JP2006249244A - 摩擦材 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 石油コークスおよび/またはピッチコークス、熱硬化性樹脂、無機材料、および発泡剤を含有し、微細気泡構造を有する摩擦材。
【選択図】なし
Description
このシンクロナイザーリングの形成材料には、一般に黄銅(Cu−Zn合金)が用いられており、前記ギヤコーンと接触する内周面には、摩擦力付与のためのリング状条溝や潤滑油を逃がすための縦溝が必要に応じて形成されている。
また、該内周面上にモリブデンやセラミクス等の高融点材料を溶射し、シンクロナイザーリング本体に溶射層を固着させるものも知られている。
本発明はかかる従来技術における要求を満たすためになされたものである。
(1) (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、(ハ)無機材料、および(ニ)発泡剤を含有することを特徴とする摩擦材原料、
(2) 無機材料が、無機粒子、無機繊維、金属粒子または金属繊維であることを特徴とする(1)に記載の摩擦材原料、
(3) さらに、有機粒子または有機繊維を含有すること特徴とする(1)または(2)に記載の摩擦材原料、
(4) 粒材である(1)〜(3)のいずれかに記載の摩擦材原料、
(5) (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、および(ハ)無機材料を含有し、微細気孔構造を有し、気孔率が10〜30%であることを特徴とする摩擦材、
(6) (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、および(ハ)無機材料、および(ニ)発泡剤を含有する粒材を、充填率70%以上〜100%未満で型に充填し、加圧下に加熱して得られる摩擦材、
(7) 粒材をシンクロナイザーリング、または湿式クラッチ板と共に型に充填し、粒材とシンクロナイザーリングまたはクラッチ摩擦面とを接触させることを特徴とする(6)記載の摩擦材、
(8) 無機材料が、無機粒子、無機繊維、金属粒子または金属繊維であることを特徴とする(5)〜(7)のいずれかに記載の摩擦材、
(9) さらに、有機粒子または有機繊維を含有すること特徴とする(5)〜(8)のいずれかに記載の摩擦材、
(10) 粒材が、灰分含量が0.1〜1質量%である石油コークスおよび/または灰分含量が5〜8質量%であるピッチコークスを粒材全体に対し30〜80質量%含み、さらに、熱硬化性樹脂を10〜30質量%、無機粒子および/または無機繊維を5〜40質量%、および黒鉛を5質量%以下含み、さらに前記石油コークスおよび/またはピッチコークスの50%以上が粒径0.1〜0.5mmであり、発泡剤が熱硬化性樹脂全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜17質量%含む粒材であることを特徴とする(4)記載の摩擦材原料または(6)記載の摩擦材、
(11) (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、および(ハ)無機材料、および(ニ)発泡剤を含有する粒材を、シンクロナイザーリング、または湿式クラッチ板と共に充填率70%以上〜100%未満で型に、粒材とシンクロナイザーリングまたはクラッチ摩擦面とを接触するように充填し、加圧下に加熱することを特徴とする摩擦材の製造方法および、
(12) (5)〜(10)に記載の摩擦材の層を摩擦面に形成してなるシンクロナイザーリングまたは湿式クラッチ、
に関する。
本発明における灰分含量の測定は、JIS M 8511:1976にしたがって行われる。
石油コークスとしては、灰分含量0.1〜1質量%のか焼石油コークスがより好ましい。
ピッチコークスとしては、灰分含量5〜8質量%の鋳物用コークスが最も好ましい。
石油コークスまたはピッチコークスの摩擦材原料に対する含有量は好ましくは30〜80質量%、より好ましくは50〜75質量%である。30質量%未満であると動摩擦係数が低く、80質量%を超えると摩擦材層の強度不足をもたらす。
無機粒子や無機繊維としては、例えば、アルミナ、炭化珪素、ガラス、ロックウール、ゼオライト、バーミキュライト、ウォラストナイト、炭酸カルシウムなどから構成される粒子や繊維が挙げられる。摩擦材全体に対する好ましい使用割合は5〜40質量%である。5質量%未満では摩擦材の強度不足をもたらし、40質量%を超えると摩擦材の柔軟性が無くなり歯車の摺動面に傷を付け易くなる。
無機発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムなどが挙げられる。
