JP2006240989A - 高流動コンクリートのスランプフロー変化を抑制する方法 - Google Patents

高流動コンクリートのスランプフロー変化を抑制する方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 なんらかの要因でコンクリート中の水量が変動することがあっても,そのコンクリートの流動性がそれほど変化しないように,流動性を安定化させた高流動コンクリートを得る。
【解決手段】 一般式〔化1〕で示される多糖類化合物を単位水量に対し0.1重量%以下の配合量で添加して混練してなるスランプフロー50cm以上の高流動コンクリートである。ただし,〔化1〕中のRは水素またはアルカリ金属を表す。
【選択図】 なし

Description

本発明は,流動安定用混和剤を用いた高流動コンクリートに関する。
高流動コンクリートは,比較的に水セメント比(水結合材比)を小さくしながら,高性能AE減水剤等の分散剤を多量に添加することによって,高い流動性を有するようにしたコンクリートである。このため,細骨材の表面水率の設定誤差や温度変化によって,コンクリートの流動性が変動しやすいという性質を有している。すなわち,水分量の変動や温度変化によって流動性(例えばスランプフロー値)が敏感に変化するので,一定の流動性をもつ高流動コンクリートを製造・管理することが一般に困難である。
この問題を解決するために,ウエランガムやβ−1,3−グルカン等の特殊な混和剤(増粘剤)を添加する方法が提案され,実際に採用されている。これらの特殊混和剤は,少量配合するだけで,混練材料中の水分量が変動しても安定した流動性を確保することができ,また温度変化に対しても安定した流動性を確保できる。このようなウエランガムの流動性安定化作用については,例えば特開平5−139806号公報,特開平7−133146号公報,特開平7−330409号公報等に記載されている。
また軽量コンクリートは,骨材の一部または全部に軽量骨材を使用することによって比重を低下させたコンクリートであり,死荷重の軽減や部材断面の縮小が要求されるような箇所での適用が注目されている。しかし,軽量骨材は一般に多孔質であるから軽量であればあるほど吸水率が高く,吸水率20%以上のものも普通である。最近では吸水率2〜8%程度の軽量骨材が開発されているが,それでも,コンクリート練り混ぜ時に配合水が軽量骨材に吸収されたり,また圧力が加わると軽量骨材内部の空隙に水が浸透する。このようなことから,軽量骨材を使用する軽量コンクリートでは,練り混ぜ水が軽量骨材に吸収され,その吸収量も変動し易いので,その流動性が変化しやすいという性質がある。
このため,軽量コンクリートはポンプ圧送時に(すなわちポンプ圧が加わった時に)流動性が顕著に低下して閉塞トラブルを発生させやすく,このことが軽量コンクリートの施工性を大きく阻害している。このポンプ圧送性を向上するために軽量骨材をプレウェッチングすることも行われるが,この場合には,軽量骨材が高含水状態となるので凍結融解抵抗性が悪くなるといった問題が伴う。
このような吸水率が大きく且つ変動し易い軽量骨材を使用した軽量コンクリートに,ウエランガムやβ−1,3−グルカン等の特殊な混和剤(増粘剤)を少量配合すると,その流動性の変化を抑制することができ,ポンプ圧送性を改善することができる。すなわち,このような特殊混和剤は軽量骨材コンクリートの流動性変化を抑制する作用がある。軽量骨材コンクリートに対するウエランガムの流動化安定化作用については同一出願人に係る特願平11−141325号に記載した。
フレッシュコンクリートの流動性の変動は,その要因が何であろうと,前記のようにウエランガムを少量配合すると抑制できることが明らかとなり,このことがコンクリートの品質改善に大きく寄与できたことも事実であるが,ウエランガムの有する作用効果にも限界があり,このために,十分な効果を得るにはそれなりの配合量を必要とし,コトスアップをもたらしている。
