JP2006256939A - 窒化ケイ素粉末の製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 本発明は、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素粉末を安価に得ることのできる改良された窒化ケイ素粉末の製造法を提供する。
【解決手段】 還元窒化法における窒化ケイ素粉末の製造法において、出発原料としてシリカ粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末が付着している複合粒子粉末を用いる窒化ケイ素粉末の製造法である
【選択図】 なし

Description

本発明は、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素粉末を安価に得ることのできる改良された窒化ケイ素粉末の製造法を提供する。
窒化ケイ素は酸化物セラッミックスと比べると軽量且つ高温における強度や靭性そして耐熱衝撃性等に優れるため、自動車用エンジン部品やガスタービン等の高温構造用材料として注目されている。これらの用途では、1400℃付近の高温下においても機械的強度を維持することが求められており、窒化ケイ素に対しては、α化率が高く、平均粒子径が1μm以下、且つ、不純物濃度のできる限り低いものが望まれている。
周知の通り、窒化ケイ素粉末の製造法としては、大別して1)直接窒化法、2)イミド分解法、3)還元窒化法が挙げられる。これらの製造法の中で、還元窒化法は、反応操作が比較的容易であること、装置を腐食したり、爆発等の危険性のある原料を用いないこと及び粒子形態が比較的揃っていること等、工業的に有利な方法として注目されているが、一方、原料としてシリカとカーボンを使用するため、酸素と残留カーボンの低減、即ち、高窒化率及び不純物の低減が強く求められている。
これまでに、還元窒化法による窒化ケイ素粉末の製造法としては、出発原料として酸化ケイ素と炭素粉末とを湿式ボールミルで混合する際にMg化合物を添加して用いる方法(特許文献1)、シリカと炭素を生成する結合剤及び炭素との集塊混合物からなる顆粒を出発原料とする方法(特許文献2)、シリカを含有するセラミックス材料の表面にカーボンブラック等をふりかけけたものを用いる方法(特許文献3)及び結晶性シリカ粉末と炭素粉末と窒化ケイ素粉末とを混合したものを出発原料として用いる方法(特許文献4)が開示されている。
特開昭61−77608号公報 特開昭62−241810号公報 特開2002−128597号公報 特表平9−511981号公報
比較的安価な製造法でありながら、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素粉末を得ることのできる製造法は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
即ち、特許文献1乃至4には、還元窒化法による窒化ケイ素粉末の製造法の出発原料として、シリカと炭素粉末との混合物を用いているが、いずれの方法においても、シリカ粒子とカーボンブラック等の炭素成分を単に混合しただけであり、シリカ粒子の粒子表面に炭素成分が均一に存在していないため、下記反応式1に示すシリカ粒子からの炭素による脱酸素反応が不均一・不十分となり、高窒化率の窒化ケイ素粉末を得ることが困難である。
<反応式1>
3SiO+6C+2N → Si+6CO
そこで、本発明は、比較的安価な製造法でありながら、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素粉末を得ることのできる製造法を提供することを技術的課題とする。
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、還元窒化法における窒化ケイ素粉末の製造法において、シリカ粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末が付着している複合粒子粉末を出発原料として用いることにより、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素粉末を安価に得ることができることを見いだし、本発明をなすに至った。
即ち、本発明は、還元窒化法における窒化ケイ素粉末の製造法において、出発原料としてシリカ粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末が付着している複合粒子粉末を用いることを特徴とする窒化ケイ素粉末の製造法である(本発明1)。
