JP2006241311A - 成型用ポリエステルフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】低い温度及び低い圧力下での成型性に優れ、かつ、耐溶剤性や耐熱性に優れ、環境負荷が小さく、さらに静電密着性に優れ、異物が少ない、成型用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】共重合ポリエステルを構成成分とし、かつアルカリ土類金属化合物(M)及びリン化合物(P)をMが0.05〜0.40モル%、M/Pモル比が1.0〜3.5となるように含有する二軸配向ポリエステルフィルムよりなる成型用ポリエステルフィルムであって、フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、25℃で10〜1000MPa、100℃で1〜100MPaであり、フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が100℃で10〜1000MPa、180℃で5〜40MPaであり、フィルムの微小張力下での熱変形率(長手方向)が175℃で−3%〜+3%である成型用ポリエステルフィルム。

Description

本発明は、成型性、特に低い温度および低い圧力下での成型性に優れ、かつ、耐溶剤性や耐熱性に優れ、環境負荷が小さく、さらに静電密着性に優れ、異物が少ない、家電、自動車の銘板用または建材用部材として好適に用いることのできる成型用ポリエステルフィルムに関する。
従来、成型用シートとしては、ポリ塩化ビニルフィルムが代表的であり、加工性などの点で好ましく使用されてきた。一方、該フィルムは火災などによりフィルムが燃焼した際の有毒ガス発生の問題、可塑剤のブリードアウトなどの問題があり、近年の耐環境性のニーズにより、環境負荷の小さい新しい素材が求められてきている。
上記要求を満足させるために、非塩素系素材としてポリエステル、ポリカーボネートおよびアクリル系樹脂よるなる未延伸シートが広い分野において使用されてきている。特に、ポリエステル樹脂よりなる未延伸シートは、機械的特性、透明性が良く、かつ経済性に優れており注目されている。例えば、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した、実質的に非結晶のポリエステル系樹脂を構成成分とする未延伸ポリエステル系シートが開示されている(例えば、特許文献1〜5を参照)。
特開平9−156267号公報 特開2001−71669号公報 特開2001−80251号公報 特開2001−129951号公報 特開2002−249652号公報
上記の未延伸ポリエステルシートは、成型性やラミネート適性に関しては市場要求を満足するものではあるが、未延伸シートであるため、耐熱性や耐溶剤性が充分ではなく市場の高度な要求を満足させるまでには至っていない。
上記の課題を解決する方法として、二軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いる方法が開示されている(例えば、特許文献6〜9を参照)。
特開平9−187903号公報 特開平10−296937号公報 特開平11−10816号公報 特開平11−268215号公報
しかしながら、上記方法は、耐熱性や耐溶剤性は改善されるものの、成型性が不十分となり、総合的な品質のバランスの点で、市場要求を満足させるものではなかった。
上記課題を解決する方法として、フィルムの100%伸張時応力を特定化する方法が開示されている(例えば、特許文献10を参照)
特開2001−347565号公報
該方法は前記の方法に比べ、成型性は改善されているものの、成型性に関する市場の高度な要求に十分に答えられるレベルには達していない。特に、成型温度の低温化に適合できる成型性や得られた成型品の仕上がり性に課題が残されていた。
本発明者等は、上記の課題解決について検討をし、すでに、特定した組成の共重合ポリエステル樹脂を原料とし、かつフィルムの100%伸張時応力を特定化することにより上記課題を改善する方法を提案している(例えば、特許文献11、12を参照)。
特願2002−233694 特願2003−309894
これらの方法により、成型時の成型圧力の高い金型成型法においては、市場要求を満たす、成型温度の低温化に適合可能な成型性や得られた成型品の仕上がり性を大幅に改善することができる。しかしながら、市場要求が近年強くなっている圧空成型法や真空成型法等の成型時の成型圧力が低い成型方法の場合、成型品の仕上がり性をさらに改善することが要望されている。
また、一般的に、ポリエステルフィルムは、ポリエステルチップを真空乾燥後、押出し機で溶融し、Tダイからシート状に押出し、回転冷却ドラム上で静電気を印可しながら未延伸シートを密着させ、次いで少なくとも一軸方向に延伸した後、熱固定処理を行うことにより製造される。
ポリエステルフィルムを成型用途に使用する場合、成型体の外観不良(しわ、凹凸、タルミなどの平面性不良)や印刷層を設けた際の印刷ずれや印刷抜けなどの原因となるフィルムの厚み均一性は極めて重要な特性であり、この特性をいかにして確保するかが重要である。また、生産性の面でも、生産性がキャスティング速度に直接依存するため、生産性の向上のためにキャスティング速度をいかにして高めるかも重要である。
これらを解決するためには、Tダイのスリット部から溶融押出したシート状物を回転冷却ドラム面で急冷する際に、該シート状物とドラム表面との密着性を高めることが必要となる。このシート状物とドラム表面の密着性を高める方法として、Tダイと回転冷却ドラムの間にワイヤー状の電極を設けて高電圧を印加し、未固化のシート状物面に静電気を析出させて該シートを冷却体表面に密着させながら急冷する方法(静電密着キャスト法)が有効である。
静電密着キャスト法を効果的に行うためには、シート状物とドラム表面との静電密着性を高めることが必要であり、そのためには、シート状物表面にいかに多くの電荷量を析出させるかが重要である。電荷量を多くするためには、ポリエステルを改質して溶融比抵抗を低くすることが有効であり、従来から多くの検討がなされている。
例えば、PET製造時にMg化合物、NaまたはK化合物、及びP化合物を含有させ、Mg原子含有量及びMg原子とP原子との原子比を特定範囲とすることで溶融比抵抗を低くする点、及び前記化合物の添加時期を特定することで、触媒に起因する異物を減少させる点、が開示されている(例えば、特許文献13を参照)。
特公平3−54129号公報
例えば、前記で例示した、分岐状脂肪族グリコールの代表例であるネオペンチルグリコール成分を共重合したポリエステルを、フィルムまたはシートの原料として使用する場合、前記共重合ポリエステルの溶融比抵抗値はポリエチレンテレフタレート(PET)と同様に高いため、フィルムの品質及び生産性の面から静電密着性を向上させるための改質は不可欠である。
しかしながら、ネオペンチルグリコールに代表される分岐状脂肪族グリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールに代表される脂環族グリコールを共重合したポリエステルの場合、触媒に対する親和性がPETと比べ悪い。そのため、PETで適用された方法を単純にそのまま適用しても、触媒や添加剤に起因する異物が析出したり、静電密着性の発現が困難となったりする場合があった。
本発明の目的は、前記従来技術の課題を解消し、成型性、特に低い温度および低い圧力下での成型性に優れ、かつ、耐溶剤性や耐熱性に優れ、環境負荷が小さく、さらに静電密着性に優れ、異物が少ない、成型用ポリエステルフィルムを提供することにある。
上記の課題を解決することができる本発明の成型用ポリエステルフィルムは、以下の構成からなる。
すなわち、本発明の第1の発明は、二軸配向ポリエステルフィルムよりなる成型用ポリエステルフィルムであって、
前記フィルムは共重合ポリエステルを構成成分とし、かつアルカリ土類金属化合物(M)及びリン化合物(P)を下記式(1)、(2)を満足する範囲で含有し、
フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において10〜1000MPa及び100℃において1〜100MPaであり、
フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであり、
フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率が、175℃において−3%〜+3%である、
ことを特徴とする成型用ポリエステルフィルムである。
0.05≦M≦0.40(モル%) …(1)
1.0≦M/P≦3.5(モル比) …(2)
第2の発明は、前記共重合ポリエステルが、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分を構成成分とすることを特徴とする第1の発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第3の発明は、前記二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、さらにグリコール成分として1,3−プロパンジオール単位または1,4−ブタンジオール単位を含むことを特徴とする第2の発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第4の発明は、前記成型用ポリエステルフィルムの面配向度が0.095以下であることを特徴とする第1〜3のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第5の発明は、前記成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率が6.0%以下であることを特徴とする第1〜4のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第6の発明は、前記成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの融点が200〜45℃であることを特徴とする第1〜5のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第7の発明は、前記成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.010未満であることを特徴とする第1〜6のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第8の発明は、前記二軸配向ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムに厚みが0.01〜5μmの表面層を積層してなる成型用ポリエステルフィルムであって、前記基材フィルムは実質的に粒子を含有せず、表面層にのみ粒子を含有させることを特徴とする第1〜7のいずれかの発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
第9の発明は、前記表面層が密着性改質樹脂と粒子から主として構成されていることを特徴とする第8の発明に記載の成型用ポリエステルフィルムである。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、加熱成型時の成型性、特に低い温度や低い圧力下での成型性に優れているので幅広い成型方法に適用ができ、かつ成型品として常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性、耐熱性に優れている。さらに、アルカリ土類金属化合物及びリン化合物を特定量含有させているため、静電密着性に優れ、かつ異物が少ない。また、環境負荷が小さいので、家電、自動車の銘板用または建材用部材として好適に用いることができるという利点がある。
本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における25℃での100%伸張時応力(F10025)がいずれも10〜1000MPaであり、かつフィルムの長手方向及び幅方向における100℃での100%伸張時応力(F100100)がいずれも1〜100MPaであることが重要である。F10025またはF100100が前記範囲の上限を超えると成型性が低下するので好ましくない。一方、前記範囲の下限未満では、成型品を使用する際の弾性や形態安定性が低下するので好ましくない。
フィルムの長手方向及び幅方向におけるF10025は10〜500MPaが好ましく、10〜200MPaがより好ましく、10〜150MPaが特に好ましい。
また、フィルムの長手方向及び幅方向におけるF100100の上限は、成型性の点から、90MPaが好ましく、80MPaがより好ましく、70MPaが特に好ましい。一方、F100100の下限は、成型品を使用する際の弾性や形態安定性の点から、2MPaが好ましく、3MPaがより好ましく、5MPaが特に好ましい。
本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであることが重要である。貯蔵粘弾性率(E′)を前記範囲内に制御することにより、成型性、特に低い温度および低い圧力での成型性が確保でき、未延伸シートでしか適用できなかった圧空成型法や真空成型法等の10気圧以下の低い成型圧力の成型法でも仕上がり性の良好な成型品が得られ、かつ寸法安定性の良好な成型品を得ることができる。
前記の100℃と180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は、低温低圧下での成型性と、寸法安定性などに影響するパラメータである。特に、100℃における貯蔵粘弾性率(E′)は低温低圧下での成型性と関連があり、180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は寸法安定性と関連があることを本発明者らは新たに知見した。前記の特定の温度における貯蔵粘弾性率(E′)が前記のフィルム特性を発現させるための重要な指標になっている理由について、本発明者らは、それらのメカニズムを明確に解明できていないが、フィルムを構成するポリエステルに含まれる共重合成分の分子構造が寄与しているためと推定している。
フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)は、フィルムの両方向とも100℃において20〜900MPaが好ましく、30〜800MPaがより好ましく、40〜700MPaが特に好ましい。また、180℃における貯蔵粘弾性率(E′)は7〜38MPaが好ましく、9〜35MPaがより好ましく、10〜30MPaが特に好ましい。
また、本発明における成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)が、175℃において−3%〜+3%であることが重要である。フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)は、180℃において−3%〜+3%であることが好ましく、185℃において−3%〜+3%であることが特に好ましい。
ここで、フィルムの熱変形率は、熱機械分析装置(TMA)を用いて、初期荷重49mN、昇温速度5℃/分の条件で測定し、温度変化にともなうフィルムの寸法変化を測定し、175℃における熱変形率を求めたものである。フィルムの長手方向における熱変形率(初期荷重49mN)を前記範囲に制御することにより、成型品の耐溶剤性を改善することができる。さらに、圧空成型法や真空成型法等の10気圧以下の低い圧力で成型する方法でも、仕上がり性の良好な成型品が得られる。なお、ポリエステル、ポリカーボネート、あるいはアクリル系樹脂より得られた未延伸シートでは、175℃におけるフィルムの長手方向における熱変形率が、本願発明の範囲外となる。
フィルムの微小張力(初期荷重49mN)下での熱変形率と耐溶剤性という一見相互に無関係と考えられる特性が相関を示す理由は明確ではない。しかしながら、前記の理由として、本発明の成型用ポリエステルフィルムは二軸配向されているため、延伸による分子配向の発現により、耐溶剤性や耐熱変形性を改善することができた、と本発明者らは推察している。
前記の(1)フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力、(2)フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)、(3)フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率は、前記の範囲を同時に満足することが重要である。フィルムがこれらの特性を同時に満足することにより、前記の各種の市場要求を満足する効果を有する本発明の成型用ポリエステルフィルムを得ることができる。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、共重合ポリエステルを構成成分として含む二軸配向ポリエステルフィルムであり、前記の特性を満足すれば、その構造、融点、分子量および組成等は限定されず任意である。以下に本発明の成型用ポリエステルフィルムの好ましい実施態様を記述する。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分とから構成される共重合ポリエステルを、二軸配向ポリエステルフィルムの原料の一部あるいは全部に用いることが好ましい。
前記共重合ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分が主としてテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体からなるが、全ジカルボン酸成分に対するテレフタル酸および/またはナフタレンジカルボン酸成分の量は70モル%以上、好ましくは85モル%以上、特に好ましくは95モル%以上、とりわけ好ましくは100モル%である。
また、分岐状脂肪族グリコールとしては、例えば、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオールなどが例示される。脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメチロールなどが例示される。
これらのなかでも、ネオペンチルグリコールや1,4−シクロヘキサンジメタノールが特に好ましい。さらに、本発明においては、上記のグリコール成分に加えて1,3−プロパンジオールや1,4−ブタンジオールを共重合成分とすることが、より好ましい実施態様である。これらのグリコールを共重合成分として使用することは、前記の特性を付与するために好適であり、さらに、透明性や耐熱性にも優れ、密着性改質層との密着性を向上させる点からも好ましい。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに下記のようなジカルボン酸成分及び/又はグリコール成分を1種又は2種以上を共重合成分として併用してもよい。
テレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体とともに併用することができる他のジカルボン酸成分としては、(1)イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ジフェニル−4,4′−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(2)シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマー酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸等の脂肪族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(3)シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体、(4)p−オキシ安息香酸、オキシカプロン酸等のオキシカルボン酸又はそれらのエステル形成性誘導体等が挙げられる。
一方、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールとともに併用することができる他のグリコール成分としては、例えばペンタンジオール、ヘキサンジオール等の脂肪族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSなどの芳香族グリコール及びそれらのエチレンオキサイド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ダイマージオール等が挙げられる。
さらに、必要に応じて、前記共重合ポリエステルに、さらにトリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロールプロパン等の多官能化合物を共重合させることもできる。
前記共重合ポリエステルを製造する際に用いる重合触媒としては、例えば、アルカリ土類金属化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物、チタン/ケイ素複合酸化物、ゲルマニウム化合物などが使用できる。これらのなかでも、チタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物が触媒活性の点から好ましい。
また、本発明は、直接エステル化法、エステル交換法の何れにおいても生産することができるが、エステル交換法の場合、上記のチタン化合物、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物の触媒以外にエステル交換触媒を使用する必要がある。前記エステル交換触媒としては、Mn化合物、Zn化合物等が好ましい.
