JP2006248790A - シート供給装置 - Google Patents

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拓夫 松村
Masayuki Nagata
雅幸 永田
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剛 近藤
Masaji Kamei
匡二 亀井
Hajime Yui
肇 由井
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Abstract

【課題】簡易な構成で、長期にわたって安定した供給性能を得ることのできるシート供給装置を提供する。
【解決手段】シート搬送方向に回転駆動される給送ロール1と、この給送ロール1に圧接配置され且つ前記シート搬送方向とは逆方向に向かってブレーキトルクが付与される分離ロール2とを備え、シート積載手段3に積載されたシートSを一枚ずつ捌いて供給するシート供給装置において、前記給送ロール1及び前記分離ロール2の表面には夫々シリコーンゴム層を具備させ、かつ、前記給送ロール1によって前記分離ロール2表面をクリーニング可能とするように前記分離ロール2の硬度よりも前記給送ロール1の硬度を低硬度とすることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、積載されたシートを一枚ずつ捌いて供給するシート供給装置に係り、特に、給送ロールと分離ロールとによってシートを捌くタイプのシート供給装置に関する。
従来、例えばプリンタや電子写真複写機等の画像形成装置で用いられるシート供給装置としては、シート搬送方向に回転駆動される給送ロールと、前記シート搬送方向とは逆方向に向かうトルクが付与されるトルクリミッタを内蔵し、前記給送ロールに圧接配置される分離ロールとを備えたものが知られている。
このようなシート供給装置では、シートが送り出されていない条件下及び一枚のシートのみが送り出された条件下で、分離ロールが給送ロールと同方向(シート搬送方向)に従動回転するようになっている。これは、給送ロールと分離ロールとの摩擦力及び一枚のシートを介した給送ロールと分離ロールとの摩擦力が、分離ロールに設けられるトルクリミッタの限界トルクより大きくなるように設定されることによるものである。
一方、二枚のシートが送り出された条件下では、分離ロールが給送ロールと逆方向(シート搬送方向と逆方向)に回転するかあるいは停止するようになっている。これは、分離ロールが給送ロールの摩擦力の影響を受けず、単に送り出された二枚のシート間の小さな摩擦力の影響だけを受けることとなり、この小さな摩擦力がトルクリミッタの限界トルクよりも小さくなるように設定されるためである。その結果、余分に送られたシート(分離ロールに接触するシート)は押し戻されるかあるいは停止せしめられることとなって、一枚のシートのみが供給される。
このように、上述したシート供給装置では、一枚ずつ確実にシートを捌いて供給するという観点から、給送ロール及び分離ロールの表面に摩擦係数の高い材質のものを用いる必要があり、従来より、例えばエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)やクロロプレンゴム(CR)等のゴム材料が用いられてきた。
そして、最近、これら給送ロールや分離ロールの表面材料として、シリコーンゴムが注目されている。
シリコーンゴムは、例えば定着装置で用いられるシリコーンオイルが付着しても摩擦係数が低下しにくいという性質(特開昭63−17743号公報参照)や、用紙に光沢を増すための塗工層が設けられた塗工紙を通紙しても摩擦係数が低下しにくいという性質(特願平11−162808号公報参照)を有する優れた材料である。
特開昭63−17743号公報 特願平11−162808号公報
しかしながら、シリコーンゴムは、上述したEPDMと比べ、耐摩耗性が低く、シリコーンゴムを給送ロールや分離ロールの表面材料として採用すると、これら両ロールの寿命が短くなってしまうという技術的課題がみられた。
