JP2014077039A - 湿式摩擦材及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】加熱により体積収縮する弾性を有する体積収縮材を抄紙段階で配合し、抄紙時の乾燥時や熱硬化性樹脂によるキュア時に体積収縮材を収縮させることで気孔率が大きくなり耐ジャダー性が向上する。従来の材料では、気孔率を増大させようと含浸する樹脂比率を低下したり、紙材の坪量を減らすとへたり量が増大する課題があった。体積収縮材が弾性を有しているため、へたり量の増大を抑制できる。このように、気孔率の増大により高回転時に油膜ができ難くい構造とすることができ、へたり量を増大することなく、耐ジャダー性を向上できる。
【選択図】図5
Description
また、ジャダーの発生には、摩擦材の開放時に、湿式摩擦材の摩擦面と相手材プレートとの間に自動変速機潤滑油(Automatic Transmission Fluid、以下「ATF」とも略する)による油膜の発生が影響しているから、摩擦面に油膜ができ難くすることで、良好なμ−V特性が得られ、ジャダーの発生を抑制することができる。(なお、「ATF」は、出光興業(株)の商品の登録商標であり、本願発明のATFとは直接関係がない。)
ここで、前記体積収縮材を、抄紙材料として配合して抄造するのは、抄造によって、前記体積収縮材がバインダ等の他の抄紙材料と一体に固定するものである。
また、乾燥及び加熱硬化させるのは、前記抄紙体の乾燥時若しくは熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または、前記乾燥時及び前記加熱硬化時に、前記体積収縮材を収縮させることで気孔率を前記体積収縮材の体積収縮前に比べて大きくするものであるから、単なる抄紙体の乾燥や熱硬化性の樹脂の作用のみを特定するものではなく、前記体積収縮材を収縮させる機能も含むものである。
ここで、前記熱膨張性マイクロカプセルを加熱していくと、熱可塑性樹脂のシェルの軟化が開始し、同時に、内包されている炭化水素がガス化を始め、内圧が上昇し、マイクロカプセルが膨張状態となり、膨張時は内圧とシェル高分子の張力・外圧が釣り合って膨張状態が保持され、更に加熱を続けると、薄くなったシェルをガスが透過拡散するため内圧よりもシェルの張力と外圧が大きくなり収縮が生じる作用を行う。なお、このときシェルは非常に柔らかく、通常、破裂は生じない。前記熱膨張性マイクロカプセルは、前記抄紙体の乾燥時の加熱若しくは前記熱硬化性樹脂の加熱硬化時の加熱によって、または、前記乾燥時及び前記加熱硬化時の加熱によって上述した理由により膨張、収縮する。ここで熱膨張性マイクロカプセルが膨張することにより、抄紙体または摩擦基材の板厚を厚くし、収縮することにより抄紙体または摩擦基材の気孔率を増大する。
ここで、配合比が5重量%未満であると、気孔率増大効果の減少となり、また、配合比が50重量%を超えると、摩擦材の繊維量減少により大幅なへたり量の増大に繋がる。したがって、前記体積収縮材は、抄紙材料中の配合比が5重量%以上、50重量%以下の範囲内とするのが望ましい。
ここで、前記体積収縮材を抄紙材料として配合して抄造するのは、抄造によって、前記体積収縮材がバインダ等の他の抄紙材料と加熱前に一体に固定するものである。
また、前記抄紙体を乾燥及び加熱硬化させるのは、前記抄紙体の乾燥時若しくは熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または、前記乾燥時及び前記加熱硬化時に、前記体積収縮材を収縮させることで気孔率を前記体積収縮材の体積収縮前に比べて大きくするものであるから、単なる抄紙体の乾燥や熱硬化性の樹脂の作用のみを特定するものではなく、前記体積収縮材を収縮させる機能も含むものである。そして、前記抄紙体の乾燥時に体積収縮材を収縮させることによって前記抄紙体の気孔を大きくすることができ、熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または前記乾燥時及び前記加熱硬化(キュア)時に体積収縮材を収縮させることによって前記摩擦基材の気孔率を前記体積収縮材の体積収縮前に比べて大きくすることができる。