また、本発明は、複合粒子粉末のシリカ粒子粉末と炭素粉末の重量割合が1.0:0.4〜1.0:1.0であることを特徴とする本発明1の窒化ケイ素粉末の製造法である(本発明2)。
本発明に係る窒化ケイ素粉末の製造法は、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素を安価に得ることができるので、自動車用エンジン部品やガスタービン等の高温構造用材料用窒化ケイ素粉末の製造法として好適である。
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
先ず、本発明に係る窒化ケイ素粉末の製造法について述べる。
本発明における高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素粉末は、還元窒化法における窒化ケイ素粉末の製造法において、シリカ粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末が付着している複合粒子粉末を出発原料として用いることにより得ることができる。
本発明におけるシリカ粒子粉末としては、無水ケイ酸、含水ケイ酸、無水ケイ酸塩及び含水ケイ酸塩等のホワイトカーボンや、シリカゲルのような、シリカを主成分としている物質であれば、いずれをも用いることができる。得られる窒化ケイ素の純度を考慮すれば、塩等を含まない無水ケイ酸及び含水ケイ酸が好ましい。
シリカ粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、不定形、針状及び板状等のいずれの形状であってもよい。シリカ粒子表面への炭素粉末の処理の均一化を考慮すれば、粒子形状は球状もしくは粒状が好ましい。
シリカ粒子粉末の粒子サイズは、平均粒子径が0.001〜1.0μm、好ましくは0.002〜0.5μm、より好ましくは0.003〜0.2μmである。
平均粒子径が1.0μmを超える場合には、炭素粉末と接触していない粒子内部のSiOの割合が増えるため、得られる窒化ケイ素粉末の窒化率が低減することがある。平均粒子径が0.001μm未満の場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすくなるため、表面改質剤を介したシリカ粒子表面への均一な炭素粉末付着処理が困難となる。
シリカ粒子粉末のBET比表面積値は3m/g以上が好ましく、より好ましくは6m/g以上であり、更により好ましくは15m/g以上である。BET比表面積値が3m/g未満の場合には、シリカ粒子が粗大であり、炭素粉末と接触していない粒子内部のSiOの割合が増えるため、得られる窒化ケイ素粉末の窒化率が低減する。表面改質剤を介したシリカ粒子表面への均一な炭素粉末付着処理を考慮すると、その上限値は800m/gが好ましく、より好ましくは600m/g、更により好ましくは400m/gである。
シリカ粒子粉末としては、粒子粉末中の含水率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。シリカ粒子粉末中の含水率が10%を超える場合には、未反応のシリカが残存し易くなり、窒化率が低下するため好ましくない。
本発明における表面改質剤としては、シリカ粒子の粒子表面へ炭素粉末を付着できるものであれば何を用いてもよく、好ましくはアルコキシシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、高分子化合物等が好適に用いられる。
有機ケイ素化合物としては、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ―メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸コポリマー、オレフィン−マレイン酸コポリマー等が挙げられる。
表面改質剤の被覆量は、シリカ粒子粉末に対してC換算で0.01〜15.0重量%が好ましい。0.01重量%未満の場合には、シリカ粒子粉末100重量部に対して40重量部以上の炭素粉末を付着させることが困難である。0.01〜15.0重量%の被覆によって、シリカ粒子粉末100重量部に対して炭素粉末を40〜100重量部付着させることができるため、必要以上に被覆する意味がない。より好ましくは0.02〜12.5重量%、更に好ましくは0.03重量%〜10.0重量%である。
本発明における炭素粉末としては、ファーネスブラック、チャンネルブラック及びアセチレンブラック等のカーボンブラック粒子粉末及び黒鉛粉末を用いることができる。
