JP2006240412A - 走行状態識別装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 車両の走行が適切に行われているか否かをより正確に識別することのできる走行状態識別装置を提供することにある。
【解決手段】 走行状態識別装置は、車両10の挙動に直接影響を及ぼす車輪14に作用する横力を車輪作用力センサ16によって検出する。そして、車体12側に設けられたECU20に含まれる走行状態判別部46により車輪作用力センサ16から提供される車輪14の横力の変動情報に基づき、車両10の走行状態を判別する。ECU20は、車両10の走行状態が不適切であると判断した場合、警報装置28を介して運転者に警報を提供する。
【選択図】 図1
【解決手段】 走行状態識別装置は、車両10の挙動に直接影響を及ぼす車輪14に作用する横力を車輪作用力センサ16によって検出する。そして、車体12側に設けられたECU20に含まれる走行状態判別部46により車輪作用力センサ16から提供される車輪14の横力の変動情報に基づき、車両10の走行状態を判別する。ECU20は、車両10の走行状態が不適切であると判断した場合、警報装置28を介して運転者に警報を提供する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、走行状態識別装置、特に、車両の走行が適切に行われているか否かを識別する走行状態識別装置に関する。
従来、居眠り運転や脇見運転の発生を検出し、それを防止するための技術が種々提案されている。例えば、道路のセンターラインや路側帯の白線への接近を検出することにより、車両のふらつきを認識し、警報を出力するものがある。また、運転者の視線や頭部の動きを検出し、視線の動きが低下した場合や頭部の揺れが激しくなった場合に警報を出力するものなどがある。しかし、白線への接近や視線や頭部の動きは必ずしも居眠り運転や脇見運転に対応するものであるとは限らない。そこで、例えば、運転者が操作する操舵角をモニタし、その操舵角変化から運転者の意識の低下や注意力の散漫などを認識するものがある。さらに、特許文献1においては、操舵角の周波数分析を行うことによりリアルタイムで居眠り運転を検出する技術の開示がある。
特開平5−155269号公報
しかし、車両の挙動と操舵角の変化と対応しない領域も存在する。また、運転者の意識の低下や注意力の散漫状態は運転者個々に異なると共に、そのときの状況により異なる。そこで、車両の挙動とさらに密接に関連する変化量を用いて車両の走行状態識別をより正確に行う装置の要望がある。
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両の走行が適切に行われているか否かをより正確に識別することのできる走行状態識別装置を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある態様の走行状態識別装置は、車輪に作用する車輪作用力を検出するセンサと、車体側に設けられ、前記センサから提供される車輪作用力の変動情報に基づき、車両の走行状態を判別する走行状態判別部と、を含むことを特徴とする。
この態様によると、車両の挙動に直接影響を及ぼしている車輪に作用する車輪作用力の変動情報に基づき車両の走行状態を判別するので、正確に車両の走行状態を判別することができる。
また、上記態様において、前記センサは、車幅方向に作用する車輪作用力を検出してもよい。例えば、車輪のタイヤ部分やホイール部分になどに配置した歪みセンサや車輪のタイヤ部分やホイール部分になどに配置した磁性体の位置を検出する磁性体センサなど直接車幅方向に作用する車輪作用力を検出することができるセンサが利用可能である。この態様によれば、車両の挙動を容易かつ正確に取得することが可能になり、判別精度を向上するとができる。
また、上記態様において、前記走行状態判別部は、道路情報と車輪作用力の変動情報に基づき走行状態を判別してもよい。ここで、道路情報とは、例えば、道路の旋回半径や車線幅などを含む道路の形状情報を含むものとする。この態様によれば、道路情報と車輪作用力の変動情報との比較により車両の走行が道路にしたがって適切に行われているか否かを正確に識別することができる。
