JP2006228649A - 有機el装置の製造方法、蒸着ボート - Google Patents

有機el装置の製造方法、蒸着ボート Download PDF

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Abstract

【課題】 蒸着によって有機機能層を形成する際の、蒸着材料の使用効率を高め、膜厚の制御を容易にした、有機EL装置の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明は、有機機能層を所定パターンで形成する工程を含み、該工程は、画素領域33のパターンに対応して形成され且つ隔壁BHにより凹状に区画形成されてなる材料配置部20と、該凹状の材料配置部20の底面及び側面に配設されてなる光吸収層50とを備える蒸着ボート10を用いて蒸着を行うものであって、蒸着ボート10の材料配置部20に有機機能層を構成する有機材料19を配置する工程と、蒸着ボート10と基板30とを、材料配置部20と画素領域33とが対向するように重ね合わせる工程と、該重ね合わせた状態で光吸収層50により有機材料19を加熱し、該有機材料19を基板30側に蒸着させる工程とを有することを特徴とする。
【選択図】 図3

Description

本発明は、有機EL装置の製造方法、蒸着ボートに関する。
近年、自発光素子を用いた表示装置である有機EL装置の研究が活発化している。この有機EL装置に用いられる有機EL素子は、一対の電極と、その間に挟持されてなる有機機能層とを有した構成が一般的である。この様な有機EL素子を用いて表示装置を作成する場合、複数の有機機能層を画素毎にパターニングして配置する必要がある。
基板上に有機機能層をパターン形成する際には、通常、蒸着マスクを用いた真空蒸着法が採用されている。しかしながら、この方法では蒸着マスク上を含め基板全面に成膜するため、蒸着材料(有機材料)の使用効率が悪い。また、蒸着マスクの耐久性に課題があり、高い生産効率を確保することが難しい。更には、膜厚の均一性を高めるために蒸着源と基板等の被蒸着体との間隔を広げる必要があり、基板以外の場所にも蒸着材料が付着してしまい、この点も材料の使用効率を低下させる要因となっていた。
そこで、蒸着源と被蒸着体となる基板との間隔を狭めて、基板以外に蒸着材料が付着する量を減らすとともに、基板上の隔壁に合わせて蒸着源を移動し、この蒸着源が備えたシャッターの開閉することで選択的に蒸着を行い、材料の使用効率と膜厚の均一性を高めた技術がある(例えば、特許文献1参照)。
特開2004−6311号公報
しかしながら、上記特許文献1に開示されたような蒸着装置を用いても、蒸着源からの蒸発が安定するまでの間に材料が消費される他、シャッターや蒸着マスク等の素子以外の領域に付着する分を削減することは難しく、大幅に材料の使用効率を上げることは困難であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、蒸着によって有機機能層を形成する際の、蒸着材料の使用効率を高め、膜厚の制御を容易にした、有機EL装置の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明の有機EL装置の製造方法は、複数の画素領域を有する素子基板の、前記画素領域に有機機能層を形成する工程で、前記複数の画素領域に対応して隔壁により区画され、少なくとも側面の一部に光吸収層或いは熱伝導層が配置された材料配置部を有する蒸着ボートを用い、前記蒸着ボートの前記材料配置部に有機機能層となる有機材料を配置し、前記蒸着ボートの材料配置部に前記素子基板の前記画素領域が対向するように、前記蒸着ボートと前記素子基板とを重ね合わせ、前記材料配置部を加熱し、前記有機材料を前記素子基板の画素領域に蒸着することにより、前記有機機能層を形成することを特徴とする。
このような製造方法によれば、加熱により材料配置部から蒸発する材料の殆どは、該材料配置部に対向した画素領域に選択的に付着する。つまり、マスクを用いていないため、蒸着材料が基板以外のマスク等に付着することがなくなり、また材料配置部と画素領域とが対向するように位置合わせしつつ、蒸着ボートと基板とを重ね合わせた状態で蒸着を行うものとしているため、蒸着材料が非画素領域に付着することもなくなり、その結果、蒸着材料の殆どが画素領域に選択付着し、ひいては材料の使用効率が飛躍的に向上することとなるのである。
また、上記製造方法によれば、形成する有機機能層の膜厚設計を容易化することができる。つまり、配置した有機材料の殆どが画素領域に蒸着するため、材料配置部に有機材料を均一に配置すれば、該配置量と形成する有機機能層の膜厚とは一対一に対応することとなり、該材料配置部に所定膜厚の有機機能層を形成するために必要な量の有機材料を配置し、これを全て蒸発させることで、ほぼ設計通りの膜厚に有機機能層を形成することができるのである。