本発明における炭素粉末の付着量は、シリカ粒子粉末100重量部に対して40〜100重量部である。40重量部未満の場合には、シリカ粒子に対する炭素成分が少なすぎるため、カーボンによるSiOからの脱酸素反応が不十分となり、未反応のSiOが残存するため窒化率を低下させることとなる。一方、100重量部を超える場合には、反応に寄与せず不純物として残存する炭素成分量が多くなるため、高純度化に対して不利となるため好ましくない。得られる窒化ケイ素粉末の高窒化率及び高純度化を考慮すれば、シリカ粒子粉末100重量部に対する炭素粉末の付着量は、42〜90重量部が好ましく、より好ましくは44〜80重量部である。
本発明における複合粒子粉末は、シリカ粒子粉末と表面改質剤とを混合し、シリカ粒子粉末の粒子表面を表面改質剤によって被覆し、次いで、表面改質剤によって被覆されたシリカ粒子粉末と炭素粉末とを混合することによって得ることができる。
シリカ粒子粉末の粒子表面への表面改質剤による被覆は、シリカ粒子粉末と表面改質剤又は表面改質剤の溶液とを機械的に混合攪拌したり、シリカ粒子粉末に表面改質剤の溶液又は表面改質剤を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。
シリカ粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌、炭素粉末と粒子表面に表面改質剤が被覆されているシリカ粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができ、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミル等がある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウターミキサー等がある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダー等がある。
シリカ粒子粉末と表面改質剤との混合攪拌時における条件は、シリカ粒子粉末の粒子表面に表面改質剤ができるだけ均一に被覆されるように、線荷重は19.6〜1960N/cm、好ましくは98〜1470N/cm、より好ましくは147〜980N/cm、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
シリカ粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を被覆した後、炭素粉末を添加し、混合攪拌して表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末を付着させる。必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。
炭素粉末は、少量ずつを時間をかけながら、殊に5分〜24時間、好ましくは5分〜20時間程度をかけて添加するか、もしくは、シリカ粒子粉末100重量部に対して5〜25重量部の炭素粉末を、所望の添加量となるまで分割して添加することが好ましい。
混合攪拌時における条件は、炭素粉末が均一に付着するように、線荷重は19.6〜1960N/cm、好ましくは98〜1470N/cm、より好ましくは147〜980N/cm、処理時間は5分〜24時間、好ましくは10分〜20時間の範囲で処理条件を適宜調整すればよい。なお、撹拌速度は2〜2000rpm、好ましくは5〜1000rpm、より好ましくは10〜800rpmの範囲で処理条件を適宜調整すればよい。
乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜80℃が好ましく、より好ましくは50〜70℃であり、加熱時間は、10分〜6時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
なお、表面改質剤としてアルコキシシランもしくはシランカップリング剤を用いた場合には、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランもしくはシランカップリング剤から生成するオルガノシラン化合物となって被覆されている。
本発明における複合粒子の粒子形状や粒子サイズは、シリカ粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、シリカ粒子に相似する粒子形態を有している。
本発明における複合粒子粉末の粒子形状は、球状、粒状、不定形、針状及び板状等のいずれの形状であってもよい。
本発明における複合粒子粉末の粒子サイズは、平均粒子径が0.001〜1.0μm、好ましくは0.002〜0.5μm、より好ましくは0.003〜0.2μmである。平均粒子径が1.0μmを超える場合には、炭素粉末と接触していない粒子内部のSiOの割合が増えるため、得られる窒化ケイ素粉末の窒化率が低減する。
