JP2006228423A - 磁気ディスク及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ディスク基板1上に磁性層を備える磁気ディスク10であり、前記磁性層は、第1の磁性層5aと、第2の磁性層5cと、前記第1の磁性層5aと第2の磁性層5cとの間に形成されたスペーサー層5bとを備える交換結合膜5を含む。前記ディスク基板1の表面粗さRaは、前記スペーサー層5bの膜厚以下である。
【選択図】図1
Description
従来、この課題に対処するために、上記公開公報に開示された技術の改善技術として、更に、磁性層の元素濃度を調整する(例えば磁性層の白金(Pt)濃度を高める等)改善技術、磁性層の膜厚を調整する改善技術、磁性層を複層化する改善技術、保磁力(Hc)を高める改善技術等を単独或いは組み合わせて行う方法が知られている。これら従来の改善技術は、磁気記録媒体の磁気異方性定数Kuを増大させることにより、或いは、活性化体積Vを向上させることにより、熱安定性係数KuV/kTを向上させるアプローチの一環であると言える。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、例えば40Gbit/inch2以上の記録密度でも熱揺らぎ障害を防止でき、かつ、高S/N比の磁気ディスクを提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討の結果得られた知見に基づいて、以下の構成を有する発明を完成した。
このような交換結合は、交換相互作用により惹起される。交換相互作用は、磁気スピンモーメント間の距離に依存して、交換積分、交換エネルギーが変動する。交換相互作用は、量子力学的に説明される相互作用であり、両磁気スピンモーメント間の距離が大凡0.05nm〜0.1nm程度変化しただけでも、交換積分や交換エネルギーが変動してしまう微視的な相互作用である。
本発明者らは、前記課題を解決するために研究を重ねた結果、媒体ノイズNを悪化させること無く、熱揺らぎ障害を防止するためには、磁性層間の交換結合を磁気ディスク面上の微細な領域において、精密に一定となるように制御すれば良いことを見い出した。本発明者らの考察によれば、前記第1の磁性層と第2の磁性層との距離を、磁気ディスク面上の微細な領域においても精密に一定となるように制御することが出来れば、両磁性層間の交換結合の程度が、磁気ディスク面上の微細な領域においても精密に一定に出来るので、微細な領域における熱揺らぎ現象の面内分布を抑制できるものと考えられる。熱揺らぎ現象の面内分布が抑制できれば、過度に熱揺らぎを起こし易いクラスタを低減させる事が出来るので、統計和的に、磁気ディスク全体としての熱揺らぎ現象に対する耐性が向上されるものと考えられる。
前記したように、第1の磁性層と第2の磁性層との間に働く交換結合は、前記スペーサー層を介在させることにより作用している。そして、このスペーサー層の膜厚を所定とすることで、第1の磁性層と第2の磁性層との間の距離を制御し、交換結合の程度を所望としている。
本発明者らは、第1の磁性層と第2の磁性層との間の距離を微細な領域において阻害している要因を検討したところ、スペーサー層の表面粗さが阻害要因となっていることを突き止めた。スペーサー層の表面粗さが例えばスペーサー層の膜厚に対して粗いと、微細な領域におけるスペーサー層の凹凸に応じて両磁性層間の距離が変動するので、交換結合にバラツキが発生してしまうものと考えられる。従って、スペーサー層の表面粗さRaをスペーサー層の膜厚以下とすることで、上記交換結合のバラツキが抑制されると考えられ、高い熱揺らぎ耐性が得られる。なお本発明において、表面粗さRaとは、日本工業規格(JIS)B0601に定める算術平均粗さRaのことである。
