JP2006219401A - 受容体を内包した分子会合体結晶とその製造方法およびその利用方法 - Google Patents

受容体を内包した分子会合体結晶とその製造方法およびその利用方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、リン脂質二重膜中で一定の立体構造を保持する受容体について、回折現象を利用した立体構造解析を可能にする結晶およびその製造方法及びこれを利用した立体構造解析方法に関する。
【解決手段】互いに会合する会合ユニットと該会合ユニットに結合する受容体を含む会合体からなる結晶であって、該会合体の内部がリン脂質二重膜で覆われた結晶。
【選択図】図3

Description

本発明は、リン脂質二重膜中で一定の立体構造を保持する受容体について、回折現象を利用した立体構造解析を可能にする結晶およびその製造方法及びこれを利用した立体構造解析方法に関する。
(受容体の立体構造解析について)
ヒトゲノム計画により、ヒトの遺伝子総数は約3.3万という予測がなされたが、この中で細胞情報認識機構に基づくゲノム創薬において、最も実績があり多くの研究者、企業が取り組んでいる標的分子ファミリーがG蛋白質共役型受容体(G-protein coupled receptor、GPCR)を代表とする薬物受容体である。ホルモンなどの生理活性物質の多くは、受容体に結合することにより細胞に情報を伝達している。その中でもG蛋白質と共役して情報伝達する受容体群がG蛋白質共役型受容体(GPCR)である。これらの受容体は細胞膜を7回繰り返して貫通するという特徴的な共通構造をもっているが、これまでは、作用する物質(リガンド)が先に見つかっていて、次に対応するGPCRが同定されてきた。最近、この疎水性アミノ酸クラスターが7回リピートする特徴的な構造を手掛かりに、ゲノムDNAやcDNAの配列解析から直接GPCR遺伝子をin silicoで見出すことが可能になってきた。しかしこれらの多くはリガンドが未知であり、「オーファン受容体」とも呼ばれる。ヒトゲノム全体でGPCRは700から800近く存在している可能性が示唆されているが、リガンド既知の受容体が約250程度であり、残りはオーファン受容体である。したがってGPCRが関与している生理現象の大部分が未開拓の領域といえる。一方、GPCRは疾患と関連している場合も多いので、酵素と並んで、これまで医薬品の研究開発のための主要な標的の一つであった。実際、現在市販されている医薬品の中で受容体を標的とする薬物は非常に多く、その対象疾患の領域は中枢神経系、内分泌系、循環器、呼吸器、泌尿器、消化器、生殖器など多岐にわたっている。従ってオーファン受容体の研究は多様な生理現象の調節機構を理解するための基礎研究としてだけでなく、応用研究の面からも極めて重要であり、この様な状況から産学を問わずこの研究領域では熾烈な競争が展開されている。
従来薬の作用を考える上での概念であった受容体やイオンチャネルの存在が分子レベルでその実体が同定され、更にその受容体、チャネルを介したセカンドメッセンジャー、転写因子、一群の遺伝子活性化といった細胞内の様々な情報伝達経路を通じて細胞生理作用がコントロールされる“細胞情報認識”の分子メカニズムの解明が20世紀後半飛躍的に延びた。この基礎研究に基づき、シグナル分子、分子間相互作用、情報伝達機構を標的とする合目的な創薬アプローチが可能となり、細胞情報認識を特異的に制御して疾患を引き起こす生理活性を調節するための治療法に関する研究が活発になされ、現在世界の臨床で頻用されている薬物の大半の部分を占めるほどの成功を納めている。今後もこの方向の創薬アプローチは引き続き進展することは明らかであり、また細胞情報認識機構に基づく各種の技術開発と相まって、ますます活発な創薬研究開発が期待されており、細胞情報認識機構に基づくゲノム創薬は、ポスト・ゲノム時代のFunctional Genomicsにおける創薬アプローチの良いモデルである。
