JP2006249034A - 含酸素化合物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 アルカン類を酸化してアルコール類、ジオール類、ポリオール類又はケトン類を製造するにあたり、周期律表の第5族及び第8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒を用いる含酸素化合物の製造方法、及びアルコール類を酸化して、ジオール類、ポリオール類又はケトン類を製造するにあたり、周期律表の第5族及び第8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒を用いる含酸素化合物の製造方法である。
【選択図】 なし
Description
例えば、6,6−ナイロンの原料として用いられアジピン酸、6−ナイロンの原料として用いられるε−カプロラクタムは、現在、シクロヘキサンの酸化で製造されたシクロヘキサノールやシクロヘキサンから誘導されている。また、ポリエチレンテレフタレートの原料であるテレフタル酸は、p−キシレンの酸化により製造されており、無水マレイン酸は、ブタンの酸化により製造されている。
アルカン類の中で、脂環式炭化水素であるシクロヘキサンの酸化プロセスは、上記したように工業的プロセスとして重要な技術であり、これまで、ナフテン酸コバルトを触媒とする技術が確立されているが、転化率、収率および反応圧力などの点で、必ずしも満足し得るものではなかった。
したがって、シクロヘキサンの酸化プロセスでは、反応圧力がより低く、かつ転化率及び収率がより高い技術の開発が望まれていた。
アダマンタンの酸化生成物であるアダマンタノールやアダマンタノンは、近年、各種機能性材料の中間原料として、急速に需要が増大している。
これらの製造については、例えばアダマンタンを原料とし、硫酸を用いた酸化による2−アダマンタノンの製造と、臭素化・加水分解によるアダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール及びアダマンタンポリオールの製造が行われている。
しかしながら、臭素化・加水分解法では反応剤として臭素を用いるために原料費が高く、また装置の腐食防止と反応物の漏洩防止のために建設費も高額であり、塩化ルテニウム法では触媒が高価であるために回収・再生が不可欠であり、かつアダマンタンの塩素化合物が副生する問題があり、オゾン法では猛毒のオゾンを使用するため安全性に問題がある。また、NHPI法では反応により触媒であるNHPI自体が分解する上、製品に混入するおそれがあるNHPI及びその分解生成物を反応液から分離(触媒の分離・除去処理)する必要があり、操作が極めて面倒である。硫酸法については、硫酸を触媒兼反応溶媒として用いるので大量の硫酸が必要であり、全量を中和するため処理コストが大きく、環境への負荷も高い。
非特許文献3では、アダマンタン転化率が93%で、選択率は1−アダマンタノール41%、2−アダマンタノン15%、1,3−アダマンタンジオール43%と高い値が報告されているが、反応時間が96時間と長く要し、ターンオーバー数が100程度であるなど、反応速度の面で更なる改良が必要である。このため、バナジウム/モンモリロナイト触媒を用いる方法も現状では工業的に課題がある状況である。従って、アダマンタンを分子状酸素により直接酸化して1−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール、アダマンタンポリオール類及び2−アダマンタノンを工業的に製造する方法は、現状では得られていないか、改良の余地が多分にあるといえる。
1. アルカン類を酸化してアルコール類、ジオール類、ポリオール類又はケトン類を製造するにあたり、周期律表の第5族及び第8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒を用いることを特徴とする含酸素化合物の製造方法。
2. アルコール類を酸化して、ジオール類、ポリオール類又はケトン類を製造するにあたり、周期律表の第5族及び第8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒を用いることを特徴とする含酸素化合物の製造方法。
3. 触媒に含まれる遷移金属元素がバナジウムである上記1又は2に記載の含酸素化合物の製造方法。
4. 触媒に含まれるバナジウムの原子価が3〜5価である上記3に記載の含酸素化合物の製造方法。
5. 触媒が、3〜5価の原子価を有するバナジウム化合物又は該バナジウム化合物を無機金属多孔質担体に担持した固体触媒である上記4に記載の含酸素化合物の製造方法。
6. 触媒に含まれる遷移金属元素がコバルトである上記1又は2に記載の含酸素化合物の製造方法。
7. 触媒が、2価又は3価の原子価を有するコバルト化合物又は該コバルト化合物を無機金属多孔質担体に担持した固体触媒である上記6に記載の含酸素化合物の製造方法。
8. 無機金属多孔質担体がシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、シリカチタニア、ゼオライト、チタノシリケート、メソポーラスシリカ又はメソポーラスチタニアである上記5又は7に記載の含酸素化合物の製造方法。
9. 酸化反応が、分子状酸素を含む気体を酸化剤として行われる上記1〜8のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
10. 反応系に、カルボン酸類、スルホン酸類及びルイス酸類から選ばれる1種以上が共存する上記1〜9のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
11. 原料100質量部当たり、遷移金属元素を含有する触媒単独を0.00001〜10質量部の割合で用いる上記1〜10のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