さらに、本発明では、材料配置部の底面及び側面面に発熱部を配設しているために、配置された有機材料を迅速且つ確実に加熱することができ、上述した材料の使用効率は非常に高いものとなっている。したがって、有機機能層の膜厚設計の信頼性も非常に高いものとなる。
本発明の製造方法において、前記材料配置部をランプ或いはレーザにより加熱するものとすることができる。このような方法によると、非接触式で材料配置部を加熱することができるため、該材料配置部の形状に拘らず確実に加熱を行うことができる。なお、蒸着ボートを光透過性に構成することで、該蒸着ボート側からランプ或いはレーザを照射することができる。
また、本発明の製造方法においては、前記蒸着ボートが、少なくとも第1の材料配置部と第2の材料配置部とを備え、前記第1の材料配置部には第2の材料配置部と異なる有機材料を配置するものとすることができる。このようにすれば、例えば第1の材料配置部に赤色、第2の材料配置部に青色の発光材料を配置することで、一度の蒸着工程で2色の発光材料を蒸着することができ、製造工程を簡略化できる。また、第3の材料配置部を設けて、この第3の材料配置部に、例えば緑色の発光材料を配置した場合、一度の蒸着工程で3色の発光材料を蒸着することができ、より製造工程の簡略化を図ることができる。
また、前記蒸着ボートの隔壁上に突起部を設けるものとすることができる。このようにすれば、基板と蒸着ボートとを対向するように重ね合わせた際に、突起部が基板と蒸着ボートとの間のスペーサとして機能し、該基板と蒸着ボートとの間に間隙を確保することができるようになる。このような間隙を形成することにより、材料配置部及び画素領域の排気を行うことが可能となり、真空での蒸着が可能となる。また、蒸着ボートから基板への熱伝導を抑制することができ、基板の温度上昇、形成した有機機能層への熱影響(材料の分解、変質等)を防止ないし抑制することができる。さらに、基板の汚染を防止することもできる。
さらに、本発明の製造方法においては、前記有機材料を前記材料配置部に配置する際に、液滴吐出法を用いることができる。このように液滴吐出法を用いることで、高精度で所定量の有機材料を配置することができる。このため、容易に一定量の有機材料を各材料配置部に配置することができ、各画素領域に蒸着する膜厚設計を一層容易化することができるようになる。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図においては、各層や各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各層や各部材毎に縮尺を異ならせてある。
(有機EL装置の構成)
まず、本発明を適用した方法により製造された有機EL装置の構成について説明する。図1は、有機EL装置1を模式的に示す断面図である。この有機EL装置1は、素子基板30上に、図示しないTFTなどの回路等からなる回路素子部及び画素電極31が形成されている。そして、画素電極31の周辺部の一部を覆うようにして、隔壁32が設けられている。
隔壁32は、図1に示したように、素子基板30側に位置する無機物隔壁32aと、この無機物隔壁32a上に積層され、該無機物隔壁32aより幅の狭い有機物隔壁32bとにより構成されている。無機物隔壁32aは、その周縁部が画素電極31の周縁部上に乗り上げるように形成されている。また、有機物隔壁32bも同様に、その一部が画素電極31の周縁部と平面的に重なるように配置されている。そして、隔壁32に囲まれた領域は、有機EL装置1の画素領域33となっている。なお、本実施形態の画素領域33は、後述するように長円形状となっている。また、素子基板30上には複数の画素領域33が所定パターンで形成されている。
画素領域33には、正孔注入/輸送層16、発光層18、及び電子注入/輸送層17が順次積層されている。発光層18は有機EL材料からなり、これら正孔注入/輸送層16、発光層18、及び電子注入/輸送層17が有機EL素子を構成している。そして、電子注入/輸送層17と隔壁32上には陰極21が形成されており、本実施形態では、陰極21に透明な材料を用いることにより、発光層18で発光する光を陰極21側から出射させるものとしている(所謂トップエミッションタイプ)。陰極21を構成する透明な材料としては、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)等を用いる事ができる。
(有機EL装置の製造方法)
次に、上記有機EL装置1の製造方法について図2〜図6を参照して説明する。本実施の形態では、ガラス等の基板上に適宜配線、TFT等を形成して素子基板30を作製した後、画素電極31を形成する工程、隔壁32を形成する工程、正孔注入/輸送層16を形成する工程、発光層18を形成する工程、電子注入/輸送層17を形成する工程、陰極21を形成する工程をそれぞれ行うものとしている。
