JP2006150630A - 被膜形成性組成物、それを用いた硬化膜、及び平版印刷版原版 - Google Patents

被膜形成性組成物、それを用いた硬化膜、及び平版印刷版原版 Download PDF

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Abstract

【課題】 熱又は酸により任意の領域を高親水性領域とすることができ、且つ、高強度な膜を形成しうる被膜形成性組成物、該組成物により形成される硬化膜、さらには、該硬化膜を記録層として用いた、非画像部の親水性及びその耐久性に優れた平版印刷版原版を提供する。
【解決手段】 (A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーと、(B)該(A)ポリマーの架橋性基と反応しうる架橋剤と、を含有し、好ましくは、さらに、(C)酸発生剤、(D)赤外線吸収剤などを含有する被膜形成性組成物である。この組成物からなる被膜を光又は熱により硬化させてなる硬化膜は平版印刷版原版の記録層として有用である。
【選択図】 なし

Description

本発明は被膜形成性組成物、該組成物からなる硬化膜、及び、該硬化膜を記録層として有する平版印刷版原版に関する。
平版印刷は、インキを受容する親油性領域と、インキを受容せず湿し水を受容する撥インク領域(親水性領域)を有する版材を利用する印刷方法であり、現在では広く感光性の平版印刷版原版(PS版)が用いられている。PS版は、アルミニウム板などの支持体の上に、感光層を設けたものが実用化され広く用いられている。このようなPS版は、画像露光および現像により非画像部の感光層を除去し、基板表面の親水性と画像部の感光層の親油性を利用して印刷が行われている。このような版材では、非画像部の汚れ防止のため、基板表面には高い親水性が要求される。
一方、近年進展が目覚ましいコンピュータ・トゥ・プレートシステム用刷版については、多数の研究がなされている。その中で、一層の工程合理化と廃液処理問題の解決を目指すものとして、露光後、現像処理することなしに、印刷機に装着して印刷できる現像不要の平版印刷版原版が研究され、種々の方法が提案されている。処理工程をなくす方法の一つに、露光済みの印刷用原版を印刷機のシリンダーに装着し、シリンダーを回転しながら湿し水とインキを供給することによって、印刷用原版の非画像部を除去する機上現像と呼ばれる方法がある。すなわち、印刷用原版を露光後、そのまま印刷機に装着し、通常の印刷過程の中で処理が完了する方式である。
このような機上現像に適した平版印刷版原版は、湿し水やインキ溶剤に可溶な感光層を有し、しかも、明室に置かれた印刷機上で現像されるのに適した明室取り扱い性を有することが必要とされる。現像工程を必要としない刷版として、基板上に架橋された親水層を設け、その中にマイクロカプセル化された熱溶融物質を含有した無処理刷版が記載されている(例えば、特許文献1参照)。この刷版ではレーザーの露光領域に発生した熱の作用によりマイクロカプセルが崩壊し、カプセル中の親油物質が溶け出し、親水層表面が疎水化される。この印刷版原版は、現像処理を必要としないが、基板上に設けられた親水層の親水性や耐久性が不充分であり、印刷するにつれて非画像部に徐々に汚れが生じてくる問題点があった。
親水性及びその耐久性を向上させる目的で、アクリルアミド―ヒドロキシエチルアクリレートの共重合ポリマーを、メチロールメラミン架橋剤を用いて硬化させてなる親水性層(例えば、特許文献2参照)、ゼラチン又はポリビニルアルコールを用いた親水性層(例えば、特許文献3参照)、及び、4級アンモニウム塩ポリマーからなる親水性層(例えば、特許文献4参照)などが提案されている。これらは、用いるポリマーの親水性や架橋構造などを改良し、ある程度の改良は達成されているものの、実用上、印刷版として用いるには親水性が不足し、印刷時の放置汚れやインキでの払い性の点で満足のいくものが未だ得られていないのが現状である。
国際出願WO94/23954号明細書 特開2002−370467公報 特開平11−95417号公報 特表2003−527978公報
本発明は、前記従来における諸問題を解決することを目的でなされたものであり、本発明の目的は、熱又は酸により任意の領域を高親水性領域とすることができ、且つ、高強度な膜を形成しうる被膜形成性組成物及び該組成物により形成される硬化膜を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記硬化膜を記録層として用いた、非画像部の親水性及びその耐久性に優れた平版印刷版原版を提供することにある。
本発明者は鋭意検討の結果、側鎖に熱又は酸により親水性となりうる官能基を、且つ、末端に架橋性基を有する特定の被膜形成性ポリマーを用いることで、上記問題点を解決しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明の被膜形成性組成物は、(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーと、(B)該(A)ポリマーの架橋性基と反応しうる架橋剤と、を含有することを特徴とする。
この組成物には、さらに(C)酸発生剤、(D)赤外線吸収剤を含有することが好ましい態様である。
また、前記(A)ポリマーが有する架橋性基がラジカル重合性基であることが硬化膜の強度向上の観点から好ましい。
本発明の請求項5に係る硬化膜は、前記本発明の膜形成性組成物からなる被膜を光又は熱により硬化させてなることを特徴とする。
本発明の請求項6に係る平版印刷版原版は、支持体上に、前記本発明の硬化膜を記録層として有することを特徴とする。
このような硬化膜を局所的に加熱するか、酸を付与することで、当該領域において側鎖官能基が疎水性から親水性に変化して、親水性領域を形成することができる。
本発明の被膜形成性組成物を用いて製膜した硬化膜が、優れた強度を発現する機構は明確ではないが、本発明の組成物を塗布、乾燥、必要に応じて露光することで、(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーの末端架橋性基と(B)該(A)架橋性基を有するポリマーの末端に存在する架橋性基と反応しうる架橋剤とが反応して、架橋密度の高い、高強度な3次元架橋膜が得られるものと考えられる。また、架橋の際、(A)ポリマーはその末端において架橋膜中に化学的に強固に固定化されるが、熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有する側鎖部位は、自由度が高いポリマー鎖構造を維持する。
形成された硬化膜の任意の領域を加熱するか、当該領域に酸を付与するか、或いは、当該領域に酸と熱とを付与することにより、ポリマーの側鎖構造中に存在する官能基が疎水性から親水性へ変化し、硬化膜中に親水性領域が形成される。親水性領域における膜中に存在する(A)ポリマーは、末端が硬化膜中に強固に固定化され、且つ、親水性の官能基が存在するポリマー鎖は高い運動性を有することから、水の呼び込み、排出等を効率よく行うことができ、高強度の被膜に高親水性領域が形成されるものと考えられる。
一方、加熱或いは酸の付与をなされない領域では側鎖に存在する官能基は疎水性を維持したままであり、このようにして硬化膜中の任意の領域を疎水性領域/親水性領域とすることが可能となる。
なお、加熱のみで疎水性から親水性への変化を生じさせることも可能であるが、好ましい態様においては、本発明の組成物中に(C)酸発生剤を含有しており、この場合、加熱及び/又は露光により当該領域のみで酸が発生し、架橋構造の形成に寄与するために、疎水性から親水性への変化を高感度で生じさせることができる。同様に、(D)赤外線吸収剤を含有すると、例えば、赤外線レーザ露光などにより露光領域で光熱変換により発熱し、疎水性から親水性への変化を高感度で生じさせることができるものと考えられる。
このような架橋性基を有するポリマーと架橋剤とを用いることで、基板上への表面グラフトポリマーを形成するのと同様な膜の形成が可能となり、ここで多官能の架橋剤を用いることで、架橋密度の高い高強度膜が得られる。
