JP2006257306A - コーティング組成物、薄膜および光学フィルム - Google Patents

コーティング組成物、薄膜および光学フィルム Download PDF

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Abstract

【課題】耐擦傷性が優れた、低屈折率膜を形成可能なコーティング組成物、およびこれを用いた形成された、薄膜または光学フィルムを提供する。
【解決手段】本発明のコーティング組成物は、金属フッ化物微粒子と、バインダと、重合開始剤とを固形成分として含み、金属フッ化物微粒子の表面は、官能基により修飾されており、官能基同士は、前記重合開始剤にエネルギーが付与されると反応して結合可能である。本発明の光学フィルムは、透明基材と、透明基材の一方の主面上に形成され一方の最外層である薄膜とを含み、薄膜は、本発明のコーティング組成物を塗布することにより形成された塗膜にエネルギーを付加して形成されている。本発明の光学フィルムは、例えば、反射防止フィルムである。
【選択図】 図1

Description

本発明は、光学用途に適した透明基材に塗布されるコーティング組成物、およびこれを用いて形成された、薄膜または光学フィルムに関する。
透明基板の表面を、透明基板よりも屈折率が小さい透明膜(反射防止膜)で被覆することにより、反射率を小さくすることができることは従来から知られている。この技術を利用した反射防止フィルムを画像表示装置の表示面に設けて、視認性を向上させることが行われてきた。反射防止フィルムを構成する反射防止膜は、単層または多層からなる。反射防止膜が多層からなる場合、相対的に屈折率が低い低屈折率層と、低屈折率層よりも屈折率が高い高屈折率層とが、光の入射側からこの順に配置される。この反射防止フィルムは、透明基板が表示装置の表示面に面するように使用される。
近年、ディスプレイの大画面化に伴い、反射防止膜の製法は、真空成膜法等の乾式法からコーティング組成物を用いるウェットコーティング方式へと変わりつつある。低屈折率層の形成に用いられるコーティング組成物には、屈折率の低いフッ素樹脂を含むコーティング組成物が用いられることがある。
しかし、フッ素樹脂を含むコーティング組成物を用いた場合、得られた膜の表面強度が低く、耐擦傷性が低いという問題があった。このため、紫外線等の照射により硬化する光硬化性樹脂、または熱により硬化する熱硬化性樹脂を含むコーティング組成物を用い、これらの樹脂をコーティング後に硬化させることによって、膜の表面強度を向上させることが検討されている。
コーティング組成物が、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂を多量に含むと、これを用いて形成された低屈折率層の屈折率が大きくなる。そのため、コーティング組成物には、表面強度を確保しかつ屈折率の上昇を抑えるために、比較的屈折率の低い金属フッ化物微粒子(例えば、フッ化カルシウム微粒子)が添加されることがある(例えば、特許文献1または特許文献2参照)。
特開平03−6265号公報 特開平02−284975号公報
しかし、光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂と、金属フッ化物微粒子とを含むコーティング組成物を用いて形成された膜の表面強度は、十分なものとはえない。
本発明は、耐擦傷性が優れた、低屈折率膜を形成可能なコーティング組成物、およびこれを用いて形成された光学フィルムを提供する。
本発明のコーティング組成物は、金属フッ化物微粒子と、バインダと、重合開始剤とを固形成分として含み、前記金属フッ化物微粒子の表面は、官能基により修飾されており、前記官能基同士は、前記重合開始剤にエネルギーが付与されると反応して結合可能であることを特徴とする。
本発明の薄膜は、本発明のコーティング組成物を用いて形成された塗膜にエネルギーが付与されて形成されたことを特徴とする。
本発明の光学フィルムは、透明基材と、前記透明基材の一方の主面上に形成され一方の最外層として配置された薄膜とを含み、前記薄膜は、本発明のコーティング組成物を用いて形成された塗膜にエネルギーが付与されて形成されたことを特徴とする。
本発明では、耐擦傷性が優れ、低屈折率膜を形成可能なコーティング組成物、およびこれを用いた形成された、薄膜または光学フィルムを提供できる。
(実施形態1)
実施形態1では、本発明のコーティング組成物の一例について説明する。
