JP2006241504A - 積層酸化膜被覆鉄粉末 - Google Patents

積層酸化膜被覆鉄粉末 Download PDF

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Abstract

【課題】高比抵抗を必要とする各種電磁気回路部品を製造するための積層酸化物被覆鉄粉末を提供する。
【解決手段】鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜とさらに亜鉛酸化膜、酸化硼素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモン、酸化モリブデン、酸化ケイ素、酸化アルミニウムが被覆されている積層酸化物被覆Fe粉末であって、前記Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、鉄粉末との界面領域に、鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有すること、結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有する積層酸化膜被覆鉄粉末およびそれを用いた複合軟磁性材。
【選択図】 なし

Description

この発明は、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が鉄粉末の表面に被覆されてなるMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに各種酸化膜が被覆された積層酸化膜被覆鉄粉末に関するものであり、この積層酸化膜被覆鉄粉末で作製した複合軟磁性材は低鉄損を必要とする各種電磁気回路部品、例えば、モータ、アクチュエータ、ヨーク、コア、リアクトルなどの各種電磁気部品の素材として使用される。
一般に、各種電磁気回路部品に使用される軟磁性材は、鉄損が小さいことが要求されるため、電気抵抗を高くして渦電流損を低減させ、保磁力を小さくしてヒステリシス損を低減させることは一般に知られていることである。さらに、近年、電磁気回路の小型化、高応答化が求められているところから、磁束密度がより高いことも重要視されている。
かかる高比抵抗を有する軟磁性材料を製造するための原料粉末の一例として鉄粉末の表面にMg含有フェライト膜を被覆したMg含有酸化膜被覆鉄粉末が知られている(特許文献1参照)。
特開平11−1702号公報
しかし、従来のMg含有フェライト膜を被覆したMg含有酸化膜被覆鉄粉末は、鉄粉末の表面にMg含有フェライト膜を化学的方法により被覆するために、プレス成形した圧粉体に高温歪取り焼成を行って得られた複合軟磁性材は、フェライト膜が不安定となり変化して絶縁性が低下すると共に、鉄粉末の表面に対するMg含有フェライト膜の密着性が十分でなく、従来のMg含有フェライト膜を被覆したMg含有酸化膜被覆鉄粉末をプレス成形し焼成することにより作製した複合軟磁性材はプレス成形中にMg含有フェライト膜が剥離したり破れるなどして十分な絶縁効果が発揮できず、したがって、十分な高比抵抗が得られないという欠点があった。
そこで、本発明者らは、プレス成形しても、プレス成形時に鉄粉末表面の高抵抗酸化膜が破れることが無く表面に酸化膜が強固に密着した鉄粉末であり、プレス成形後に高温歪取り焼成を行っても表面の絶縁性が低下することなく高抵抗で渦電流損失が低くなり、また歪取り焼鈍の焼成を行った場合に、より保磁力が低減できてヒステリシス損失が低くなるMg含有酸化膜被覆鉄粉末を得るべく研究を行った。
その結果、鉄粉末を予め酸化雰囲気中で加熱する酸化処理を施すことなどにより鉄粉末の表面に酸化鉄膜を形成した鉄粉末(以下、酸化処理鉄粉末という)を作製し、この酸化処理鉄粉末にMg粉末を添加し混合して得られた混合粉末を不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱するなどした後さらに酸化性雰囲気中で加熱する後酸化処理を施すと、
(イ)一般に知られているMgO−FeO−Fe系で代表されるMgウスタイト(以下、(Mg,Fe)Oと記す)、(Mg,Fe)などのMg−Fe−O三元系各種酸化物のうちで、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が鉄粉末の表面に形成され、この少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が鉄粉末の表面に被覆されたMg含有酸化膜被覆鉄粉末は、従来の鉄粉末の表面にMg含有フェライト膜を形成したMg含有酸化膜被覆鉄粉末に比べて酸化膜の鉄粉末に対する密着性が格段に優れることから、プレス成形中に絶縁皮膜である酸化膜が破壊されて鉄粉末同士が接触することが少なく、プレス成形後に高温歪取り焼成を行っても酸化膜の絶縁性が低下することなく高抵抗を維持することができるところから渦電流損失が低くなり、さらに歪取り焼成を行った場合に、より保磁力が低減できることからヒステリシス損失を低く抑えることができ、したがって、低鉄損を有する複合軟磁性材料が得られること、
(ロ)前記鉄粉末と少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜との界面領域には、鉄粉末の中心部に不可避不純物として含まれている硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層が形成されること、
