本発明では、トナー粒子となる原料粉体をコアンダ効果により少なくとも微粉体、中粉体及び粗粉体に分級することにより、粒径が小さいシャープな粒度分布を有する静電荷像現像用トナー粒子を、高精度に安定して製造することができる。
トナー粒子となる原料粉体は着色樹脂粉体であり、これは粉砕法により調整されても良く、重合法により調整されても良い。
以下に、粉砕法または重合法による、一般的なトナー粒子製造用の着色樹脂粉体を調整する方法、及びトナー粒子の製造方法について説明する。
先ず、粉砕法によってトナー粒子を得る一般的な製造手順について説明する。先ず、原料配合混合工程で、トナーを構成する材料として、少なくとも、結着樹脂、着色剤、必要に応じて荷電制御剤等の添加剤を所定量秤量して配合して混合する。この際に使用する混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウターミキサー等がある。
次いで、上記の混合したトナー原料を溶融混練して樹脂類を溶融し、その中に着色剤等を均一に分散させる。この溶融混練工程では、例えば、加圧ニーダー或いはバンバリーミキサー等のバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができる。近年では、連続生産ができる等の優位性から、1軸または2軸押出機を用いる連続式が主流となっており、例えば、神戸製鋼所社製のKTK型2軸押出機、東芝機械社製のTEM型2軸押出機、ケイ・シー・ケイ社製の2軸押出機、池貝鉄工社製のPCM型2軸押出機或いはブス社製のコ・ニーダー等が一般に使用されている。
次に、上記のようにしてトナー原料を溶融混練することによって得られる着色樹脂組成物は、溶融混練後、2本ロール等で圧延され、水等による冷却工程を経て冷却される。そして、上記で得られた着色樹脂組成物の冷却物は、次いで、粉砕工程で、所望の粒径にまで粉砕され着色樹脂粉体を得る。粉砕工程では、先ず、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミル等で粗粉砕され、更に、ジェットミル、高速ローター回転式ミル等で細粉砕される。粉砕工程では、通常、このような2段以上の工程で段階的に所定のトナー粒度まで粉砕される。近年では、省エネルギー等の優位性から、高速回転するローターで原料粉体を粉砕する機械式粉砕機が注目されており、例えば、ホソカワミクロン(株)製の粉砕機イノマイザー、川崎重工業(株)製の粉砕機クリプトロン、或いは、ターボ工業(株)製のターボミル等が一般に使用されている。
更に、上記のような方法で粉砕された着色樹脂粉体は、慣性分級方式のエルボジェット、等の分級機を用いて分級されて、平均粒子径3乃至15μmの所望のトナー粒子を得る。尚、この分級工程で発生した粗粉は、再度粉砕工程に戻して粉砕する。また、分級工程で発生した微粉は、トナー原料の配合工程に戻して再利用してもよい。
以下、上記粉砕法によるトナー粒子製造の際の、トナー粒子形成材料である結着樹脂及び着色剤について説明する。トナー粒子を構成する結着樹脂としては、通常のトナーに用いられているあらゆる樹脂を使用することができるが、例としては、以下のようなものが挙げられる。
加熱定着用トナーの場合は、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエン等のスチレン及びその置換体の単独重合体;スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体及びスチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体等のスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂及び石油系樹脂等が使用できる。これらの中でも、スチレン系共重合体が特に好ましい。
上記のスチレン系共重合体を形成するスチレンモノマーに対するコモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル及びアクリルアミド等のような二重結合を有するモノカルボン酸若しくはその置換体;アクリル酸、メタクリル酸、α−エチルアクリル酸及びクロトン酸等のアクリル酸或いはそのα−或いはβ−アルキル誘導体、フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸及びそのモノエステル誘導体または無水マレイン酸等が挙げられる。このようなモノマーは、単独で、或いは、混合してスチレンモノマーと共重合させることにより所望の共重合体が得られる。