膨張型マイクロカプセルとしては、例えば、塩化ビニリデン樹脂で低沸点炭化水素(例えばヘキサン、トルエン等)をカプセル化したものなどが挙げられる。
前記発泡剤を前記範囲にて摩擦材原料に含有させることによって、目的とする摩擦材の気孔率が増大する。例えば、気孔率10〜30%の摩擦材が得られる。
上記において、摩擦材原料の製造に使用される成分の使用量は、質量%による範囲で記載してあるが、成分の使用量は、その範囲から発泡剤および/または発泡助剤を除き、全成分の使用量が100質量%となるよう適宜に選択される。上述の通り、発泡剤の使用量は熱硬化性樹脂全体に対して、通常約1〜30質量%、好ましくは2〜17質量%の割合で添加する。さらに所望により、発泡助剤を発泡剤と同量またはそれ以下の割合で添加してもよい。
あるいは上記質量%を質量部に読み替えて各成分の使用量を設定してもよい。
また、摩擦材原料は、粒材であるのが好ましい。粒材は、好ましくは次のようにして製造することができる。上記各原料物質を配合し、撹拌し、例えばメタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエン、アセトンなどの適宜の溶媒を加え、混和し、乾燥し、乾燥物を粉砕することによって容易に製造することができる。撹拌、混和のために、プラネタリーミキサー、ニーダー、ロール、ヘンシェルミキサー、ボールミルなど適宜に選択される。粒材を製造するために、乾燥、粉砕する代わりに、溶媒添加後、混和し、造粒機に付して粒材を製造してもよい。使用する粒材における粒度は3mm以下、好ましくは0.15〜2mmである。
さらに詳細には、図1〜図3を参照して、シンクロナイザーリング10のリング状構造体11の内周面を予めブラスト等で下地処理し、ついでアルコール等で洗浄後、フェノール系樹脂やエポキシ系樹脂に代表される熱硬化性タイプの接着剤を塗布する。次に、恒温槽等に該リング状構造体11を投入し、70〜120℃の雰囲気下で10〜30分間保持させ、該接着剤を乾燥する。次に、該リング状構造体11、中間型3、中子5、上型6、下型7を用いて型組みし、その後、該リング状構造体11の内周面と中子5の外周面と上型6のパンチ端面6aと下型7の上端面7aにて形成される型(キャビティ)内に摩擦材原料(粒材)2を投入・充填させ、さらに一般公知の油圧プレス機(図示せず)等で上型6のパンチにて該摩擦材原料2を圧縮させ、常温から50℃以内の金型温度内で仮成形を行う。次に、予め160〜300℃に設定された一般公知の直圧成型機の熱盤(ヒーター)4a,4b間に設置し、5〜30分間焼成(加熱・加圧成形)して、リング状構造体11と摩擦材層を一体化成形する。最後に、該摩擦材層の内周を、例えば機械加工にてテーパー状(円錐状)に切削し、その後、円周方向にリング状条溝14や径方向に縦溝15を形成し、摩擦材層12を得る。
上記一定範囲によって記載された各製造条件は、それぞれの一定範囲の平均値で行うのが好ましい。下記実施例においては、各製造条件はそのような平均値にて行った。
ここで気孔率は、発泡剤と充填率との組み合わせで好適に得られるものであり、充填率を下げることで気孔率は増大する傾向にあるが、発泡剤効果で同充填率でもさらに気孔率が増大する。なお、上記充填率とは、金型内の容積に空間部を残すことなく摩擦材原料のみを充填する場合の摩擦材重量に対する、実際に金型内に充填した摩擦材原料の重量割合を表す%であって、例えば充填率100%とは、理論上、前記容積内に前記摩擦材原料が空間部を全く残すことなく前記容積内に投入され、前記容積内で原料密度が得られている状態を示す。
本発明における気孔率の測定方法としては画像処理方法を用いている。先ず発泡させて製造した摩擦材の断面を表面研磨し、光学顕微鏡(SONIC社製 SONIC BS-D8000II)により前記摩擦材の断面を撮影する。次に、画像処理ソフト(東洋紡績株式会社製 Image Analyzer V10)を使用して、前記断面写真を2値化(白(0)と黒(1)の2値データにすること)によって気孔部分とそれ以外の部分とを区分けし、気孔部分の面積率を算出させ、摩擦材の気孔率としている。
表1および図4は、本発明品と従来公知の比較品についてシンクロ単体耐久テスト結果を実施した結果である。
シンクロ単体耐久テストは、シンクロ単体試験機を使用し、油温80℃で油量80cc/minにてミッションオイル(油種;ホンダMTF−II)を循環させた環境下で、回転数2000rpmで回転し続けるテーパー状の相手部材(名称;ギヤコーン,材質;SCM420,熱処理;浸炭焼入れ・焼戻し,テーパー面;研削処理)に対し、シンクロナイザーリング10を油圧制御にて専用治具を介して70kgfの押付力で500サイクル繰返し押し付けることにより行う。1サイクルはシンクロナイザーリング10を相手部材に2sec押し付けた後に28sec放置冷却することからなる。