(1)陽極形成工程
まず、ガラス等からなる基板を用意し、この基板上に図示しない薄膜トランジスタ(TFT)素子や各種配線等を含んだ回路素子を公知の方法により形成した後、層間絶縁層や平坦化膜を形成して、図2(a)に示す素子基板30を得る。その後、該素子基板30上に、蒸着法によりインジウム錫酸化物(ITO)を全面成膜し、これをフォトリソグラフィ法により画素毎にパターニングすることで画素電極31を得る。なお、本実施形態の有機EL装置1は、前述したようにトップエミッションタイプであるので、画素電極31としては、透明である必要がなく、したがって適宜な導電材料によって形成することができる。
(2)隔壁形成工程
次に、素子基板30の所定の位置に隔壁32を形成する。この隔壁32は、第1の隔壁として無機物隔壁32aが形成され、第2の隔壁として有機物隔壁32bが形成された構造からなるものである。隔壁32を形成するに際し、まず素子基板30上の所定の位置に無機物隔壁32aを形成する。無機物隔壁32aは、例えばCVD法、スパッタ法、蒸着法等によって素子基板30及び画素電極31の全面にSiO、TiO、SiN等の無機物膜を形成し、次にこの無機物膜をフォトリソグラフィ法によりパターニングして、画素電極31上に開口部を設けることにより形成する。この開口部は、画素電極31の電極面31aの形成位置に対応するものとなり、下部開口部32cとなる。このとき、無機物隔壁32aは、その周縁部の一部が画素電極31の周縁部の一部と重なるように形成される。
次いで、無機物隔壁32a上に、第2の隔壁としての有機物隔壁32bを形成する。有機物隔壁32bは、例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の耐熱性、耐溶剤性を有する有機樹脂を材料として用いることができる。有機物隔壁32bは、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機樹脂を溶媒に溶かしたものを、スピンコート、ディップコート等により塗布して形成する。そして、有機物隔壁32bをフォトリソグラフィ法によりパターニングして開口を設ける。この有機物隔壁32bの開口部は、図2(a)に示したように、無機物隔壁32aの下部開口部32cよりやや広く形成することが好ましい。これにより、画素電極31上に、無機物隔壁32a及び有機物隔壁32bを貫通する上部開口部32dが形成される。すなわち、隔壁32に囲まれた領域は、有機EL装置1の画素領域33となる。
(3)プラズマ処理工程
このプラズマ処理工程は、画素電極31の表面を活性化処理すること、更に隔壁32の表面を撥液化することを目的としている。活性化処理工程は、画素電極31を構成する材料の表面洗浄、更に仕事関数の調整、更には画素電極31等の表面の親液化を主な目的として行われる。ここでは、Oプラズマ処理により、画素電極31の電極面31a、無機物隔壁32aの第1積層部32e及び有機物隔壁32bの上部開口部32dの側面ならびに上面32fが親液化される。この親液処理により、これらの各面に水酸基が導入され、親液性が付与される。
撥液処理工程は、本実施形態における後述のインクジェット工程(正孔注入/輸送層形成工程)において吐出された液滴が隔壁表面に留まらないように、隔壁表面を撥液化することを目的として行なわれる。ここでは、撥液化工程として、大気雰囲気中でテトラフルオロメタン(四フッ化メタン:CF)を処理ガスとするプラズマ処理を行う。この処理ガスとしては、これ以外の他のフルオロカーボン系のガスを用いることも可能である。
このCFプラズマ処理により、上部開口部32dの側面及び有機物隔壁32bの上面32fが撥液化される。この撥液処理により、これらの各面にフッ素基が導入されて撥液性が付与される。有機物隔壁32bを構成するアクリル樹脂、ポリイミド樹脂等の有機物は、プラズマ状態のフルオロカーボンを照射することで容易に撥液化させることができる。また、Oプラズマにより前処理した方がフッ素化されやすい、という特徴を有しており、本実施形態には特に有効である。なお、画素電極31の電極面31a及び無機物隔壁32aの第1積層部32eは撥液化されることは無く、親液性を維持している。
(4)正孔注入/輸送層形成工程
次に、図2(b)に示すように、画素電極31上の画素領域33に正孔注入/輸送層16を形成する。本実施形態では、インクジェット法を用いて正孔注入/輸送層16を形成するものとしており、つまりインクジェットヘッド(図示せず)により正孔注入/輸送層形成材料を画素領域33に吐出し、その後に乾燥処理及び熱処理を行うことで、正孔注入/輸送層16が形成される。