上記コモノマーの中でも、特に不飽和ジカルボン酸のモノエステル誘導体を用いることが好ましい。より具体的には、例えば、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、マレイン酸モノアリル、マレイン酸モノフェニル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル及びフマル酸モノフェニル等のようなα−或いはβ−不飽和ジカルボン酸のモノエステル類;例えば、n−ブテニルコハク酸モノブチル、n−オクテニルコハク酸モノメチル、n−ブテニルマロン酸モノエチル、n−ドデセニルグルタル酸モノメチル及びn−ブテニルアジピン酸モノメチルエステル等のようなアルケニルジカルボン酸のモノエステル類;例えば、フタル酸モノメチルエステル、フタル酸モノエチルエステル及びフタル酸モノブチルエステル等のような芳香族ジカルボン酸のモノエステル類;例えば、塩化ビニル、酢酸ビニル及び安息香酸ビニル等のようなビニルエステル類;例えば、エチレン、プロピレン及びブチレン等のようなエチレン系オレフィン類;例えば、ビニルメチルケトン及びビニルヘキシルケトン等のようなビニルケトン類;例えば、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル及びビニルイソブチルエーテル等のようなビニルエーテル類等のビニル単量体が、単独、若しくは、組み合わせて用いられる。
重合の際に用いることのできる架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。このようなものとしては、例えば、ジビニルベンゼンおよびジビニルナフタレン等のような芳香族ジビニル化合物;例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート及び1,3−ブタンジオールジメタクリレート等のような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;例えば、ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド及びジビニルスルホン等のジビニル化合物或いは3個以上のビニル基を有する化合物等を単独若しくは混合物で使用することができる。また、これらの材料からなる結着樹脂の製造方法等は、いかなるものでもかまわない。
本発明で用いるトナー粒子は、上記に挙げた結着樹脂に着色剤が分散・含有されて構成されるが、着色剤としては、カーボンブラックやチタンホワイトの他、あらゆる顔料及び/又は染料を用いることができる。また、本発明のトナーの製造方法によってカラートナーを製造する場合は、着色剤として、例えば、下記のイエロー着色剤、マゼンタ着色剤及びシアン着色剤等が挙げられる。
イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物或いはアリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181及び191等が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物或いはペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221及び254が特に好ましい。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物或いは塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62及び66等が特に好適に利用できる。
これらの着色剤は、単独または混合し、更には固溶体の状態で用いることができる。これらの着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHP透明性、トナー中への分散性の点から適宜に選択して使用できる。また、トナー中における着色剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して1乃至20質量部とすることが望ましい。
粉砕法によるトナー粒子の製造方法において、磁性体を着色剤として用いて磁性トナー粒子を製造する場合には、以下に挙げるような磁性体を使用することができる。即ち、トナー粒子に含有させる磁性体としては、強磁性体或いは強磁性の元素を含む合金または化合物の粉末が好ましい。例えば、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン及び亜鉛等の合金や化合物或いはその他の強磁性合金等の従来より磁性材料として知られているもの等を挙げることができる。本発明において使用する磁性体としては、窒素ガス吸着法によるBET比表面積が1乃至40m2/g、更には2乃至30m2/gのものが好ましい。また、平均粒径が0.05乃至1μm、好ましくは0.1乃至0.6μmの磁性体を使用することが好ましい。また、これらの磁性体の添加量は結着樹脂100部に対して60乃至200質量部であり、好ましくは80乃至150質量部を含有させるのがよい。
粉砕法により得られるトナー粒子には、必要に応じて荷電制御剤をトナー粒子に配合(内添)、またはトナー粒子と混合(外添)することができる。荷電制御剤をトナー粒子中に含有させることによって、現像システムに応じた最適の荷電量のコントロールが可能となる。特に、粒度分布と荷電量とのバランスをより安定させたトナー粒子とすることが可能となる。この際に使用するトナー粒子を負帯電性に制御するものとしては、例えば、下記の物質が挙げられる。先ず、トナー粒子が磁性トナーである場合は、有機金属錯体やキレート化合物が有効であり、モノアゾ金属錯体、アセチルアセトン金属錯体、芳香族ハイドロキシカルボン酸或いは芳香族ダイカルボン酸系の金属錯体が挙げられる。その他、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸或いはその金属塩、無水物、エステル類またはビスフェノール等のフェノール誘導体類等が挙げられる。