米国ベンチャー企業、製薬企業を中心に、GPCR創薬には多くのアプローチが試みられている。その手法は、バイオインフォマティックス、構造生物学などによるいわゆる“DRY BIOLOGYからのアプローチ”と従来の分子生物、細胞生物学研究に基づく、蛋白、細胞、個体レベルでのいわゆる“WET BIOLOGYからのアプローチ”大きく分けられるが、これらの手法は別々のものではなく相互に補完することで創薬ゴールを目指している。“DRY BIOLOGYからのアプローチ”は膜蛋白の放射光解析などの構造解析等が技術的に克服され情報が集積しつつあり、近未来で生物情報と統合されることが期待される。
さて、蛋白質立体構造解析の主たる方法として、Distance Geometry法に基づくNMRによるもの、極低温電子線回折法に基づく電子顕微鏡によるもの、そして、蛋白質の結晶を作成し、この回折現象を利用したX線結晶構造解析法がある。NMR法は溶液中での立体構造解析が可能であるが、取り扱い可能な分子量の制限があり、ヒトの蛋白質の大部分は対象外となっている。また、電子顕微鏡法は、二次元結晶中での膜蛋白質の解析に特に、効力を発揮しているが、その二次元結晶の作成が極めて難しく、まだ、数十例に留めており、とても、すべての蛋白質の解析に適用できる状態ではない。最後のX線結晶構造解析は、結晶さえできれば、分子量に対する制限は事実上なく、分解能も1Åを切るものも報告され、これまでの解析例が数万種類と他の方法を圧倒し、立体構造解析法の中心にあると考えられる。このX線結晶解析法から得られた立体構造情報は、医薬のほかに、食品などいわゆるバイオ関連産業および、化学系の生体触媒を利用する関連産業に与える影響は絶大と考えられる。
(X線結晶構造解析の課題 結晶化)
Naomi E. Chaye et al., (Acta Cryst D58, 921-927, (2002)) の報告を待つまでもなく、クローニングされた蛋白質のうち10%程度しか構造解析に至っていない。これは、結晶化条件がその蛋白質の表面構造に強く依存しており、しかも、すべての蛋白質で、異なっているため、蛋白質ごとに新たな結晶化条件を探索しなければならない。温度、蛋白質濃度、沈殿剤の種類、pH、精製条件などさまざまな因子が結晶化に影響を与えるので、すぐにひとつの蛋白質の結晶化条件を検討するのに数千から数万におよぶ実験を行わねばならない。このため、実験計画法に則ったスパースマトリクスを適用した結晶化キットにより、その条件検討の数はかなり減少させることができた。さらに、米国ベンチャー企業のSyrrix(J. Structural Biology, 142, (2003), 207-217)が、これら結晶化キットを利用し、完全なオートメーションにより24時間ロボットが結晶化を行っている。それでも、結晶化の過程は難しく、数十例の解析が成功しているに過ぎない。このため、このまま何のイノベーションも行われなければ、ヒトの蛋白質の内90%、2万7千種は構造未知のままとなり、ヒトゲノム解析情報の大部分が無駄になってしまう。また、受容体に関しては、仮に単体の結晶化が可能であったとしても、リン脂質二重膜で一定の構造を保持する受容体の構造を保持しているとは考えられなく、リン脂質二重膜にある受容体の構造は解析されていない。
(X線結晶構造解析の課題 位相問題の解決)
X線結晶構造解析においては、分子の立体構造を波動方程式として捉え振幅と位相の両方を決めることが出来れば、一義的にその解、すなわち分子の立体構造座標を求めることが出来る。振幅は回折像の各指数の黒化度を測定することによって実験的に求められ、これを構造因子と呼ぶ。ところが、X線はほぼ光速で進行するので、その位相は測定することは出来ない。この位相問題を解決するための最も一般的な方法は「同型置換法」と呼ばれる方法である。重原子誘導体を導入していない結晶(Native結晶)に対して、重原子誘導体を導入した結晶(Derivative結晶)が、その格子定数を変えずに得られたとする。重原子は蛋白質等の生体高分子を構成する原子(炭素、窒素、酸素、イオウ、水素等)より遙かに電子数が多くX線散乱能の強く、回折データより計算したパターソン関数から直ちに重原子の結晶中での位置を決定することが出来る。