JP2006238822A - 核酸の分離精製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】(1)核酸を含む試料溶液を固相に接触させて、該固相に核酸を吸着させる工程、(2)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程、及び(3)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程を含有する核酸分離精製方法において、上記試料溶液を、異なる複数の酵素を添加する工程を含んで調製することを特徴とする核酸の分離精製方法。
【選択図】なし
Description
本発明の目的は、RNAとプラスミドDNAを含む試料溶液を固相表面に吸着させた後、洗浄等を経て脱着させて核酸を分離精製する方法において、迅速、高収量、高純度なプラスミドDNAを得る方法を提供することである。
を脱着させる溶液をそれぞれ用いて、目的とする核酸(プラスミドDNA)を分離精製する方法が提供される。
1.
(1)核酸を含む試料溶液を固相に接触させて、該固相に核酸を吸着させる工程、
(2)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程、及び(3)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程
を含有する核酸分離精製方法において、
上記試料溶液を、異なる複数の酵素を添加する工程を含んで調製することを特徴とする核酸の分離精製方法。
2.
酵素が、核酸分解酵素であることを特徴とする上記1項に記載の核酸の分離精製方法。3.
核酸分解酵素が、RNA分解酵素であることを特徴とする上記1項または2項に記載の核酸の分離精製方法。
4.
RNA分解酵素が、RNaseT1およびRNaseAであることを特徴とする上記3項に記載の核酸の分離精製方法。
5.
試料溶液が、核酸を含む試料に、カオトロピック塩、界面活性剤、消泡剤、核酸安定化剤、緩衝剤、酸およびアルカリ剤から選ばれる少なくとも1つを含む前処理液を添加し、さらに水溶性有機溶媒を添加して調製されることを特徴とする上記1項〜4項のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
6.
固相が膜形状であることを特徴とする上記1項〜5項のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
7.
水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする上記1項〜6項のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
8.
固相が、シリカもしくはその誘導体、珪藻土、又はアルミナを含有することを特徴とする上記1項〜7項のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
9.
固相が、有機高分子を含有することを特徴とする上記1項〜8項のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
10.
固相が、テフロン(登録商標)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアクリレート共重合体、ポリウレタン、ポリベンズイミダゾール、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルおよびポリ弗化ビニリデンから選ばれる少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする上記9項に記載の核酸の分離精製方法。
11.
固相が、正もしくは負の荷電をもったナイロンを含むことを特徴とする上記9項に記載の核酸の分離精製方法。
12.
有機高分子が、多糖構造を有することを特徴とする上記9項に記載の核酸の分離精製方法。
13.
有機高分子が、セルロース、セルロース混合エステル、硝酸セルロース、酢酸セルロー
スおよびニトロセルロースから選ばれる少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする上記9項に記載の核酸の分離精製方法。
14.
上記1項〜13項のいずれかに記載の核酸の分離精製方法における工程を自動で行う装置。
15.
(i)核酸分離精製カ−トリッジと、(ii)複数の酵素と、(iii)カオトロピック塩、界面活性剤、消泡剤、核酸安定化剤、緩衝剤、酸およびアルカリ剤の少なくともいずれかを含む前処理液並びに水溶性有機溶媒と、(iv)洗浄液と、(v)回収液の試薬とを含む上記1項〜13項のいずれかに記載の核酸の分離精製方法を行うためのキット。