粉砕法により製造されたトナーがカラートナーである場合は、特に、無色で、トナーの帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤を用いることが好ましい。このような具体的な化合物としては、ネガ系のものでは、例えば、サリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸またはそれらの誘導体の金属化合物、スルホン酸基やカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物或いはカリークスアレーン等が挙げられる。ポジ系のものとしては、例えば、四級アンモニウム塩または該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物或いはイミダゾール化合物等が挙げられる。
これらの荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.5乃至10質量部の割合で含有させることがよい。しかしながら、荷電制御剤を添加することは必須ではない。例えば、二成分現像方式の画像形成方法に用いられるトナー粒子は、トナー粒子の帯電にキャリヤとの摩擦帯電が利用されるし、また、非磁性一成分ブレードコーティング現像方法に用いるトナー粒子の場合にも、トナー粒子とブレード部材やスリーブ部材との摩擦帯電が積極的に利用されてトナー粒子を帯電させるので、トナー粒子には必ずしも荷電制御剤を含ませる必要はない。
粉砕法によるトナー粒子の製造においては、トナー粒子の構成材料として、必要に応じて1種或いは2種以上のワックスを用いることができる。この際に用いることのできるワックスとしては次のものが挙げられる。例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス及びパラフィンワックス等の脂肪族炭化水素ワックス或いは酸化ポリエチレンワックス等の脂肪族炭化水素ワックスの酸化物またはそれらのブロック共重合物;例えば、カルナバワックス、サゾールワックス及びモンタン酸エステルワックス等の脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、或いは、脱酸カルナバワックス等の脂肪酸エステル類の一部または全部を脱酸化したワックス等が挙げられる。
更に、パルチミン酸、ステアリン酸及びモンタン酸等の飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナン酸等の不飽和脂肪酸類、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール及びメリシルアルコール等の飽和アルコール類;ソルビトール等の多価アルコール類;リノール類アミド、オレイン酸アミド及びラウリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド及びN,N’−ジオレイルセバシン酸アミド等の不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’−ジステアリルイソフタル酸アミド等の芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸マグネシウム等の脂肪族金属塩(一般に、金属石鹸と呼ばれている物);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸等のビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリド等の脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加等によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物等が挙げられる。これらのワックスを用いる場合の添加量は、結着樹脂100質量部に対して0.1乃至45質量部とすることが望ましい。
次に、重合法によってトナー粒子を製造する方法について、種々の重合法のうち、懸濁重合法によるトナー粒子の製造を例にとって説明する。先ず、重合性単量体中に、低軟化物質からなる離型剤、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤及びその他の添加剤を加え、ホモジナイザー或いは超音波分散機の如き分散機によって均一に溶解または分散せしめた重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水相(水系分散媒体)中に、通常の撹拌機、例えば、ホモミキサーまたはホモジナイザーにより分散せしめて造粒する。この際、重合性単量体組成物の液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように、上記撹拌機の撹拌速度及び時間を調整して造粒することが好ましい。