また、本発明の親水性の硬化膜においては、組成物の塗布量を変更することで所望の膜厚を容易に形成しうるとともに、硬化膜中への画像形成因子の導入も容易にできるなどの利点がある。また、このような重合性基を有するポリマーと架橋剤とを用いることで、支持体の選択の自由度が高まり、金属支持体のみならず、ポリエチレンテレフタレート等の有機樹脂の支持体表面にも密着性に優れ、且つ、親水性領域を形成しうる硬化膜を形成することができる。
本発明の被膜形成性組成物によれば、所望の領域を親水性領域となしうる高強度な膜を形成しうる。また、この組成物により形成される硬化膜は、高密度の架橋構造を有し、且つ、運動性の高い側鎖構造に親水性から疎水性に変化しうる官能基を有することから、高親水性領域を容易に形成しうる。
また、前記本発明の硬化膜を記録層として用いることにより、露光及び/又は加熱により、高親水性領域を高感度で形成することができ、非画像部の親水性及びその耐久性に優れた平版印刷版原版を提供することができる。
本発明の被膜形成性組成物を用いた硬化膜は、片末端が架橋構造を有する膜と強固に結合し、且つ、運動性の高いユニットに熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有することを特徴とする。このような硬化膜の形成に有用な被膜形成性組成物は、(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーと、(B)該(A)架橋性基を有するポリマーの末端に存在する架橋性基と反応しうる架橋剤と、を含有する。
<被膜形成性組成物>
以下、本発明の組成物を構成する各成分について、順次説明する。
〔(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマー〕
本発明に使用することができる(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマー(以下、適宜、(A)特定ポリマーと称する)は、側鎖に以下に詳述する熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を導入する工程を有する他は、公知の、末端に架橋性基を有するマクロモノマー(マクロマーとも称する)を使用して得ることができる。
(熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基)
本発明の(A)特定ポリマーに導入しうる疎水性から親水性に変化する官能基としては、フェニルエーテル基、アセタール基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、ホスホン酸エステル基、ホスフィン酸エステルなどが挙げられるが、疎水性−親水性への反応性、安定性の観点からカルボン酸エステル基、又はスルホン酸エステル基が好ましい。
疎水性から親水性に変化する官能基は、公知のものを用いてもよく、例えば、特開2000−127641公報、段落番号〔0011〕〜〔0032〕に記載のモノマー、或いは、特開2000−39708公報、段落番号〔0064〕〜〔0072〕に記載のモノマーなどを本発明にも適用することができる。
以下に、本発明に使用しうる熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を例示するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
Figure 2006150630
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本発明に用いうる(A)特定ポリマーは、これらのモノマーを原料とし、架橋性基を有する開始剤或いは連鎖移動剤を用いて重合することで得ることが出来る。
これらの熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有する側鎖構造の運動性が親水性に寄与することから、このような側鎖構造の分子量としては250〜10万の範囲で、特に好ましい範囲は400〜3万である。
(架橋性基)
本発明の(A)特定ポリマーの末端に存在する架橋性基としては、エチレン性二重結合、カルボン酸基又はその塩、水酸基、フェノール基、アルコキシシリル基、ハロゲン化アルキル基、アミノ基、スルホン酸又はその塩、アルコキシシリル基などが挙げられる。
このような架橋性基のなかでも、カルボン酸基、水酸基、ラジカル重合性基が好ましく、特に、ラジカル重合性基、具体的には、例えば、メタクリル基、アクリル基、スチリル基などが硬化性の観点から好ましい。
本発明に係る(A)特定ポリマーには、前記必須の官能基の他、必要に応じてスルホン酸、カルボン酸又はそれらの塩を有する親水性モノマー、アミド基、エチレンオキシ基、水酸基を有する親水性モノマーなどを共重合することにより、導入してもよい。
本発明に使用することができる側鎖に熱により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーは、例えば、平成1年9月20日にアイピーシー出版局発行の「マクロモノマーの化学と工業」(編集者 山下雄也)の第2章「マクロモノマーの合成」、「新高分子実験学2、高分子の合成、反応」(高分子学会編)等の文献に記載される各種のマクロモノマーの製造方法を基としても製造することができる。
以下に、本発明に使用しうる(A)特定ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。なお、下記構造単位に添えて記載された数字は、当該構造単位の重合数を表す。
Figure 2006150630
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本発明に係る(A)特定ポリマーの分子量は硬化性と親疎水性の極性変換の容易性という観点から、500〜10万程度であることが好ましく、さらに好ましくは1000〜5万の範囲である。
本発明に係る(A)特定ポリマーは、これらは単独で使用しても、2種以上併用してもよい。また、本発明の被膜形成性組成物中の含有量としては、硬化性と親疎水性の極性変換の容易性という観点から、不揮発性成分に対して、好ましくは5〜95質量%、更に好ましくは10〜80質量%、最も好ましくは15〜70質量%の範囲で含有される。
〔(B)前記(A)特定ポリマーの末端に存在する架橋性基と反応しうる架橋剤〕
本発明に用いることができる(B)前記(A)特定ポリマーの末端に存在する架橋性基と反応しうる架橋剤(以下、適宜、(B)特定架橋剤と称する)としては、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、メチロール化合物、アジリジン化合物、チオール化合物、カルボン酸化合物、アルデヒド化合物、アルコキシシリル化合物、ジアゾ化合物、イソシアネート化合物、酸無水物、フェノール化合物、アルコール化合物、ビニルエーテル化合物、多価金属イオンなどが挙げられ、望ましくは2官能以上有する化合物が好ましい。重合性化合物、エポキシ化合物、アミン化合物、イソシアネート化合物が反応性の面から特に好ましくい。
その他の架橋剤としては、大成社出版の山下晋三、金子東助編「架橋剤ハンドブック」に記載の架橋剤などが挙げられ、これらもまた本発明に使用することができる。
本発明に用いることができる特定架橋剤は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
なお、上記(A)特定ポリマーの末端の架橋性基と反応しうる(B)特定架橋剤は、同一分子内にエチレン性重合性基、エポキシ基、アミノ基、メチロール基、アジリジン基、チオール基、カルボン酸基、カルボニル基、アルコキシシリル基、ジアゾ基、イソシアネート基、酸無水物基、フェノール基、水酸基、ビニルエーテル基などの架橋性基を2種以上有してもよい。
これらの(B)特定架橋剤について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
形成される被膜強度の観点からは、架橋性基の密度、官能基数が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、本発明の組成物を後述する平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、画像部すなわち硬化膜の強度をより高くする目的で、3官能以上のものを選択することが好ましい。