本発明における複合粒子粉末のBET比表面積値は3〜800m/gが好ましく、より好ましくは6〜600m/gであり、更により好ましくは15〜400m/gである。BET比表面積値が3m/g未満の場合には、シリカ粒子が粗大であり、炭素粉末と接触していない粒子内部のSiOの割合が増えるため、得られる窒化ケイ素粉末の窒化率が低減する。
本発明における複合粒子粉末中のシリカ粒子に対する含水率は10%以下であることが好ましく、より好ましくは7%以下であり、より好ましくは5%以下である。複合粒子粉末中の含水率が10%を超える場合には、未反応のシリカが残存し易くなり、窒化率が低下するため好ましくない。
本発明における複合粒子粉末の炭素粉末の脱離率は20%以下が好ましく、より好ましくは15%以下、更により好ましくは10%以下である。炭素粉末の脱離率が20%を超える場合には、シリカと接触することなく不均一に存在する炭素粉末が多くなるため、得られる窒化ケイ素粉末の窒化率が低下する。
本発明における窒化ケイ素粉末は、前述のシリカ粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末が付着している複合粒子粉末を出発原料として用い、必要に応じて種晶として窒化ケイ素粉末を添加し、窒素雰囲気下、所定の温度で加熱焼成することにより還元・窒化することにより得ることができる。必要に応じて、更に、酸化性雰囲気下600〜800℃で加熱することにより脱炭素処理、及び/又はフッ酸などによる残存シリカの溶解・除去処理を行ってもよい。
出発原料としての複合粒子粉末は、必要に応じて予め造粒体を形成しておいてもよい。造粒体を形成しておくことで、得られる窒化ケイ素のハンドリング性を改善することができる。造粒の方法は、圧縮造粒、押出し造粒、転動造粒、噴霧造粒等が挙げられる。
造粒体を形成する際に用いるバインダーとしては、得られる窒化ケイ素中に不純物として残存しないものが好ましい。具体的には、でんぷん、ポリビニルアルコール、フェノール樹脂等を用いることができる。
窒素雰囲気を形成するためのガスとしては、Nガス、NHガスもしくはこれらとArガス等の不活性ガスとの混合系を用いることができるが、装置の腐食等工業性を考慮した場合、Nガスが好ましい。
本発明における種晶としては、平均粒子径が1.0μm以下であり、α化率が90%以上である窒化ケイ素粉末を用いることが好ましい。種晶に用いる窒化ケイ素粉末のα化率が高いほど、得られる窒化ケイ素粉末のα化率も高くなることから、種晶の窒化ケイ素粉末のα化率は、より好ましくは92%以上である。
本発明における種晶の添加量は、シリカ粒子粉末100重量部に対して1〜60重量部が好ましく、より好ましくは2〜50重量部、更により好ましくは5〜40重量部である。1重量部未満の場合には、得られる窒化ケイ素粉末のα化率が低下すると共に、非常に微細な窒化ケイ素粉末が生成するため好ましくない。60重量部を超える場合には、得られる窒化ケイ素粉末の収率が低下し工業的に不利となる。
窒素雰囲気下の加熱焼成温度は、1350〜1550℃の範囲が好ましく、より好ましくは1400〜1500℃、更により好ましくは1425〜1475℃である。加熱焼成温度が1350℃以下の場合は、窒化ケイ素粉末の生成反応が起こりにくく工業的に不利となる。1550℃以上の場合には、炭化ケイ素が生成し、得られる窒化ケイ素粉末の純度が低下するため好ましくない。
窒素雰囲気下の加熱焼成による還元窒化反応の終点判定は、反応炉内のCO発生量をモニタリングすることにより行い、CO発生量が好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下、更により好ましくは10ppm以下となった時点を終点とした。
本発明における窒化ケイ素粉末は、必要により、上述の還元窒化処理後冷却したものを、脱炭素処理のために、更に酸化性雰囲気下、600〜800℃の温度範囲で1時間以上、好ましくは3時間以上加熱処理を行う。
本発明の製造法によって得られる窒化ケイ素粉末は、製造条件により、粒状、不定形、六面体、棒状、針状及び板状等、様々な粒子形状のものを得ることができる。
本発明の製造法によって得られる窒化ケイ素粉末の粒子サイズは、0.05〜2.00μmであり、好ましくは0.08〜1.5μm、より好ましくは0.10〜1.0μmである。
本発明の製造法によって得られる窒化ケイ素粉末のBET比表面積値は、1〜30m/gが好ましく、より好ましくは3〜20m/gである。
本発明の製造法によって得られる窒化ケイ素粉末の特性のα化率は90%以上であり、好ましくは93%以上、より好ましくは96%以上である。