本実施形態のコーティング組成物は、金属フッ化物微粒子と、バインダと、重合開始剤とを固形成分として含んでいる。金属フッ化物微粒子の表面は、官能基により修飾されている。重合開始剤に熱または光(放射線)等のエネルギーの付与されると、ラジカルやイオン等の活性種が発生する。この活性種が触媒となって、官能基同士が反応して結合する。そのため、本実施形態のコーティング組成物を用いて形成された塗膜に、エネルギーが付与されると、各金属フッ化物微粒子を修飾する官能基同士が結合し、隣り合う金属フッ化物微粒子同士が1対の官能基を介して結合されることとなる。このため、本実施形態のコーティング組成物を用いて形成された薄膜(低屈折率膜)は、物理的強度が高く、耐擦傷性が優れている。
金属フッ化物微粒子の表面を修飾する官能基としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、エポキシ基、またはオキセタニル基等が挙げられる。
官能基による金属フッ化物微粒子表面の修飾は、例えば、金属フッ化物微粒子表面の一部または全部を、上記官能基を有する化合物によって被覆することにより行なわれていてもよいし、金属フッ化物微粒子と上記官能基を有する化合物との化学結合により行われていてもよい。
表面が官能基により修飾された金属フッ化物微粒子は、例えば、少量の有機溶媒中に金属フッ化物微粒子と、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、エポキシ基、またはオキセタニル基を有する化合物とを分散させることにより得ることができる。上記化合物としては、例えば、シランカップリング剤が挙げられる。
金属フッ化物微粒子としては、例えば、フッ化リチウム微粒子、フッ化カルシウム微粒子、およびフッ化マグネシウム微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の微粒子が挙げられる。なかでも、比較的高硬度であり、難水溶性の、フッ化マグネシウムが特に好ましい。
金属フッ化物微粒子の形状について特に制限はないが、例えば、球状、針状、または鱗片状等が挙げられる。金属フッ化物微粒子の好ましい平均粒径は、例えば、3nm〜100nm、特に、30nm〜80nmである。
バインダは、無機バインダ、有機バインダのいずれであってもよい。無機バインダとしては、例えば、シリカゾル等が挙げられる。シリカゾルとしては、例えば、ケイ素アルコキシドと酸触媒またはアルカリ触媒とを出発原料とするシリカゾルが挙げられる。ケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等が用いられる。
有機バインダとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エポキシ樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、セルロース樹脂、ポリブチラール、ポリエステル等を用いることができる。有機バインダは、これらの樹脂が2種以上ブレンドされたポリマーブレンドであってもよい。例えば、金属フッ化物微粒子と相溶性の良いポリマーを1種以上含むポリマーブレンドをバインダとして用いれば、金属フッ化物微粒子がバインダに強く固定され、耐熱性、耐湿性に優れた薄膜を形成できる。
有機バインダは、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂であると好ましい。有機バインダが、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂であると、熱または光(放射線)等のエネルギーを付与して、樹脂同士を、三次元的に架橋させることにより、耐擦傷性がさらに優れた薄膜を提供できる。
光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂としては、例えば、多官能または単官能のモノマー、オリゴマー、プレポリマー、またはポリマー等、従来から知られている各種樹脂を用いればよい。
光硬化性樹脂または熱硬化性樹脂は、後述の実施形態2において説明する、光学フィルムを構成する他の層の形成にも適している。ただし、生産効率の観点からも、光硬化性樹脂が好ましい。
尚、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂を有機バインダとして多量に用いると薄膜の屈折率が大きくなる。したがって、有機バインダは、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂と、これらよりも屈折率の低いフッ素樹脂とを含むポリマーブレンドであると好ましい。
