JP2006262932A - バルーンカテーテル - Google Patents

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Abstract


【課題】 バルーンカテーテルにおいてバルーン部の弾性を維持しつつ、かつ硬化した血管内壁に対して膨張するにあたり耐引掻き性や耐穿孔性を向上させる。
【解決手段】アウターシャフト3及び該アウターシャフト3内部に挿入されたインナーチューブ4を有する二重管構造のカテーテルチューブ5と、該カテーテルチューブ5の先端部近傍に固定された中空の膨張可能なバルーン部2とを有し、該バルーン部2が前記カテーテルチューブ5内部を流れる流体により膨張かつ収縮可能なバルーンカテーテルにおいて、前記バルーン部2を、樹脂材料を母材としてこの母材中にコイル状炭素繊維を含有した材料より形成する。
【選択図】 図3

Description

本発明は、医療用途に使用されるバルーンカテーテルに関する。
従来から、バルーンカテーテルを用いた経皮的血管成形術は、血管内腔の狭窄部や閉塞部などを拡張治療し、冠動脈や末梢血管などの血流の回復または改善を目的として広く用いられている。バルーンカテーテルは、一般的にシャフトの先端部に内圧調節により膨張・収縮自在のバルーンを接合してなるものであり、シャフトの内部にはガイドワイヤが挿通される内腔(ガイドワイヤルーメン)と、バルーンの内圧調節用の圧力流体を供給する内腔(インフレーションルーメン)とが長軸方向に沿って設けられている。
ところで、この医療用バルーンカテーテルは、バルーンを血管内で膨張させた時、バルーン表面が血管内壁の硬化した石灰化部分などに接触することにより、バルーン自体が破損することがあった。このような破損事故を防止するため、バルーン表面に強化剤を含有する皮膜をコーティングしてその強度を高めたバルーンカテーテルが知られている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、バルーン表面に強化剤を含有するコーティングを施した上記バルーンカテーテルは、コーティング層により従来のバルーンカテーテルよりも膜厚が増大する傾向にあり、さらに強度を高めようとして強化剤濃度を上げると、バルーンカテーテルを構成するポリマー弾性体としての性質自体を変えてしまい、全体的に剛性が上がり操作性が悪くなるといったような問題を含んでいる。また、バルーンを高い頻度で膨張・収縮させたりすると、表面のコーティングに亀裂が発生したり、コーティング層がバルーン本体より剥離してしまう恐れもある。
また、上述したような破損事故を防止するため、バルーン表面へ強化剤をコーティングさせることなく、バルーン材それ自体に強化用繊維を含ませたバルーンカテーテルも提案されている(例えば特許文献2参照)。
このバルーンカテーテルは、上述したように、繊維状の強化剤を混入させてバルーン材を形成するために、バルーンの弾性(フレキシビリティ)確保上、意図的にバルーンから繊維を排除した部分が多く、耐引掻き性や耐穿孔性という点では問題がある。すなわち、血管に沿ってバルーンを患部まで移送して膨張させようとした場合、仮に血管内壁が石灰化し硬化していると、バルーン膨張時に血管内壁によって繊維の存在しないバルーン部分が引掻かれたり、ともするとバルーンに穴が開いたりする恐れがあるということである。
特表平11−503033号公報 特表2001−50435号公報
本発明は、このような問題点に鑑み、バルーンカテーテルにおいてバルーン部の弾性を維持しつつ、かつ硬化した血管内壁に対して膨張するにあたり耐引掻き性や耐穿孔性を向上させたバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、アウターシャフト及び該アウターシャフト内部に挿入されたインナーチューブを有する二重管構造のカテーテルチューブと、該カテーテルチューブの先端部近傍に固定された中空の膨張可能なバルーン部とを有し、該バルーン部が前記カテーテルチューブ内部を流れる流体により膨張かつ収縮可能なバルーンカテーテルであって、前記バルーン部は、樹脂材料を母材としてこの母材中にコイル状炭素繊維を含有することを特徴とするバルーンカテーテルを提供する。
請求項1の発明によれば、バルーン部の強化剤としてコイル状炭素繊維を母材の樹脂に含有させたことにより、その伸縮性によりバルーン部の弾性を維持しつつ、硬化した血管内壁に対する耐引掻き性及び耐穿孔性を向上させることができる。なお、コイル状炭素繊維自体は公知のものを用いることができる(例えば特許第2721557号)。
以下、図面を参照して、本発明に係るバルーンカテーテルの実施形態を説明する。図1は1実施形態としてのバルーンカテーテルの全体構成図である。
図1に示すバルーンカテーテル1は、たとえば経皮的血管形成術(PTA)に使用されるバルーンカテーテルであって、経皮的アプローチにより血管内部の狭窄部または閉塞病変部位を拡張するために用いられる。以下の説明では本実施形態としてのバルーンカテーテル1をPTAに使用する場合を例にとり説明する。