特に、トルクリミッタによる回転抵抗が存在する分離ロールは、給送ロールよりも摩耗量が大きくなってしまうため、寿命の低下が顕著となる。
そこで、耐摩耗性を向上させるため、給送ロール及び分離ロールの表面に高硬度のシリコーンゴム層を形成することが考えられるが、今度は、これら両ロールの表面に紙粉が付着しやすくなってしまい、付着した紙粉によって両ロールの摩擦係数が著しく低下し、重送やミスフィードが誘発されることとなってしまうという技術的課題がみられた。
このような技術的課題を解決する手段として、例えば分離ロールにクリーニングロールを圧接配置し、分離ロール表面をクリーニングすることで分離ロールの摩擦係数を維持するようにした技術が提案されている(特開平6−166446号公報参照)が、コストが高くなるばかりでなく、分離ロールに対し給送ロールの他にクリーニングロールも圧接されることとなるため、分離ロールに働くブレーキ力が変化してしまい、安定した給紙性能を得ることができなくなってしまうという技術的課題がみられた。
また、分離ロールのシリコーンゴム層が更に摩耗しやすくなってしまい、寿命が低下してしまうことにもなる。
本発明は、以上の技術的課題を解決するためになされたものであって、簡易な構成で、長期にわたって安定した供給性能を得ることのできるシート供給装置を提供するものである。
すなわち、本発明は、図1に示すように、シート搬送方向に回転駆動される給送ロール1と、この給送ロール1に圧接配置され且つ前記シート搬送方向とは逆方向に向かってブレーキトルクが付与される分離ロール2とを備え、シート積載手段3に積載されたシートSを一枚ずつ捌いて供給するシート供給装置において、前記給送ロール1及び前記分離ロール2の表面には夫々シリコーンゴム層1a,2aを具備させ、かつ、前記給送ロール1によって前記分離ロール2表面をクリーニング可能とするように前記分離ロール2の硬度よりも前記給送ロール1の硬度を低硬度とすることを特徴とする。
ここで、本発明の好ましい態様としては、給送ロール1及び分離ロール2の表面には夫々シリカの含有量が20重量部以下のシリコーンゴム層1a,2aを具備させるものが挙げられる。また、本発明は、カオリンが含まれるシートを供給する際に有効である。
このような技術的手段において、給送ロール1は、シート搬送方向とは逆方向に向かってブレーキトルクが付与されるものである。
ここで、分離ロール2に付与されるブレーキトルクは、給送ロール1と分離ロール2との間に一枚のシートSのみが挟持される場合にはシートSを介してシート搬送方向に分離ロール2が回転せしめられ、且つ、給送ロール1と分離ロール2との間に複数枚のシートSが挟持される場合には、分離ロール2に接触するシートSを停止させるかあるいはシート搬送方向と逆方向に搬送するよう、分離ロールが停止せしめられるかあるいは逆方向に回転せしめられる大きさに設定されるものである。
また、本発明を材料特性の観点から捉えると、図1に示すように、シート搬送方向に回転駆動される給送ロール1と、この給送ロール1に圧接配置され且つ前記シート搬送方向とは逆方向に向かってブレーキトルクが付与される分離ロール2とを備え、シート積載手段3に積載されたシートSを一枚ずつ捌いて供給するシート供給装置において、前記給送ロール1及び前記分離ロール2の表面には、夫々、雰囲気温度10℃で湿度15%、押し付け力1.96N、引き抜き速度100mm/sにて長さ2.97mの塗工紙をスリップさせた後に測定される摩擦係数が0.5以上である弾性層1b、2bを具備させ、且つ、前記分離ロール2の硬度よりも前記給送ロール1の硬度を低硬度とする態様が挙げられる。
このような態様において、給送ロール1、分離ロール2の弾性層1b、2bは、雰囲気温度10℃で湿度15%の環境下において、押し付け力が1.96Nの状態で弾性層1b、2bを拘束して塗工紙を挟み込み、2.97mにあたる塗工紙(JIS A4サイズ縦方向において10枚)を引き抜き速度100mm/sにてスリップさせた後、摩擦係数を測定してこの摩擦係数が0.5以上となる材料で構成される。
ここで、弾性層1b、2bは、上述したシリコーンゴムやゴム系材料に限られるものではなく、例えば柔らかい合成樹脂等からなるものであっても構わない。
