JP2006224183A - 異鋼種の連々続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前記前チャージの供給停止6〜10分前から前チャージの鋳造速度を徐々に減速すると共に鋳型5内に発熱パウダ11を装入し、該発熱パウダ11装入後の前チャージの溶鋼プールにシーケンスブロック7を装入して、その後、鋳型5内に後チャージを注入する。
【選択図】図2
Description
特許文献1には、異鋼種の連々続鋳造に用いられ、前チャージと後チャージとを確実に繋ぐシーケンスブロック(継物金具)が開示されている。
このシーケンスブロックは、平板やV型、半筒状の仕切り板と、仕切り板に立設された一対の取付け棒とを備えているものであって、このシーケンスブロックを鋳型内に下降させ、仕切り板を前チャージの溶鋼プール内に押し込み、その後、後チャージを鋳型内に注入するようにしている。前記仕切り板が溶鋼プールに浸されるとその周辺の溶鋼は凝固して、溶鋼表面に隔壁膜が形成されるようになる。この隔壁膜により後に注入される後チャージと前チャージとの混合を防ぐようにしている。
そこで、本発明は、上記問題に鑑み、前チャージと後チャージとの混合を可能な限り防ぎ、混合部位の極力少ない鋳片を製造することのできる異鋼種の連続鋳造方法を提供することを目標とする。
すなわち、本発明における課題解決のための技術的手段は、鋳型を備えた連続鋳造装置を用いて前チャージの鋳造に連続して鋼種の異なる後チャージの鋳造を行う異鋼種の連々続鋳造方法において、前記鋳型への前チャージ供給を停止する6〜10分前から前チャージの鋳造速度を徐々に減速すると共に鋳型内に発熱パウダを装入し、該発熱パウダ装入後の前チャージの溶鋼プールにシーケンスブロックを装入して、その後、鋳型内に後チャージを注入することを特徴とする。
その原理を図1に基づいて説明する。
図1に示されるように、鋳型から引き抜かれた鋳片は、その周囲に関しては鋳型による一次冷却で凝固し凝固シェルとなっているものの、内部は溶鋼のままの状態である。かかる鋳片はサポートロールで鋳片の広面及び狭面を支持されつつ下流側に移送される。その間には冷却スプレなどの冷却手段により鋳片表面は冷却され、前記凝固シェル厚はどんどん厚くなり、最終的には鋳片内部まで凝固が進むことになる。
ここで前チャージの鋳造速度を、定常状態での鋳造速度(凝固がL1で完了する引き抜き速度)より遅くした場合を考える。凝固シェルの発達速度は鋳片からの抜熱量と大きく関係すると考えられるため、鋳造速度を遅くした場合には、図1の破線で示しているように、鋳型に近い位置S’で鋳片内部までの凝固が完了して、結果的に鋳片内で溶鋼が存在する領域が少なくなる考えられる。溶鋼は鋳片に沿った距離ではL2(<L1)の位置までしか存在しないことになる。ゆえに、鋳造速度を遅くした場合、後チャージと混ざり合う溶鋼の量は必然的に少ないものとなり、鋳造後の前チャージと後チャージとの混合部位の長さは必然的に短くなるようになる。したがって、前チャージと後チャージとが混合することを許したとしても、下工程に送ることのできない混合部位の長さを極力短くすることが可能となり、生産性を大幅に向上することができるようになる。
一方、前チャージの鋳造速度を遅くした場合、以下に述べる問題も発生することが明らかとなっている。
それを回避するために、減速中の前チャージが存在する鋳型内に発熱パウダを投入するようにしている。この発熱パウダが反応することで、前チャージの溶鋼表面に多量の熱が発生し、溶鋼表面が凝固することを確実に防ぐことができるようになる。なお、本願発明者は、数々の実験を重ねた結果、前記発熱パウダの装入量を3〜9kgにするとよいことを明らかにしている。
連続鋳造装置1では、同一鋼種の鋳造を連続的に行うことはもちろん、鋼種の異なる溶鋼2を連続的に供給し、成分の異なった鋳片3を連なるように製造することもある。このような鋳造を異鋼種の連々続鋳造という。