また更には、スペーサー層の表面粗さRaを0.4nm以下とすると、本発明の作用効果が一層顕著になるので好ましい。
本発明においては、スペーサー層の表面粗さRaだけではなく、同時に、スペーサー層の表面粗さRmaxを6nm以下とすることも好適である。ここで、表面粗さRmaxとは、日本工業規格(JIS)B0601に定める最大高さRmax(Ry)のことである。
スペーサー層の算術平均粗さRaと同時に最大高さRmaxを要件とすることで、平均粗さに比べて高い粗さ、例えば異常突起等によるスペーサー層の表面粗さを抑制することが出来るので、本発明にとって好適である。更には、スペーサー層の表面粗さRmaxを4nm以下とすると、本発明の作用効果が一層顕著になるので好ましい。
なお、本発明において、上記表面粗さRa又はRmaxの下限値を特に制限する必要はなく、スペーサー層の表面が平滑であればあるほど本発明の作用効果が一層顕著に発揮される。但し、例えばHDI特性等を劣化させないように実用上の下限値を設けることは構わない。この観点からは、例えば上記スペーサー層の表面粗さRaは0.1nm以上、Rmaxは1nmという下限値を設けることは実用上好ましい。
本発明において、スペーサー層の膜厚は、具体的には、0.4nm〜1.2nm、特に0.5nm〜1nmとするのが好ましい。スペーサー層の膜厚がこの範囲であれば、スペーサー層を介して前記第1の磁性層と第2の磁性層とが好適に交換結合できるので、熱揺らぎ障害に対する耐性を向上させることが出来る。
また本発明においては、前記第1の磁性層とスペーサー層と第2の磁性層とをこの順で互いに接して形成することも好ましい。このように構成することで、スペーサー層を介して前記第1の磁性層と第2の磁性層とが好適に交換結合できるので、熱揺らぎ障害に対する耐性を向上させることが出来る。勿論、スペーサー層と第1の磁性層との間、スペーサー層と第2の磁性層との間に、それぞれ他の層を含めてもよい。
本発明においては、第1の磁性層と第2の磁性層をそれぞれ複数の磁性層で構成してもよい。
本発明において、磁気記録層を構成する磁性粒子の平均グレインサイズは10nm以下、好ましくは8nm以下である。従来はこのような微細なグレインサイズの場合、高いS/N比が得られる反面、熱揺らぎ障害が特に発生しやすいという課題があったが、本発明では前述のように熱揺らぎ耐性が向上しているので、このような微細なグレインサイズの磁性粒子を磁気記録層に用いることが出来、高記録密度化に資することができる。
なお、磁性粒子の平均グレインサイズに下限値を設ける必要はないが、例えばグレインサイズが3nm未満になると、磁性粒子が超常磁性状態となる場合があり、実用上好ましくない場合がある。そこで、磁性粒子の平均グレインサイズは3nm以上という下限値を設けることは実用上好ましい。
本発明においては、スペーサー層の材料は、磁性層の材料よりも高融点材料であることが好ましい。磁性層材料に比べてスペーサー層材料の融点が低いと、スペーサー層の成膜時に膜厚が微細な領域において不均一になり易く、その結果スペーサー層の表面粗さを粗くしてしまう場合がる。特に、磁性層とスペーサー層をスパッタリングで成膜した場合、磁性層材料に比べてスペーサー層材料の融点が低いと、スペーサー層材料のスパッタ粒子が磁性層上でマイグレートしやすく、スペーサー層の表面粗さが粗くなり易い。
本発明では、前記磁性層の材料は強磁性材料であることが好ましく、またスペーサー層の材料は非磁性材料であることが好ましい。このような材料を用いることで、磁性層間の交換結合を好適に制御することが出来る。この観点からは、磁性層の材料が例えばCo系合金強磁性材料の場合は、スペーサー層の材料は例えばRu又はRu系合金非磁性材料とするのが好適である。
なお、本発明の作用を損わない範囲で、前記第1の磁性層と第2の磁性層の材料、膜厚を適宜調整してもよい。また、前記第3の磁性層を設ける場合にも、該層の材料、膜厚を本発明の作用を損わない範囲で適宜調整してもよい。
