JP5895588B2 - 水中不分離グラウト組成物、グラウトスラリー及びグラウト硬化体 - Google Patents

水中不分離グラウト組成物、グラウトスラリー及びグラウト硬化体 Download PDF

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Description

本発明は土木・建築分野の各種工事において水中環境下で用いられるグラウト組成物、グラウトスラリー及びグラウト硬化体に関する。
水中環境下での土木・建築分野の各種工事は、従来、構造物周囲に堰を設け、水をポンプ等で除去した後に、一般的なセメント組成物やグラウト組成物等を施工するために、施工工程が多く、工期も掛かっていた。近年では、構造物周囲の水を除去することなく施工が可能な水中不分離性能を有するセメント組成物やグラウト組成物が提案されている。
特許文献1では、現場での混合水量の増加や減水剤の多量の添加を行うことなく、極めて高い流動性と自己充填性を有し、初期及び長期に渡って流動性を維持することができ、水中環境下で使用しても、水中不分離性と高流動性が確保できる、セメント系充填組成物を提供することを目的として、普通セメントに、増粘剤及び減水剤を添加し、粒度を調整した細骨材を含有するセメント系充填組成物が開示されている。
特許文献2では、高温環境下においても優れた水中不分離性を備え、短時間で練り上げることができ、且つ経時変化が小さい高温環境用水中不分離性モルタル組成物を提供することを目的として、セメント、骨材、増粘剤、速効性ポリカルボン酸系減水剤及び遅効性メラミン系減水剤を含有する高温環境用水中不分離性モルタル組成物が開示されている。
特開2009−149457 特開2009−161387
しかしながら、セメント系組成物の流動性及び流動保持性を向上すると、水中不分離性が低下し、水中環境下での水中分離度(懸濁物質量)が増加する傾向がある。また、セメント系組成物の水中不分離性を向上すると、流動性及び流動保持性が低下し、ポンプ圧送性や施工箇所への充填性が低下する傾向がある。さらに、使用温度の違いが、流動性及び流動保持性へ影響を与えるため、製造から使用されるまでの期間が長くなり季節が変わると使用温度が大きく変化することから、水中不分離性及びポンプ圧送性や施工箇所への充填性などの施工性が低下する恐れがある。そのため、これらの性能を両立し、水中及び気中における優れた圧縮強度を有する硬化体を形成することが望まれている。
そこで、本発明は、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性とをバランスよく両立し、水中及び気中において優れた圧縮強度を有する硬化体を形成することができるグラウト組成物、これを含有するグラウトスラリー、及び、該グラウトスラリーを硬化することによって得られるグラウト硬化体を提供することを目的とする。
本発明者らは、グラウト組成物を構成する流動化剤に側鎖長さの異なる2種のポリカルボン酸系流動化剤を特定の含有割合で併用することにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、ポルトランドセメント、細骨材、増粘剤及び流動化剤を含むグラウト組成物であって、流動化剤が、側鎖長さ50nm超であるポリカルボン酸系流動化剤(流動化剤a)と側鎖長さ50nm以下であるポリカルボン酸系流動化剤(流動化剤b)の2種を併用してなり、流動化剤の総量(100質量%)を基準とする流動化剤a及び流動化剤bの含有割合は10:90〜90:10である、グラウト組成物を提供する。
上記グラウト組成物は、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性とをバランスよく両立し、水中及び気中における優れた圧縮強度を有する硬化体を形成することができる。
本発明のグラウト組成物において、増粘剤が、セルロース系増粘剤であり、20℃における前記増粘剤の2質量%水溶液の粘度が30000〜60000mPa・sであると、水中不分離性をより確実に向上することができる。
本発明のグラウト組成物は、細骨材の粒子径が、150μm以上1200μm未満であると、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性とをバランスよく両立し、水中及び気中において優れた圧縮強度を有する硬化体を形成することができるという本発明を奏する効果をより一層有効かつ確実に得ることができる。
本発明ではまた、上記グラウト組成物と水とを含むグラウトスラリーを提供する。このグラウトスラリーは、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性とをバランスよく両立し、水中及び気中において優れた圧縮強度を有する硬化体を形成することができるため、水中環境下での施工用のグラウトスラリーとして好適に用いられる。
本発明は更に、上記グラウトスラリーを硬化して得られるグラウト硬化体を提供する。上記グラウト硬化体は、上記グラウト組成物から形成されることから、水中及び気中における圧縮強度が十分に高く、優れた水中気中強度比(水中での圧縮強度/気中での圧縮強度)を兼ね備えるため、水中環境下で用いられるグラウト硬化体として好適である。
