JP2006225769A - 耐炎化繊維、炭素繊維およびそれらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】
本発明は、特定元素の含有量が少なく高性能な耐炎化繊維および炭素繊維を提供し、更には、これらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
繊維内Si量が1000ppm、Ca量が5ppm未満である耐炎化繊維であり、繊維内Si量が1000ppm、Ca量が5ppm未満である炭素繊維。
また、前駆体繊維をSi量が300μg/m3未満かつCa量が0.5μg/m3未満の耐炎化炉内雰囲気中で耐炎化処理する耐炎化繊維の製造方法。
【選択図】なし
本発明は、特定元素の含有量が少なく高性能な耐炎化繊維および炭素繊維を提供し、更には、これらの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
繊維内Si量が1000ppm、Ca量が5ppm未満である耐炎化繊維であり、繊維内Si量が1000ppm、Ca量が5ppm未満である炭素繊維。
また、前駆体繊維をSi量が300μg/m3未満かつCa量が0.5μg/m3未満の耐炎化炉内雰囲気中で耐炎化処理する耐炎化繊維の製造方法。
【選択図】なし
Description
本発明は、耐炎化繊維、炭素繊維に関するものであり、より詳しくは、不純物が少なく高性能な特性を有する耐炎化繊維、炭素繊維およびそれらの製造方法に関するものである。
耐炎化繊維はその特性から、難燃性、防炎性を必要とする用途、例えば、溶接作業等で飛散する高熱の鉄粉や溶接火花等から人体を保護するスパッタシートや航空機等の防炎断熱材として利用されているが、炭素繊維を得るための中間材料としての利用が主である。
また炭素繊維はそのすぐれた機械的、電気的、熱的、化学的性質のために複合材料として多くの用途に使用されている。中でもアクリル系繊維を原料とする炭素繊維、すなわちアクリル系炭素繊維は比強度、比弾性率にすぐれており、航空宇宙用途、釣り竿やゴルフシャフトといったスポーツ用具用途、自動車や風車などの一般産業用途といった幅広い用途に使用されている。特に航空分野においては、航空機の一次構造部材として使用されており、このような複合材料分野においては、炭素繊維の高強度化に対する要求が益々高まっているのが現状である。
炭素繊維の高強度化における有力な方法として炭素繊維に付着、含有する金属等の不純物を減少させる方法がある。これは焼成の過程において異物化またはボイド発生の原因となる不純物量を低減し、炭素繊維の強度低下を抑制する方法である。
耐炎化繊維および炭素繊維の不純物を減少させる具体的な方法として不純物を構成元素として含有していないモノマーおよび溶液からアクリロニトリル系ポリマーを重合、紡糸し前駆体繊維を得、引き続き耐炎化処理、炭化処理する方法が提案されている(特許文献1)。
また、アクリロニトリル系ポリマーを目開き5μm以下のフィルターを用いて濾過することにより、ポリマー中の不純物を除去し、該ポリマーから得られた前駆体繊維を引き続き耐炎化処理する耐炎化炉に供給する空気および炭化処理する炭化炉に供給する不活性ガスを目開き1μm以下のフィルターで濾過して、処理雰囲気中の気体の不純物を除去し炭素繊維を製造する方法が提案されている(特許文献2)。
特許文献1においては、ポリマーおよび前駆体繊維の製造で不純物除去を行っているものの、耐炎化処理、炭化処理において不純物、粉塵付着を抑制する手段が取られておらず、実施例に記載されているように、炭素繊維に含有されている金属が100ppm以上、特にCaが65ppm、Feが45ppm程度あり、得られる炭素繊維の強度も300kgf/mm2程度と低レベルであり、より高強度な炭素繊維を得るには十分ではない。
特許文献2においては、耐炎化炉内および炭化炉内への供給気体をフィルターに通しクリーン化を行うとともに、紡糸機周辺、耐炎化処理および炭化処理工程周辺をクリーン化するという記載があるが、どの程度クリーン化した空気を、どの程度の量、どのように給気するかまで検討した結果までが具体的に示されておらず、得られる炭素繊維の強度も500kgf/mm2程度と、現在求められている強度に対して満足なものではない。また紡糸機周辺、耐炎化処理および炭化処理工程周辺といった範囲すべてをクリーン化するためには、多くのフィルターや給気ファンといった設備が必要となり、コストもかかることから工業的には実施困難である。
特開昭53−126325号公報
特開昭58−214526号公報
また炭素繊維はそのすぐれた機械的、電気的、熱的、化学的性質のために複合材料として多くの用途に使用されている。中でもアクリル系繊維を原料とする炭素繊維、すなわちアクリル系炭素繊維は比強度、比弾性率にすぐれており、航空宇宙用途、釣り竿やゴルフシャフトといったスポーツ用具用途、自動車や風車などの一般産業用途といった幅広い用途に使用されている。特に航空分野においては、航空機の一次構造部材として使用されており、このような複合材料分野においては、炭素繊維の高強度化に対する要求が益々高まっているのが現状である。
炭素繊維の高強度化における有力な方法として炭素繊維に付着、含有する金属等の不純物を減少させる方法がある。これは焼成の過程において異物化またはボイド発生の原因となる不純物量を低減し、炭素繊維の強度低下を抑制する方法である。
耐炎化繊維および炭素繊維の不純物を減少させる具体的な方法として不純物を構成元素として含有していないモノマーおよび溶液からアクリロニトリル系ポリマーを重合、紡糸し前駆体繊維を得、引き続き耐炎化処理、炭化処理する方法が提案されている(特許文献1)。
また、アクリロニトリル系ポリマーを目開き5μm以下のフィルターを用いて濾過することにより、ポリマー中の不純物を除去し、該ポリマーから得られた前駆体繊維を引き続き耐炎化処理する耐炎化炉に供給する空気および炭化処理する炭化炉に供給する不活性ガスを目開き1μm以下のフィルターで濾過して、処理雰囲気中の気体の不純物を除去し炭素繊維を製造する方法が提案されている(特許文献2)。