12. アルカン類がアダマンタンであり、アルコール類が1−アダマンタノール又は2−アダマンタノールであり、ジオール類が1,3−アダマンタンジオールであり、ポリオール類がアダマンタンポリオールであり、ケトン類が2−アダマンタノンである請求項1〜11のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
本発明の製造方法により得られる含酸素化合物のうち、例えばシクロヘキサンから製造されるシクロヘキサノールやシクロヘキサノンは代表的な合成繊維であるナイロンの原料として極めて需要が大きく、アダマンタンから製造される1−アダマンタノール、1,3−アダマンタンジオール(及びそれ以上のポリオール類)、2−アダマンタノンは電子材料の原料や医農薬等の各種化学品の中間体として有用性が高い化合物である。
本発明において、原料として用いるアルコール類としては、1−アダマンタノール、2−アダマンタノール及びシクロヘキサノールなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。アルコール類として1−アダマンタノール又は2−アダマンタノールを用いた場合、ジオール類として1,3−アダマンタンジオールを、ポリオール類としてアダマンタンポリオールを、ケトン類として2−アダマンタノンを得ることができる。また、アルコール類としてシクロヘキサノールを用いた場合、ケトン類としてシクロヘキサノンを得ることができる。
バナジウム化合物としてはバナジルアセチルアセトナート[VO(acac)2]、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]、バナジウムアセチルアセトナート[V(acac)3]、硫酸バナジル[VOSO4]、蓚酸バナジル[VOC2O4]、酸化バナジウム(V2O5、V6O13、VO2)、トリイソプロポキシ酸化バナジウム[VO(OC3H7)3]、ステアリン酸酸化バナジウム[CH3(CH2)16COO]2VO、オキシ塩化バナジウム[VOCl3]及び酸化バナジウム−TPP錯体(TPP:5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン)などが挙げられる。これらのうち、高収率で酸化物が得られ、また、高いターンオーバー数を実現する点から、バナジルアセチルアセトナート[VO(acac)2]、メタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]、バナジウムアセチルアセトナート[V(acac)3]及びVO−TPP錯体が好ましく、特に、バナジルアセチルアセトナート[VO(acac)2]が好ましい。
ここで、ターンオーバー数とは、[仕込んだアダマンタンの反応消費量(mol)/仕込んだ触媒に含まれる活性金属(バナジウムやコバルト等)量(mol)]により求められる数値であり、反応速度の目安となる数値である。
これらの担体の性状は、その種類及び製法により異なり、比表面積は通常10〜2000m2/g程度、好ましくは50〜1500m2/g、細孔容積は通常0.01〜2cm3/g程度、好ましくは0.1〜1cm3/gである。
比表面積及び細孔容積の何れも上記範囲にあれば、触媒活性が低下することがない。なお、比表面積及び細孔容積は、例えば、BET法に従って吸着された窒素ガスの体積から求めることができる[J.Am.Chem.Soc.,60,309(1983)参照]。
本発明において、酸化反応の条件は、アルカン類を原料とする場合もアルコール類を原料とする場合も同様である。反応温度は、通常40〜300℃程度、好ましくは80〜150℃である。反応温度が300℃以下であると、重質分の副生が抑えられるので、選択率が向上し、反応温度が40℃以上であると、反応速度が上がるので、生産効率が上がる。
バッチ式で反応させる場合の反応時間は、通常3分〜100時間程度、好ましくは1〜20時間である。反応時間が3分以上であると反応の転化率が十分となり、100時間以下であると生産効率が向上する。
固定床流通式で反応させる場合の反応時間は、通常MHSV(質量空間速度)が0.002〜20h-1程度、好ましくは0.05〜1h-1である。MHSVが0.002-1以上であると生産効率の面から有利であり、20h-1以下であると反応が十分に進行する。
また、触媒の反応性を向上させるために、反応系に、カルボン酸類、スルホン酸類及びルイス酸類から選ばれる1種以上を共存させることが効果的である。スルホン酸類としてはメタンスルホン酸及びトルエンスルホン酸等が挙げられる。ルイス酸類としてはランタントリフラート[La(OTf)3]及びユウロピウムトリフラート[Eu(OTf)3]等が挙げられる。また、硫酸、ゼオライト等の固体酸類も併用することができる。
カルボン酸類を溶媒として用いる場合、カルボン酸類以外の酸の使用量は、通常、カルボン酸類の0.001〜10質量%程度、好ましくは0.01〜1質量%である。
実施例1
三ツ口フラスコ内の酢酸(10ml)にアダマンタン10mmol(1.36g)と触媒であるバナジルアセチルアセトナート[VO(acac)2]5μmol(1.3mg)を溶解させ、スターラーで攪拌しながら1気圧の酸素を10ml/min.の流量で連続的に吹き込み、温度120℃で6時間反応させ、アダマンタン(ADM)の部分酸化反応を行った。生成物をガスクロマトグラフで定量分析した結果、生成物は1−アダマンタノール(1−AdOH)、2−アダマンタノール(2−AdOH)、1,3−アダマンタンジオール(1,3−(AdOH)2)、及びそれらの酢酸エステル、2−アダマンタノン(2−Ad=O)であった。生成物のアダマンタン転化率は37.0%、合計収率は25.8%で、ターンオーバー数(TON)は517であった。これらの結果を表1に示す。