前記の重合触媒は、エステル化反応、初期重合反応及び後期重合反応のいずれの反応時においても添加して良い。但し、チタン化合物を使用する場合には、エステル化反応前に添加するのが好ましく、他の重合触媒や安定剤はエステル化反応後に添加することが好ましい。またエステル交換法を選択した場合には、エステル交換触媒は、エステル交換前に添加することが必要である。
また、共重合ポリエステルの色調を改善するために、コバルト化合物を含有させても良い。コバルト化合物をリン化合物と併用する場合には、コバルト化合物とリン化合物を等モル含有させることが好ましい。
前記コバルト化合物としては、酢酸コバルト、塩化コバルト、安息香酸コバルト、クロム酸コバルト等が挙げられる。なかでも、酢酸コバルトが好ましい。
本発明では、静電密着性を改善するために、共重合ポリエステルに対し、特定量のアルカリ土類金属化合物及びリン化合物を含有させることが重要である。リン化合物は熱安定剤としても作用する。
前記アルカリ土類金属化合物としては、例えば、(1)アルカリ土類金属の水酸化物およびその水和物、(2)酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩等の低級脂肪族カルボン酸塩およびその水和物、(3)安息香酸塩、4−メチルフェニルカルボン酸塩、ナフチルカルボン酸塩等の芳香族カルボン酸塩およびその水和物、(4)メトキシド、エトキシド等のアルコキシド類等が挙げられる。なかでも、水酸化物およびその水和物、酢酸塩およびその水和物が好ましい。ここで、アルカリ土類金属原子としては、Mg、Ca、Sr、Ba等が挙げられる。
アルカリ土類金属化合物の好適な具体例としては、酢酸カルシウム、酢酸カルシウム1水和物、酢酸マグネシウム、酢酸マグネシウム4水和物、酢酸バリウムが挙げられる。なかでも、酢酸カルシウム1水和物、酢酸マグネシウム4水和物が特に好適である。
前記アルカリ土類金属化合物(M)は、共重合ポリエステルに対し0.05〜0.40mol%含有させることが好ましい。アルカリ土類金属化合物(M)の含有量の下限値は、0.07mol%がさらに好ましく、特に好ましくは0.1mol%である。アルカリ土類金属化合物(M)の含有量が共重合ポリエステルに対して0.05mol%未満では、共重合ポリエステルの静電密着性を表わすρi値を十分に低くすることができないため、厚みの均一性が低下し、得られたフィルムの加工性が大きく低下する.
一方、アルカリ土類金属化合物(M)の含有量の上限値は、0.4mol%がさらに好ましく、特に好ましくは0.2mol%である。アルカリ土類金属化合物(M)の含有量が0.4mol%を超えると、共重合ポリエステルの異物量が増加したり、該共重合ポリエステルの黄色味が増したり、異物や色調の点で不十分となる。
また、リン化合物としては、例えば、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸およびそれらの誘導体等が挙げられる。好適な具体例としては、リン酸、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、リン酸モノメチル、リン酸ジメチル、リン酸モノブチル、リン酸ジブチル、亜リン酸、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリブチル、メチルホスホン酸、メチルホスホン酸ジメチル、エチルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジメチル、フェニルホスホン酸ジエチル、フェニルホスホン酸ジフェニルが挙げられる。なかでも、リン酸トリメチル、リン酸が特に好適である。
本発明では、リン化合物の含有量は、アルカリ土類金属化合物の含有量によって決めることが好ましい。共重合ポリエステルに対するアルカリ土類金属化合物(M)の含有量とリン化合物(P)の含有量とのモル比(M/P)は1.0〜3.5の範囲が好ましい。前記モル比(M/P)の下限値は、1.2がさらに好ましく、特に好ましくは1.5である。前記モル比(M/P)が1.0未満では、静電密着性を表わすρi値を十分に得ることができないため、厚みの均一性が低下し、得られたフィルムの加工性が大きく低下する.
一方、前記モル比(M/P)の上限値は、3.5がさらに好ましく、特に好ましくは3.0である。前記モル比(M/P)が3.5を越えると、フリーのアルカリ土類金属化合物が増えることにより、耐熱性が悪化したり、あるいは異物量が増加したりするなど品質が低下してしまう。
本発明においては、アルカリ金属化合物を微量添加することで、更に静電密着性を改良することができる。アルカリ金属化合物は、その単独使用では静電密着性の向上効果は小さいが、後述するアルカリ土類金属化合物及びリン化合物を組み合わせることによって、静電密着性を著しく改善することができる。
アルカリ金属化合物の金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、アルカリ金属化合物としては、これら金属の水酸化物、酢酸塩、炭酸塩、脂肪族カルボン酸塩、アルコキサイド等が挙げられる。好ましいアルカリ金属化合物としては、水酸化リチウム、酢酸リチウム、炭酸リチウム、水酸化ナトリウム、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、ナトリウムエトキシド、水酸化カリウム、酢酸カリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。これらのうち、酢酸ナトリウムが最も好ましい。これらアルカリ金属化合物は単独で使用しても良く、2種以上を併用してもよい。
アルカリ金属化合物は、アルカリ金属原子として酸成分に対して0.005〜0.050モル%の範囲で反応系内に添加することが、静電密着性向上の点から重要である。添加量の下限値は、0.005モル%が好ましく、特に好ましくは0.008モル%である。アルカリ金属原子として0.005モル%未満の添加量では、静電密着性の改良効果が小さい。
一方、アルカリ金属化合物の添加量の上限値は、0.050モル%が好ましく、0.035モル%が特に好ましい。0.050モル%を超える添加量では、静電密着性の改良効果が頭打ちとなり、むしろ過剰のアルカリ金属化合物に起因する異物が生成するため好ましくない。
本発明で用いる共重合ポリエステルにおいて、アルカリ土類金属化合物の添加時期は、オリゴマー酸価AVo(オリゴマー1ton中のカルボキシル末端の総数)が700eq/ton以下が好ましく、さらに好ましくは500eq/ton以下、特に好ましくは400eq/tonである。AVoが700eq/tonを越えると、ポリマー中の未溶融物量が多くなり、透明性や、商品価値が悪化する。
本発明で用いる共重合ポリエステルにおいて、リン化合物の添加時期は、アルカリ土類金属化合物と同時期または、添加後が好ましい。リン化合物をアルカリ土類金属より前に添加すると、未反応のリン化合物により、共重合ポリエステルの副生成物が増加してしまう。
本発明において、静電密着性を示す特性値であるρi値は、アルカリ土類金属、リン化合物及びアルカリ金属の含有量によって制御することができる。ρi値(×10-8Ω・cm)は、0.02〜1.00の範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.02〜0.65、特に好ましくは0.02〜0.4の範囲である。ρi値(×10-8Ω・cm)の下限値は、0.02であるが、実質的にこの下限値より下げるのは不可能である。
一方、前記ρi値(×10-8Ω・cm)の上限値は、1.00である。これよりもρi値が大きいと、フィルムの製膜時における静電密着性が悪化し、厚みの均一性が低下し、得られたフィルムの加工性が大きく低下する。また、キャスティング速度が低下する。
また、前記共重合ポリエステルのチップの内部を、位相差顕微鏡を用いて、倍率100倍で20視野観察したときの、大きさが10μm以上の粒子の合計個数が50個以下であることが好ましく、さらに好ましくは30個以下、特に好ましくは10個以下である。大きさが10μm以上の粒子の個数が50個を越えると共重合ポリエステル中の未溶融物が多く、異物となったり、外観が悪くなったりする。
前記共重合ポリエステルは、成型性、密着性、製膜安定性の点から、固有粘度が0.50dl/g以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.55dl/g以上、特に好ましくは0.60dl/g以上である。固有粘度が0.50dl/g未満では、成型性が低下する傾向がある。また、メルトラインに異物除去のためのフィルターを設けた場合、溶融樹脂の押出時における吐出安定性の点から、固有粘度の上限を1.0dl/gとすることが好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記共重合ポリエステルをそのままフィルム原料として用いてもよいし、共重合成分が多い共重合ポリエステルをホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)とブレンドして、共重合成分量を調整しても構わない。該ホモポリエステルも前述した共重合ポリエステルが具備することが好ましい特性である静電密着性や異物特性を具備してなることが好ましい。
特に、後者のブレンド法を用いてフィルムを製膜することによって、共重合ポリエステルのみを用いた場合と同等の柔軟性を維持しながら透明性と高い融点(耐熱性)を実現することができる。また、高融点のホモポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)のみを用いた場合に対し、高い透明性を維持しながら柔軟性と実用上問題のない融点(耐熱性)を実現することができる。
また、前記共重合ポリエステルと、ポリエチレンテレフタレート以外のホモポリエステル(例えば、ポリテトラメチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート)を少なくとも1種以上ブレンドして、本発明の成型用ポリエステルフィルムの原料として使用することは、成型性の点からもさらに好ましい。
前記のポリエステルフィルムの融点は、耐熱性及び成型性の点から、200〜245℃であることが好ましい。使用するポリマーの種類や組成、さらに製膜条件を前記融点の範囲内に制御することにより、成型性と仕上がり性とのバランスが取れ、高品位の成型品を経済的に生産することができる。ここで、融点とは、いわゆる示差走査熱量測定(DSC)の1次昇温時に検出される融解時の吸熱ピーク温度のことである。該融点は、示差走査熱量分析装置(デュポン製、V4.OB2000型)を用いて、昇温速度20℃/分で測定して求めた。融点の下限値は、210℃がさらに好ましく、特に好ましくは230℃である。融点が200℃未満であると、耐熱性が悪化する傾向がある。そのため、成型時や成型品の使用時に高温にさらされた際に、問題となる場合がある。
前記融点の上限値は、耐熱性の点からは高いほうが良いが、ポリエチレンテレフタレート単位を主体とした場合、融点が245℃を超えるフィルムでは、成型性が悪化する傾向がある。また、透明性も悪化する傾向がある。さらに、高度な成型性や透明性を得るためには、融点の上限を240℃に制御することが好ましい。
また、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性を改善するために、フィルム表面に凹凸を形成させることが好ましい。フィルム表面に凹凸を形成させる方法としては、一般にフィルム中に粒子を含有させる方法が用いられる。
前記粒子としては、平均粒子径が0.01〜10μmの内部析出粒子、無機粒子及び/又は有機粒子などの外部粒子が挙げられる。平均粒子径が10μmを越える粒子を使用すると、フィルムの欠陥が生じ易くなり、意匠性や透明性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径は、滑り性や巻き取り性などのハンドリング性の点から、下限は0.10μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは0.50μmである。一方、前記粒子の平均粒子径は、透明性や粗大突起によるフィルム欠点の低減の点から、上限は5μmとすることがさらに好ましく、特に好ましくは2μmである。
なお、粒子の平均粒子径は、少なくとも200個以上の粒子を電子顕微鏡法により複数枚写真撮影し、OHPフィルムに粒子の輪郭をトレースし、該トレース像を画像解析装置にて円相当径に換算して算出する。
前記外部粒子としては、例えば、湿式及び乾式シリカ、コロイダルシリカ、珪酸アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、マイカ、カオリン、クレー、ヒドロキシアパタイト等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸類等を構成成分とする有機粒子等を使用することができる。なかでも、乾式、湿式及び乾式コロイド状シリカ、アルミナ等の無機粒子及びスチレン、シリコーン、アクリル酸、メタクリル酸、ポリエステル、ジビニルベンゼン等を構成成分とする有機粒子等が、好ましく使用される。これらの内部粒子、無機粒子及び/又は有機粒子は二種以上を、本願発明で規定した特性を損ねない範囲内で併用してもよい。
さらに、前記粒子のフィルム中での含有量は0.001〜10質量%の範囲であることが好ましい。0.001質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、10質量%を越えると、粗大突起の形成、製膜性や透明性の悪化などの原因となりやすい。
また、フィルム中に含有させる粒子は、一般的には屈折率がポリエステルと異なるため、フィルムの透明性を低下させる要因となる。
成型品は意匠性を高めるために、フィルムを成型する前にフィルム表面に印刷が施される場合が多い。このような印刷層は、成型用フィルムの裏側に施されることが多いため、印刷鮮明性の点から、フィルムの透明性が高いことが要望されている。
そのため、フィルムのハンドリング性を維持しながら、高度な透明性を得るために、主層の基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず、厚みが0.01〜5μmの表面層にのみ粒子を含有させた積層構造を有する積層フィルムを用いることが有効である。
なお、上記でいう「基材フィルム中に実質的に粒子を含有させず」とは、例えば無機粒子の場合、ケイ光X線分析で無機元素を定量した場合に検出限界以下となる含有量を意味する。これは意識的に粒子を基材フィルムに添加させなくても、外来異物由来のコンタミ成分などが混入する場合があるためである。
厚みの薄い表面層の形成は、コーティング法または共押出し法によって行うことができる。なかでも、コーティング法の場合、粒子を含有する密着性改質樹脂からなる組成物を塗布層として用いることで、印刷層との密着性も改良することができるので好ましい方法である。前記の密着性改質樹脂としては、ポリエステル、ポリウレタン、アクリル系重合体および/またはそれらの共重合体から選ばれた少なくとも1種からなる樹脂が好ましい。
さらに、主層のポリエステルフィルムと密着性改質層との密着性をさらに向上させるために、予め主層のポリエステルフィルム表面を表面処理し、この表面処理面に密着性改質層を設けてもよい。表面処理の方法としては、例えば、(1)コロナ放電処理、プラズマ放電処理、紫外線(UV)照射処理、放射線(EB)照射処理などの活性エネルギー線照射による方法、(2)火炎処理、(3)PVD、CVDなどのベーパーデポジット法、などが挙げられる。
このような積層構造とすることで、フィルムのハンドリング性を維持しながら、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)を0.010未満とすることができる。
前記成型用ポリエステルフィルムは、特に透明性が必要とされる用途に使用する場合には、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)を0.010未満とすることが、透明性及び印刷鮮明性の点から好ましい。前記H/dは、0を越え0.010未満であることがより好ましく、特に好ましくは0を越え0.009以下である。なお、本願発明においては、前記H/dの数値は小数第3位で記載しているが、小数第4位以降は四捨五入せず、切り捨てる。例えば、0.0099であっても0.009とする。
前記H/dの下限値はゼロに近いほど透明性や印刷鮮明性の点から好ましい。しかしながら、重要最小限の凹凸をフィルム表面に形成しないと、滑り性や巻き性などのハンドリング性が悪化し、フィルム表面に傷がつく場合や生産性が悪化する場合がある。したがって、H/dの下限値を0.001とすることが好ましく、特に好ましくは0.005である。また、バックライトを用いる透光銘板の場合には、より高度な透明性が要求されるので、前記H/dはさらにゼロに近いほど好ましい。