本発明の製造法によって得られる窒化ケイ素粉末の窒化率は37%以上であり、好ましくは38%以上、より好ましくは39%以上である。上限値は理論値より39.94%である。
本発明の製造法によって得られる窒化ケイ素粉末の残留炭素は1.5%以下であり、好ましくは1.3%以下、より好ましくは1.1%以下である。
<作用>
本発明において最も重要な点は、還元窒化法における窒化ケイ素粉末の製造法において、シリカ粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末が付着している複合粒子粉末を出発原料として用いることにより、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素粉末を安価に得ることができるという事実である。
本発明に係る製造法によって得られた窒化ケイ素粉末が高い窒化率を有する理由として、本発明者は次のように考えている。還元窒化法による窒化ケイ素粉末の生成は下記式2に示す反応であり、最初に、炭素によりSiOが還元され、次いで、窒化反応が起こることが知られている。本発明の製造法によれば、炭素供給源となる炭素粉末がシリカ粒子粉末の粒子表面に表面改質剤を介して均一に付着している複合粒子粉末を出発原料として用いることにより、従来のシリカ粒子粉末とカーボンブラック等の炭素成分とを単に混合したものに比べて、シリカ粒子からの炭素による還元反応が均一に起こることにより、高窒化率の窒化ケイ素を得ることができたものと推定している。また、複合粒子粉末中のシリカ粒子の含水率が低いものを選ぶことによっても、窒化率を向上させることができる。
<式2>
3SiO+6C+2N → Si+6CO
以下、本発明における実施例を示し、本発明を具体的に説明する。
シリカ粒子粉末、炭素粉末、複合粒子粉末及び窒化ケイ素粉末の平均粒子径は、いずれも電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
シリカ粒子粉末及び複合粒子粉末中のシリカ粒子粉末の含水率は、1000℃で2時間灼熱前後のシリカ粒子粉末の重量を測定し、下記数1に従って求めた値で示した。なお、複合粒子粉末の場合は、予め、後述する方法により付着している炭素粉末と表面改質剤の量を測定し、複合粒子粉末の重量から差し引くことによって複合粒子粉末中のシリカ粒子の重量を算出しておくことによって求める。
<数1>
シリカ粉末の含水率(%)={(Wa−We)/Wa}×100
Wa:シリカ粒子粉末の重量
We:1000℃で2時間灼熱後のシリカ粒子粉末の重量
シリカ粒子粉末の粒子表面に被覆されている表面改質剤の被覆量及びシリカ粒子粉末に付着している炭素粉末の付着量は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
複合粒子粉末に付着している炭素粉末の脱離率(%)は、下記の方法により求めた値で示した。炭素粉末の脱離率が0%に近いほど、粒子表面からの炭素粉末の脱離量が少ないことを示す。
複合粒子粉末3gとエタノール40mlを50mlの沈降管に入れ、20分間超音波分散を行った後、120分静置し、比重差によって複合粒子粉末と脱離した炭素粉末を分離した。次いで、この複合粒子粉末に再度エタノール40mlを加え、更に20分間超音波分散を行った後120分静置し、複合粒子粉末と脱離した炭素粉末を分離した。この複合粒子粉末を100℃で1時間乾燥させ、前述の「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定し、下記数2に従って求めた値を炭素粉末の脱離率(%)とした。
<数2>
炭素粉末の脱離率(%)={(Wa−We)/Wa}×100
Wa:複合粒子粉末の炭素粉末付着量
We:脱離テスト後の複合粒子粉末の炭素粉末付着量
窒化ケイ素粉末のα化率(%)は、CuKα線によりX線回折を行い、α相の(102)面の回折強度Ia102と(210)面の回折強度Ia210、β相の(101)面の回折強度Ib101と(210)面の回折強度Ib210より下記数3に従って算出した。
<数3>
α化率(%)=(Ia102+Ia210)/(Ia102+Ia210+Ib101+Ib210)×100
窒化ケイ素粉末の窒化率(重量%)は、「O/N分析計 TC−436」(LECO株式会社製)を用いて測定を行った。
窒化ケイ素粉末の残留炭素(T−C)(重量%)は、「堀場金属炭素・硫黄分析装置EMIA−2200型」(株式会社堀場製作所製)を用いて炭素量を測定することにより求めた。
<複合粒子1:複合粒子粉末の製造>
