JP2006249119A - プリプレグおよびそれを用いた研磨用キャリア - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維からなるメルトブローン不織布に熱硬化性樹脂を含浸してなるプリプレグであって、該メルトブローン不織布を構成する繊維の繊維径分布CV(%)値が20〜50%、平均繊維径が3〜15μmであり、かつ該メルトブローン不織布を構成する繊維が節状部および/または屈曲部を5箇所/mm2以上有することを特徴とするプリプレグ。
【選択図】 なし
Description
例えば、剛性を有するガラス繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥したプリプレグを表面層に配し、さらに柔軟性を有するポリエステル繊維基材に熱硬化性樹脂を含浸乾燥したプリプレグを中間層に配した研磨用キャリアが提案されている(特許文献1参照)。この研磨用キャリアは、研磨時に被研磨物外周面とキャリア材との接触部において、被研磨物の表面エッジ部は、その面取りによりガラス繊維で構成したキャリア表面部には接することなく、主に接触するキャリア中間層に軟質なポリエステル繊維基材を配することでスクラッチがつきにくくしているものであるが、反面、その構成上の点から磨耗されやすく、使用寿命は却って短くなってしまうという問題があった。また、表面層をガラス繊維基材により形成しているために、依然として被研磨物の表面ではキャリアの表面層から繊維が脱落し、スクラッチが生じるという問題もあった。
このように、上記した性能、寿命を高次元で実現する研磨用キャリアは、未だ提案されていないのが実情である。
さらに本発明のプリプレグは、単層または複数枚積層して加熱加圧成形することにより、研磨用キャリアとして用いられる。
特に、本発明の研磨用キャリアは、上記したメルトブローン不織布を構成する繊維が特定の形状を有することにより、含浸樹脂と不織布繊維との間に働く保持力を可能な限り高め、スクラッチの発生を最小限に留めるとともに優れた耐久性を実現するものである。
また、本質粘度で表した場合、該溶融液晶性全芳香族ポリエステルは6.0以下、好ましくは3.0〜6.0の本質粘度(ηinh)を有していることが望ましい。
かかる溶融粘度を有する溶融液晶性全芳香族ポリエステルは、従来公知の全芳香族ポリエステルの重合技術によって製造することができ、また、ポリプラスチックス社から「ベクトラ」(登録商標)A,Lタイプ等で提供されている。
メルトブローン法で製造する場合、紡糸装置は従来公知のメルトブローン装置を用いることができ、紡糸条件としては、紡糸温度310〜370℃、熱風温度(一次エア温度)310〜370℃、ノズル長1mあたりエア量10〜50Nm3で行うことが好ましい。
ただし、本発明に用いるメルトブローン不織布は、その構成繊維が所定の形態を有することが必要であり、これを実現するために幾つか製法を工夫する必要がある。
また、繊維流捕集装置に吹付けられてウェブを形成するまでに繊維流が曝露される環境の温度調節も重要であり、繊維流が曝露される環境の温度として、ノズル直下5cmかつ繊維流に対し直角方向に15cm離れた位置の温度(以下、ノズル下温度と称する場合がある)をその代表温度と考え、このノズル下温度を10〜40℃にコントロールすることが肝要である。
このコントロールは、メルトブローノズルの近傍、全幅にわたり、その上流側および下流側に温度をコントロールした空気を噴き出すことにより行う。
また、繊維流の捕集に際し、捕集面に対して45度以上90度以下の角度をつけて斜めに繊維流を吹きつけることで、節状部および/または屈曲部を形成することがより容易となる。この角度とは、メルトブローン装置を側面から幅方向に向かって観察し、ブローンノズル先端とそこから噴出している繊維流の捕集面到達直前での中央点とを結んだ線と、捕集装置上を走行しているウェブと平行な線を引いたときに、これらの線がなす角度を言い、繊維流着地点からウェブ走行側の繊維流までの角度とする。この角度は、ノズル或いは捕集装置の向きを変えてつけても良いし、ノズル噴出しエア量をウェブ流れ方向で樹脂吐出孔の上流側と下流側のエア吹き出しスリット幅を変えることにより、吹き出す繊維流とノズル面との角度をつけても良い。