本発明によれば、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性をバランスよく両立し、水中及び気中において優れた圧縮強度を有する硬化体を形成することができるグラウト組成物、これを含有するグラウトスラリー、及び、該グラウトスラリーを硬化することによって得られるグラウト硬化体を提供することができる。
<グラウト組成物>
以下、本発明のグラウト組成物の好適な実施形態を以下に説明する。本実施形態のグラウト組成物は、ポルトランドセメント、細骨材、増粘剤及び流動化剤を有し、該流動化剤は、側鎖長さの異なる2種類のポリカルボン酸系流動化剤を併用する際の含有割合が特定の関係を満たすグラウト組成物である。
ポルトランドセメントとして、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントから選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましい。
細骨材として、珪砂、川砂、陸砂、海砂、砕砂等の砂類からから選ばれる少なくとも一種を用いることができる。細骨材は、150μm以上1200μm未満の範囲の粒径を有することが好ましい。
細骨材は、具体的には、粒子径150μm未満の粒子及び粒子径1200μm以上の粒子を含まず、下記粒子径を有する粒子を含むことが好ましい。すなわち、細骨材は、粒子径850μm以上1200μm未満の粒子を0質量%超20質量%以下、粒子径600μm以上850μm未満の粒子を25〜45質量%、粒子径425μm以上600μm未満を35〜55質量%、粒子径300μm以上425μm未満の粒子を5〜25質量%、粒子径212μm以上300μm未満の粒子を0質量%超5質量%以下、粒子径150μm以上212μm未満の粒子を0〜5質量%の割合でそれぞれ含むことがより好ましい。
細骨材は、粒子径850μm以上1200μm未満の粒子を5〜15質量%、粒子径600μm以上850μm未満の粒子を20〜40質量%、粒子径425μm以上600μm未満を40〜50質量%、粒子径300μm以上425μm未満の粒子を10〜20質量%、粒子径212μm以上300μm未満の粒子を0質量%超3質量%以下、粒子径150μm以上212μm未満の粒子を0〜3質量%の割合でそれぞれ含むことが更に好ましい。
本実施形態のグラウト組成物は、粒子径が上述の範囲にある細骨材を含むことによって、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性が得られ、施工箇所への充填性をより一層向上することができると共に、優れた水中不分離性をバランスよく両立できる。そして、水中及び気中での圧縮強度が高く、優れた水中気中強度比をより確実に達成する硬化体を得ることができる。
細骨材の粒子径は、JIS Z 8801:2006に規定される呼び寸法の異なる数個の篩いを用いて測定することができる。また、本明細書において、「粒子径が850μm以上1200μm未満である粒子の質量割合」とは、篩目1200μmの篩いを用いたときに篩目1200μmの篩いを通過し、かつ、篩目850μmの篩を用いたときに篩目850μmの篩上に残る粒子の細骨材全体に対する質量割合をいう。
本実施形態のグラウト組成物における細骨材の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して、好ましくは50〜120質量部であり、より好ましくは60〜100質量部であり、更に好ましくは70〜90質量部であり、特に好ましくは75〜85質量部である。
細骨材の含有量を上述の範囲とすることによって、グラウト組成物は、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性をより一層バランスよく両立できると共に、水中及び気中での圧縮強度がより一層高く、優れた水中気中強度比を示す硬化体を得ることができる。
増粘剤としては、セルロース系増粘剤を用いることが好ましい。セルロース系増粘剤は特に限定されないが、水中不分離性能を有するセルロース系増粘剤がより好ましい。このようなセルロース系増粘剤を用いることにより、グラウト組成物の流動性及び流動保持性をより向上し、かつ、水中不分離性をもより向上することができる。そして、水中及び気中での圧縮強度が高く、優れた水中気中強度比をより確実に達成する硬化体を作製することができる。
セルロース系増粘剤としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、グリオキザール付加ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース及びカルボキシルエチルセルロース等の水溶性セルロース誘導体を含む増粘剤を挙げることができ、特に、水中不分離性能を有するヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤を用いることが好ましい。