シリカ粒子粉末(シリカ粒子1)(粒子形状:球状、平均粒子径:0.012μm、BET比表面積値:209.5m/g、含水率0.4%)10kgに、メチルハイドロジェンポリシロキサン(商品名:TSF484:GE東芝シリコーン株式会社製)400gを、エッジランナーを稼動させながらシリカ粒子粉末に添加し、588N/cmの線荷重で40分間混合攪拌を行った。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
次に、炭素粉末(種類:カーボンブラック、粒子形状:粒状、粒子径0.022μm、BET比表面積値133.5m/g)4.5kgを、エッジランナーを稼動させながら10分間かけて添加し、更に588N/cmの線荷重で60分間混合攪拌を行い、メチルハイドロジェンポリシロキサン被覆にカーボンブラックを付着させた後、乾燥機を用いて105℃で60分間乾燥を行い、複合粒子粉末を得た。なお、この時の攪拌速度は22rpmで行った。
得られた複合粒子粉末は、平均粒子径が0.015μmの粒状粒子であった。BET比表面積値は146.8m/gであり、複合粒子粉末中のシリカ粒子の含水率は0.21重量%、炭素粉末の脱離率は5.3%、SiOとCの重量配合割合は1.0:0.448であった。電子顕微鏡写真の観察結果より、カーボンブラックがほとんど認められないことから、カーボンブラックのほぼ全量がメチルハイドロジェンポリシロキサン被覆を介してシリカ粒子粉末の粒子表面に付着していることが認められた。
<実施例1:窒化ケイ素粉末の製造>
前記複合粒子粉末100重量部を出発原料とし、種晶としてα化率92%、平均粒子径0.66μmの窒化ケイ素粉末を6.71重量部(複合粒子粉末中のSiO 100重量部に対して10重量部)を混合して黒鉛製容器に入れ、Nガスを流しながら1450℃で5時間加熱焼成を行い、還元窒化処理を行った。反応終了時のCO濃度は9ppmであった。得られた粉末を、空気中700℃で3時間加熱処理を行い、未反応炭素を燃焼除去して窒化ケイ素粉末を得た。
得られた窒化ケイ素粉末は、平均粒子径が0.86μmの粒状粒子であった。BET比表面積値は6.8m/gであり、α化率は98.1%、窒化率は39.1重量%、残留炭素(T−C)は0.96重量%であった。
前記複合粒子1〜実施例1に従って出発原料としての複合粒子粉末及び窒化ケイ素粉末を作製した。各製造条件及び得られた複合粒子粉末及び窒化ケイ素粉末の諸特性を示す。
シリカ粒子1〜3:
シリカ粒子粉末として表1に示す特性を有するシリカ粒子粉末を用意した。
Figure 2006256939
炭素粉末A〜C:
炭素粉末として表2に示す特性を有する炭素粉末を用意した。
Figure 2006256939
<複合粒子>
複合粒子2〜3、比較複合粒子1:
シリカ粒子粉末の種類、表面改質剤による被覆工程における添加物の種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間、炭素粉末の付着工程における炭素粉末の種類、添加量、エッジランナー処理の線荷重及び時間を種々変化させた以外は、前記複合粒子1と同様にして複合粒子粉末を得た。
このときの製造条件を表3に、得られた複合粒子粉末の諸特性を表4に示す。なお、表4に示した含水率は、シリカ粒子粉末に対する重量%で示した。
Figure 2006256939
Figure 2006256939
<窒化ケイ素の製造法>
実施例2〜3、比較例1:
出発原料の種類、種晶の配合割合、還元窒化処理における反応温度及び反応時間、脱炭素処理における加熱温度及び加熱時間を種々変化させた以外は、前記実施例1の窒化ケイ素の製造と同様にして窒化ケイ素粉末を得た。
このときの製造条件を表5に、得られた窒化ケイ素粉末の諸特性を表6に示す。なお、表5に示した含水率は、シリカ粒子粉末100重量部に対する配合割合で示した。
Figure 2006256939
Figure 2006256939
本発明に係る窒化ケイ素粉末の製造法は、高い窒化率及び高α化率を有すると共に、不純物が少なく微粒子からなる窒化ケイ素を安価に得ることができるので、自動車用エンジン部品やガスタービン等の高温構造用材料用窒化ケイ素粉末の製造法として好適である。

Claims (2)

  1. 還元窒化法における窒化ケイ素粉末の製造法において、出発原料としてシリカ粒子粉末の粒子表面が表面改質剤によって被覆されていると共に該表面改質剤被覆シリカ粒子表面に炭素粉末が付着している複合粒子粉末を用いることを特徴とする窒化ケイ素粉末の製造法。
  2. 複合粒子粉末のシリカ粒子粉末と炭素粉末の重量割合比が1.0:0.4〜1.0:1.0であることを特徴とする請求項1記載の窒化ケイ素粉末の製造法。
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