ここで、熱膨張性マイクロカプセルを加熱していくと、熱可塑性樹脂のシェルの軟化が開始し、同時に、内包されている炭化水素がガス化を始め、内圧が上昇し、マイクロカプセルが膨張状態となり、膨張時は内圧とシェル高分子の張力・外圧が釣り合って膨張状態が保持され、更に加熱を続けると、薄くなったシェルをガスが透過拡散するため内圧よりもシェルの張力と外圧が大きくなり収縮が生じる作用を行う。なお、このときシェルは非常に柔らかく、通常破裂は生じない。前記熱膨張性マイクロカプセルは、前記抄紙体の乾燥時の加熱若しくは前記熱硬化性樹脂の加熱硬化時の加熱によって、または、前記乾燥時及び前記加熱硬化時の加熱によって上述した理由により膨張、収縮する。ここで熱膨張性マイクロカプセルが膨張することにより、抄紙体または摩擦基材の板厚を厚くし、収縮することにより抄紙体または摩擦基材の気孔率を増大する。
ここで、配合比が5重量%未満であると、気孔率増大効果が十分でなく、また、配合比が50重量%を超えると、摩擦材の繊維量減少により大幅なへたり量の増大に繋がる。したがって、前記体積収縮材は、抄紙材料中の配合比が5重量%以上、50重量%以下の範囲内とするのが望ましい。
ここで、前記体積収縮材を抄紙材料として配合して抄造するのは、抄造によって、前記体積収縮材がバインダ等の他の抄紙材料と一体に固定するものである。また、前記抄紙体を乾燥及びキュアさせるのは、前記抄紙体の乾燥若しくは熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または、前記乾燥及び前記加熱硬化時に、前記体積収縮材を収縮させて前記抄紙体または前記摩擦基材の気孔率を前記体積収縮材の体積収縮前に比べて大きくするものである。
このように、前記抄紙体の乾燥時に体積収縮材を収縮させることによって前記抄紙体の気孔を大きくすることができ、熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または前記乾燥時及び前記加熱硬化時に体積収縮材を収縮させることによって前記摩擦基材の気孔率を大きくすることができる。
また、前記体積収縮材が弾性を有することから、気孔率の増大による耐へたり性の悪化を抑制できる。よって、耐へたり性を保持したまま、摩擦材の気孔率を増大させることにより、耐ジャダー性を向上させることが可能な摩擦基材とする湿式摩擦材が得られる。
このように、前記体積収縮材が膨張する作用により、前記抄紙体または摩擦基材の板厚を増加することができ、更に前記体積収縮材が収縮することにより、前記抄紙体または摩擦基材の気孔率をさらに増大することができる。更に、熱膨張性マイクロカプセルは弾性を有していることから、耐へたり性を殆ど変化させることなく、気孔率を増大でき、耐へたり性と耐ジャダー性が良好となる湿式摩擦材が得られる。
ここで、前記体積収縮材を抄紙材料として配合して抄造するのは、抄造によって、前記体積収縮材がバインダ等の他の抄紙材料と一体に固定するものである。また抄紙体の乾燥時や熱硬化性樹脂の加熱硬化時における加熱によって、前記体積収縮材を収縮させることで、気孔率を大きくするものである。
また、前記体積収縮材が弾性を有することから、気孔率の増大による耐へたり性の悪化を抑制できる。よって、耐へたり性を保持したまま、耐ジャダー性を向上させることが可能な摩擦基材とする湿式摩擦材の製造方法が得られる。
一般的な湿式摩擦材を複数枚設けてなる湿式多板摩擦材構造は図1に示すように、回転軸となるハブ40には径方向に貫通した潤滑油供給口50が設けられ、湿式多板クラッチを構成する湿式多板摩擦材構造100の内径側から外径側へと所定の間隔で自動変速機作動油(Automatic Transmission Fluid、一般に『ATF』と略されている商品があるが、出光興業(株)の登録商標『ATF』の商品とは直接関係がない。)を供給している。そして、ハブ40の周囲にはハブ40によってスプライン軸方向に摺動自在に保持された湿式摩擦材プレート10が複数枚配設されている。