特許文献1においては、ポリマーおよび前駆体繊維の製造で不純物除去を行っているものの、耐炎化処理、炭化処理において不純物、粉塵付着を抑制する手段が取られておらず、実施例に記載されているように、炭素繊維に含有されている金属が100ppm以上、特にCaが65ppm、Feが45ppm程度あり、得られる炭素繊維の強度も300kgf/mm2程度と低レベルであり、より高強度な炭素繊維を得るには十分ではない。
特許文献2においては、耐炎化炉内および炭化炉内への供給気体をフィルターに通しクリーン化を行うとともに、紡糸機周辺、耐炎化処理および炭化処理工程周辺をクリーン化するという記載があるが、どの程度クリーン化した空気を、どの程度の量、どのように給気するかまで検討した結果までが具体的に示されておらず、得られる炭素繊維の強度も500kgf/mm2程度と、現在求められている強度に対して満足なものではない。また紡糸機周辺、耐炎化処理および炭化処理工程周辺といった範囲すべてをクリーン化するためには、多くのフィルターや給気ファンといった設備が必要となり、コストもかかることから工業的には実施困難である。
本発明の目的は、かかる現状に鑑み、要求されるレベルを達成しうる、高性能な耐炎化繊維、炭素繊維を提供することにある。更には、これらの製造方法を提供することにある。
かかる本発明の目的を達成するために、本発明は次の構成を有する。 すなわち、繊維内Si量が1000ppm未満かつCa量が5ppm未満である耐炎化繊維である。
また、繊維内Si量が1000ppm未満かつCa量が5ppm未満である炭素繊維である。
上記耐炎化繊維を製造するための方法とは、前駆体繊維をSi量が300μg/m3未満、Ca量が0.5μg/m3未満、好ましくはFe量が0.5μg/m3未満かつAl量が0.1μg/m3未満の耐炎化炉内雰囲気中で耐炎化処理する耐炎化繊維の製造方法である。
また、かかる耐炎化炉内雰囲気を達成するための手段は、前駆体繊維の連続耐炎化処理方法において、耐炎化炉内への空気の供給量、繊維供給量および耐炎化炉容積が以下に示す関係を満たし、かつ、0.3μm以上の粉塵を99.97体積%以上捕集することが可能なフィルターを通して耐炎化炉内へ空気を供給する耐炎化繊維の製造方法である。
10≦S/A≦1000
0.05≦S/B≦10
ここで、S:耐炎化炉内への空気の供給量 (m3/min)
A:耐炎化炉内への繊維供給量(kg/min)
B:耐炎化炉の容積(m3)
また、上記炭素繊維を製造するための方法とは、上記製造方法で得られた耐炎化繊維を被処理体として炭化処理する炭素繊維の製造方法である。
0.05≦S/B≦10
ここで、S:耐炎化炉内への空気の供給量 (m3/min)
A:耐炎化炉内への繊維供給量(kg/min)
B:耐炎化炉の容積(m3)
また、上記炭素繊維を製造するための方法とは、上記製造方法で得られた耐炎化繊維を被処理体として炭化処理する炭素繊維の製造方法である。
本発明によれば、不純物の含有量が少ない耐炎化繊維、炭素繊維を製造することができ、低コストかつ高強度な炭素繊維が得られる。
本発明は、前記課題について、鋭意検討した結果、耐炎化繊維および炭素繊維に付着、含有する特定元素が性能低下の原因となること、更には耐炎化処理雰囲気中のそれらの特定元素が耐炎化工程において繊維に取り込まれることを見出し、耐炎化処理雰囲気中の特定元素量を一定量以内に制御することにより、前記課題を解決したものである。
次に、本発明について、更に詳しく説明する。
まず本発明の耐炎化繊維はポリアクリロニトリル由来であるアクリル系耐炎化繊維が好ましい。他にポリマーとしてはセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアセチレン、ポリエチレンやポリプロピレンなどを用いることができ、かかるポリマーによっても前駆体繊維が得られるが、ポリアクリロニトリル由来のアクリル系前駆体繊維から製造されるアクリル系耐炎化繊維は強度、伸度が高く、高強度な炭素繊維を得るのに好適な耐炎化繊維となるためである。 本発明の耐炎化繊維は、ICP発光分光分析で測定した繊維内Si量が1000ppm未満であり、好ましくは700ppm未満であり、より好ましくは500ppm未満のものである。
次に、本発明について、更に詳しく説明する。
まず本発明の耐炎化繊維はポリアクリロニトリル由来であるアクリル系耐炎化繊維が好ましい。他にポリマーとしてはセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアセチレン、ポリエチレンやポリプロピレンなどを用いることができ、かかるポリマーによっても前駆体繊維が得られるが、ポリアクリロニトリル由来のアクリル系前駆体繊維から製造されるアクリル系耐炎化繊維は強度、伸度が高く、高強度な炭素繊維を得るのに好適な耐炎化繊維となるためである。 本発明の耐炎化繊維は、ICP発光分光分析で測定した繊維内Si量が1000ppm未満であり、好ましくは700ppm未満であり、より好ましくは500ppm未満のものである。
また本発明の耐炎化繊維は、ICP発光分光分析で測定した繊維内Ca量が5ppm未満であり、好ましくは4ppm未満、より好ましくは3ppm未満のものである。
ここでSiとはケイ素元素、Caとはカルシウム元素のことである。これらの元素は酸化物を形成し繊維に傷を付けたり、続く炭化工程での高温処理により繊維内で異物となり炭素繊維の強度低下の原因となる。
また本発明の耐炎化繊維は、ICP発光分光分析で測定した繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm未満であることが好ましく、15ppm未満がより好ましく、10ppm未満が更に好ましい。ここで、Fe、Alとはそれぞれ鉄、アルミニウム元素のことである。Feは鉄を材料として作られている各種装置、あるいは、かかる装置において発生する鉄錆を由来とする。一方Alは各種装置から発生する鉄錆発生を抑制する防錆塗料の原料を由来とするものと考えられている。FeやAlもCaと同様に耐炎化繊維に付着し、あるいは含有されることで、続く炭化処理により得られる炭素繊維の強度低下を引き起こすことがあり、繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm以上の場合に炭素繊維の強度低下が顕著となりやすい。
