JP2010092989A - 圧粉磁心およびその製造方法 - Google Patents

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雅晴 江戸
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Abstract

【課題】高周波特性を改善し、渦電流損失を低減した圧粉磁心を提供する。
【解決手段】表面に絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子をプレス成形して形成する圧粉磁心の製造方法において、表面に絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子を用いてグリーンシートを形成する磁性層グリーンシート形成工程と、絶縁性粒子を用いてグリーンシートを形成する絶縁層グリーンシート形成工程と、前記磁性層グリーンシート形成工程で得られた磁性層グリーンシートあるいは該磁性層グリーンシートを必要に応じて所定枚数積層した積層磁性層グリーンシートと、前記絶縁層グリーンシート形成工程で得られた絶縁層グリーンシートとを交互に積層し、プレス成型するプレス成型工程とを有し、プレス成型前に前記積層シートを熱処理することを特徴とする圧粉磁心の製造方法及び該製造方法により得られてなる圧粉磁心。
【選択図】図2

Description

本発明は、スイッチング電源用トランス、リアクトルなどに用いられる圧粉磁心およびその製造方法に関する。
近年、各種電子機器は、小形化、軽量化されてきており、これに伴い電子機器に搭載されているスイッチング電源も小形化の要求が高まっている。特にノート型パソコンや小型携帯機器、薄型CRT、フラットパネルディスプレイに用いられるスイッチング電源では、小型化、薄型化が強く求められている。しかしながら、従来のスイッチング電源は、その主要な構成部品であるトランス、リアクトル等の磁気部品が、大きな体積を占め、小型化、薄型化することに限界があった。これら磁気部品の体積を小型、薄型化しない限り、スイッチング電源を小型化、薄型化することは困難となっていた。
従来、このようなスイッチング電源に使用されているトランス、リアクトルなどの磁気部品には、センダストやパーマロイなどの金属磁性材料や、フェライトなどの酸化物磁性材料が使用されていた。そのうち金属磁性材料は、一般に高い飽和磁束密度と透磁率を有するが、電気抵抗率が低いため、特に高周波数領域では渦電流損失が大きくなってしまう。近年、電源回路を高周波駆動して必要なインダクタンス値を下げることにより磁気部品を小型化する傾向にあるが、渦電流損失の影響から金属磁性材料を高周波で使用することはできない。
一方、酸化物磁性材料は、金属磁性材料に比べ、電気抵抗率が高いため、高周波数領域でも発生する渦電流損失が小さい。しかしながら、飽和磁束密度が小さいため、磁気飽和しやすいことから、その体積を小さくすることができなかった。つまり、いずれの場合でも、磁性体コアの体積がインダクタンス値を決定付ける一番大きな要因となっていて、磁性材料の磁気特性を向上させない限り、小型化、薄型化が困難となっていた。
このように、従来の磁気部品では、小型化に限界があり、電子機器の小型化、薄型化の要求に充分に応えられるものではなかった。
この課題を解決する方法として、1〜10μmの粒子からなる金属磁性材料の表面をM−Fe(但しM=Ni、Mn、Zn、x≦2)で表されるスピネル組成の金属酸化物磁性材で被覆してなる高密度焼結磁性体が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
さらに、例えば、特許文献2では、表面に超音波励起フェライトめっきによって形成されたフェライト層の被膜を有する金属または金属間化合物の強磁性体微粒子粉末が圧縮成形され、前記フェライト層を介して前記強磁性体粒子間に磁路を形成するものであることを特徴とする複合磁性材料が提案されている。