前記表面層に含有させる粒子としては、前記で記載した粒子と同様のものを使用することができる。粒子のなかでも、シリカ粒子、ガラスフィラー、シリカ−アルミナ複合酸化物粒子は屈折率がポリエステルに比較的近いため、透明性の点から特に好適である。
また、前記表面層に平均粒子径が10μmを越える粒子を含有させると、フィルム表面に粗大突起が形成される頻度が増加し、意匠性が悪化する傾向がある。一方、平均粒子径が0.01μm未満の粒子では、フィルムの滑り性や巻き取り性などのハンドリング性が低下する傾向がある。前記粒子の平均粒子径の好ましい範囲は、主層の基材フィルム中に粒子を含有させる場合と同じである。
さらに、前記表面層における粒子含有量は、0.01〜25質量%の範囲であることが好ましい。0.01質量%未満の場合、フィルムの滑り性が悪化したり、巻き取りが困難となったりするなどハンドリング性が低下しやすくなる。一方、25質量%を越えると、透明性や塗布性が悪化しやすくなる。
本発明のポリエステルフィルムは、他の機能を付与するために、種類の異なるポリエステルを用い、公知の方法で積層構造とすることができる。かかる積層フィルムの形態は、特に限定されないが、例えば、A/Bの2種2層構成、B/A/B構成の2種3層構成、C/A/Bの3種3層構成の積層形態が挙げられる
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、二軸配向フィルムであることが重要である。本発明においては、二軸配向による分子配向により、前記のフィルムの微小張力(初期荷重49mN)下での熱変形率を本発明の範囲内に制御することができ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や寸法安定性が改善される。すなわち、未延伸シートの成型性の良さを維持しつつ、未延伸シートの欠点である耐溶剤性や耐熱性を改善したことが本発明の特徴の一つである。
前記二軸配向ポリエステルフィルムの製造方法は特に限定されないが、例えばポリエステル樹脂を必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化し、未延伸シートを得た後、かかる未延伸シートを二軸配向する方法が例示される。
二軸配向方法としては、未延伸シートをフィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)に延伸、熱処理し、目的とする面内配向度を有する二軸配向フィルムを得る方法が採用される。これらの方式の中でも、フィルム品質の点で、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸するMD/TD法、又は幅方向に延伸した後、長手方向に延伸するTD/MD法などの逐次二軸配向方式、長手方向及び幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸配向方式が望ましい。また、同時二軸配向法の場合、リニアモーターで駆動するテンターを用いてもよい。さらに、必要に応じて、同一方向の延伸を多段階に分けて行う多段延伸法を用いても構わない。
二軸配向する際のフィルム延伸倍率としては、長手方向と幅方向に1.6〜4.2倍とすることが好ましく、特に好ましくは1.7〜4.0倍である。この場合、長手方向と幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよいし、同一倍率としてもよい。長手方向の延伸倍率は2.8〜4.0倍、幅方向の延伸倍率は3.0〜4.5倍で行うことがより好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムを製造する際の延伸条件は、特に限定されるものではない。しかしながら、本発明で規定した上記特性を満足させるためには、例えば、下記の条件を採用することが選択することが好ましい。
縦延伸においては、後の横延伸がスムースにできるように、延伸温度は50〜110℃、延伸倍率は1.6〜4.0倍とすることがさらに好ましい。
通常、ポリエチレンテレフタレートを延伸する際に、適切な条件に比べ延伸温度が低い場合は、横延伸の開始初期で急激に降伏応力が高くなるため、延伸ができない。また、たとえ延伸ができても厚みや延伸倍率が不均一になりやすいため好ましくない。
また、適切な条件に比べ延伸温度が高い場合は初期の応力は低くなるが、延伸倍率が高くなっても応力は高くならない。そのため、25℃における100%伸張時応力が小さいフィルムとなる。よって、最適な延伸温度をとることにより、延伸性を確保しながら配向の高いフィルムを得ることができる。
しかしながら、前記共重合ポリエステルが共重合成分を1〜40モル%含む場合、降伏応力をなくすように延伸温度を高くしていくと、延伸応力は急激に低下する。特に、延伸の後半でも応力が高くならないため、配向が高くならず、25℃における100%伸張時応力が低下する。
このような現象は、フィルムの厚さが60〜500μmで発生しやすく、特に厚みが100〜300μmのフィルムで顕著に見られる。そのため、本発明の共重合したポリエステルを用いたフィルムの場合、横方向の延伸温度は、以下の条件とすることが好ましい。
まず、予熱温度は50℃〜150℃とすることが好ましい。次いで、横延伸の前半部では延伸温度は予熱温度に対して−20℃〜+25℃とすることが好ましく、特に好ましくは−15℃〜+25℃とする。また、横延伸の後半部では、延伸温度は前半部の延伸温度に対して0℃〜−40℃とすることが好ましく、特に好ましくは−10℃〜−40℃とする。このような条件を採用することにより、横延伸の前半では降伏応力が小さいため延伸しやすく、また後半では配向しやすくなる。なお、横方向の延伸倍率は、2.5〜5.0倍とすることが好ましい。その結果、本発明で規定したF10025やF100100を満足するフィルムを得ることが可能である。
さらに、二軸配向後にフィルムの熱処理を行うが、この熱処理は、オーブン中、あるいは、加熱されたロール上など、従来公知の方法で行うことができる。また、熱処理温度及び熱処理時間は必要とされる熱収縮率のレベルによって任意に設定することができる。熱処理温度は120〜245℃の範囲が好ましく、特に好ましくは150〜240℃である。熱処理時間は、1〜60秒間行うことが好ましい。なお、かかる熱処理はフィルムをその長手方向及び/又は幅方向に弛緩させつつ行ってもよい。なお、本発明においては、前記熱処理温度は前記の熱処理温度の範囲内でも、使用するフィルム原料の組成によって好適な範囲が異なるので、フィルムの面配向度が0.095以下となるように熱処理温度を設定することが重要である。その理由は、後で詳述する。
フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率を小さくするためには、熱処理温度を高くすること、熱処理時間を長くすること、弛緩処理を行うことが好ましい。具体的には、フィルムの長手方向及び幅方向における150℃での熱収縮率を6.0%以下とするためには、熱処理温度は200〜220℃で、弛緩率1〜8%で弛緩させながら行うことが好ましい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行ってもよい。
フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率を小さくするために、製造ラインを長くして熱処理時間を長くすることは設備上の制約により困難である。また、フィルムの送り速度を遅くすると、生産性が低下してしまう。このように、延伸区間までは区間温度を100℃近傍とかなり低温にすることが重要である。一方、熱固定では200℃程度の高温に速やかに昇温することが重要である。したがって、該課題を解決する方策として熱処理ゾーンに遠赤外線ヒーターを設置し加熱を補強することが好ましい実施態様として推奨される。
さらに、延伸区間と熱固定区間の間に1m以上の断熱区間を設け、断熱区間以後の加熱効率を上げる方法が挙げられる。具体的には、区間ごとの仕切りを強化して熱流の漏れを小さくすることで加熱効率を上げることができる。また、風量のバランス及び強さを調整することにより、風量を確保しつつ、オーブン内圧力を調整し、熱流の漏れを抑制する方法を用いてもよい。また、熱風加熱では不足する加熱に関しては強加熱区間に赤外線ヒーターを付加する方法も好適である。そのほかに、熱固定区間の長さ、区画数を増やすことで、加熱量を増加させる。などの方法も有効である。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaである。このような貯蔵粘弾性率(E′)を達成するためには、前記の共重合ポリエステルを構成成分として含む二軸配向フィルムを製造する際に、フィルムの面配向度を特定範囲に制御することも重要である。すなわち、フィルムの面配向度を0.095以下に低くすることが好ましく、特に好ましくは0.001〜0.090に制御する。このように面配向度を低くすることにより、前記のフィルムの貯蔵弾性率(E′)を小さくすることができる。
しかしながら、単にフィルムの面配向度を低くしただけでは、180℃におけるフィルムの貯蔵粘弾性率(E′)が小さくなりすぎる。本発明の好ましい実施態様である分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを共重合成分とする共重合ポリエステルをフィルム原料として用いる場合、該グリコール類の分子構造の嵩高さにより高温での分子運動性を抑制することができる。さらに、特定の延伸条件を用いてフィルムの面配向度を低くすることによる相乗手段により、前記の180℃におけるフィルムの貯蔵粘弾性率(E′)を前記範囲に制御することができる。また、好ましい実施態様として例示した1,3−プロパンジオール残基や1,4−ブタンジオール残基の併用効果は、該成分導入により共重合ポリエステルの分子中に微結晶が形成され、前記の180℃の貯蔵粘弾性率(E′)が小さくなりすぎることを抑制する効果が発現されたためであると推察される。
上記のごとく二軸配向ポリエステルフィルムの面配向度を低いレベルに設定することが好ましい実施態様の一つであるが、該特性を付与する手段も限定はされず任意である。一般に、面配向度を下げる手段としては延伸倍率を下げる方法と熱固定温度を上げる方法が知られているが、前者の方法はフィルムの厚み斑が悪化するので好ましくない。したがって、後者の方法が好ましい。後者の場合は前記の課題が生ずるが、好ましい実施態様として例示した方法等で回避できる。
また、本発明においては二軸配向ポリエステルフィルムの材料として、共重合ポリエステルを用いることが重要である。共重合ポリエステルは、融点がホモポリエステルに比して低いため、熱固定温度を高くすると、横延伸工程でフィルムを保持するクリップにフィルムが融着しやすくなる。したがって、テンター出口でクリップがフィルムを開放するときにクリップ近傍が充分に冷却することが重要である。
具体的には、フィルムとクリップとの融着を防止するために、(1)クリップが加熱されにくいように、クリップ部分に熱遮蔽壁を設ける方法、(2)クリップ冷却機構をテンターに付加する方法、(3)冷却能力の強化を行うために熱固定後の冷却区間を長く設定し、フィルム全体の冷却を十分行う方法、(4)冷却区間の長さ、区画数を増やすことで、冷却効率を増加させる方法、(5)クリップの戻り部分が炉の外側を走行するタイプを用いてクリップの冷却を強化する方法、などを採用することが好ましい。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、二軸配向ポリエステルを基材とし、前記の基材の片面に接着性改質樹脂を含む易印刷性被覆層Aを、他面に粒子および/またはワックスを含む易滑性被覆層Bを積層してなる、両面異種の被覆層を形成させた積層フィルムとすることができる。この積層構成により、多色刷の高速UVオフセット印刷機における給紙安定性、インキ密着性、湿し水適性などに優れ、高品位の印刷が可能となり、例えば、ダミー飲料缶用等印刷面の高級感や印刷の経済性が要求される分野に好適である。
前記の易印刷性被覆層Aは、前記の基材の成型用ポリエステルフィルムの印刷性を向上させる機能を有すればその組成等は限定されなく任意であるが、易印刷性被覆層Aが、(a)疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトさせたポリエステル系グラフト共重合体、(b)平均粒子径が1.0〜5.0μmの粒子、を含む組成物からなることが好ましい実施態様である。
前記の易滑性被覆層Bは、前記の基材の成型用ポリエステルフィルムの滑り性を向上させる機能を有すればその組成等は限定されなく任意であるが、易滑性被覆層Bが、(c)共重合ポリエステル樹脂、(d)スルホン酸塩基を有する化合物、(e)平均粒子径が1.0〜5.0μmの粒子、(f)高分子系ワックス、を含む組成物からなることが好ましい実施態様である。
前記の疎水性共重合ポリエステル樹脂に少なくとも1種の二重結合を有する酸無水物をグラフトさせたポリエステル系グラフト共重合体について詳しく説明する。
ポリエステル系グラフト共重合体の「グラフト化」とは、幹ポリマー主鎖に、主鎖とは異なる重合体からなる枝ポリマーを導入することにある。グラフト重合は、一般には、疎水性共重合ポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤を使用して少なくとも一種のラジカル重合性単量体を反応せしめることにより実施される。
グラフト化反応終了後の反応生成物は、所望の疎水性共重合ポリエステル樹脂とラジカル重合性単量体とのグラフト共重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性共重合ポリエステル樹脂および疎水性共重合ポリエステル樹脂にグラフト化しなかったラジカル重合性単量体をも含有している。本発明では、ポリエステル系グラフト共重合体とは、前記のポリエステル系グラフト共重合体だけでなく、これに加えて、グラフト化を受けなかった疎水性共重合ポリエステル樹脂、グラフト化しなかったラジカル重合性単量体なども含む反応混合物をも包含する。
疎水性共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体をグラフト重合させた反応物の酸価は、600eq/106g以上であることが好ましい。より好ましくは、反応物の酸価は1200eq/106g以上である。反応物の酸価が600eq/106g未満である場合は、プライマー層(本発明でいう被覆層A)に塗布される印刷層との密着性が十分とはいえない。
また、疎水性共重合ポリエステル樹脂とラジカル重合性単量体の質量比率は、ポリエステル/ラジカル重合性単量体=40/60〜95/5の範囲が望ましく、より望ましくは55/45〜93/7、最も望ましくは60/40〜90/10の範囲である。
疎水性共重合ポリエステル樹脂の質量比率が40質量%未満の場合、ポリエステル樹脂の優れた密着性を発揮することができない。一方、疎水性共重合ポリエステル樹脂の質量比率が95質量%を超える場合、ポリエステル樹脂の欠点であるブロッキングが起こりやすくなる。
前記のグラフト重合反応物は、有機溶媒の溶液もしくは分散液または水系溶媒の溶液もしくは分散液の形態になる。特に、水系溶媒の分散液、すなわち、水分散性樹脂の形態が、作業環境、塗布性の点で好ましい。この様な水分散性樹脂を得るには、通常、有機溶媒中で、前記疎水性共重合ポリエステル樹脂に、親水性ラジカル重合性単量体を含むラジカル重合性単量体をグラフト重合し、次いで、水添加、有機溶媒を留去することにより達成される。
前記の水分散性樹脂は、レーザー光散乱法により測定される平均粒子径は500nm以下であり、半透明ないし乳白色の外観を呈する。重合方法の調整により、多様な粒子径の水分散性樹脂が得られるが、水分散性樹脂の平均粒子径は10〜500nmが好ましく、分散安定性の点から、400nm以下がさらに好ましく、特に好ましくは300nm以下である。水分散性樹脂の平均粒子径が500nmを越えると、被覆膜表面の光沢が低下し、被覆物の透明性が低下しやすくなる。一方、水分散性樹脂の平均粒子径が10nm未満の場合、耐水性が低下しやすくなる。
水分散性樹脂の重合に使用する親水性ラジカル重合性単量体とは、親水基を有するか、後で親水基に変化できる基を有するラジカル重合性単量体を意味する。親水基を有するラジカル重合性単量体としては、カルボキシル基、水酸基、リン酸基、亜リン酸基、スルホン酸基、アミド基、第4級アンモニウム塩基などを含むラジカル重合性単量体を挙げることができる。
一方、親水基に変化できる基を有するラジカル重合性単量体としては、酸無水物基、グリシジル基、クロル基などを含むラジカル重合性単量体を挙げることができる。これらの中で、水分散性の点から、カルボキシル基が好ましく、カルボキシル基を有するか、カルボキシル基を発生する基を有するラジカル重合性単量体が好ましい。
また、水分散性樹脂の酸価を高めるために、カルボキシル基を含有しているか、カルボキシル基を発生する基を有するラジカル重合性単量体が含まれているほうが好ましい。