本発明において、耐炎化繊維の比重は、1.3〜1.5であることが好ましく、1.32〜1.48がより好ましく、1.35〜1.45が更に好ましい。比重が1.3未満の場合、耐熱性が不足し、続く炭化工程で糸切れが生じ操業性が悪化することがある。比重が1.5を超えると繊維自体が脆くなり炭化工程の操業性が悪化したり、炭化工程での緻密化が阻害され、得られる炭素繊維の品質、品位が低下することがある。かかる比重はJIS R7601(1986)記載の方法に従い求めることができる。具体的には、先ず1.0〜1.5gの繊維を採取し、120℃で2時間絶乾する。次に絶乾質量A(g)を測定した後、比重既知(比重ρ)のエタノール浴に含浸し、エタノール浴中の繊維質量B(g)を測定し、繊維比重=(A×ρ)/(A−B)により繊維比重を求めることができる。
ここでSiとはケイ素元素、Caとはカルシウム元素のことである。これらの元素は酸化物を形成し繊維に傷を付けたり、続く炭化工程での高温処理により繊維内で異物となり炭素繊維の強度低下の原因となる。
また本発明の耐炎化繊維は、ICP発光分光分析で測定した繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm未満であることが好ましく、15ppm未満がより好ましく、10ppm未満が更に好ましい。ここで、Fe、Alとはそれぞれ鉄、アルミニウム元素のことである。Feは鉄を材料として作られている各種装置、あるいは、かかる装置において発生する鉄錆を由来とする。一方Alは各種装置から発生する鉄錆発生を抑制する防錆塗料の原料を由来とするものと考えられている。FeやAlもCaと同様に耐炎化繊維に付着し、あるいは含有されることで、続く炭化処理により得られる炭素繊維の強度低下を引き起こすことがあり、繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm以上の場合に炭素繊維の強度低下が顕著となりやすい。
本発明において、耐炎化繊維の比重は、1.3〜1.5であることが好ましく、1.32〜1.48がより好ましく、1.35〜1.45が更に好ましい。比重が1.3未満の場合、耐熱性が不足し、続く炭化工程で糸切れが生じ操業性が悪化することがある。比重が1.5を超えると繊維自体が脆くなり炭化工程の操業性が悪化したり、炭化工程での緻密化が阻害され、得られる炭素繊維の品質、品位が低下することがある。かかる比重はJIS R7601(1986)記載の方法に従い求めることができる。具体的には、先ず1.0〜1.5gの繊維を採取し、120℃で2時間絶乾する。次に絶乾質量A(g)を測定した後、比重既知(比重ρ)のエタノール浴に含浸し、エタノール浴中の繊維質量B(g)を測定し、繊維比重=(A×ρ)/(A−B)により繊維比重を求めることができる。
本発明の炭素繊維はICP発光分光分析で測定した繊維内Si量が1000ppm未満であり、好ましくは700ppm未満であり、より好ましくは500ppm未満である。繊維内Si量が1000ppm以上の場合、繊維内に取り込まれたSiが異物となり炭素繊維の強度低下や他の性能低下の原因となる。
また本発明の炭素繊維はICP発光分光分析で測定した繊維内Ca量が5ppm未満であり、好ましくは4ppm未満、更に好ましくは3ppm未満である。繊維内Ca量が5ppm以上の場合、繊維内に取り込まれたCaが異物となり炭素繊維の強度が低下する。
また本発明の炭素繊維はICP発光分光分析で測定した繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm未満であることが好ましく、15ppm未満がより好ましく、10ppm未満が更に好ましい。繊維内Ca、Fe、Al含有量の合計が20ppm以上の場合、繊維内で異物となったCa、Fe、Alにより炭素繊維の強度低下が発生することがある。
また、炭素繊維のストランド引張強度は5GPa以上、より好ましくは6GPa以上のときに本発明の効果が発現しやすい。ストランド引張強度が5GPa未満では、強度低下に対し、本発明の炭素繊維内特定元素減少の効果を単糸間接着や物理的な傷といった他の要因の影響が大きく上回ることがある。
本発明の炭素繊維は比重が1.7〜1.9であることが好ましく、1.72〜1.88がより好ましく、1.75〜1.85が更に好ましい。比重が1.7未満の場合には、炭化処理が十分に進行しておらず、十分な機械的特性や電気特性を示さないことがある。また比重が1.9を超えると繊維自体が脆くなり、各種用途に用いたときに成形工程の操業性が悪化したり、品位が低下することがある。炭素繊維の比重は、前記した耐炎化繊維の比重と同様の方法で求めることができ、エタノールの代替としてオルトージクロロベンゼンを用いることもできる。
また本発明の炭素繊維はICP発光分光分析で測定した繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm未満であることが好ましく、15ppm未満がより好ましく、10ppm未満が更に好ましい。繊維内Ca、Fe、Al含有量の合計が20ppm以上の場合、繊維内で異物となったCa、Fe、Alにより炭素繊維の強度低下が発生することがある。
また、炭素繊維のストランド引張強度は5GPa以上、より好ましくは6GPa以上のときに本発明の効果が発現しやすい。ストランド引張強度が5GPa未満では、強度低下に対し、本発明の炭素繊維内特定元素減少の効果を単糸間接着や物理的な傷といった他の要因の影響が大きく上回ることがある。