グラウト組成物は温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性とをバランスよく両立する観点から、増粘剤は、20℃における2質量%水溶液の粘度が、好ましくは30000〜60000mPa・sであり、より好ましくは35000〜55000mPa・sであり、更に好ましくは38000〜52000mPa・sであり、特に好ましくは40000〜50000mPa・sである。
なお、増粘剤の粘度は、増粘剤の2質量%水溶液を、B型粘度計(東機産業社製デジタル粘度計 DVL−B形)を用い、回転速度6rpm、ロータNo.4、20℃の条件で測定した値である。
本実施形態のグラウト組成物における増粘剤の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して0.05〜0.65質量部であることが好ましく、0.15〜0.55質量部であることがより好ましく、0.25〜0.45質量部であることが更に好ましく、0.30〜0.40質量部であることが特に好ましい。
増粘剤の含有量を上述の範囲にすることによって、グラウト組成物は、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性をより一層バランスよく両立できると共に、水中及び気中での圧縮強度がより一層高く、優れた水中気中強度比を示す硬化体を得ることができる。
流動化剤としては、グラウト組成物を水と混合してグラウトスラリーを作製する際の水の配合量を低減し、優れた流動性を示し、硬化後の水中及び気中における優れた圧縮強度を得るために、ポリカルボン酸系流動化剤を用いる。また、グラウトスラリーの混練直後の流動性及び長期(例えば、20〜60分経過後)の流動性(流動保持性)が温度の影響を受けにくく、より向上するために、初期の流動性に優れる側鎖長さ50nm超である流動化剤(以下、「流動化剤a」という。)と、長期の流動性に優れる側鎖長さ50nm以下である流動化剤(以下、「流動化剤b」という。)と、を併用する。
流動化剤aは、側鎖にエステル結合を有しないポリマーを含むことが好ましく、少なくとも下記式(A2)で表される構造単位を有するポリマーを含むことがより好ましく、下記式(A2)及び(B)で表される構造単位を有するポリマーを含むことが更に好ましい。式(A2)中、Rは水素原子又はポリオキシエチレン基を示し、ポリオキシエチレン基であることが特に好ましい。すなわち、流動化剤aは、ポリオキシエチレン鎖(POE:−(OC−)を側鎖として有するポリマーを含むことが好ましい。
Figure 0005895588
ポリオキシエチレン鎖の単位構造であるオキシエチレン基の繰り返し数nは、50〜200であることが好ましく、80〜190であることがより好ましく、120〜180であることが更に好ましく、具体的には160であるとよい。
流動化剤aを構成するポリマーは、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて測定されるナトリウムの含有量が、好ましくは2000μg/g超3500μg/g以下、より好ましくは2200〜3300μg/g、更に好ましくは2400〜3000μg/g、特に好ましくは2600〜2800μg/gであり、具体的には2700μg/gであるとよい。
流動化剤bは、側鎖にエステル結合を有するポリマーを含むことが好ましく、少なくとも下記式(C)で表される構造単位を有するポリマーを含むことがより好ましく、下記式(A)、(B)及び(C)で表される構造単位を有するポリマーを含むことが更に好ましい。すなわち、流動化剤bは、ポリオキシエチレン鎖(POE:−(OC−)の側鎖をエステル結合で有するポリマーを含むことが好ましい。
Figure 0005895588
ポリオキシエチレン鎖の単位構造であるオキシエチレン基の繰り返し数mは、30〜50であることが好ましく、35〜48であることがより好ましく、40〜45であることが更に好ましく、具体的には42であるとよい。
流動化剤bのポリカルボン酸系流動化剤を構成するポリマーの、式(A)で表される構造単位の数と、式(C)で表される構造単位の数との割合は、好ましくは9:1〜5:5、より好ましくは8:2〜6:4、更に好ましくは7.5:2.5〜6.5:3.5、特に好ましくは7.2:2.8〜6.8:3.2であり、具体的には、7:3であるとよい。
流動化剤bを構成するポリマーは、誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置により誘導結合プラズマ(ICP)発光分析装置を用いて測定されるナトリウムの含有量が、好ましくは3000〜20000μg/g、より好ましくは5000〜15000μg/g、更に好ましくは7500〜12500μg/g、特に好ましくは8500〜11000μg/gであり、具体的には9900μg/gであるとよい。
