JP2006232883A - 親水性膜、平版印刷材料、及び平版印刷材料を用いた平版印刷版の作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 (A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物を含有する組成物からなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて得られる親水性膜であり、該組成物中には、さらに(B)架橋剤を含有することが好ましい。この親水性膜は平版印刷版の画像記録層として有用である。
【選択図】 なし
Description
即ち、本発明の親水性膜は、(A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物〔以下、適宜、(A)特定親水性化合物と称する〕を含有する組成物からなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて得られることを特徴とする。
このような親水性膜を形成するための組成物には、前記(A)特定の環構造を有する親水性化合物に加え、さらに(B)架橋剤を含有することが、親水性膜の強度、耐久性向上の観点から好ましい。
即ち、本発明の請求項3に記載のように、前記親水性膜中に、エネルギー線により、親水性から疎水性に変化する材料を含有させる態様をとることで、エネルギー照射領域のみを疎水性領域とすることができ、任意の領域に疎水性領域を形成しうる親水性膜を得ることができる。従って、画像様に親/疎水性領域を形成することで平版印刷版を得ることも可能となる。
本発明の請求項5に係る平版印刷版の作製方法は、その一例を示すものであり、支持体上に、前記本発明の親水性膜を形成してなる平版印刷材料に、インクジェット記録方法により疎水性材料を適用してインク受容性領域を形成することを特徴とする。
インクジェット記録方式の一つとして、放射線の照射により硬化可能なインクジェット記録用インクを用いた記録方式がある。例えば、紫外線硬化型インクジェット方式は、比較的低臭気であり、速乾性で、インク吸収性の低い親水性膜への記録ができる点で、近年注目されつつある。
このようなインクジェット記録用インクを本発明の高親水性膜を用いた平版印刷材料に画像様に適用し、硬化させて画像部を形成することで、UV硬化インクの疎水性と、親水性膜の高親水性により、優れた印刷画像を形成しうる平版印刷版の作製を容易に行うことが可能となる。
該親水性膜は表面親水性に優れるため、支持体上に親水性膜を形成することで、優れた平版印刷材料となる。
また、該平版印刷材料を用いることで、非画像部の親水性及びその耐久性に優れた平版印刷版の作製方法を提供することができる。
このような(A)特定親水性化合物の主たる構造をなす5員環、6員環は炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子から任意に選ばれる原子により形成することが可能であり、また、複数の5員環、6員環同士は、各々炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子或いは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、水素原子を組み合わせた連結基により結合される。
さらに、前記糖類は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、ヘテロ環基、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、エチレンオキシ基、スルホン酸基、リン酸基、ウレタン基、ウレア基、チオール基、アセタール基などの置換基、或いはこれらを組み合わせた置換基などを有するものであってもよい。
また、セルロース誘導体の如く、親水性基を有する環構造が多数連結した高分子化合物も、本発明の(A)特定親水性化合物として用いることができる。
また、アミノ基は酸で中和されたアンモニウム基であっても構わない。
ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース又はその塩、メチルセルロース、カラゲーニン、マルトヘプタノース、マルトヘキサノース、ニストース、ラフィノース、パノース、キチン、キトサン、ペクチン酸、ペントサン、ペントース、セルローストリアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロース フタレート、デキストリン、硝酸セルロース、酢酸セルロース、セルロースカーバメート、シアノエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンとの共重合体、コンドロイチン6−硫酸六糖、ヘパリン、デキストラン硫酸、カロチン硫酸、マルトデキストリン硫酸塩、ヘミセルロース硫酸塩、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム塩、N−ジカルボキシエチルアミノエチルセルロース、ジエチルアミノエチルセルロース エチルスルホネート、N−(O−カルボキシフェニル)アミノデオキシセルロース、s−(O−カルボキシフェニル)メルカプトデオキシセルロース、ヒドラジノデオキシセルロース、アミロース、メチルアミロース、デンプン、カルボキシメチルデンプン、リン酸デンプン、酢酸デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、アクリル酸グラフトデンプン、プルラン、カードラン、キサンタンガム、ジュランガム、グアーガム、アラビアガム、カラギーナン、ヘパラン硫酸などが挙げられる。
このような組成物による被膜は、含有する(A)特定親水性化合物に起因して、親水性基同士が相互作用すること、或いは、親水性基同士が共有結合を形成すること、などにより硬化して本発明の親水性膜が形成される。
本発明においては、親水性膜形成用の組成物中に、前記(A)特定親水性化合物に加えて、(B)架橋剤を含有することが、形成される親水性膜の強度、耐久性の観点から好ましい。