本発明の炭素繊維は比重が1.7〜1.9であることが好ましく、1.72〜1.88がより好ましく、1.75〜1.85が更に好ましい。比重が1.7未満の場合には、炭化処理が十分に進行しておらず、十分な機械的特性や電気特性を示さないことがある。また比重が1.9を超えると繊維自体が脆くなり、各種用途に用いたときに成形工程の操業性が悪化したり、品位が低下することがある。炭素繊維の比重は、前記した耐炎化繊維の比重と同様の方法で求めることができ、エタノールの代替としてオルトージクロロベンゼンを用いることもできる。
次に、本発明の耐炎化繊維および炭素繊維を得るのに好適な製造方法の一例について説明する。
本発明において、耐炎化繊維、炭素繊維等の原料となる前駆体繊維は、上述した通り、アクリル系前駆体繊維が好ましく、かかるアクリル系前駆体繊維は、好ましくは85モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは94モル%以上のアクリロニトリルと、いわゆる耐炎化促進成分が共重合された共重合体からなるのが良い。かかる共重合体を重合する方法としては、特に限定されるものではなく、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等が適用できるが、中でも不純物の含有量が少ない有機溶媒を用いる溶液重合が好適に用いられる。
耐炎化促進成分としては、ビニル基を含有する化合物が好ましい。具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等、より好ましくは、これらの一部又は全量をアンモニアで中和したアクリル酸、メタクリル酸、又はイタコン酸のアンモニウム塩からなる共重合体が挙げられる。その他、アリルスルホン酸金属塩、メタクリルスルホン酸金属塩、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルやアクリルアミドなども共重合できる。
紡糸原液としては、上記アクリル系共重合体と共に、溶媒として有機、無機いずれの溶媒も使用できるが、有機溶媒を使用するのが好ましく、具体的には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。
かかる紡糸原液を紡糸の前に目開き1μm以下のフィルターに通し、ポリマー原料および各工程において混入した不純物を除去することが、高強度な炭素繊維を得るのに好ましい。
次に、得られた紡糸原液を、湿式紡糸法、乾湿式紡糸法、乾式紡糸法、又は溶融紡糸法、好ましくは湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法により口金から紡出し、凝固浴に導入して繊維を凝固せしめる。
湿式紡糸法や乾湿式紡糸法では、凝固速度、延伸方法等を適宜制御することにより、前駆体繊維表面の表面粗さを制御することができる。例えば、凝固速度を遅くすると、繊維表面に形成されるスキン層が薄く、かつ繊維を構成するフィブリル単位が大きい凝固糸が得られるようになり、かかる凝固糸を後述するような方法で延伸すると、表面の粗い前駆体繊維が得られるようになる。但し、凝固速度を遅くし過ぎると、紡糸速度を増すことが不可能となるなどの不都合が生じることがある。一方、凝固速度を速くし過ぎると、凝固糸の内部構造が粗くなり、高い強度を有する炭素繊維が得られないことがある。
本発明において、前記凝固浴には、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどの溶媒の他に、いわゆる凝固促進成分を含ませることができるが、凝固浴の温度が低く、凝固促進成分の量が少ない程、凝固速度は遅くなる傾向がある。凝固促進成分としては、前記アクリル系共重合体を溶解せず、かつ紡糸原液に用いる溶媒と相溶性があるものが使用できる。具体的には、水を使用するのが好ましい。この際の凝固浴に使用する溶媒は目開き1μm以下のフィルターに通すなどして不純物の混入を抑制するのが良い。
凝固浴中に導入して糸条を凝固せしめた後、水洗、延伸、乾燥及び油剤付与等を経て、アクリル系繊維が得られる。また、油剤付与後、さらにスチーム中で延伸することもできる。ここで、凝固後の糸条は、水洗せずに直接延伸浴中で延伸しても良いし、溶媒を水洗除去後に浴中で延伸しても良い。また、水洗、浴中延伸およびスチーム延伸で用いる水は目開き1μm以下のフィルターに通すなどして不純物を極力含まないものを使用するのが良い。
かかる浴中延伸は、通常、30〜98℃に温調された単一又は複数の延伸浴中で行われ、これら水洗浴や延伸浴においては、前述した紡糸原液に用いる溶媒の水洗浴液中の含有率および延伸浴液中の含有率は、凝固浴液における溶媒の含有率を上限とするのが良い。
また、浴延伸の後、糸条にシリコーン等からなる油剤を付与するのが好ましい。かかるシリコーン油剤は、耐熱性が高く、前駆体繊維への均一付与性の観点から、アミノ変性シリコーンを含有するものが好ましい。ここで、油剤付与の前後にゴムニップローラを設置し、油剤付着量制御を行うことができる。
糸条の高密度化による製造コスト低減のため、アクリル系繊維のフィラメント数は、好ましくは1,000〜3,000,000、より好ましくは12,000〜3,000,000、さらに好ましくは24,000〜2,500,000、最も好ましくは36,000〜2,000,000であるのが良い。かかるフィラメント数は、高生産性という観点から1,000以上であることが好ましいが、3,000,000を超えると内部まで均一に耐炎化処理できないことがある。
また、アクリル系繊維の単繊維繊度は、好ましくは0.3〜3dtex、より好ましくは0.4〜2dtex、さらに好ましくは0.5〜1.5dtexであるのが良い。かかる単繊維繊度は、高生産性の観点から0.3dtex以上であることが好ましく、一方で3dtexを超えると単繊維内部まで耐炎化処理できないことがある。
耐炎化繊維の製造方法については、前駆体繊維を耐炎化処理するものであるが、ここで耐炎化処理とは、前駆体繊維に難燃性、防炎性や耐熱性を付与せしめる処理であり、通常、空気中180〜300℃で高温処理することをいい、加熱した空気を炉内に送り込むことにより糸条を加熱するのが一般的である。