また、上記態様において、前記走行状態判別部は、前記センサで検出した車輪作用力と比較する閾値を車両重量と車輪速と車両の旋回半径に基づき決定してもよい。車輪に作用する車輪作用力は、車両重量が重いほど、また車輪速度が大きいほど大きくなる。また、旋回半径に関し、直進時を旋回半径最大とすると、急コーナーを曲がるほど車輪作用力は大きくなる。したがって、車両重量と車輪速と車両の旋回半径に基づき閾値を決定することにより、車両が道路にしたがって適切に走行しているか否かを判断する閾値を正確に得ることができる。
また、上記態様において、前記走行状態判別部は、ナビゲーションシステムから車両が走行中の道路情報を取得してもよい。この態様によれば、車両の走行状態の判断に必要な道路情報を容易に取得し、車両の走行が適切に行われているか否かを正確に識別することができる。また、膨大な道路情報を常時保持する必要がなくなりシステムの記憶装置の縮小にも寄与することができる。
また、上記態様において、前記走行状態判別部は、前記車輪作用力および車輪作用力の時間積分値、車輪作用力の時間微分値の少なくとも一つにより車両の走行状態が不適切になっている原因の推定を行ってもよい。例えば、車輪作用力は、走行中車輪の向きを変えることにより変化する。そのため、車輪作用力に基づき車輪が無理な旋回を行おうとしていないか否かを判断することができる。また、車輪作用力の時間積分値は、車輪が所定方向にスムーズに進んでいる場合、徐々に増加するので、車輪が正しい方向に進んでいるか否かを判断することができる。また、車輪作用力の時間微分値は、車輪がふらついていないか否か、つまり、車輪の方向が安定しているか否かを判断することができる。この態様によれば、不適切な走行を行っている車両の状態を識別し、例えば警報出力の内容を変化させて、運転者の注意を適切に喚起することができる。
また、上記態様において、前記走行状態判別部は、前記センサから得られる車輪作用力の周波数解析に基づき車両の走行状態を判別してもよい。車輪作用力の周波数解析を行うことにより、車輪に作用している車輪作用力の認識が容易になり、車輪の挙動の変化を正確に検出し、車両の走行が適切に行われているか否かを正確に識別することができる。
本発明の走行状態識別装置によれば、車両の挙動に直接影響を及ぼしている車輪に作用する車輪作用力の変動情報に基づき車両の走行状態を判別するので、車両の走行が適切に行われているか否かを正確に識別することができる。
以下、本発明の実施の形態(以下実施形態という)を、図面に基づいて説明する。
本実施形態の走行状態識別装置は、車両の挙動に直接影響を及ぼす車輪に作用する車輪作用力をセンサによって検出する。そして、車体側に設けられた走行状態判別部によりセンサから提供される車輪作用力の変動情報に基づき、車両の走行状態を判別するものである。
図1は、本実施形態の走行状態識別装置を搭載する車両10の構成概念図である。車両10は、車体12の前輪および後輪に設けられた車輪14、および車体12の後方に搭載されたスペア車輪14aを備える。
各車輪14には、車輪作用力センサ16と、車輪作用力センサ16に接続された車輪側通信機18とが搭載されている。一方、車体12には、電子制御装置20(以下「ECU20」と表記する)と、ECU20に接続された車体側センサ類22、車体側通信機24、ナビゲーション装置26、および警報装置28とが搭載されている。車体側センサ類22には、例えば、外気温を測定する外気温センサや降雨の有無を検出する降雨センサなどが含まれる。このほかECU20には、ステアリングホイール30の近傍に配置された方向指示器スイッチ32からの操作信号や、各車輪14の車輪速を検出する車輪速センサ34からの車輪速情報や車両10の重量を検出する車重センサ36からの車重情報などが提供されるようになっている。