この重原子の位置情報すなわち位相情報から、受容体の位相情報求めることが出来る。求めた強度データと位相データにより、受容体の立体構造を計算で求めることが出来る。重原子が入った結晶を得るための方法として、既に得られた結晶に後から重原子誘導体を導入する方法「ソーキング法」がある。このソーキング法を使った場合では、様々な重原子誘導体を試してみる必要があり、結晶によっては蛋白質間の隙間が狭く導入できない場合も多い。別な方法に重原子誘導体と目的分子を溶液中で相互作用させ結晶化させる「共結晶法」がある。この共結晶法の場合は、一般に重原子のない目的分子単独の場合(Native結晶)と結晶化条件が異なる。そのような場合、別途新たに最適結晶化条件を探索する必要がある。その他に、重原子を導入する手段として、セレノメチオニン導入法がある。これは蛋白質中のメチオニンの代わりにセレノメチオニンを栄養源として大腸菌に与えセレノメチオニン蛋白質を作成方法である。しかし、発現方法が大腸菌等に限定され、またメチオニンを含まない蛋白質には適用できないなど、汎用的な技術になっていない。また、分子置換法が適用できる場合、結晶に重原子を導入する必要なく解析が可能であるが、この方法は分子置換しうる立体構造座標、すなわち解析対象の分子と非常に類似した分子の立体構造座標が入手できる場合に限られ、新規構造を持つ蛋白質には適応出来ない。
(X線結晶構造解析の課題 複合体結晶)
特に、医薬品の開発においては、酵素、受容体、核酸等の医薬品の標的となる生体高分子単独の立体構造情報も有用であるが、それら医薬品標的生体高分子と相互作用する相手の分子、もしくは基質や医薬品候補物質との複合体の立体構造情報は医薬品分子設計上さらに有用である。前節の重原子誘導体の作成法でも述べたように、主な複合体結晶の作成法には、「ソーキング法」と「共結晶法」がある。一部の低分子や前述の重原子誘導体などは、Native結晶中の分子間のわずかな隙間を通り抜けることができるため、前者の「ソーキング法」によって複合体結晶作成可能である。しかし、蛋白質等の高分子は、Native結晶中の分子間の隙間を通り抜けることができないため、一般に「ソーキング法」によって複合体結晶を作成することができない。ソーキング法が適用できない場合は、共結晶法によって複合体結晶を作らざるを得ない。この共結晶法の場合においては、複合体結晶はNative結晶と結晶化条件が異なるため、別途新たに最適結晶化条件を探索する必要が生じる。
(構造解析への融合蛋白質、ウイルスキャプシド蛋白質の利用)
(ウイルスキャプシド内にリン脂質二重膜を持ったウイルスの立体構造解析)
ウイルスの外殻を構成するキャプシドのX線結晶構造解析は以前から数多くなされている。バクテリオファージ、植物ウイルスをはじめ、動物ウイルスでもポリオウイルス、アデノウイルス、B型肝炎ウイルスなどが解析されており、その座標は公開データベースであるProtein Data Bankに登録、公開されている。Abresciaら(非特許文献1)は、リン脂質二重膜をウイルスキャプシドの内側に持った腸内細菌ファージPRD1のX線結晶構造解析結果を報告している。しかし、ウイルスキャプシド内にリン脂質二重膜を持ったウイルスに外来分子を内包させた複合体の結晶の作成例も、X線結晶構造解析例もない。
(融合蛋白質について)
蛋白質を構成しているアミノ酸の一部の配列を他のアミノ酸に置換したり、一部の配列を挿入、もしくは欠損させた、蛋白質の変異体は、遺伝子工学、蛋白質工学等のいわゆるバイオテクノロジーの進歩によって、比較的容易に作成できるようになった。2種類以上の蛋白質について、そのアミノ酸配列をつなげた融合蛋白質も同様に比較的容易に作成できるようになってきた。
(キャプシド蛋白質と外来蛋白質との融合蛋白質の例)