バインダは、重合開始剤にエネルギーが付与されると、金属フッ化物微粒子を修飾する前記官能基と反応して結合可能な官能基を有していると好ましい。そのようなバインダとしては、例えば、1分子中に1個以上、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、エポキシ基、またはオキセタニル基等の官能基を有する、モノマー、プレポリマー、ポリマー等が挙げられる。バインダが上記官能基を有していると、本実施形態のコーティング用組成物を用いて形成された塗膜に、エネルギーが付与されると、金属フッ化物微粒子同士だけでなく、バインダと、表面が官能基によって修飾された金属フッ化物微粒子とが結合して(反応して)、耐擦傷性がより一層優れた薄膜を形成できる。また、バインダが、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種の樹脂であり、さらに、上記官能基を有していると、さらに好ましい。
上記官能基を有する光硬化性樹脂、または上記官能基を有する熱硬化性樹脂としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリト−ルヘキサ(メタ)アクリレ−ト、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、トリメチロ−ルプロパントリ(メタ)アクリレ−ト、ペンタエリスリト−ルテトラ(メタ)アクリレ−ト、トリメチロ−ルプロパントリオキシエチルトリ(メタ)アクリレ−ト、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレ−トトリ(メタ)アクリレ−ト、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン等が用いられる。これらは、単独で用いてもよいし二種以上組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤は、金属フッ化物微粒子を修飾する官能基やバインダの種類に応じて選択すればよいが、例えば、光重合開始剤としては、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、キサントン、フルオレノン、ベンズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3−メチルアセトフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、4,4'−ジアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド等が用いられる。これらは、単独で用いてもよいし二種以上組み合わせて用いてもよい。
熱重合開始剤としては、例えば、BPO(ベンゾパーオキサイド)、t−ブチルパーオキサイド等のパーオキサイド類、AIBN(アゾビスイソブチロニトリル)等のアゾ化合物等が用いられる。
本実施形態のコーティング組成物における各成分の配合割合について、特に制限はないが、例えば、全固形分中に含まれる、バインダと官能基により修飾された金属フッ化物微粒子との総重量を100として、これらの配合割合を百分率で表すと、バインダは40重量%〜70重量%、官能基により修飾された金属フッ化物微粒子は30重量%〜60重量%であると好ましい。全固形分中に含まれる重合開始剤の配合割合は、バインダの重量を100とすると、その3重量%〜15重量%であると好ましい。
本実施形態のコーティング組成物に含まれる溶剤としては、特に制限はないが、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル基含有アルコール類、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のヒドロキシエステル類、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸ブチル等のβ−ケトエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が用いられる。これらの有機溶媒は、単独で用いてもよいし二種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセチルアセトン等のケトン類が好ましい。
本実施形態のコーティング組成物は、必要に応じてフッ素系樹脂またはシリコーンオイル等の各種添加剤を含んでいてもよい。
(実施形態2)
実施形態2では、本発明の薄膜、および光学フィルムおよび光学フィルムの製造方法の一例について説明する。本実施形態では、光学フィルムの一例として反射防止フィルムを例に挙げて説明する。
本実施形態の反射防止フィルム10は、例えば、透明基材1と、透明基材1の一方の主面上に配置された反射防止膜3とを含む。反射防止膜3は、透明基材1側から順に配置された、中屈折率層3a、高屈折率層3b、および低屈折率層3cを含んでいる。反射防止フィルム10の一方の最外層、すなわち低屈折率層3cは、実施形態1で説明したコーティング組成物を用いて形成されている。