耐炎化処理としては連続的に前駆体繊維を供給する連続耐炎化処理と、間欠的に処理するバッチ耐炎化処理があるが、生産性を鑑み、本発明においては連続耐炎化処理を好適に用いることができる。
連続耐炎化処理においては、延伸比が0.85〜1.2であるのが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1である。かかる範囲が高強度、高弾性率な炭素繊維を得るのに好ましい。ここで延伸比とは処理繊維の引取速度を供給速度で除した値であり、1を超えれば処理前よりも延伸されている状態、1未満であれば処理前よりも収縮している状態である。
本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、耐炎化炉内雰囲気中のSi量は300μg/m3未満かつCa量は0.5μg/m3未満である。Si量は好ましくは200μg/m3未満、Ca量は好ましくは0.3μg/m3未満である。Si量が300μg/m3以上、あるいはCa量が0.5μg/m3以上の場合、かかる元素が耐炎化繊維に付着し、あるいは含有された結果、得られた耐炎化繊維および続く炭化処理により得られる炭素繊維の繊維内のSi量、Ca量が本発明における範囲を外れるため、本発明の目的を達成することが出来ない。またかかる値は少なければ少ないほど良いが、現状工業的に可能な下限値はSi量が10μg/m3、Ca量が0.05μg/m3程度である。
ここで、耐炎化炉内雰囲気とは前駆体繊維を耐炎化処理する雰囲気、すなわち所望の温度に制御されている雰囲気のことをいう。
また本発明の耐炎化繊維の製造方法においては、耐炎化炉内雰囲気中のFe量が0.5μg/m3未満、Al量が0.1μg/m3未満であることが好ましく、Fe量が0.3μg/m3未満、Al量が0.07μg/m3未満であることがより好ましい。Fe量が0.5μg/m3以上、あるいはAl量が0.1μg/m3以上の場合、かかる元素が耐炎化繊維に付着し、あるいは含有された結果、得られる耐炎化繊維および炭素繊維の繊維内Ca、Fe、Al量の合計が本発明の範囲を外れ、本発明の目的を達成することが出来ない。またかかる値は少なければ少ないほど良いが、工業的に可能な下限値はFe量が0.01μg/m3、Al量が0.01μg/m3程度である。
上述した耐炎化炉内雰囲気中のSi量およびCa量を達成するために、本発明の耐炎化処理においては、耐炎化炉内への0.3μm以上の粉塵を99.97体積%以上捕集することが可能なフィルターに通してクリーン化した空気の供給量をS(m3/min)、耐炎化炉内への繊維供給量をA(kg/min)、耐炎化炉の容積をB(m3)とした場合、S/Aが10〜1000かつS/Bが0.05〜10であることが好ましい。S/Aについてより好ましくは20〜500であり、S/Bについてより好ましくは0.1〜5である。ここで、耐炎化炉の容積とは前駆体繊維を耐炎化処理する雰囲気、すなわち所望の温度に制御されている部分の容積であり、例えば、給気配管、排気配管や循環配管部分の容積は該当しない。またフィルターは上述した性能を有するものであれば特に限定されるものではないが、HEPAフィルターを好適に用いることができる。
Siは前駆体繊維に付与した油剤からの発生が主であるが、供給する前駆体繊維量に対するクリーン化空気の供給量を上述の範囲にすることで、耐炎化炉内雰囲気中のSi量を制御できる。繊維供給量に対するクリーン化空気の供給量が上述の範囲を外れた場合には、耐炎化炉内雰囲気中のSi量が多くなったり、繊維に対するクリーン化空気の供給量が過多になり繊維を傷めることがある。すなわち、S/Aが10未満の場合、供給される繊維量に対してクリーン化された空気が少ないために耐炎化炉内雰囲気中のSi量が多くなり、得られる耐炎化繊維および炭素繊維の繊維内Si量が本発明の範囲を外れ、本発明の目的を達成することが出来ない。またS/Aが1000を超える場合には、供給したクリーン化空気により繊維を傷めたり、クリーン化空気を供給するために多くのフィルターやファンが必要となり、工業的に行う場合の生産コストが高くなることがある。
Siの一部およびCaは外気中の粉塵が発生源であり、耐炎化炉内に混入し耐炎化炉内雰囲気を汚染するが、耐炎化炉の容積に対するクリーン化空気の供給量を上述の範囲にすることで耐炎化炉内雰囲気中のSi量およびCa量を制御できる。S/Bが0.05未満の場合、耐炎化炉内に混入したSiやCaの濃度が薄められず、耐炎化炉内雰囲気中のSi量およびCa量が多くなり、得られる耐炎化繊維および炭素繊維の繊維内Si量およびCa量が本発明の範囲を外れ、本発明の目的を達成することが出来ない。またS/Bが10を超える場合には、クリーン化空気を供給するために多くのフィルターやファンが必要となり、工業的に行う場合の生産コストが高くなることがある。
前述の通り、通常、耐炎化処理としては、加熱した空気を炉内に送り込むことにより糸条を加熱するのが一般的であるが、この際、フィルターを通したクリーン化空気を循環せずに、供給した全てを排出する1パスで行うのが耐炎化炉内雰囲気をクリーンに保つ方法として好ましいが、生産コストの点からは、クリーン化空気を供給するとともに炉内空気を循環し、供給した分の空気を排出する方法が、工業的に好適に用いることができる。
前述の通り、通常、耐炎化処理としては、加熱した空気を炉内に送り込むことにより糸条を加熱するのが一般的であるが、この際、フィルターを通したクリーン化空気を循環せずに、供給した全てを排出する1パスで行うのが耐炎化炉内雰囲気をクリーンに保つ方法として好ましいが、生産コストの点からは、クリーン化空気を供給するとともに炉内空気を循環し、供給した分の空気を排出する方法が、工業的に好適に用いることができる。