また、(B)特定架橋剤として、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
硬化膜を露光し、親水性領域を形成する際に、得られる親水性領域の親水性向上の観点からは、(B)特定架橋剤には、エチレンオキシド、アルコール、酸基又はその塩などの親水性基を有することが好ましい。
また、本発明の組成物に含まれる他の成分(例えばバインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、(B)特定架橋剤の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、基板や後述のオーバーコート層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
(B)特定架橋剤は、本発明の組成物中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、(B)特定架橋剤は、単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、(B)特定架橋剤の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、硬化性、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、更に場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
(その他の成分)
本発明の被膜形成性組成物には、(B)特定架橋剤における(A)特定ポリマーの末端に存在する架橋性基と反応しうる架橋剤と(A)のポリマーとの架橋を促進する為に、必要に応じ、公知の酸、塩基、酸発生剤、塩基発生剤、又はラジカル発生剤を添加することが可能である。なかでも、(C)酸発生剤を含有することが好ましい。
〔(C)酸発生剤〕
本発明に用いられる酸発生剤としては、光、熱或いはその両方のエネルギーにより酸を発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明に使用できる酸発生剤としては、公知の酸発生剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光カチオン重合開始剤などを使用することができる。本発明に係る熱或いは光酸発生剤としては、公知のカチオン重合開始剤や酸発生剤、結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、酸を発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
酸を発生する化合物としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、スルホン酸エステル、スルホニウム、ヨードニウム、ジアゾニウム、ピリジニウム、アンモニウム等のオニウム塩化合物が挙げられる。
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt"Jurnal of Heterocyclic Chemistry"1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
上記オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979)1653−1660)、J.C.S. Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385記載の化合物、特開2000−80068記載の化合物、オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、
J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
光又は熱で酸を発生するものであれば際限なく使用することができるが、親水性層の汚れ性の観点から本発明に好適に使用できる開始剤としては、親水性基を有している開始剤が好ましい。親水性基として、水酸基、フェノール基、カルボン酸、スルホン酸、燐酸、スルホンアミド、エチレンオキシ又は上記の塩、又はアミン塩、オニウム塩構造等のイオン性基を有していることが好ましい。
本発明の組成物中に(C)酸発生剤を用いる場合、不揮発性成分に対して、0〜30質量%、好ましくは1〜20質量%、さらに好ましくは2〜10質量%の範囲で含有される。
<(D)赤外線吸収剤>
本発明の組成物からなる硬化膜を形成した後、露光により(A)特定ポリマーの側鎖に存在する官能基を疎水性から親水性に変化させ、親水性領域を形成する場合、露光光源として760〜1200nmの赤外線を発するレーザーを用いる場合には、前記硬化膜、具体的には、それを構成する本発明の組成物に、赤外線吸収剤を含有させることが記録感度向上の観点から好ましい。赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有している。この際発生した熱により、疎水化領域を形成することのできる化合物の熱分解や、ポリマー粒子の熱融着、或いは化合物の相変化を引き起こし、疎水化領域を形成する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収する物質であればよく、種々の公知の顔料、染料又は色素、及び金属粒子を用いることができる。
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明の赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願平2001−6326、特願平2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 2006150630
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素、フタロシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(i)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2006150630
一般式(i)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa-は後述するZ1-と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2006150630
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(i)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、記録層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(i)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
本発明の硬化膜を後述する平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、得られる平版印刷版の非画像部における汚れ発生抑制の観点から、(D)赤外線吸収剤に親水性基スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基又はそれらの塩、又はエチレンオキシ基などの親水性基を有する色素も好適に用いることができる。このような色素は、有機溶媒及び塩溶液アルカリ水に可溶な赤外線吸収色素である。
(D)赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能を有しており、この際、本発明の硬化膜中で、発生した熱により前記(C)熱により酸を発生する酸発生剤が分解して酸を発生し、その領域において、熱及び発生した酸により、官能基の疎水性から親水性への変化が効率よく進行し、高感度で高親水性領域を形成することができる。