バルーンカテーテル1は、バルーン部2と、アウターシャフト3及びインナーチューブ4から構成されるカテーテルチューブ5と、カテーテル基部に位置するコネクタ6とを備えている。
バルーン部4は、血管内の狭窄部を拡張するために流体により膨張する内腔を有する筒状体からなり、コネクタ6とは反対側のバルーンカテーテル1の先端側に位置する。
図2は図1の線A−Aに沿うチューブ断面図である。カテーテルチューブ5は、アウターシャフト3及びインナーチューブ4から構成され、インナーチューブ4がアウターシャフト3の内部を貫通した二重管構造を有している。
図1に示すように、バルーンカテーテル1はバルーン部2の内部において、インナーチューブ4の所定部位に造影用マーカー7を備える。この造影用マーカー7はX線不透過材からなり、バルーン部2内のインナーチューブ4の外周面に造影用マーカー7を付けたことで、血管内部でのバルーン部2の位置が、高分解能X線透視下で確認できる。
カテーテルチューブ5とコネクタ6は、カテホルダ8を介して接続される。カテホルダ8は、カテーテルチューブ5の折れ曲がりを防止するストレインリリーフの機能を備え、カテーテルチューブ5を保護する。
カテホルダ8に連なるコネクタ6は、コネクタ本体9と一体化されカテーテルチューブ5に対してストレートな第1コネクタポート10と、同様にコネクタ本体9に一体化されカテーテルチューブ5に対して斜めに延設される第2コネクタポート11を備える。第1コネクタポート10は、カテーテルを血管内に挿入して血管内で移動させるためのガイドワイヤ12(図2)を挿入するものである。第2コネクタポート11は、バルーン部4を膨張させるための空気や薬剤を導入するためのものである。
第1コネクタポート10は、カテーテルチューブ5内においてインナーチューブ4と連通しており、これによりガイドワイヤ12はインナーチューブ4の先端側へと導かれる。一方、第2コネクタポート11は、カテーテルチューブ5内においてアウターシャフト3とインナーチューブ4との間の空間13(図2)に連通しており、これにより第2コネクタポート11を介してカテーテルチューブ5内に導入されたバルーン拡張用流体(空気)は、アウターシャフト3とインナーチューブ4との間の空間を通り、バルーン部2の内腔14に充填される。
さらに、インナーチューブ4の先端部には、インナーチューブ4を形成する材料よりも低硬度な材質で構成される先端柔軟部材15が接合されている。この先端柔軟部材15の柔軟性により、血管の曲がりくねった部分や狭窄の程度が激しい部分においても、血管を傷つけることなくバルーンカテーテル1を容易に挿入することができる。
以上のように構成されるバルーンカテーテル1は、インナーチューブ4の内部のルーメン(通路)を介して先端柔軟部材15の内部にガイドワイヤ12が挿通され、バルーン部2が体腔内に挿入されて、血管内の所定位置に案内される。そしてアウターシャフト3とインナーチューブ4との間の空間13を介して、バルーン部2の内腔に流体が導入され、当該流体によりバルーン部2を膨張させることにより、血管内部の狭窄部の拡張を行うものである。
以下、バルーンカテーテル1のバルーン部2について、さらに詳細に説明する。図3は、バルーン部2及びその周囲を拡大して示したバルーンカテーテル1の部分的断面図である。
図1及び図3に示すバルーン部2は、その中央部に,膨張した状態でアウターシャフト3の外形よりも大きな外径の筒状部分2aを有し、さらにこの筒状部分2aからバルーンカテーテル1の先端側に向けて先細となる先端側テーパ部2bと、筒状部分2aからバルーンカテーテル1のコネクタ側に向けて先細となる後端側テーパ部2cとが一体成形された筒状体である。これら一体成形された先端側テーパ部2b、筒状部分2a及び後端側テーパ部2cにより、バルーン部2の内腔14を形成している。
先端側テーパ部2bはその先端部分において、バルーン部2内腔を貫通してきたインナーチューブ4に接合される。前述の先端柔軟部材15は、この接合部よりもさらに先端側に位置して、その内部にガイドワイヤ12を挿通させる。一方、後端側テーパ部2cはそのコネクタ側後端部分において、最終的にアウターシャフト3の外周面に接合される。
なお、バルーン部2の筒状部分2aは筒状であれば、特に限定されず、その断面は円形または多角形状でもよい。膨張時の外径は、挿入される血管の内径などによって決まり、また筒状部分2aの軸方向長さも、血管部狭窄部の大きさなどによって決定される。なお、好ましくは、膨張前のバルーン部2は、インナーチューブ4の周囲に折り畳まれて巻き付けられ、可能な限り外径が小さくなっている。バルーン部2は、内腔に流体が導入されて容易に膨張可能なように、インナーチューブ4やアウターシャフト3よりも薄い肉厚で構成される。
本発明によれば、バルーン部2を構成する材料は、可撓性を確保しつつ、石灰化された血管内壁に対して耐引掻き性及び耐穿孔性を向上させることを目的とし、バルーンの母材を構成する樹脂にコイル状の炭素繊維を含浸させた材料で構成する。