[試料溶液の調製]
本発明において、核酸を含む試料としては、細菌または細胞が挙げられる。
上記したように、本発明においては、試料溶液を、異なる複数の酵素を添加する工程を含んで調製し、あらかじめ複数のヌクレアーゼを添加した試料溶液として固相に吸着させることで、目的の核酸(プラスミドDNA)が分離精製される。
さらには、試料溶液が、核酸を含む試料に、カオトロピック塩、界面活性剤、消泡剤、核酸安定化剤、緩衝剤、酸、アルカリ剤から選ばれる少なくとも1つを含む前処理液を添加し、さらに水溶性有機溶媒を添加して調製されることが好ましい。
試料溶液は、さらに好ましくは、
・細菌または細胞を分散液で分散し、
・アルカリ溶液を添加することで細菌または細胞を溶解し、
・中和液を添加し、
・沈殿成分を取り除き、該沈殿上清に溶解液を添加し、
・さらに水溶性有機溶媒を添加して調製された溶液である。
分散液は、核酸安定化剤、緩衝剤から選ばれる化合物を少なくとも一種を含むことができる。
アルカリ溶液は、アルカリ剤と、界面活性剤、消泡剤および緩衝剤から選ばれる少なくとも一種とを含む。アルカリ溶液を添加することで、分散液で分散した溶液中の細菌または細胞と核酸とを可溶化する事ができ、細胞を構成する構造体が溶解されて、核酸を試料溶液中に分散することができる。使用されるアルカリ剤としては、水酸化イオン濃度0.1〜5mol/Lのアルカリ金属類縁体水溶液が挙げられる。一方、アルカリ溶液の替わりに、タンパク質が熱に弱いがDNA等の核酸は比較的強い性質を利用して熱変性を用いることもできる。熱変性を用いる場合、加熱条件は80〜100℃で、5分〜20分が好ましい。アルカリ溶液の添加、熱変性は単独又は組み合わせて採用することができる。
中和液は、酸と、カオトロピック塩、界面活性剤、消泡剤、核酸安定化剤、緩衝剤およびアルカリ金属類縁体から選ばれる少なくとも一種とを含む。中和液は、前記アルカリ溶液を添加した後に得られたアルカリ性ライセートを好ましくは鉱酸及び無機塩の添加により酸性化するもので、酸として好ましくは酢酸である。酸の濃度は本発明にとって重要ではなく、変化しうる。酸の種類としては水中に溶解するあらゆる無機塩を使用しうるが、好ましい無機塩としては、そのアニオンが前記酸のそれと同じものである。例えば、酢酸を使用するとき、好ましい鉱物塩は、酢酸アルカリ金属又はアルカリ土類金属、特に酢酸カリウムである。酸性域に、酸性域として好ましくは、pH4.0〜pH6.5の範囲に、最も好ましくはpH4.5〜pH6.0の範囲内に、pHを下げるのに十分な酸を使用する。前記塩濃度は、酸と同様に変化しうるが、高濃度であることが好ましい。なぜなら、得られた溶液が高いイオン濃度を有することにより染色体DNA及び他の不純物の沈殿を補助することとなり、これによりプラスミドDNAとこれらの不純物を分離することが容易になる。最も好ましくは、1.0〜10mol/L(1塩基塩に基づく)の範囲内の塩濃度である。
溶解液は、カオトロピック塩、界面活性剤、消泡剤、核酸安定化剤、緩衝剤、アルカリ金属類縁体および水溶性有機溶媒の中から選ばれる化合物を少なくとも一種含む。
異なる複数の酵素の添加時期は、いつでもよく、例えば、上記のいずれかの溶液中に添加されていても良い。また、上記の溶液とは別に試料溶液調製のいずれかの時点で添加してもよい。
タンパク質分解酵素としては特に限定されず、例えばアルカリプロテアーゼなどを好ましく用いることができる。
核酸分解酵素としては、特に限定されず、例えばRNA分解酵素などを好ましく用いることができる。
RNA分解酵素としては、特に限定されず、酵素活性、安定性などの点から、例えばRNaseA,RNaseT1などを好ましく用いることができる。
DNA分解酵素としては、例えばATP依存性エキソヌクレアーゼ{商品名Plasmid-Safe(Epicenter Technologies, Madison, Wisconsin, USA)}、一本鎖特異的なエンドヌクレアーゼ等を好ましく用いることができる。これらの酵素は線状DNA(例えばゲノムDNA)を特異的に切断するが、スーパーコイル状のプラスミドDNAは切断されずに残す。
ムラミダーゼとしては特に限定されず、例えばリゾチームなどを好ましく用いることができる。
本発明においては、異なる複数の酵素を用いる。使用する酵素としては、核酸分解酵素が好ましく、より好ましくは、核酸分解酵素がRNA分解酵素である。異なる複数の酵素として、RNA分解酵素であるRNaseAとRNaseT1とを用いることが特に好ましい。
また、異なる複数の酵素は、別個にも、複数種以上の混合物としても用いることができる。