本発明で用いる、前記のような官能基を有する有機溶媒及び水や水溶液に可溶な赤外線吸収色素は、塗布液状に調製した本発明の組成物を所望の支持体上に均一に塗布しうる観点から、有機溶剤に対し可溶性のものであり、且つ、水や水溶液に可溶な或いは分散可能な赤外線吸収色素であることが好ましい。
以下に、本発明に好適に用いうる有機溶媒及びアルカリ水に可溶な赤外線吸収色素の具体例を挙げるが、本発明はこれらに制限されるものではない。
Figure 2006150630
Figure 2006150630
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本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像記録層塗布液中での良好な安定性と画像記録層の良好な均一性が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
本発明において使用される金属粒子は、遷移金属の酸化物、周期律表の2〜12族に属する金属元素の硫化物、及び周期律表の3〜12族に属する金属の窒化物、周期律表の2〜12族に属する金属の単体または合金である。
遷移金属酸化物には、鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ニオブ、イットリウム、ジルコニウム、ビスマス、ルテニウム、バナジウムなどの酸化物が含まれる。また、必ずしも遷移金属に含めない分類法もあるが、亜鉛、水銀、カドミウム、銀、銅の酸化物も本発明に用いることができる。これらの中では、FeO、Fe23、Fe3 4、CoO、Cr2 3、MnO2、ZrO2、Bi2 3、CuO、CuO2、AgO、PbO、PbO2、VOx (x=1〜5)がとくに好ましい金属酸化物の例として挙げられる。VOx には、黒色のVO、V2 3、VO2、や褐色のV2 5が包含される。
好ましい無機金属酸化物としては、TiOx (x=1.0〜2.0)、SiOx (x=0.6〜2.0)、AlOx (x=1.0〜2.0)も挙げることができる。TiOx (x=1.0〜2.0)には、黒色のTiO、黒紫色のTi2 3 、結晶形と狭雑物によって種々の色を呈するTiO2 類がある。SiOx (x=0.6〜2.0)には、SiO、Si3 2 、無色あるいは共存物質によって紫、青、赤などの色を示すSiO2 が挙げられる。また、AlOx (x=1.5)には、無色あるいは共存物質によって赤、青、緑などに呈色するコランダムなどが挙げられ、これらもまた好ましい金属酸化物に包含されるる。
金属酸化物が多価金属の低次酸化物の場合は、光熱変換剤であって、かつ自己発熱型の空気酸化反応物質でもある場合がある。その場合は、光吸収したエネルギーのほかに自己発熱反応の結果発生した熱エネルギーも利用できるので、好ましい。これらの多価金属の低次酸化物は、Fe、Co、Niなどの低次酸化物が挙げられる。具体的には、酸化第一鉄、四三酸化鉄、一酸化チタン、酸化第一錫、酸化第一クロムなどが挙げられる。その中でも酸化第一鉄、四三酸化鉄及び一酸化チタンが好ましい。
自己発熱反応が起こるかどうかは、示差熱天秤(TG/DTA)により容易に確認することができる。示差熱天秤に、自己発熱反応物質を挿入して、温度を一定速度で上昇させていくと、ある温度で発熱ピークが出現して発熱反応が起こったことが観測される。金属あるいは低次酸化金属の酸化反応を自己発熱反応として用いた場合、発熱ピークが現れるとともに、熱天秤では重量が増えることも同様に観測される。繰り返しになるが、光・熱変換機構に加えて自己発熱反応エネルギーを利用することにより、従来よりも単位輻射線量当たり、より多くの熱エネルギーを、しかも持続的に利用することができ、そのために感度を向上させることができる。
光熱変換性微粒子が金属硫化物からなる場合、好ましい金属硫化物は、遷移金属などの重金属硫化物である。中でも好ましい硫化物には鉄、コバルト、クロム、マンガン、ニッケル、モリブデン、テルル、ストロンチウム、錫、銅、銀、鉛、カドミウムの硫化物が挙げられ、とりわけ、硫化銀、硫化第一鉄及び硫化コバルトが好ましい。
光熱変換性微粒子が金属窒化物からなる場合、好ましい金属窒化物は、金属のアジド化合物である。とくに銅、銀及び錫のアジド化物が好ましい。これらのアジド化合物は、光分解によって発熱する自己発熱性化合物でもある。そのほかの好ましい無機金属窒化物には、TiNx (x=1.0〜2.0)、SiNx (x=1.0〜2.0)、AlNx (x=1.0〜2.0)などが挙げられる。TiNx (x=1.0〜2.0)としては、青銅色のTiNや褐色のTiNx (x=1.3)が挙げられる。SiNx (x=1.0〜2.0)としては、Si2 3 、SiN、Si3 4 が挙げられる。また、AlNx (x=1.0〜2.0)にはAlNなどを挙げることができる。
上記の各金属酸化物、硫化物及び窒化物は、いずれも公知の製造方法によって得られる。また、チタンブラック、鉄黒、モリブデン赤、エメラルドグリーン、カドミウム赤、コバルト青、紺青、ウルトラマリンなどの名称で市販されているものも多い。
これら親水性の金属化合物の粒子サイズは、粒子を構成する物質の屈折率や吸光係数によって最適サイズがことなるが、一般に0.005〜5μmであり、好ましくは0.01〜3μmである。粒子サイズが、微小に過ぎると光散乱により、粗大に過ぎると粒子界面反射により、光吸収の非効率化がおこる。
金属粒子の多くは、光熱変換性であってかつ自己発熱性でもあって光吸収によって熱を発生させた上にその熱をトリガーとする発熱反応によってさらに多量の熱を供給する。
粒子としては、Mg、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Pb等の微粒子が含まれる。これらの金属微粒子は光熱変換性であると同時に自己発熱性でもある。この中でも、吸収光の光熱変換によって得た熱エネルギーにより、酸化反応等の発熱反応を容易に起こすものが好ましく、具体的には、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、In、Sn、Wが好ましい。その中でもとくに輻射線の吸光度が高く、自己発熱反応熱エネルギーの大きいものとして、Fe、Co、Ni、Cr、Ti、Zrが好ましい。
また、これらの金属は、単体粒子のみでなく、2成分以上の合金で構成されていてもよく、また、金属と前記した金属酸化物、窒化物、硫化物及び炭化物等で構成された粒子でもよい。金属単体の方が酸化等の自己発熱反応熱エネルギーは大きいが、空気中での取り扱いが煩雑で、空気に触れると自然発火する危険があるものもある。そのような金属粉体は、表面から数nmの厚みは金属の酸化物、窒化物、硫化物、炭化物等で覆われている方が好ましい。これらの粒子の粒径は、10μm以下、好ましくは、0.005〜5μm、さらに好ましくは、0.01〜3μmである。0.01μm以下では、粒子の分散が難しく、10μm以上では、印刷物の解像度が悪くなる。
これらの赤外線吸収剤は、通常は本発明の被膜形成性組成物、及び、該組成物からなる硬化膜に添加されるが、このような硬化膜を後述する平版印刷版原版の記録層として用いる場合には、他の成分とともに該記録層に添加してもよいし、記録層に隣接して別の層を設けそこへ添加してもよいが、平版印刷版原版を作成した際に、硬化膜(画像記録層)の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加することが好ましく、さらに好ましくは0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、露光部における赤外線吸収剤が赤外露光により発熱し、その熱、或いは、共存する酸発生剤が分解して酸が発生し、官能基が疎水性から親水性に変化し、非画像部となる親水性領域が形成される。この際も、該組成物中において、架橋構造の形成反応が進行し、硬化膜の良好な膜強度と支持体に対する密着性が得られる。このようにして、疎水性の表面を有する硬化膜に優れた親水性を有する親水化領域形成が実現し、非画像部が形成される。