キャプシド蛋白質と外来蛋白質との融合蛋白質は、いわゆるドラッグデリバリーシステムとして、すなわち薬物や蛋白質を目標とする特定の細胞へ送達する担体としてやワクチンとして、数多くの試みがなされている。例えば、Kratzら(非特許文献2)はB型肝炎ウイルスのキャプシド蛋白質と外来蛋白質との融合蛋白質をワクチンとして利用する目的で作成し報告している。しかし、彼らは融合蛋白質の結晶作成を行っておらず、また、X線結晶構造解析も行っていない。ただし、Kratzらは電子顕微鏡を用いて、この融合体蛋白質がキャプシドを構成しているところを観察している。その観察によると残念ながらその立体構造はかろうじて分子全体の像が判別できる程度でしかなかった。また、同様の報告例として吉川らの報告(特許文献1)があるが、彼らの作成したB型肝炎ウイルスのキャプシド蛋白質と外来蛋白質との融合蛋白質は外来蛋白質に対する抗体に反応する。このことから、外来蛋白質は表面に抗体に認識される形で存在し、キャプシドに内包されていないことがわかる。
また、Stockleyらは、バクテリオファージMS2のキャプシドを、いわゆるドラッグデリバリーシステムとして、すなわち薬物を目標とする特定の細胞へ送達する担体として、利用している。バクテリオファージMS2のキャプシドを構成している会合ユニット蛋白質(キャプシド蛋白質)は、少なくとも19塩基からなる特定の配列を含んだRNAと結合し、そのRNAとの結合により、会合体が形成されることが知られている。Stockleyらは、そのRNAにricin A毒素等の蛋白質を共有結合で結合させ、キャプシド内部に外来蛋白質を封じ込めることに成功している(非特許文献3、非特許文献4)。さらに、彼らはキャプシド蛋白質において、キャプシドの外側に突き出たループ部分に外来ペプチド(エピトープ)を挿入している。また、キャプシドの外側に抗体を結合させて、標的の細胞にキャプシドを到達させる工夫をしている。しかし、彼らは融合蛋白質の結晶化には至っていない。そのため、X線結晶構造解析も行っていない。彼らが報告しているキャプシド内部にricin A毒素等の蛋白質を封じ込めたキャプシドにおいては、ricin A毒素蛋白質表面に存在する不特定のリジン残基側鎖とRNAとの間に共有結合を形成させ結合させているため、キャプシド内部に封じ込められたricin A毒素蛋白質は規則正しく配置されない。そのため、ricin A毒素蛋白質も含めた各々の会合ユニットは、互いに同じ立体構造を有していないため、結晶構造解析によりricin A毒素蛋白質の立体構造を明らかにすることは原理的に不可能である。
特開平6−279500号公報 ニコラ・ジー・エー・アブレッシア他(Nicola G. A. Abrescia, et al.)、ネイチャー(Nature)、インサイツ・イントゥ・アッセンブリー・フロム・ストラクチュアル・アナリシス・オブ・バクテリオファージ・ピーアールディー1(Insights into assembly from stractual analysis of bacteriophage PRD1)、英国、2004年、第432巻、p.68-74 ピーター・エー・クラッツ他(Peter A. Kratz, et al.)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proceeding National Academy Science USA)、ネィティブ・ディスプレー・オブ・コンプリート・フォーリン・プロテイン・ドメイン・オン・ザ・サーフェス・オブ・ヘパティティス・ビー・ビロス・キャプシド(Native display of complete foreign protein domains on the surface of hepatitis B virus capsids)、米国、1999年、第96巻、p.1915-1920 ウイリアム・エル・ブラウン他(William L. Brown, et al.)、インタービロロジー( Intervirology )、アールエヌエイ・バクテリオファージ・キャプシド メディエイテド・ドラッグ・デリバリー・アンド・エピトープ・プレゼンテーション(RNA bacteriophage capsid-mediated drug delivery and epitope presentation.)