更に、上述した本発明において、シート積載手段3に積載されるシートSの給送ロール1と分離ロール2との圧接部までの搬送手法としては、種々の方式より適宜選定して差し支えないが、通常は、シート積載手段3上に積載されるシートSのうち、最上位のシートSに接触してこのシートSを引き込み且つ取り出す引込ロール4等が用いられる。
以上説明したように、本発明によれば、分離ロールの硬度よりも前記給送ロールの硬度を低硬度とすると共に、給送ロール及び分離ロールの表面層が同材質で構成され、かつ、その材質をシリコーンゴムとし、給送ロールによって分離ロール表面をクリーニングするようにしたので、簡易な構成で、長期にわたって安定した供給性能を得ることができる。
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
◎実施の形態1
図2は、本発明が適用されたシート供給装置を組み込んだ画像形成装置の実施の形態1を示す。
同図において、本実施の形態に係る画像形成装置21は、原稿画像を読み取る画像読み取り装置(IIT)23及びパーソナルコンピュータ(PC)等からなる外部機器25と通信回線27を介して接続される受信部29が備えられている。また、この受信部29からの画像情報に基づいて画像書込装置31を制御する画像記録制御部33と、この画像書込装置31によって静電潜像が書込まれる像担持体35と、この像担持体35の円周方向に沿って配設されて像担持体35を帯電する帯電器37と、帯電された像担持体35上にトナーを用いて現像する現像装置39が設けられ、転写ローラ43により搬送されたシートとしての用紙に対して像担持体35上のトナー像が転写される。更に、用紙に転写された画像を定着させる定着装置45と、定着された用紙を排出する排出ローラ47と、この排出ローラ47によって排出された用紙を積載する排出トレイ49と、像担持体35上にて転写に用いられずに余ったトナーを回収するクリーナ41とが備えられている。
更に、この画像形成装置21には、用紙をサイズ別あるいは給紙方向別に収容する複数(本実施の形態では4つ)の用紙供給トレイ59が上下段に設けられており、これらの用紙供給トレイ59には、その内部に設けられた図示しないボトムプレートが、図示しないモータの駆動により昇降するように構成されている。この用紙供給トレイ59の上方にはシート供給装置としての用紙供給装置60が設けられ、ボトムプレートにより上昇された用紙の上面に接触して用紙を分離搬送し、分離搬送された用紙は用紙搬送部51を介して像担持体35等からなる画像形成部に搬送される。また、各用紙供給トレイ59には用紙の側面に対向させてエアーを吹き付けるエアー吹出装置71が設けられている。
図3は、用紙供給装置60を示す斜視図である。用紙供給装置60には、積載された用紙Pの上面に摩擦接触して用紙Pを順に繰り出す引込ロール(ピックアップロール)61、引込ロール61から繰り出された用紙Pを捌くと共に下流部へ向けて搬送する給送ロールとしての給紙ロール(フィードロール)62、給紙ロール62に押圧された状態で用紙Pを1枚ごとに捌く分離ロール(リタードロール)63が備えられている。
この給紙ロール62は、図示しない駆動ギアとフィードクラッチを介して図示しないフィードモータからの動力を受け取ることで駆動される。一方、引込ロール61は、給紙ロール62のフィード軸62aを回動中心としてアーム81を介して回動するように構成され、ギア類82により給紙ロール62の駆動に連動して回転する。更に、引込ロール61は、図示しない制御部からの駆動信号を受けて動作するソレノイド83の作動により、リンク84を介して用紙Pの上面に落下し、所定の押圧力を持った状態で回転駆動することにより用紙Pを繰り出すことを可能としている。また、アーム81の動きは、フォトセンサ85によって検出され、所定枚数の用紙Pが搬送されたことにより用紙Pの上面高さが低くなった場合には、用紙供給トレイ59におけるボトムプレートが上昇し、用紙Pの高さが一定範囲に収まるように構成されている。