また、高密度でかつ比抵抗が高い軟磁性成形体を得るために、軟磁性の金属粒子と、その表面に被覆された高抵抗物質と、該高抵抗物質の表面に被覆されたリン酸系化成処理被膜とよりなることを特徴とする軟磁性粒子が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、近年、金属磁性材料の欠点である抵抗率を向上するために、飽和磁束密度および透磁率が高い軟磁性金属粒子の表面に、電気抵抗率の高い非磁性絶縁酸化物の被膜を形成した磁性材料が提案されている(例えば、特許文献4参照。)。この磁性材料によると、非磁性絶縁膜の効果により電気抵抗率が向上することで渦電流を抑制できる、つまりMHz帯域などの高周波でも使用することができる。
上記の粒子(磁性材料)を成形して得られる軟磁性成形体において、MHz帯域での渦電流損失をさらに低減するためには、金属粒子表面に形成する絶縁被膜もしくは高抵抗層を厚くして軟磁性成形体の抵抗率を向上させる必要がある。例えば、特許文献3の表1に示されている実施例の比抵抗は、その比較例よりは向上してはいるものの不十分であり、体積鉄損は10kHzのものしか示されていない。1MHzで動作させるためには、高抵抗層をさらに厚くして成形体の比抵抗を上げなければならない。しかしながら、金属粒子表面に形成する絶縁被膜もしくは高抵抗層を厚くすると、金属粒子間のギャップが大きくなり透磁率が低下してしまう。また、透磁率を向上させるために絶縁被膜を薄くしたり、プレス成型した軟磁性成型体の熱処理温度を上げたりすると、抵抗率の低下によりMHz帯域での渦電流損失が増加してしまう。
MHz帯域での渦電流損失をさらに低下させる他の方法として、プレス成型した圧粉磁心(コア)の厚みを薄くし、それらを絶縁層を介して積層する方法がある。(例えば、特許文献5参照)
また、軟磁性膜と絶縁膜を交互に形成して軟磁性膜と絶縁膜の積層体を形成する軟磁性多層膜の製造方法の提案もある。(例えば、特許文献6、7参照)
特開昭56−38402号公報 国際公開第03/015109パンフレット 特開2001−85211号公報 特開2008−150664号公報 特開平11−74140号公報 特開2000−54083号公報 特開平9−74016号公報
特許文献5に開示されている手法では、厚さ5.5mmのリング2個をホットプレスにより厚みが10mmとなるように積層している。ただし、薄い電子部品では全体の厚みが0.6mm以下と薄く、積層するものの厚みはその半分以下(例えば0.2mm以下)の厚みになってしまう。そのような薄いコアをプレス成型で製作することは機械的強度から困難である。特にコアの面積が大きくなると困難度が増大する。さらに、全体の厚みが薄いので、薄いコアを絶縁層を介して積層する方法では、絶縁層の厚みを、例えば0.05μm以下というように薄く制御する必要があるが、そのような薄い板状コアをプレス成型で製作することは実質上不可能である。
特許文献6や7にはインダクタ、トランスの磁心に用いる磁性膜と絶縁膜の積層構造が記載されているが、いずれも磁性膜,絶縁膜をスパッタ法や蒸着により形成しているため、成膜速度が遅く積層構造の形成に時間がかかる、バルクコアのような厚板構造は応力の問題などで形成することができない、といった課題がある。
本発明の目的は、上述の問題を解消し、圧粉磁心の高周波特性を改善し、渦電流損失を低減するための方法として薄いコアと絶縁物を交互に積層した構造を製造する手法を提供することにある。
即ち、本発明の圧粉磁心の製造方法は、表面に絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子をプレス成形して形成する圧粉磁心の製造方法において、表面に絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子を用いてグリーンシートを形成する磁性層グリーンシート形成工程と、絶縁性粒子を用いてグリーンシートを形成する絶縁層グリーンシート形成工程と、前記磁性層グリーンシート形成工程で得られた磁性層グリーンシートあるいは該磁性層グリーンシートを必要に応じて所定枚数積層した積層磁性層グリーンシートと前記絶縁層グリーンシート形成工程で得られた絶縁層グリーンシートとを交互に積層し、得られた積層シートをプレス成型するプレス成型工程とを有し、プレス成型前に前記積層シートを熱処理することを特徴とする。
また、本発明の圧粉磁心は前記製造方法により得られてなることを特徴とする。
本発明によれば、磁性層と絶縁層を積層した積層圧粉磁心を容易に形成することができ、磁心の高周波特性を向上することができる。