、スイス、2002年、第45巻、p.371−380 ミン・ウー他(Min Wu, el al.)、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjugate Chemistry)、セル スペシフィック・デリバリー・オブ・バクテリオファージ エンキャプシデート・リシン・エー・チェイン(Cell-specific delivery of bacteriophage-encapsidated ricin A chain.)、米国、1995年、第6巻、p.587−595
リン脂質二重膜で一定の立体構造を保持する受容体を結晶化するためには、リン脂質二重膜に受容体を存在させる必要があり、受容体のみを結晶化することでは、受容体の構造解析することは不可能であった。これが受容体のX線結晶構造解析を迅速に実施する上で、大きな障害となっていた。つまり、リン脂質二重膜に受容体を存在させた状態での結晶化方法の開発が課題である。
本発明は以下を提供する。
1.互いに会合する会合ユニットと該会合ユニットに結合する受容体を含む会合体からなる結晶であって、該会合体の内部がリン脂質二重膜で覆われた結晶。
2.該会合ユニットが、強制会合性会合ユニットであることを特徴とする1.に記載の結晶。
3.該会合ユニットより該受容体を除いた場合と同等の結晶化条件で結晶化可能な1.または2.に記載の結晶。
4.該受容体が蛋白質であり、該結合が融合であることを特徴とする1.に記載の結晶。
5.該会合ユニットがウイルスのキャプシド蛋白質若しくはその変異体蛋白質であって該変異体蛋白質を含む会合体を形成可能なアミノ酸配列を有し、該会合体の内部がリン脂質二重膜で覆われていることを特徴とする1.〜4.のいずれかに記載の結晶。
6.該会合ユニットを構成するアミノ酸配列のN末端残基またはC末端残基に該受容体を結合していることを特徴とする5.に記載の結晶。
7.該キャプシド蛋白質がテクティウイルス科ウイルスのキャプシド蛋白質であることを特徴とする5.に記載の結晶。
8.該テクティウイルス科ウイルスが腸内細菌ファージPRD1であることを特徴とする7.に記載の結晶。
9.1.〜8.のいずれかに記載の結晶の製造方法であって、互いに会合する会合ユニットと該会合ユニットに結合する複数の受容体とリン脂質二重膜を同一宿主内で作製させることを特徴とする結晶の製造方法。
10.1.〜9.のいずれかに記載の結晶を用いることを特徴とする受容体の立体構造解析方法。
結晶構造解析は、受容体が結晶中において規則正しく配置された結晶を用いることによってはじめて可能になる。本発明の結晶は、互いに会合する会合ユニットと該会合ユニットに結合する複数の受容体を含む会合体からなり、該会合体の内部がリン脂質二重膜で覆われていることによって、会合体内部の受容体が規則正しく配置させる効果を生んでおり、その結果、本結晶を用いた結晶構造解析が可能となった。
従来、個々の受容体ごとに結晶化条件の検索を行わなければならなかった。これに対して、内側がリン脂質二重膜で覆われた会合体に受容体が包み込まれることにより、会合体間の相互作用に受容体が影響を与えないため、元の会合体の結晶化条件および異なる受容体を内包させた会合体の結晶化条件と同じ結晶化条件で結晶化可能となった。その結果、個々の受容体ごとに結晶化方法を試行錯誤して検索する労力を費やす必要がなくなり、リン脂質二重膜で一定の立体構造を保持する受容体の立体構造解析の効率化が可能となる。
会合体形成後に会合体内部に受容体を内包させることは、会合体表面に受容体が通過可能なほど大きな隙間が存在する場合を除いて、非常に困難である。ところが、会合ユニットとして、強制会合性会合ユニットを用いることによって、会合ユニットが会合体を形成する前に受容体を結合させ、そのあとに会合体を強制的に会合させることによって、受容体を内包した会合体を作成することが可能となった。