造粒後は、水相中の分散安定剤の作用によって粒子状態が維持され、且つ、粒子の沈降が防止される程度の撹拌を行えばよい。懸濁重合法においては、この造粒された重合性単量体組成物を、その後に重合して着色樹脂粒子を含有するスラリーを得るが、その際の重合温度は、40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行う。また、反応後半に昇温してもよく、更に、トナー定着時の臭いの原因等となる未反応の重合性単量体、副生成物等を除去する為に、重合反応の後半、又は反応終了時に、水系媒体を一部留去してもよい。更に、重合反応終了後に生成した着色樹脂粒子を含有するスラリーを洗浄、ろ過により回収し、乾燥工程を経て着色樹脂粉体を得る。上記した懸濁重合法においては、通常、重合性単量体組成物100質量部に対して、水300〜3000質量部を分散媒体として使用することが好ましい。
更に、上記のような方法で調整された着色樹脂粉体は、慣性分級方式のエルボジェット、等の分級機を用いて分級されて、平均粒子径3乃至15μmの所望のトナー粒子を得る。尚、この分級工程で発生した微粉及び粗粉は、再度トナー原料の配合工程に戻して再利用してもよい。
上記した懸濁重合法等の重合法によってトナー粒子を製造する際に用いられる重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体を好適に用いることができる。ビニル系の重合性単量体としては、下記に挙げるような単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。
単官能性重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン及びp−フェニルスチレンの如きスチレン系重合性単量体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート及び2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートの如きアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート及びジブチルフォスフェートエチルメタクリレートの如きメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル及びギ酸ビニルの如きビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル及びビニルイソブチルエーテルの如きビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン及びビニルイソプロピルケトンの如きビニルケトン類等が挙げられる。
また、多官能性重合性単量体としては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス[4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス[4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ビス[4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル]プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン及びジビニルエーテル等が挙げられる。
上記した重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、下記に例示するような、油溶性重合開始剤及び/又は水溶性重合開始剤が挙げられる。油溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−(アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)及び2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルの如きアゾ化合物;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド及びクメンヒドロパーオキサイドの如きパーオキサイド系開始剤が挙げられる。
水溶性重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄及び過酸化水素等が挙げられる。これらは、単独で、または併用して使用することができる。また、上記に挙げたような重合開始剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して0.5乃至20質量部で使用することが好ましい。
上記で説明した懸濁重合法によりトナー粒子を製造するときに用いる分散剤としては、例えば、無機系の分散剤としては、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ或いはアルミナ等を使用することができるる。また、有機系の分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩或いはデンプン等を使用することができる。これら分散剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2乃至2.0質量部の範囲で使用することが好ましい。