グラフト共重合体のガラス転移温度は、特に限定されないが、高温高湿環境下での密着性の点から、好ましくは20℃以上、より好ましくは40℃以上である。
本発明において、疎水性共重合ポリエステル樹脂とは、本来それ自身で水に分散または溶解しない本質的に水不溶性の共重合ポリエステル樹脂である。水に分散するまたは溶解するポリエステル樹脂を、グラフト重合に使用すると、本発明の目的である密着性、耐水性が悪くなる。
この疎水性共重合ポリエステル樹脂のジカルボン酸成分の組成は、芳香族ジカルボン酸60〜99.5モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜40モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸0.5〜10モル%であることが好ましい。芳香族ジカルボン酸が60モル%未満である場合や脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸が40モル%を越えた場合は、接着強度が低下する。
また、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸が0.5モル%未満の場合、ポリエステル樹脂に対するラジカル重合性単量体の効率的なグラフト化が行われにくくなり、逆に10モル%を越える場合は、グラフト化反応の後期に余りにも粘度が上昇し、反応の均一な進行を妨げるので好ましくない。より好ましくは、芳香族ジカルボン酸は70〜98モル%、脂肪族ジカルボン酸および/または脂環族ジカルボン酸0〜30モル%、重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸2〜7モル%である。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸を挙げることができる。5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの親水基含有ジカルボン酸は、本発明の目的である耐水性が低下する点から、使用しない方が好ましい。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸を挙げることができ、脂環族ジカルボン酸としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸およびその酸無水物を挙げることができる。
重合性不飽和二重結合を含有するジカルボン酸の例としては、α,β−不飽和ジカルボン酸として、例えば、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、不飽和二重結合を含有する脂環族ジカルボン酸として、例えば、2,5−ノルボルネンジカルボン酸無水物、テトラヒドロ無水フタル酸を挙げることができる。このうち好ましいのは、重合性の点から、フマル酸、マレイン酸および2,5−ノルボルネンジカルボン酸である。
一方、グリコール成分は、炭素数2〜10の脂肪族グリコールおよび/または炭素数6〜12の脂環族グリコールおよび/またはエーテル結合含有グリコールよりなるが、炭素数2〜10の脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールを挙げることができ、炭素数6〜12の脂環族グリコールとしては、例えば、1,4−シクロヘキサンジメタノールを挙げることができる。
エーテル結合含有グリコールとしては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、さらにビスフェノール類の二つのフェノール性水酸基に、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドを付加して得られるグリコール類、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンを挙げることができる。ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールも必要に応じて用いることができる。
前記の共重合ポリエステル樹脂中に、0〜5モル%の3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールを共重合することができるが、3官能以上のポリカルボン酸としては、例えば、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸、トリメシン酸、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメリテート)、グリセロールトリス(アンヒドロトリメリテート)が用いられる。一方、3官能以上のポリオールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールが用いられる。3官能以上のポリカルボン酸および/またはポリオールは、全酸成分または全グリコール成分に対して0〜5モル%、望ましくは0〜3モル%の範囲で共重合されるが、5モル%を越えると重合時のゲル化が起こりやすく、好ましくない。
また、疎水性共重合ポリエステル樹脂は、重量平均分子量が5,000〜50,000の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が5,000未満の場合は、接着強度が低下しやすくなり、逆に50,000を越えると重合時のゲル化がおこりやすくなる。
重合性不飽和単量体としては、例えば、(1)フマル酸、フマル酸モノエチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチルなどのフマル酸のモノエステルまたはジエステル、(2)マレイン酸とその無水物、マレイン酸モノエチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなどのマレイン酸のモノエステルまたはジエステル、(3)イタコン酸とその無水物、イタコン酸のモノエステルまたはジエステル、(4)フェニルマレイミドなどのマレイミド、(5)スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレンなどのスチレン誘導体、また、その他に、ビニルトルエン、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
また、アクリル重合性単量体としては、例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(ここで、アルキル基は、メチル基、エチル基、N−プロピル基、イソプロピル基、N−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基など);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどのヒドロキシ含有アクリル単量体;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどのアミド基含有アクリル単量体;N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどのアミノ基含有アクリル単量体;グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのエポキシ基含有アクリル単量体;アクリル酸、メタクリル酸およびそれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩)などのカルボキシル基またはその塩を含有するアクリル単量体が挙げられる。好ましくは、マレイン酸無水物とそのエステルである。上記モノマーは1種もしくは2種以上を用いて共重合させることができる。
グラフト重合は、一般には、疎水性共重合ポリエステル樹脂を有機溶剤中に溶解させた状態において、ラジカル開始剤およびラジカル重合性単量体混合物を反応せしめることにより実施される。グラフト化反応終了後の反応生成物は、疎水性共重合ポリエステル樹脂−ラジカル重合性単量体混合物間のグラフト共重合体の他に、グラフト化を受けなかった疎水性共重合ポリエステル樹脂および疎水性共重合ポリエステル樹脂にグラフト化しなかったラジカル重合体をも含有しているが、本発明におけるグラフト重合体とは、これらすべてが含まれる。
グラフト重合開始剤としては、例えば、当業者に公知の有機過酸化物類や有機アゾ化合物類が挙げられる。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、有機アゾ化合物としては、例えば、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビス(2,4−ジメチルパレロニトリル)が挙げられる。グラフト重合を行うための重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性単量体に対して、少なくとも0.2質量%以上、好ましくは0.5質量%以上である。
重合開始剤の他に、枝ポリマーの鎖長を調節するための連鎖移動剤、例えば、オクチルメルカプタン、メルカプトエタノール、3−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソールを必要に応じて用い得る。この場合、重合性モノマーに対して0〜5質量%の範囲で添加することが望ましい。
グラフト化反応溶媒は、沸点が50〜250℃の水性有機溶媒から構成されることが好ましい。水性有機溶媒とは、20℃における水に対する溶解性が少なくとも10g/L以上、望ましくは20g/L以上であるものをいう。沸点が250℃を越えるものは、蒸発速度が極めて遅く、塗膜の高温焼付によっても十分に取り除くことが困難なので不適当である。
また、水性有機溶媒の沸点が50℃未満では、それを溶媒としてグラフト化反応を実施する場合、50℃未満の温度でラジカルに解裂する開始剤を用いる必要があるので、取扱上の危険が増大し好ましくない。
共重合ポリエステル樹脂をよく溶解し、かつカルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物およびその重合体を比較的良く溶解することができる、第一群の水性有機溶媒としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,3−ジオキソランなどの環状エーテル類;エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテルなどのグリコールエーテル類;メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトールなどのカルビトール類;エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテートなどの、グリコール類またはグリコールエーテルの低級エステル類;ダイアセトンアルコールなどのケトンアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの置換アミド類が挙げられる。
これに対し、共重合ポリエステル樹脂をほとんど溶解しないが、カルボキシル基含有重合性単量体を含む重合性単量体混合物およびその重合体を比較的よく溶解することができる第二群の水性有機溶媒としては、例えば、水、低級アルコール類、低級カルボン酸類、低級アミン類が挙げられるが、特に好ましくは、炭素数1〜4のアルコール類およびグリコール類である。
グラフト化反応を単一溶媒で行なう場合は、第一群の水性有機溶媒からただ一種を選んで行なうことができる。混合溶媒で行なう場合は第一群の水性有機溶媒からのみ複数種選ぶ場合と、第一群の水性有機溶媒から少なくとも一種を選びそれに第二群の水性有機溶媒から少なくとも一種を加える場合がある。
グラフト重合反応溶媒を第一群の水性有機溶媒からの単一溶媒とした場合と、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒とした場合のいずれにおいてもグラフト重合反応を行なうことができる。
しかし、グラフト化反応の進行挙動、グラフト化反応生成物およびそれから導かれる水分散体の外観、性状などに差異がみられ、第一群および第二群の水性有機溶媒のそれぞれ一種からなる混合溶媒を使用する方が好ましい。
第一群の溶媒中では、共重合ポリエステル分子鎖は広がりの大きい鎖が伸びた状態にあり、一方、第一群/第二群の混合溶媒中では広がりの小さい糸まり状に絡まった状態にあることが、これら溶液中の共重合ポリエステルの粘度測定により確認できる。
共重合ポリエステルの溶解状態を調節し、かつ分子間架橋を起こりにくくすることがゲル化防止に有効である。効率の高いグラフト化とゲル化抑制の両立は後者の混合溶媒系において達成される。第1群/第2群の混合溶媒の質量比率は、より望ましくは95/5〜10/90、さらに望ましくは90/10〜20/80、最も望ましくは85/15〜30/70の範囲である。最適の混合比率は、使用するポリエステルの溶解性などに応じて決定される。
前記のグラフト化反応生成物は、塩基性化合物で中和することが好ましく、中和することによって容易に水分散化することができる。
塩基性化合物としては、塗膜形成時、または硬化剤配合による焼付硬化時に揮散する化合物が望ましく、アンモニア、有機アミン類などが好適である。望ましい化合物としては、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、アミノエタノールアミン、N−メチル−N,N−ジエタノールアミン、イソプロピルアミン、イミノビスプロピルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ジエチルアミノプロピルアミン、sec−ブチルアミン、プロピルアミン、メチルアミノプロピルアミン、ジメチルアミノプロピルアミン、メチルイミノビスプロピルアミン、3−メトキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンを挙げることができる。
塩基性化合物は、グラフト化反応生成物中に含まれるカルボキシル基含有量に応じて、少なくとも部分中和または完全中和によって水分散体のpH値が5.0〜9.0の範囲であるように使用するのが望ましい。沸点が100℃以下の塩基性化合物を使用した場合であれば、乾燥後の塗膜中の残留塩基性化合物も少なく、金属や無機蒸着膜の密着性や他材料と積層した時の耐水性や耐熱水密着性が優れる。
また、100℃以上の塩基性化合物使用した場合や乾燥条件を制御し、乾燥後の塗膜中に塩基化合物を500ppm以上残留させることにより、印刷インクの転移性を向上させることができる。
生成される水系分散体では、ラジカル重合性単量体の重合物の重量平均分子量は500〜50,000であるのが好ましい。
ラジカル重合性単量体の重合物の重量平均分子量を500未満にコントロールすることは一般に困難であり、グラフト効率が低下し、共重合ポリエステルへの親水性基の付与が十分に行なわれない傾向がある。また、ラジカル重合性単量体のグラフト重合物は分散粒子の水和層を形成するが、十分な厚みの水和層をもたせ、安定な分散体を得るためにはラジカル重合性単量体のグラフト重合物の重量平均分子量は500以上であることが望ましい。
ラジカル重合性単量体のグラフト重合物の重量平均分子量は、溶液重合における重合性の点より、その上限値が50,000であることが好ましい。ラジカル重合性単量体のグラフト重合物の重量平均分子量を500〜50,000の範囲内とするためには、開始剤量、モノマー滴下時間、重合時間、反応溶媒、モノマー組成、または必要に応じて連鎖移動剤や重合禁止剤を適宜組み合わせることにより行なうことが好ましい。
疎水性共重合ポリエステル樹脂にラジカル重合性単量体をグラフト重合させた反応物は、自己架橋性を有するので、高度な耐溶剤性を発揮する。常温では架橋しないが、乾燥時の熱で、熱ラジカルによる水素引き抜き反応などの分子間反応を行い、架橋剤なしで架橋する。これにより初めて、本発明の目的である密着性、耐水性を発現できる。塗膜の架橋性については、様々の方法で評価できるが、例えば、疎水性共重合ポリエステル樹脂およびラジカル重合体の両方を溶解するクロロホルム溶媒での不溶分率を測定する方法が挙げられる。
80℃以下で乾燥し、120℃で5分間熱処理して得られる塗膜の不溶分率が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。塗膜の不溶分率が50質量%未満の場合は、密着性、耐水性が十分でないばかりでなく、ブロッキングも起こしてしまう。
易滑性被覆層Bを形成する共重合ポリエステル樹脂は、少なくとも1種のジカルボン酸成分と少なくとも1種のジオール成分およびそれらのエステル形成成分を構成単位とする共重合ポリエステル重縮合物であり、上記被覆層A(以後、被印刷層と記載する場合もある)と同種のポリエステル樹脂でもよいし、一般的に使用されている共重合ポリエステル樹脂でもかまわない。