本発明において、磁性層グリーンシートは図1に示すような軟磁性金属粒子11に絶縁酸化被膜12を形成した絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子1を用いて形成される。
磁性層グリーンシート形成に用いられる絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子1における金属としては、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどの単金属、あるいはパーマロイ、センダストなどそれらを基とする合金などの透磁率が高い金属材料からなる粒子を用いることができる。
軟磁性金属粒子11の粒径は特に限定されるものではないが、1〜30μmであることが好ましい。
軟磁性金属粒子の表面に絶縁酸化被膜を形成する酸化物としては、フェライト、鉄基酸化物等の電気抵抗率の高い酸化物、ガラス、シリカ、アルミナなどの絶縁性酸化物等を挙げることができ、フェライトとしては、Ni−Znフェライト、Cu−Zn−Mgフェライトやこれらを主成分とする複合フェライトを例示できる。ガラスとしてはSiO、B、P等を主成分とするガラスを挙げることができる。絶縁酸化被膜の形成方法はウエット法に限らず、ドライ法も適用でき、被膜の形成方法は特に限定されるものではない。
絶縁酸化被覆した金属磁性粒子の被覆膜厚は粒子間の電気抵抗を高めることができる厚さであれば特に限定されず5nm以上、より好ましくは10nm以上であることが好ましく、透磁向上の観点からは40nm以下、より好ましくは20nm以下であることが好ましい。
絶縁層グリーンシートを形成する絶縁性粒子としては、フェライト、鉄基酸化物等の電気抵抗率の高い酸化物、ガラス、シリカ、アルミナなどの絶縁性酸化物等からなる粒子を用いることができるが、得られる圧粉磁心の磁気特性に優れることから、図7に示すような、軟磁性金属粒子13に厚い絶縁酸化被膜14を形成した厚い絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子2を用いることが好ましい。
絶縁層グリーンシートを形成する厚い絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子2に用いられる軟磁性金属粒子としては、磁性層グリーンシート形成に用いられる絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子1における軟磁性金属粒子と同様のものを用いることができる。厚い絶縁酸化被膜14を形成する酸化物としては、フェライト、鉄基酸化物等の電気抵抗率の高い酸化物、ガラス、シリカ、アルミナなどの絶縁性酸化物等を挙げることができ、フェライトとしては、Ni−Znフェライト、Cu−Zn−Mgフェライトやこれらを主成分とする複合フェライトを、ガラスとしてはSiO、B、P等を主成分とするガラスを挙げることができる。
厚い絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子2における絶縁酸化被膜14の厚みは50〜300nmであることが好ましい。上記下限未満では絶縁性が不足し、上記上限を超える厚みでは、磁性材料の割合が減少することによる特性低下や被膜形成工程に時間がかかるといった課題が生じてくる。
本発明におけるグリーンシートは、絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子や絶縁性粒子を用いて磁性層や絶縁層を形成する際の熱処理前のシートを示す。磁性層グリーンシートは絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子に樹脂バインダーや溶剤を加えてスラリーとし、このスラリーを用いて所定の厚みのシートに成形したものである。また、絶縁層グリーンシートは絶縁性粒子に樹脂バインダーや溶剤を加えてスラリーとし、このスラリーを用いて所定の厚みのシートに成形したものである。樹脂バインダーとしては、ポリビニルアルコール、ブチラール系、セルロース系、アクリル系のバインダー樹脂を挙げることができる。溶剤としては、鉱油系溶剤、アルコール類、アセトン、トルエンのような有機溶剤、及び水を挙げることができる。磁性層グリーンシートの厚みは乾燥後20〜200μmとすることが好ましく、絶縁層グリーンシートの厚みは乾燥後5〜100μmとすることが好ましい。