よって、磁性層材料の結晶構造とスペーサー層の結晶構造とは、同一であることが好ましい。この場合、第1の磁性層と第2の磁性層は、スペーサー層とエピタキシャルな関係で形成され易くなり、本発明には好適である。この観点から、磁性層及びスペーサー層は共にhcp結晶構造からなる材料を用いることが好ましい。
本発明において、磁性層に含まれる交換結合膜は、反強磁性型の結合をしていることが好ましい。ここでいう反強磁性型の結合とは、前記第1の磁性層の磁化方向と第2の磁性層の磁化方向とが互いに反平行となる結合のことである。このように反強磁性型の結合をした交換結合膜を用いると、前記活性化体積Vを維持したまま、即ち熱揺らぎ耐性を低下させること無く、実効的に磁気記録を担う層の膜厚を低減することが出来るので、媒体ノイズNを抑制することが出来、高いS/N比を得ることが出来るため、本発明には好ましい。
また、前記構成4の発明にあるように、ディスク基板の表面粗さRaを0.5nm以下とすることで、同様にスペーサー層の表面粗さを低減でき上記交換結合のバラツキが抑制されると考えられ、高い熱揺らぎ耐性が得られる。更に、ディスク基板の表面粗さRaが、スペーサー層の膜厚以下であって、かつ0.5nm以下であれば、上記交換結合のバラツキが更に抑制されると考えられ、特に優れた熱揺らぎ耐性が得られる。
また更には、ディスク基板の表面粗さRaを0.4nm以下とすると、本発明の作用効果が一層顕著になるので好ましい。
なお、本発明において、上記ディスク基板の表面粗さRa又はRmaxの下限値を特に制限する必要はなく、ディスク基板の表面が平滑であればあるほど本発明の作用効果が一層顕著に発揮される。但し、例えばHDI特性等を劣化させないように実用上の下限値を設けることは構わない。この観点からは、例えばディスク基板の表面粗さRaは0.05nm以上、Rmaxは0.5nmという下限値を設けることは実用上好ましい。ディスク基板の表面粗さについても、前記原子間力顕微鏡(AFM)で測定した数値を用いることが好ましい。
本発明の磁気ディスクを得る手段としては、例えば、構成11に記載の製造方法を挙げることができる。即ち、本発明によれば、ディスク基板上に、第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層との間に形成されたスペーサー層とを備える交換結合膜を含む磁性層を有する磁気ディスクの製造方法であって、前記スペーサー層の表面粗さRaがスペーサー層の膜厚以下となるように、スペーサー層をスパッタリング成膜することを特徴とする磁気ディスクの製造方法が提供される。
本発明においては、ディスク基板と磁性層との間に、適宜、下地機能層を設けることも好ましい。このような下地機能層としては、上層のグレインを微細化させる機能を有する微細化促進層、上層のグレインを均一に微細化させる機能を有するシード層、磁性層の結晶粒子に配向性を付与する機能を有する下地層、磁性層の結晶粒子の配向性を向上させる機能を有する中間層等が挙げられる。但し、これらの下地機能層は、凹凸を形成しないように設けることが好ましい。
シード層としては、下地層等の上層のグレインを均一に微細化するように、bcc又はB2結晶構造の金属膜を用いることが好ましい。例えば、Al系合金、Cr系合金、NiAl系合金、NiAlB系合金、AlRu系合金、AlRuB系合金、AlCo系合金、FeAl系合金等のbccまたはB2結晶構造型合金等を用いることにより、磁性粒子の微細化を図ることができる。特に、AlRu系合金膜は、磁性粒子の微細化作用に優れているので好ましい。
下地層としては、bcc結晶構造のCr系合金膜が好適であり、CrMo系合金、CrV系合金、CrW系合金、CrTi系合金等が挙げられる。また、中間層としては、hcp結晶構造のCo系合金膜が好適である。