これら分散剤は、市販のものをそのまま水等の分散媒体に添加して用いることができるが、より細かい均一な粒径の分散剤を有する分散媒体を使用する場合には、水等の分散媒体中で高速撹拌した状態で、上記に挙げた無機化合物を生成させたものを用いることができる。例えば、分散剤としてリン酸カルシウムを用いる場合に、高速撹拌下において、リン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液とを混合することにより懸濁重合法において好適に使用できる分散剤を得ることができる。更に、この分散剤の生成時に界面活性剤を0.001乃至0.1質量%添加しておくと、より微細化した分散剤を有する分散媒体が得られる。界面活性剤としては、市販の、ノニオン型、アニオン型、カチオン型の各界面活性剤を利用できる。具体的には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウムまたはオレイン酸カルシウム等が好ましく用いられる。
上記した懸濁重合法等の重合法によってトナー粒子を製造する場合には、トナー定着時の定着部材からの離型性の向上、或いは、定着性の向上の点から、重合性単量体組成物中に、更に低軟化点物質を添加させることで、トナー粒子中に低軟化点物質を含有させることができる。その際に用いる低軟化点物質としては、例えば、パラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体或いはカルナバワックス及びその誘導体等が挙げられる。尚、誘導体には酸化物や、ビニル系モノマーとのブロック共重合体及びグラフト変性物が挙げられる。その他、長鎖アルコール、長鎖脂肪酸、酸アミド、エステルワックス、ケトン、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス或いはペトロラクタム等も、場合により低軟化点物質として使用できる。
これらの低軟化点物質の添加量は、トナーの結着樹脂100質量部に対して2乃至40質量部とすることが好ましい。より好ましくは、5乃至35質量部の範囲で配合するのがよい。低軟化点物質の配合量が、上記の下限よりも少ないと、オフセット防止効果が低下し易く、上限を超えると、耐ブロッキング効果が低下し、耐オフセット効果にも悪影響を与え易く、ドラム融着或いはスリーブ融着を起こし易く、特に、懸濁重合法によるトナー粒子の場合には、生成されるトナーの粒度分布が広くなる傾向にあり、好ましくない。
また、重合法に用いられる着色剤としてはカーボンブラックおよび鉄黒の他、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアンの各着色剤が好適に用いられる。イエロー着色剤としては、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物或いはアリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181及び191等が好適に用いられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アンスラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物及びペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221或いは254が特に好ましい。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アンスラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62或いは66等が特に好適に利用できる。
これらの着色剤は、単独または混合して固溶体の状態で用いることができる。重合法によってトナー粒子の製造方法で用いる着色剤は、色相角、彩度、明度、耐候性、OHPフィルム上の透明性及びトナー粒子中への分散性の点から選択できる。該着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部当り、2乃至20質量部とするのが一般的である。
重合法によって磁性トナーを製造する場合には、トナー粒子中に磁性粉を含有せしめる。この際に使用する磁性粉としては、磁場の中に置かれて磁化される物質が用いられる。このようなものとしては、例えば、鉄、コバルト及びニッケル等の強磁性金属の粉末、マグネタイト或いはフェライト等の化合物が挙げられる。特に、重合法によってトナー粒子を用いる場合には、磁性体の持つ重合阻害性や水相移行性に注意を払う必要がある。従って、好ましくは、表面改質、例えば、重合阻害のない物質による疎水化処理を施した磁性粉を用いることが好ましい。