これらのスラリーを用いてグリーンシートを製造するにあたっては、いずれのシート化技術も用いることができるが、大面積化が容易であることからドクターブレード法でシート化することが好ましい。
次いで、図2に示すような手順で圧粉磁心を製造する。即ち、磁性層グリーンシートあるいは該磁性層グリーンシートを必要に応じて所定枚数積層した積層磁性層グリーンシートと絶縁層グリーンシートとを交互に積層する。図2に示す実施態様では、前述した磁性層となるグリーンシート21を4層、絶縁層となるグリーンシート22を1層、さらに磁性層となるグリーンシート21を4層積層し、総厚820μmの積層グリーンシート23を形成している。
こうして得られる積層グリーンシートはそのままプレス成型してもよいが、一旦、熱処理(プレス前熱処理)してからプレス成型することが好ましい。プレス前熱処理することによりグリーンシートに含まれているバインダー(有機バインダー)を加熱分解してバインダー量を低減せしめることができる。熱処理温度は高いほどバインダー低減量が多くなり、500℃まで上げるとほぼ樹脂バインダー量は0となる。但し、熱処理温度の高温側限界については、プレス後にアニール(プレス後熱処理)することで、金属粒子表面に形成されている絶縁被膜が粒子を結合させるバインダーとして機能するため、その絶縁被膜の結合力を低減させない程度の温度範囲で熱処理することが好ましい。この観点から、プレス前熱処理の熱処理温度は、350〜450℃、熱処理時間(熱処理の最高到達温度保持時間)は30〜120分であることが好ましい。昇温速度、降温速度はそれぞれ、2〜20℃/分であることが好ましい。
このプレス前熱処理は不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、Ne、Arなどの希ガスを用いることもできるが、熱処理コストを低く維持できるので窒素を用いることが好ましい。熱処理を不活性ガス雰囲気下で行うことにより、熱処理中にグリーンシートが酸化されて酸化物層が肥大するのを防止することができる。
大気中でプレス前熱処理を行うと、有機バインダーは減少するが、金属磁性粒子が酸化することにより、圧粉磁心のμ'が減少してしまう。有機バインダーの減少量も一定量のところで飽和減少を示すようになる。
これに対して、窒素雰囲気下でプレス前熱処理を行うと、金属磁性粒子の酸化を防止することができ、圧粉磁心のμ'の低下を防止することができる。
特性面から、このプレス前熱処理は、減圧下もしくは真空中で行われることがさらに好ましい。真空化といっても実際上完全真空は困難であり、例えば0.133Pa(1×10−3Torr)など高度の減圧下を意味する。減圧下あるいは真空中に残る雰囲気気体は不活性ガスで構成されることが好ましい。熱処理を減圧下もしくは真空中で行うことで、さらに金属磁性粒子の酸化を防止し、圧粉磁心のμ'を向上することができる。即ち、窒素中熱処理の場合、大気中よりは酸化の影響は低減するが、置換されきっていない酸素や、粒界などに残っている酸素の影響がまだ残っている。これに比べて減圧もしくは真空中で熱処理すると、窒素雰囲気中での減圧もしくは真空ということで、例えば、粒界に残っている酸素も除去できるなど、残存酸素が更に減少するため、酸化の影響が低減し、有機バインダーの減少量が全体の質量の減少量とほぼ同等になる。
こうして得られる積層グリーンシートをプレス成型することで圧粉磁心を作成できる。図2の例ではグリーンシートを型枠なしの平板で両面から挟んで行なっているが、必要に応じて金型を用いてもよい。プレス圧力は500〜2000MPaであることが好ましい。
こうして得られた積層圧粉磁心を熱処理(プレス後熱処理)する。プレス後熱処理温度は300〜800℃であることが好ましい。この熱処理は例えば電気炉を用いて行うことができる。なお、プレス後熱処理時の雰囲気も金属粒子の酸化に影響を与えるため、酸化してもよい場合は大気中で実施してもよい。また、酸化させたくない場合は、真空雰囲気あるいは窒素やArなどの不活性ガス中で実施すればよい。還元させたい場合は水素雰囲気で実施してもよい。
この熱処理済みの積層圧粉磁心を必要に応じて所定の形状に加工する。金型で形成したままでよい場合は、特に加工する必要はない。本発明の製造方法により、高周波でも損失の小さい圧粉磁心を得ることができる。