本発明に適用可能な(B)架橋剤としては、公知の熱により架橋を形成する架橋剤を用いることができる。一般的な熱架橋剤としては、「架橋剤ハンドブック」山下晋三、金子東助著、大成社刊(1981)に記載されているものがある。本発明に用いられる架橋剤の官能基数は2個以上で、且つ、親水性ポリマーと有効に架橋可能ならば特に制限はない。但し、アルデヒドケトンは、官能基数が少なくとも1個あれば、本発明に係る架橋剤として使用することができる。以上具体的な熱架橋剤としては、1,2−エタンジカルボン酸、アジピン酸といったα,ω−アルカン若しくはアルケンジカルボン酸、1,2,3−プロパントリカルボン酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、トリメリット酸、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸、1,2−エタンジアミン、ジエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、ポリエチレンイミン、等のポリアミン化合物、エチレンまたはプロピレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレンチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレンまたはポリプロピレングリコールグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル等のポリエポキシ化合物、
本発明においては、前記親水性膜形成用組成物の塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
界面活性剤の含有量は、前記組成物の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
本発明の親水性膜は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は、溶解して塗布液を調製し、適切な支持体上に塗布してなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、前記各成分を均一に溶解、分散しうるものを適宜選択して用いればよく、例えば、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の親水性膜は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
本発明の親水性膜は、塗布後、乾燥することにより硬化させることもできるが、塗布、乾燥後に、さらに光又は熱により硬化させることも可能である。即ち、塗布により形成された被膜を硬化させるために加熱及び/又は光照射を行ってもよく、塗布後の加熱乾燥及び/又は光照射により、架橋反応がさらに進行し、親水性膜の被膜強度が向上する。
本発明の親水性膜の形成に係る組成物を熱で硬化、製膜させる場合の温度条件には特に制限はないが、好ましくは40℃〜300℃であり、架橋剤を含有する場合の架橋性と製造安定性の観点から60℃〜250℃の範囲がより好ましい。親水性膜は塗布後、そのまま上記温度条件で乾燥、硬化を行ってもよく、また、親水性膜の乾燥後に、別工程で加熱し、被膜を硬化させることも可能である。
また、光により硬化させる場合、光源は特に制限なく、紫外光、可視光、赤外線、白色光いずれの波長を用いても良い。
親水性膜形成用の組成物に架橋剤を含む場合、架橋構造の形成は、熱、又は光等による共有結合の形成、熱又は光により発生する酸及び/又はラジカルによる共有結合の形成、或いは、酸と塩基によるイオン架橋形成のいずれであってもよい。ラジカルを大量に発生させ、硬化させることが可能であれば、大気中でも窒素、アルゴン雰囲気下いずれで硬化反応を実施しても構わない。
本発明においては、硬化性を向上させるために、硬化に用いる架橋反応に適する、公知の架橋反応の促進剤を必要に応じて用いることが可能である。特にラジカル重合反応を用いて被膜形成組成物の硬化を行う場合には、アゾ化合物、パーオキシ化合物、有機ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、遷移金属化合物など、熱又は光ラジカル発生剤を用いることができる。
本発明の親水性膜に画像形成機能を有する化合物、即ち、加熱或いは輻射線露光により疎水化領域を形成することのできる化合物を含有させることで、本発明の親水性膜は、加熱または輻射線の照射などのエネルギー付与により疎水性領域を形成しうる材料となりうる。このような化合物を用いることにより、例えば、露光により親水性膜中に疎水性領域が形成され、そのまま平版印刷版として使用することができる。
熱または光により親水性からを疎水性に変化する材料としては、化合物自体の物性が親水性から疎水性に変化する化合物、もしくはポリマー粒子等のように、有着などにより疎水性領域を形成する物質などを挙げることができる。
親水性から疎水性に変化する化合物としては特開2000−122272号(特願平10−229783)公報に記載の熱により脱炭酸を起こして親水性から疎水性に変化する官能基を有するポリマーを挙げることができ、具体的には、以下に示す高分子化合物が好ましく例示される。好ましい物性としては、このポリマー自身を塗布したときの被膜表面の空中水滴による接触角が、加熱前に20°以下であり、加熱後には65°以上に変化するものが特に好ましい。しかしながら、これらに限定されるものではない。
本発明に使用できるスチリル系化合物としては、特願2004−045114に記載の化合物などを挙げることができる。
マイクロカプセルを水媒体中に安定に分散するための分散剤として、水溶性ポリマーを使用することができる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール及びその変性物、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン/アクリル酸共重合体、酢酸ビニル/アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビヤゴム及びアルギン酸ナトリウムを挙げることができる。これらの水溶性ポリマーは、イソシアネート化合物との反応しないか、極めて反応し難いものが好ましく、たとえばゼラチンのように分子鎖中に反応性のアミノ基を有するものは予め反応性をなくしておくことが好ましい。