図4は、500サイクル繰返し押し付けた際の各押し付け時間2sec間の平均動摩擦係数の推移を表している。
尚、表1および図4における本発明品、比較品(1)および比較品(2)のリング状構造体11の母材材質は全て同じ黄銅製であり、同形状・同サイズである。また、摩擦面に摩擦材を層として備えているシンクロナイザーリング10の表1に記載した以外の製作条件は、上記に説明した製造条件で製作しており、さらに、摩擦材層12の摩擦面形状は図3に示すとおりであり、本発明品、比較品(1)および比較品(2)で実質的に同一である。
本発明品および比較品(1),(2)はシンクロナイザーリング用摩擦材であり、いずれも灰分含量0.15質量%のか焼石油コークスを使用しており、発泡剤を除き、摩擦材原料は全て同素材を使用している。表1において、↑は数値が上欄と同じであることを示す。
表1および図4に示すように、本発明品は比較品(1),(2)より摩擦材の気孔率が高く、且つ耐久性(動摩擦係数および動摩擦係数の低下率)に優れており、耐摩耗性(摩耗量)は気孔率が倍程度高いにも関わらずほぼ同レベルを維持している。特に、本発明品と比較品(2)は充填率が同じであるにも関わらず、発泡剤を含有している本発明品は約2倍の気孔率が得られており、結果、耐久性の向上に繋がっている。
3・・・中間型
4a,4b・・・熱盤(ヒーター)
5・・・中子
6・・・上型
6a・・・上型パンチの端面
7・・・下型
7a・・・下型パンチの端面
10・・・シンクロナイザーリング
11・・・リング状構造体
12・・・摩擦材層
14・・・リング状条溝
15・・・縦溝
Claims (12)
- (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、(ハ)無機材料、および(ニ)発泡剤を含有することを特徴とする摩擦材原料。
- 無機材料が、無機粒子、無機繊維、金属粒子または金属繊維であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材原料。
- さらに、有機粒子または有機繊維を含有すること特徴とする請求項1または2に記載の摩擦材原料。
- 粒材である請求項1〜3のいずれかに記載の摩擦材原料。
- (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、および(ハ)無機材料を含有し、微細気孔構造を有し、気孔率が10〜30%であることを特徴とする摩擦材。
- (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、および(ハ)無機材料、および(ニ)発泡剤を含有する粒材を、充填率70%以上〜100%未満で型に充填し、加圧下に加熱して得られる摩擦材。
- 粒材をシンクロナイザーリング、または湿式クラッチ板と共に型に充填し、粒材とシンクロナイザーリングまたはクラッチ摩擦面とを接触させることを特徴とする請求項6記載の摩擦材。
- 無機材料が、無機粒子、無機繊維、金属粒子または金属繊維であることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の摩擦材。
- さらに、有機粒子または有機繊維を含有すること特徴とする請求項5〜8のいずれかに記載の摩擦材。
- 粒材が、灰分含量が0.1〜1質量%である石油コークスおよび/または灰分含量が5〜8質量%であるピッチコークスを粒材全体に対し30〜80質量%含み、さらに、熱硬化性樹脂を10〜30質量%、無機粒子および/または無機繊維を5〜40質量%、および黒鉛を5質量%以下含み、さらに前記石油コークスおよび/またはピッチコークスの50%以上が粒径0.1〜0.5mmであり、発泡剤が熱硬化性樹脂全体に対して1〜30質量%、好ましくは2〜17質量%含む粒材であることを特徴とする請求項4記載の摩擦材原料または請求項6記載の摩擦材。
- (イ)石油コークスおよび/またはピッチコークス、(ロ)熱硬化性樹脂、および(ハ)無機材料、および(ニ)発泡剤を含有する粒材を、シンクロナイザーリング、または湿式クラッチ板と共に充填率70%以上〜100%未満で型に、粒材とシンクロナイザーリングまたはクラッチ摩擦面とを接触するように充填し、加圧下に加熱することを特徴とする摩擦材の製造方法。
- 請求項5〜10に記載の摩擦材の層を摩擦面に形成してなるシンクロナイザーリングまたは湿式クラッチ。
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