本発明において、上記各層を成膜する方法については、公知の技術を用いることができ、たとえばスパッタリング法(DCマグネトロンスパッタ、RFスパッタ等)、プラズマCVD法等を採用できる。また、前記潤滑層の形成は、ディップ法、スプレイ法、スピンコート法等、公知の方法を用いることが出来る。
本発明において、磁気ディスクの保磁力Hcは、2500エルステッド以上とすることが好ましい。保磁力を2500エルステッド以上とすると、十分な磁気異方性定数Kuが得られるようになる。
(実施例1)
本実施例の磁気ディスク10は、図1に示すように、ガラス基板1上に、微細化促進層2、シード層3、下地層4、交換結合膜5、第3の磁性層6、保護層7、潤滑層8を順次積層してなる。ここで、上記交換結合膜5は、第1の磁性層5aと、該第1の磁性層5a上に設けたスペーサー層5bと、該スペーサー層5b上に設けた第2の磁性層5cとを備える。
本実施例では、まず、溶融ガラスから上型、下型、胴型を用いたダイレクトプレスにより直径66mmφ、厚さ1.5mmの円盤状のアルミノシリケートガラスからなるガラス基板を得、これに研削、精密研磨、端面研磨、精密洗浄、化学強化を施すことにより、平滑な高剛性の磁気ディスク用ガラス基板1を製造した。精密研磨工程においては、ガラス表面の高度な平滑性が得られるよう、コロイダルシリカ研磨砥粒を含む研磨液を用いて精密研磨した。
上記工程を経て得られたガラス基板1の表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、平均粗さRa=0.29nm、平均粗さ(最大高さ)Rmax=2.93nmと超平滑な表面を持つ磁気ディスク用ガラス基板であることを確認した。Ra及びRmaxは、JISのB0601の規定に従って求めた(以下も同様)。なお、AFMによる観察結果では、テクスチャ等の凹凸は観察されなかった。得られたガラス基板1は、外径は65mm、内径は20mm、板厚は0.635mmの2.5インチ型磁気ディスク用基板であった。
即ち、まず非磁性CrTi合金からなるターゲットを用いて、ガラス基板1上にCrTi合金の微細化促進層2を30nmの厚さに成膜した。この微細化促進層2は微結晶を含むアモルファス金属膜を形成していた。次に、スパッタリングターゲットとして非磁性AlRu(Al:50at%、Ru:50at%)合金を用い、微細化促進層2上に膜厚20nmのAlRu合金からなるシード層3を成膜した。このシード層3は、B2結晶構造を形成していた。次に、スパッタリングターゲットとして非磁性CrW(Cr:85at%、W:15at%)合金を用い、シード層3上に、膜厚10nmのCrW合金からなる下地層4を成膜した。この下地層4はbcc結晶構造を備えていた。
まず、hcp結晶構造の強磁性CoCr合金からなるターゲットを用いて、下地層4上にCoCr(Co:88at%、Cr:12at%)合金からなるhcp結晶構造の第1の磁性層5aをエピタキシャルに2.5nmの厚さに成膜した。CoCr合金の融点は略1450℃である。次に、hcp結晶構造の非磁性Ru金属からなるターゲットを用いて、第1の磁性層5a上にRu金属からなるhcp結晶構造のスペーサー層5bをエピタキシャルに0.7nmの厚さに成膜した。Ru金属の融点は略2250℃である。このスペーサー層5bの表面粗さを原子間力顕微鏡(AFM)にて測定したところ、平均粗さRa=0.34nm、平均粗さ(最大高さ)Rmax=3.41nmであった。即ち、スペーサー層5bの表面粗さRaは、スペーサー層の膜厚(0.7nm)以下であり、平滑な表面であることが判る。
