パルスの印加のための間隔Pwi(k−1)と当該駆動パルスのパルス幅Pwb(k)とが以下の関係式を満たしていることが分かる。
逆に言えば、上記関係式を満たすように駆動パルスのパルス幅Pwb(k)を設定すれば、最大の吐出速度が実現されると言える。
実際に、本件発明者による実際の装置(JH−128D)を用いた測定実験によって、上記関係式を満たすように駆動パルスのパルス幅Pwb(k)を設定することにより、最大の吐出速度が実現されることが確認された。また、この時、吐出速度と同様に、吐出重量についても高い値が維持されることが確認された。
すなわち、駆動パルスの印加のための間隔Pwi(k−1)に基づいて当該駆動パルスのパルス幅Pwb(k)を設定乃至調整することにより、特には、上記関係式に基づいて駆動パルスのパルス幅Pwb(k)を設定乃至調整することにより、各駆動電圧パルスによるインク滴の吐出特性(吐出速度及び吐出質量)をより良好に維持することができる。
各駆動パルスのパルス幅Pwb(k)は、上記関係式を用いて常に演算されてもよいが、予めパルス間隔Pwi(k−1)毎に
を満たす駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(k)を割り当てたテーブルデータを用意しておけば演算時間を省略できる。そのようなテーブルデータは、例えばROM4a(記憶部)に記憶され得る。
前記のような各駆動パルスのパルス幅Pwb(k)の設定も、例えば静電式インクジェットヘッドの出荷前の段階において行われ得る。あるいは、静電式インクジェットヘッドの使用開始後の調整作業中に行われ得る。各駆動パルスのパルス幅Pwbの設定乃至調整は、階調制御のために利用される可能性がある全てのパルス間隔Pwiに対して行われることが好ましい。
その他、CPU2a等の演算処理能力が許容するのであれば、静電式インクジェットヘッドの使用中の随時に各駆動パルスのパルス幅Pwb(k)の設定乃至調整(補正)が行われてもよい。
ここで、上記関係式の5つのパラメータA、γ、ωc、φ、Bは、実際にPwb(k)及びPwi(k−1)を変えながらインク滴の吐出速度を測定する実験を行って、吐出速度のピークに対応する5組のPwb(k)及びPwi(k−1)を得ることによって求めることができる。
あるいは、実際にPwb(k)及びPwi(k−1)を変えながらインク滴の吐出重量を測定する実験を行って、吐出重量のピークに対応する5組のPwb(k)及びPwi(k−1)を得ることによって求めることができる。
なお、図11に示すような正逆交互通電が採用される場合には、通電方向(電界方向)によっても、インク吐出速度及びインク吐出質量が最大となるパルス幅が異なる場合がある。この場合には、電界方向に応じて、駆動電圧パルスPwのパルス幅Pwbを補正することが好ましい。
また、上記の実施の形態は3ショット/画素印字を行う場合の例であるが、本発明は、3ショット以外のショット数で1画素印字を行う場合にも適用できることは勿論である。
なお、インクジェットヘッド駆動制御装置1あるいはインクジェットヘッド制御部2はコンピュータシステムによって構成され得るが、コンピュータシステムに前記各要素を実現させるためのプログラム及び当該プログラムを記録したコンピュータ読取り可能な記録媒体201も、本件の保護対象である。
さらに、前記の各要素が、コンピュータシステム上で動作するOS等のプログラムによって実現される場合、当該OS等のプログラムを制御する各種命令を含むプログラム及び当該プログラムを記録した記録媒体202も、本件の保護対象である。
ここで、記録媒体201、202とは、フロッピーディスク等の単体として認識できるものの他、各種信号を伝搬させるネットワークをも含む。
なお、以上の説明はインクジェット式記録装置についてなされているが、本発明は、広く液体噴射装置全般を対象としたものである。液体の例としては、インクの他に、グルー、マニキュア、液体電極材料、生体有機物液体等が用いられ得る。更に、本発明は、液晶等の表示体におけるカラーフィルタの製造装置にも適用され得る。
1 インクジェットヘッド駆動制御装置
2 インクジェットヘッド制御部
6 駆動パルス発生回路
8 ヘッド基板
9 ヘッドドライバIC
11 パルス間隔ランク識別回路
12 パルス間隔ランク判別回路
100 インクジェットプリンタ
105 キャリッジ
110 インクジェットヘッド
115 インクノズル
116 インク室
117 インクオリフィス
118 共通インク室
119 振動板電極
121 個別電極(固定側電極)
V3 印字用の駆動電圧パルス信号
Pw 駆動電圧パルス
Pwi(n−1) 駆動電圧パルスPw(n)の印加タイミングを規定するパルス間隔
Pwb(n) 駆動電圧パルスPw(n)のパルス幅
LP 制御信号
REV 極性反転制御信号
2 インクジェットヘッド制御部
6 駆動パルス発生回路
8 ヘッド基板
9 ヘッドドライバIC
11 パルス間隔ランク識別回路
12 パルス間隔ランク判別回路
100 インクジェットプリンタ
105 キャリッジ
110 インクジェットヘッド
115 インクノズル
116 インク室
117 インクオリフィス
118 共通インク室
119 振動板電極
121 個別電極(固定側電極)
V3 印字用の駆動電圧パルス信号
Pw 駆動電圧パルス
Pwi(n−1) 駆動電圧パルスPw(n)の印加タイミングを規定するパルス間隔
Pwb(n) 駆動電圧パルスPw(n)のパルス幅
LP 制御信号
REV 極性反転制御信号
Claims (19)
- 略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、
前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、
前記液体室に連通するノズル開口と、
駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、
前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して、両電極の間に発生する静電気力によって前記振動板電極を振動させることにより前記液体室内の液体の圧力変動を発生させ、当該液体の圧力変動を利用して前記液体室に連通するノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、
を備え、
単位領域当たりの液体噴射を、最大n回(nは2以上の整数)の連続した液体滴の吐出によって行うようになっており、
各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔が個別に設定されており、
各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅が、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて、個別に設定されている
ことを特徴とする静電式液体噴射装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、少なくとも全てが同一ではないように、個別に設定されており、
各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅は、少なくとも全てが同一ではないように、個別に設定されている