酵素の試料溶液中における濃度は、添加時の全容積1mlあたり好ましくは0.001IU〜10IU、より好ましくは0.01IU〜1IUで用いることができる。あるいは、作用濃度として0.05〜20mg/mlで用いることができる。
安定的に酵素の作用を維持するために、試料溶液に緩衝剤を加えることもできる。この場合は、例えばTrisHClを1〜200mmol/L含有させることができる。
さらにまた、タンパク質分解酵素の安定化剤を含んだ酵素を好ましく用いることができる。安定化剤としては、金属イオンを好ましく用いることができる。具体的には、マグネシウムイオンやカルシウムイオンが好ましく、例えば塩化マグネシウムや酢酸カルシュウムなどの形で添加することができる。タンパク質分解酵素の安定化剤を含ませることにより、核酸の回収に必要なタンパク質分解酵素の微量化が可能となり、核酸の回収に必要なコストを低減することができる。タンパク質分解酵素の溶液に緩衝液を含有させたり、多価アルコールを加えたりすることができる。例えば、緩衝液としてTrisHClを0.1〜200mmol/L含有させたり、多価アルコールとしてグリセロールを1〜70%含有させたりすることができる。これらは単独でも組み合わせて用いることができる。
本発明で用いる界面活性剤の具体例としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
本発明においてはアニオン系界面活性剤およびノニオン系界面活性剤を好ましく用いることができる。
アニオン系界面活性剤としては、硫酸エステル系界面活性剤、スルホン酸系界面活性剤、カルボン酸系界面活性剤、りん酸系界面活性剤である。好ましくは、アルキル硫酸エステル塩が好ましい。特にドデシル硫酸ナトリウムが好ましい。好ましくはアルカリ溶液に含有され細菌または細胞の溶解に作用させることができる。
これらの界面活性剤は、単独または複数組み合わせて用いてもよい。界面活性剤の前記
アルカリ溶液、中和液および溶解液における濃度は0.1〜30質量%であることが好ましい。
本発明で用いる緩衝剤の具体例としては、通常用いられるpH緩衝剤(buffer)を挙げることができる。好ましくは、生化学用のpH緩衝剤が挙げられる。このような緩衝剤としては、クエン酸塩、リン酸塩または酢酸塩から成る緩衝剤、Tris−HCl、TE(Tris−HCl/EDTA)、TBE(Tris−Borate/EDTA)、TAE(Tris−Acetate/EDTA)、グッド緩衝剤が挙げられる。グッド緩衝剤としては、
MES(2-Morpholinoethanesulfonic acid)、Bis−Tris(Bis(2-hydoroxyethyl)iminotris(hydroxymethyl)methane)、HEPES(2-[4-(2-Hydroxyethyl)-1-piperazinyl]ethanesulfonic asid)、PIPES(Piperaxine-1,4-bis(2-ethanesulfonic acid))、ACES(N-(2-Acetamino)-2-aminoethanesulfonic acid)、CAPS(N-Cyclohexyl-3-aminopropanesulfonic acid)、TES(N-Tris(hydroxymethyl)methyl-2-aminoethanesulfonic acid) が挙げられる。
これらの緩衝剤は、前記分散液、アルカリ溶液、中和液、溶解液、洗浄液、回収液中の濃度は1〜300mmol/Lであることが好ましい。
本発明で用いる核酸安定化剤の具体例としては、ヌクレアーゼの活性を不活性化させる作用を有するものが挙げられる。試料によっては、核酸を分解するヌクレアーゼ等が含まれていることがあり、核酸をホモジナイズするとこのヌクレアーゼが核酸に作用し、収量が激減することがある。前記核酸安定化剤は、試料中の核酸を安定に存在させることができ、好ましい。
核酸安定化剤は、前処理液における濃度は0.1〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは、0.3〜15質量%で、用いることができる。
本発明で用いるアルカリ金属類縁体の具体例としては、塩化物または酢化物が好ましく、さらに好ましくはナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、であることが望ましい。アルカリ金属類縁体は、前記分散液、アルカリ溶液、中和液、溶解液および洗浄液、回収液における濃度は0.01mol/L以上、より好ましくは0.01〜5mol/Lで、用いることができる。