融合による結合は、遺伝子さえあれば容易に慣用の遺伝子操作によって受容体を結合でき、遺伝子を組み込んだ発現ベクターは容易に増幅可能であり、何度でも再現性よく受容体が同一部位に融合した蛋白質を作成できる。そのため、結合部位を制御する必要が無く、共有結合を形成させた結合に比べて、互いに同一の分子種及び同一の分子数かつ同じ立体構造を有した会合ユニットを作成するために非常に有効である。
内側にリン脂質二重膜で覆われたウイルスキャプシドは、内部に受容体を内包しうる空間を有し、慣用の蛋白生産のための遺伝子組み換え体を用いた製造に適していることから、本発明の会合体に好都合であることがわかった。特に、球状のウイルスキャプシド、例えばテクティウイルス科の腸内細菌ファージPRD1、腸内細菌ファージPR3、腸内細菌ファージPR4、腸内細菌ファージPR5、腸内細菌ファージPR772、腸内細菌ファージL17やイリドウイルス科のイリドウイルスやコルチコウイルス科バクテリオファージPM2グループ等は会合体として適している。
また、本発明の会合体においては、内包させた受容体の有無、種類によらず、受容体以外の部分は同一であり、そのためこれらは互いにその座標および位相をそのまま利用して立体構造を解析することが可能となる。すなわち、受容体を内包させていない会合体の結晶構造解析における座標と位相を利用して、様々な受容体が内包させた会合体結晶の構造解析が可能となる。
従って、個々の受容体ごとに結晶化方法および位相問題解決を試行錯誤して検索探索する労力を費やす必要がなくなり、生体高分子とくに蛋白質の立体構造解析の効率化が可能となる。
(1.用語説明)
本発明で用いられる用語「蛋白質」には、その塩および誘導体、糖鎖および/またはポリエチレングリコール等で修飾された蛋白質を含む。
本発明で用いられる用語「変異体蛋白質」とは、蛋白質を構成しているアミノ酸の一部の配列を他のアミノ酸に置換または人工アミノ酸を含む一部のアミノ酸配列の挿入、もしくは欠損させた、蛋白質をあらわす。
本発明で用いられる用語「会合」とは、複数の物体が互いに結合することを意味する。
本発明で用いられる用語「会合ユニット」とは、本発明の会合体を形成している基本単位の一種であり、有機高分子からなる物体をあらわす。同一の物体からなる会合ユニットを用いることができるので、内側にリン脂質二重膜で覆われたウイルスキャプシド蛋白質もしくはその変異体を用いることが好ましい。たとえば、微生物に感染するバクテリオファージ、動物ウイルス、植物ウイルス、無脊椎動物ウイルス、藻類ウイルス等、広い範囲のウイルスに由来するウイルスキャプシド蛋白質を会合ユニットとして用いることができる。好ましくは、球状のウイルスキャプシド、例えばテクティウイルス科の腸内細菌ファージPRD1、腸内細菌ファージPR3、腸内細菌ファージPR4、腸内細菌ファージPR5、腸内細菌ファージPR772、腸内細菌ファージL17やイリドウイルス科のイリドウイルスやコルチコウイルス科バクテリオファージPM2グループ等である。
本発明で用いられる用語「会合体」とは、「受容体」を結合した「会合ユニット」が「会合」した集合体をあらわす。「受容体」を結合した2種類以上の「会合ユニット」が複数個互いに結合した集合体も「会合体」である。「会合ユニット」の中には、「受容体」を結合しないものが含まれていてもよい。また、「受容体」と「会合ユニット」との結合に後述の「リンカー」を用いた場合、「リンカー」もまた「会合体」の一部である。
本発明で用いられる用語「リン脂質二重膜」とは、脂質が二重層に配列した単位膜をあらわす。
本発明で用いられる用語「受容体」とは、本発明の会合体結晶を解析目的に使用する場合において、解析対象となる膜貫通型受容体をあらわす。言い換えると、解析するために会合体に結合させた膜貫通型受容体をあらわす。
本発明で用いられる用語「覆われた」とは、会合体の表面にリン脂質二重膜が結合し、一面にかぶせられていることを意味する。