共重合ポリエステル樹脂の構成成分であるジカルボン酸成分としては、例えば、(1)テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ビフェニレンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、(2)コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、(3)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸、(4)マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸などの不飽和ジカルボン酸を挙げることができる。なかでも、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましく、その他少量であれば他のジカルボン酸を加えてもよい。
共重合ポリエステル樹脂のもう一方の構成成分であるジオール成分としては、例えば、(1)エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、ポリエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、(2)1,4−シクロヘキサンジメタールなどの脂環族ジオール、(3)4,4′−ビス(ヒドロキシエチル)ビスフェノールAなどの芳香族ジオール、さらにビス(ポリオキシエチレングリコール)ビスフェノールエーテルを挙げることができる。なかでも、エチレングリコールおよびジエチレングリコールが最も好ましく、その他少量のジオール成分を用いてもよい。
上記ジカルボン酸成分の他に、共重合ポリエステル樹脂に水分散性を付与させるために、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1〜10モル%の範囲で使用することが好ましく、その他、スルホテレフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン−2,6ジカルボン酸、5−(4−スルホフェノキシ)イソフタル酸またはそれらのアルカリ金属塩などを用いることができる。
これらの易印刷性被覆層Aおよび易滑性被覆層Bの樹脂成分は、被覆層中に30〜95質量%の範囲で含有していることが好ましい。30質量%未満の場合には膜強度が不足し、摩擦などの外力が加わった際に膜の脱落が生じ易くなる。さらに、粒子の脱落が生じ易くなる。また、95質量%を越える場合は膜としての強度は向上するが、帯電防止性能、滑り性などの目的とする性能が発現しにくくなる。好ましくは50〜90質量%である。
前記の易滑性被覆層Bで用いるスルホン酸塩基を有する化合物は、帯電防止性を付与する目的で使用する化合物であり、例えば、スルホン酸塩基を有する不飽和単量体(例えば、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸アンモニウム、メタクリルスルホン酸カリウム、スチレンスルホン酸リチウムなど)の1種以上の重合体からなる高分子型帯電防止剤や、R−SO3X(ここで、Rはアルキル基、アリール基、またはアルキル基を有する芳香族基を、Xは金属イオン(例えば、Li、Na、Kなど)、アンモニウムイオン、アミンイオン、リン酸エステルイオンを示す)の低分子型帯電防止剤やその2量体などが挙げられるが、耐熱性に優れたスルホン酸塩基を有し、帯電防止性が発現する機能を有していれば、前記化合物に限定されるものではない。
アルキルスルホン酸塩としては、例えば、ペンタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸ナトリウム、オクタンスルホン酸リチウム、オクタンスルホン酸カリウム、テトラデシルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
また、アリールスルホン酸塩としては、例えば、ベンジルスルホン酸ナトリウム、トルイルスルホン酸ナトリウム、ナフチルスルホン酸ナトリウムが挙げられる。さらに、アルキル基を有する芳香族スルホン酸塩としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのアルキル(炭素数:8〜20)ベンゼンスルホン酸金属塩(例えば、Li、K、Na塩)、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルフェニールエーテルジスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
また、スルホン酸塩基を有する不飽和単量体の重合体からなる高分子型帯電防止剤は、例えば、ポリスチレンスルホン酸塩のような分子内にスルホン酸塩基成分を含有するスチレン系樹脂を使用することが好ましい。
この高分子型帯電防止剤の特徴は、そのスルホン酸成分の親水性の高さにある。分子内にスルホン酸塩基成分を含有するスチレン系樹脂としては、例えば、ポリスチレンスルホン酸のナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、ホスホニウム塩などのホモポリマー、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルなどのアクリル系単量体とスチレンスルホン酸単量体との共重合物が挙げられる。
前記のポリスチレンスルホン酸塩の重量平均分子量は、1千〜15万、好ましくは1万〜7万が好ましい。分子量が1千未満になると塗膜の耐水性が得られにくくなり、15万を越えると、共重合ポリエステルとの均一混合が困難になりやすい。
前記のスルホン酸塩基を有する化合物が低分子の場合は、各層における混合比率は0.5〜15質量%が好ましく、特に好ましくは2〜10質量%である。また、スルホン酸塩基を有する化合物が高分子の場合は、5〜50%重量が好ましく、特に好ましくは10〜30質量%である。前記低分子化合物および高分子化合物を混合して使用してもかまわない。前記スルホン酸塩基を有する化合物を含有する被覆層の表面固有抵抗値は、23℃、50%RHの条件で1013Ω/□以下にしないと、枚葉フィルムとした際に自重のみの低荷重下で滑り性が不十分となり、高速印刷機において重送するなどの搬送性が悪化しやすくなる。
スルホン酸塩基を有する化合物の含有量が多すぎると、裏移りや粒子脱落による印刷面への汚染が生じやすくなる。
前記の易印刷性被覆層Aや易滑性被覆層Bに用いる平均粒子径が1〜5μmの粒子としては、市販の無機粒子および/または有機粒子を使用することができる。平均粒子径は、より好ましくは1〜3μmの範囲である。無機粒子としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナが挙げられ、有機粒子としては、例えば、ポリオレフィン、アクリル、スチレン、ウレタン、ポリアミド、ポリエステルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、被覆層における前記粒子の樹脂成分に対する含有量は、0.3〜10質量%であることが好ましく、特に好ましくは0.7〜5質量%である。平均粒子径が1μm未満または粒子含有量が0.3質量%未満であると、被覆層表面に適度な凹凸が形成されにくくなる。その結果、枚葉フィルムとした際に、フィルム間に空気層が溜まりにくく、加重解放直後の摩擦を低減することができず、印刷速度を上げることが困難となる。平均粒子径が5μmを超えたり、粒子含有量が10質量%を超える場合には、フィルムのヘイズが高くなり、透明性の悪化、または粒子脱落により、印刷面の汚れ、印刷品位の問題、機台の汚染などが発生する。
易滑性被覆層Bに用いる高分子系ワックスは、透明性を阻害しないものであれば特に限定されるものではなく、従来公知のものが使用可能である。例えば、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、脂肪酸系が挙げられる。高分子系ワックスの重量平均分子量は1,000〜10,000が好ましく、より好ましくは1,500〜6,000の範囲である。分子量が1,000未満の場合には、被覆層の内部から表面への滲み出しにより、印刷面への転移汚染が生じやすく、インキ密着力に悪影響を与える場合がある。
一方、高分子系ワックスの分子量が10,000を超える場合には、滑り性の改善効果が不十分になる。被覆層Bにおける高分子系ワックスの樹脂成分に対する含有量は1〜10質量%、好ましくは2〜8質量%である。被覆層Bにおける高分子系ワックスの樹脂成分に対する含有量が1質量%未満の場合は、十分に摩擦係数を下げることができず、印刷速度が上げられない。被覆層Bにおける高分子系ワックス成分の樹脂成分に対する含有量が10質量%を越える場合は、ワックス成分の脱落により、印刷面への汚染、さらには透明性、ヘイズの悪化を招く。
両面に異種の被覆層を形成した成型用ポリエステルフィルムの場合、フィルムの滑り性は、例えば、高速UVオフセット印刷機における給紙安定性が付与できれば良く、市場要求に従い設定すれば良いが、前記の易印刷性被覆層Aと易滑性被覆層Bを重ね合せた際の静摩擦係数および動摩擦係数がともに0.5以下であることが好ましい実施態様である。
フィルムの動摩擦係数が0.5を超える状態では、滑り性が不十分であり、枚葉印刷機での給紙時に搬送不良を生じる。一般的には、静摩擦係数はフィルムを摩擦走行させた際に極大値を示し、動摩擦係数より高い値を示す。しかし、少なくとも一方の被覆層に潤滑剤を含む場合、摩擦係数は摩擦走行とともに緩やかに立ち上がるため、静摩擦係数の値は動摩擦係数と同等またはより低い値を示すようになる。静摩擦係数が低いことは、枚葉時の動かし始めがより滑らかになる。これにより枚葉印刷機では、印刷速度の向上が可能となる。
本発明の成型用ポリエステルフィルムを製造する際、ポリエステル基材フィルムの両面に前記の異種の被覆層を形成する方法は限定されず任意であるが、塗布法で実施する方法が好適である。該方法に於ける塗布液を塗工する段階としては、未延伸フィルムに塗布し、次いで少なくとも一方向に延伸する方法、縦延伸後に塗布する方法、配向処理の終了したフィルム表面に塗布する方法など、いずれの方法も可能である。なかでも、ポリエステル基材フィルムを製造する際、フィルムの結晶配向が完了する前に塗布し、その後、少なくとも1方向に延伸した後、ポリエステルフィルムの結晶配向を完了させる、いわゆるインラインコート法が本発明の効果をより顕著に発現させることができる好ましい方法である。
前記の共重合ポリエステル樹脂とスルホン酸塩基を有する化合物は、両者に親水性の差があり分離し易いので、塗布液は塗布直前に1000(1/秒)以上のせん断速度をかけた直後2秒以内に基材に塗布し、その後2秒以内に70℃以下、湿度50%RH、風速10〜20m/秒で1〜3秒予備乾燥後、90℃以上で乾燥する方法で行うことが好ましい。この方法で塗布を行うことにより、共重合ポリエステル樹脂とスルホン酸塩基を有する化合物が均一に分散し、良好な表面抵抗値が得られる。
前記のインラインコート法で実施した場合の塗布乾燥後、延伸後の熱固定条件は、特に限定はないが、特に易印刷性被覆層Aの構成成分であるポリエステル系グラフト共重合体が有する自己架橋性を発現するために、基材フィルムおよび該グラフト共重合体に熱劣化が起こらない範囲内で、熱量を多くする条件を採用することが好ましい。具体的には、200℃〜250℃、好ましくは220℃〜250℃である。ただし、熱固定時間を長くすることにより、比較的低い温度でも、十分な自己架橋性を発現することもできる。
前記の被覆層を設ける方法としては、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式など通常用いられている方法を適用することができる
前記の両被覆層の厚みは特に限定しないが、本発明においては、乾燥後の最終厚みが0.05〜1.0μmとすることが好ましく、より好ましくは0.07〜0.5μm、特に好ましくは0.09〜0.3μmである。
本発明の塗液中には、本発明の効果を阻害しない範囲で、公知の添加剤、例えば、界面活性剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、有機潤滑剤を含有させてもよい。
前記のポリエステル基材フィルムの両面に前記の異種の被覆層を形成させた積層フィルムは、易印刷性被覆層Aとその反対面の易滑性被覆層Bとの滑り性が、従来公知の方法と比べ極めて良好である。枚葉状にフィルムを積み重ねた場合のこの顕著な滑り性改良効果は、(1)両面の被覆層中に含有する平均粒子径1〜10μmの粒子に起因する表面凹凸によるフィルム間での空気保持効果、(2)易滑性被覆層Bに含有されるスルホン酸金属塩による静電気密着防止効果、(3)さらに易滑性被覆層Bに含有する高分子系ワックス成分による静摩擦係数の低下によりもたらされる。これら3つの効果がすべて揃わないと、断裁したフィルムが静止状態から動き始めた時の滑らかさの不足、枚葉状に棒積みした状態からの搬送性、給紙時の噛み込み安定性に劣り、印刷速度を高めることが困難になる。
通常の被覆層を有する積層フィルムは、ハンドリング性(易滑性、巻き取り性、耐ブロッキング性など)や耐スクラッチ性などの改良を目的に、フィルム表面に凹凸を形成させるために不活性粒子が含有されている。しかしながら、本発明の積層ポリエステルフィルムは、透明性向上のために、被覆層に粒子を含有させ、基材フィルム中の粒子含有量は少なくすることが好ましく、基材フィルム中には実質上粒子を含有させないことが特に好ましい。なお、「実質的に粒子を含有しない」とは、基材フィルム中の粒子を構成する主成分原子の含有量が、蛍光X線分析法の検出限界以下であることを意味する。
本発明の成型用ポリエステルフィルムにおいては、内部に粒子を実質上含有していない基材フィルムを用いることで、両面に被覆層を有しながらも高い透明性を得ることができる。そのため、透過光による照明時の明るさに優れ、易滑面(被覆層B/非印刷面)側からフィルムを通して印刷面を見た場合の文字や画像の鮮鋭性に極めて優れる。
また、前記のポリエステル基材フィルムの両面に前記の異種の被覆層を形成させた積層フィルムは、一般的に用いられるUV硬化型印刷インキおよび溶剤型印刷インキに対する被覆層Aとの密着力が、JIS−K5400に準拠した碁盤目によるクロスカット評価にて、1mm角のマス目の数が90%以上残存させることができ、さらに96%以上残存させることもできる。
密着力が90%未満では、印刷後のインキ脱落が生じ、外観の低下、搬送性の低下につながる。一般的にオフセット印刷ではインキ厚みが1μm〜数μmであるためインキ脱落は生じにくいが、スクリーン印刷では数μm〜10μm以上の場合があり、スクリーン印刷インキにも対応できる密着性が印刷用透明ポリエステルフィルムには必要である。
また、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、太陽光が照射される場所で成形体として使用される場合がある。このような耐光性の要求される用途で使用する場合は、成型用ポリエステルフィルムの波長350nmにおける光線透過率を1%以下に制御することが好ましく、より好ましくは0.8%以下、特に好ましくは0.6%以下である。波長350nmにおける光線透過率を1%以下に制御することにより、成型用ポリエステルフィルム、特に、該フィルムに印刷を施した場合に印刷層の耐光性が向上する。
上記の波長350nmにおける光線透過率を1%以下に制御する方法は限定なく任意であるが、成型用ポリエステルフィルムの構成層のいずれかに紫外線吸収剤を配合する方法が推奨される。該方法において用いられる紫外線吸収剤は前記の特性を付与できるものであれば限定なく適宜選択すれば良い。無機系、有機系のどちらでも構わない。有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトアゾール系、ベンゾフェノン系、環状イミノエステル系等、及びその組み合わせが挙げられる。耐熱性の観点からはベンゾトアゾール系、環状イミノエステル系が好ましい。2種以上の紫外線吸収剤を併用した場合には、別々の波長の紫外線を同時に吸収させることができるので、いっそう紫外線吸収効果を改善することができる。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシメチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシプロピル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシヘキシル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−tert−ブチル−3′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−メトキシ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−シアノ−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−tert−ブチル−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−5′−(メタクリロイルオキシエチル)フェニル]−5−ニトロ−2H−ベンゾトリアゾールなどが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