本発明で用いる消泡剤の具体例としては、シリコン系消泡剤(例えば、シリコーンオイル、ジメチルポリシロキサン、シリコーンエマルジョン、変性ポリシロキサン、シリコーンコンパウンドなど)、アルコール系消泡剤(例えば、アセチレングリコール、ヘプタノール、エチルエキサノール、高級アルコール、ポリオキシアルキレングリコールなど)、エーテル系消泡剤(例えば、ヘプチルセロソルブ、ノニルセロソルブ−3−ヘプチルコルビトールなど)、油脂系消泡剤(例えば、動植物油など)、脂肪酸系消泡剤(例えば、ステアリン酸、オレイン酸、パルミチン酸など)、金属セッケン系消泡剤(例えば、ステアリン酸アルミ、ステアリン酸カルシウムなど)、脂肪酸エステル系消泡剤(例えば、天然ワックス、トリブチルホスフェートなど)、リン燐酸エステル系消泡剤(例えば、オクチルリン酸ナトリウムなど)、アミン系消泡剤(例えば、ジアミルアミンなど)、アミド系消泡剤(例えば、ステアリン酸アミドなど)、その他の消泡剤(例えば、硫酸第二鉄、ボーキサイトなど)などが挙げられる。特に好ましくは、消泡剤として、シリコン系消泡剤とアルコール系消泡剤の2つの成分を組み合わせて使用することができる。また、アルコール系消泡剤としては、アセチレングリコール系界面活性剤を使用することも好ましい。前記アルカリ溶液、中和液および溶解液、並びに試料溶液中の消泡剤濃度は、0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.01〜5質量%である。
本発明で用いるカオトロピック塩の具体例としては、グアニジン塩、イソチアン酸ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム等を使用することができる。中でもグアニジン塩が好ましい。グアニジン塩としては、塩酸グアニジン、イソチオシアン酸グアニジン、チオシアン酸グアニジンが挙げられ、中でも塩酸グアニジンが好ましい。これらの塩は単独でも、複数組み合わせて用いてもよい。前記中和液または溶解液や試料溶液中のカオトロピック塩濃度は、0.5mol/L以上であることが好ましく、より好ましくは0.5mol/L〜4mol/L、さらに好ましくは、1mol/L〜3mol/Lである。
カオトロピック塩の代わりに、カオトロピック物質として尿素を用いることもできる。
前述したように、試料溶液は、前処理液を添加した後に、さらに水溶性有機溶媒を添加して調製される。該水溶性有機溶媒を添加する工程を含んで調製された試料溶液を、固相と接触させる。以上の操作により、試料溶液中の核酸が固相に吸着される。本明細書中前記した操作で可溶化された核酸を、固相に吸着させるためには、可溶化した核酸混合液に水溶性有機溶媒を混合することが必要であり、得られた試料溶液中に塩が存在することが必要である。
固相は、イオン結合が実質的に関与しない相互作用で核酸が吸着する固相が好ましい。これは、固相側の使用条件で「イオン化」していないことを意味し、環境の極性を変化させることで、核酸と固相が引き合うようになると推定される。これにより分離性能に優れ、しかも洗浄効率よく、核酸を単離精製することができる。これは、親水基を有する固相であり、環境の極性を変化させることで、核酸と固相の親水基同士が引きあるようになると推定される。
また、前記、ニトロセルロース、ニトロヘミセルロース、ニトロデキストラン、ニトロアガロース、ニトロデキストリン、ニトロアミロース、ニトロアミロペクチン、ニトログリコーゲン、ニトロプルラン、ニトロマンナン、ニトログルコマンナン、ニトロリケナン、ニトロイソリケナン、ニトロラミナラン、ニトロカラギーナン、ニトロキシラン、ニトロフルクタン、ニトロアルギン酸、ニトロヒアルロン酸、ニトロコンドロイチン、ニトロキチン、ニトロキトサンなどの鹸化物についてもさらに好ましく用いることができる。
ナンホスホン酸、ラミナランホスホン酸、カラギーナンホスホン酸、キシランホスホン酸、フルクタンホスホン酸、アルギン酸ホスホン酸、ヒアルロン酸ホスホン酸、コンドロイチンホスホン酸、キチンホスホン酸、キトサンホスホン酸などの鹸化物についてもさらに好ましく用いることができる。
リアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の鹸化物を使用することである。トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比(質量比)は、99:1〜1:99であることが好ましい。更に好ましくは、トリアセチルセルロースとジアセチルセルロース混合物の混合比は、90:10〜50:50であることである。この場合、鹸化処理の程度(鹸化率)で固相表面の水酸基の量(密度)をコントロールすることができる。核酸の分離効率をあげるためには、水酸基の量(密度)が多い方が好ましい。鹸化処理により得られる固相の鹸化率(表面鹸化率)が5%以上100%以下であることが好ましく、10%以上100%以下であることが更に好ましい。また、水酸基を有する固相の表面積を大きくするために、アセチルセルロースの固相を鹸化処理することが好ましい。