また、本発明の耐炎化処理においては、耐炎化炉の熱処理雰囲気部をステンレス製とすることで耐炎化炉内雰囲気中のFe量およびAl量を上述の範囲に制御しやすいため好ましい。ここで、ステンレスとは鉄に10.5%以上のクロムを含有した合金鋼のことをいい、錆びにくい性質を有している。中でもSUS304やSUS316が非磁性かつ耐食性に優れることから、またSUS310Sが高温での強度が高いことから好ましく用いることができる。また耐炎化炉の熱処理雰囲気部とは耐炎化炉内で処理雰囲気と接している100℃以上の部分をいい、具体的には炉内壁や空気供給配管、排気配管などの各種配管のことをいう。熱処理雰囲気部が例えば炭素鋼製であった場合には、高温処理雰囲気により熱処理雰囲気部が酸化され、鉄錆が発生し、該鉄錆から発生したFeが耐炎化繊維に付着し、あるいは含有され、性能を低下させることがある。また、その鉄錆の発生を抑制するために原料としてAlを含有している防錆塗料の塗布やアルミニウム溶射を行うことがあるが、かかる塗料またはアルミニウム溶射部分から発生した微量のAlが耐炎化繊維に付着し、あるいは含有され、性能を低下させることがある。すなわち、耐炎化炉の熱処理雰囲気部をステンレス製にすることで、鉄錆由来のFeや防錆塗料由来のAlが耐炎化炉内で発生するのを防ぎ、それにより耐炎化炉内空気中Fe、Al量を本発明の目的とする範囲にせしめ、耐炎化繊維にFe、Alが付着、含有するのを防止することができる。
本発明の炭素繊維は、前記耐炎化繊維を、不活性雰囲気中、好ましくは400〜2,000℃、より好ましくは600〜1,900℃、さらに好ましくは1,000〜1,800℃で炭化処理することによって得ることができる。不活性雰囲気としては窒素、アルゴンやヘリウムなどを用いることができるが、安価なことから窒素が好適に用いられる。
炭化処理としては連続的に処理繊維を供給する連続炭化処理とバッチ炭化処理があるが、生産性を鑑み、本発明においては連続炭化処理を好適に用いることができる。
連続炭化処理において、雰囲気温度400〜800℃部分の延伸比が0.9〜1.3であるのが好ましく、より好ましくは0.95〜1.25であり、雰囲気温度800〜2000℃部分の延伸比が0.9〜1.1であるのが好ましく、より好ましくは0.92〜1.08である。延伸比がかかる範囲であることが、高強度、高弾性率な炭素繊維を得るのに好ましい。
連続炭化処理において、雰囲気温度400〜800℃部分の延伸比が0.9〜1.3であるのが好ましく、より好ましくは0.95〜1.25であり、雰囲気温度800〜2000℃部分の延伸比が0.9〜1.1であるのが好ましく、より好ましくは0.92〜1.08である。延伸比がかかる範囲であることが、高強度、高弾性率な炭素繊維を得るのに好ましい。
引き続き、上述の方法で得られた炭素繊維を不活性雰囲気中、2,000〜3,000℃で加熱することによって、より優れた弾性率を備えた黒鉛繊維とすることもできる。
本発明において、得られた炭素繊維、黒鉛繊維はその表面改質のため、電解処理することができる。電解処理に用いる電解液には、硫酸、硝酸、塩酸等の酸性溶液や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドといったアルカリ又はそれらの塩を水溶液として使用することができる。ここで、電解処理に要する電気量は、適用する炭素繊維、黒鉛繊維により適宜選択することができる。
かかる電解処理により、得られる複合材料において炭素繊維、黒鉛繊維とマトリックスとの接着性が適正化でき、接着が強すぎることによる複合材料のブリトルな破壊や、繊維方向の引張強度が低下する問題や、繊維方向における引張強度は高いものの、樹脂との接着性に劣り、非繊維方向における強度特性が発現しないといった問題が解消され、得られる複合材料において、繊維方向と非繊維方向の両方向にバランスのとれた強度特性が発現されるようになる。
この後、得られる炭素繊維に集束性を付与するため、サイジング処理をすることもできる。サイジング剤には、使用する樹脂の種類に応じて、樹脂との相溶性の良いサイジング剤を適宜選択することができる。
得られた炭素繊維は強度が高く、また繊維内含有不純物が少ないことから、樹脂を含浸硬化し、プリプレグやコンポジットといった補強材料や燃料電池の電極用途などに好適に用いられる。
本発明を例を挙げてより具体的に説明する。なお、本発明の説明で用いた各種物性値の測定方法は以下に記載の方法によるものであり、これら実施例、比較例の耐炎化処理条件、耐炎化炉内雰囲気、耐炎化繊維、炭素繊維の物性、特性については表1、表2、表3に示す通りである。
<繊維比重>
JIS R7601(1986)記載の方法に従った。耐炎化繊維の場合、エタノール(和光純薬社製特級)を用い、炭素繊維の場合、オルトージクロロベンゼン(和光純薬社製特級)を試薬として用いた。繊維を1.0〜1.5g採取し、120℃で2時間絶乾した。絶乾質量W1(g)を測定した後、比重既知(比重ρ)のエタノールまたはオルトージクロロベンゼンに含浸し、該試薬中の繊維質量W2(g)を測定し、次式、繊維比重=(W1×ρ)/(W1−W2)により繊維比重を求めた。
<ICP発光分光分析による繊維内Si、Ca、Fe、Al量>
繊維約1gを硫酸、硝酸、およびフッ化水素酸で分解後、希硝酸に溶解し、Si、Ca、Fe、Al量をICP発光分光分析法で測定した。測定機器はパーキンエルマー社製Optim4300DVを用いた。
<耐炎化炉内雰囲気中Si、Ca、Fe、Al量>
耐炎化炉中央部から超純水150ml入りテフロン(登録商標)製インピンジャーへバブリングにより室温換算2m3の空気をサンプリングした。回収した溶液に希塩酸、希硝酸を加えて希釈を行って測定溶液として測定し、測定結果からブランクとしての超純水の値を差し引いた値を用いた。
<繊維比重>
JIS R7601(1986)記載の方法に従った。耐炎化繊維の場合、エタノール(和光純薬社製特級)を用い、炭素繊維の場合、オルトージクロロベンゼン(和光純薬社製特級)を試薬として用いた。繊維を1.0〜1.5g採取し、120℃で2時間絶乾した。絶乾質量W1(g)を測定した後、比重既知(比重ρ)のエタノールまたはオルトージクロロベンゼンに含浸し、該試薬中の繊維質量W2(g)を測定し、次式、繊維比重=(W1×ρ)/(W1−W2)により繊維比重を求めた。