環状イミノエステル系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジン−4−オン)、2−メチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−ブチル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−フェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(1−又は2−ナフチル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−(4−ビフェニル)−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−m−ニトロフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−ベンゾイルフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−o−メトキシフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−シクロヘキシル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、2−p−(又はm−)フタルイミドフェニル−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン、 2,2′−(1,4−フェニレン)ビス(4H−3,1−ベンズオキサジノン−4−オン)2,2′−ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−エチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−テトラメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−デカメチレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(4,4′−ジフェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2,6−又は1,5−ナフタレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−メチル−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−(2−ニトロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(2−クロロ−p−フェニレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2′−(1,4−シクロヘキシレン)ビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ベンゼン、1,3,5−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、および2,4,6−トリ(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン−2−イル)ナフタレン、 2,8−ジメチル−4H,6H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジメチル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,9−ジオン、2,8−ジフェニル−4H,8H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d’)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、2,7−ジフェニル−4H,9H−ベンゾ(1,2−d;5,4−d′)ビス−(1,3)−オキサジン−4,6−ジオン、6,6′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−エチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−エチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−ブチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−オキシビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−スルホニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,6′−カルボニルビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−エチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−オキシビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−スルホニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、7,7′−カルボニルビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−ビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、6,7′−メチレンビス(2−メチル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および6,7′−メチレンビス(2−フェニル−4H,3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)などが挙げられる。
上記の有機系紫外線吸収剤をフィルムに配合する場合は、押し出し工程で高温に晒されるので、紫外線吸収剤は分解開始温度が290℃以上の紫外線吸収剤を用いるのが製膜時の工程汚染を少なくする上で好ましい。分解開始温度が290℃以下の紫外線吸収剤を用いると製膜中に紫外線吸収剤の分解物が製造装置のロール群等に付着し、強いてはフィルムに再付着したり、キズを付けたりして光学的な欠点となるため好ましくない。
無機系紫外線吸収剤としては、酸化セリウム、酸化亜鉛、酸化チタン等の金属酸化物の超微粒子類が挙げられる。
上記の波長350nmにおける光線透過率を1%以下にするもう一つの方法として、この波長域に吸収を有する、例えばナフタレンジカルボン酸等のポリエステルを形成する化合物をポリエステルの共重合成分として用いる方法を挙げることができる。
以上説明したように、本発明の成型用ポリエステルフィルムを用いることで、従来の二軸配向ポリエステルフィルムでは成型することが困難であった、成型時の成型圧力が10気圧以下の低圧下での真空成型や圧空成型などの成型方法においても、仕上がり性の良好な成型品を得ることができる。また、これらの成型法は成型コストが安いので、成型品の製造における経済性において優位である。したがって、これらの成型法に適用することが本発明の成型用ポリエステルフィルムの効果を最も有効に発揮することができる。
一方、金型成型は金型や成型装置が高価であり、経済性の点では不利であるが、前記の成型法よりも複雑な形状の成型品が高精度に成型されるという特徴がある。そのため、本発明に用いられる成型用ポリエステルフィルムを用いて金型成型した場合は、従来の二軸配向ポリエステルフィルムに比べて、より低い成型温度で成型が可能で、かつ成型品の仕上がり性が改善されるという顕著な効果が発現される。
さらに、このように成型された成型品は、常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れ、さらに環境負荷も小さいので、家電用銘板、自動車用銘板、ダミー缶、建材、化粧板、化粧鋼鈑、転写シートなどの成型部材として好適に使用することができる。
なお、本発明の成型用ポリエステルフィルムは、前記の成型方法以外にも、プレス成型、ラミネート成型、インモールド成型、絞り成型、折り曲げ成型などの成型方法を用いて成型する成型用材素材としても好適である。
以下、実施例によって本発明を詳細に説明する。なお、各実施例で得られたフィルム特性は以下の方法により測定、評価した。
(1)オリゴマー酸価(AVo)の測定
試料1gを精秤し、ピリジン20mlを加え、15分間加熱還流した。溶解後、水を10ml加え放冷した。フェノールフタレインを指示薬として、0.1N水酸化ナトリウムで滴定した。なお、オリゴマー酸価は次式により求めた。
AVo(eq/ton)=((A−B)×0.1×F)/(Wg×103)×106
上式で、Aは滴定量(ml)、Bはブランクの滴定量(ml)、Fは使用した0.1N−水酸化ナトリウムのファクター、Wgは試料の質量(g)を意味する。
(2)元素分析
以下に示す方法で元素分析を行った。
(a)Mg、Ca、Zn、Mnの分析
試料1gを白金ルツボにて灰化分解させ、さらに6mol/Lの塩酸を加えて蒸発乾固させた。次いで、残渣を1.2mol/Lの塩酸で溶解し、ICP発光分析(島津製作所製、ICPS−2000)でMg、Ca、Zn、Mnを定量した。なお、他のアルカリ土類金属化合物も同様の方法で定量することができる。
(b)Sbの分析
試料1gを硫酸/過酸化水素水の混合液で湿式分解させた。次いで、亜硝酸ナトリウムを加えてSb原子をSb5+とし、ブリリアングリーンを添加してSbとの青色錯体を生成させた。この錯体をトルエンで抽出後、吸光光度計(島津製作所製、UV−150−02)を用いて、波長625nmにおける吸光度を測定し、Sbの比色定量を行った。
(c)Pの分析
試料1gを、炭酸ナトリウム共存下で乾式灰化分解させる方法、あるいは硫酸/硝酸/過塩素酸の混合液または硫酸/過酸化水素水の混合液で湿式分解させる方法によってリン化合物を正リン酸とした。次いで、1mol/Lの硫酸溶液中においてモリブデン酸塩を反応させてリンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して生成したヘテロポリ青を吸光光度計(島津製作所製、UV−150−02)により波長830nmにおける吸光度を測定し、Pの比色定量を行った。
(d)Coの分析
試料1gを白金ルツボにて灰化分解し、6mol/L塩酸を加えて蒸発乾固させた。これを1.2mol/Lの塩酸で溶解し、ICP発光分析(島津ICPS−2000)でCoを定量した。
(e)Naの分析
試料1gを白金ルツボにて灰化分解し、6mol/L塩酸を加えて蒸発乾固した。1.2mol/L塩酸で溶解し、その溶液を原子吸光(島津製作所製、AA−640−12)で定量した。
(3)固有粘度
チップサンプル0.1gを精秤し、25mlのフェノール/テトラクロロエタン=6/4(質量比)の混合溶媒に溶解し、オストワルド粘度計を用いて30℃で測定した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。
(4)共重合ポリエステルの組成比
サンプル約5mgを重クロロホルムとトリフルオロ酢酸の混合溶液(9/1;体積比)0.7mlに溶解し、1H−NMR(varian製、UNITY500)を使用して求めた。
(5)未溶融物の測定
ポリエステルチップ(一粒)を2枚のカバーグラス間に挟んで280℃で溶融プレスし、急冷したのち、100倍の位相差顕微鏡で20視野観察し、イメージアナライザー(NIRECO製、Luzex FS)を用いて、円相当径が10μm以上の粒子の数をカウントして評価した。
(6)溶融比抵抗値の分析(ρi)
275℃で溶融させたポリエステル中に2枚の電極板をおき、120Vの電圧を印加した時の電流値(io)を測定し、比抵抗値Siを次式により求めた。
ρi(Ω・cm)=(A/I) ×(V/io)
ここで、Aは電極面積(cm2)、Iは電極間距離(cm)、Vは電圧(V)である。
(7)キャスティング速度
押出し機の口金部と冷却ドラムとの間にタングステンワイヤー製の電極を設け、電極とキャスティングドラム間に10〜15kVの電圧を印加して、290℃で溶融押出し、厚さ100μmのフィルム原反を巻き取った。このフィルム原反の表面を肉眼で観察し、ピンナーバブルが発生しはじめる時点をキャスティング速度(m/min)とした。キャスティング速度は、生産性の点から大きいほど好ましい。本発明においては、50m/min以上を合格とした。
(8)フィルムの厚み
ミリトロンを用い、1枚当たり5点を計3枚の15点を測定し、その平均値を求めた。
(9)ヘイズ
JIS−K7136に準拠し、ヘイズメータ(日本電色工業株式会製、300A)を用いて測定した。なお、測定は2回行い、その平均値を求めた。
(10)厚み斑
横延伸方向に3m、縦延伸方向に5cmの長さの連続したテープ状サンプルを巻き取り、フィルム厚み連続測定機(アンリツ株式会製)にてフィルムの厚みを測定し、レコーダーに記録する。チャートより、厚みの最大値(dmax)、最小値(dmin)、平均値(d)を求め、下記式にて厚み斑(%)を算出した。なお、測定は3回行い、その平均値を求めた。また、横延伸方向の長さが3mに満たない場合は、つなぎ合せて行う。なお、つなぎの部分はデータから削除する。
厚み斑(%)=((dmax−dmin)/d)×100
(11)100%伸張時応力、破断伸度
二軸配向フィルムの長手方向及び幅方向に対して、それぞれ長さ180mm及び幅10mmの短冊状に試料を片刃カミソリで切り出した。次いで、引っ張り試験機(東洋精機株式会製)を用いて短冊状試料を引っ張り、得られた荷重−歪曲線から各方向の100%伸張時応力(MPa)及び破断伸度(%)を求めた。
なお、測定は25℃の雰囲気下で、初期長40mm、チャック間距離100mm、クロスヘッドスピード100mm/min、記録計のチャートスピード200mm/min、ロードセル25kgfの条件にて行った。なお、この測定は10回行い平均値を用いた。
また、100℃の雰囲気下でも、上記と同様の条件で引っ張り試験を行った。この際、試料は100℃の雰囲気下で30秒保持した後、測定を行った。なお、測定は10回行い平均値を用いた。
(12)150℃での熱収縮率
フィルムの長手方向及び幅方向に対し、それぞれ長さ250mm及び幅20mmの短冊状試料を切り出す。各試料の長さ方向に200mm間隔で2つの印を付け、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で2つの印の間隔Aを測定する。続いて、短冊状の各試料の片側をカゴに無荷重下でクリップにて吊るし、150℃の雰囲気下のギアオーブンに入れると同時に時間を計る。30分後、ギアオーブンからカゴを取り出し、30分間室温で放置する。次いで、各試料について、5gfの一定張力(長さ方向の張力)下で、2つの印の間隔Bを金指により0.25mm単位で読み取る。読み取った間隔A及びBより、各試料の150℃での熱収縮率を下記式により算出する。
熱収縮率(%)=((A−B)/A)×100
(13)貯蔵粘弾性率(E′)
動的粘弾性測定装置(アイティー計測制御(株)製、DVA 225)を用い、下記の条件下で、フィルムの長手方向(MD)及び幅方向(TD)における100℃及び180℃での貯蔵弾性率(E′)を求めた。
(a)サンプル幅:5mm
(b)測定温度範囲:−50〜250℃
(c)周波数:10Hz
(d)昇温速度:5℃/分
(14)175℃におけるフィルムの熱変形率
熱機械分析装置(セイコー電子(株)製、TMA SS/100)を用い、下記の条件下で、温度変化にともなうフィルムの長手方向の寸法変化を連続的に測定し、175℃におけるフィルムの長手方向の熱変形率を求めた。
(a)サンプル幅:2mm
(b)測定温度範囲:30〜250℃、
(c)初期荷重:49mN(5gf)
(d)昇温速度:5℃/分
(15)面配向度(ΔP)
ナトリウムD線(波長589nm)を光源として、アッベ屈折計を用いて、フィルムの長手方向の屈折率(Nz)、幅方向の屈折率(Ny)、厚み方向の屈折率(Nz)を測定し下記式から面配向度(ΔP)を算出した。
ΔP=((Nx+Ny)/2)−Nz
(16)波長350nmにおける光線透過率
分光光度計(島津製作所(株)製、UV−1200)を用いて、波長350nmの紫外領域における光線透過率を測定した。
(17)耐光性