以下に、実施例を用いて本発明を更に説明する。なお、以下の実施例において、プレス前熱処理を行う場合、プレス前熱処理は、圧力や雰囲気を調整出来るチャンバー内に入れた状態で行い、昇温速度を8℃/分、降温速度を2℃/分とし、最高到達温度保持時間を60分とした。
<実施例1>
本実施例では、軟磁性金属粒子11として水アトマイズ法にて作製したNi78Mo5Fe(Niが78wt%、Moが5wt%で残りがFe)粒子(平均粒径8μm)を用いた。(図1)また、絶縁酸化被膜12には水ガラス法で形成したSiO被膜を用いた。この被膜の形成方法を次に示す。
本実施例で用いた水ガラスの組成はNa0・xSiO・nH0(x=2〜4)で、これを水に溶かした溶液はアルカリ性を示す。この溶液に軟磁性金属粒子11を入れ、塩酸を溶液に加え、pHをコントロールして加水分解させ、ゲル状の珪酸(HSiO)を軟磁性金属粒子11表面に付着させた。この後、この軟磁性金属粒子11を乾燥させることでSiO被膜を形成した。SiO被膜の膜厚は、水ガラス水溶液の濃度で制御可能であり、本実施例では20nmに制御した。
本実施例では、図2に示した製造方法により積層圧粉磁心を製造した。
まず、前述した絶縁被膜付き磁性金属粒子1を主原料とした磁性層グリーンシート21を形成した。グリーンシートの製作方法としては、フェライトやセラミックスのグリーンシートを形成する方法と同様の一般的な方法を適用した。バインダーとして、0.1wt%のPVA(ポリビニルアルコール)水溶液を用い、これを金属磁性粒子と混合し、脱泡した後、ドクターブレード法で、乾燥後100μmの厚みとなるように形成した。
次に同様の工程で絶縁層グリーンシート22を形成した。材質としてはSiO粒子(平均粒子径2μm)15を用い、これを上記で用いたものと同様のバインダーと混合し、乾燥後20μmの厚さとなるようにした。
次に、図2に示すように、前述した磁性層グリーンシートを4層、絶縁層グリーンシートを1層、さらに磁性層グリーンシートを4層積層し、総厚820μmの積層グリーンシート23を形成した。
次に、この積層グリーンシートに対し、電気炉を用いて、窒素中で熱処理を実施し、有機バインダー成分を加熱分解することで、バインダー成分の絶対量を減らした。図4は熱処理温度と圧粉磁心のプレス前の質量変化を示したものである。減少分が有機バインダーの熱処理による減少分である。なお、大気アニールでは、250℃まで単調に減少し、その後徐々に飽和傾向となる(後述の図9)。本実施例では、加熱温度は400℃、加熱処理時間(400℃での保持時間)は60分とした。
また、加熱温度を振った実験も行なった。図5に本実施例で製作した圧粉磁心のμ′のプレス前熱処理温度依存性を示す。プレス前の熱処理によって、金属磁性粒子の充填率が増加し、μ′が上昇したことがわかる。
得られた熱処理済みの積層グリーンシートを圧力1177MPa(12ton/cm)で金型を用いることなくプレス成型した。プレス成型後の板厚は532μmであった。次いで、得られた圧粉磁心を電気炉により窒素雰囲気中で最高到達温度500℃、同温度での保持時間1時間の熱処理(プレス後熱処理)をした。熱処理は窒素雰囲気中で実施した。最後に、熱処理した圧粉磁心を所定の構造に加工した。
こうして得られた圧粉磁心は飽和磁化0.59T、周波数f=2MHzの時の実効透磁率μ′=100、tanδ=μ″/μ′=0.015の性能を示した。この積層圧粉磁心のμ′およびμ″の周波数特性を図6に示す。なお、比較のため、磁性層グリーンシートに用いたものと同じ絶縁被膜つき金属粒子を用いて、絶縁層を形成せずに、525μmの厚さで形成した圧粉磁心(比較例1)の特性を図6に示した。
<実施例2>
本実施例では、図1に示すような軟磁性金属粒子を用い、図3に示すような3層構造の圧粉磁心を作製した。作製方法は図2に示した実施例1の場合とほぼ同様であるが、磁性層グリーンシートの乾燥後の厚さを90μm/層、絶縁層グリーンシートの乾燥後の厚さを20μmとし、磁性層3層、絶縁層1層、磁性層3層、絶縁層1、磁性層3層の順に積層し、積層グリーンシートを得た。この積層グリーンシートを実施例1と同様の雰囲気、条件でプレス前熱処理を行い、実施例1と同様の条件でプレス、プレス後熱処理を実施した。圧粉磁心の板厚は550μmであった。この積層圧粉磁心のμ′およびμ″の周波数特性を実施例1と共に図6に示す。得られた積層圧粉磁心は、飽和磁化0.58T、周波数f=2MHzの時の実効透磁率μ′=100、tanδ=μ″/μ′=0.007の性能を示した。