画像記録層の吸光度は、画像記録層に添加する赤外線吸収剤の量と画像記録層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像記録層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
また、親水性膜に対する含有量で言えば、赤外線吸収剤は固形分換算で、0.1〜30質量%の範囲で含有することが好ましく、染料では、1〜15質量%の範囲が、顔料では
0.1〜25質量%の範囲が、金属粒子は0.1〜25質量%の範囲であることが好ましい。
<硬化膜>
本発明の被膜形成性組成物は、前記(A)及び(B)の必須成分、所望により、好ましく併用される(C)及び(D)成分、及びその他の成分を含む。この被膜形成性組成物を、適切な支持体上に塗布し、乾燥した後、該被膜(乾燥後の塗布膜)を光又は熱により硬化させることで本発明の硬化膜が製膜される。また、被膜の塗布後に、硬化反応を生じさせるのに十分な条件の加熱、乾燥処理を行うことでも、本発明の硬化膜を得ることができる。即ち、本発明の組成物を塗布、乾燥し、必要に応じてさらなる露光、加熱を行うことで、(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーの末端架橋性基と(B)該(A)架橋性基を有するポリマーの末端に存在する架橋性基と反応しうる架橋剤とが反応して、架橋密度の高い、高強度な3次元架橋膜である本発明の硬化膜が得られるものと考えられる。
硬化膜製膜時における架橋構造の形成は、熱、又は光等による共有結合の形成、熱又は光により発生する酸及び/又はラジカルによる共有結合の形成、或いは、酸と塩基によるイオン架橋形成のいずれであってもよい。
本発明においては、硬化性を向上させるために、硬化に用いる架橋反応に適する、公知の架橋反応の促進剤を必要に応じて用いることが可能である。特にラジカル重合反応を用いて被膜形成組成物の硬化を行う場合には、アゾ化合物、パーオキシ化合物、有機ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、遷移金属化合物など、熱又は光ラジカル発生剤を用いることができる。
<平版印刷版原版>
本発明の平版印刷版原版は、適切な支持体上に、前記本発明の硬化膜を形成し、記録層としたものである。この平版印刷版原版の画像形成機構について説明する。記録層として用いられる硬化膜は、先に述べたように、(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーの末端架橋性基と(B)該(A)架橋性基を有するポリマーの末端に存在する架橋性基と反応しうる架橋剤とが反応して得られる、架橋密度の高い、高強度な3次元架橋膜であり、架橋の際、(A)特定ポリマーはその末端において架橋膜(硬化膜)中に化学的に強固に固定化されるが、熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有する側鎖部位は、自由度が高いポリマー鎖構造を維持する。
本発明の平版印刷版原版において、この硬化膜を画像記録層として用いるにあたっては、画像形成のため、この硬化膜における所望の部分を像様に親水化することが行われる。
具体的には、例えば、赤外線レーザなどにより像様露光を行うと、露光部において官能基が疎水性から親水性に変化して、運動性の高い親水性ポリマーを有する高親水性領域が形成される。また、未露光部は官能基が疎水性を維持するため、疎水性領域となる。このように、赤外線レーザなどによる書き込みで、硬化膜表面にはインク受容性の画像部となる疎水性領域と、湿し水受容性の非画像部となる親水性領域が形成され、露光後、なんらの現像処理を経ることなく、そのまま、インクと水性成分とを供給することで平版印刷版として使用することができる。
以下、本発明の前記組成物を平版印刷版原版の記録層として用いる場合の好ましい添加剤について説明する。
<界面活性剤>
本発明の組成物を画像記録層として用いる場合には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、および、塗塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
更に好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基および親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号および同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、親水性膜の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
<着色剤>
本発明では、更に必要に応じてこれら以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤は、画像形成後、色相が変化することで画像部と非画像部の区別がつきやすくなるため、必要に応じて添加することが可能である。なお、添加量は、画像記録材料全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
<焼き出し剤>
本発明に係る記録層には、焼き出し画像生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。このような化合物としては、例えばジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイドグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェ
ニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、それぞれ、親水性膜固形分に対して0.01〜10質量%の割合である。
<無機微粒子>
本発明の画像記録層は、親水性膜の硬化被膜強度向上及び親水性、保水性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウムまたはこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは光熱変換性でなくても、被膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像記録層中に安定に分散して、画像記録層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像記録層の全固形分に対して、20質量%以下であるのが好ましく、10質量%以下であるのがより好ましい。
<硬化膜(画像記録層)の形成>
本発明の硬化膜(架橋硬化膜)は、必要な上記各成分を溶剤に分散、又は溶かして塗布液を調製し、塗布される。ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
本発明の硬化膜は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散、又は溶かした塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して形成することも可能である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の硬化膜(画像記録層)塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.1〜10.0g/m2であり、0.3〜7.0g/m2が好ましく、0.5〜5.0g/m2がさらに好ましく、この範囲で、高感度で親水性領域を形成しうる強度の高い被膜が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
塗布後の乾燥により、架橋反応が進行し、硬化膜が形成される。また、塗膜の乾燥後、硬化反応を促進させるために、加熱、或いは、露光を行ってもよい。この画像記録層の硬化方法については、以下に詳述する。なお、塗膜形成後、熱による乾燥工程のみで架橋構造を形成させ、硬化膜を作製する場合の温度条件等には特に制限はないが、好ましくは40℃〜300℃であり、架橋性と製造安定性の観点から60℃〜250℃の範囲がさらに好ましい。