バルーン部2の母材を構成する樹脂は、たとえばポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレンと他のα-オレフィンとの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル(PVC)、架橋型エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリイミド、ポリイミドエラストマー、シリコンゴム、天然ゴムなどが使用でき、好ましくはポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタンである。
このような樹脂に含浸される炭素繊維は、カーボンマイクロコイル(CMC)とも呼ばれ、炭化水素の気相熱分解により炭素繊維を得る過程で特定の反応条件下で得られるものであり、その形状はコイル状でスプリング特性を有し、ミクロメカニカル素子、クッション材、スイッチング素子などに適用され得るものである。このコイル状炭素繊維(CMC)は、好ましくは繊維直径が0.05〜5μmの実質的に非晶質な炭素からなり、コイル外径が繊維直径の2から10倍、巻数コイル外径が10μmあたりコイル外径(μm)の逆数の5〜50倍の範囲に含まれる非常に小さなコイル状繊維である。したがって、従来の炭素繊維と比較して、その特異形状に起因して伸縮性に富み、かつバルーン部2の母材として使用される樹脂に比較して高い強度及び硬度を有する。
バルーン部2の形成方法について以下に説明する。バルーン部2は、バルーン膜成形用マンドレル(不図示)を、溶液に浸して形成するディッピング法により成形しても良いし、あるいはマンドレルに対してその溶液を吹き付けるブロー成形により成形しても良い。この溶液は、樹脂(例えばポリアミドエラストマー)にCMC(粉末)を混入させたものであるが、本実施形態ではさらにディップ後(またはブロー後)、マンドレルを所定磁場の中に配置し、溶液の冷却過程で各コイル状炭素繊維の軸線がバルーン部2の周方向に沿うように、母材における混入物の方向性をもたせて成形される。図4は、このようにして形成されるバルーン部2の円筒部分2aの一部を拡大し、その内部に含まれるコイル状炭素繊維の配列方向を示した図(イメージ)である。ここでは、各コイル状炭素繊維16は、母材としての樹脂17中において、それぞれのコイル軸線16aが、同図矢印Bで示すバルーン部2aの周方向Bを向くように整列した状態で含有されている。
このようにして、コイル状炭素繊維16の各軸線16aをバルーン部2の周方向Bに略一致させて含有することにより、成形後のバルーン部2は周方向Bに伸縮し易くなり、バルーン膨張時の弾性を特に向上させることができる。またバルーン部2の母材としての樹脂17にコイル状炭素繊維16を含有させることにより、炭素繊維の持つ高強度性によりバルーン部2の耐引掻き性及び耐穿孔性を向上することができる。
なお、以上説明した実施形態は、コイル状炭素繊維の持つ伸縮性を最大限利用して、バルーン部2の拡張時の弾性をさらに向上させたものであるが、母材樹脂に含有されるコイル状炭素繊維の方向性をランダムにしても、コイル状炭素繊維それぞれが持つ伸縮性により、樹脂(例えばポリアミドエラストマー)のみでバルーン部を形成する従来のバルーンカテーテルや、(コイル状でない)炭素繊維を樹脂に含有させたバルーンカテーテルに比較して、バルーン拡張時の弾性およびバルーン部強度を向上することが確認されている。
本発明の利用例として、PTAバルーンカテーテルに限らず、PTCA(経皮的冠動脈形成術)バルーンカテーテルや、狭心症や心筋梗塞などの心臓疾患治療のために大動脈内に挿入されて、心機能の補助作用を行なうようにバルーンが膨張及び収縮するIABPバルーンカテーテルにも適用することができる。
本発明の1実施形態としてのバルーンカテーテルの全体図。 図1の線A−Aに沿ったカテーテルチューブの断面図。 バルーンカテーテルのバルーン部、およびその周囲の断面図。 図3のバルーン部の部分的拡大図。
符号の説明
1:バルーンカテーテル、2:バルーン部、2a:筒状部分、2b:先端側テーパ部、2c:後端側テーパ部、3:アウターシャフト、4:インナーチューブ、5:カテーテルチューブ、6:コネクタ、7:造影用マーカー、8:カテホルダ、9:コネクタ本体、10:第1コネクタポート、11:第2コネクタポート、12:ガイドワイヤ、13:空間、14:内腔、15:先端柔軟部材、16:コイル状炭素繊維、16a:繊維軸線、17:樹脂。

Claims (1)

  1. アウターシャフト及び該アウターシャフト内部に挿入されたインナーチューブを有する二重管構造のカテーテルチューブと、該カテーテルチューブの先端部近傍に固定された中空の膨張可能なバルーン部とを有し、該バルーン部が前記カテーテルチューブ内部を流れる流体により膨張かつ収縮可能なバルーンカテーテルであって、
    前記バルーン部は、樹脂材料を母材としてこの母材中にコイル状炭素繊維を含有することを特徴とするバルーンカテーテル。

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