又、鹸化率を変えるには、水酸化ナトリウムの濃度を変えて鹸化処理を行えば良い。鹸化率は、NMRにより、容易に測定することができる(例えば、カルボニル基のピーク減少の程度で定めることができる)。
有機材料の固相にグラフトポリマー鎖を結合する方法としては、固相とグラフトポリマー鎖とを化学結合させる方法と、固相を起点として重合可能な二重結合を有する化合物を重合させグラフトポリマー鎖とする2つの方法がある。
ポリマーの末端、または側鎖に反応性官能基を有するポリマーとして特に有用な化合物は、トリアルコキシシリル基をポリマー末端に有するポリマー、アミノ基をポリマー末端に有するポリマー、カルボキシル基をポリマー末端に有するポリマー、エポキシ基をポリマー末端に有するポリマー、イソシアネート基をポリマー末端に有するポリマーが挙げられる。この時に使用されるポリマーとしては、核酸の吸着に関与する親水基を有するものであれば特に限定はないが、具体的には、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレンなどを挙げることができる。
基材に結合しているグラフトポリマー鎖を形成するのに有用な化合物は、重合可能な二重結合を有しており、核酸の吸着に関与する親水基を有するという、2つの特性を兼ね備えていることが必要である。これらの化合物としては、分子内に二重結合を有していれば
親水基を有するポリマー、オリゴマー、モノマーのいずれの化合物をも用いることができる。特に有用な化合物は親水基を有するモノマーである。
特に有用な親水基を有するモノマーの具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリセロールモノメタクリレート等の水酸性基含有モノマーである。また、アクリル酸、メタアクリル酸等のカルボキシル基含有モノマー、もしくはそのアルカリ金属塩及びアミン塩も好ましく用いることができる。
固相と親水基を持つグラフトポリマー鎖とを化学結合させる場合は、グラフトポリマー鎖の末端の官能基と反応する官能基を無機材料に導入し、そこにグラフトポリマーを化学結合させる。また、分子内に二重結合を有している親水基を有するモノマーを使用し、固相を起点として、グラフトポリマー鎖を重合する場合は、二重結合を有する化合物を重合する際の起点となる官能基を無機材料に導入する。
マーが好ましい。ポリマーとしては、ポリヒドロキシエチルアクリル酸、ポリヒドロキシエチルメタアクリル酸及びそれらの塩、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及びそれらの塩、ポリオキシエチレン、アセチルセルロース、アセチル価の異なるアセチルセルロース混合物などを挙げることができる。
膜の物理的性質の例としては、平均孔径が挙げられる。また膜の化学的性質としては鹸化度が挙げられる。
平均孔径が表裏非対称性の多孔膜を本発明で使用する場合は、液の通過する方向に平均孔径が、大→小に変化するようにするのが好ましい。ここで、最大孔径と最小孔径の比が2以上である多孔膜を用いる事が好ましい。さらに好ましくは、最大孔径と最小孔径の比が5以上である。これにより、核酸が吸着するのに十分な表面積が得られるとともに、目詰まりし難い。
。さらに好ましくは、25℃で1kg/cm2の圧力で水を通過させたときの透水量が、膜1cm2あたり1分間で5〜1000mLである。
核酸を固相に吸着させた後。固相を洗浄することにより、核酸の回収量及び純度が向上し、必要な核酸を含む試料の量を微量とすることができる。また、洗浄や回収操作を自動化することによって、操作が簡便かつ迅速に行うことが可能になる。洗浄工程は、迅速化のためには1回の洗浄で済ませてもよく、また純度がより重要な場合には複数回洗浄を繰返すことが好ましい。
水溶性塩が洗浄液中に含まれる場合、その濃度は10mmol/L以上であることが好ましく、その上限は不純物の溶解性を損なわない範囲であれば特に問わないが、1mol/L以下であることが好ましく、0.1mol/L以下であることがより好ましい。よりさらに好ましくは、水溶性塩が塩化ナトリウムであり、とりわけ、塩化ナトリウムが20mmol/L以上含まれていることが好ましい。
次に、固相に吸着した核酸を脱着せしめうる溶液(回収液)に、前記洗浄後の固相を接触させる。この溶液には目的とする核酸が含まれているので、これを回収し、後に続く操作、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)による核酸の増幅に提供する。