この問題は,これまで市場で入手し得るウエランガムよりも,さらにコンクリートの流動性安定化作用をもつものが得られれば解決できる。本発明は,これまで市場で入手し得るウエランガムよりも少量の配合量で,同等の流動性が安定した高流動コンクリートまたは軽量コンクリートを得ることを課題としたものである。
前記の課題は,一般式〔化学式1〕で示される多糖類化合物からなるコンクリートの流動安定化用混和剤によって達成される。
Figure 2006240989
ただし,〔化学式1〕中のRは水素またはアルカリ金属を表す。
そして,本発明によれば,前記一般式〔化学式1〕で示される多糖類化合物を単位水量に対し0.1重量%以下の配合量で添加して混練したスランプフロー50cm以上の高流動コンクリートを提供する。
また,本発明によれば 骨材の一部または全部に軽量骨材を使用したコンクリートの練り混ぜのさいに,前記の一般式〔化学式1〕で示される多糖類化合物を単位水量に対し0.1重量%以下の配合量で添加してなる軽量コンクリートを提供する。
本発明者らは,化学式1の多糖類化合物は,下記の化学式2の化学構造式をもつとされているウエランガムよりも少ない使用量で,ウエランガムの有するコンクリートの流動性安定化作用効果と同等の作用効果を示すことを見い出した。以下、化学式1の多糖類化合物を化1の多糖類化合物と呼び、化学式2の多糖類化合物を化2の多糖類化合物と呼ぶ
化1の多糖類化合物は,これまでウエランガムと言われてきた化2の多糖類化合物と同じように,細菌の生成する水溶性バイオポリマーであり,化2の多糖類化合物に類似の構造を有することから,変性ウエランガムと呼ぶこともできるかも知れない。しかし,このものの水溶液は特殊な流動曲線を示し,該水溶液の粘性の温度変化は濃度が0.8%以上では化2のウエランガムよりも大きく現れ,温度が高くなるほど高粘性を示すようになる。しかし,濃度が0.5%以下では粘性の温度変化は殆んど現れない。したがって,コンクリートの単位水量に対し0.1重量%以下の微量の配合では,通常の温度範囲(70℃以下)ではその粘性の温度変化は殆んど現れない。
化1の多糖類化合物に対比して,これまでウエランガムと呼ばれてきた多糖類化合物の化学構造式の例を化2に示すが,両者は非常に良く似た構造を有している。すなわち,化1の多糖類化合物は,その主鎖は化2のウエランガムと同じであるが,側鎖については,化1では2個のラムノースが連結したものであるのに対し,化2のウエランガムでは1個のラムノースである点で相違するだけである。ただし,化1および化2において,Rは水素またはアルカリ金属であり,アルカリ金属は好ましくはK(カリウム)である。
Figure 2006240989
Figure 2006240989
より具体的には,表示の化1と化2において,いずれの化合物とも主鎖は左側から順に,グルグロン酸(ただし,グルグロン酸の酸基の水素はアルカリ金属で置換していてもよい),D−グルコース,L−ラムノースおよびD−グルコースを主とした繰り返し単位からなる。しかし,側鎖について見ると,化2のウエランガムでは1個のラムノース(その一部または全部がマンノースで置換している場合もあり得ると言われている)が側鎖であるのに対し,化1の化合物では,化2のウエランガムの側鎖のラムノースにさらに1個のラムノースが連結したものが側鎖となっている。すなわち両者は,側鎖が1個のラムノースか,ラムノースの2個の連鎖であるかの相違に過ぎない。
これまで市場でウエランガムとして入手し得るものは化2の化学構造式をもつ多糖類化合物であるとされてきた。したがって,本明細書においても,化2の構造を有するとされていた多糖類化合物を便宜上ウエランガムと呼ぶことがある。しかし,そう呼ぶからと言って,化2の多糖類化合物はウエランガムの概念には入らない,と言うことを意味するものではない。
化1と化2の化合物は,いずれも水溶液でゲルを形成し難い性質を有し,且つ該水溶液の粘性および動的粘弾性は熱安定性を示す。また,両化合物の水溶液はカルシウムと結合し難い性質があり,カルシウムイオンの存在下でもゲル化し難い性質がある。このことは,セメント系結合剤が存在する水系レオロジー特性を改善するうえで非常に有利である。