本実施形態における正孔注入/輸送層形成材料としては、例えばポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等のポリチオフェン誘導体とポリスチレンスルフォン酸(PSS)等の混合物を極性溶媒に溶解させた組成物を用いることができる。極性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール(IPA)、n−ブチルアルコール、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン(NMP)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)及びその誘導体、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート等のグリコール類等を挙げることができる。なお、正孔注入/輸送層形成材料は、赤(R)、緑(G)、青(B)の各発光層18R,18G,18Bに対して同じ材料を用いても良く、各発光層毎に変えても良い。
インクジェットヘッド(図示せず)から吐出された正孔注入/輸送層形成材料の液滴は、親液処理された第1積層部32e上に広がり、下部、上部開口部32c、32d内に充填される。仮に、正孔注入/輸送層形成材料の液滴が所定の吐出位置からはずれて上面32f上に吐出されたとしても、上面32fは前記の工程によって撥液処理がされているので、その液滴は上面32fに留まることが出来ない。ビーズ状にはじかれたその液滴は、近傍の上部開口部32c、32d内に転がり込む。
なお、前記正孔注入/輸送層16の塗布方法としては、前述したインクジェット法以外の公知の液相法(ウエットプロセス、湿式塗布法)を適応してもよく、例えばスピンコート法、スリットコート法、ディップコート法、スプレー成膜法、印刷法等を用いてもよい。このとき、前記正孔注入/輸送層16が前記隔壁32、及び前記素子基板30の全面を覆うように形成してもよい。
次いで、乾燥工程を行う事により、吐出後の正孔注入/輸送層形成材料を乾燥処理し、正孔注入/輸送層形成材料に含まれる極性溶媒を蒸発させ、正孔注入/輸送層16を形成する。
(5)発光層形成工程
次に、正孔注入/輸送層16上に発光層18を形成する。本実施形態では、発光層形成材料を蒸着法により画素領域33に選択形成するものとしているが、その際、蒸着ボートを用いるものとしている。
(5−1)蒸着ボートの構成
図5(a)は、本実施形態の発光層形成工程で用いた蒸着ボートの構成を示す平面図である。図5(a)に示すように、本実施形態における蒸着ボート10は、例えば透光性で円形状の石英ガラス基板から形成されたものである。また、蒸着ボート10には、ボート隔壁BHに囲まれた凹状の材料配置部20が、縦横に整列した状態で多数形成されている。材料配置部20は、平面的には有機EL装置1の画素領域33に対応した形状となっていて、本実施形態においては長円形状となっている。ここで、画素領域33に対応する形状とは、例えば材料配置部20と有機EL装置1の画素領域とが平面的に略同じ大きさで相似形状になっていることを意味している。
図5(b)は、図5(a)に示した蒸着ボート10における、A−A線矢視における要部側断面図である。図5(b)に示すように、材料配置部20はボート隔壁BHによって囲まれることで、蒸着ボート10に対して凹部形状となっている。なお、この凹部形状を有する材料配置部20には、後述する工程により、発光層18となる発光層材料(有機材料)が設けられるようになっている。
また、ボート隔壁BH上には、例えば樹脂、窒化珪素、酸化珪素等から形成された複数の突起部11が設けられている。この突起部11は、後述する蒸着ボート10と有機EL装置1となる素子基板30とを対向するように重ね合わせる場合にスペーサとして機能するものである。突起部11は高さ2μmから10μm、幅5μmから20μmであり、画素領域33の大きさ、間隔等により適宜選ばれる。なお、突起部11は素子基板30と蒸着ボート10の間隔を確保する様なものであれば、素子基板30の側或いは素子基板30と蒸着ボート10の両方に設けても良い。
また、凹状の材料配置部20の底面20a及び側面(つまり隔壁BHの壁面)20bには、この材料配置部20に配置する有機材料を加熱するための光吸収層50が、該材料配置部20の表面に露出した状態で設けられている。つまり、隔壁BHに囲まれてできる凹部の底面から隔壁BHの壁面に至って光吸収層50が形成されており、当該光吸収層50の内側が材料配置部20として構成されている。光吸収層50は、光照射により発熱する光熱変換材料により形成されてなり、具体的にはタングステン、モリブデン等の高融点材料によって構成されている。
(5−2)蒸着ボートの製造方法
ここで、本実施形態における蒸着ボード10は以下のような方法で形成する。まず、例えば蒸着ボード10を構成するための石英基板上の全面に、例えばスパッタ法を用いて光吸収層50を構成するためのタングステン膜又はモリブデン膜を成膜する。