更に、重合法によって得られるトナー粒子の帯電性を制御するために、トナー粒子中に荷電制御剤を添加しておくことが望ましい。この際に使用する荷電制御剤としては、公知のもののうち、重合阻害性や水相移行性の殆どないものを用いることが好ましく、このようなものとしては、例えば、正荷電制御剤としては、ニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、四級アンモニウム塩、グアニジン誘導体、イミダゾール誘導体及びアミン系またはポリアミン系化合物等が挙げられる。また、負荷電制御剤としては、例えば、含金属サリチル酸系化合物、含金属モノアゾ系染料化合物、尿素誘導体、スチレン−アクリル酸共重合体及びスチレン−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの荷電制御剤の添加量としては、0.1乃至10質量%の範囲とすることが好ましい。
本発明のトナー粒子の製造方法においては、上記で説明した粉砕法または重合法によって得られる着色樹脂粉体(原料粉体)は、少なくとも微粉体、中粉体及び粗粉体に分級処理が行われる。
次に本発明を利用して、トナー粒子製造用の着色樹脂粉体を用いて分級を行う具体例を、添付図面に基づいてより詳細に説明する。但し、本発明によるトナー粒子の製造方法としては、これに限定されるものではない。
本発明に利用した気流式分級装置の一例として図1(断面図)、図2(分級域立体図)及び図3(原料粉体導入ノズル部拡大図)に示す形式の装置を一具体例として例示する。
図1,図2及び図3において、側壁22及び23は分級室の一部を形成し、分級エッジブロック24及び25は分級エッジ17及び18を具備している。分級エッジ17及び18は、軸17a及び18aを中心にして、回動可能であり、分級エッジを回動して分級エッジ先端位置を変えることができる。各分級エッジブロック24及び25は上下に設置位置をスライドさせることが可能であり、それにともなってそれぞれのナイフエッジ型の分級エッジ17及び18も上下にスライドする。この分級エッジ17及び18により、分級室32の分級ゾーンは3分画されている。
原料粉体を導入するための原料供給口40を原料供給ノズル16の最後端部に有し、該原料供給ノズル16の後端部に高圧エアー供給ノズル41と原料粉体導入ノズル42とを有し且つ分級室32に開口部を有する原料供給ノズル16を側壁22の右側に設け、該原料供給ノズル16の下部接線の延長方向に対して長楕円弧を描く様にコアンダブロック26が設置されている。分級室32の左部ブロック27は、分級室32の右側方向にナイフエッジ型の入気エッジ19を具備し、更に分級室32の左側には分級室32に開口する入気管14及び15を設けてある。また、図1に示すように入気管14及び15には、ダンパーのごとき第1気体導入調節手段20及び第2気体導入調節手段21と静圧計28及び静圧計29を設けてある。
分級エッジ17,18及び入気エッジ19の位置は、被分級処理原料であるトナー粒子の種類及び所望の粒径により調整される。
また、分級室32の下面、右側及び上面にはそれぞれの分画域に対応させて、分級室内に開口する排出口11,12及び13を有し、排出口11,12及び13にはパイプの如き連通手段が接続されており、それぞれにバルブ手段のごとき開閉手段を設けてよい。
原料供給ノズル16は直角筒部と角錘筒部とから成り、直角筒部の内径と角錘筒部の最も狭い箇所の内径の比を20:1から1:1、好ましくは10:1から2:1に設定すると、良好な導入速度が得られる。
また、原料粉体導入ノズル42内壁には、整流作用を起こし、ノズル内のトナー粒子融着を低減するために二次エアーをカーテン状に噴出させるための、二次エアー導入路が設けられている。
以上のように構成してなる多分割分級域での分級操作は、例えば次のようにして行なう。すなわち、排出口11,12及び13の少なくとも1つを介して分級室内を減圧し、分級室内に開口部を有する原料供給ノズル16中を該減圧によって流動する気流と高圧エアー供給ノズル41から噴射される圧縮エアーのエゼクター効果により、好ましくは流速10〜350m/秒の速度で粉体を原料供給ノズル16を介して分級室に噴出し、分散する。
分級室に導入された粉体中の粒子はコアンダブロック26のコアンダ効果による作用と、その際流入する空気のごとき気体の作用とにより湾曲線を描いて移動し、それぞれの粒子の粒径及び慣性力の大小に応じて、大きい粒子(粗粒子)は気流の外側、すなわち分級エッジ18の外側の第1分画、中間の粒子は分級エッジ18と17の間の第2分画、小さい粒子は分級エッジ17の内側の第3分画に分級され、分級された大きい粒子は排出口11より排出され、分級された中間の粒子は排出口12より排出され、分級された小さい粒子は排出口13よりそれぞれ排出される。
本装置例による粉体の分級において、分級点は粉体が分級室32内へ飛び出す位置であるコアンダブロック26の下端部分に対する分級エッジ17及び18のエッジ先端位置によって主に決定される。さらに、分級点は分級気流の吸引流量あるいは原料供給ノズル16からの粉体の噴出速度等の影響を受ける。
通常、本発明の気流式分級装置は、相互の機器をパイプのごとき連通手段で連結し、装置システムに組み込まれて使用される。そうした装置システムの好ましい例を図6に示す。図6に示す一体装置システムは、3分割分級装置1(図1,図2及び図3に示される分級装置)、定量供給機2、振動フィーダー3、捕集サイクロン4、捕集サイクロン5、捕集サイクロン6を連通手段で連結してなるものである。