<実施例3>
本実施例では、図7に示すような軟磁性金属粒子13の表面に厚い絶縁酸化被膜14を有する厚い絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子2(以下、粒子2と略す)を用いて形成した絶縁性磁性層グリーンシートを絶縁層グリーンシートとして用いた。
この粒子2は、粒子1と同じように、軟磁性金属粒子13として水アトマイズ法にて作製したNi78Mo5Fe粒子(平均粒径8μm)を用い、絶縁酸化被膜14には水ガラス法で厚みを200nmになるように制御して形成したSiO被膜を用いた。
上記のようにして得られた粒子2を実施例1で用いたグリーンシート形成工程と同様の方法で、絶縁磁性層グリーンシートを形成した。なお、乾燥後の厚さ50μmとなるように調整した。
本実施例で用いる磁性層グリーンシートとしては、実施例1で用いたものと同様の磁性層グリーンシートを用いた。本実施例では、磁性層グリーンシートを4層、絶縁磁性層グリーンシートを1層、磁性層グリーンシートを4層積層して総厚850μmの積層グリーンシートを形成した。この積層グリーンシートを窒素中で400℃のプレス前熱処理した後、実施例1と同様にして、プレス成型および500℃熱処理(プレス後熱処理)を実施し、積層圧粉磁心を形成した。プレス成型後の板厚は550μmであった。本実施例では絶縁層を完全非磁性ではなく、磁性粒子をもちいることで、飽和磁化を維持したまま周波数特性を向上することができることを示すものである。なお、本実施例においても、プレス前の熱処理温度と重量減少比率は実施例1の場合の図4と同様であり、μ′の温度依存性も実施例1の場合の図5と同様の傾向を示した。
得られた積層圧粉磁心は、飽和磁化0.61T、周波数f=2MHz時の実行透磁率μ′=98、tanδ=μ″/μ′=0.0l5の性能を示した。この積層圧粉磁心のμ′およびμ″の周波数特性を図8に示す。なお、比較のため、磁性層グリーンシートに用いたものと同じ絶縁被膜つき金属粒子を用いて、磁性絶縁層を形成せずに、525μmの厚さで形成した圧粉磁心(比較例2)の特性を図8に示した。
実施例1と実施例3の比較から、絶縁層グリーンシートを形成する粒子としてSiOからなる粒子を用いる代わりに厚い絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子を用いることで、周波数特性を維持したままで飽和磁化をさらに向上させることができることがわかる。なお、これらの実施例は磁性層を上下2層とした構造であるが、3層とすることで、実施例2に記載したように、さらに高周波特性を向上することができる。
<実施例4>
本実施例では、プレス前熱処理における雰囲気の影響を調べた。
プレス前熱処理を大気中で実施しても有機バインダーは減少するが、金属磁性粒子が酸化することにより、圧粉磁心のμ′が減少する。そこで、酸化の影響を少なくする方法として、前述した実施例で実施した不活性ガス雰囲気におけるプレス前熱処理と、真空中(0.133Pa(1×10−3Torr))でのプレス前熱処理を大気中熱処理と共に比較検討した。
即ち、プレス前熱処理を大気中、常圧窒素雰囲気下、及び真空中(0.133Pa(1×10−3Torr)の窒素雰囲気下)で行った以外は実施例1と同様にして積層圧粉磁心を形成し、プレス前熱処理による重量減少率を調べ、また、得られた圧粉磁心のμ′の周波数特性を調べた。
図9は窒素中で熱処理した場合と0.133Pa(1×10−3Torr)の真空下での熱処理をした場合と大気中熱処理をした場合の重量減少率を比較したものである。窒素中熱処理の場合、大気中よりは酸化の影響は低減するが、置換されきっていない酸素や、粒界などに残っている酸素の影響がまだ残っている。真空で熱処理した場合は粒界に残っている酸素も除去できるため、酸化の影響が低減する。
図10は大気中、窒素中、真空中でプレス前熱処理した場合の圧粉磁心のμ′の周波数特性を示す。なお、構造、製造方法は実施例1と同様であり、プレス前の熱処理温度は400℃とした。