また、分離ロール63は、ピボット87を回動中心とするサポート88を介し、スプリング89により弱い圧力をもって給紙ロール62に接せられる。更に、分離ロール63は、トルクリミッタ90を介して第1ギア91及び固定された第2ギア92に連結されている。ここで、給紙ロール62に対して分離ロール63が連れ回ると、トルクリミッタ90の滑りトルクがリタード軸63aを介して第1ギア91に伝達され、第1ギア91は時計回りに回ろうとするが、第2ギア92が固定されていることから、第1ギア91は第2ギア92に乗り上げようと作動し、その結果、給紙ロール62に対する圧力であるリタード圧が増すように構成されている。
そして、本実施の形態において、給紙ロール62は、図4に示すように、フィード軸62aの外周面にH25(旧JISAに基づく値、以下、単にJISAという)のシリコーンゴム層62bを円筒状に形成したものである。
一方、分離ロール63は、リタード軸63aの外周面に前記シリコーンゴム層62bよりも硬度の高いH44(JISA)のシリコーンゴム層63bを円筒状に形成したものである。
従って、上述した硬度の関係から、これら給紙ロール62と分離ロール63との圧接部Nにおいて、分離ロール63が給紙ロール62に食い込むようになっている。
次に、本実施の形態に係る用紙供給プロセスを、図5に示す模式図に基づいて説明する。
用紙供給が開始されると、図5(a)に示すように、給紙ロール62が駆動されて回転し、これに伴って、引込ロール61も駆動されて回転する。そして、この引込ロール61に接触する最上位の用紙P1が引き出され給紙ロール62側に向かって搬送される。
このとき、分離ロール63は給紙ロール62と直接接触しており、給紙ロール62と分離ロール63との間に働く摩擦力によってこの給紙ロール62の回転に従動して回転する。
ここで、図5(b)に示すように、引込ロール61によって一枚の用紙P1のみが取り出された場合は、この用紙P1が給紙ロール62と分離ロール63との圧接部に搬入される。
このとき、分離ロール63は、用紙P1を介して給紙ロール62に接触する状態となり、これらの間に働く摩擦力によってこの給紙ロール62の回転に従動して回転する。これにより、用紙P1が搬送されることとなる。
一方、図5(c)に示すように、引込ロール61によって二枚の用紙P1、P2が取り出された場合は、これら用紙P1、P2が給紙ロール62と分離ロール63との圧接部に搬入される。
このとき、分離ロール63は、二枚の用紙P1、P2を介して給紙ロール62に接触する状態となるが、これら2枚の用紙P1、P2間に働く摩擦力が小さいため、トルクリミッタ90の逆回転トルクによって、前記給紙ロール62の回転には従動せず、圧接部においてこの給紙ロール62とは逆方向に回転する。これにより、給紙ロール62に接触する用紙P1は搬送され、一方、分離ロール63に接触する用紙P2は、用紙供給トレイ59(図示せず)側に押し戻されることとなる。
そして、図5(d)に示すように、用紙P1の搬送が終了すると、引込ロール61はソレノイド83の作動により次の用紙P2から離間した位置に移動せしめられる。
このとき、給紙ロール62は駆動されて回転し続けており、これに伴って、引込ロール61も駆動されて回転し続けている。
このとき、分離ロール63は再び給紙ロール62と直接接触し、給紙ロール62と分離ロール63との間に働く摩擦力によってこの給紙ロール62の回転に従動して回転する。
この一連のプロセスにおいて、給紙ロール62と分離ロール63とが直接接触する状況下では、図4に示すように、これら給紙ロール62と分離ロール63との圧接部において、分離ロール63が給紙ロール62に食い込むようになっている。
これら給紙ロール62及び分離ロール63の圧接部Nでは、給紙ロール62表面の圧接部入口速度V1と圧接部中央速度V2とが異なり(V1≠V2)、また、圧接部中央速度V2と圧接部出口速度V3とが異なる(V2≠V3)こととなる。
すると、圧接部Nにおける給紙ロール62と分離ロール63との間には部分的に微小な滑りが生じ、この滑りにより分離ロール63表面に付着していた紙粉等の異物は、給紙ロール62によってクリーニングされることとなるため、分離ロール63の摩擦係数が低下するという事態は有効に回避される。