次に、hcp結晶構造の強磁性CoCrPtTa(Co:70at%、Cr:19at%、Pt:9at%、Ta:2at%)合金からなるターゲットを用いて、スペーサー層5b上に、CoCrPtTa合金からなるhcp結晶構造の第2の磁性層5cをエピタキシャルに1nmの厚さに成膜した。CoCrPtTa合金の融点は略1450℃である。なお、第1の磁性層5aの磁化方向と第2の磁性層5cの磁化方向とは、スペーサー層5bの介在及び互いの磁化により、反平行な結合となるよう制御されている。
次に、上記第3の磁性層6上に、水素化アモルファスカーボンからなる保護層7を5nmの厚さに成膜した。この保護層7は、浮上飛行する磁気ヘッドの撃力から磁性層を防護するためのものである。このように保護層7まで形成した磁気ディスク10をスパッタリング成膜装置から取り出し、ディップ法でPFPE(パーフルオロポリエーテル)化合物を含む潤滑層8を1nmの厚さで成膜した。この潤滑層8は、浮上飛行する磁気ヘッドとの接触を緩和するためのものである。
得られた磁気ディスク10をTEM(透過型電子顕微鏡)で観察したところ、第3の磁性層(磁気記録層)6の平均グレインサイズは8nmであった。ここで言う平均グレインサイズとは、TEMで平面観察した磁気記録層表面の多数のグレインについてサイズを分析し、これを平均した数値である。また、磁気ディスク10をTEMで断面観察したところ、下地層4、交換結合膜5、第3の磁性層6はエピタキシーであることを確認した。
また、磁気ディスク10の磁気特性をVSM(振動試料型磁力計)を用いて評価したところ、磁化曲線は反強磁性型の交換結合を示していた。また、保磁力Hcは2850エルステッドであった。
次に、磁気ディスク10の熱揺らぎ現象について評価を行った。その評価方法について説明すると、磁気ディスク10を60℃の環境下に保持し、ライトトラック幅が2.0μm、リードトラック幅が0.5μm、浮上量が20nmのGMRヘッドを用いて、100kFciの線記録密度で磁気ディスクに信号を記録した上で、その記録信号が時間経過と共に減衰していく減衰量をスペクトロアナライザーを用いて評価した。単位時間当たりの信号減衰量が大きいほど、熱揺らぎが発生しやすく、熱揺らぎ耐性の低い磁気ディスクといえる。通常、40Gbit/inch2以上の記録密度を得る磁気ディスクに求められる熱揺らぎ現象の限度は、本試験方法における信号減衰量で、−0.08dB/decadeと考えられ、所定規格とされる場合が多い。
次に、電磁変換特性(R/W特性)評価を行った。即ち、磁気ディスクの媒体ノイズNは、記録密度(1F)700kFciでキャリア信号を記録した後、DC〜1Fの1.2倍周波数までの媒体積分ノイズとして求めた。再生出力Sは12F記録密度の信号の再生出力を用いた。記録再生に用いた磁気ヘッドの浮上量は15nm、再生素子はGMR型素子である。本実施例の磁気ディスク10の評価を行ったところ、そのS/N比は、28.8dBであった。このS/N比は、40Gbit/inch2以上の高記録密度を得る磁気ディスクの所要値として十分満足する結果であった。
なお、本実施例におけるディスク基板の表面粗さRaと熱揺らぎ信号減衰量との関係をプロットし(●印)、さらにスペーサー層の表面粗さRaと熱揺らぎ信号減衰量との関係もプロットした(◆印)ものを図2に示した。
本実施例では、実施例1の精密研磨工程におけるコロイダルシリカ研磨砥粒の粒径を変更することにより研磨を行ったこと以外は実施例1と同様に製造することにより、ガラス基板の表面粗さRa=0.44nm、Rmax=4.50nmのディスク基板を得た。得られたディスク基板上に実施例1と同様に成膜を行い、本実施例の磁気ディスクを得た。本実施例のスペーサー層5bの表面粗さを実施例1と同様に評価したところ、Ra=0.48nm、Rmax=5.13nmであった。即ち、スペーサー層5bの表面粗さRaは、スペーサー層の膜厚(0.7nm)以下であり、平滑な表面であることが判る。
また、本実施例の磁気ディスクについて、TEM分析結果、VSM評価結果は実施例1と同様の結果が得られた。