本実施形態において、車輪作用力センサ16は、車輪14に作用する車輪作用力、具体的には、車幅方向に作用する車輪作用力、例えば横力を検出するセンサであり、例えば、図2に示すように、歪みセンサ38や磁性体40aの位置を検出する磁性体センサ40などを用いることができる。車輪14は当該車輪14の方向が変わり旋回を行う場合、旋回方向に応じて横力を受ける。車輪作用力センサ16は、この横力の測定を行う。図2には、歪みセンサ38や磁性体センサ40の配置例が示されている。例えば、図2(a)の場合、歪みセンサ38は、ホイール42のリム端部に配置され、例えば、タイヤ44が矢印A方向の力を受け変形したときのリム端部が受ける力を検出し、この検出値に基づき車輪14の横力を出力している。また、図2(b)の場合、歪みセンサ38は、タイヤ44のトレッド内部に配置され、タイヤ44が矢印A方向の力を受け変形したときにタイヤ44が受ける力を直接横力として検出している。さらに、図2(c)の場合は、歪みセンサ38がサイドウォール内部に配置され、タイヤ44が矢印A方向の力を受け変形したときのサイドウォールの伸縮力を検出し、その大きさに基づきタイヤ44が受ける横力を出力している。
図2(d)は、磁性体センサ40をホイール42の所定位置、例えばリム中央部分に配置している。一方、磁性体40aをタイヤ44の全体、例えばトレッド部分やサイドウォール部分に埋め込み、タイヤ44が例えば矢印A方向の力を受けた場合、タイヤ44の変形と共に磁性体40aの位置が変位して、その変位量が磁場の変化量として検出される。その変化量に基づきタイヤ44が受ける横力を出力している。また、図2(e)は、磁性体センサ40の配置バリエーションを示すもので、磁性体センサ40をナックル側に配置し、タイヤ44の内部に埋め込んだ磁性体40aの位置の変位を検出し、その変化量に基づきタイヤ44が受ける横力を出力している。なお、車輪作用力センサ16の配置場所は、車輪14に作用する車幅方向に作用する横力を検出できれば任意である。また、図2においては、車輪14の断面のみを示しているが、車輪作用力センサ16は車輪14の全周に所定間隔で配置されている。車輪14の周方向の配置間隔を狭くするほど信頼性の高い横力データを得ることができる。
車輪側通信機18は、車体側通信機24と信号の送受信を行う通信機である。この車輪側通信機18は、車輪作用力センサ16の検出値を所定間隔で無線送信する。なお、各車輪側通信機18は、接続された車輪作用力センサ16の検出値を相互に識別可能な形で送信し、車体側通信機24は、送信された信号が何処の車輪作用力センサ16のものかを認識得るようになっている。
車体側通信機24は、車輪側通信機18と信号の送受信を行う通信機であり、例えば各車輪14の車輪側通信機18から無線送信されてくる信号を受信してECU20に送る。ナビゲーション装置26は、車両10の現在存在する位置情報や車両10の向き、車両10がこれから走行しようとする道路に関する情報、例えば形状や幅員などの情報をECU20に提供している。
警報装置28は、ECU20に制御され車両10の運転者などに適宜警報を発する装置であり、例えば、運転者が居眠り状態や脇見運転を行っていると判断した場合、その他、運転者の体調変化などで通常と異なる運転状態に移行したと判断した場合などに、警報音や警報表示、ステアリングホイール30や着座シートの振動などによって車両10の運転者などに注意を喚起し走行状態の異常を報知する。また、必要に応じて、車両10を強制的に停止させるなど車両10の駆動制御側に制御信号を出力するようにしてもよい。
ECU20は、CPUを含むマイクロプロセッサとして構成されており、マイクロコンピュータによる演算を行う演算ユニット、各種の処理プログラムを記憶するROM、一時的にデータやプログラムを記憶してデータ格納やプログラム実行のためのワークエリアとして利用されるRAM、および各種信号の送受信を行うための入出力ポート等を有する。
図3には、ECU20に含まれる走行状態判別部46の概念構成ブロック図が示されている。走行状態判別部46は、道路情報抽出部48、閾値算出部50、微分積分演算部52、比較判断部54などが含まれている。道路情報抽出部48は、ナビゲーション装置26から提供される道路情報とGPS衛星から得られる情報と車両10の有するジャイロセンサなどから現在車両10が存在している場所や走行を行っている道路、さらにはその道路の旋回半径などを抽出する。また、閾値算出部50は、道路情報抽出部48から提供される走行中の道路の旋回半径や車輪速センサ34から提供される車輪速、車重センサ36から提供される車両重量に基づき、対象となる道路を適切にスムーズに走行した場合に発生するべき車輪作用力、つまり車輪14に発生する横力の許容範囲、すなわち理想横力の閾値を算出している。なお、後述するが閾値算出部50では、算出した理想横力を時間積分、時間微分して得られる積分値の閾値、微分値の閾値などの算出も行う。また、微分積分演算部52は、車輪作用力センサ16が検出した実測の横力の時間微分や時間積分を行う機能を有する。比較判断部54には、閾値算出部50から供給される閾値と、車輪作用力センサ16から供給される実測の横力および微分積分演算部52で演算された実測の横力の微分値、積分値が供給され、それぞれ閾値との比較が行われる。そして、閾値との比較に基づき、車両10の走行状態の判定を行い、もし、異常が認められる場合には、ECU20に接続された警報装置28を介して運転者に警報を提供する。