この装置システムにおいて、粉体は、適宜の手段により、定量供給機2に送り込まれ、ついで振動フィーダー3を介し、原料供給ノズル16により3分割分級装置1内に導入される。導入に際しては、10〜350m/秒の流速で3分割分級装置1内に粉体を導入する。3分割分級装置1の分級室を構成する大きさは通常[10〜50cm]×[10〜50cm]なので、粉体は0.1〜0.01秒以下の瞬時に3種類以上の粒子群に分級し得る。そして、3分割分級装置1により、大きい粒子(粗粒子)、中間の粒子、小さい粒子に分級される。その後、大きい粒子は排出導管11aを通って、捕集サイクロン6に送られ回収される。中間の粒子は排出導管12aを介して系外に排出され捕集サイクロン5で捕集される。小さい粒子は、排出導管13aを介して系外に排出され捕集サイクロン4で捕集される。捕集サイクロン4,5,6は粉体を原料供給ノズル16を介して分級室に吸引導入するための吸引減圧手段としての働きをすることも可能である。
本発明のトナー粒子の製造方法は、以上例示したような基本構成を有する気流式分級装置を用いて、原料供給ノズル16から供給される原料粉体をコアンダ効果により少なくとも微粉体、中粉体及び粗粉体に分級するに際し、分級エッジ17及び18の先端を所定位置に規定しているものである。即ち、図5に示すように、コアンダブロック26の原料供給ノズル16側の側面に対し、該コアンダブロックの弧の中心Oと、中粉体と微粉体とに分画するための第1分級エッジ17の先端とを結んだ線とがなす角度αを、52°<α<72°(特に好ましくは54°<α<68°)の範囲内とし、コアンダブロック26の原料供給ノズル16側の側面に対し、該コアンダブロックの弧の中心Oと、粗粉体と中粉体とに分画するための第2分級エッジ18の先端とを結んだ線とがなす角度βを、28°<β<48°(特に好ましくは31°<β<47°)の範囲内としているものである。
上記の範囲内に各分級エッジの先端位置を規定することにより、原料粉体の有する密度や粒径や粉体凝集性といった粉体の固有物性値に影響を受けることなく、常時安定した状態での高精度な分級を行うことが可能である。一方、上記角度αが52°以下の場合には良好な中粉体は得られるが、分級収率が悪化し、上記角度αが72°以上の場合には微紛体が多量に混入する影響で、良好中紛体が得られない。また、上記角度βが28°以下の場合には粗紛体が多量に混入する影響で、良好中紛体が得られず、上記角度βが48°以上の場合には良好な中粉体は得られるが、分級収率が悪化する。
また、本発明においては、分級エッジ17及び18の先端角度θ1及びθ2は、いずれも27°以上37°以下であるのが好ましく、30°以上35°以下であるのが特に好ましい。上記角度θ1及びθ2が27°未満の場合には、エッジの機械的強度、加工精度、等に対して困難が発生する場合がある。また上記角度θ1及びθ2が37°よりも大きい場合には、分級エッジ先端部に融着付着が発生し、分級精度や分級収率の悪化につながる。
本発明の気流式分級装置は、特に電子写真法による画像形成法に用いられるトナー粒子又はトナー粒子用着色樹脂粉体を分級する場合に有効である。
まず、本発明における、分級性能の評価方法について説明する。
本発明では分級収率、分級精度の2点についての評価を行い、総合評価としてA(非常に良好)〜D(悪い)のランク付けを行った。
(分級収率計算方法)
分級収率は以下の式により計算する。
分級収率(%)=分級により得られた中粉体の量(kg)/分級装置に供給した着色樹脂粉体の量(kg)
(分級精度の評価基準)
本発明においては、分級により得られる中粉体の粒度分布の目標を以下のように定め、以下の範囲条件を全て満足する場合は、「良」と評価し、またいずれか一つでも満足しない場合には「悪」と評価した。
重量平均粒径 :5.5μm以上 6.2μm以下
3.17μm以下 :17.0個数%以下
10.08μm以上:2.0体積%以下
(総合評価の基準)
総合評価は以下の基準で評価した。
A(非常に良好) :分級収率が、80%以上で良好な中粉体が得られる
B(良好) :分級収率が、70%以上、80%未満で良好な中粉体が得られる
C(若干劣るが品質上問題なし):分級収率が、60%以上、70%未満で良好な中粉体が得られる
D(悪い 生産性に問題あり) :分級収率が、60%未満ではあるが良好な中粉体が得られる
E(非常に悪い 品質上問題あり):収率にかかわらず、良好な中粉体が得られない
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
(実施例1)
・スチレン−ブチルアクリレートジビニルベンゼン共重合体 100重量部
(モノマー重合重量比80.0/19.0/1.0、重量平均分子量Mw35万)
・磁性酸化鉄(平均粒径0.18μm) 100重量部
・ニグロシン 2重量部
・低分子量エチレン−プロピレン共重合体 4重量部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)でよく混合した後、温度150℃に設定した2軸混練機(PCM−70型、池貝鉄工(株)製)にて混練した。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、トナー粒子製造用の粗砕物を得た。該粗砕物を衝突式気流粉砕機で微粉砕し、重量平均5.89μmの着色樹脂粉体が得られ、真密度が1.73g/cm3であった。