画像の書き込みは、像様に熱及び/又は光などによりエネルギーを付与することで、親水性から疎水性に変化する材料のエネルギー付与領域のみが疎水性に変化してインク受容性の画像部領域を形成することで行われるが、一般的には、熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
なお、ここで、親水性領域と疎水性領域との差異を明確にし、親水性領域の耐久性を向上させるため、後加熱処理などのエネルギー付与を行うことも好ましい態様である。後加熱処理としては、80〜200℃で、パネルヒーター、ウィスコンシンオーブンなどの非接触加熱手段により、15秒間〜10分間処理されることが好ましい。具体的には、例えば、パネルヒーターにて、100〜160℃で1〜8分間加熱処理する方法などが挙げられる。
かくして得られた本発明の平版印刷版原版は、画像露光後、何らの現像処理を経ることなく、そのままインクと湿し水とを供給して印刷することができ、非画像部を構成する親水性領域の親水性とその耐久性に優れることから、非画像部に汚れのない高品質の印刷物を多数枚得ることができる。
本発明の親水性膜を平版印刷材料として用いる場合、前記熱または光により親水性からを疎水性に変化する材料による疎水性領域の形成を高感度で行うため、さらに、赤外線吸収剤を併用することが好ましい。即ち、平版印刷材料を、760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを光源により画像形成して平版印刷版を作製する場合には、通常、赤外線吸収剤を用いることが必須である。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、疎水化領域を形成することのできる化合物の熱分解や、ポリマー粒子の熱融着、相変化によって、疎水化領域を形成する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属粒子を用いることができる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願平2001−6326、特願平2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
遷移金属酸化物には鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ビスマス、ルテニウム、バナジウムなどの酸化物が含まれる。また、必ずしも遷移金属に含めない分類法もあるが、亜鉛、水銀、カドミウム、銀、銅の酸化物も本発明に用いることができる。これらの中では、FeO,Fe2O3,Fe3O4,CoO,Cr2O3,MnO2,ZrO2,Bi2O3,CuO,CuO2,AgO,PbO,PbO2
、VOx(x=1〜5)がとくに好ましい金属酸化物の例として挙げられる。VOxには、黒色のVO、V2O3、VO2、や褐色のV2O5が挙げられる。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
本発明では、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、親水性膜形成用の組成物全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
本発明に係る親水性膜を平版印刷版の画像記録層として用いる場合には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
ニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
本発明の親水性膜形成用の組成物には、親水性膜の硬化皮膜強度向上及び親水性、保水性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、親水性膜形成用組成物の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
本発明の親水性膜を適切な支持体上に形成することで、平版印刷版材料とすることができる。また、この親水性膜に前記した如きエネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有することで、平版印刷版原版とすることもできる。
ここで用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。
支持体上に本発明の親水性膜を形成してなる平版印刷材料に疎水性領域を形成して平版印刷版を得る他の作製方法として、インクジェット記録方法を適用する平版印刷版の作製方法を挙げることができる。
即ち、本発明の親水性膜に前記したようなエネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有することなく、親水性膜に直接疎水性物質をインクジェット記録方法により適用して疎水性領域を形成し、親/疎水性領域を有する平版印刷版とする方法である。
以下に、本発明の平版印刷版の作製方法に好適に採用され得るインクジェット記録方法及びインクジェット記録装置について説明する。
このインク組成物の粘度変動は、そのまま液滴サイズ、液滴射出速度に対して大きな影響を与え、これにより画質劣化を引き起こすため、印字時のインク組成物温度はできるだけ一定に保つことが必要である。インク組成物温度の制御幅は設定温度±5℃とすることが好ましく、より好ましくは設定温度±2℃、更に好ましくは設定温度±1℃である。
インクジェット記録装置には、インク組成物温度の安定化手段を備えることが一つの特徴であり、一定温度にする部位はインクタンクからノズル射出面までの配管系、部材の全てが対象となる。
温度コントロールの方法としては、特に制限はないが、例えば、温度センサーを各配管部位に複数設け、インク組成物流量、環境温度に応じた加熱制御をすることが好ましい。