ことを特徴とする請求項1に記載の静電式液体噴射装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(k)は、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔Pwi(k−1)に基づいて、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の静電式液体噴射装置。 - パルス間隔Pwi(k−1)毎に
を更に備えたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電式液体噴射装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、各液体滴吐出後の前記振動板電極の残留振動波形に基づいて、個別に設定されている
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電式液体噴射装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの印加開始時点における前記振動板電極の残留振動による変位位置が当該振動板電極が前記固定電極の側に変位を開始する直前における変位零の中立位置であるように、個別に設定されている
ことを特徴とする請求項5に記載の静電式液体噴射装置。 - 略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、
前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、
前記液体室に連通するノズル開口と、
を備えた静電式液体噴射装置を制御する制御装置であって、
駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、
前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して、両電極の間に発生する静電気力によって前記振動板電極を振動させることにより前記液体室内の液体の圧力変動を発生させ、当該液体の圧力変動を利用して前記液体室に連通するノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、
を備え、
前記静電式液体噴射装置に、単位領域当たりの液体噴射を、最大n回(nは2以上の整数)の連続した液体滴の吐出によって行わせるようになっており、
各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔が個別に設定されており、
各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅が、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて、個別に設定されている
ことを特徴とする制御装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、少なくとも全てが同一ではないように、個別に設定されており、
各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅は、少なくとも全てが同一ではないように、個別に設定されている
ことを特徴とする請求項7に記載の制御装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(k)は、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔Pwi(k−1)に基づいて、
ことを特徴とする請求項7または8に記載の制御装置。 - パルス間隔Pwi(k−1)毎に
を更に備えたことを特徴とする請求項7乃至9のいずれかに記載の制御装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、各液体滴吐出後の前記振動板電極の残留振動波形に基づいて、個別に設定されている
ことを特徴とする請求項7乃至10のいずれかに記載の制御装置。 - 各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔は、第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの印加開始時点における前記振動板電極の残留振動による変位位置が当該振動板電極が前記固定電極の側に変位を開始する直前における変位零の中立位置であるように、個別に設定されている
ことを特徴とする請求項11に記載の制御装置。 - 少なくとも1台のコンピュータを含むコンピュータシステムによって実行されて、前記コンピュータシステムに請求項7乃至12のいずれかに記載の制御装置を実現させるプログラム。
- 少なくとも1台のコンピュータを含むコンピュータシステム上で動作する第2のプログラムを制御する命令が含まれており、
前記コンピュータシステムによって実行されて、前記第2のプログラムを制御して、前記コンピュータシステムに請求項7乃至12のいずれかに記載の制御装置を実現させるプログラム。 - 略一定間隔で対向配置されている振動板電極及び固定電極と、
前記振動板電極と前記固定電極との間に形成された液体室と、
前記液体室に連通するノズル開口と、
駆動電圧パルスを生成する駆動電圧パルス生成手段と、
前記振動板電極と前記固定電極との間に前記駆動電圧パルスを印加して、両電極の間に発生する静電気力によって前記振動板電極を振動させることにより前記液体室内の液体の圧力変動を発生させ、当該液体の圧力変動を利用して前記液体室に連通するノズル開口から液体滴を吐出させる駆動制御部と、
を備え、
単位領域当たりの液体噴射を、最大n回(nは2以上の整数)の連続した液体滴の吐出によって行うようになっている
静電式液体噴射装置の初期設定または調整を行う方法であって、
各液体滴を吐出させるために印加される第1番目〜第n番目の各駆動電圧パルスの各パルス間隔を個別に設定するパルス間隔設定工程と、
各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅を、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔に基づいて、個別に設定するパルス幅設定工程と、
を備えたことを特徴とする方法。 - 前記パルス幅設定工程は、各液体滴を吐出させるために印加される第2番目〜第n番目の各駆動電圧パルスのパルス幅Pwb(k)を、当該駆動電圧パルスの印加タイミングを規定するパルス間隔Pwi(k−1)に基づいて、
ことを特徴とする請求項15に記載の方法。 - 前記パルス幅設定工程は、5つのパラメータA、γ、ωc、φ、Bを求めるパラメータ決定工程を含んでいる
ことを特徴とする請求項16に記載の方法。 - 前記パラメータ決定工程は、各液体滴の吐出速度を測定する工程を含んでいる
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。 - 前記パラメータ決定工程は、各液体滴の吐出重量を測定する工程を含んでいる
ことを特徴とする請求項17に記載の方法。
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JP2005089449A JP2006264261A (ja) | 2005-03-25 | 2005-03-25 | 静電式液体噴射装置 |
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