さらに、本実施例の磁気ディスクについて、実施例1と同様にして熱揺らぎ現象の評価を行ったところ、信号減衰量は、−0.048dB/decadeであり、所定規格を十分満足する結果であった。そして、本実施例の磁気ディスクのS/N比は28.5dBであった。
なお、本実施例におけるディスク基板の表面粗さRaと熱揺らぎ信号減衰量との関係(●印)、及びスペーサー層の表面粗さRaと熱揺らぎ信号減衰量との関係(◆印)についても図2に示した。
本比較例では、実施例1の精密研磨工程における研磨砥粒をコロイダルシリカ研磨砥粒から酸化セリウム研磨砥粒に変更することにより、ガラス基板の表面粗さRa=0.65nm、Rmax=6.99nm(比較例1)、ガラス基板の表面粗さRa=0.93nm、Rmax=9.40nm(比較例2)のディスク基板を得た。他の点は実施例1と同様の製造方法によるディスク基板である。
得られたディスク基板上に実施例1と同様に成膜を行い、本比較例1,2の磁気ディスクを得た。本比較例のスペーサー層5bの表面粗さを実施例1と同様に評価したところ、Ra=0.75nm、Rmax=7.20nm(比較例1)、Ra=0.92nm、Rmax=9.59nm(比較例2)であった。即ち、スペーサー層5bの表面粗さRaは、比較例1,2の何れの場合もスペーサー層の膜厚(0.7nm)を超えており、比較的粗い表面であることが判る。
また、本比較例1,2の磁気ディスクについて、TEM分析結果、VSM評価結果は実施例1と同様の結果が得られた。
さらに、本比較例の磁気ディスクについて、実施例1と同様にして熱揺らぎ現象の評価を行ったところ、信号減衰量は、−0.088dB/decade(比較例1)、−0.095dB/decade(比較例2)であり、熱揺らぎによる信号減衰量が大きいことが判った。そして、本比較例の磁気ディスクのS/N比は、28.5dB(比較例1)、28.3dB(比較例2)であった。
なお、本比較例1,2におけるディスク基板の表面粗さRaと熱揺らぎ信号減衰量との関係(●印)、及びスペーサー層の表面粗さRaと熱揺らぎ信号減衰量との関係(◆印)についても図2に示した。
ところで、本実施例の結果をプロットした図2は、ディスク基板の表面粗さRaと、該ディスク基板上に磁性層を形成した磁気ディスクの熱揺らぎによる信号減衰量との相関関係を示すものでもある。従って、この相関関係に基づいて所望の信号減衰量となるようにディスク基板の表面粗さRaを定めることができる。そして、精密研磨により、このように定めた表面粗さを備えたガラスディスク基板を製造し、その上に交換結合膜を含む磁性層等を形成することにより、優れた熱揺らぎ耐性と高S/N比を有し高記録密度化に適した磁気ディスクを安価で大量に安定的に得ることが出来る。
本実施例では、熱揺らぎ現象への耐性を更に高める観点から、交換結合膜5の交換結合の強さが向上するように、第1の磁性層5aを複数の磁性層とした。これにより、交換結合を制御する第1の磁性層の作用を高めることが出来る。
具体的には、実施例1において、下地層4と、強磁性CoCr合金からなる第1の磁性層5aとの間に、hcp結晶構造の強磁性CoCrPtTa合金からなるターゲットを用いて、スパッタリングにより、強磁性CoCrPtTa(Co:70at%、Cr:19at%、Pt:9at%、Ta:2at%)合金からなるhcp結晶構造の磁性層をエピタキシャルに1nmの厚さに成膜した。該CoCrPtTa合金の融点は略1450℃である。該CoCrPtTa合金からなる磁性層は、その上の強磁性CoCr合金からなる磁性層と共同して第1の磁性層5aとして機能する。この点以外は、実施例1と同様の製造方法による磁気ディスクである。
本実施例において、スペーサー層5bの表面粗さRa(0.34nm)は、スペーサー層の膜厚(0.7nm)以下であり、平滑な表面であることが判る。