化1の多糖類化合物は,化2のウエランガムに類似の構造を有することから,コンクリートに添加した場合,化2のウエランガムと同様にコンクリートの流動性の変動を抑制する作用を示すが,その効果は,これまで化2の化学構造を有するとされていたウエランガムよりも高いことがわかった。例えば,化1の多糖類化合物は,化2のウエランガムの半量の添加でも,化2のウエランガムの場合と同等のコンクリート流動性安定化効果を奏する。
このため,高流動コンクリートまたは軽量骨材を使用する軽量コンクリートに対して,化1の多糖類化合物を添加すると,化2のウエランガムよりも少ない添加量で,その流動性の変動を抑制することができる。化1の多糖類化合物はウエランガムと同様に粉末状で得ることができるが,コンクリートに添加する場合には,その粉末重量が単位水量に対して0.1重量%以下の量であれば,十分な変動性抑制効果が得られる。
化1の多糖類化合物を高流動コンクリートの流動性安定化混和剤として使用する場合には,単位水量に対して0.01〜0.1重量%の量を,高流動コンクリートの練り混ぜのさいに添加すればよい。ここで言う練り混ぜは,通常のバッチャプラントのミキサーはもとより,現場ミキサーやアジテーター車での練り混ぜも含む。化1の多糖類化合物の添加対象である高流動コンクリートの配合は,特に限定されないが,スランプフロー50cm以上の高流動コンクリートであるのが実際的である。このような高流動コンクリートは自己充填性を有すべく,セメント,粗骨材,細骨材および水の基本配合に対し,適正な分散剤,例えば高性能AE減水剤を適量添加し,また微粉としてセメントの他に,石灰石微粉末(石粉),フライアッシュ,高炉スラグ微粉末,シリカフュームを配合することが行われるが,このような自己充填性高流動コンクリートに化1の多糖類化合物を少量配合すると,意図する流動性(スランプフロー値)を確保しながら,使用する細骨材等の表面水率の変化や,各種材料の温度変化に基づく流動性の変動を効果的に抑制することができ,また,材料分離も抑制できる。なお,前記の高性能AE減水剤としては,ポリカルボン酸塩系のもののほか,ナフタレンスルホン酸塩系,メラミンスルホン酸塩系,アミノスルホン酸塩系のものが使用できる。
また,化1の多糖類化合物を軽量コンクリートの流動性安定化混和剤として使用する場合にも,単位水量に対して0.01〜0.1重量%の量を,軽量コンクリートの練り混ぜのさいに添加すればよい。軽量コンクリートを得るのに使用する軽量骨材(軽量粗骨材または軽量細骨材)については特に限定されないが,膨脹けつ岩,膨脹粘土,膨脹スレート,焼成フライアッシュ等を主原料とした人工軽量骨材や,火山れき等の天然軽量骨材,さらには副産軽量骨材などがあり,吸水率が低くなるように改善された低吸水率の軽量骨材の使用もポンプ圧送性改善にとっては一層好ましい。
いずれにしても,軽量骨材を使用したコンクリートでは,使用する軽量骨材の表面水率や吸水率の変動によって,練り混ぜ水が軽量骨材に吸着または吸収される量が変動し,特に圧力が加わった場合にはその変動幅が大きくなり,それに伴ってフレッシュコンクリートの流動性が変化し,また硬化反応に寄与する水量が変動することにより圧縮強度にも変化をもたらすようになる。このような軽量骨材を使用することによる流動性および圧縮強度の変動も,高流動コンクリートの場合と同様に,結局は混練材料中の有効水分量の変動に由来するものであるから,高流動コンクリートと同様に化1の多糖類化合物を少量配合すると,その有効水分量の変動が抑制できる結果,軽量コンクリートの流動性の変化や圧縮強度の変化を抑制でき,ひいては,ポンプ圧送性の良好な軽量コンクリートを得ることもできる。なお,ポンプ圧送するには良好な流動性を有する必要があるが,このため,軽量骨材を使用したうえで流動性の良好な高いコンクリートにする必要がある。したがって,この場合には,先の高流動コンクリートの場合と同様に適正な高性能AE減水剤を使用し,またセメントのほかに微粉末を適量配合するのが好ましく,このような高流動で且つ軽量なコンクリートに対し,化1の多糖類化合物を単位水量に対し0.01〜0.1重量%添加すれば,その流動性の変化を効果的に抑制することができ,品質の安定した高流動軽量コンクリートを得ることができる。