コアプレート11にセグメントピース12a,12bを接合してなる湿式摩擦材プレート10は、セグメントピース12a,12bに対向してクラッチケース70側に設けられたセパレータプレート30が複数枚配設されている。なお、セグメントピース12の湿式摩擦材は、図1乃至図3ではコアプレート11の両面に配設されているが、湿式摩擦材プレート10(コアプレート11)及びセパレータプレート30の片面のみに設けてもよい。また、弧状の湿式摩擦材からなるセグメントピース12は、図4に示すように、環状の湿式摩擦材とすることもできるが、その作用効果はセグメントピース12と相違しないので、ここではその説明を省略する。
図1の状態はクラッチ解放状態を示しており、セパレータプレート30とセグメントピース12a,12bとはそれぞれ離れている。解放状態では図示しないリターンスプリングの付勢力により、ハブ40はクラッチケース70の閉口端側に当接している。この状態でクラッチを締結するには、ピストン80とクラッチケース70との間に画成された油圧室60に作動油を供給する。作動油の油圧の上昇に伴い、図示しないリターンスプリングの付勢力に抗してピストン80は、図1において軸方向右に移動し、セパレータプレート30とセグメントピース12a,12bとを密着させる。これによりクラッチが締結状態となる。
湿式摩擦材プレート10を構成するコアプレート11の両側にはセグメントピース12a,12bが貼着されている。コアプレート11の内周側には回転軸となるハブ40のスプラインと噛み合うスプライン内歯11aが形成されている。なお、図示のスプライン内歯11aは、実施物では伝達する仕事量に応じて連続的に20個以上の内歯歯車状に形成される。
そして、セグメントピース12a及びセグメントピース12bに対向してセパレータプレート30が配されている。
セパレータプレート30には、図2に示すように、その外周側にはスプライン外歯31が形成されている。なお、図示のスプライン外歯31はスプライン内歯11aと同様、伝達する仕事量に応じて連続的に20個以上の外歯歯車状に形成される。
そして、ケナフ、竹、麻等のパルプ化していない天然繊維や、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、岩石繊維(ロック・ファイバー)、チタニア、アルミナ、シリカ等の酸化物繊維を用いることもでき、これらの複数の複合繊維を用いることもできる。
これらの繊維は、一般に、平均長さが0.5〜5mm程度であり、繊維径において0.1〜6μmのものが使用される。また、有機繊維としては、フィブリル化したものの使用もできる。
熱膨張性マイクロカプセルMとして75〜85℃で発泡開始、110〜120℃で最大膨張状態となり、粒径が13〜19μmで、シェルXの組成がアクリル系コポリマーである低温膨張型、これを本発明の実施の形態ではマイクロカプセルA(商品名F−36LV)という。
そして、160〜170℃で発泡開始、210〜220℃で最大膨張状態となり、粒径が30〜40μmで、シェルXの組成がアクリル系コポリマーである高温膨張型、これを本発明の実施の形態ではマイクロカプセルC(商品名F−190D)という。
熱膨張性マイクロカプセルの種類としては、気孔率の増大の面から、一般的な抄紙の乾燥温度でも発泡の開始が期待できる低温膨張型が好ましい。
また、体積収縮材としては上記熱膨張性マイクロカプセル以外に加熱によって収縮することが可能なものが使用でき、例えば、熱収縮チューブが例示できる。
このように、体積収縮材は抄紙体の乾燥や抄紙体に含浸させた熱硬化性樹脂の加熱硬化によって、体積収縮を発生させるものであり、体積収縮材の選定により、収縮時期を適宜制御することが可能となる。そして、体積収縮材が収縮した抄紙体や摩擦基材は、その内部の気孔率が体積収縮材の収縮によって収縮した容積分体積収縮材の体積収縮前に比べて増大する。
なお、このフェノール樹脂はフェノール、クレゾール等のフェノール類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類とを、酸性触媒またはアルカリ性触媒下で重縮合反応させて生成されるが、湿式摩擦材の場合には、その重縮合反応をアルカリ性触媒下で行って生成したレゾール型のフェノール樹脂が主に使用される。
本発明の湿式摩擦材に使用する抄紙体Uは、一般的に使用される基材繊維、フィラー、及び硫酸バンド等の定着剤または凝集剤が使用でき、一般的な抄造法によって形成することができる。