次に、スパッタ法、CVD法等によって光吸収層50上に均一な膜厚のシリコン層を積層する。その後、光吸収層50が露出するように前記シリコン層をエッチングする。ここで、エッチングされたシリコン層は蒸着ボート10の材料配置部20を囲むボート隔壁BHとなる。このようなボート隔壁BHを形成後、露出した光吸収層50上及びボート隔壁BH上全面に、例えばスパッタ法を用いてタングステン膜又はモリブデン膜を成膜する。その後、形成したタングステン膜又はモリブデン膜が、ボート隔壁BHの側面部のみに選択的に形成されるようにエッチングを行い、本実施形態に係る材料配置部20の底面及び側面に形成された光吸収層50を得るものとしている。
次に、ボート隔壁BH上に、例えば樹脂、窒化珪素、酸化珪素等から形成された複数の突起部11を形成する。この場合、突起部形成材料として樹脂を用いる場合は、スピンコート法により樹脂膜を形成した後、これをエッチングによりパターニングして、突起部11を得るものとしている。
以上のような方法により、ボート隔壁BHに囲まれ、平面的に有機EL装置1の画素領域33に対応した形状となる材料配置部20を複数備え、この材料配置部20に配置した発光層材料19を加熱するための光吸収層50を備えた蒸着ボート10を得ることができる。
なお、本実施形態における蒸着ボート10は、有機EL装置1を構成する素子基板10の大きさと略同じとなっていて、素子基板10の画素領域33に対応する数の材料配置部20が設けられている。よって、材料配置部20に設けられた光吸収層50にレーザ光等の光を照射することで、素子基板30上の全ての画素領域33に対応する材料配置部20を加熱するようになっている。
(5−3)蒸着ボート材料配置工程
次に、蒸着ボート10の材料配置部20に、有機EL装置1の発光層18を形成するための発光層材料(有機材料)を配置する方法について説明する。図6は、材料配置部20に発光層材料19を配置した状態を示す平面図である。発光層材料19としては、発光層18を蒸着によって形成するため、蛍光あるいは燐光を発光することが可能な公知の低分子材料を用いることができ、例えばアントラセンやピレン、8−ヒドロキシキノリンアルミニウム、ビススチリルアントラセン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、クマリン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ピロロピリジン誘導体、ペリノン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、またはこれら低分子材料に、ルブレン、キナクリドン誘導体、フェノキサゾン誘導体、DCM、DCJ、ペリノン、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ジアザインダセン誘導体等をドープして用いることができる。なお、発光層材料19は、これらに限定されるものではなく、蒸着により成膜することが可能なものであれば高分子材料を用いても良い。
具体的に材料を配置するには、まず始めに蒸着ボート10の材料配置部20に、例えば発光層材料19を溶媒に溶解または分散したものを、液滴吐出法(以下、インクジェット法)によって各材料配置部20に配置する。そして、これを乾燥して溶媒を除去することにより、各材料配置部20は、所定量の発光層材料19が配置することができる。インクジェット法は配置する液滴の量を高い精度で制御することが可能であり、所望の量の発光層材料19を各材料配置部20に配置することが可能である。なお、所定量の発光層材料19とは、所望の膜厚の発光層18を形成するための量を意味しており、例えば予め実験等によって定めて置くことが可能なものである。
発光層材料19としては、赤色(R)に発光する赤色発光層材料19R、緑色(G)に発光する緑色発光層材料19G、青色(B)に発光する青色発光層材料19Bの3種類の発光層材料19を用いた。このとき、材料配置部20は、赤色発光層材料19Rを赤色材料配置部(第1の材料配置部)20Rに、緑色発光層材料19Gを緑色材料配置部(第2の材料配置部)20Gに、青色発光層材料19Bを青色材料配置部(第3の材料配置部)20Bに配置している。
なお、インクジェット法を用いることで、蒸着ボート10上に設けられた前記の各材料配置部20(20R,20G,20B)毎に異なる色の発光層18となる発光層材料19(19R,19G,19B)を配置することができる。よって、蒸着ボート10上に、配置する発光層材料19を有機EL装置1の画素領域33のR,G,B配列に対応するように配置されたものとすることができる。
(5−4)蒸着工程
次に、前述した蒸着ボート10によって、前記正孔注入/輸送層16上に発光層18を形成する工程について説明する。ここでは、まず、前記蒸着ボート10の材料配置部20と、前記素子基板30の画素領域33とを対向するように、前記蒸着ボート10と前記素子基板30とを重ね合わせる。図3(a)は、素子基板30と蒸着ボート10とを対向させるようにして重ねた際の側断面図である。