流動化剤の総量(100質量%)を基準とする流動化剤a及び流動化剤bの含有割合は10:90〜90:10であり、好ましくは20:80〜80:20であり、より好ましくは30:70〜70:30であり、更に好ましくは40:60〜60:40であり、特に好ましくは45:55〜55:45である。
流動化剤中の流動化剤a及び流動化剤bの含有割合を、上述の範囲にすることによって、グラウト組成物の初期の流動性及び長期の流動性(流動保持性)が温度の影響を受けにくく、より一層良好にすることができる。
本実施形態のグラウト組成物における流動化剤の総量の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対して0.05〜0.65質量部であることが好ましく、0.15〜0.55質量部であることがより好ましく、0.25〜0.45質量部であることが更に好ましく、0.30〜0.40質量部であることが特に好ましい。
流動化剤の総量の含有量を上述の範囲にすることによって、グラウト組成物は、温度の影響を受けにくい優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性をより一層バランスよく両立できると共に、水中及び気中での圧縮強度がより一層高く、優れた水中気中強度比を示す硬化体を得ることができる。
本実施形態のグラウト組成物は、無機系膨張材を更に含むことができる。無機系膨張材としては、生石灰−石膏系膨張材、石膏系膨張材、カルシウムサルフォアルミネート系膨張材等を用いることができる。このうち、硬化体の水中及び気中における圧縮強度をより向上する観点から、生石灰−石膏系膨張材を含むことが好ましい。
無機系膨張材の含有量は、ポルトランドセメント100質量部に対し、好ましくは1〜10質量部であり、より好ましくは2〜8質量部であり、更に好ましくは3〜7質量部であり、特に好ましくは4〜6質量部である。
無機系膨張材の含有量を上述の範囲に調整することによって、一層適正な膨張性が発現され、グラウト硬化体の過度な収縮を抑制することができると共に、過剰な膨張作用に起因するクラックの発生を十分に抑制することができる。
<グラウトスラリー>
本発明のグラウトスラリーは、上述のグラウト組成物と水とを配合し、混練することによって調製することができる。本発明のグラウトスラリーの好適な実施形態を以下に説明する。
本実施形態のグラウトスラリーは、水中不分離グラウトスラリーとして好適に用いることができる。グラウトスラリーを調製する際に、水の配合量を適宜変更することによって、グラウトスラリーのフロー値、60分後のフロー値及び懸濁物質量を調整することができる。ここで、フロー値及び60分後のフロー値とは、JSCE−D 104−2007「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、6.1.6(1)スランプフロー」に記載の試験方法に準拠して混練直後に測定されるフロー値(単位:mm)及び混練60分後に測定されるフロー値(単位:mm)である。ただし、本実施形態では、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載されたフローコーンを用いて、測定している。また、懸濁物質量とは、JSCE−D 104−2007「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、付属書2:水中不分離性コンクリートの水中分離度試験方法」に記載の試験方法に準拠して測定される値(単位:mg/L)である。
水の配合量は、グラウト組成物100質量部に対し、好ましくは20〜28質量部であり、より好ましくは21〜27質量部であり、更に好ましくは21.5〜26.5質量部であり、特に好ましくは22〜26質量部である。
本実施形態のグラウトスラリーのフロー値は、好ましくは210〜290mmであり、より好ましくは220〜280mmであり、更に好ましくは225〜275mmであり、特に好ましくは230〜270mmである。
フロー値を上述の範囲とすることによって、一層優れた流動性を有するグラウトスラリーを得ることができる。
本実施形態のグラウトスラリーの60分後のフロー値は、好ましくは200〜260mmであり、より好ましくは205〜250mmであり、更に好ましくは208〜245mmであり、特に好ましくは210〜240mmである。
60分後のフロー値を上述の範囲とすることによって、一層優れた流動保持性を有するグラウトスラリーとすることができる。
本実施形態のグラウトスラリーのフロー値において、5℃、20℃及び30℃におけるフロー値の最大値と最小値との差(フロー差)は、それぞれ、50mm以下が好ましく、40mm以下がより好ましく、30mm以下が更に好ましい。
本実施形態のグラウトスラリーの60分後のフロー値において、5℃、20℃及び30℃におけるフロー値の最大値と最小値との差(フロー差)は、それぞれ、60mm以下が好ましく、50mm以下がより好ましく、45mm以下が更に好ましい。
フロー差を上述の範囲とすることによって、温度の影響を受けにくいより一層優れた流動性及び流動保持性と、水中不分離性とをバランスよく両立したグラウトスラリーを得ることができる。