μ′は大気<窒素<真空の順に大きくなり、酸素の影響を低減することでμ′を大きくすることができる。なお、今回の実施例では窒素を用いたが、他のガスを用いても、それが不活性ガスであれば同様の結果が得られる。また、真空中熱処理は0.133Pa(1×10−3Torr)での熱処理を実施したが、これにこだわるものではなく、減圧レベルでの酸素濃度を低減できれば効果はある。
本発明によれば、磁性層と絶縁層を積層した積層圧粉磁心を容易に形成することができ、磁心の高周波特性を向上することができる。この磁心を用いることにより、スイッチング電源を小型化、薄型化することができる。さらに、積層グリーンシートをプレス成型する前に熱処理を行うことにより、有機バインダーの量による透磁率低下を抑制し、磁性層と絶縁層を積層した積層圧粉磁心を容易に形成することができ、磁心の高周波特性を向上することができる。
絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子を示す模式図である。 本発明の実施例1の圧粉磁心の製造工程を示す模式図である。 本発明の実施例2で作製した圧粉磁心の構造模式図である。 本発明の実施例1のプレス前熱処理温度と重量減少率の関係を示す図である。 本発明の実施例1のプレス前熱処理温度とμ′との関係を示す図である。 本発明の実施例1、2、比較例1で作製した圧粉磁心の周波数特性を示す図である。 本発明の実施例3で用いた厚い絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子を示す模式図である。 本発明の実施例4で作製した圧粉磁心の周波数特性を示す図である。 本発明の実施例4のプレス前熱処理温度と重量減少率の関係の熱処理時雰囲気の影響を示す図である。 本発明の実施例4のプレス前熱処理時雰囲気のμ′の周波数特性に与える影響を示す図である。
符号の説明
1:絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子
2:厚い絶縁酸化被膜付き軟磁性金属粒子
11:軟磁性金属粒子
12:絶縁酸化被膜
13:軟磁性金属粒子
14:厚い絶縁酸化被膜
15:SiO粒子
21:磁性層グリーンシート
22:絶縁層グリーンシート
23:積層グリーンシート
24:プレス後の積層圧粉磁心

Claims (5)

  1. 表面に絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子をプレス成形して形成する圧粉磁心の製造方法において、表面に絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子を用いてグリーンシートを形成する磁性層グリーンシート形成工程と、絶縁性粒子を用いてグリーンシートを形成する絶縁層グリーンシート形成工程と、前記磁性層グリーンシート形成工程で得られた磁性層グリーンシートあるいは該磁性層グリーンシートを必要に応じて所定枚数積層した積層磁性層グリーンシートと、前記絶縁層グリーンシート形成工程で得られた絶縁層グリーンシートを交互に積層し、得られた積層シートをプレス成型するプレス成型工程とを有し、プレス成型前に前記積層シートを熱処理することを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  2. 前記熱処理が、不活性ガス中で実施されることを特徴とする請求項1記載の圧粉磁心の製造方法。
  3. 前記熱処理が、減圧下もしくは真空中で実施されることを特徴とする請求項1または2に記載の圧粉磁心の製造方法。
  4. 絶縁層グリーンシート形成に用いられる絶縁性粒子が、絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子であり、該絶縁酸化被膜の厚みが、前記磁性層グリーンシートを形成する表面に絶縁酸化被膜を有する軟磁性金属粒子の絶縁酸化被膜の厚みより厚いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
  5. 前記請求項1〜4のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法により得られてなる圧粉磁心。
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