暗箱中で蛍光灯ランプ(松下電器(株)製、U型蛍光灯FUL9EX)の直下3cmの位置に、オフセット印刷した印刷サンプルを、印刷サンプルの印刷面が裏側になるように置いた。次いで、連続2000時間の光照射を行い、印刷面側の光照射前後におけるカラー(a*、b*、L*)をもとに、JIS Z 8730に準拠し、色差(ΔE値)を測定した。色差(ΔE値)が小さいほど、光照射前後における色の変化が小さい、すなわち耐光性に優れていることを意味する。耐光性の合格レベルは、色差(ΔE値)で0.5以下である。なお、色差(ΔE値)は下記の式で算出される。
ΔE=√(Δa2+Δb2+ΔL2
(18)成型性
(a)真空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で真空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で真空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けを行った。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がないもの
○:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のい
ずれかに該当するもの
(i) 角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(b)圧空成型性
フィルムに5mm四方のマス目印刷を施した後、500℃に加熱した赤外線ヒーターでフィルムを10〜15秒加熱した後、金型温度30〜100℃で、4気圧の加圧下で圧空成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が60mmであり、底面部は直径が55mmで、深さが50mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で圧空成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がないもの
○:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のい
ずれかに該当するもの
(i) 角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(c)金型成型性
フィルムに印刷を施した後、100〜140℃に加熱した熱板で4秒間接触加熱後、金型温度30〜70℃、保圧時間5秒にてプレス成型を行った。なお、加熱条件は各フィルムに対し、上記範囲内で最適条件を選択した。金型の形状はカップ型で、開口部は直径が50mmであり、底面部は直径が40mmで、深さが30mmであり、全てのコーナーは直径0.5mmの湾曲をつけたものを用いた。
最適条件下で金型成型した成型品5個について成型性及び仕上がり性を評価し、下記基準にてランク付けをした。なお、◎及び○を合格とし、×を不合格とした。
◎:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mm以下で、かつ印刷ずれが0.1mm以下であり、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がないもの
○:(i) 成型品に破れがなく、
(ii) 角の曲率半径が1mmを超え1.5mm以下、または印刷ずれが0.1
mmを超え0.2mm以下で、
(iii)さらに、×に該当する外観不良がなく、実用上問題ないレベルのもの
×:成型品に破れがあるもの、または破れがなくとも以下の項目(i)〜(iv)のい
ずれかに該当するもの
(i) 角の曲率半径が1.5mmを超えるもの
(ii) 大きな皺が入り外観が悪いもの
(iii)フィルムが白化し透明性が低下したもの
(iv) 印刷のずれが0.2mmを超えるもの
(19)耐溶剤性
25℃に調温したトルエンに試料を30分間浸漬し、浸漬前後の外観変化について下記の基準で判定し、○を合格とした。なお、ヘイズ値は前記の方法で測定した。
○:外観変化がほとんど無く、ヘイズ値の変化が1%未満
×:外観変化が認められる、あるいはヘイズ値の変化が1%以上
(20)フィルム上の欠点
フィルム1m2を目視で観察し、フィルム上の欠点数を測定し、下記の基準にしたがってランク付けを行った。
◎:0個
○:1〜3個
△:4〜5個
×:6個以上
(21)印刷品位
印刷前のフィルムを90℃で30分熱処理し、次いで4色のスクリーン印刷を行った。
さらに、印刷層を設けたフィルムを80℃で30分乾燥した。印刷品位の評価は、下記のクリアー感、印刷適性、印刷ずれなどの印刷外観を、印刷面からではなく、裏側からフィルムを通して目視で判定した。判定基準は、全ての観点から問題無いものを○、少なくとも1つの点で問題あるものを×とした。
a.クリアー感:印刷した図柄が、基材フィルムや塗布層に遮られることなく、
鮮明に見えること。
b.印刷適性 :印刷インキの転移不良による、色むらやヌケが生じないこと
c.印刷のズレ:印刷のズレが目視で判別できないこと。
実施例1
(共重合ポリエステル(A1)の製造)
連続式の重合設備を使用した。予め反応物を含有している第1エステル化反応缶に、高純度テレフタル酸(TPA)、エチレングリコール(EG)、及びネオペンチルグリコール(NPG)を最終共重合組成が、酸成分としてTPA単位が100(モル%)、グリコール成分としてEG/NPG単位が40/60(モル%)となるように調整し、全グリコール成分/全酸成分のモル比を2.0としたスラリーを、生成ポリマー量が1ton/hrとなるように連続的に反応缶内に供給した。さらに、三酸化アンチモンを12g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してSb含有量が0.025mol%となるように連続的に供給し、攪拌下、250℃、0.05MPaで、平均滞留時間として3時間反応を行った。この反応物を第2エステル化反応缶に移送し、攪拌下、260℃、圧力0.05MPaで、平均滞留時間として1時間反応を行った。次いで、この反応物を第3エステル化反応缶に移送し、攪拌下、260℃、0.05MPaで所定の反応度まで反応を行った。
この時得られたオリゴマーはその末端基の酸価が380eq/tonであった。このオリゴマーに、酢酸マグネシウム4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してMg含有量が0.17mol%となるように、リン酸トリメチルを65g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してP含有量が0.079mol%(M/P=2.15)となるように、酢酸ナトリウムを10g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してNa含有量が0.018mol%となるように、酢酸コバルト4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対して0.0035mol%となるように、それぞれ別々の供給口から第3エステル化反応缶に連続的に供給した。
このエステル化反応生成物を連続的に第1重縮合反応缶に供給し、攪拌下、265℃、35hPaで1時間、次いで第2重縮合反応缶で攪拌下、270℃、5hPaで1時間、さらに最終重縮合反応缶で攪拌下、280℃、0.5〜1.5hPaで1時間重縮合させた。溶融樹脂を抜き出す際に、ろ過精度95%以上が60μmの孔径を有するステンレス長繊維製のリーフ付き筒状型ポリマーフィルターを使用し、ストランド状に得られたものを水冷し、チップ状にカッティングして共重合ポリエステル(A1)を得た。
得られた共重合ポリエステル(A1)には、ネオペンチルグリコールが60mol%共重合されていた。また、得られた共重合ポリエステル(A1)中の触媒及び添加剤の組成比は、Sb/Mg/P/Na/Co=0.0245/0.170/0.079/0.018/0.0035(mol%)であり、Mg/Pモル比(M/P)は2.15であった。
さらに、前記共重合ポリエステル(A1)は、ρiが0.22×10-8Ω・cm、未溶融物が10μm以上12個、固有粘度(IV)が0.69dl/gであり静電密着性に優れ、且つ異物も少ないクリーンな樹脂であった。
(ポリエチレンテレフタレート(B1)の製造)
エステル化反応装置として、攪拌装置、分縮器、原料仕込口および生成物取り出し口を有する3段の完全混合槽よりなる連続エステル化反応装置を使用した。TPAを2トン/hrとし、EGをTPAモルに対して2モルとし、三酸化アンチモンを12g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してSb含有量が0.025mol%となるように調整したスラリーを、エステル化反応装置の第1エステル化反応缶に連続供給し、常圧にて平均滞留時間4時間で、255℃にて反応させた。
次に、上記の第1エステル化反応缶内の反応性生物を連続的に系外に取り出して、第2エステル化反応缶に供給し、第2エステル化反応缶内に第1エステル化反応缶から留去されるEGを生成ポリマー(生成PET)に対し8質量%供給し、さらに、酢酸マグネシウム4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として、生成PETに対してMg含有量が0.054モル%となるように、リン酸トリメチルを65g/Lのエチレングリコール溶液として、生成PETに対してP含有量が0.0125モル%となるように添加し、常圧にて平均滞留時間1.5時間で、260℃にて反応させた。
次に、上記の第2エステル化反応缶内の反応生成物を連続的に系外に取り出して、第3エステル化反応缶に供給し、リン酸トリメチルを65g/Lのエチレングリコール溶液として、生成PETに対してP含有量が0.0125モル%となるように添加し、さらに平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカをEGに10質量%分散した分散液を、生成PETに対してシリカ含有量として0.04質量%になるように添加し、常圧にて平均滞留時間0.5時間で、260℃にて反応させた。
上記の第3エステル化反応缶内で生成したエステル化反応生成物を3段の連続重縮合反応装置に連続的に供給して重縮合を行い、ポリエチレンテレフタレート(B1)を得た。
得られたポリエチレンテレフタレート(B1)中の触媒及び添加剤の組成比は、Sb/Mg/P=0.025/0.054/0.025(mol%)であり、Mg/Pモル比(M/P)は2.16であった。また、前記のポリエチレンテレフタレート(B1)は、ρiが0.24×10-8Ω・cm、10μm以上の未溶融物が2個、固有粘度(IV)が0.62dl/gであり、静電密着性に優れ、且つ異物も少ないクリーンな樹脂であった。
(フィルムの製造)
前記の共重合ポリエステルのチップ(A1)およびポリエチレンテレフタレートのチップ(B1)をそれぞれ乾燥させた後、チップ(A1)とチップ(B1)を25:75の質量比となるように各チップを混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒間予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら235℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例1
実施例1において、熱固定温度を205℃に変更すること以外は、実施例1と同様にして二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例2
市販のA−PETの未延伸シート(東洋紡績(株)製、PETMAX(R)A560GE0R、厚み:200μm)の特性評価を行った。
比較例3
市販のポリカーボネートの未延伸シート(帝人化成(株)製、パンライトシート(R) PC2151、厚み:200μm)の特性評価を行った。
比較例4
アクリルの未延伸シート(三菱化成(株)製、アクリプレン(R) HBS006、厚み:125μm)の特性評価を行った。
比較例5
実施例1の、共重合ポリエステル(A1)およびポリエチレンテレフタレート(B1)の製造において、酢酸マグネシウム4水和物、リン酸トリメチル、酢酸ナトリウム、及び酢酸コバルト4水和物の供給を止め、共重合ポリエステルのチップ(A2)およびポリエチレンテレフタレートのチップ(B2)を得た。共重合ポリエステルのチップ(A2)およびポリエチレンテレフタレートのチップ(B2)をフィルム原料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例6
実施例1の共重合ポリエステル(A1)の製造において、酢酸マグネシウム4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してMg含有量が0.511mol%となるように、第3エステル化反応缶に連続的に供給したこと以外は実施例1と同様にして、Mg/Pモル比が6.47である共重合ポリエステルのチップ(A3)を得た。また、実施例1のポリエチレンテレフタレート(B1)の製造において、酢酸マグネシウム4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してMg含有量が0.162mol%となるように、第3エステル化反応缶に連続的に供給したこと以外は実施例1と同様にして、Mg/Pモル比が6.48であるポリエチレンテレフタレートのチップ(B3)を得た。共重合ポリエステルのチップ(A3)およびポリエチレンテレフタレートのチップ(B3)をフィルム原料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例7
実施例1の共重合ポリエステル(A1)の製造において、酢酸マグネシウム4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してMg含有量が0.010mol%となるように、第3エステル化反応缶に連続的に供給したこと以外は実施例1と同様にして、Mg/Pモル比が0.13である、共重合ポリエステルのチップ(A4)を得た。また、実施例1のポリエチレンテレフタレート(B1)の製造において、酢酸マグネシウム4水和物を50g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してMg含有量が0.003mol%となるように、第3エステル化反応缶に連続的に供給したこと以外は実施例1と同様にして、Mg/Pモル比が0.12であるポリエチレンテレフタレートのチップ(B4)を得た。共重合ポリエステルのチップ(A4)およびポリエチレンテレフタレートのチップ(B4)をフィルム原料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例8
実施例1の共重合ポリエステル(A1)の製造において、リン酸トリメチルを65g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してP含有量が0.22mol%となるように、第3エステル化反応缶に連続的に供給したこと以外は実施例1と同様にして、Mg/Pモル比が0.77である共重合ポリエステルのチップ(A5)を得た。また、リン酸トリメチルを65g/Lのエチレングリコール溶液として、生成ポリマーに対してP含有量が0.07mol%となるように、第3エステル化反応缶に連続的に供給したこと以外は実施例1と同様にして、Mg/Pモル比が0.77であるポリエチレンテレフタレートのチップ(B5)を得た。共重合ポリエステルのチップ(A5)およびポリエチレンテレフタレートのチップ(B5)をフィルム原料として用いたこと以外は実施例1と同様にして、二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例2
実施例1の共重合ポリエステル(A1)の製造において、EG/NPG単位の仕込みを70/30(モル%)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及びネオペンチルグリコール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.77dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A6)を得た。また、実施例1のポリエチレンテレフタレート(B1)の製造において、固有粘度を0.63dl/gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、固有粘度が0.63dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリエチレンテレフタレートのチップ(B6)を得た。
さらに、実施例1のポリエチレンテレフタレート(B1)の製造法に準じて、公知のポリプロピレンテレフタレートの反応条件にて、エチレングリコールの代わりにプロピレングリコール(PG)を用いて、固有粘度が0.75dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有するポリプロピレンテレフタレート(PTT)のチップ(C)を得た。なお、ポリプロピレンテレフタレート(C)中の触媒及び添加剤の組成比は、Sb/Mg/P=0.0252/0.054/0.025(mol%)であり、Mg/Pモル比(M/P)は2.16であった。