かかる異鋼種の連々続鋳造の際には、始めに鋼種Aの溶鋼2が順次供給され、鋼種Aの鋳片3が連続的に鋳造されている。その後、最後の鋼種Aの溶鋼2(以降、前チャージ)がタンディッシュ4に供給され、タンディッシュ4内の前チャージ量がゼロに近くなる。
前チャージと後チャージの混合抑制対策の1つとしては、一旦タンディッシュ4のスライドバルブ6を閉じて鋳型5への溶鋼2をストップした後、鋳型5内にシーケンスブロック7を装入するようにしている。かかるシーケンスブロック7は、前チャージと後チャージとを切れ目無く確実に繋ぐために装入されるものであり、加えて、装入された前チャージの溶鋼プール表面に凝固膜を作り、前チャージと後チャージとの混合を可能な限り防ぐ目的を有している。
本発明は、前述した異鋼種の連々続鋳造において、
(i)前チャージの供給停止6〜10分前から、前チャージの鋳造速度を徐々に減速すると共に鋳型5内に発熱パウダ11を装入する、
(ii)その後、発熱パウダ11装入後の前チャージの溶鋼プールにシーケンスブロック7を装入する、
(iii)その後、鋳型5内に後チャージを注入し鋳造を再開する、という3つの工程を有するものである。
詳しくは、本連続鋳造装置1は、溶鋼2を一時的に蓄え鋳型5へ注入するタンディッシュ4と、鋳型5と、鋳型5から出たスラブ3を支えつつ移送する複数のサポートロール8(広面サポートロール及び狭面サポートロール)とを有している。
図1に示すように、連続鋳造装置1において、垂直方向に引き抜かれたスラブ3は、各サポートロール8で保持されつつ徐々に水平方向に湾曲され、水平になったスラブ3は下流側に備えられたガス切断機によりスラブ3に分割される。このスラブ3の断面は図6(b)に示すように略長方形である。各サポートロール8間には、スラブ3の2次冷却を行うべく冷却材を噴射する冷却スプレが複数配設されている。
本実施形態では、前述した連続鋳造装置1において、以下に述べる手順で異鋼種の連々続鋳造を行うようにしている。
図2、図3には、鋳造手順が遷移図とフローチャートで示してある。
まず、前チャージ(鋼種Aの溶鋼2)をもって鋳片3を連続的に鋳造しているとする。図2(a)は、取鍋9から最後の前チャージがタンディッシュ4に装入された後、該タンディッシュ4内の前チャージ量が少なくなっている状況を示している。
上記減速操作と併せて、鋳型5内に1つの鋳型当たり発熱パウダ11を3〜9kg投入し、その湯面で発熱が起こるようにする。こうすることで鋳型5内にある前チャージの溶鋼プールが固まることを防ぐことができる(S32)。発熱パウダとは、溶鋼の熱により化学反応を起こし多量の熱を発生する添加剤のことであり、図13は、本発熱パウダ11により生じたスラグの組成を示している。なお、本発熱パウダ11の組成は上記スラグを生じるものに限定されるものでは無く、CaSiを組成として含有し、このCaSiの酸化による発熱を生じるものであればよい。
詳しくは、浸漬ノズル10をタンディッシュ4から取り外した状態とした上で、作業担当者が専用吊具などを用いてシーケンスブロック7を鋳型5内への装入するようにする。装入する際は、シーケンスブロック7の下部を溶鋼プール内に沈めつつ、鋳型5内で前後・左右位置が所定のものになるように移動させる。所定の位置にシーケンスブロック7を移動させたら、一定時間(例えば5秒)その状態を保持する。
また、鋳型5内に複数のシーケンスブロック7を装入する際には、各シーケンスブロック7,7間の隙間を「シーケンスブロック間の距離/鋳型幅≦0.30」となるようにするとよい。こうすることで、シーケンスブロック7による隔壁作用が効果的に働くものとなり、後に浸漬ノズル10から注入される後チャージの溶鋼流が前チャージと混ざってしまい、スラブの混合部位が伸びることを防ぐことが可能となる。