また、以下の実施例及び参考例における分析結果も表1に示す。なお、ターンオーバー数は、[仕込んだアダマンタンの反応消費量(mol)/仕込んだ触媒に含まれる活性金属(バナジウムやコバルト等)量(mol)]により求められる数値であり、ターンオーバー数が大きいほど、反応速度が速いといえる。
実施例1において、アダマンタンの仕込み量を5mmolに変えた以外は実施例1と同様の反応を行った。
実施例3
実施例1において、触媒をバナジウムアセチルアセトナート[V(acac)3]に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った。
実施例4
実施例1において、触媒をメタバナジン酸アンモニウム[NH4VO3]に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った。
実施例5
実施例1において、触媒を酸化バナジウム−TPP錯体[VOTPP]に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った。
実施例6
実施例1において、溶媒である酢酸をプロピオン酸に変えた以外は実施例1と同様の反応を行った。
実施例7
実施例6において、触媒量を10μmolに変えた以外は実施例6と同様の反応を行った。
実施例8
実施例6において、触媒量を1.3μmolに変えた以外は実施例6と同様の反応を行った。
実施例6において、アダマンタンの仕込み量を5mmolに変え、反応温度を100℃に変えた以外は実施例6と同様の反応を行った。
実施例10
実施例9おいて、メタンスルホン酸[CH3SO3H]を0.004ml添加した以外は実施例9と同様の反応を行った。
実施例11
実施例9において、ユウロピウムトリフラート[Eu(OTf)3]を10μmol添加した以外は実施例9と同様の反応を行った。
実施例12
実施例6において、触媒量を10μmolに変え、アダマンタンの代わりに1−アダマンタノールを5mmol仕込んだ以外は実施例6と同様の反応を行った。
実施例13
実施例6において、アダマンタンの仕込み量を5mmolに変え、触媒をCo(acac)2・2H2Oに変えた以外は実施例6と同様の反応を行った。
実施例1において、触媒としてバナジウム18μmolをモンモリロナイトに固定した触媒(V/Mont.)を用い、アダマンタンの仕込み量を3mmolとし、溶媒として酢酸t−ブチルを用い、反応温度100℃で96時間反応させた以外は、実施例1と同様にして反応を行った。なお、上記触媒は、特開2004−2234に記載の触媒調製法により、塩化バナジウム(III)水溶液をモンモリロナイト(クニピアF、クニミネ工業株式会社製)に添加してイオン交換し、ろ過、水洗、乾燥後、空気中800℃で焼成することにより得られたものである。
参考例2
実施例1において、触媒としてNHPI 1mmolとVO(acac)250μmolを用い、溶媒である酢酸の使用量を25mlとし、反応温度を75℃とした以外は、実施例1と同様にして反応を行った。
Claims (12)
- アルカン類を酸化してアルコール類、ジオール類、ポリオール類又はケトン類を製造するにあたり、周期律表の第5族及び第8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒を用いることを特徴とする含酸素化合物の製造方法。
- アルコール類を酸化して、ジオール類、ポリオール類又はケトン類を製造するにあたり、周期律表の第5族及び第8〜10族の遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種の元素を含有する触媒を用いることを特徴とする含酸素化合物の製造方法。
- 触媒に含まれる遷移金属元素がバナジウムである請求項1又は2に記載の含酸素化合物の製造方法。
- 触媒に含まれるバナジウムの原子価が3〜5価である請求項3に記載の含酸素化合物の製造方法。
- 触媒が、3〜5価の原子価を有するバナジウム化合物又は該バナジウム化合物を無機金属多孔質担体に担持した固体触媒である請求項4に記載の含酸素化合物の製造方法。
- 触媒に含まれる遷移金属元素がコバルトである請求項1又は2に記載の含酸素化合物の製造方法。
- 触媒が、2価又は3価の原子価を有するコバルト化合物又は該コバルト化合物を無機金属多孔質担体に担持した固体触媒である請求項6に記載の含酸素化合物の製造方法。
- 無機金属多孔質担体がシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、シリカチタニア、ゼオライト、チタノシリケート、メソポーラスシリカ又はメソポーラスチタニアである請求項5又は7に記載の含酸素化合物の製造方法。
- 酸化反応が、分子状酸素を含む気体を酸化剤として行われる請求項1〜8のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
- 反応系に、カルボン酸類、スルホン酸類及びルイス酸類から選ばれる1種以上が共存する請求項1〜9のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
- 原料100質量部当たり、遷移金属元素を含有する触媒単独を0.00001〜10質量部の割合で用いる請求項1〜10のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
- アルカン類がアダマンタンであり、アルコール類が1−アダマンタノール又は2−アダマンタノールであり、ジオール類が1,3−アダマンタンジオールであり、ポリオール類がアダマンタンポリオールであり、ケトン類が2−アダマンタノンである請求項1〜11のいずれかに記載の含酸素化合物の製造方法。
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