<支持体>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされまたは蒸着された紙またはプラスチックフィルム等が挙げられる。好ましい支持体としては、ポリエステルフィルムおよびアルミニウム板が挙げられる。中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
支持体の厚さは0.05〜1.0mmであるのが好ましく、0.07〜0.7mmであるのがより好ましく、0.1〜0.5mmであるのが更に好ましい。
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。
<中間層>
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、親水性膜と支持体との間に中間層を設けることができる。中間層が断熱層として機能することにより、赤外線レーザによる露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。また、本発明においては親水性膜が画像部・非画像部の両方を兼ねることから、親水性膜は支持体との密着性が高いことが好ましく、中間層の設置により支持体と親水性膜の密着性の向上が図れるという利点がある。
支持体がプラスチックフィルムの場合は、アクリル系、ウレタン系、セルロース系、エポキシ系などの接着剤の支持体上への塗布、特開平6−316183号、同8−272088号及び同9−179311号、及び特開2001−199175号に記載の下塗り層塗布、すなわち、ポリビニルアルコール又はヒドロキシアルキルアクリレートもしくはメタクリレートの単独重合体又は共重合体、加水分解されたオルトケイ酸テトラエチルあるいはメチル、及び好適には、さらに二酸化ケイ素及び/又は二酸化チタンの微粒子を含有する中間層を支持体表面に設けること等を挙げることができる。
また金属支持体の場合は、有機又は無機の樹脂を利用することが好ましい。かかる有機又は無機の樹脂としては、公知の疎水性高分子、親水性高分子、親水性高分子を架橋したもの、水酸基やアルコキシ基を有するアルミニウム、珪素、チタン、ジルコニウムなどのゾルゲル変換を行う化合物からの無機高分子等から広く選択することができる。本発明において特に好ましい中間層は、シリカを含有する中間層である。
中間層には、必要に応じて親水性高分子結着材を加えることが可能である。かかる親水性高分子結着材としては、具体的には、ポリビニルアルコール(PVA),カルボキシ変性PVA等の変性PVA,澱粉およびその誘導体、カルボキシメチルセルローズ、ヒドロキシエチルセルローズのようなセルロース誘導体、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル−クロトン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、ポリアクリル酸及びその塩、ポリアクリアミド、及びアクリル酸、アクリアミドなど水溶性のアクリル系モノマーを主な構成成分として含む水溶性アクリル系共重合体等の水溶性樹脂が挙げられる。
シリカを用いた中間層の場合、中間層中でのシリカに対する親水性高分子結着材の重量比は、1未満であるのが好ましい。下限はそれ程重要ではないが、少なくとも0.2であるのが好ましい。シリカに対する親水性高分子結着材の重量比は0.25〜0.5であるのが更に好ましい。
前記中間層の被覆量は、10mg/m2以上であることが好ましく、また5000m
g/m2未満であることが好ましい。更に好ましくは50mg/m2〜3000mg/m2
である。
前述した中間層組成物の被覆は、所望によって界面活性剤の存在下に、水性コロイド分散液から行ってもよい。
<表面保護層>
本発明の平版印刷版原版は、必要に応じて表面保護層(以下、保護層と称することがある)を有することができる。
平版印刷版原版を露光した後、露光部の表面は親水性であるので、使用前の取り扱い中に環境の雰囲気の影響によって疎水性化したり、温湿度の影響を受けたり、あるいは機械的な傷など又は汚れなどの影響を受けやすい。通常、製版工程で版面に整面液(ガム液ともいう)を塗布して保護作用を行うが、原版製作の際に、保護液を塗布して、表面保護層を設けておくと製造直後からこのような保護作用が得られること、及び製版工程においてあらたに整面液を塗布する手間が省けて作業性が向上することなどの利点がある。
さらに本発明においては、通常、露光を大気中で行うため、保護層は、親水性層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物の親水性層への混入を防止し、大気中での露光による画像形成反応の阻害を防止する機能を持たせることが可能である。この場合、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いられる光の透過性が良好で、親水性層との密着性に優れ、かつ、印刷機上で容易に除去することができるものであるのが好ましい。このような特性を有する保護層については、以前より種々検討がなされており、例えば、米国特許第3458311号明細書および特開昭55−49729号公報に詳細に記載されている。
保護層に用いられる材料としては、例えば、比較的、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸等の水溶性ポリマーが挙げられる。中でも、ポリビニルアルコール(PVA)を主成分として用いると、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。ポリビニルアルコールは、保護層に必要な酸素遮断性と水溶性を与えるための未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテルまたはアセタールで置換されていてもよく、一部が他の共重合成分を有していてもよい。
ポリビニルアルコールの具体例としては、71〜100%加水分解された重合度300〜2400の範囲のものが好適に挙げられる。具体的には、例えば、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8が挙げられる。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用等)、塗布量等は、酸素遮断性および印刷機上での除去性のほか、カブリ性、密着性、耐傷性、アブレーション抑制等を考慮して適宜選択される。一般には、PVAの加水分解率が高いほど(即ち、保護層中の未置換ビニルアルコール単位含有率が高いほど)、また、膜厚が厚いほど、酸素遮断性が高くなり、感度の点で好ましい。また、製造時および保存時に不要な重合反応が生じたり、画像露光時に不要なカブリ、画線の太り等を防止するためには、酸素透過性が高くなりすぎないことが好ましい。従って、25℃、1気圧下における酸素透過性Aが0.2〜20(cc/m2・day)であることが好ましい。
保護層の他の組成物として、グリセリン、ジプロピレングリコール等を(共)重合体に対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができ、また、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を(共)重合体に対して数質量%添加することができる。
保護層の膜厚は、0.05〜5g/m2が好ましく、0.1〜3g/m2がさらに好ましい。
<その他の層>
支持体の裏面には、必要に応じてバックコートが設けられる。かかるバックコートとしては特開平5−45885号公報に記載の有機高分子化合物及び特開平6−35174号公報に記載の有機又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好ましく用いられる。これらの被覆層のうち、Si(OCH34、Si(O
254、Si(OC374、Si(OC494等のケイ素のアルコキシ化合物が安価で入手し易く、それから得られる金属酸化物の被覆層が親水性に優れており特に好ましい。
<画像記録層の硬化方法>
本発明の硬化膜を平版印刷版原版の画像記録層として用いる場合、画像記録層は塗布、乾燥後、光又は熱により硬化させることが可能である。熱で硬化させる場合、時間、熱等特に制限はないが、好ましくは80℃以上300℃以下、硬化性と安定性の観点から、90℃以上250℃以下で硬化させることが好ましい。