また、分離ロール63から除去された異物は、給紙ロール62側に転移することとなるが、これによって給紙ロール62の摩擦係数が低下するという事態は生じないことが確認されている。この詳細については後述する。
尚、本実施の形態では、用紙Pの重送時に分離ロール63を逆回転させて用紙供給トレイ59側に押し戻すようにしていたが、これに限られるものではなく、用紙Pの重送時に分離ロール63を停止させて圧接部Nに保持するような構成としてもよいことは勿論である。
◎実施の形態2
本実施の形態は、実施の形態1とほぼ同様であるが、給紙ロール62及び分離ロール63の表面に設けられる弾性層の特性に着目し、摩擦係数の低下が抑えられる材料を選択するようにしたものである。
尚、本実施の形態に係る画像形成装置の構成要素のうち、実施の形態1に係る画像形成装置と同様のものについては、実施の形態1と同様の符号を付してここではその詳細な説明を省略する。
本発明者らは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムやゴム発泡体を表面に有する給紙ロール62や分離ロール63を用い、用紙Pとして塗工紙を給紙すると、急激にロール表面の摩擦係数が低下していき、給紙不良や重送が多発してしまう問題点を見出した。
そこで、本発明者らは、かかる問題点を解決するために鋭意検討した結果、塗工紙の有する特有成分がこれらの合成ゴムに付着することにより摩擦係数が激減することを発見するに至った。具体的には、塗工紙における塗工カラーの主構成材料である白色顔料の中で、天然鉱物質顔料であるカオリン(kaolin:AlSiO(OH)ケイ酸塩アルミニウム化合物)がこれらの合成ゴムの表面に付着し、摩擦係数を激減させる元凶となっていたことを見出すに至ったのである。
更にこの発見を受けて、本発明者らは、塗工紙擦り付け後の摩擦係数を測定する方法を見出し、各種ロール材料にて測定すると共に、塗工紙擦り付け後の摩擦係数が及ぼす塗工紙Pの搬送性能について検討した。図6は塗工紙擦り付け装置の概略構成図、図7(a)は摩擦係数測定装置の概略構成図、図7(b)はこの摩擦係数測定装置による測定値から摩擦力を読み取る方法を示し、図8は各種ロール材料と塗工紙擦り付け(スリップ)後の摩擦係数との関係を示している。
図6において、符号101は測定ロールであり、ロールは外径15mm、幅17mm、肉厚3.5mmで、回転が拘束された状態にある。また、符号102はプレートであり、塗工紙Pを測定ロール101との間に挟み、1.96N±10%の押し付け力Qにて押し付けられている。スリップ時の他の条件として、本実施の形態では、雰囲気温度10±1(℃)、雰囲気相対湿度15±2(%)、塗工紙Pとしては王子製紙(株)製スーパーアート金藤209gsm若しくは同等のアート紙を用い、塗工紙Pとロールは上記雰囲気に24時間保管した後に使用した。塗工紙Pの擦り付けは、塗工紙引き抜き速度100±10(mm/s)、スリップさせる塗工紙Pの長さ0.297m×10枚=2.97mにて、図のT方向に引き抜くことにより実施した。
以上のような条件下にて塗工紙Pが擦り付けられた測定ロール101について、図7(a)に示す摩擦係数測定装置にて摩擦係数を測定した。摩擦係数測定装置として、摩擦係数測定器104は、シーソー保持台105に支点107を介して配置されるシーソー106と、シーソー106の一端に配置され塗工紙Pを挟んだ状態で測定ロール101を押圧する錘108と、測定ロール101を回転させることにより生じるシーソー106の力(摩擦力)を検知するロードセル109とを備えている。また、ロードセル109の検知内容は、増幅器110および電圧測定器111に出力される。本実施の形態では、塗工紙擦り付け時と同様の環境である雰囲気温度10±1(℃)、雰囲気相対湿度15±2(%)、塗工紙Pとしては王子製紙(株)製スーパーアート金藤209gsm若しくは同等のアート紙を用い、塗工紙Pとロールは上記雰囲気に24時間保管した後に測定した。また、錘108による押し付け力は1.96N±10%であり、測定ロール101は周速度100±10(mm/s)にて矢印方向に回転させた。