(ハ)前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有すること、
(ニ)前記鉄粉末の表面に形成されている少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、その最表面に含まれるMgOの量が多いほど好ましく、その最表面は実質的にMgOで構成されていることが最も好ましいことなどの知見が得られ、かかる知見に基づいて、本発明者らは、
(a)少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が鉄粉末の表面に被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末、
(b)前記Mg含有酸化膜被覆鉄粉末は、鉄粉末と前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜との界面領域に、鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有する前記(a)記載のMg含有酸化膜被覆鉄粉末、
(c)前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有する前記(a)または(b)記載のMg含有酸化膜被覆鉄粉末、
(d)前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、その最表面が実質的にMgOで構成されている前記(a)、(b)または(c)記載のMg含有酸化膜被覆鉄粉末、などを発明した。
これら発明した前記(a)〜(c)のMg含有酸化膜被覆鉄粉末は、具体的には、鉄粉末を予め酸化雰囲気中、温度:50〜500℃に加熱して酸化処理することにより鉄粉末の表面に酸化鉄膜を形成した酸化処理鉄粉末を作製し、これらの粉末にMg粉末を添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱した後、必要によりさらに酸化性雰囲気中、温度:50〜350℃で加熱する後酸化処理を施すことにより作製する。
また、前記(d)記載の少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の最表面が実質的にMgOで構成されているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、鉄粉末を予め酸化雰囲気中、温度:50〜500℃に加熱して酸化処理することにより鉄粉末の表面に酸化鉄膜を形成した酸化処理鉄粉末を作製し、これらの粉末にMg粉末を一層多く添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱した後、さらに酸化性雰囲気中で一層長時間加熱する後酸化処理を施すことにより得られる。
前述の発明した前記(a)〜(d)のMg含有酸化膜被覆鉄粉末について、さらに詳細に説明する。前記(a)〜(d)のMg含有酸化膜被覆鉄粉末の表面に形成されているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、一般に知られているMgウスタイト((Mg,Fe)O)、(Mg,Fe)などのMg−Fe−O系酸化物の内でもMgウスタイト(Mg,Fe)O酸化物を含むことが好ましいことから、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜であることが好ましく、この少なくとも(Mg,Fe)Oを含む堆積膜の最表面はMgOで構成さていることが最も好ましい。このMgウスタイトは(Mg,Fe):O=1:1のものだけではなくOが固溶幅を有していても良い。
「堆積膜」という用語は、通常、真空蒸発やスパッタされた皮膜構成原子が例えば基板上に堆積した皮膜を示すが、前記鉄粉末の表面に形成されている少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、酸化膜を有する鉄粉末表面の酸化鉄(Fe−O)とMgが反応を伴って当該鉄粉末表面に堆積した皮膜を示す。そして、この鉄粉末の表面に形成されている少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚は、圧粉成形した複合軟磁性材の高磁束密度と高比抵抗を得るために、5nm〜500nmの範囲内にあることが好ましい。膜厚が5nmより薄いと圧粉成形した複合軟磁性材の比抵抗が充分でなく渦電流損が増加するので好ましくなく、一方、膜厚が500nmより厚いと圧粉成形した複合軟磁性材の磁束密度が低下して好ましくないからである。さらに好ましい膜厚は5nm〜200nmの範囲内である。
前記(a)〜(d)のMg含有酸化膜被覆鉄粉末の表面に形成されている少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と鉄粉末との界面領域に、鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有する。この硫黄濃化層を有することはオージェ電子分光法により硫黄濃度を測定し、これをグラフに表すと、硫黄濃度ピークを示すことから確認することができる。界面領域にこの様な硫黄濃化層を有することにより少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の鉄粉末表面に対する密着性がより一層優れるようになり、圧粉成形時の粉末の変形に堆積膜が追従して被覆の破れを防止することができ、焼成時にも鉄粉末同士の接触結合を防止することができて高抵抗を維持することができ、したがって渦電流損失が低くなる。硫黄濃化層の硫黄は、鉄粉末には不可避不純物として硫黄が含まれており、大部分はこの鉄粉末の表面部分に含まれる硫黄から供給されると考えられる。