<ICP発光分光分析による繊維内Si、Ca、Fe、Al量>
繊維約1gを硫酸、硝酸、およびフッ化水素酸で分解後、希硝酸に溶解し、Si、Ca、Fe、Al量をICP発光分光分析法で測定した。測定機器はパーキンエルマー社製Optim4300DVを用いた。
<耐炎化炉内雰囲気中Si、Ca、Fe、Al量>
耐炎化炉中央部から超純水150ml入りテフロン(登録商標)製インピンジャーへバブリングにより室温換算2m3の空気をサンプリングした。回収した溶液に希塩酸、希硝酸を加えて希釈を行って測定溶液として測定し、測定結果からブランクとしての超純水の値を差し引いた値を用いた。
各元素の測定は、Si量はICP発光分光分析法を用い、Ca、Fe、Al量はICP質量分析法を用いた。それぞれの測定には、測定機器として島津製作所製ICPS−8000、セイコーインスツルメンツ製SPQ9000SEを用いた。
<炭素繊維の引張強度及び引張弾性率>
JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求めた。
<炭素繊維の引張強度及び引張弾性率>
JIS R7601(1986)「樹脂含浸ストランド試験法」に従って求めた。
ここで、測定する炭素繊維の樹脂含浸ストランドは、ユニオンカーバイド(株)製”BAKELITE(登録商標)”ERL4221(100重量部)/3フッ化ホウ素モノエチルアミン(3重量部)/アセトン(4重量部)を、炭素繊維に含浸させ、130℃、30分で硬化させて作製した。また、ストランドの測定本数は6本とし、各測定結果の平均値を、その炭素繊維の引張強度、引張弾性率とした。
[実施例1]
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合体をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重合し、さらにアンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことで、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基をアクリル系共重合体に導入し、共重合組成物の含有率が22重量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を、目開き0.5μmのフィルター通過後、40℃で、単孔の直径0.15mm、孔数6,000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35重量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。この凝固糸条を常法により水洗した後、温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤3重量%の浴中を通過せしめた後、180℃の加熱ローラーを用いて乾燥緻密化処理を行い、次に29.4MPaの加圧スチーム中で延伸することにより、製糸全延伸倍率が13倍、単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数6,000のアクリル系前駆体繊維を得た。
[実施例1]
アクリロニトリル99.5モル%とイタコン酸0.5モル%からなる共重合体をジメチルスルホキシドを溶媒とする溶液重合法により重合し、さらにアンモニアガスをpHが8.5になるまで吹き込むことで、イタコン酸を中和しつつ、アンモニウム基をアクリル系共重合体に導入し、共重合組成物の含有率が22重量%の紡糸原液を得た。この紡糸原液を、目開き0.5μmのフィルター通過後、40℃で、単孔の直径0.15mm、孔数6,000の紡糸口金を用い、一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、3℃にコントロールした35重量%ジメチルスルホキシドの水溶液からなる凝固浴に導入する乾湿式紡糸法により凝固糸条とした。この凝固糸条を常法により水洗した後、温水中で3.5倍に延伸し、さらにアミノ変性シリコーン系シリコーン油剤3重量%の浴中を通過せしめた後、180℃の加熱ローラーを用いて乾燥緻密化処理を行い、次に29.4MPaの加圧スチーム中で延伸することにより、製糸全延伸倍率が13倍、単繊維繊度0.7dtex、フィラメント数6,000のアクリル系前駆体繊維を得た。
熱処理雰囲気部がステンレス製(SUS304)であり、10m3の容積を有する耐炎化炉に該アクリル系前駆体繊維を0.1kg/minの供給量で連続供給し、0.3μm以上の粉塵を99.97体積%以上捕集するHEPAフィルター(日本エアフィルター製 型式J15A79)に通したクリーン化空気10m3/minを耐炎化炉内に供給し、同量の空気を排出する1パスでの耐炎化処理を180〜260℃の温度範囲および延伸比0.95で行い、比重1.4の耐炎化繊維を得た。
続いて窒素雰囲気中、雰囲気温度400〜800℃部分を延伸比1.1、雰囲気温度800〜1500℃部分を延伸比0.98で炭化処理を行い、比重1.81の炭素繊維を得た。
得られた耐炎化繊維および炭素繊維は繊維内のSi、Ca、Fe、Al量は少なく、良好な特性を示すものであった。
[実施例2]
耐炎化炉内において空気の流れを1パスではなく、クリーン化空気供給量10m3/min、空気排出量10m3/min、空気循環量90m3/minに変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は良好な特性を示すものであった。
[実施例3]
クリーン化空気の供給量および排出する空気量を1m3/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は良好な特性を示すものであった。
[実施例4]
アクリル系前駆体繊維の供給量を1kg/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は繊維内Si量が若干多いものの良好な特性を示すものであった。