図1に示した反射防止フィルム10では、透明基材1上に下地としてハードコート層2が形成されており、透明基材1上には、ハードコート層2を介して反射防止膜3が設けられている。
透明基材1としては、透光性を有していれば特に制限はないが、例えば、透明樹脂フィルム等が用いられる。透明樹脂フィルム1の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のアクリル、ポリカーボネート、ポリウレタン、トリアセチルセルロース等が適している。
ハードコート層2は、透明基材1上に形成された状態でその表面が2H以上の鉛筆強度を有することが好ましく、透明基材よりも表面強度(鉛筆強度)が相対的に高い層が好適である。
ハードコート層2を構成する材料としては、例えば、光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂が適している。
ハードコート層2を構成する材料は、光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂に加えて、無機微粒子をさらに含んでいてもよい。無機微粒子をさらに含むと、より高い表面硬度が得られるとともに、樹脂の硬化による収縮を緩和できる。
無機微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素(シリカ)、錫ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、酸化ジルコニウム等が挙げられるが、なかでも、シリカが好適である。シリカ微粒子の好ましい平均粒径は0.005μm〜1μm、特に0.01μm〜0.1μmである。
無機微粒子の含有量は、ハードコート層2の形成に用いられる膜形成用塗料における全固形成分の、10重量%〜80重量%、特に30重量%〜70重量%であると好ましい。
ハードコート層2の厚みは、1μm〜10μm、特に2μm〜7μmが好適である。薄すぎると硬度の維持が難しくなり、厚すぎるとクラックまたはカール(フィルムの反り)が生じやすくなる。
ハードコート層2の形成方法について特に制限はなく、ロールコート、ダイコート、エアナイフコート、ブレードコート、スピンコート、リバースコート、グラビアコート等の塗工法、またはグラビア印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷等の印刷法により形成できる。これらの方法により形成された塗膜は、例えば、乾燥された後、光や熱等のエネルギーが付与されて、ハードコート層2となる。
中屈折率層3aは、透光性を有し、かつ、その屈折率nmが、1.53〜1.65、さらには1.57〜1.63であると好ましい。中屈折率層3aの形成には、例えば、屈折率が相対的に低屈折率層3cに含まれる無機微粒子よりも高い無機微粒子と、熱硬化性樹脂および/または光硬化性樹脂等とを含む膜形成用塗料が用いられる。膜形成用塗料は、必要に応じて、重合開始剤や、各種添加剤を含んでいてもいよい。
中屈折率層3aに含まれる無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、または酸化セリウム等の微粒子が用いられる。これらの微粒子は、単独で用いてもよいし二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの無機微粒子の好ましい平均粒径は、3nm〜100nm、特に30nm〜80nmである。
中屈折率層3aの形成方法について特に制限はないが、例えば、ハードコート層2の形成と同様の塗工法、または印刷法であってもよい。これらの方法により形成された塗膜は、例えば、乾燥された後、光や熱等のエネルギーが付与されて、中屈折率層3aとなる。
中屈折率層3aの厚さdmは、屈折率nmとその厚さdmとの積nmm(光学厚さ)が110nm〜163nm、さらに好ましくは、125nm〜150nmとなるように設定するとよい。
高屈折率層3bは、透光性を有し、かつ、その屈折率nhが、1.70〜1.95、さらには1.76〜1.84であると好ましい。高屈折率層3bの形成には、例えば、屈折率が相対的に低屈折率層3cに含まれる無機微粒子よりも高い無機微粒子と、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂等とを含む膜形成用塗料が用いられる。必要に応じて、重合開始剤や、各種添加剤を含んでいてもよい。
高屈折率層3bに含まれる無機微粒子としては、例えば、酸化チタン、酸化錫、酸化インジウム、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、アンチモンドープ酸化錫(ATO)、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化アンチモン、酸化亜鉛、酸化錫等の微粒子が用いられる。これらの微粒子は、単独で用いてもよいし二種以上組み合わせて用いてもよい。これらの無機微粒子の好ましい平均粒径は、3nm〜100nm、特に30nm〜80nmである。