前記(a)〜(d)のMg含有酸化膜被覆鉄粉末の表面に形成されている少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、その結晶粒が微細であるほど好ましく、結晶粒径が200nm以下の微細結晶組織を有する事が好ましい。この様な微細結晶組織を有することにより、圧粉成形時の粉末の変形に微結晶Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が追従して被覆の破れを防止することができ、焼成時にも鉄粉末同士の接触結合を防止することができ、また、高温歪取り焼成を行っても酸化物が安定で絶縁性低下が防止でき高抵抗で渦電流損失が低くなる。結晶粒径が200nmより大きいとMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の膜厚が500nmよりも厚くなり圧粉成形した複合軟磁性材の磁束密度が低下するようになるので好ましくない。
また、前記(d)のMg含有酸化膜被覆鉄粉末の表面に形成されている少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、その最表面におけるMgOの含有量が多くなるほど好ましく、実質的にMgOで構成されていることが最も好ましい。最表面が実質的にMgOであると、プレス成形した圧粉体の焼成時にもFeの拡散が防止され鉄粉末同士の接触結合を防止することができ絶縁性低下が防止でき高抵抗で渦電流損失が低くなるからである。
前記(a)〜(d)のMg含有酸化膜被覆鉄粉末の平均粒径は5〜500μmの範囲内にある粉末を使用することが好ましい。その理由は、平均粒径が5μmより小さすぎると、粉末の圧縮性が低下し、粉末の体積割合が低くなるために磁束密度の値が低下するので好ましくなく、一方、平均粒径が500μmより大きすぎると、粉末内部の渦電流が増大して高周波における透磁率が低下することによるものである。
この発明は、これら(a)〜(d)記載の発明したMg含有酸化膜被覆鉄粉末のMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の上に、さらに各種酸化物膜を形成した発明をなすべくさらに研究を行った。その結果、本発明者らは、
(i)前記(a)〜(d)記載の発明したMg含有酸化膜被覆鉄粉末のMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の上に、さらに亜鉛酸化膜が被覆された積層酸化膜被覆鉄粉末は、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と亜鉛酸化膜の界面領域に、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜における(Mg,Fe)Oの一部がZnで置換されたZn−Mg−Fe−O四元系酸化物反応膜が形成され、このZn−Mg−Fe−O四元系酸化物反応膜が形成されることにより、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と亜鉛酸化膜との密着性が一層向上し、さらに外面が亜鉛酸化膜で形成されていることにより耐候性が向上し、大気中で長期間保管しても過剰な酸化物や水酸化物,炭酸化物等の生成を抑制し、圧粉成形後の焼成体の比抵抗が安定して得られ、これら積層酸化膜が被覆された積層酸化膜被覆鉄粉末を用いた複合軟磁性材はその抵抗が一層高くなり、鉄損の極めて少ない複合軟磁性材が得られる、
(ii)前記(a)〜(d)記載の発明したMg含有酸化膜被覆鉄粉末のMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の上に、さらに酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種もしくは2種以上を含む酸化膜が被覆された積層酸化膜被覆鉄粉末は、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種もしくは2種以上を含む酸化膜との界面領域に、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種もしくは2種以上を含む酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されることが密着性向上のためには一層好ましく、この粉末を圧粉し、成形したのち、温度:500〜1000℃で焼成すると、高密度および高強度を有し、鉄損の少ない複合軟磁性材が得られる、