以上のように構成される本実施形態の走行状態識別装置の動作を説明する。まず、図4のフローチャートを用いて、全体動作の説明を行う。
走行状態識別装置は例えば、車輪速センサ34などからの情報に基づき、車両10が走行を開始したときに動作を開始する。まず、車両10の走行状態識別ができる環境であるか否かの判断を行う。具体的には、車両10が走行している路面が通常路面か否かの判断を行う(S100のYまたはN)。通常路面とは、降雨や凍結などにより路面が滑りやすい状況になっていない路面を意味し、ECU20は車体側センサ類22に含まれる降雨センサや外気温センサなどからの情報により判断する。路面が通常路面ではなく滑りやすい場合には(S100のN)、車輪14と路面との接触抵抗が低減するため、車輪作用力センサ16による正確な横力検出がでず、正確な走行状態識別処理ができないため、走行状態識別のシステムを無効とし(S102)、ステップS100に戻り、通常路面に移行するまで待機する。なお、ここでの判断の閾値は、降雨量や外気温に加え車輪14の状態などにより適宜設定することが望ましい。また、このとき、ECU20は路面が滑りやすい状態である旨を警報装置28を介して運転者に警告するようにしてもよい。
一方、ECU20が、車両10は通常路面を走行していると判断した場合(S100のY)、続いて、道路情報が取得可能か否かの判断を行う(S104のYまたはN)。道路情報は、例えばナビゲーション装置26を介して外部の情報センタから現在車両10が存在する場所を中心に取得したり、FM多重放送や路肩に設置されたビーコンなどから受信することができる。また、車両10にCCDカメラなどの画像取得装置が搭載されている場合、撮影画像に基づいて道路情報を取得してもよい。また、これらを複合的に使用することにより道路情報を取得してもよい。車輪14に作用する横力は、道路形状により異なるため、道路情報が取得できない場合(S104のN)、測定した横力の比較基準を正確に定めることができないので、正確な走行状態識別処理ができない。そのため、走行状態識別のシステムを無効とし(S102)、ステップS100に戻り、ステップS100、ステップS104の条件が揃うまで待機する。なお、ナビゲーション装置を利用する場合、車両10の走行状態の判断に必要な道路情報を容易に取得することができると共に、膨大な道路情報を常時保持する必要がなくなり走行状態識別装置の記憶装置の縮小にも寄与することができる。
ECU20は、道路情報の取得が可能であると判断した場合(S104のY)、車輪作用力センサ16で車輪14で発生する横力が検出可能か否かの判断を行う(S106のYまたはN)。横力が検出できない場合には(S106のN)、走行状態識別のシステムを無効とし(S102)、ステップS100に戻り、ステップS100、ステップS104、ステップS106の条件が揃うまで待機する。
ステップS106において、ECU20が車輪14の横力発生を検出できる場合(S106のY)、つまり、車両10の進行方向が変えられている場合、ECU20は、方向指示器が動作しているか否かの判断を行う(S108のYまたはN)。ECU20は、この判断を例えば方向指示器スイッチ32から入力される信号により行うことができる。方向指示器を動作させている場合(S108のY)、方向指示器の動作中待機し(S110のY)、方向指示器の動作が終了した場合(S110のN)、ステップS100に戻り、ステップS100以降の処理を繰り返す。つまり、横力が発生している場合、運転者が自らの意志で車両10を旋回させようとしているか否かを判断する。運転者が方向指示器スイッチ32の操作を行っていれば、運転者は、居眠りや脇見を行うことなく正常に運転行為を行っていると容易に判断することができる。