本実施形態のグラウトスラリーの懸濁物質量は、好ましくは100mg/L以下であり、より好ましくは80mg/L以下であり、更に好ましくは60mg/L以下であり、特に好ましくは50mg/L(リットル)以下である。
懸濁物質量を上述の範囲とすることによって、一層優れた水中不分離性を有するグラウトスラリーを得ることができる。
<グラウト硬化体>
本発明のグラウト硬化体は、上述のグラウトスラリーを硬化させることによって得ることができる。本発明のグラウト硬化体の好適な実施形態を以下に説明する。
本実施形態のグラウト硬化体は、水中不分離グラウト硬化体として好適に用いることができる。すなわち、上述のグラウトスラリーが硬化して形成される本実施形態のグラウト硬化体は、水中及び気中での圧縮強度が十分に高く、優れた水中気中強度比(水中での圧縮強度/気中での圧縮強度)を兼ね備える。
ここで、圧縮強度(水中及び気中)は、JSCE−D 104−2007「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、6.1.6(6)圧縮強度」に準拠して測定される値である。ただし、本実施形態では供試体(グラウト硬化体)として、直径50mm、高さ100mmの円柱供試体を用いて、所定の材齢にて測定している。また、水中気中強度比は、水中JSCE−D 104−2007「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、6.1.7(7) 水中気中強度比」に準拠して算出される値である。
本実施形態のグラウト硬化体の材齢7日の圧縮強度(水中)は、好ましくは15.0N/mm以上であり、より好ましくは20.0N/mm以上であり、更に好ましくは30.0N/mm以上であり、特に好ましくは40.0N/mm以上である。
本実施形態のグラウト硬化体の材齢7日の圧縮強度(気中)は、好ましくは19.0N/mm以上であり、より好ましくは25.0N/mm以上であり、更に好ましくは38.0N/mm以上であり、特に好ましくは50.0N/mm以上である。
本実施形態のグラウト硬化体の材齢28日の圧縮強度(水中)は、好ましくは25.0N/mm以上であり、より好ましくは35.0N/mm以上であり、更に好ましくは40.0N/mm以上であり、特に好ましくは44.0N/mm以上である。
本実施形態のグラウト硬化体の材齢28日の圧縮強度(気中)は、好ましくは32.0N/mm以上であり、より好ましくは44.0N/mm以上であり、更に好ましくは50.0N/mm以上であり、特に好ましくは55.0N/mm以上である。
本実施形態のグラウト硬化体の材齢7日及び材齢28日での水中気中強度比(水中での圧縮強度/気中での圧縮強度×100)は、好ましくは80%以上であり、より好ましくは82%以上であり、更に好ましくは84%以上であり、特に好ましくは85%以上である。
水中及び気中での圧縮強度及び水中気中強度比が上述の範囲であることによって、グラウト硬化体は、施工箇所が水中環境下においても優れた強度特性を有する。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではない。
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[使用原料]
以下(1)〜(5)に示す原材料を準備した。
(1)ポルトランドセメント
・早強ポルトランドセメント(宇部三菱セメント株式会社製、ブレーン比表面積=4500cm/g)
(2)細骨材
・珪砂:表1に示す粒子径の分布を有する。
Figure 0005895588
(3)増粘剤
・ヒドロキシプロピルメチルセルロース系増粘剤(信越化学社製、粘度43600mPa・s)
(4)流動化剤
・流動化剤a(BASF社製、側鎖長さ:76nm、式(A2)及び(B)で表される構造単位を有し、オキシエチレン基の繰り返し単位数n:160、Na量:2700μg/g)
・流動化剤b(BASF社製、側鎖長さ:35nm、式(A)、(B)及び(C)で表される構造単位を有し、オキシエチレン基の繰り返し単位数m:42、Na量:9900μg/g)
(5)無機系膨張材
・生石灰−石膏系膨張材(太平洋マテリアル社製)
[グラウト組成物の調製]
上述の(1)ポルトランドセメント、(2)細骨材、(3)増粘剤、(4)流動化剤及び(5)無機系膨張材を表2に示す割合(質量部)で配合し、各実施例及び各比較例のグラウト組成物を調製した。
Figure 0005895588
[グラウトスラリーの調製]
実施例及び比較例で得られた各グラウト組成物2kgに対して、水460g(グラウト組成物100質量部に対して、水23質量部)を配合して混練し、各実施例及び各比較例のグラウトスラリーを調製した。混練は、各恒温室(5、20、30℃)、相対湿度65%の条件下でケミスターラーを用いて、回転数700rpmで2分間行った。
(1)フロー値