本発明で用いられる用語「結晶化条件」とは、結晶作成に用いる溶液の条件、すなわち溶液の温度、pH、結晶させる物質の濃度、添加物の種類と濃度をあらわす。これら条件が同じである場合、互いに「同等の結晶化条件」であるという。また、これら条件のうち、1つの条件だけが異なり、その他の条件が同じである場合も、その結晶化条件は非常に容易に見つけだすことができるので、「同等の結晶化条件」であるという。2つ以上の条件が異なっている場合は、2つ以上の条件を同時に変化させて、結晶化条件を探索する必要が生じてしまい、容易には結晶化条件を見いだすことはできないので、「同等の結晶化条件」とはいえない。たとえば、会合体としてB型肝炎ウイルスのキャプシドを用いた場合の「結晶化条件」として、会合体濃度20mg/mlの溶液(5mM Tris-HCl, 150mM NaCl(pH7.5))に、等量の結晶化バッファー(0.5M MgSO4, 4%(w/v) PEG 8000, 0.5M MES(pH6.5))を加えた4μlの液滴に、リザーバー側に結晶化バッファーと同じ組成のバッファー用いて20℃の温度で平衡化させることがあげられる。
本発明で用いられる用語「強制会合性会合ユニット」は、特定の条件(濃度、温度、pH、溶媒組成等)下で会合体を形成する「会合ユニット」をあらわす。たとえば、大腸菌を利用してウイルスのキャプシド蛋白質を会合させる場合の「強制会合」の条件として、大腸菌の培養には細菌培養用培地を使用し、温度はヒートショックプロテインの発現が低い10℃以上50℃以下が好ましく、抽出用の溶媒にはpH5以上pH9以下のキャプシド蛋白質が安定的に保持される溶媒組成(PBSバッファー、TEバッファー等)が好ましい。
本発明で用いられる用語「キャプシド」とは、ウイルスの核酸を包み、その外部形態を形作っている殻構造物をあらわす。また、ウイルスの核酸もしくはその変異体が殻構造物形成に必要な場合には、その核酸も含めて「キャプシド」と呼ぶ。多重に殻構造物で覆われている場合、いずれの殻構造物もキャプシドである。
本発明で用いられる用語「キャプシド蛋白質」とは、キャプシドを構成要素である蛋白質をあらわす。
本発明で用いられる用語「結合」とは、静電相互作用、疎水相互作用、ファンデルワールス相互作用等の非共有結合性の分子間相互作用による結合、共有結合による化学的な結合のいずれかもしくは両方による分子同士の結合を意味する。
本発明で用いられる用語「融合」とは、両蛋白質間をペプチド結合で結合させることを意味する。通常、蛋白質をコードしたDNAの5’末端または3’末端に蛋白質もしくはペプチドをコードするDNAを挿入し、そのDNAを用いて融合蛋白質を作製するが、他の方法、たとえば、化学合成によっても融合蛋白質は得られる。
本発明で用いられる用語「会合体の内部」とは、会合体結晶において会合体間の相互作用に影響を与えない空間を意味する。また、会合体の内部に受容体が配置されている状態を「会合体に内包」されているという。たとえば、会合体としてフィコシアニン等の円筒状の会合体を用いる場合には、結合させる受容体は完全に会合体に覆われている必要はなく、会合体結晶において会合体間の相互作用に影響を与えない円筒の内側に存在すれば、受容体は「会合体の内部」にあり、「会合体に内包」されている状態である。
(2.会合体の選択)
本発明で用いられる会合体は内側にリン脂質二重膜で覆われたもので、好ましくは結晶化条件が既知で結晶構造解析可能なものを用いる。既に結晶構造解析され、その原子座標がPDBに登録され公開されている内側がリン脂質二重膜で覆われたキャプシドは本発明で用いられる会合体として好都合である。内側がリン脂質二重膜で覆われたキャプシドとして、テクティウイルス科の腸内細菌ファージPRD1、腸内細菌ファージPR3、腸内細菌ファージPR4、腸内細菌ファージPR5、腸内細菌ファージPR772、腸内細菌ファージL17やイリドウイルス科のイリドウイルスやコルチコウイルス科バクテリオファージPM2グループ等のキャプシドが用いることができる。また、会合体はキャプシド蛋白質に限定されるものではない。内側を人工的にリン脂質二重膜で覆うことが出来れば、フィコシアニン等の円筒状の会合体であってもよいし、人工的に設計された内部に受容体を導入出来る空間を有した会合体であってもよい。