一方、横力が発生しているにも関わらず、方向指示器が動作していない場合(S108のN)、ECU20は、走行状態識別の具体的処理を開始する。閾値算出部50は、道路情報抽出部48を介してナビゲーション装置26から取得できる道路情報に基づき進行方向の道路情報を取得すると共に、ナビゲーション装置26の機能を用いて車両10の現在位置と車両10の向きを取得し(S112)、走行状態識別を行うための閾値を算出する(S114)。
閾値算出部50が算出する閾値は、道路の旋回半径CRと、車両重量Mと、車輪速度Vによって決めることができる。ここで、旋回半径CRは、CR>0の場合は、右コーナーの道路、CR<0の場合は、左コーナーの道路、CR=±∞の場合は、直線道路であるとする。図5(a)には、右方向に一定の旋回半径を有する道路の状態が示されている。車両10の走行中の固有値K=M×V2とすると、旋回半径CRのコーナーを旋回するときに発生する理想的な車輪作用力、つまり横力はCF=K/CR=M×V2/CRとなる。現実的に車両10を旋回させる場合、路面状態や車両10のステアリング機構の遊びなどの外的要因により発生する横力は変動する。しかし、所定の幅を有する道路を走行する場合、ある程度の横力の変動はスムーズな走行を行う上で問題にならない。そこで、道路の幅員などに基づき、図5(b)に示すように横力CFに対し±の緩衝帯を設けて横力に関する閾値としている。つまり、現実に車輪14に発生している横力が前述に緩衝帯の範囲に含まれていれば、車輪14は走行道路に対して適切な横力を受けていると判断することができる。言い換えれば、あるコーナーに対する横力の閾値は、車輪14が無理な旋回を行おうとしていないか否かの判断に利用することができる。
また、閾値算出部50は、横力の閾値算出と同時に、固有値Kに関する時間積分値Kiと、時間微分値Kdを算出し、あるコーナーCRに対する横力の積分値:Ki/CRおよび、微分値:Kd/CRを準備し、前述と同様に緩衝帯を設定しそれぞれ閾値としている。横力の時間積分値は、車輪14が所定方向にスムーズに進んでいる場合、徐々に増加するので、車輪14が正しい方向に進んでいるか否かの判断に利用することができる。また、車輪作用力の時間微分値は、車輪14がふらついていないか否か、つまり、車輪14の方向が安定しているか否かの判断に利用することができる。
図6には、図6(a)に示すような右コーナーの道路の場合に算出される各閾値を示している。図6(b)は、コーナー半径を示し、図6(c)は、横力の閾値、図6(d)は、横力の積分値の閾値、図6(e)は、横力の微分値の閾値を示している。図6(c)〜(e)において、ハッチングが施された部分に、実際に車輪作用力センサ16の実測値に基づく値が存在した場合、車両10の走行状態が正常でない、例えば、居眠り運転や脇見運転の可能性があったり、運転者の体調不良により走行が不適切な状態になっていると判断することができる。
したがって、比較判断部54は、閾値算出部50が算出した各閾値の提供を受けると共に、車輪作用力センサ16によって連続的に測定される実測の横力の提供を受ける。また、微分積分演算部52も連続的に測定される実測の横力の提供を受け、それぞれ時間積分値、時間微分値を演算し、比較判断部54に提供する。比較判断部54は、各閾値と実測値に基づく値の比較を行い(S116のYまたはN)、上述のように、閾値を逸脱する値が存在する場合(S116のY)、車両10の走行状態が不適当であると判断し、危険運転トリガーをONする(S118)。危険運転トリガーがONされた場合、走行状態判別部46は、警報装置28に起動信号を提供する。警報装置28は、例えば音声により運転者に、居眠り防止や脇見運転防止の警告メッセージを提供したり、表示器に警告メッセージを表示したり、ステアリングホイール30や着座シートを振動させたりする。また、自動運転システムが搭載されている場合には、自動運転に切り替えたり、周囲の安全確認を行いつつ、路側に強制停車させるようにしてもよい。なお、ステップS116で実測値に基づく値がいずれも閾値を越えていない場合(S116のN)、車両10は道路の形状に応じて適切に走行している、また、運転者の意識状態は良好であると判断し、ステップ108に戻り、運転者の動作確認や横力の検出を継続し、上述の走行状態識別を継続的に行う。