そしてこの角度を45度以上90度以下とすることで不織布に節状部および/または屈曲部を付与することがより容易となる。この角度は、好ましくは45度以上80度以下、より好ましくは50度以上70度以下であり、45度未満では、繊維流捕集とそれによる不織布形態維持が困難となり、また、90度を超えると、構成繊維に節状部や屈曲部を形成させることが極めて困難になる。
特に溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維は、空気中で固相重合を進めると、脱水素反応や酸素架橋などの架橋反応を生ずる場合が多く、より耐熱性に優れたメルトブローン不織布を得ることが可能となる。この反応を期待する場合は、初期に不活性気体中で固相重合を進め、分子量を増大させた後、空気中で反応を進めることが好ましい。
また必要に応じて、酸素濃度を管理し、例えば酸素濃度10%の空気中での反応を選択するなどの方法も選択肢の一つとして例示することができる。また、初期には窒素などの不活性気体中で固相重合反応を進め、重合度が上がった段階で有酸素雰囲気とし、さらに反応を進め、架橋や炭化などの反応を進めることも可能である。
この理由は明確ではないが、外力が働いたとき、それが繊維の長さ方向に交わる方向への力であれば特に問題は無いが、繊維の長さ方向とのなす角度が小さく、樹脂から繊維を引き抜く方向に向けて力が作用した場合、樹脂と繊維との間に働く相互作用は、化学的な相互作用と層間摩擦だけになってしまい、この強度が低い組合せでは、繊維は樹脂から容易に抜けてしまい、場合によっては強度が不足するものと推定される。
特に本発明においては、エポキシ樹脂や変性PPO樹脂が高い接着性と可撓性を兼ね備えていることから好ましく用いられる。
なお、研磨用キャリアの厚さは被研磨物の厚みよりも薄くなるよう加工することが望ましく、プリプレグの厚さと目的とする研磨用キャリアの厚みとを勘案して必要な枚数を積層すればよい。そして、このようにして得られたプリプレグを加工してそれぞれの目的に使用する。
東洋精機社製キャピログラフ1B型を用いて、温度310℃、剪断速度r=1000-1の条件下で測定した。
(平均繊維径)
メルトブローン不織布を走査型電子顕微鏡で拡大撮影し、任意の100本の繊維径を測定した値の平均値を平均繊維径とした。
(繊維径分布:CV%)
上記の平均繊維径の測定値において、その分散(σ)と平均値の比を求めた。
(強伸度)
JIS L1906「一般長繊維不織布試験方法」に準拠して測定した。
(節状部および/または屈曲部の頻度)
不織布の任意の部分1mm2において、走査型電子顕微鏡(SEM)で拡大撮影し、この写真を観察して構成繊維の太さが部分的に太くなっている部分、あるいは90度以上の角度で屈曲している部分の数をカウントした。これを対象サンプルの任意の5箇所について撮影し、この写真を基に数えた平均値を採用した。
溶融液晶性全芳香族ポリエステル(ポリプラスチックス社製、「VECTRA-Lタイプ」;310℃における溶融粘度20Pa・s、本質粘度5.8)を、低露点エア式乾燥機にて十分に乾燥した後、二軸押出機により押し出し、幅1m、ホール数1000のノズルを有するメルトブローン不織布製造装置に供給した。メルトブローン装置にて、単孔吐出量0.3g/分、紡糸温度330℃、一次エア温度330℃、一次エア量45Nm3/分、DCDを15cmに調整してメルトブローン不織布を製造した。
このとき、ノズル近傍に20℃の空気をノズル上流側および下流側に各100m3/分の流量で吹きつけることにより、ノズル下温度を22℃に調整し、さらに、ノズルから吐出された樹脂を成形コンベア上に吹き飛ばし、繊維ウェブ化するための一次エア吹き出し口の開口幅を上流側0.8mm、下流側1.0mmに合わせることで繊維流の捕集コンベアへの着地角度を71度とした。この不織布の製造条件を表1に示す。
得られたメルトブローン不織布は、目付が70.5g/m2、平均繊維径9.3μm、CV%30%、融点300℃であり、屈曲部および節状部を併せて18箇所/mm2有していた。
このメルトブローン不織布を、形態を整える目的でフラットカレンダーにて加熱・加圧した。このときのフラットカレンダーは、金属ロールとゴムロールとの組合せであり、金属ロールの表面温度を110℃に調整し、反対側のゴムロールは硬度90のロールを用いた。このロールへは加熱も冷却もせず、300N/cmLの線圧を掛け、10m/分の速度で加工した。
次いでこのメルトブローン不織布を、270℃の窒素雰囲気下、10時間晒すことにより固相重合を行った。この結果、不織布の融点は320℃に向上した。この不織布についての各物性を表2に示す。