[実施例5]
耐炎化炉の容積を200m3に変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は繊維内Si量およびCa量が若干多いものの良好な特性を示すものであった。
[実施例6]
耐炎化炉内熱処理雰囲気部を炭素鋼製(SS400)とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は繊維内Fe量が多いものの良好な特性を示すものであった。
[比較例1]
クリーン化空気の供給量および排出する空気量を0.1m3/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は多くの特定元素が含有しており強度が低下していた。
[比較例2]
アクリル系前駆体繊維の供給量を10kg/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は多くのSiおよびCaが含有しており強度が低下していた。
[比較例3]
耐炎化炉の容積を500m3にした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維には多くのSiおよびCaが含有しており強度が低下していた。
[実施例2]
耐炎化炉内において空気の流れを1パスではなく、クリーン化空気供給量10m3/min、空気排出量10m3/min、空気循環量90m3/minに変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は良好な特性を示すものであった。
[実施例3]
クリーン化空気の供給量および排出する空気量を1m3/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は良好な特性を示すものであった。
[実施例4]
アクリル系前駆体繊維の供給量を1kg/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は繊維内Si量が若干多いものの良好な特性を示すものであった。
[実施例5]
耐炎化炉の容積を200m3に変更した以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は繊維内Si量およびCa量が若干多いものの良好な特性を示すものであった。
[実施例6]
耐炎化炉内熱処理雰囲気部を炭素鋼製(SS400)とした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は繊維内Fe量が多いものの良好な特性を示すものであった。
[比較例1]
クリーン化空気の供給量および排出する空気量を0.1m3/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は多くの特定元素が含有しており強度が低下していた。
[比較例2]
アクリル系前駆体繊維の供給量を10kg/minにした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維は多くのSiおよびCaが含有しており強度が低下していた。
[比較例3]
耐炎化炉の容積を500m3にした以外は実施例1と同様にして耐炎化繊維および炭素繊維を得た。得られた耐炎化繊維および炭素繊維には多くのSiおよびCaが含有しており強度が低下していた。
Claims (9)
- 繊維内Si量が1000ppm未満かつCa量が5ppm未満である耐炎化繊維。
- 繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm未満である請求項1に記載の耐炎化繊維。
- 繊維内Si量が1000ppm未満かつCa量が5ppm未満である炭素繊維。
- 繊維内Ca、Fe、Al量の合計が20ppm未満である請求項3に記載の炭素繊維。
- 前駆体繊維をSi量が300μg/m3未満かつCa量が0.5μg/m3未満の耐炎化炉内雰囲気中で耐炎化処理する耐炎化繊維の製造方法。
- Fe量が0.5μg/m3未満、Al量が0.1μg/m3未満の耐炎化炉内雰囲気中で耐炎化処理する請求項5記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 連続耐炎化処理方法において、耐炎化炉内への空気の供給量、繊維供給量および耐炎化炉容積が以下に示す関係を満たし、かつ、0.3μm以上の粉塵を99.97体積%以上捕集することが可能なフィルターを通して耐炎化炉内へ空気を供給する請求項5または6記載の耐炎化繊維の製造方法。
10≦S/A≦1000
0.05≦S/B≦10
ここで、S:耐炎化炉内への空気の供給量 (m3/min)
A:耐炎化炉内への繊維供給量(kg/min)
B:耐炎化炉の容積(m3) - 耐炎化炉の熱処理雰囲気部がステンレス製である請求項7記載の耐炎化繊維の製造方法。
- 請求項5〜8のいずれかに記載の方法で得られた耐炎化繊維を不活性雰囲気中400〜2000℃で炭化処理する炭素繊維の製造方法。
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JP2005037281A JP2006225769A (ja) | 2005-02-15 | 2005-02-15 | 耐炎化繊維、炭素繊維およびそれらの製造方法 |
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JP2009197373A (ja) * | 2008-02-25 | 2009-09-03 | Toray Ind Inc | 炭素繊維前駆体繊維および炭素繊維の製造方法 |
JP2018111638A (ja) * | 2017-01-13 | 2018-07-19 | 三菱ケミカル株式会社 | 炭素材料とその製造方法 |
-
2005
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