以下、図7のフローチャートを用いて、比較判断部54で行う具体的な走行状態識別の手順を説明する。
運転者の意識が低下したり注意力が低下する場合、車両10の危険運転が行われる可能性が高くなる。危険運転の原因には、居眠りや脇見、体調不良も含まれる。車両10の挙動としては、例えば、ステアリングホイール30が必要以上に操作された過操作状態となり、大きくふらついている場合や、逆にほとんど操作されない無操作状態で方向性を失っているような場合、必要以上に曲がってしまい道路から逸脱するような場合、走行方向はある程度道路に沿っているがふらついている場合などがある。
まず、比較判断部54は、車輪作用力センサ16が実測した横力が閾値算出部50の算出した閾値の範囲以内か否かの比較を行う(S200のYまたはN)。つまり、車輪14が大きく曲がろうとしているか否かの判断を行う。測定横力が閾値範囲内の場合(S200のY)、続いて、測定横力の積分値が閾値算出部50の算出した閾値の範囲以内か否かの比較を行う(S202のYまたはN)。測定横力の積分値が閾値範囲内の場合(S202のY)、つまり、道路の形状に応じた正しい方向に進んでいると判断した場合、続いて、測定横力の微分値が閾値算出部50の算出した閾値の範囲以内か否かの比較を行う(S204のYまたはN)。つまり、車両10がふらつかず安定して走行しているか否かの判断を行う。そして、測定横力の微分値が閾値範囲内の場合(S204のY)、現在、車両10の走行状態は良好であり、運転者も良好な意識状態で車両10の運転を行っていると判断しステップS200に戻り、次に車輪作用力センサ16から提供される実測値に基づく判断に備える。なお、この一連の判断サイクルは、車輪作用力センサ16の検出サイクルや、車輪14から車両10へのデータの通信サイクルなどにもよるが、例えば、0.1秒程度で行うことができる。
一方、ステップS200で、実測した横力が閾値範囲外であった場合(S200のN)、つまり、車輪14に大きな横力が作用し、車両10が必要以上に大きく曲がろうとしている場合、測定横力の微分値が閾値算出部50の算出した閾値の範囲以内か否かの比較を行う(S206のYまたはN)。もし、測定横力の微分値が閾値範囲外の場合(S206のY)、車両10は安定性を失い、大きくふらつきながら走行していると判断することができる。つまり、危険運転の中で過操作状態であることが検出される(S208)。
また、ステップS206で測定横力の微分値が閾値範囲内の場合(S206のN)、車輪14は一定方向に大きく曲がろうとしているが、車輪14のふらつきはない。つまり、車両10は危険運転のうち道路から直線的に逸脱しようとしている状態であることが検出される(S210)。
また、ステップS202で、測定横力の積分値が閾値範囲外であると判断された場合(S202のN)、比較判断部54は実測した横力の微分値が「0」と見なせるか否かの判断を行う(S212のYまたはN)。横力の微分値が「0」と見なせる場合、車輪14は一定方向に固定された状態になっていることを意味する。もし、ステップS212において、横力の微分値が「0」と見なせないと判断された場合(S212のN)、車輪14は大きく進行方向から外れてはいないものの、道路の形状にしたがった正しい方向に進んではおらず、危険運転のうちふらつきながら少しずつ道路を逸脱しようとしている状態であることが検出される(S210)。
また、ステップ212で横力の微分値が「0」と見なせる場合、車輪14は一定方向に固定されていることになる(S212のY)。ところが、車輪14は大きく進行方向から外れてはいないものの、道路の形状にしたがった正しい方向に進んでいない。それにも関わらず、何ら車輪14の方向修正が行われていないことになる。つまり、危険運転のうち、無操作状態であることが検出される(S214)。
また、ステップS204で測定横力の微分値が閾値範囲外であると判断された場合(S204のN)、車両10は走行している道路の形状に応じて、正しい方向に進んではいるものの、ふらついている状態、つまり、車両10は危険運転のうち不安定状態であることが検出される(S216)。