(iii)前記(a)〜(d)記載のすでに発明したMg含有酸化膜被覆鉄粉末の少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜にさらに酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうち1種もしくは2種を含む酸化膜が被覆された積層酸化膜被覆鉄粉末は、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜の界面領域に、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されることが密着性向上のためには一層好ましく、この粉末を圧粉し、成形したのち、温度:400〜1300℃で燒成すると、高密度および高強度を有し、さらに一層の高比抵抗を有し、さらに酸化ケイ素や酸化アルミニウムを介して焼結されるために機械的強度が優れ、さらに酸化ケイ素や酸化アルミニウムが主体となって焼結されるところから保磁力を小さく保つことができ、したがって、ヒステリシス損の少ない複合軟磁性材が得られる、などの研究結果が得られたのである。
この発明は、これらの研究結果に基づいて成されたものであって、
(1)鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに亜鉛酸化膜が被覆されている積層酸化膜被覆鉄粉末、
(2)鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに亜鉛酸化膜が被覆されており、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記亜鉛酸化膜の界面領域に(Mg,Fe)Oの一部がZnで置換されたMg−Zn−Fe−O四元系酸化物反応膜が形成されている積層酸化膜被覆鉄粉末、
(3)鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Zn−Fe−O四元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜が被覆されている積層酸化膜被覆鉄粉末、
(4)鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜が被覆されており、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜の界面領域に、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されている積層酸化膜被覆鉄粉末、
(5)鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜が被覆されている積層酸化膜被覆鉄粉末、
(6)鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ケイ素,酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜が被覆されており、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記酸化ケイ素,酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜の界面領域に、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されている積層酸化膜被覆鉄粉末、
(7)前記鉄粉末と前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜との界面領域に、鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有する粉末である前記(1)、(2)、(3)、(4)、(5)または(6)記載の積層酸化膜被覆鉄粉末、
(8)前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有する前記(1)〜(7)の内のいずれかに記載の積層酸化膜被覆鉄粉末、に特徴を有するものである。
次に、この発明の積層酸化膜被覆鉄粉末の製造方法を説明する。
前記(1)および(2)記載のこの発明の積層酸化膜被覆鉄粉末を製造するには、まず、発明した少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が鉄粉末の表面に被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末にZn粉末を添加し混合して得られた混合粉末を温度:150〜1100℃、圧力:1×10−12〜1×10−1MPaの不活性ガス雰囲気または真空雰囲気中で加熱した後、必要に応じて酸化性雰囲気中、温度:50〜350℃で加熱する後酸化処理を施すことにより作製することができる。
前記(3)および(4)記載のこの発明の積層酸化膜被覆鉄粉末を製造するには、まず、先に発明した少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が鉄粉末の表面に被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末に、酸化硼素のゾル溶液または粉末、酸化バナジウムのゾル溶液または粉末、酸化ビスマスのゾル溶液または粉末、酸化アンチモンのゾル溶液または粉末および酸化モリブデンのゾル溶液または粉末の内の1種または2種以上を0.05〜1質量%配合し、混合し、乾燥して前記Mg含有酸化膜被覆鉄粉末を酸化物乾燥ゲルまたは粉末からなる酸化物で被覆してなる酸化物被覆鉄粉末を作製し、この酸化物被覆鉄粉末をさらに温度:500〜1000℃で加熱することにより製造することができる。