高屈折率層3bの形成方法については特に制限はないが、例えば、ハードコート層2の形成と同様の塗工法、印刷法であってもよい。これらの方法により形成された塗膜は、例えば、乾燥された後、光や熱等のエネルギーが付与されて、高屈折率層3bとなる。
高屈折率層3bの厚さdhは、屈折率nhとその厚さdhとの積nhh(光学厚さ)が225nm〜325nm、さらに好ましくは、250nm〜300nmとなるように設定するとよい。
低屈折率層3cの形成方法について特に制限はないが、例えば、ハードコート層2の形成と同様の塗工法、印刷法であってもよい。これらの方法により形成された塗膜は、例えば、乾燥された後、光や熱等のエネルギーが付与されて、低屈折率層3cとなる。
低屈折率層3cの厚さdLは、屈折率nLとその厚さdLとの積nLL(光学厚さ)が110nm〜160nm、さらに好ましくは、125nm〜150nmとなるように設定するとよい。
以上のとおり、本実施形態の反射防止フィルム10の製造方法の一例では、反射防止フィルム10の最外層(低屈折率膜3c)に隣接する層に、実施形態1で説明したコーティング組成物を塗布して塗膜を形成し、上記塗膜を乾燥した後、乾燥後の塗膜にエネルギーを付与して、上記最外層(低屈折率膜3c)を形成する工程、を含んでいる。また、上記最外層(低屈折率膜3c)を形成する前に、透明基材1と最外層(低屈折率膜3c)との間に配置された層2,3a,3bを、当該層の材料を含む膜形成用塗料を当該層に隣接する層に塗布して形成している。
このように、本実施形態の反射防止フィルム10の製造方法の一例は、塗布により各層を透明基材上に形成するので、例えば、スパッタリング法、または蒸着法を用いて各層を形成する場合よりも比較的簡便であり、低コストで反射防止フィルム10を作製できる。
尚、本実施形態の反射防止フィルム10は、図示しない他の層を含んでいても構わない。例えば、透明樹脂フィルム1とハードコート層2との間に配置され、接着性を改善するための下地層(プライマー層)等をさらに備えていてもよい。プライマー層の材料としては、例えば、ポリエステル等が用いられる。
特に、プラズマディスプレイパネル(PDP)の反射防止フィルム10として用いる場合には、可視光域における反射防止特性とともに、赤外域、特に近赤外域における遮蔽特性を重視する必要がある。近赤外域の遮蔽特性は、透明樹脂フィルム1および/またはこのフィルム上に形成された層2,3a〜3cの少なくとも1つに、近赤外線吸収剤を添加することによって得ることができる。これに代えて、または近赤外線吸収剤の添加とともに、図2に示すように、近赤外線吸収層5を形成してもよい。
近赤外線吸収層5は、近赤外線吸収剤を含む樹脂層とするとよく、上記各層と同様、ウェットコーティング方式で成膜するとよい。
近赤外線吸収剤としては、特に制限されないが、シアニン系化合物、フタロシアニン系化合物、ポリメチン系化合物、ジイモニウム系化合物およびアントラキノン系化合物から選ばれる少なくとも1種を用いればよい。
近赤外線吸収層5の厚み、近赤外線吸収剤の種類、含有率等は、波長850nm〜1100nmの全領域において、反射防止フィルム10の分光透過率が20%以下となるように適宜定めればよい。
図1または図2に示した反射防止フィルム10は、3層構造の反射防止膜3を含んでいるが、本実施形態の反射防止フィルムは、これに制限されず、単一の層からなる反射防止膜、または2層構造の反射防止膜、または4以上の層からなる反射防止膜を含んでいてもよい。
単一の層からなる反射防止膜で反射防止を行うには、光学膜厚(屈折率と膜厚の積)を、例えば、λ/4(λ:波長)とすればよい。
2層構造の反射防止膜により反射防止を行う場合であって、人間の視感度の高い波長(約500nm〜600nm)の光の反射率を低減させるためには、透明基材側から高屈折率層、および低屈折率層をこの順に形成し、それぞれの光学膜厚を、例えば、λ/4、λ/4とすればよい。
図1または図2に示したように、3層構造の反射防止膜により反射防止を行う場合であって、広い波長範囲(約400nm〜800nm)の光の反射率を低減させるためには、透明基材側から中屈折率層、高屈折率層、および低屈折率層をこの順に形成し、それぞれの光学膜厚を、例えば、λ/4、λ/2、λ/4とすればよい。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
尚、下記に記載された屈折率は、光学式薄膜計測システム(SCI製、“FilmTek3000”)を用いて測定した値である。