さらに、予め設定された鋳型5内のメニスカスレベルまで後チャージを湯溜めし、その後、鋳造引き抜きを再開する(S37)。この際、シーケンスブロック7を挿入した部分すなわち前チャージと後チャージとの接続部が、連続鋳造装置1の垂直曲げ部を通過するまでは、当該接続部からの湯漏れを防止するため、鋳造速度を0.8m/minと遅い速度としている。
ケース1では、スライドバルブ6を閉じる9分前から、前チャージの鋳造速度を減速しており、ケース2では10分前、ケース3では少々長めの11分前から減速を行っている。各ケースでは、当該減速に連動するようにタンディッシュ4から前チャージが減量供給され、それに伴いタンディッシュ重量が減少している。ケース1〜ケース3のいずれにおいても、前チャージと後チャージとの連々鋳はうまく行われ、混合部位は短いものとなっていることを本願発明者は確認している。
前述したように前チャージの引き抜きを減速する時間は、タンディッシュ4のスライドバルブ閉塞時を基点として6〜10分前としているが、本願発明者は、この条件を以下の実験を通じて明らかにしている。
すなわち、
(i) 前チャージの減速開始時間を様々に変化させて異鋼種の連々続鋳造を行ってスラブ3を鋳造し、
(ii) 該スラブ3の前・後チャージの接続部(段注クロップ)近傍からスラブ長手方向に複数の断面サンプルを採取して(図6参照)、
(iii) 各断面サンプルの鋼種成分を分析することで混合部位の長さを求め(図7参照)、
(v) 前チャージの減速開始時間がいかなる条件を満たせば、前記混合部位の長さを短くすることができるかという観点よりデータをまとめる(図8参照)、
という実験を行った。
図7は、前述した切り粉サンプルから求められる成分変化率と接続部からの距離との関係を、各スラブ3毎にプロットしたものである。
CE=C+Si/5+Mn/5+P+1.2V+2.5Nb ・・・(1)
図7を見るとわかるように、前チャージに相当する部分(d点より左側)の成分変化率は0%に近く、後チャージに相当する部分(c点より左側)の成分変化率は100%に近い。接続部近辺は直線的に成分変化率が変化している。そこで、成分変化率が破線bで示される値、すなわち成分許容基準以下であるならば、前チャージによるスラブ3と考え、成分変化率が破線aで示される値、すなわち成分許容基準以上であるならば、後チャージによるスラブ3と考えるようにする。このように考えた上で、破線cと破線dで挟まれた長さ部分を成分影響長さとしている。つまり、成分影響長さとは、前チャージ、後チャージの成分値から算出される成分変化率が予め設定された基準値(成分許容基準)から外れる長さであって、当然、この成分影響長さに対応するスラブ3の部位は、前チャージの成分とも後チャージの成分とも異なる混合部位であり、圧延等の下工程に送ることができないものである。
この図を見ると判るように、減速時間が6分以下であると、成分影響長さが1m以下のものもあるが、1mを超え1.3mや1.4mとなる場合が出てくるようになる。このように成分影響長さが長くなることは、その部位をクロップ部(切り捨て部)として捨てなければならず、歩留まりが悪い鋳造となる。また、各鋳造毎に成分影響長さの値がばらつき信頼性に欠ける鋳造となる。
しかしながら、逆に前チャージの減速をあまり長時間行うことは生産性の面からいって不利になる。そこで本願発明者はその観点からも検討を行い、減速開始時間をスライドバルブ6閉塞前の約20〜10分前とすることがよいことを明らかにした。特に10分前から減速することが非常に好ましい。
翻って、本実施形態では、1つの鋳型5内に発熱パウダ11を3〜9kg投入し、その湯面で発熱が起こるようにしているが、かかる発熱パウダ11の投入量は以下の実験を通じて求められたものである。
すなわち、
(i) 投入する発熱パウダ11の量を様々に変化させて異鋼種の連々続鋳造を行い、複数のスラブ3を鋳造し、