本発明の実施例、比較例においては、表1に抄紙体Uを構成する配合材料と、その配合割合が示され、表1に従って配合した配合材料を水中に分散させてスラリー状の抄紙材料を得る。そのスラリー状の抄紙材料を抄紙し、水分の蒸発を促進するため、乾燥炉内を通過させて乾燥することで湿式摩擦材に使用する抄紙体Uができあがる。ここで、抄紙材料とは、表1に示したように抄紙体Uを構成する配合材料を指し、水は含まれていない。
このようにして作製した抄紙体Uを打ち抜き手段等によって所定の形状に形成した後、バインダとしての熱硬化性樹脂に含浸させて加熱硬化し、摩擦基材を得る。なお、熱硬化性樹脂の含浸及びキュア後に、抄紙体Uの打ち抜きを行っても良い。
低温硬化型の熱膨張性マイクロカプセルAを使用する場合、熱膨張性マイクロカプセルAの発泡温度よりも、抄紙体Uの乾燥温度を高くすることにより、抄紙体Uの乾燥時に熱膨張性マイクロカプセルAを発泡させ、膨張及び収縮効果が引き出せる。
また、中温硬化型の熱膨張性マイクロカプセルBを使用する場合、熱硬化性樹脂の加熱硬化時に発泡、膨張、収縮を行うことが出来るが、抄紙体Uの乾燥温度を高くすることで抄紙体Uの乾燥時に発泡、膨張、収縮を行うこともできる。更に、抄紙体Uの乾燥温度を発泡温度と最大膨張温度内に制御することで抄紙体Uの乾燥時と熱硬化性樹脂の加熱硬化時の2段階で発泡させることも可能である。
高温硬化型の熱膨張性マイクロカプセルCを使用する場合、熱硬化性樹脂の加熱硬化時に発泡、膨張、収縮をさせることができる。ここで、前記熱硬化樹脂の硬化温度と前記熱膨張性マイクロカプセルCの発泡温度が重なる場合には、前記熱硬化性樹脂の硬化による抄紙体の固化により膨張、収縮が起こり難くなる。この場合、前記熱膨張性マイクロカプセルの発泡開始温度よりも高い硬化温度の前記熱硬化性樹脂を選択し、前記発泡開始温度よりも高い加熱硬化温度に調節することで、発明の効果は得られる。
以上説明したように、使用する熱膨張性マイクロカプセルMの発泡温度、最大膨張温度に応じて乾燥温度、加熱硬化温度を調節することで抄紙体Uの乾燥時や熱硬化性樹脂の加熱硬化時の所望の時期に熱膨張性マイクロカプセルMを発泡させることで、膨張と収縮時期の制御が可能となる。
実施例1乃至実施例5、比較例1乃至比較例3の抄紙体Uの配合と試験結果を表1に示す。なお、表1に記載されている結果は、表1記載の配合で得られた抄紙体Uを用いた摩擦基材を、試験条件応じて所定の大きさ、形状に加工して測定を行った。
ここで、実施例1乃至実施例3は、体積収縮材として低温膨張型のマイクロカプセルA(商品名F−36LV)を抄紙材料中に5重量%〜50重量%の範囲内で所定量配合したものである。
実施例4は、体積収縮材として中温膨張型のマイクロカプセルB(商品名FN−100S)を抄紙材料中に20重量%配合したものである。
実施例5は、体積収縮材として高温膨張型のマイクロカプセルC(商品名F−190D)を抄紙材料中に20重量%配合したものである。
なお、比較例1は、体積収縮材を含まない配合である。
比較例2は、体積収縮材として、低温膨張型のマイクロカプセルA(商品名F−36LV)を抄紙材料中に5重量%〜50重量%の範囲外の3重量%配合したものである。
比較例3は、体積収縮体として、低温膨張型のマイクロカプセルA(商品名F−36LV)を抄紙材料中に5重量%〜50重量%の範囲外の55重量%配合したものである。
具体的には、ライニングを図6に示すように、所定速度Vで回転後、加圧(係合)した時に発生するトルク量から摩擦係数μを算出し、所定速度Vに対する摩擦係数μの割合を測定したものである。
デイスクサイズ : φ110×φ90
ディスク枚数 : 3枚
回 転 : 0−1500−0(立ち上げ速度=750rpm/sec)
面 圧 : 0.8MPa
油 温 : 80℃
潤滑油量 : 600ml/min
へたり量確認試験の測定条件を以下に示す。
デイスクサイズ : φ110×φ90
ディスク枚数 : 3枚
回 転 : 5000rpm
面 圧 : 0.8MPa
油 温 : 100℃(ATFの温度)
浸 漬 : 試験はATFにてディスクを浸漬
サイクル数 : 5000回
ここで、上記ディスクとして使用した実施例1乃至実施例5、比較例1乃至比較例3の条件、測定結果を表1に示す。また、その特性図を図7で示している。