なお、上述した判別のうち、過操作状態の判別の場合、比較判断部54は突発的な大きな変化に基づいて判断を行うことになるので、図8に示すように、主に、横力の閾値と、微分値の閾値とに基づき過操作状態であることを判断することもできる。また、無操作状態の場合は、一定の横力が継続的に生じているにも関わらず、車輪14の方向の修正が行われないことを検出することで判断を行うことができるので、図9に示すように、主に、微分値の閾値と積分値の閾値とに基づき無操作状態であることを判断することもできる。
このように、本実施形態の走行状態識別装置によれば、車両10の挙動に直接影響を及ぼしている車輪14に作用する横力の変動情報に基づき車両10の走行状態を判別することができる。また、横力の積分値や微分値などを考慮することにより、不適切な走行を行っている車両10の状態の識別が可能になり、不適切な走行に応じた警報処理を行うことができる。例えば警報の分類や警報レベル、例えば警報音や警報振動の大きさた警報継続時間などを走行状態に応じて変化させたり、自動運転システムにより誘導や強制停止を実行したりすることができる。
なお、図6では、最も単純な閾値の例として右方向の緩やかなコーナー時に発生する横力やその積分値、微分値の例を示しているが、例えば、S字コーナーなどは、図6のコーナーの連続である。図10には、S字コーナー時に発生する横力やその積分値、微分値の例を示している。ただし、図6および図10はある所定時間の変化を示したものであり、実際の判断は、ある瞬間の値がどの領域に属するかを判定している。
図11には、走行状態判別部の他の構成例が示されている。この走行状態判別部56は、実測された車輪作用力、すなわち横力を周波数分析することにより、車両の走行状態が安定状態か否かを判別しているものである。
図11に示すように、走行状態判別部56は、道路情報抽出部48、基準横力取得部58、測定横力取得部60、差分器62、ローパスフィルタ(LPF)64、ハイパスフィルタ(HPF)66、FFT信号処理部68、比較判断部70などで構成されている。
道路情報抽出部48は、ナビゲーション装置26から提供される道路情報から現在車両10が存在し、走行を行っている道路の旋回半径などを抽出する。また、基準横力取得部58は、道路情報抽出部48から提供される走行中の道路の旋回半径や車輪速センサ34から提供される車輪速、車重センサ36から提供される車両重量に基づき、対象となる道路を適切にスムーズに走行した場合に発生するべき車輪作用力、つまり車輪14に発生する理想的な横力、言い換えれば基準横力を取得している。また、測定横力取得部60は、車輪作用力センサ16で検出された実測の横力を取得し、差分器62に提供している。なお、差分器62には、車輪作用力センサ16から直接測定した横力を提供するようにしてもよい。
差分器62は、基準横力取得部58と測定横力取得部60とで取得される基準横力と測定横力の差分を取り、同じデータを順次LPF64とHPF66に提供する。そして、LPF64を通過した低周波成分とHPF66を通過した高周波成分を個別に順次FFT信号処理部68に提供する。FFT信号処理部68では、所定時間、例えば現在から過去1秒のデータに基づき周波数解析を行いその結果を比較判断部70に出力する。比較判断部70では、周波数解析された低周波成分が所定閾値以上の場合、実際に発生している横力の発生が基準横力の発生に対し、緩慢になっている。すなわち、車輪14の無操作状態の可能性があると判断することができる。つまり、運転者の意識状態が低下しており、居眠り運転や、脇見運転の可能性があると判断することができる。また、高周波成分が所定閾値以上の場合、実際に発生している横力の発生が基準横力の発生に対し、大きすぎる。すなわち、車輪14の過操作状態の可能性があると考えられる。この場合も運転者の意識状態が低下しており、居眠り運転や、脇見運転の可能性があると判断することができる。
このように、車輪14に発生している車輪作用力、すなわち横力を周波数解析することによっても車両10の走行が適切に行われているか否かを正確に識別することができる。
なお、図11に示す走行状態判別部56において、方向指示器スイッチ32などの操作が正常に行われており、運転者の意識状態が高いと判断されている場合で、車両10が直進状態であるにも関わらず、低周波成分が所定閾値以上になっている場合には、車両流れが生じている可能性がある。この場合、例えば車輪14のアライメントのズレの可能性があるため、運転者に点検を促す警告を出力することができる。