図7(b)は、摩擦力の読み取り値の概念を説明するための図であり、同図に示すように、測定ロール101の回転に伴い摩擦力が変化する。この変化の中で、図6に示した塗工紙Pの擦り付けでは測定ロール101を固定して擦り付けたことにより、測定ロール101において塗工紙Pを擦り付けた点について他の点と比べて摩擦係数が減少する。この減少点を抽出すれば、これが測定に必要な摩擦係数となる。即ち、図7(b)に示すF(N)の摩擦力が擦り付け後の摩擦係数である。
以上のような条件の下、各種ロール材料における塗工紙擦り付け後の摩擦係数についての測定結果を図8に示す。図8から理解できるように、ウレタンゴムや塩素化ポリエチレン、EPDMでは、塗工紙擦り付け後の摩擦係数が0.2前後と低いものが多く、最も良い材料であるEPDM−8でも摩擦係数0.48と低い状態にあるのが解る。一方、シリコーンゴムは全般的に塗工紙擦り付け後でも高い摩擦係数を維持している。しかしながら、図8に示すように、全てのシリコーンゴムにて高い摩擦係数を維持している訳ではなく、ロール材料のQ−01やQ−02では、塗工紙擦り付け後の摩擦係数がかなり低い値となる。
この点について、発明者らにより分析を加えた結果、驚くべきことに、シリコーンゴムに含有されているシリカの含有量により塗工紙擦り付け後の摩擦係数が異なることが見出された。この含有されるシリカは、補強性充填剤としてシリコーンゴムロールに用いられており、補強材充填剤が10重量部より少ないとゴム強度の向上に寄与せず、100重量部より多いとゴム弾性が著しく失われることが知られている(特開平4−298426号公報)。上述のQ−01およびQ−02のシリコーンゴムからなるロール材料は、共にシリカの含有量が25重量部程度のものであり、Q−1〜Q−11のロール材料は、全てシリカの含有量が20重量部以下である。例えば、Q−9のロール材料では、ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合ゴム100部に対してヒュームドシリカ10部であり、シリカ含有量が低いと塗工紙擦り付け後の摩擦係数が高く維持されることが理解でき、シリカの含有量が20重量部以下が好ましいことが解る。
このようにして、本実施の形態では、給紙ロール62、分離ロール63の表面弾性層として、上述したロール材料Q−1〜Q−11より適宜選定するようにした。
これにより、そもそも通紙に伴う給紙ロール62及び分離ロール63の摩擦抵抗の低下が防止されるようになり、更に、分離ロール63を給紙ロール62によってクリーニングすることで、塗工紙のような異物を発生させやすい用紙Pを用いる場合にあっても、長期にわたって良好な摩擦係数を維持することが可能となる。
◎実験例1
図3に示す用紙供給装置60において、給紙ロール62及び分離ロール63としてH34(JISA)のシリコーンゴムロールを用い、15000枚の用紙P(JISA4サイズ横送り、以下同じ)を通紙してこれら給紙ロール62及び分離ロール63の摩耗量を調査した。
結果を図9に示す。これによれば、給紙ロール62及び分離ロール63の硬度を同じにした場合、分離ロール63の摩耗量は給紙ロール62の摩耗量の二倍程度大きいことが把握される。
◎実験例2
図3に示す用紙供給装置60において、給紙ロール62及び分離ロール63として三種類の同H(34、40、44(JISA))のシリコーンゴムロールを用い、15000枚の用紙Pを通紙して分離ロール63の摩耗量及び通紙前後の分離ロール63の摩擦係数について調査を行った。
結果を図10に示す。これによれば、硬度が高いほど、分離ロール63の摩耗量は低減せしめられるが、その一方、通紙後の摩擦係数が著しく低下してしまうことが把握される。
◎実験例3
図3に示す用紙供給装置60において、分離ロール63としてH44(JISA)のシリコーンゴムロールを用い、一方、給紙ロール62としてH25、44の二種類のシリコーンゴムロールを用い、5000枚の用紙Pを通紙して分離ロール63の摩耗量及び通紙前後の分離ロール63の摩擦係数について調査を行った。
結果を図11に示す。これによれば、給紙ロール62を分離ロール63より低硬度とすることにより、分離ロール63の通紙後の摩擦係数の著しい低下を抑止できることが把握される。また、分離ロール63摩耗量についても、略同じか若干の改善がみられることが把握される。