図3(a)に示したように、各材料配置部20(20R,20G,20B)は、その発光層材料19の色が各画素領域33におけるR,G,Bに対応するようになっている。すなわち、赤色材料配置部20Rは、赤色を発光する画素領域33Rと対応し、緑色材料配置部20Gは、緑色を発光する画素領域33Bに対応し、青色材料配置部20Bは、青色を発光する画素領域33Bに対応するように、蒸着ボート10と素子基板30とが重なり合っている。このとき、画素領域33と材料配置部20とが対応するとは、平面的に材料配置部20の中心と画素領域33の中心とがほぼ一致することを意味している。
ここで、材料配置部20と画素領域33との、平面形状の関係について説明する。図3(b)は、材料配置部20と画素領域33とを平面形状の関係を模式的に示す図である。なお、図3(b)においては、画素領域33の形状を実線で、対応する材料配置部20の形状を破線或いは一点破線で表している。図3(b)に一点破線で示すように、材料配置部20の形状は、対応する画素領域33とほぼ相似形状であり、対応する画素領域33の寸法に対して、±20%の範囲pm20となることが好ましい。更には、±10%の範囲pm10となることがより好ましい。
材料配置部20の面積を画素領域33の寸法より大きくした場合、材料配置部20に設けられた発光層材料19は蒸発する際に画素領域33より広い範囲に付着するので、画素領域33全体に均一な膜厚の発光層18を形成することができる。しかしながら、材料配置部20の寸法を記画素領域33の寸法に対して120%より大きくしても、より膜厚が均一となることはなく、材料配置部20に配置する発光層材料19の必要量が多くなる。すると、発光層18を形成する際に、蒸着材料の使用効率が低下してしまう。
また、材料配置部20の面積を画素領域33の寸法に対して小さくした場合、材料配置部20に配置する発光層材料19の必要量を少なくできるので、蒸着材料の使用効率を向上できる。しかしながら、材料配置部20の寸法を画素領域33の寸法に対しての80%より小さくすると、画素領域33に形成される発光層18の膜厚の均一性が低下してしまう。なお、材料配置部20の寸法が画素領域33の寸法に対しての90%以上で110%より小さい場合には、高い蒸着材料の使用効率と発光層18の膜厚の高い均一性を両立させることができる。
本実施形態では、材料配置部20と画素領域33の平面形状とが略同じ場合(寸法の比率が100%)について説明する。よって、高い蒸着材料の使用効率と均一な膜厚の発光層18を得られるものとなっている。以上、材料配置部20の形状を、画素領域33と相似形状とする場合について説明したが、目的に応じ適宜異なる形状の材料配置部20を用いることも可能である。
前述したように、蒸着ボート10のボート隔壁BH上には、突起部11が形成されている。よって、図3(a)に示すように、蒸着ボート10と素子基板30とは、突起部11がスペーサとして機能し間隙が生じるため、素子基板30と蒸着ボード10とが密着することを防止することができる。そして、画素領域33と材料配置部20との間の領域を突起部11によって生じた間隙から排気することができ、真空状態で発光層18を蒸着することが可能となる。また、後の加熱工程において、突起部11によって蒸着ボート10の熱が直接素子基板30に伝わるのを防止することができる。
本実施形態では、蒸着ボート10と素子基板30とを重ね合わせた後、材料配置部20と画素領域33との間の領域を排気し、前記の真空下で蒸着ボード10の光吸収層50にレーザ光を照射する。光吸収層50は、光を吸収することで発熱し、これにより発光層材料19を加熱、蒸発することができ、素子基板30への蒸着を行うことができる。ここで、特に、光吸収層50を材料配置部20の底面20a及び側面20bに配設しているために、配置された発光層材料19を迅速且つ確実に加熱することができるものとなっている。したがって、発光層材料19の使用効率が非常に高いものとなっている。
また、光吸収層50が材料配置部20の側面20bにも配設されているため、蒸着時に材料配置部20を取り囲む隔壁BHの側面を高温に保つことができる。このため、蒸着材料の隔壁BHの側面への付着が抑えられ、より高い材料の使用効率で、蒸着を行うことができる。さらに、この蒸着材料の付着が防止される領域が蒸着源として働き、実質的に蒸着源として働く領域が広くなることから、蒸着される膜の均一性も向上する。
なお、蒸着ボート10の材料配置部20に設けられた発光層材料19は、材料配置部20において、不均一な膜厚であったり結晶化していても問題となることは無い。本実施形態では、蒸着ボート10の材料配置部20に設けられた発光層材料19を蒸発させている。このとき蒸発した発光材料19は、ある程度広がりながら画素領域33に蒸着されるため、画素領域33内での膜厚を均一化する効果が得られる。また、蒸着によって得られる膜の膜質は蒸着材料19の結晶状態に依存することは無い。よって、所定量の発光層材料19が配置されていれば、均一な膜厚の発光層18を形成することができる。