また、加熱するヘッドユニットは、装置本体かを外気からの温度の影響を受けないよう、熱的に遮断、若しくは断熱されていることが好ましい。加熱に要するプリンタ立ち上げ時間を短縮する為、或いは熱エネルギーのロスを低減する為に他部位との断熱を行うと共に、加熱ユニット全体の熱容量を小さくすることが好ましい。
更に、駆動を伴わない別光源によって硬化を完了させる。WO99/54415号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法やコリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へUV光を照射する方法が開示されている。本発明においては、これらの照射方法を用いることが可能である。
また本発明では、インク組成物を一定温度に加温するとともに、着弾から照射までの時間を0.01〜0.5秒とすることが望ましく、好ましくは0.01〜0.3秒、更に好ましくは0.01〜0.15秒後に放射線を照射することにある。このように着弾から照射までの時間を極短時間に制御することにより、着弾インクが硬化前に滲むことを防止することが可能となる。また、多孔質な被記録媒体に対しても光源の届かない深部までインク組成物が浸透する前に露光することができる為、未反応モノマーの残留が抑えられ、その結果として臭気を低減することができる。
本発明の平版印刷材料は優れた親水性表面を有するため、ここに紫外線硬化インク等により疎水性領域を形成してなる平版印刷版は、非画像部の親水性とその耐久性に優れ、非画像部に汚れのない高画質の印刷物を多数枚得ることができる。
<実施例1>
〔親水性膜の作製〕
(親水性膜形成用塗布液)
・カラギーナン 1.0g
・下記架橋剤(1) 0.1g
・蒸留水 50g
得られた親水性膜表面を水でぬらした不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で100回擦り、その前後の接触角(空中水滴接触角)を、協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定した。擦りを行った後、部材の表面を観察したが、擦り後にも表面の親水性膜が剥がれたり、目視で確認できる傷が付いたことはなく、実施例1の親水性膜は磨耗に対して充分な強度を有することがわかった。
また、接触角は擦り前が5.2°であり、擦り後5.5°であった。擦り後も十分な親水性を示し、本発明の親水性膜は耐摩耗性が良好であることが確認された。
〔平版印刷版原版の作成〕
(1)支持体の作成
<アルミニウム板>
Al:99.5質量%以上、Fe:0.30質量%、Si:0.10質量%、Ti:0.02質量%、Cu:0.013質量%を含有し、残部は不可避不純物のJIS A1050アルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理としては、溶湯中の水素等の不要なガスを除去するために脱ガス処理し、更に、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊の表面を10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。ついで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中、500℃で60秒間、中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、厚さ0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均粗さRaを0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。得られたアルミニウム板を、以下に示す表面処理に供した。
ついで、画像記録層と支持体との密着性を良好にし、かつ、非画像部に保水性を与えるため、粗面化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、硝酸1質量%および硝酸アルミニウム0.5質量%を含有する水溶液(液温45℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度20A/dm2、duty比1:1の交番波形で、アルミニウム板が陽極時の電気量が240C/dm2となるように電解して、電気化学的粗面化処理を施した。
更に、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で30秒間、エッチング処理を施し、その後、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和およびスマット除去処理を施した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、1.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で15秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2であった。その後、水洗して、支持体を得た。得られた支持体の中心線平均粗さRaは0.25μmであった。
下記組成の画像記録層塗布液をバー塗布した後、140℃、2分でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.9g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版用原版を作成した。
・親水性ポリマー(表1に記載の化合物) 2.0g
・水 100g
・マイクロカプセル〔表1に記載(1)又は(2)) (固形分換算) 1.8g
・界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルナトリウム塩) 0.01g
・架橋剤(2) 0.35g