両主面に易接着処理が施された(プライマー層が形成された)、厚さ100μmの紫外線カット性PETフィルムを用意した。一方で、シリカ微粒子含有アクリレート系紫外線硬化性ハードコート剤(JSR(株)製、「デソライト(登録商標)Z7501」)100重量部と、シクロヘキサノン35重量部とを混合攪拌して、膜形成用塗料を得た。この膜形成用塗料を、紫外線カット性PETフィルムの一方の主面に、マイクログラビアコータ(康井精機社製)を用いて塗布した。次いで、塗膜を乾燥させた後、塗膜に紫外線を300mJ/cm2照射して、ハードコート剤を硬化させ、厚さ4μmのハードコート層を形成した。
次に、酸化チタン微粒子スラリー(シーアイ化成(株)製、RTSDNB15WT%−G04)20重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサアルリレート12重量部と、イソプロピルアルコール368重量部とを混合攪拌して、膜形成用塗料を得た。この膜形成用塗料を、上記ハードコート層の表面に、マイクログラビアコータ(康井精機社製)を用いて塗布した。次いで、塗膜を乾燥させた後、塗膜に紫外線を300mJ/cm2照射して、塗膜を硬化させ、中屈折率層を形成した。中屈折率層の厚さは94nmであり、屈折率は1.59であった。
次に、酸化チタン微粒子を含むスラリー(シーアイ化成(株)製、RTSDNB15WT%−G04)16重量部と、日本化薬(株)製の導電性微粒子含有アクリレート系紫外線硬化性塗料84重量部と、1−ブタノール88重量部とを混合攪拌して、膜形成用塗料を得た。この膜形成用塗料を、上記中屈折率層の上にマイクログラビアコータ(康井精機製)を用いて塗布した。次いで、塗膜を乾燥させた後、紫外線を300mJ/cm2照射して、塗膜を硬化させ、高屈折率層を形成した。高屈折率層の厚さは140nmであり、屈折率は1.8であった。
次に、表面がアクリル基で修飾されたフッ化マグネシウム微粒子を含むスラリー(シーアイ化成(株)製、MFDNB15WT%−G37)40重量部と、ペンタエリスリトールトリアクリレート(バインダ)10重量部と、光硬化性フッ素樹脂(バインダ)(ダイキン工業(株)製、AR−100)50重量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE(登録商標)907)5重量部と、アクリル基含有変性シリコーン(信越化学工業(株)製、X−24−8201)1重量部と、メチルイソブチルケトン1330重量部とを混合攪拌して、コーティング組成物Aを得た。
尚、コーティング組成物Aの全固形分中に含まれる、バインダと、表面がアクリル基で修飾されたフッ化マグネシウム微粒子との総重量を100として、これらの配合割合を百分率で表すと、バインダは60重量%、表面がアクリル基で修飾されたフッ化マグネシウム微粒子は40重量%である。全固形分中に含まれる光重合開始剤の配合割合は、バインダの重量を100とすると、その10重量%である。
次に、コーティング組成物Aを、高屈折率層の上にマイクログラビアコータ(康井精機社製)を用いて塗布した。次いで、塗膜を乾燥した後、塗膜に紫外線を300mJ/cm2照射して、塗膜を硬化させ、低屈折率層を形成した。低屈折率層の厚さは98nm、屈折率は1.42であった。
以上のようにして、透明樹脂フィルム上に、ハードコート層、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順に形成された、反射防止フィルムを得た。
コーティング組成物Aの調製の際に用いた、表面がアクリル基で修飾されたフッ化マグネシウム微粒子を含むスラリーに代えて、表面がアクリル基で修飾されたフッ化リチウム微粒子を含むスラリー(シーアイ化成(株)製、LFDNB 15WT%−G03)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
(比較例1)
コーティング組成物Aの調製の際に用いた、表面がアクリル基で修飾されたフッ化マグネシウム微粒子を含むスラリーに代えて、表面が官能基によって修飾されていないシーアイ化成(株)製のフッ化マグネシウム微粒子を含むスラリーを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
(比較例2)
ペンタエリスリトールトリアクリレート10重量部と、光硬化性フッ素樹脂(ダイキン社製)90重量部と、光重合開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、IRGACURE(登録商標)907)5重量部と、アクリル基含有変性シリコーン(信越化学社製、X−24−8201)1重量部と、メチルイソブチルケトン1330重量部とを混合攪拌して、膜形成用塗料を得た。得られた膜形成用塗料を、コーティング組成物Aに代えて用い、低屈折率層を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、反射防止フィルムを得た。