光により硬化させる場合、光源は特に制限なく、紫外光、可視光、赤外線、白色光いずれの波長を用いても良い。
また、該組成物中にラジカル開始剤を添加し、ラジカルを大量に発生させて硬化させることが可能であれば、加熱、或いは、全面露光によりラジカル開始剤を分解させ、発生したラジカルにより、架橋構造を形成させ、硬化してもよい。
画像記録層の硬化反応は、大気中で行われてもよく、窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で実施されてもよい。
<画像形成[製版および印刷]>
本発明の平版印刷版原版においては、前記硬化膜を画像記録層として用いるが、画像の書き込みは、像様に熱及び/又は酸を供給することで、側鎖ポリマーに存在する官能基を疎水性から親水性に変化させて親水性領域を形成することで行われが、一般的には、熱により画像形成される。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯などの高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などが用いられるが、波長700〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザ、YAGレーザ等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
また、本発明の好ましい態様によれば、画像記録層を構成する被膜形成性組成物中に含まれる(C)酸発生剤が、熱により分解して酸を発生することで、熱のみならず酸によっても官能基の疎水性から親水性への変化が生じるため、一層の高感度化を達成することができる。
<画像形成後の処理>
画像露光された本発明の平版印刷版原版は、露光領域が親水性の湿し水受容領域である非画像部となり、未露光領域がインク受容性の画像部となるため、特段の現像処理を行なうことなしに、印刷機に装着し、インキと湿し水を用いて通常の手順で印刷することができる。即ち、露光後の平版印刷版原版の未露光部は、印刷工程の初期の段階で、湿し水等に含まれる水性成分により容易に除去されて非画像部が形成される。
なお、ここで、親水性領域と疎水性領域との差異を明確にし、親水性領域の耐久性を向上させるため、後加熱処理などのエネルギー付与を行うことも好ましい態様である。後加熱処理としては、80〜200℃で、パネルヒーター、ウィスコンシンオーブンなどの非接触加熱手段により、15秒間〜10分間処理されることが好ましい。具体的には、例えば、パネルヒーターにて、100〜160℃で1〜8分間加熱処理する方法などが挙げられる。
また、本発明の平版印刷版原版は、日本特許2938398号に記載されているように、印刷機シリンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレーザーにより露光し、その後に湿し水および/またはインクをつけて機上現像することも可能である。
かくして得られた本発明の平版印刷版原版は、画像露光後、何らの現像処理を経ることなく、そのままインクと湿し水とを供給して印刷することができ、非画像部を構成する親水性領域の親水性とその耐久性に優れることから、非画像部に汚れのない高品質の印刷物を多数枚得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
(実施例1)
〔硬化膜の製膜〕
<被膜形成性組成物1>
スルホン酸エステルマクロモノマーA(下記構造) 4g
ペンタエリスリトール テトラキス(2−メルカプトアセテート) 0.85g
赤外線吸収色素A(下記構造) 0.3g
酸発生剤A(下記構造) 0.5g
メチルエチルケトン 50g
1−メトキシ−2−プロパノール 50g
フッ素系ノニオン界面活性剤
(F−177P 大日本インキ化学工業(株)) 0.25g
ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンを
パラトルエンスルホン酸アニオンにした染料 0.01g
Figure 2006150630
Figure 2006150630
上記親水性塗布液組成物を基材であるガラス板(遠藤化学製)に乾燥後の塗布量が1.2g/m2となるように塗布し、その後、120℃、5分加熱乾燥して塗膜を硬化させ、ガラス基材上に硬化膜を形成した。
<硬化膜の評価>
ガラス基板上に形成された硬化膜について、150℃のオーブンで5分間高温加熱し、加熱部の接触角を協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定したところ、9°であり、優れた表面親水性を有することが確認された。このことから、本発明の硬化膜は、赤外線レーザ露光により、良好な表面親水性を示す親水性領域を形成しうることがわかる。
<耐久性の評価>
支持体上に形成された硬化膜の耐久性を測定するため、高温加熱後の硬化膜表面を不織布(BEMCOT、旭化学繊維社製)で100回擦り、擦りを行った後、部材の表面を観察したが、擦り後にも表面の親水性膜が剥がれたり、目視で確認できる傷が付いたことはなく、実施例1の硬化膜は磨耗に対して充分な強度を有することがわかった。また、露光領域における、摺り前後の接触角(空中水滴接触角)を、協和界面科学(株)製、CA−Zを用いて測定した。接触角は擦り前が9°であり、擦り後も9°であった。擦り後も十分な親水性を示し、本発明の硬化膜を高温加熱して形成された親水性領域は耐摩耗性が良好であることが確認された。
このことから、本発明の硬化膜は、形成された親水領域における親水性及びその耐久性に優れていることがわかる。
(実施例2)
〔平版印刷版原版の作製〕
(1)支持体の作成
<アルミニウム板>
Al:99.5質量%以上、Fe:0.30質量%、Si:0.10質量%、Ti:0.02質量%、Cu:0.013質量%を含有し、残部は不可避不純物のJIS A1050アルミニウム合金の溶湯に清浄化処理を施し、鋳造した。清浄化処理としては、溶湯中の水素等の不要なガスを除去するために脱ガス処理し、更に、セラミックチューブフィルタ処理を行った。鋳造法はDC鋳造法で行った。凝固した板厚500mmの鋳塊の表面を10mm面削し、金属間化合物が粗大化してしまわないように550℃で10時間均質化処理を行った。ついで、400℃で熱間圧延し、連続焼鈍炉中、500℃で60秒間、中間焼鈍した後、冷間圧延を行って、厚さ0.30mmのアルミニウム圧延板とした。圧延ロールの粗さを制御することにより、冷間圧延後の中心線平均粗さRa (JIS B0601に準拠)を0.2μmに制御した。その後、平面性を向上させるためにテンションレベラーにかけた。得られたアルミニウム板を、以下に示す表面処理に供した。
まず、アルミニウム板の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施し、その後、30質量%硝酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和およびスマット除去処理を施した。
ついで、画像記録層と支持体との密着性を良好にし、かつ、非画像部に保水性を与えるため、粗面化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、硝酸1質量%および硝酸アルミニウム0.5質量%を含有する水溶液(液温45℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度20A/dm2、duty比1:1の交番波形で、アルミニウム板が陽極時の電気量が240C/dm2となるように電解して、電気化学的粗面化処理を施した。
更に、10質量%水酸化ナトリウム水溶液を用いて35℃で30秒間、エッチング処理を施し、その後、30質量%硫酸水溶液を用いて50℃で30秒間、中和およびスマット除去処理を施した。
その後、耐摩耗性、耐薬品性および保水性を向上させるために、陽極酸化処理を施した。具体的には、間接給電セルに供給された、20質量%硫酸水溶液(液温35℃)中を、アルミニウム板のウェブを通過させながら、電流密度14A/dm2の直流で電解して、2.5g/m2の陽極酸化被膜を作成した。