前記(5)および(6)記載のこの発明の積層酸化膜被覆鉄粉末を製造するには、まず、先に発明した少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が鉄粉末の表面に被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末に、0.5μm以下の二酸化ケイ素粉末や酸化アルミニウム粉末を0.05〜1質量%添加して混合するかまたはシリカのゾルゲル(シリケート)溶液やアルミナのゾルゲル溶液などの湿式溶液を0.05〜1質量%添加し混合したのち乾燥して酸化物被覆鉄粉末を作製し、この酸化物被覆鉄粉末を不活性ガス雰囲気または酸化性ガス雰囲気中、温度:400〜1300℃で加熱することにより得られる。
前述のこの発明の積層酸化膜被覆鉄粉末に有機絶縁材料や無機絶縁材料、あるいは有機絶縁材料と無機絶縁材料との混合材料を混合して比抵抗および強度のさらに向上した複合軟磁性材を作製することができる。この場合、有機絶縁材料では、エポキシ樹脂やフッ素樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ユリア樹脂、イソシアネート樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、PPS樹脂,等を用いることができる。また無機絶縁材料では、リン酸鉄などのリン酸塩、各種ガラス状絶縁物、珪酸ソーダを主成分とする水ガラス、絶縁性酸化物、等を用いることができる。
また、この発明の積層酸化膜被覆鉄粉末を圧粉成形し、得られた圧粉成形体を温度:500〜1000℃で燒結することにより複合軟磁性材を作製することができる。
この発明の積層酸化膜被覆鉄粉末を用いた複合軟磁性材は高密度、高強度、高比抵抗および高磁束密度を有し、この複合軟磁性材は、高磁束密度で高周波低鉄損の特徴を有する事からこの特徴を生かした各種電磁気回路部品の材料として使用できる。前記電磁気回路部品は、磁心、電動機コア,発電機コア、ソレノイドコア、イグニッションコア、リアクトル、トランス、チョークコイルコアまたは磁気センサコアなどがある。そして、この発明の積層酸化膜被覆鉄粉末を用いた高抵抗を有する複合軟磁性材からなる電磁気回路部品を組み込んだ電気機器には、電動機、発電機、ソレノイド、インジェクタ、電磁駆動弁、インバータ、コンバータ、変圧器、継電器、磁気センサシステム等があり、電気機器の高効率高性能化や小型軽量化を行うことができる。
この発明の積層酸化膜被覆鉄粉末を使用して複合軟磁性材を製造すると、高比抵抗を有することから低渦電流損失を有し、さらに保磁力が低いことから低ヒステリシス損失を有する複合軟磁性材を低コスト安定して作製することができ、電気・電子産業上優れた効果をもたらすものである。
実施例1
原料粉末として、平均粒径:70μmを有し不可避不純物として硫黄を極微量含む純鉄粉末を用意し、さらに、平均粒径:50μmのMg粉末を用意した。前記純鉄粉末を大気中、温度:220℃、2時間保持の条件で酸化処理することにより表面に酸化鉄膜を有する酸化処理鉄粉末を作製した。この酸化処理鉄粉末に対し先に用意したMg粉末を、酸化処理鉄粉末:Mg粉末=99.8質量%:0.3質量%の割合で添加し混合して混合粉末を作製し、得られた混合粉末を温度:650℃、圧力:2.7×10−4MPa、1時間保持したのち、さらに大気中、温度:200℃、1時間保持することにより鉄粉末の表面に堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末を作製した。このMg含有酸化膜被覆鉄粉末に形成された堆積膜をX線光電子分光装置により分析を行い、結合エネルギーを解析したところ、少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜であることが解った。このMg含有酸化膜被覆鉄粉末における鉄粉末とMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜との界面領域をオージェ電子分光装置を用いた方法により調べた結果、少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と鉄粉末との界面領域に、鉄粉末の中心部に含まれる不純物硫黄(バックグラウンド)よりも明らかにオージェ電子分光法でピークをもって硫黄が検出されていることから鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有することが解った。さらに、Mg含有酸化膜被覆鉄粉末における少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の組織を電子顕微鏡で観察し、その堆積膜の厚さと最大結晶粒径を測定し、その結果を表1に示した。
このようにして作製した少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を有するMg含有酸化膜被覆鉄粉末にZn粉末を、Mg含有酸化膜被覆鉄粉末:Zn粉末=99.5質量%:0.5質量%の割合になるように添加し混合して得られた混合粉末を温度:450℃、圧力:1×10−8MPa、1時間保持したのち、大気中、温度:200℃で加熱する後酸化処理を施すことにより鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されており、その堆積膜の上にZnO膜が被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末1を作製した。