また、本実施例の磁気ディスクについて、TEM分析結果、VSM評価結果は実施例1と同様の結果が得られた。
さらに、本実施例の磁気ディスクについて、実施例1と同様に熱揺らぎ現象の評価を行ったところ、信号減衰量は、−0.040dB/decadeであった。これは所定規格の1/2の減衰量であり、優れた熱揺らぎ耐性を示している。そして、本実施例の磁気ディスクのS/N比は28.8dBであった。
ガラス基板1は実施例1と同様のもの(ガラス基板の表面粗さRaは0.28nm、Rmaxは2.91nm)を用い、スペーサー層5bのスパッタリング成膜条件を後記表1に示すように変更することにより、スペーサー層の表面粗さが異なる磁気ディスク(実施例4〜7)を製造した。具体的には、スペーサー層5bのスパッタリング成膜時の成膜速度、成膜温度を調整した。この点以外は実施例1と同様である。得られた実施例4〜7の磁気ディスクの評価結果を纏めて下記表1に示す。
表1の結果から、本発明の作用効果は、特に磁性層(磁気記録層)の平均グレインサイズが10nm以下の磁気ディスクの場合に顕著であることがわかる。本発明によれば、高いS/N比を維持したままで、優れた熱揺らぎ耐性を実現することができる。従って、平均グレインサイズを10nm以下とする磁気ディスク用途として本発明は特に好適である。
また、本発明の磁気ディスクを製造するに当たっては、スペーサー層の成膜速度は1.2nm/秒以下の遅い成膜速度が特に好適であることがわかる。例えば成膜速度が1.5nm/秒の場合(実施例7)では、熱揺らぎによる信号減衰が−0.075dB/decadeとなり、所定規格に対して余度が少なくなっている。また、成膜温度に関しては、260℃以下で成膜すると、特に優れたS/N比が得られることがわかる。
以上詳細に説明したように、本発明によれば、例えば40Gbit/inch2以上の高記録密度でも、熱揺らぎ障害を防止できると同時に高いS/N比の磁気ディスクを得ることが出来る。
また、本発明によれば、優れた熱揺らぎ耐性と高S/N比を有し高記録密度化に適した磁気ディスクを安価で大量に安定的に得ることが出来る。
2 微細化促進層
3 シード層
4 下地層
5 交換結合膜
5a 第1の磁性層
5b スペーサー層
5c 第2の磁性層
6 第3の磁性層
7 保護層
8 潤滑層
10 磁気ディスク
Claims (3)
- ディスク基板上に磁性層を備える磁気ディスクであって、
前記磁性層は、第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層との間に形成されたスペーサー層とを備える交換結合膜を含み、前記ディスク基板の表面粗さRaは、前記スペーサー層の膜厚以下であることを特徴とする磁気ディスク。 - ディスク基板上に磁性層を備える磁気ディスクであって、
前記磁性層は、第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層との間に形成されたスペーサー層とを備える交換結合膜を含み、前記ディスク基板の表面粗さRaは、0.5nm以下であることを特徴とする磁気ディスク。 - ディスク基板上に、第1の磁性層と、第2の磁性層と、前記第1の磁性層と第2の磁性層との間に形成されたスペーサー層とを備える交換結合膜を含む磁性層を有する磁気ディスクの製造方法であって、
予め、ディスク基板の表面粗さと、磁気ディスクに信号を記録したときの記録信号の熱揺らぎによる減衰量との相関関係を求めておき、この相関関係に基づいて所望の信号減衰量となるようにディスク基板の表面粗さを定め、このように定めた表面粗さを備えるディスク基板を製造し、このディスク基板上に前記交換結合膜を含む磁性層を形成することを特徴とする磁気ディスクの製造方法。
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