JSCE−D 104−2007「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、6.1.6(1)スランプフロー」に記載の試験方法に準拠してフロー値を測定した。フローコーンは、JIS R 5201−1997「セメントの物理試験方法」に記載のものを使用し、混練直後のグラウトスラリーをフローコーンに充填し、直ぐにフローコーンを引き上げてから5分経過した時点で、フロー値を測定した。また、当該グラウトスラリーを60分間静置した後に上記手順を繰り返し、60分後のフロー値を測定した。フロー値を流動性(初期の流動性)の指標とし、60分後のフロー値を流動保持性(長期の流動性)の指標とした。また、混練直後のフロー値及び60分後のフロー値を施工箇所での充填性の指標とした。
(2)フロー差
上述の試験方法で得られたフロー値及び60分後のフロー値について、5℃、20℃及び30℃におけるフロー値の最大値と最小値との差をフロー差とし、使用温度の違いによる流動性及び流動保持性への影響度、すなわち施工性の指標とした。
(3)懸濁物質量
JSCE−D 104−2007「コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、付属書2:水中不分離性コンクリートの水中分離度試験方法」に記載の試験方法に準拠して懸濁物質量を測定した。懸濁物質量を水中不分離性の指標とした。
Figure 0005895588
[グラウト硬化体の評価]
(3)圧縮強度
実施例1で20℃恒温室にて調製したグラウトスラリーを用いて作製したグラウト硬化体の水中及び気中での圧縮強度を、JSCE−D 104−2007「2.コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、6.1.6(6)圧縮強度」に記載の試験方法に準拠して測定した。ただし、供試体(グラウト硬化体)として、直径50mm、高さ100mmの円柱供試体を用いて、7日及び28日の各材齢にて測定した。測定結果を表4に示す。
(4)水中気中強度比
実施例1で20℃恒温室にて調製したグラウトスラリーを用いて作製したグラウト硬化体の水中気中強度比を、JSCE−D 104−2007「2.コンクリート用水中不分離性混和剤品質規格、6.1.7(7) 水中気中強度比」に記載の試験方法に準拠して算出した。結果を表4に示す。
Figure 0005895588
表3に示すように、実施例1のグラウトスラリーは、温度の影響を受けにくい良好な流動性及び流動保持性を示し、側鎖長の異なる2種のポリカルボン酸系流動化剤を特定の含有割合で用いるグラウト組成物は施工箇所への良好な充填性を有することが確認された。また、実施例1のグラウトスラリーの懸濁物質量の測定結果から、グラウト組成物が良好な水中不分離性を有することが確認された。
表4に示すように、実施例1のグラウトスラリーを用いて作製したグラウト硬化体(実施例2)は、水中及び気中において良好な圧縮強度及び水中気中強度比を有していた。
以上のことから、側鎖長さの異なる2種のポリカルボン酸系流動化剤を特定の含有割合で併用する本発明のグラウト組成物は、温度の影響を受けにくい優れた流動性、流動保持性及び水中不分離性を有し、水中及び気中において優れた圧縮強度を有する硬化体を形成することができる。

Claims (5)

  1. ポルトランドセメント、細骨材、増粘剤及び流動化剤を含む水中不分離グラウト組成物であって、
    前記流動化剤が、側鎖長さ50nm超であるポリカルボン酸系流動化剤(流動化剤a)と側鎖長さ50nm以下であるポリカルボン酸系流動化剤(流動化剤b)の2種を併用してなり、
    前記流動化剤aのポリオキシエチレン鎖の単位構造であるオキシエチレン基の繰り返し数nが120〜180であり、
    前記流動化剤aのナトリウム含有量が2400〜3000μg/gであり、
    前記流動化剤bのポリオキシエチレン鎖の単位構造であるオキシエチレン基の繰り返し数mが40〜45であり、
    前記流動化剤bのナトリウム含有量が8500〜11000μg/gであり、
    前記流動化剤の総量(100質量%)を基準とする流動化剤a及び流動化剤bの含有割合は45:55〜55:45であ
    前記増粘剤は、セルロース系増粘剤であり、20℃における前記増粘剤の2質量%水溶液の粘度が、40000〜50000mPa・sであり、
    前記ポルトランドセメント100質量部に対して、前記流動化剤の総量0.15〜0.55質量部、前記増粘剤0.05〜0.65質量部、前記細骨材60〜100質量部である、
    水中不分離グラウト組成物。
  2. さらに、生石灰−石膏系膨張材を含み、前記ポルトランドセメント100質量部に対して、前記生石灰−石膏系膨張材1〜10質量部である、請求項1に記載の水中不分離グラウト組成物。
  3. 前記細骨材の粒子径が、150μm以上1200μm未満の範囲である、請求項1又は請求項2に記載の水中不分離グラウト組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の水中不分離グラウト組成物と、水と、を含む、グラウトスラリー。
  5. 請求項4に記載のグラウトスラリーを硬化して得られる、グラウト硬化体。
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