さらに、本発明積層酸化膜被覆鉄粉末1について、少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記ZnO膜の界面領域に少なくとも(Mg,Fe)OにおけるMgの一部をZnで置換したZn−Mg−Fe−O四元系酸化物堆積膜が形成されていることがわかった。
実施例2
酸化硼素のゾル溶液、酸化バナジウムのゾル溶液、酸化ビスマスのゾル溶液、酸化アンチモンのゾル溶液および酸化モリブデンのゾル溶液を用意し、実施例1で作製した少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜を有するMg含有酸化膜被覆鉄粉末に、前記酸化硼素のゾル溶液、酸化バナジウムのゾル溶液、酸化ビスマスのゾル溶液、酸化アンチモンのゾル溶液および酸化モリブデンのゾル溶液を、それぞれMg含有酸化膜被覆鉄粉末:ゾル溶液=99.5質量%:0.5質量%の割合になるように添加し混合して得られた混合粉末を作製し、これら混合粉末をそれぞれアルゴン中、温度:900℃で加熱することによりMg含有酸化膜被覆鉄粉末の堆積膜の上に酸化硼素膜が被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末2、Mg含有酸化膜被覆鉄粉末の堆積膜の上に酸化バナジウム膜が被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末3、Mg含有酸化膜被覆鉄粉末の堆積膜の上に酸化ビスマス膜が被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末4、Mg含有酸化膜被覆鉄粉末の堆積膜の上に酸化アンチモン膜が被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末5およびMg含有酸化膜被覆鉄粉末の堆積膜の上に酸化モリブデン膜が被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末6を作製した。
これら本発明積層酸化膜被覆鉄粉末2〜6における積層酸化膜について測定したところ、これら本発明積層酸化膜被覆鉄粉末2〜6には、少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記酸化硼素膜、酸化バナジウム膜、酸化ビスマス膜、酸化アンチモン膜および酸化モリブデン膜のそれぞれの酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されていることがわかった。
実施例3
シリカのゾルゲル(シリケート)溶液およびアルミナのゾルゲル溶液を用意し、実施例1で作製したMg含有酸化膜被覆鉄粉末に、シリカのゾルゲル(シリケート)溶液およびアルミナのゾルゲル溶液をそれぞれ添加し混合したのち乾燥して混合物を作製し、この混合物を窒素中、温度:800℃で加熱することにより鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が形成されており、その堆積膜の上に酸化ケイ素が被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末7、およびその堆積膜の上に酸化アルミニウムが被覆されている本発明積層酸化膜被覆鉄粉末8を作製した。
これら本発明積層酸化膜被覆鉄粉末7〜8における積層酸化膜について測定したところ、この本発明積層酸化膜被覆鉄粉末7には、少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記酸化ケイ素膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されていることがわかった。さらに、この本発明積層酸化膜被覆鉄粉末8には、少なくとも(Mg,Fe)Oが含まれているMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記酸化アルミニウムの酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されていることがわかった。
実施例1〜3で得られた本発明積層酸化膜被覆鉄粉末1〜8を金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を窒素雰囲気中、温度:600℃、30分保持の条件で焼成を行い、板状およびリング状焼成体からなる複合軟磁性材を作製し、この板状焼成体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表1に示し、さらにリング状焼成体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度1.5T、周波数50Hzの時の鉄損および磁束密度1.0T、周波数400Hzの時の鉄損などの磁気特性を測定し、それらの結果を表1に示した。
従来例1