本発明の方法は、プラスミドDNAを分離精製するときのみならず、ファージミドDNAを分離精製するときにも同様に好ましく適用することができる。
本発明では、(a) 固相、(b) 前記固相を収容する、少なくとも2個の開口を有する容器、及び(c) 前記容器の一の開口に結合された圧力差発生装置、を含む核酸分離精製ユニットを使用することが好ましい。以下、この核酸分離精製ユニットについて説明する。
(a) 試料(細菌または細胞)に分散液を加える工程、
(b) 上記(a)で得られた溶液にアルカリ溶液を加えて試料を溶解する工程、
(c) 上記(b)で得られた溶液に中和液を加えて目的とする核酸以外の不要物を沈殿せしめる工程、
(d) 上記(c)で得られた沈殿上清に溶解液を加える工程、
(e) 上記(d)で得られた溶液に水溶性有機溶媒を添加し試料溶液(固相に核酸を吸着させる溶液)を調製する工程
(f) 上記試料溶液に核酸分離精製ユニットの一の開口を該試料溶液中に挿入する工程、
(g) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして固相に核酸を吸着させる溶液を吸引し、固相に接触させる工程、
(h) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された固相に核酸を吸着させる溶液を容器外に排出する工程、
(i) 核酸分離精製ユニットの一の開口を洗浄液に挿入する工程、
(j) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして洗浄液を吸引し、固相に接触させる工程、
(k) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、吸引された洗浄液を容器外に排出する工程、
(l) 核酸分離精製ユニットの一の開口を、固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液(回収液)中に挿入する工程、
(m) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を減圧状態にして、固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を吸引し、固相に接触させる工程、及び
(n) 核酸分離精製ユニットの他の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液を容器外に排出する工程。
(g)、(j)、(m)の際に、固相のほぼ全体と接触する量の溶液を吸引することが好ましいが、圧力差発生装置内に吸引すると装置を汚染するので、適量に調整する。適量の溶液を吸引後、圧力差発生装置を用いてユニットの容器内を加圧して、吸引した液を排
出する。この操作までに間隔を開ける必要はなく、吸引後直ちに排出してもよい。
(a) 試料(細菌または細胞)に分散液を加える工程、
(b) 上記(a)で得られた溶液にアルカリ溶液を加えて試料を溶解する工程、
(c) 上記(b)で得られた溶液に中和液を加えて目的とする核酸以外の不要物を沈殿せしめる工程、
(d) 上記(c)で得られた沈殿上清に溶解液を加える工程、
(e) 上記(d)で得られた溶液に水溶性有機溶媒を添加し試料溶液(固相に核酸を吸着させる溶液)を調製する工程
(f) 上記試料溶液を核酸分離精製ユニットの一の開口に注入する工程、
(g) 核酸分離精製ユニットの前記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した固相に核酸を吸着させる溶液を他の開口より排出することによって、固相に接触させることで、核酸を固相に吸着させる工程、
(h) 核酸分離精製ユニットの前記一の開口に洗浄液を注入する工程、
(i) 核酸分離精製ユニットの前記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した洗浄液を前記他の開口より排出することによって、固相に接触させることで、固相を洗浄する工程、
(j) 核酸分離精製ユニットの前記一の開口に固相に吸着された核酸を脱着せしめうる液(回収液)を注入する工程、
(k) 核酸分離精製ユニットの前記一の開口に結合された圧力差発生装置を用いて容器内を加圧状態にし、注入した核酸を脱着せしめうる液を前記他の開口より排出させることによって、固相に吸着された核酸を脱着させ、容器外に排出する工程。