◎実験例4
図3に示す用紙供給装置60において、給紙ロール62及び分離ロール63としてシリコーンゴムロール(H共に34(JISA))を採用したものと、EPDMロール(H共に31(JISA))を採用したものとを用い、夫々60000枚の用紙Pを通紙して分離ロール63の摩耗量及び通紙前後の摩擦係数について調査した。
結果を図12に示す。これによれば、給紙ロール62及び分離ロール63の硬度が同じである場合、シリコーンゴムを用いた分離ロール63の摩耗量はEPDMを用いた分離ロール63の摩耗量の三倍程度大きくなってしまうことが把握される。また、分離ロール63の通紙後の摩擦係数については、両者共に著しく低下することが把握される。
◎実験例5
図3に示す用紙供給装置60において、給紙ロール62としてH25(JISA)のシリコーンゴムロールと、分離ロール63としてH44(JISA)のシリコーンゴムロールとを組み合わせたものと、給紙ロール62及び分離ロール63としてH31のEPDMロールを採用したものとを用い、夫々100000枚の用紙Pを通紙して分離ロール63の摩耗量、給紙ロール62及び分離ロールの通紙前後の摩擦係数について調査した。
結果を図13に示す。これによれば、シリコーンゴムを用いる場合において、給紙ロール62を分離ロール63より低硬度とすることにより、分離ロール63の通紙後の摩擦係数の著しい低下を抑止でき、EPDMを用いた場合よりも高い摩擦係数を維持できることが把握される。また、分離ロール63摩耗量についても、EPDMを用いた場合よりも改善できることが把握される。更に、シリコーンゴムを用いた場合において、通紙前後で給紙ロール62の摩擦係数が殆ど変化していないことから、給紙ロール62によって分離ロール63から除去した異物が、給紙ロール62に悪影響を及ぼしていないことも把握される。
本発明に係るシート供給装置の概要を示す説明図である。 本発明が適用されたシート供給装置が組み込まれた画像形成装置の実施の形態1の概要を示す説明図である。 用紙供給装置の斜視図である。 給紙ロールと分離ロールとの圧接部を示す説明図である。 (a)〜(d)は用紙供給プロセスを示す模式図である。 実施の形態2における塗工紙擦り付け装置の概略構成図である。 (a),(b)は、実施の形態2における摩擦係数測定装置の概略構成図、及び測定値からの摩擦係数測定方法を説明するための説明図である。 各種ロール材料と塗工紙擦り付け後の摩擦係数との関係を示したグラフ図である。 実験例1の結果を示す図表である。 実験例2の結果を示す図表である。 実験例3の結果を示す図表である。 実験例4の結果を示す図表である。 実験例5の結果を示す図表である。
符号の説明
1…給送ロール,1a…シリコーンゴム層,1b…弾性層,2…分離ロール,2a…シリコーンゴム層,2b…弾性層,3…シート積載手段,4…引込ロール,21…画像形成装置,60…用紙供給装置,61…引込ロール,62…給紙ロール,62b…シリコーンゴム層,63…分離ロール,63b…シリコーンゴム層,90…トルクリミッタ,N…圧接部,P…用紙,S…シート

Claims (3)

  1. シート搬送方向に回転駆動される給送ロールと、この給送ロールに圧接配置され且つ前記シート搬送方向とは逆方向に向かってブレーキトルクが付与される分離ロールとを備え、シート積載手段に積載されたシートを一枚ずつ捌いて供給するシート供給装置において、
    前記給送ロール及び前記分離ロールの表面には夫々シリコーンゴム層を具備させ、かつ、前記給送ロールによって前記分離ロール表面をクリーニング可能とするように前記分離ロールの硬度よりも前記給送ロールの硬度を低硬度とすることを特徴とするシート供給装置。
  2. 請求項1記載のシート供給装置において、
    給送ロール及び分離ロールの表面には夫々シリカの含有量が20重量部以下のシリコーンゴム層を具備させたことを特徴とするシート供給装置。
  3. 請求項1記載のシート供給装置において、
    カオリンが含まれるシートを供給することを特徴とするシート供給装置。
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