実施例1で用意した純鉄粉末の表面にMg含有フェライト層を化学的に形成した従来酸化物被覆鉄粉末1を作製し、この従来酸化物被覆鉄粉末1を金型に入れ、プレス成形して縦:55mm、横:10mm、厚さ:5mmの寸法を有する板状圧粉体および外径:35mm、内径:25mm、高さ:5mmの寸法を有するリング形状圧粉体を成形し、得られた圧粉体を窒素雰囲気中、温度:600℃、30分保持の条件で焼結を行い、板状およびリング状焼結体からなる複合軟磁性材を作製し、板状焼結体からなる複合軟磁性材の比抵抗を測定してその結果を表1に示し、さらにリング状焼結体からなる複合軟磁性材に巻き線を施し、磁束密度、保磁力、並びに磁束密度1.5T、周波数50Hzの時の鉄損および磁束密度1.0T、周波数400Hzの時の鉄損などの磁気特性を測定し、それらの結果を表1に示した。
Figure 2006241504
表1に示される結果から、本発明積層酸化膜被覆鉄粉末1〜8を使用して作製した複合軟磁性材は、従来酸化物被覆鉄粉末1を使用して作製した複合軟磁性材従来複合軟磁性材と比べて、密度については大差は無いが、本発明積層酸化膜被覆鉄粉末1〜8を使用して作製した複合軟磁性材は、従来酸化物被覆鉄粉末1を使用して作製した複合軟磁性材に比べて、磁束密度が高く、保磁力が小さく、さらに比抵抗が格段に高く、そのため鉄損が格段に小さくなるなどの特性を有することから、本発明積層酸化膜被覆鉄粉末1〜8は従来酸化物被覆鉄粉末1と比べて一層優れた特性を有する複合軟磁性材を提供することができる軟磁性原料粉末であることが分かる。

Claims (12)

  1. 鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに亜鉛酸化膜が被覆されていることを特徴とする積層酸化膜被覆鉄粉末。
  2. 鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに亜鉛酸化膜が被覆されており、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記亜鉛酸化膜の界面領域に、少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜におけるMgの一部がZnで置換されたMg−Zn−Fe−O四元系酸化物反応皮膜が形成されていることを特徴とする積層酸化膜被覆鉄粉末。
  3. 鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜が被覆されていることを特徴とする積層酸化膜被覆鉄粉末。
  4. 鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜が被覆されており、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜の界面領域に、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ホウ素、酸化バナジウム、酸化ビスマス、酸化アンチモンおよび酸化モリブデンのうちの1種または2種以上を含む酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されていることを特徴とする積層酸化膜被覆鉄粉末。
  5. 鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜が被覆されていることを特徴とする積層酸化膜被覆鉄粉末。
  6. 鉄粉末の表面に少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜が被覆されているMg含有酸化膜被覆鉄粉末の前記Mg−Fe−O三元系酸化物堆積膜の表面に、さらに酸化ケイ素,酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜が被覆されており、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と前記酸化ケイ素,酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜の界面領域に、前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜と酸化ケイ素および酸化アルミニウムのうち1種または2種を含む酸化膜とが反応して形成された反応皮膜が形成されていることを特徴とする積層酸化膜被覆鉄粉末。
  7. 前記鉄粉末と前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜との界面領域に、鉄粉末の中心部に含まれる硫黄よりも高濃度の硫黄を含む硫黄濃化層を有する粉末であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の積層酸化膜被覆鉄粉末。
  8. 前記少なくとも(Mg,Fe)Oを含むMg−Fe−O三元系酸化物堆積膜は、結晶粒径:200nm以下の微細結晶組織を有することを特徴とする請求項1〜7の内のいずれかの請求項に記載の積層酸化膜被覆鉄粉末。
  9. 請求項1〜8記載の内のいずれかの請求項に記載の積層酸化膜被覆鉄粉末を用いた複合軟磁性材。
  10. 請求項9記載の複合軟磁性材からなる電磁気回路部品。
  11. 前記電磁気回路部品は、磁心、電動機コア,発電機コア,ソレノイドコア,イグニッションコア,リアクトル,トランス,チョークコイルコアまたは磁気センサコアであることを特徴とする請求項10記載の電磁気回路部品。
  12. 請求項10、11記載の前記電磁気回路部品を組み込んだ電気機器。
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