試料と各液を混合する方法は、特に限定されない。例えば、混合する際、攪拌装置により30から3000rpmで1秒から3分間混合することが好ましい。これにより、分離精製される核酸収量を増加させることができる。または、転倒混和を5から30回行うことで混合することも好ましい。また、ピペッティング操作を、10から50回行うことによっても混合することができる。
加圧エア供給機構と、前記核酸分離精製カートリッジに洗浄液および回収液を分注する分注機構とを備えてなることを特徴とするものである。
内径7mm、多孔膜の固相を収容する部分を持つ核酸分離精製カートリッジをハイインパクトポリスチレンで作成した。
下記に示す処方の、プラスミドDNA分離精製用の分散液、アルカリ溶液、中和液、溶解液、洗浄液および回収液を調製した。
1mol/L トリス塩酸塩 (和光純薬製) 26g
0.5mol/L EDTA (和光純薬製) 11g
蒸留水 465g
1mol/L NaOH(和光純薬製) 104g
10質量% SDS (和光純薬製) 50g
蒸留水 350g
酢酸カリウム(和光純薬製) 147g
酢酸 (和光純薬製) 68g
蒸留水 356g
Tween−20(ICN薬製) 39g
BiS−Tris (和光純薬製) 3.4g
エタノ−ル(99.5%)(和光純薬製) 344ml
蒸留水 104ml
1mol/L トリス塩酸 (和光純薬製) 5.6g
エタノ−ル(99.5%)(和光純薬製) 400ml
蒸留水 94g
1mol/L トリス塩酸 (和光純薬製) 5.2g
蒸留水 494g
(i)大腸菌pBluescript IISK(−)/DH5αの調製
プラスミドpBluescript IISK(−)(ストラタジーン製)で形質転換された大腸菌DH5α形質転換体(pBs II(−)/DH5αと表記)を100μg/mlのアンピシリンを含むLB培地[10g/L トリプトン、5g/L酵母エキス、5g/L塩化ナトリウム(pH7.5)]100mlに植菌し、培養温度37℃、振とう速度220min‐1で15時間培養した。培養後、培養液を1.0mlずつヌクレアーゼフリーかつパイロジェンフリーの1.5mLマイクロチューブ(プラチナチューブ BM機
器製)に分注し、高速微量冷却遠心分離機(MX−300:トミー精工製)にて6000×g、15分間遠心分離し、上清を除去することにより得られた菌体を抽出材料とした。
上記(i)にて調製した菌体に前記(3)で調製した分散液100μLにRNaseA
10mg/ml(和光純薬製)溶液3μL、RNaseT1 1mg/ml(シグマ製)溶液1μLをそれぞれ添加して室温で15秒間ボルテックスすることにより攪拌して確実に菌体を分散させた。続いて、前記(3)で調製したアルカリ溶液100μLを加えた後転倒混和を5回行い、菌体を溶菌させた。引き続いて前記(3)で調製した中和液140μLを加えた後転倒混和を5回行い、試料溶液を中和した。沈殿残渣を高速微量冷却遠心分離機(MX−300:トミー精工製)にて18000×g、10分間遠心分離し、上清を330μl回収した。新しいヌクレアーゼフリーかつパイロジェンフリーの1.5mLマイクロチューブ(プラチナチューブ BM機器製)に前記(3)で調製した溶解液320μLをあらかじめ添加しておき、その容器に前記上清を添加後、30秒間ボルテックスにより攪拌し、試料溶液とした。
続いてこの試料溶液をそれぞれ前記(2)で作成した多孔膜の固相を有する核酸分離精製カートリッジの一の開口に注入し、続いて前記一の開口に圧力差発生装置(チュウビングポンプ)を結合し、核酸分離精製カートリッジト内を加圧状態(80kpa)にし、注入した溶液を多孔膜の固相に通過させることで、多孔膜の固相に接触させ、核酸分離精製カートリッジの他の開口より排出した。続いて、前記核酸分離精製カートリッジの前記一の開口に、上記(3)で調製した洗浄液を注入し、前記一の開口にチュウビングポンプを結合し、核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した洗浄液を、多孔膜の固相に通過させ、他の開口より排出した。続いて、前記核酸分離精製カートリッジの前記一の開口に上記(3)で調製した回収液を注入し、核酸分離精製カートリッジの前記一の開口にチュウビングポンプを結合して核酸分離精製カートリッジ内を加圧状態(80kpa)にし、注入した回収液を、多孔膜の固相に通過させ、他の開口より排出し、この液を回収した。この核酸分離精製操作(核酸を含む試料溶液を前記のカートリッジに注入してから回収するまで)に要した時間は6分であった。
・上記(i)にて調製した菌体をQIAGEN QIAprep miniを用い、該キットのプロトコルに従って、分離精製操作を行い、核酸を含む回収溶液を得た。