その後、非画像部の親水性を確保するため、1.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて70℃で15秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/m2であった。その後、水洗して、支持体を得た。得られた支持体の中心線平均粗さRa は0.25μmであった。
〔画像記録層の形成〕
上記支持体上に、前記実施例1で用いた被膜形成性組成物1を、乾燥後の塗布量が1.2g/m2となるように塗布し、120℃、4分加熱乾燥して、塗膜を硬化させ画像記録層を形成して平版印刷版原版Aを得た。
(実施例3)
<被膜形成性組成物2>
スルホン酸エステルマクロモノマーB(下記構造) 4g
ペンタエリスリトール テトラアクリレート 0.85g
赤外線吸収色素B(下記構造) 0.3g
ラジカル発生剤A(下記構造) 0.35g
メチルエチルケトン 50g
1−メトキシ−2−プロパノール 50g
フッ素系ノニオン界面活性剤
(F−177P 大日本インキ化学工業(株)製) 0.025g
ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンをパラトルエンスルホン酸
アニオンにした染料 0.01g
Figure 2006150630
Figure 2006150630
〔画像記録層の形成〕
上記被膜形成性組成物2を、実施例2で用いたのと同様のアルミニウム支持体表面に、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように塗布し、120℃、2分加熱した後、140℃、5分加熱して塗膜を硬化させ、支持体上に画像記録層を形成して平版印刷版原版Bを得た。
(実施例4)
<被膜形成性組成物3>
スルホン酸エステルマクロモノマーB(前記構造) 4g
ペンタエリスリトール テトラアクリレート 0.85g
赤外線吸収剤B(前記構造) 0.3g
ラジカル発生剤B(下記構造) 0.35g
メチルエチルケトン 50g
1−メトキシ−2−プロパノール 50g
フッ素系ノニオン界面活性剤
(F−177P 大日本インキ化学工業(株)製) 0.025g
ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンをパラトルエンスルホン酸
アニオンにした染料 0.01g
Figure 2006150630
〔画像記録層の形成〕
上記被膜形成性組成物3を、実施例2で用いたのと同様のアルミニウム支持体表面に、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように塗布し、120℃、2分加熱した後、400w高圧水銀灯(UVL−400P、理工科学産業(株)製)を使用し、1分照射して塗膜を硬化させ、支持体上に画像記録層を形成して平版印刷版原版Cを得た。
(実施例5)
<被膜形成性組成物4>
カルボン酸エステルマクロモノマーA(下記構造) 4g
トリメチロールプロパン トリス(2−メルカプトアセテート) 0.80g
赤外線吸収剤A(前記構造) 0.3g
酸発生剤A(前記構造) 0.5g
メチルエチルケトン 50g
1−メトキシ−2−プロパノール 50g
フッ素系ノニオン界面活性剤
(F−177P 大日本インキ化学工業(株)製) 0.25g
エチルバイオレット 0.01g
Figure 2006150630
〔画像記録層の形成〕
上記被膜形成性組成物4を、実施例2で用いたのと同様のアルミニウム支持体表面に、乾燥後の塗布量が1.0g/m2となるように塗布し、120℃、5分加熱して塗膜を硬化させ、支持体上に画像記録層を形成して平版印刷版原版Dを得た。
(実施例6)
<被膜形成性組成物5>
スルホン酸エステルマクロモノマーC(下記構造) 4g
ポリアクリル酸 0.85g
ジエチレングリコールジグリシジルエーテル 0.85g
赤外線吸収剤B(前記構造) 0.3g
酸発生剤B(下記構造) 0.40g
メチルエチルケトン 50g
メタノール 50g
フッ素系ノニオン界面活性剤
(F−177P 大日本インキ化学工業(株)製) 0.25g
ビクトリアピュアブルーBOHの対アニオンをパラトルエンスルホン酸
アニオンにした染料 0.01g
Figure 2006150630
〔画像記録層の形成〕
上記被膜形成性組成物5を、実施例2で用いたのと同様のアルミニウム支持体表面に、乾燥後の塗布量が1.2g/m2となるように塗布し、110℃、1分加熱した後、140℃で3分乾燥して塗膜を硬化させ、支持体上に画像記録層を形成して平版印刷版原版Eを得た。
(比較例1)
実施例6で用いた被膜形成性組成物5の塗布液を乾燥後の塗布量が1.2g/m2のとなるように塗布後、110℃1分加熱、乾燥し、その後の加熱又は紫外線露光による硬化工程を経ずに画像記録層を形成して平版印刷版原版Fを作製した。
〔平版印刷版原版の評価〕
(露光および印刷)
得られた平版印刷版原版を水冷式40W赤外線半導体レーザ搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力9W、外面ドラム回転数180rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像には細線チャートを含むようにした。得られた露光済み原版を現像処理することなく、露光後、パネルヒーターにて、140℃で2分間加熱処理した後、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mのシリンダーに取り付けた。湿し水(EU−3(富士写真フイルム(株)製エッチ液)/水/イソプロピルアルコール=1/89/10(容量比))とTRANS−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業社製)とを用い、湿し水を供給した後、毎時6000枚の印刷速度で印刷を行った。
(評価)
(1)地汚れ
刷りだし500枚の時点で、印刷物上の非画像部におけるインキ付着量を目視評価した。インキが全く付着せず地汚れしていない状態を○、インキが少しでも付着している状態を×とした。
(2)耐刷性
非画像部が摩耗して地汚れが発生した時点を刷了とし、そこまでの印刷枚数を計測し、前記比較例1の値を100とし、その相対値を記載した。非画像部を形成する親水領域の強度が大きいほど耐刷性の数値が高くなり、耐刷性に優れることを表す。結果を表1に示す。
Figure 2006150630
表1に明らかなように、本発明の硬化膜を画像記録層として用いた本発明の平版印刷版原版は、非画像部の親水性及びその耐久性に優れ、非画像部に汚れのない画像を多数枚形成できることがわかった。
一方、本発明に係る被膜形成性組成物を用いていても、塗布後、硬化に必要な露光又は加熱を行わず、単なる塗布被膜を形成し、硬化させずに画像記録層とした比較例1の平版印刷版原版は、硬化膜による画像記録層を有する実施例の平版印刷版原版に比較して表面親水性の耐久性が低く、実用上問題のあるレベルであった。

Claims (6)

  1. (A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーと、(B)該(A)ポリマーの架橋性基と反応しうる架橋剤と、を含有する被膜形成性組成物。
  2. さらに、(C)酸発生剤を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
  3. さらに、(D)赤外線吸収剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記(A)側鎖に熱及び/又は酸により疎水性から親水性に変化する官能基を有し、且つ、末端に架橋性基を有するポリマーが有する架橋性基が、ラジカル重合性基であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の組成物からなる被膜を光又は熱により硬化させてなる硬化膜。
  6. 支持体上に、請求項5に記載の硬化膜を有することを特徴とする平版印刷版原版。
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