以下に,本発明らの行った試験結果をもって,コンクリート中の水量が変化しても,化1の多糖類化合物がコンクリートの流動性変化を抑制できることを,化2のウエランガムと対比して示す。
〔使用材料〕
セメント(C):普通ポルトランドセメント(太平洋セメント株式会社製)
微粉末(LP):石灰石微粉末
細骨材(S):山砂
粗骨材(G):硬質砂岩砕石
高性能AE減水剤(SP):NMB株式会社製の商品名レオビルトSP−8N〔ポリカルボン酸系の高性能AE減水剤〕
ウエランガム(WG):化2の構造を有するとされる市場で入手し得るウエランガム〔販売先:三晶株式会社〕
化1の多糖類化合物(化1):米国ケルコ・メルク社に係るS−657ガム〔食品添加剤として開発されたもの〕
前記の材料を表1に示すコンクリート配合No.1〜No.4の基本配合で練り混ぜた。また,いずれの配合No.1〜No.4においても,表1の基本配合に対し,単位水量を10Kg/m3を減らしたものと,10Kg/m3増やしたものも練り混ぜ,それらのスランプフローを測定することにより,水量の変化によるスランプフロー値の変化の程度を調べた。その結果を表2に示した。
Figure 2006240989
Figure 2006240989
表1〜2において,No.1の配合は,WGも化1も使用せず,高性能AE減水剤だけで,目標スランプフロー65cmを達成しようとするものであるが,単位水量170Kg/m3でほぼその目標が達成できるものの,水量が160Kg/m3(表2の[3])ではスランプフローは73.5cm,水量が180Kg/m3(表2の[1])では同55.0cmと大きく変動し,両者の差[3]−[1](流動安定性指標)は18.5cmにもなる。この関係を図1の粉体系(●印)で示した。
これに対して,WGまたは化1の多糖類化合物を配合したNo.2〜4では,目標スランプフロー値をほぼ達成しながら,両者の差[3]−[1](流動安定性指標)は大きく低下しており,水量が変動しても流動性の変動が抑制されている。その効果は,化1の多糖類化合物を用いたNo.2の配合では,同量のWGを用いたNo.3の配合のものよりも高く([3]−[1]の値が半減している),2倍のWGを用いたNo.4の配合に匹敵するかそれより優れることがわかる。この関係を図1に示した。図1において,○印はNo.2,■印はNo.3,▲印はNo.4の配合について水量を変化させたさいのスランプフローを示している。
このように,水量が変動してもスランプフロー値に大きな変動が現れないように抑制できることは,化1の多糖類化合物は高流動コンクリートの流動化安定用混和剤として,また吸水率の大きな軽量骨材を使用する関係上,水分量が変動しやすい軽量コンクリートの流動化安定用混和剤として非常に有効であることを示している。
以上説明したように,本発明によると,高流動コンクリートまたは軽量コンクリートに対して,その流動性の変化を少量の使用量で顕著に抑制できるコンクリート用混和剤が得られ,高品質の高流動コンクリートまたは軽量コンクリートを安定して製造することができる。
練り混ぜたコンクリート中の単位水量が変化した場合のスランプフロー値の変化について,本発明に従うコンクリート流動性安定化剤を比較例のものと対比して示した図である。

Claims (2)

  1. 下記の一般式〔化学式1〕で示される多糖類化合物を単位水量に対し0.1重量%以下の配合量で添加して混練してなるスランプフロー50cm以上の高流動コンクリート。
    Figure 2006240989
    ただし,〔化学式1〕中のRは水素またはアルカリ金属を表す。
  2. 骨材の一部または全部に軽量骨材を使用したコンクリートの練り混ぜのさいに,下記の一般式〔化学式1〕で示される多糖類化合物を単位水量に対し0.1重量%以下の配合量で添加してなる軽量コンクリート。
    Figure 2006240989
    ただし,〔化学式1〕中のRは水素またはアルカリ金属を表す。
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