実施例1〜2、比較例1〜2で得られた反射防止フィルムについて、以下の特性評価を行い、その結果を表1に示した。
(1)可視光線波長領域における反射率
分光光度計(日本分光社製、Ubest、V−570型)を用い、低屈折率層を入射側として、可視光線波長領域(380nm〜780nm)における反射率の最低値を測定した。
(2)耐擦傷性
反射防止フィルムの低屈折率層上にスチールウール(#0000)を配置し、新東科学株式会社製、HEIDON(登録商標)−14DRを用いてスチールウールに250g/cm2の荷重を加えながら、低屈折率層の表面を10往復擦った。スチールウールのスライド速度は30mm/sec,ストローク幅は25mmとした。低屈折率層の表面の傷つきの度合いを、目視にて、以下のいずれに該当するか判定した。
A:無傷、B:傷1〜5本、C:傷6〜15本、D:傷15本以上、E:完全に剥離
Figure 2006257306
表1から明らかなように、低屈折率層が、表面が官能基により修飾された金属フッ化物微粒子を含むコーティング組成物を用いて形成された反射防止フィルム(実施例1および2)は、耐擦傷性が優れていることが分かる。
本発明は、耐擦傷性が優れた、低屈折率膜を形成可能なコーティング組成物、およびこれを用いて形成された、薄膜または光学フィルムを提供でき、本発明のコーティング組成物は、例えば、陰極線管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP),液晶パネル(LCD)、エレクトロルミネッセンス素子(EL)等のデイスプレイデバイスやタッチパネル等の表示面に用いられる、反射防止フィルムの材料として有用である。
実施形態2の反射防止フィルムの一例を示す断面図 実施形態2の反射防止フィルムの他の例を示す断面図
符号の説明
1 透明基材(透明樹脂フィルム)
2 ハードコート層
3 反射防止膜
3a 中屈折率層
3b 高屈折率層
3c 低屈折率層
10 反射防止フィルム
5 近赤外線吸収層

Claims (11)

  1. 金属フッ化物微粒子と、バインダと、重合開始剤とを固形成分として含み、
    前記金属フッ化物微粒子の表面は、官能基により修飾されており、
    前記官能基同士は、前記重合開始剤にエネルギーが付与されると反応して結合可能であることを特徴とするコーティング組成物。
  2. 前記金属フッ化物微粒子は、フッ化リチウム微粒子、フッ化カルシウム微粒子、およびフッ化マグネシウム微粒子からなる群から選ばれる少なくとも1種の微粒子である請求項1に記載のコーティング組成物。
  3. 前記官能基は、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、エポキシ基、およびオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載のコーティング組成物。
  4. 前記バインダは、光硬化性樹脂および熱硬化性樹脂から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載のコーティング組成物。
  5. 前記バインダは、前記重合開始剤にエネルギーが付与されると、前記金属フッ化物微粒子を修飾する前記官能基と反応して結合可能な官能基を有する請求項1に記載のコーティング組成物。
  6. 前記バインダが有する前記官能基は、ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、エポキシ基、およびオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載のコーティング組成物。
  7. 請求項1〜6のいずれかの項に記載のコーティング組成物を用いて形成された塗膜にエネルギーが付与されて形成されたことを特徴とする薄膜。
  8. 透明基材と、前記透明基材の一方の主面上に形成され一方の最外層として配置された薄膜とを含み、
    前記薄膜は、請求項1〜6のいずれかの項に記載のコーティング組成物を用いて形成された塗膜にエネルギーが付与されて形成されたことを特徴とする光学フィルム。
  9. 前記光学フィルムは、反射防止フィルムである請求項8に記載の光学フィルム。
  10. 前記光学フィルムは、前記透明基材の一方の主面上に形成され、高屈折率層と低屈折率層とを含む反射防止膜を含み、
    前記低屈折率層が、前記最外層として配置された請求項9に記載の光学フィルム。
  11. 前記透明基材上に、ハードコート層を介して前記反射防止膜が形成された請求項10に記載の光学フィルム。
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