(ii) 該スラブ3において、前・後チャージの接続部を含むようにスラブ狭面の表面側から順に断面サンプル13を複数採取し(図9参照)、
(iii) 各断面サンプル13に含まれる接続部の近傍に、どのくらいノロ(鉄以外のスラグや溶融しなかった発熱パウダ11)が残っているかを調べ(図10参照)、
(v) 発熱パウダの投入量と発生するノロの厚み(水平方向の長さ)との関係とをまとめる(図11,図12参照)、
という実験を行った。
図9は、ノロ厚測定のための断面サンプル13の切り出し方を示したものである。図に示されているように、厚さ50mmでスラブ引き抜き方向500mmの断面サンプル13を、接続部を含むようにスラブ3の狭面側から内部側に向かって5枚切り出すようにしている。この切断サンプルの下部400mmが前チャージに対応し上部100mmが後チャージに対応してその境目が接続部である。
ここでいうノロ厚とは、図10(a),(b)のA,B,CやA’,B’で示されるノロの水平方向(スラブ長手方向に垂直方向)の長さのことである。
図11(a)は事前実験の結果であり、前チャージと後チャージの接続部にシーケンスブロック7を投入しないものである。発熱パウダ11を投入しない場合(図中の●)、溶鋼メニスカスに皮張りが現れ、鉄以外のスラグがノロとして残存している状況が明確に現れている。ノロ厚もスラブ狭面から1枚目の断面サンプル13(断面A)で約150mm、5枚目の断面サンプル13で約60mmと大きなものとなっている。ところが、発熱パウダ11を3kg以上投入することで、溶鋼温度が上がり皮張りが抑制できるため、ノロ厚が若干薄くなっている。特に発熱パウダ11を6kg(▲データ)または9kg(×データ)投入した場合、ノロ厚が略ゼロつまりノロがほとんど発生しないことが明らかとなった。
図12は、平均ノロ厚と発熱パウダ11の投入量との関係を示したものである。平均の炉厚は、図11(a),(b)に示されたデータを基に算出され、平均ノロ厚=断面サンプルの平均ノロ厚の総和/断面サンプル数(5枚)である。
この実験結果を基に、「ノロ厚み/鋳型厚み×100%」で定義される接続率を計算してみると、発熱パウダ3kg投入時は接続率45.7%、発熱パウダ6kg投入時は接続率0.0%、発熱パウダ9kg投入時は接続率20.8%となる。
すなわち、本発明の技術思想である「前チャージの鋳造速度を遅くすることで、後チャージと混ざり合う前チャージの溶けた溶鋼量は少ないものとなり、混合部位の長さは必然的に短くなる」といった考えはブルームの連続鋳造やビレットの連続鋳造にも適用可能である。
また、発熱パウダの投入量もその発熱量と密接な関係があるため、本実施形態の場合、1〜15kgの範囲で適切な投入量を選択することが可能である。
3 鋳片(スラブ)
4 タンディッシュ
5 鋳型
6 スライドバルブ
7 シーケンスブロック
8 サポートロール
10 浸漬ノズル
Claims (3)
- 鋳型を備えた連続鋳造装置を用いて前チャージの鋳造に連続して鋼種の異なる後チャージの鋳造を行う異鋼種の連々続鋳造方法において、
前記鋳型への前チャージ供給を停止する6〜10分前から前チャージの鋳造速度を徐々に減速すると共に鋳型内に発熱パウダを装入し、該発熱パウダ装入後の前チャージの溶鋼プールにシーケンスブロックを装入して、その後、鋳型内に後チャージを注入することを特徴とする異鋼種の連々続鋳造方法。 - 前記連続鋳造装置は、鋳型に溶鋼を供給するタンディッシュを有しているものであって、前記前チャージの減速操作の終了を、タンディッシュから鋳型への前チャージ供給を停止した時点としていることを特徴とする請求項1に記載の異鋼種の連々続鋳造方法。
- 前記発熱パウダの装入量を3〜9kgとしていることを特徴とする請求項1又は2に記載の異鋼種の連々続鋳造方法。
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