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、下記の赤外線吸収剤(1)0.35g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成製ODB)1g、下記の重合開始剤(1)0.75g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてカルボン酸変性ポリビニルアルコール(KL−506,クラレ(株)製)の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、40℃で3時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液(1)の固形分濃度を、20質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.4μmであった。
〔イソシアネート基と反応する活性水素基を片末端に1つ以上有する親水性ポリマー(1)の合成例〕
アクリルアミド:50g、2−メルカプトエチルアミン塩酸塩:5gをエタノール:100gに溶解後、窒素雰囲気下60℃に昇温し、熱重合開始剤2,2−アゾビスイソブチルニトリル(AIBN):0.5gを加えて6時間反応した。反応後白色沈殿を濾過しメタノールで十分洗浄して、末端アミン塩酸塩の親水性ポリマー(1)を48g得た。(分子量2.2×103)。
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)4.5g、下記の赤外線吸収剤(1)1.5g、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン(山本化成(株)製ODB)0.5g、下記の重合開始剤(1)0.75g、およびパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分として合成例1で作製した親水性ポリマー(1)1.5gと1規定水酸化ナトリウム水溶液0.7gに水33gを加え調製した。油相成分および水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、60℃で2時間攪拌した。このようにして得られたマイクロカプセル液の固形分濃度を15質量%になるように蒸留水を用いて希釈した。平均粒径は0.3μmのマイクロカプセル(2)を作成した。
実施例2で用いた親水性膜形成用塗布液における親水性ポリマーに代えて、ポリアクリル酸を用いた以外は、実施例1と同様にして平版印刷版用原版を作製した。
実施例2〜5と同様の支持体に、下記組成の画像記録層塗布液をバー塗布した後、100℃、10分でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.9g/m2の画像記録層を形成して平版印刷版用原版を作成した。
(画像記録層塗布液)
・親水性ポリマー(カルボシキメチルデンプン) 1.9g
・水 100g
・マイクロカプセル(2) (固形分換算) 1.6g
・界面活性剤(スルホこはく酸ジエチルヘキシルナトリウム塩) 0.01g
・架橋剤(グリオキザール:HOCCOH) 0.30g
得られた実施例2〜6、比較例1の平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザ搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数210rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水を供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を500枚行った。その後、一旦、版面上にインキを付着させ、湿し水を供給してインキが版面上からなくなり、印刷物の非画像部に地汚れが発生しなくなる枚数を計測した。その後、地汚れが発生するまで、印刷を行った。
〔インクジェット記録方法を用いた平版印刷版の作製及び印刷〕
実施例2〜6で用いたのと同様のアルミ基板を支持体とし、その上に下記親水性膜塗布液組成物を乾燥後の塗布量が0.7g/m2となるように塗布し、130℃、4分加熱乾燥させて支持体上に親水性膜を形成した。
(親水性膜形成用塗布液)
・カラギーナン 1.0g
・下記架橋剤(2) 0.1g
・蒸留水 50g
得られた平版印刷版をハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水を供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を500枚行った。その後、一旦、版面上にインキを付着させ、湿し水を供給してインキが版面上からなくなり、印刷物の非画像部に地汚れが発生しなくなる枚数を計測した。
<比較例2>
実施例7で用いた親水性膜形成用塗布液のカラギーナンをポリアクリル酸に変更した以外は実施例7と同様して平版印刷版を作製し、同様の印刷を行った。
実施例2〜7、比較例1、2の平版印刷版の前記印刷において、以下のようにして地汚れ、インク払いを評価した。結果を下記表2に記示す。
(1)地汚れ
刷りだし500枚の時点で、印刷物上の非画像部におけるインキ付着量を目視評価した。インキが全く付着せず地汚れしていない状態を○、インキが少しでも付着している状態を×とした。
(2)インキ払い
上に記載した方法で印刷を行い、インキ払い枚数を計測した。親水性に優れる親水層ほど、インキ払い枚数が少ない。
Claims (5)
- (A)分子内に、5員環構造及び6員環構造より選択される環構造を2個以上有し、かつ、該環構造が親水性基を有する化合物を含有する組成物からなる被膜を、熱及び/又は光により硬化させて得られる親水性膜。
- 前記組成物が、さらに(B)架橋剤を含有する請求項1に記載の親水性膜。
- 前記親水性膜中に、エネルギー付与により親水性から疎水性に変化する材料を含有する請求項1又は請求項2に記載の親水性膜。
- 支持体上に、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の親水性膜を有する平版印刷材料。
- 支持体上に、請求項1又は請求項2に記載の親水性膜を有する平版印刷材料に、インクジェット記録方法により疎水性材料を適用してインク受容性領域を形成することを特徴とする平版印刷版の作製方法。
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