図5(a)に示すように、熱膨張性マイクロカプセルMは他の抄紙材料Wと共に抄紙体U内に分布し、抄紙体Uを構成する構成成分である。そして熱膨張性マイクロカプセルMは液状の低沸点炭化水素Yを熱可塑性高分子シェルXで包み込んだものであり、シェルXの膜厚は2〜15μmであり、そこには膨張剤である炭化水素Yが内包されている。
次に加熱されると図5(b)に示すように、高分子シェルXが軟化し、内包されている炭化水素Yがガス化を始め内圧が増加する。その気体圧力の変化でシェルXが50乃至100倍に膨張する。しかし、シェルXは非常に柔らかく、通常破裂は生じない。この膨張によって抄紙体Uまたは摩擦基材の板厚が増加する。膨張時は内圧とシェルXの高分子の張力・外圧が釣り合って膨張状態が保持される。
更に加熱を続けると、薄くなったシェルXをガスが透過拡散するため内圧よりもシェルXの張力と外圧が勝るために収縮が起きる。炭化水素Yがガス化し内圧が低下すると、シェルXの径が小さくなり、それまで存在した空間が気孔Zとなり、気孔率が気孔Zだけ増加することとなる。
なお、図5では、概念図の説明であり、熱膨張性マイクロカプセルMを大きく描いている。
まず、表1の結果から耐ジャダー性は、体積収縮材としての熱膨張性マイクロカプセルMを配しない比較例1と熱膨張性マイクロカプセルMを配した実施例1乃至実施例5、及び比較例3を比較すると、熱膨張性マイクロカプセルMを配した実施例1乃至実施例5、及び比較例3の耐ジャダー性は良くなっている。そして、これらは板厚、気孔率とも比較例1に比べて大きくなっている。
特に、実施例2、実施例3及び比較例3の結果から熱膨張性マイクロカプセルMの配合比が20重量%を越えると耐ジャダー性は非常に良好となる。このことから耐ジャダー性は板厚、気孔率の増大によって良くなり、熱膨張性マイクロカプセルMの配合量の増加に伴い良好になり、特に、配合比20重量%以上が好適であることが判明した。ここで実施例1と、比較例3及び実施例3を比べると、気孔率は略同一の値を示すが実施例1より比較例3、実施例3の耐ジャダー性は良好な結果となっている。この原因は板厚が実施例1に比べて比較例3及び実施例3は大きくなっていることに起因しているものと推測できる。このように気孔率だけでなく板厚を厚くすることで耐ジャダー性は改良できる。
これらのことから耐へたり性の悪化を防ぎ、耐ジャダー性を改良するための体積収縮材としての熱膨張性マイクロカプセルMの配合比は5重量%以上50重量%以下が適しており、更に、20重量%以上50重量%以下が好適であることが判明した。
μ−V特性は前述した試験によって測定された摩擦係数と速度の微分値(dμ/dV)によって求められ、図7の棒グラフにて表した。そして数値が大きいほど耐ジャダー性は良好となる。
実施例1乃至実施例3、比較例3に見られるように熱膨張性マイクロカプセルMのうちマイクロカプセルAの配合量が増えるにつれ、dμ/dVは向上し、耐ジャダー性の向上が認められる。また、実施例4、5においても、比較例1と比較し、大幅にdμ/dVの向上が認められる。この結果は、板厚の増加、気孔率の増大とほぼ連動した結果であり、熱膨張性マイクロカプセルMの配合により、板厚を増加し、気孔率を増大できたことにより、ATFの摩擦基材内部への吸収が進み、摩擦基材表面のATFの油膜ができ難くなったことが、dμ/dVの向上につながったものと考えられる。ここで、表1における耐ジャダー性の判定としては、μ−V特性(dμ/dV)が1〜3を○、3を越えるものを◎とし効果の差別化を図った。
また、抄紙体Uと一体化する体積収縮材は弾性を有することから、へたり量の増大を抑制することができる。よって、耐へたり性を保持したまま、耐ジャダー性を向上させることが可能な摩擦基材とする湿式摩擦材が得られる。
また体積収縮材は弾性を有していることから、へたり量の増加を抑制し耐へたり性の維持が出来る。このように耐へたり性を保持したまま、気孔率が増大でき、耐ジャダー性が良好な湿式摩擦材が得られる。
したがって、前記抄紙体Uの前記体積収縮材は、抄紙材料中の配合比が、5重量%以上、50重量%以下の範囲内としたものであるから、良好なμ−V特性及び少ないへたり量の範囲で湿式摩擦材を使用することができる。