材料配置部20と画素領域33とは、夫々対応する位置に配置され、平面形状もほぼ同様であり、さらに近接した状態となっているため、材料配置部20から蒸発した発光層材料19のほとんどは、この材料配置部20に対応する対向した画素領域33にのみ選択的に付着し、転写される。このため、図4に示すように各画素領域33(33R,33G,33B)に各色の発光層18(18R,18G,18B)を夫々形成することができる。このとき、前記の各材料配置部20には、所望の膜厚の発光層18となる量の発光層材料19が設けられているので、全ての発光層材料19を蒸発させることで、均一な膜厚の発光層18を形成することができる。
また、材料配置部20内の発光層材料19を全て蒸発することで、蒸着ボート10の材料配置部20には蒸着材料が残らず発光層材料19を無駄にすることがない。さらに、蒸着ボート10は素子基板10に近接していて、材料配置部20から対応する画素領域33にのみ選択的に発光層18を蒸着できるため、マスクが不要となる。よって、マスクに発光層材料19が付着することがなく、蒸着材料(発光層材料19)の使用効率が高くなる。また、マスクの耐久性等の問題も発生しない。
画素領域33に発光層18を形成した後、蒸着ボート10の材料配置部20を洗浄することで、この蒸着ボート10を他の有機材料を蒸着する際に再利用でき、有機EL装置1の製造コストの軽減を図ることができる。本実施形態では、3色(R,G,B)に対応した材料配置部20R,20G,20Bを設けているので、一度の蒸着工程で3色(R,G,B)の発光層材料19R,19G,19Bを対応する画素領域33R,33G,33Bに蒸着することができ、有機EL装置1の製造工程をより簡略化することができる。
(6)電子注入/輸送層形成工程
各発光層18を形成した後、蒸着ボート10を素子基板30から分離する。その後、図1に示したように、発光層18上に電子注入/輸送層17を形成する。
この電子注入/輸送層17を形成する材料としては、LiF等のアルカリ金属のフッ化物あるいは酸化物、マグネシウム銀、マグネシウムリチウム等の合金等を用いることができる。なお、本実施形態では電子注入/輸送層材料を成膜して電子注入/輸送層17を真空蒸着等によって形成する。また、例えばスパッタ法等を用いることで、前記素子基板30の全面に電子注入/輸送層17を形成するようにしてもよい。
また、電子注入/輸送層17を形成する際に上記蒸着ボート10を用いることもできる。本実施形態では蒸着ボート10がシリコン基板から形成されているので、ある程度高温での蒸着を必要とする材料の蒸着を行うことができる。よって、使用する電子注入/輸送材料に依っては蒸着ボート10の材料配置部20に電子注入/輸送層材料を配置し、画素領域33に蒸着させ電子注入/輸送層17を形成するようにしてもよい。
(7)陰極形成工程
そして、電子注入/輸送層17及び有機物バンク層32bの全面に、陰極21を形成する。この陰極形成工程では、トップエミッション構造を実現するために、例えばイオンプレーティング法等の物理気相成長法により透明なITOを成膜して、陰極21とする。このとき、この陰極21については、発光層18と有機物バンク層32bの上面を覆うのはもちろん、有機物バンク層32bの外側部を形成する壁面についてもこれを覆った状態となるように形成する。また、陰極21上に、酸素や水分の影響による有機EL素子の劣化を防止のため酸化珪素、窒化珪素、窒化酸化珪素等の保護層を設けても良い。
このように陰極21が形成された後に、封止工程によって透明な封止基板(図示せず)を設ける。この封止工程では、素子基板30と対向する側に該封止基板と素子基板30とを封止樹脂にて貼り合せることにより、図1に示した有機EL装置1が完成となる。
本実施形態における有機EL装置1の製造方法においては、蒸着ボート10の光吸収層50により発光層材料19を加熱することで、画素領域33に対応した形状の材料配置部20に設けられた発光層材料19が蒸発する。このとき、材料配置部20から蒸発した発光層材料19の殆どは、この材料配置部20に対向した画素領域33にのみ選択的に付着して、均一な膜厚の発光層18となる。また、蒸着ボート10の材料配置部20には、発光層18を構成するための所定量の発光層材料19が設けられているので、この発光層材料19を全て蒸発させることで発光層18の膜厚を一定にできる。よって、蒸着ボート10を加熱することで均一な膜厚の発光層18を形成でき、蒸着時の蒸着材料の使用効率を向上できる。また、材料配置部20に設ける発光層材料19の量によって発光層18の膜厚を決定できるので、発光層18を蒸着する際の膜厚制御を容易とすることができる。さらに、光吸収層50を材料配置部20の底面20aから側面20bに沿って形成しているため、発光層材料19の加熱効率、ひいては蒸着効率が非常に高いものとなっている。したがって、迅速且つ確実に発光層形成材料の全てを蒸着して、発光層18を形成することが可能となっている。