上記着色樹脂粉体の真密度は、本発明において、次の測定装置を用いて行なった。即ち、測定装置としてはマイクロメトリックス アキュピック1330(島津製作所製)を用い、着色樹脂粉体を5g計り取って真密度を求めた。
この得られた着色樹脂粉体を供給機2を介して、振動フィーダー3及び原料供給ノズル16(原料粉体供給部42、高圧エアー供給ノズル41及び変形筒部43)を介して310kg/hの割合でコアンダ効果を利用して粗粉体、中粉体及び微粉体の3種に分級するために、原料供給ノズルを気流式分級装置の上面部に具備する、図5に示す気流式分級装置に導入した。ちなみに該気流式分級装置には、本発明の特徴である、図10に示すような先端角度θを32°に設定されたエッジを、第1分級エッジ、第2分級エッジそれぞれに用いた。
導入に際しては排出口11、12、13に連通している捕集サイクロン4、5、6の吸引減圧による系内の減圧から派生する吸引力と原料供給ノズル16に取付けた高圧エアー導入管41のインジェクションエアー導入管31からの圧縮空気を利用した。
また、分級域の形状を変更するために、各々の設定角度を
α=62°(コアンダブロック26の原料供給ノズル側の側面に対して、コアンダブロック26の弧の中心Oと、分級エッジ17の先端とを結んだ線とがなす角度)
β=38°(コアンダブロック26の原料供給ノズル側の側面に対して、コアンダブロック26の弧Oの中心と、分級エッジ18の先端とを結んだ線とがなす角度)
θ1=32°(分級エッジ17の先端の角度)
θ2=32°(分級エッジ18の先端の角度)
として分級を行なった。
導入された着色樹脂粉体は0.1秒以下の瞬時に分級された。分級された中粉体は重量平均粒径が5.99μm(粒径3.17μm以下の粒子を14.3個数%含有し、粒径10.08μm以上の粒子を0.3体積%含有する)のシャープな分布を有する中粉体を分級収率(投入された原料粉体の全量に対する最終的に得られた中粉体との比率)84.5%で得ることができ、トナー粒子用として優れた性能を有していた。尚、この分級された粗粉は前記粉砕工程に再度循環した。
トナー粒子の粒度分布は種々の方法によって測定できるが、本発明においては、次の測定装置を用いて行なった。
即ち、測定装置としてはコールターカウンターTA−II型あるいはコールターマルチサイザーII(コールター社製)を用いた。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて約1%NaCl水溶液を調整する。例えば、ISOTONR−II(コールターサイエンティフィックジャパン社製)が使用できる。測定法としては前記電解液水溶液100〜150ml中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5ml加え、さらに測定資料を2〜20mg加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散機で約1〜3分間分散処理を行ない、前記測定装置により、アパチャーとして100μアパチャーを用い、トナー粒子の体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから、本発明の係るところの体積分布から求める重量基準の重量平均径を求めた。
(実施例2)
実施例1と同様の表1に示す着色樹脂粉体を用いて、各分級エッジの先端角度及び、分級域の設定角度を表1に示す通りに設定し、原料供給ノズルを気流式分級装置の側面部に具備する図7に示す気流式分級装置にて分級を行なった。
その結果、表2に示すように、いずれもシャープな分布を有する中粉体を効率良く得ることができ、トナー粒子用として優れた性能を有していた。
(実施例3〜5)
実施例1と同様の表1に示す着色樹脂粉体を用いて、各分級エッジの先端角度及び、分級域の設定角度を表1に示す通りに設定した他は、実施例1と同様の装置システムで分級を行なった。
その結果、表2に示すように、いずれもシャープな分布を有する中粉体を効率良く得ることができ、トナー粒子用として優れた性能を有していた。
(比較例1〜4)
実施例1と同様の表1に示す着色樹脂粉体を用いて、各分級エッジの先端角度及び、分級域の設定角度を表1に示す通りに設定した他は、実施例1と同様の装置システムで分級を行なった。得られた中粉体の粒度分布・収率等は表2に示す通りであった。
(比較例5)
実施例1と同様の表1に示す着色樹脂粉体を用いて、各分級エッジの先端角度及び、分級域の設定角度を表1に示す通りに設定し、原料供給ノズルを気流式分級装置の側面部に具備する図7に示す気流式分級装置にて分級を行なった。得られた中粉体の粒度分布・収率等は表2に示す通りであった。
以上の結果から明らかなように、原料供給ノズルから供給される原料粉体をコアンダ効果により少なくとも微粉体、中粉体及び粗粉体に分級するに際し、中粉体と微粉体とに分画するための第1分級エッジの先端位置と、粗粉体と中粉体とに分画するための第2分級エッジの先端位置を、本発明のように規定することにより、常時安定した状態での高精度な分級を行うことができる。