このように、従来の材料では、湿式摩擦材の摩擦基材の板厚を増加し、気孔率を増大させようとしても、抄紙時に脱水後プレスを行うが、プレス間隔に限度があるためその板厚に限界があった。しかし、抄紙段階で体積収縮材を抄紙材料に配合することにより、プレス後の乾燥時や加熱硬化時の加熱により、体積収縮材の収縮による気孔Zが占める占有容積が新たな気孔として加わることで抄紙体または摩擦基材の気孔率を増大させ、高回転時に油膜ができ難くい構造とすることができ、ジャダーを抑制することができる。
また、抄紙体と一体化する体積収縮材は弾性を有することから、へたり量の増大を抑制し、耐へたり性の維持ができる。よって、耐へたり性を保持したまま、耐ジャダー性を向上させることが可能な摩擦基材とする湿式摩擦材の製造方法が得られる。
したがって、熱膨張性マイクロカプセルMを加熱すると、熱可塑性樹脂のシェルXの軟化が開始し、同時に、内包されている炭化水素Yがガス化を始め、内圧が上昇し、熱膨張性マイクロカプセルMが膨張状態となり、膨張時は内圧とシェル高分子の張力・外圧が釣り合って膨張状態が保持され、抄紙体または摩擦基材の板厚が増加する。更に加熱を続けると、薄くなったシェルXをガスが透過拡散するため内圧よりもシェルXの張力と外圧が大きくなり収縮が生じる作用を行うから、外部からの加熱温度によって、気孔Zが占める気孔率を制御することができる。したがって、気孔率の増加と板厚の増加を同時に行うことができ耐ジャダー性の改良が容易に行える。
したがって、前記体積収縮材と抄紙材料中の配合比を5重量%以上、50重量%以下の範囲内とすることで、良好なμ−V特性及びへたり量が悪化しない範囲で湿式摩擦材を使用することができる。
W 他の抄紙材料
X 熱可塑性高分子シェル
Y 低沸点炭化水素
Z 気孔
Claims (6)
- 繊維成分とフィラー成分と弾性を有する体積収縮材を含有する抄紙材料を抄造した抄紙体に、熱硬化性樹脂を含浸、加熱硬化させたものを摩擦基材とする湿式摩擦材であって、
前記体積収縮材は、前記抄紙体の乾燥時若しくは前記熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または前記乾燥時及び前記加熱硬化時に、前記体積収縮材を体積収縮させることにより、前記抄紙体または前記摩擦基材の気孔率を前記体積収縮材の体積収縮前に比べて大きくしたことを特徴とする湿式摩擦材。 - 前記体積収縮材は、熱膨張性マイクロカプセルとし、前記抄紙体の乾燥時若しくは前記熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または、前記乾燥時及び前記加熱硬化時に、前記体積収縮材の体積を膨張後、収縮させることを特徴とする請求項1に記載の湿式摩擦材。
- 前記抄紙体の前記体積収縮材は、抄紙材料中の配合比が5重量%以上、50重量%以下の範囲内としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の湿式摩擦材。
- 繊維成分とフィラー成分と弾性を有する体積収縮材を含有する抄紙材料を抄造した抄紙体に、熱硬化性樹脂を含浸、加熱硬化させたものを摩擦基材とする湿式摩擦材の製造方法であって、
前記体積収縮材は、前記抄紙体の乾燥時若しくは前記熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または、前記乾燥時及び前記加熱硬化時に、前記体積収縮材を体積収縮させることにより、前記抄紙体または前記摩擦基材の気孔率を前記体積収縮材の体積収縮前に比べて大きくしたことを特徴とする湿式摩擦材の製造方法。 - 前記体積収縮材は、熱膨張性マイクロカプセルとし、前記抄紙体の乾燥時若しくは前記熱硬化性樹脂の加熱硬化時、または、前記乾燥時及び前記加熱硬化時に、前記体積収縮材の体積を膨張後、収縮させることを特徴とする請求項4に記載の湿式摩擦材の製造方法。
- 前記抄紙体の前記体積収縮材は、抄紙材料中の配合比が5重量%以上、50重量%以下の範囲内としたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の湿式摩擦材の製造方法。
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