なお、本実施形態では、トップエミッションタイプの有機EL装置1を例として説明したが、本発明はこれに限定されることなく、素子基板30を光透過性のある材料から形成したり、例えば光が出射される側の画素電極31、及び陰極21を光透過性のある透明材料に適宜変更することで、ボトムエミッションタイプのものや、また、素子基板の両側に光を出射するタイプのものにも適用可能である。また、正孔注入/輸送層16をインクジェット法を用いて形成したが、蒸着ボート10を用いることで発光層18と同様に蒸着により形成するようにしてもよい。このとき、蒸着ボート10に、例えばTPD、NPD、オキサジアゾール誘導体等の低分子材料を溶媒に分散し、インクジェットヘッドにより材料配置部20に吐出する。そして、発光層18と同様にして、均一な膜厚の正孔注入/輸送層16を形成することができる。この場合、画素領域33の間に隔壁32を設ける必要は無く、画素電極31を形成した次の工程で、発光層18(18R,18G,18B)を形成するようににしても良い。
また、前記蒸着ボート10を形成する方法としては、前記実施形態に限定されるものではない。例えば始めに蒸着ボート10を構成するためのシリコン基板をドライエッチング、又はウエットエッチングによって材料配置部20となる凹部を形成する。その上に例えばCVD法を用いて酸化膜を形成する。そしてその上に、光吸収層50の材料をCVD法やスパッタ法によって前記シリコン基板の全面を覆うように成膜し、公知のパターニングにより、光吸収層50を形成するようにしてもよい。すなわち、隔壁上に光吸収層50の配線部が配置されるような構造を用いても良い。さらに、蒸着ボート10を構成するための基板には、シリコンの他にガラス、石英、セラミック、金属等一定の寸法精度と耐熱性を有するものであれば、任意のものを用いることができる。特に無アルカリガラスの基板は、低コストで大型化に対応することが可能であり有用である。
本発明に係る製造方法により得られた有機EL装置を示す側断面図である。 有機EL装置の製造工程を示す工程説明図である。 図2に続く製造工程を示す図(a)及び材料配置部の説明図(b)である。 図3に続く製造工程を示す図である。 蒸着ボートの平面図(a)及びその要部側断面図(b)である。 材料配置部に発光層材料を配置した状態を示す平面図である。
符号の説明
1…有機EL装置、10…蒸着ボート、16…正孔注入/輸送層(有機機能層)、17…電子注入/輸送層、18…発光層(有機機能層)、19…発光層材料(有機材料)、20…材料配置部、30…素子基板、32…隔壁、33…画素領域、50…加熱部、BH…ボート隔壁

Claims (7)

  1. 複数の画素領域を有する素子基板の、前記画素領域に有機機能層を形成する工程で、
    前記複数の画素領域に対応して隔壁により区画され、少なくとも側面の一部に光吸収層或いは熱伝導層が配置された材料配置部を有する蒸着ボートを用い、
    前記蒸着ボートの前記材料配置部に有機機能層となる有機材料を配置し、
    前記蒸着ボートの材料配置部に前記素子基板の前記画素領域が対向するように、前記蒸着ボートと前記素子基板とを重ね合わせ、
    前記材料配置部を加熱し、前記有機材料を前記素子基板の画素領域に蒸着することにより、前記有機機能層を形成することを特徴とする有機EL装置の製造方法。
  2. 前記材料配置部をランプ或いはレーザにより加熱することを特徴とする請求項1に記載の有機EL装置の製造方法。
  3. 前記蒸着ボートが光透過性を有することを特徴とする請求項2に記載の有機EL装置の製造方法。
  4. 前記蒸着ボートは、少なくとも第1の材料配置部と第2の材料配置部とを備え、前記第1の材料配置部に前記第2の材料配置部と異なる有機材料を配置することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の有機EL装置の製造方法。
  5. 前記蒸着ボートの隔壁上に、突起部を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の有機EL装置の製造方法。
  6. 前記材料配置部に液滴吐出法を用いて前記有機材料を配置することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の有機EL装置の製造方法。
  7. 隔壁により区画され、少なくとも側面の一部に光吸収層或いは熱伝導層が配置された材料配置部を有することを特徴とする蒸着ボート。
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