同様に運転者の意識状態が高いと判断されている場合で、車両10が直進状態であるにも関わらず、高周波成分が所定閾値以上になっている場合には、車輪14の取り付けが緩んでいる可能性が考えられるため、運転者に点検を促す警告を出力することができる。また、各車輪14の接地力が検出可能な場合に、4輪中の1〜3輪のいずれの高周波成分が閾値を越えている場合、いずれかの車輪14にユニフォミティズレが生じている可能性があるため、運転者に点検を促す警告を出力することができる。なお、これらの警告の場合には、閾値を越えているものが低周波成分か高周波成分かにより、車両10の不具合の種類を分類して提示することができるので、車両10の不具合の内容を迅速に運転者に提示し、車両10の走行が不安定になっている原因を早急に解消することができる。
このように、車輪14に作用する車輪作用力、例えば横力の周波数解析を行うことにより、運転者の意識状態が良好か否かの判断が行えることに加え、車両10自体の構造的な状態が良好か否かの判断も併せて行うことが可能となり、車両10全体として走行状態が良好か否かの識別を行うことができる。
また、図11の構成においては、FFT信号処理部68を備えているが、FFT信号処理部68を省略し、LPF64、HPF66を通過した所定期間の信号レベルに対し、比較判断部70で閾値との比較を行い、簡易的に低周波成分や高周波成分に関して大きさを認識し、車両の走行状態が安定状態か否かを簡易的に判別することができる。
本発明は、上述の各実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能である。各図に示す構成は、一例を説明するためのもので、同様な機能を達成できる構成であれば、適宜変更可能である。また、図4や図7に示す処理手順も一例であり、同様な判断を行うことのできる構成であれば処理手順や処理内容を適宜変更しても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
10 車両、12 車体、14 車輪、16 車輪作用力センサ、18 車輪側通信機、20 ECU、22 車体側センサ類、24 車体側通信機、26 ナビゲーション装置、28 警報装置、30 ステアリングホイール、32 方向指示器スイッチ、34 車輪速センサ、36 車重センサ、38 歪みセンサ、40 磁性体センサ、40a 磁性体、46 走行状態判別部、48 道路情報抽出部、50 閾値算出部、52 微分積分演算部、54 比較判断部。
Claims (7)
- 車輪に作用する車輪作用力を検出するセンサと、
車体側に設けられ、前記センサから提供される車輪作用力の変動情報に基づき、車両の走行状態を判別する走行状態判別部と、
を含むことを特徴とする走行状態識別装置。 - 前記センサは、車幅方向に作用する車輪作用力を検出することを特徴とする請求項1記載の走行状態識別装置。
- 前記走行状態判別部は、道路情報と車輪作用力の変動情報に基づき走行状態を判別することを特徴とする請求項1または請求項2記載の走行状態識別装置。
- 前記走行状態判別部は、前記センサで検出した車輪作用力と比較する閾値を車両重量と車輪速と車両の旋回半径に基づき決定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の走行状態識別装置。
- 前記走行状態判別部は、ナビゲーションシステムから車両が走行中の道路情報を取得することを特徴とする請求項3または請求項4記載の走行状態識別装置。
- 前記走行状態判別部は、前記車輪作用力および車輪作用力の時間積分値、車輪作用力の時間微分値の少なくとも一つにより車両の走行状態が不適切になっている原因の推定を行うことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の走行状態識別装置。
- 前記走行状態判別部は、前記センサから得られる車輪作用力の周波数解析に基づき車両の走行状態を判別することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の走行状態識別装置。
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