チップ(A6)、チップ(B6)、及びチップ(C)をそれぞれ乾燥させた後、50:10:40の質量比となるように各チップを混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に83℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を80℃、後半部を75℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら200℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
実施例3
実施例1の共重合ポリエステル(A1)の製造において、ネオペンチルグリコールの代わりに1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を用い、かつEG/CHDM単位の仕込みを70/30(モル%)としたこと以外は実施例1と同様にして、芳香族ジカルボン酸成分としてテレフタル酸単位100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール単位70モル%及び1,4−シクロヘキサンジメタノール単位30モル%を構成成分とする、固有粘度が0.71dl/gの共重合ポリエステルのチップ(A7)を得た。
そして、この共重合ポリエステルのチップ(A7)と、実施例1で得たポリエチレンテレフタレートのチップ(B1)を50:50の質量比となるように混合し乾燥した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから270℃で溶融押出し、表面温度40℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.5倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、120℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を105℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら220℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例9
実施例3において、熱固定温度を205℃に変更すること以外は実施例3と同様にして、厚さ100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例4
実施例1のポリエチレンテレフタレート(B1)の製造法に準じて、公知のポリブチレンテレフタレートの反応条件にて、エチレングリコールの代わりにブタンジオール(BD)を用いて、固有粘度が0.69dl/gで、かつ平均粒子径(SEM法)が1.5μmの無定形シリカを0.04質量%含有する、ポリブチレンテレフタレート(PBT)のチップ(D)を得た。なお、ポリブチレンテレフタレート(D)中の触媒及び添加剤の組成比は、Sb/Mg/P=0.0252/0.054/0.025(mol%)であり、Mg/Pモル比(M/P)は2.16であった。
実施例1で得た共重合ポリエステルのチップ(A1)と、上記のPBTのチップ(D)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(E)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会製、チヌビン326)をそれぞれ乾燥させた後、25.0:74.5:0.5の質量比となるように混合した。次いで、これらのチップ混合物を押出し機によりTダイのスリットから265℃で溶融押出し、表面温度20℃のチルロール上で急冷固化させ、同時に静電印加法を用いてチルロールに密着させながら無定形の未延伸シートを得た。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に80℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムをテンターに導き、95℃で10秒予熱し、横延伸の前半部を85℃、後半部を80℃で3.8倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら200℃で熱固定処理を行い、厚さ100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例10
実施例4において、熱固定温度を185℃に変更すること以外は実施例4と同様にして、厚さ100μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例5
(塗布液の調整)
(易印刷性被覆層A用塗布液Aの調製)
イオン交換水とイソプルピルアルコールの混合溶媒(質量比:60/40)に、全固形分濃度が5質量%となるように、スチレン・マレイン酸を25%グラフトさせた水分散性ポリエステル系グラフト共重合体(東洋紡績製、AGN707)と、粒子として平均粒径2.2μmのベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物からなる球状微粒子(日本触媒工業製、エポスターMS)、平均粒径0.025μmのコロイダルシリカ(触媒化成製、カタロイドSI−30)、フッ素系界面活性剤(セイカケミカル製、サーフロンS−113)を、それぞれ固形分質量比で50/1/3/0.3となるように混合し、塗布液Aを調製した。
(易滑性被覆層B用塗布液Bの調製)
イオン交換水とイソプルピルアルコールの混合溶媒(質量比:60/40)に、全固形分濃度が5質量%となるように、水分散性ポリエステル系共重合体(東洋紡績製、バイロナ−ルMD−16)と、スルホン酸金属塩としてドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム(松本油脂製、TB702)、高分子系ワックス剤としてポリエチレン系エマルジョンワックス(東邦化学製、ハイテックE−4BS)、粒子として平均粒径2.2μmのベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物からなる球状微粒子(日本触媒工業製、エポスターMS)、平均粒径0.04μmのコロイダルシリカ(日産化学製、スノーテックスMS)、フッ素系界面活性剤(大日本インキ製、メガファックF−142D)を、それぞれ固形分質量比で50/2.5/2.5/0.5/5/0.3となるように混合し、塗布液Bを調製した。
(積層フィルムの製造)
実施例1のポリエチレンテレフタレート(B1)の製造において、シリカの添加を取り止めること以外は実施例1と同様にして、ポリエチレンテレフタレートのチップ(B7)を得た。実施例1において、チップ(B1)の代わりにチップ(B7)を用いること以外は実施例1と同様にして、無定形の未延伸シートを得た。但し、最終のフィルム厚みが188μmになるように、溶融樹脂の吐出量を調整した。
得られた未延伸シートを加熱ロールと冷却ロールの間で縦方向に90℃で3.3倍に延伸した。次いで、一軸延伸フィルムの片面に上記の塗布液Aを塗布し、他面に塗布液Bをリバースコート法で延伸前の樹脂固形分の厚みがそれぞれ0.9μmとなるように塗布した。両面に塗布層を有する積層フィルムを乾燥しつつテンターに導き、120℃で10秒間予熱し、横延伸の前半部を110℃、後半部を100℃で3.9倍延伸した。さらに、横方向に7%の弛緩処理を行いながら235℃で熱固定処理を行い、片面に易印刷性被覆層A、他面に易滑性被覆層Bを有する、厚さ188μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
なお、熱固定処理ゾーンには、延伸区間との間に2mの中間区間を設け、熱固定ゾーンの加熱用区間には遠赤外線ヒーターを設置し、区間ごとの遮蔽板をフィルムに接触しない限界位置まで拡大し、設置した。加熱後の冷却区間においても区間遮蔽を強化し、クリップの戻り方法として外部リターン方式を用い、かつクリップ冷却装置を設置し、さらに20℃の冷風で強制冷却し、テンター出口でのクリップ温度を40℃以下とするクリップ融着防止対策を行った。
比較例11
本比較例11は、特開2001−347565号公報の実施例1を追試し、先行技術との対比を行った実験である。
ジメチルテレフタレートとエチレングリコールを仕込み、触媒として酢酸マグネシウム(M)及び三酸化アンチモン、添加剤としてリン酸(P)、平均粒子径(SEM法)が1.5μmの湿式法シリカ(0.08質量%)を添加して、定法によりポリエチレンテレフタレートを重合し、ポリエチレンテレフタレート(PET)のチップ(B8)を得た。
得られたPETのチップ(J)は、固有粘度が0.65dl/g、カルボキシル末端基濃度が25eq/ton、Mの量は0.2モル%、M/Pモル比が2.5であった。
前記のPETのチップ(J)を180℃で4時間真空乾燥後、溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加(3.0kV)により鏡面冷却ドラムに密着、冷却固化して未延伸シートを作成した。この未延伸シートをまず温度105℃に加熱したロールにて長手方向に3.0倍の延伸を行い、さらに延伸温度125℃で幅方向に3.2倍延伸した後、195℃にて、幅方向に6%の弛緩、6秒間の熱処理を行い、厚さが100μmで、面配向度が0.138である二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
比較例12
本比較例12は、特開平2−204020号公報の実施例2を追試し、先行技術との対比を行った実験である。
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸94mol%及びアジピン酸単位6mol%よりなり、ジオール成分としてエチレングリコール単位70mol%および1,4−シクロヘキサンジメタノール単位30mol%よりなる共重合ポリエステル(A8)と、平均粒子径1.1μmのカオリン2000ppmを含むポリエチレンテレフタレート(B9)を70/30(wt%)の割合で混合した後、予備結晶化、乾燥結晶化を行い、285℃でTダイを有する押出機より押出し、急冷固化して、極限粘度が0.70dl/gの無定形シートを得た。
得られたシートを縦方向に85℃で3.3倍延伸した後、続いて横方向に100℃で3.5倍延伸し、10%の幅方向の弛緩と0.5%の縦方向の弛緩を行いながら185℃で熱処理を行い、平均厚さが38μmの二軸配向ポリエステルフィルムを得た。
実施例1〜5及び比較例1、5〜12に関しては、使用したポリマーの原料組成とポリマー特性を表1に、フィルムの製造条件と特性を表2 〜5に示す。また、比較例2〜4のフィルム特性を表6に示す。
Figure 2006241311
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実施例1〜5で得られた二軸配向ポリエステルフィルムは、成型時の成型圧力の低い真空成型法や圧空成型法で成型しても仕上がり性の良好な成型品が得られた。また、得られた成型品の耐溶剤性や寸法安定性も良好であった。また、これらの実施例で用いたポリエステル樹脂は静電密着性に優れ、かつ異物量が少なく、高速製膜ができ、かつクリーンなフィルムが得られた。また、実施例4で得られたフィルムは、紫外線吸収剤を含有しているため、波長350nmにおける紫外線領域での光線透過率が0.6%であった。そのため、連続2000時間の光照射前後における印刷面側の色差が0.5以下であり、実施例1〜3で得られたフィルムより色差が小さく、耐光性に優れていた。また、実施例5で得られたフィルムは、基材フィルムにシリカ粒子を含有する実施例1で得られたフィルムと比べ透明性に優れていた。
一方、比較例1および9〜11で得られたフィルムは、真空成型法や圧空成型法での成型性に劣り成型品の仕上がり性が良くなかった。さらに、これらの比較例で得られたフィルムは実施例1〜4で得られたフィルムに比べて、金型成型法での仕上がり性が劣っていた。また、比較例2〜4の未延伸シートは、成型性は良好であるが耐溶剤性や寸法安定性に劣っていた。また、比較例5、7および8で用いたポリエステル樹脂は静電密着性が劣っており、高速製膜性が不良で厚みムラが大きくなった。また、比較例6で用いたポリエステル樹脂は異物量が多く、得られたポリエステルフィルムは欠点数が多かった。
本発明の成型用ポリエステルフィルムは、加熱成型時の成型性、特に低い温度および低い圧力での成型性に優れているので幅広い成型方法に適用ができ、かつ成型品として常温雰囲気下で使用する際に、弾性および形態安定性(熱収縮特性、厚み斑)に優れ、そのうえ耐溶剤性や耐熱性に優れている。さらに、アルカリ土類金属化合物及びリン化合物を特定量含有させているため、静電密着性に優れ、かつ異物が少ない。また、環境負荷が小さいという利点がある。また、前記フィルムの印刷性改良層に、凸版印刷、凹版印刷、平版印刷、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷、インクジェット印刷、フレキソ印刷など各種の印刷加飾法、及び捺染、転写、塗装、ペインティング、蒸着、スパッタリング、CVD、ラミネートなどの加飾方法により印刷層、図柄層などの意匠を施し、次いで金型成型、圧空成型、真空成形などの各種成型法により成型する3次元加飾方法に適し、かつインモールド成型性やエンボス成型性に優れている。そのため、家電や自動車の銘板用部材又は建材用部材として好適であり、産業界への寄与は大きい。

Claims (9)

  1. 二軸配向ポリエステルフィルムよりなる成型用ポリエステルフィルムであって、
    前記フィルムは共重合ポリエステルを構成成分とし、かつアルカリ土類金属化合物(M)及びリン化合物(P)を下記式(1)、(2)を満足する範囲で含有し、
    フィルムの長手方向及び幅方向における100%伸張時応力が、いずれも25℃において10〜1000MPa及び100℃において1〜100MPaであり、
    フィルムの長手方向及び幅方向における貯蔵粘弾性率(E′)が、いずれも100℃において10〜1000MPaで、かつ180℃において5〜40MPaであり、
    フィルムの長手方向における微小張力下での熱変形率が、175℃において−3%〜+3%である、
    ことを特徴とする成型用ポリエステルフィルム。
    0.05≦M≦0.40(モル%) …(1)
    1.0≦M/P≦3.5(モル比) …(2)
  2. 前記共重合ポリエステルは、芳香族ジカルボン酸成分と、エチレングリコール及び、分岐状脂肪族グリコール及び/又は脂環族グリコールを含むグリコール成分を構成成分とすることを特徴とする請求項1記載の成型用ポリエステルフィルム。
  3. 前記二軸配向ポリエステルフィルムを構成するポリエステルが、さらにグリコール成分として1,3−プロパンジオール単位または1,4−ブタンジオール単位を含むことを特徴とする請求項2記載の成型用ポリエステルフィルム。
  4. 前記成型用ポリエステルフィルムは、面配向度が0.095以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  5. 前記成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの長手方向及び横方向の150℃での熱収縮率が6.0%以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  6. 前記成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの融点が200〜45℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  7. 前記成型用ポリエステルフィルムは、フィルムの厚みd(μm)に対するヘイズH(%)の比(H/d)が0.010未満であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  8. 前記二軸配向ポリエステルフィルムを基材フィルムとし、該基材フィルムに厚みが0.01〜5μmの表面層を積層してなる成型用ポリエステルフィルムであって、前記基材フィルムは実質的に粒子を含有せず、表面層にのみ粒子を含有させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の成型用ポリエステルフィルム。
  9. 前記表面層が密着性改質樹脂と粒子から主として構成されていることを特徴とする請求項8記載の成型用ポリエステルフィルム。
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