・上記(ii)において、RNaseA(和光純薬製)のみを分散液に添加して、分離精製操作を行い、核酸を含む回収溶液を得た。
・上記(ii)において、RNaseT1(シグマ製)のみを分散液に添加して、分離精製操作を行い、核酸を含む回収溶液を得た。
上記の実施例で回収したそれぞれの回収溶液について、DNAの電気泳動の結果を図1に示す。このときの電気泳動の条件は以下のとおりである。
1%agarose/1xTAE buffer, EtBr染色 35分泳動
Sample2μL+Loading buffer1μL→3μL全量アプライ
Q:QIAGEN QIAprep miniにて抽出
1:RNaseA(和光純薬製)のみを分散液に添加
2:RNaseT1(シグマ製)のみを分散液に添加
3:RNaseA(和光純薬製)+RNaseT1(シグマ製)を分散液に添加
Q:QIAGEN QIAprep miniにて抽出
1:RNaseA(和光純薬製)のみを分散液に添加
2:RNaseT1(シグマ製)のみを分散液に添加
3:RNaseA(和光純薬製)+RNaseT1(シグマ製)を分散液に添加
Claims (15)
- (1)核酸を含む試料溶液を固相に接触させて、該固相に核酸を吸着させる工程、
(2)洗浄液を該固相に接触させて、核酸が吸着した状態で該固相を洗浄する工程、及び(3)回収液を該固相に接触させて、該固相から核酸を脱着させる工程
を含有する核酸分離精製方法において、
上記試料溶液を、異なる複数の酵素を添加する工程を含んで調製することを特徴とする核酸の分離精製方法。 - 酵素が、核酸分解酵素であることを特徴とする請求項1に記載の核酸の分離精製方法。
- 核酸分解酵素が、RNA分解酵素であることを特徴とする請求項1または2に記載の核酸の分離精製方法。
- RNA分解酵素が、RNaseT1およびRNaseAであることを特徴とする請求項3に記載の核酸の分離精製方法。
- 試料溶液が、核酸を含む試料に、カオトロピック塩、界面活性剤、消泡剤、核酸安定化剤、緩衝剤、酸およびアルカリ剤から選ばれる少なくとも1つを含む前処理液を添加し、さらに水溶性有機溶媒を添加して調製されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
- 固相が膜形状であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
- 水溶性有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールから選ばれる少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
- 固相が、シリカもしくはその誘導体、珪藻土、又はアルミナを含有することを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
- 固相が、有機高分子を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の核酸の分離精製方法。
- 固相が、テフロン(登録商標)、ポリエステル、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアクリレート共重合体、ポリウレタン、ポリベンズイミダゾール、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニルおよびポリ弗化ビニリデンから選ばれる少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の核酸の分離精製方法。
- 固相が、正もしくは負の荷電をもったナイロンを含むことを特徴とする請求項9に記載の核酸の分離精製方法。
- 有機高分子が、多糖構造を有することを特徴とする請求項9に記載の核酸の分離精製方法。
- 有機高分子が、セルロース、セルロース混合エステル、硝酸セルロース、酢酸セルロースおよびニトロセルロースから選ばれる少なくともいずれか1つを含むことを特徴とする請求項9に記載の核酸の分離精製方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の核酸の分離精製方法における工程を自動で行う装置。
- (i)核酸分離精製カ−トリッジと、(ii)複数の酵素と、(iii)カオトロピック塩、界面活性剤、消泡剤、核酸安定化剤、緩衝剤、酸およびアルカリ剤の少なくともいずれかを含む前処理液並びに水溶性有機溶媒と、(iv)洗浄液と、(v)回収液の試薬とを含む請求項1〜13のいずれかに記載の核酸の分離精製方法を行うためのキット。
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