(含浸用熱硬化性樹脂の調製)
硬化剤としてジシアンジアミド、硬化促進剤として2−メチル−4メチルイミダゾールを配合したビスフェノールA型エポキシ樹脂ワニスを準備した。各剤は、エポキシ樹脂100質量部に対し、ジシアンジアミドを5質量部、2−メチル−4メチルイミダゾールを0.05質量部配合した。
(プリプレグの作製)
得られた含浸用樹脂に該メルトブローン不織布を含浸後、乾燥することによりプリプレグを得た。このプリプレグは、不織布に対し樹脂量が50質量%になるように調整した。
(成形)
得られたプリプレグを6枚重ね、プレス熱盤にて200℃、40MPaの条件で60分間加熱加圧成形し、厚さ0.5mmの積層板を得た。この積層板を周囲にギヤを形成した直径10インチの円板とし、これに被研磨物を嵌め込むための3.5インチの貫通穴を4個設け、研磨用キャリアを得た。
紡糸温度を310℃、一次エア量を15Nm3/分、DCDを10cmとし、一次エア吹き出し口の開口幅を、上流側と下流側ともに等しく1.0mmとし、なおかつ5℃の冷風を200m3/分の流量で噴きつけることにより、ノズル下温度を8℃に保ったこと以外は、実施例1と同様にしてメルトブローン不織布を製造した。
そしてこの不織布を実施例1と同じ要領で加工して、研磨用キャリアを作製した。
紡糸温度および一次エア温度を380℃、一次エア量を30Nm3/分、吐出量を0.03g/分・孔とし、一次エア吹き出し口の開口幅を、上流側と下流側ともに等しく1.0mmとし、40℃の風を200m3/分の流量で噴きつけることによりノズル下温度を48℃に保ったこと以外は実施例1と同様にしてメルトブローン不織布を製造した。
そしてこの不織布を実施例1と同じ要領で加工して、研磨用キャリアを作製した。
そしてこの不織布を実施例1と同じ要領で加工して、研磨用キャリアを作製した。
紡糸温度および一次エア温度を330℃、一次エア量を35Nm3/分、ノズル単孔からの樹脂吐出量を0.1g/分・孔としたこと以外は実施例1と同様にしてメルトブローン不織布を製造した。このときのノズル下温度は25℃であった。
そしてこの不織布を実施例1と同じ要領で加工して、研磨用キャリアを作製した。
目付100g/m2のガラス繊維織布(旭シュエーベル製「GC−216」)を用い、実施例1と同じ要領で加工して、研磨用キャリアを作製した。
パラ系アラミド繊維チョップ(繊度1.5dtex、繊維長3mm、帝人社製「テクノーラ」)90質量%とメタ系アラミド繊維チョップ(繊度3dtex、繊維長6mm、帝人社製「コーネックス」、未延伸)10質量%とを混抄し、次いで水溶性エポキシ樹脂製バインダー(大日本インキ化学工業社製、「Vコート」)をスプレーした後、加熱、乾燥して目付60g/m2の湿式不織布を得た。
この不織布を実施例1と同じ要領で加工して、研磨用キャリアを作製した。
厚さ0.05mm、目付54g/m2のポリアリレート繊維紙(クラレ社製、「ベクルスHL−50」)を用い、実施例1と同じ要領で加工して、研磨用キャリアを作製した。
被研磨物:3.5インチアルミハードディスク
スクラッチ発生有無:ハードディスク4000個の研磨作業におけるスクラッチ不良率を求めた。
クラッシュ発生有無:200バッチの研磨作業(1バッチ;20個のハードディスクを研磨)においてその発生回数を調査した。
キャリアの寿命:ギヤ部の磨耗レベル、すなわち、各々のサンプルにつき200バッチの研磨作業を行い、比較例4のキャリアにおける研磨後の質量減少量を対象サンプルのキャリアにおける研磨後の質量減少量で除した値を用いた。
キャリア寿命(倍)=比較例4のキャリア質量減少量/対象サンプルのキャリア質量減少量
2:屈曲部
Claims (3)
- 溶融液晶性全芳香族ポリエステル繊維からなるメルトブローン不織布に熱硬化性樹脂を含浸してなるプリプレグであって、該メルトブローン不織布を構成する繊維の繊維径分布CV(%)値が20〜50%、平均繊維径が3〜15μmであり、かつ該メルトブローン不織布を構成する繊維が節状部および/または屈曲部を5箇所/mm2以上有することを特徴とするプリプレグ。
- 請求項1記載のプリプレグを用いてなる研磨用キャリア。
- 請求項1記載のプリプレグを複数枚積層し、加熱加圧成形してなる研磨用キャリア。
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