キャプシドやフィコシアニンは、内部に何も含まれない状態でも安定で強固な構造を取っていることが知られており、本発明の結晶の作成には好都合である。
多くのキャプシド蛋白質は、そのアミノ酸およびそれをコードする核酸配列が既知で、かつ遺伝子工学的手法で作成可能である上、内部に受容体を内包しうるため、本発明の結晶の作成には好都合である。
受容体の大きさ、形状に応じて適切な会合体を選択することができる。会合体の大きさは会合体結晶のX線結晶構造解析結果の原子座標により測定することができる。受容体全体の大きさ、形状は、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、X線小角散乱等を用いて測定することができる。
たとえば、会合体であるテクティウイルス科腸内細菌ファージPRD1のキャプシド蛋白質会合体の外径、すなわち外側の半径は約32.5nmであることが知られている(カルデンティー・ジェー他(Caldentey J. et al.)ジャーナル・オブ・ストラクチャル・バイオロジー(Journal of structural biology)、ストラクチャー・アンド・アッセンブリー・オブ・バクテリオファージ・PRD1,・アンド・エッセリシア・コリ・ウイルス・ウィズ・ア・メンブレン(Structure and assembly of bacteriophage PRD1, and Escherichia coli virus with a membrane.)、米国、1990年、104巻、p.44−51、図1)。また、会合体であるバクテリオファージPM2グループのキャプシド蛋白質会合体の内径、すなわち内側の半径はX線結晶構造解析の結果、約22.5nmであることが知られている(ハンナ・エム・キベラ他(Hanna M. Kivela et al.)ジャーナル・オブ・ビロロジー(Journal of Virology)、バクテリオファージ・PM2・ハズ・ア・プロテイン・キャプシド・サラウンディング・ア・スフェリカル・プロテイナセロウス・リピッド・コア(Bacteriophage PM2 Has a Protein Capsid Surrounding a Spherical Proteinaceous Lipid Core.)、米国、2002年、p.8169-8178、図2)。会合体内部に受容体が内包可能かどうかは、適切なコンピュータプログラムを用いて会合体の原子座標を観察することにより判断することができる。
(3.会合体と受容体との結合)
本発明の結晶を得るためには、偶然に受容体が会合ユニットと結合する性質を有している場合を除いて、会合ユニットと受容体を何らかの方法で結合させる必要がある。会合ユニットと受容体は、直接させてもよいし、リンカーを介して間接的に結合させてもよい。また、会合ユニットと受容体との間、および会合ユニットとリンカーとの間、およびリンカーと受容体との間の結合は、どのような様式の結合でもよい。好ましくは、以下に述べる融合蛋白質を利用する方法、非共有結合性の分子間結合を利用する方法、分子間に共有結合を形成させる方法、およびこれらの方法の組み合わせを用いる。
しかし、同一種の会合ユニット各々は、互いに同一の分子種および同一の分子数で構成され、かつ同じ立体構造を有している必要がある。なぜなら、結晶の立体構造解析は結晶中の会合体が規則正しく配置されていることを利用した解析であり、結晶中の会合体間で規則性を持って配置している原子若しくは原子団しか観測できないからである。後述の融合蛋白質を利用した結合方法やリンカーを介した結合等の工夫は、受容体結合後の会合体において、同一種の会合ユニット各々が、互いに同一の分子種および同一の分子数で構成され、かつ同じ立体構造を有している様にするために、有効な手段の一つである。
会合体間の相互作用、すなわち非共有結合性の分子間相互作用を通じて、会合体は結晶化する。会合体間の相互作用が異なれば、その結晶化条件も異なったものになってしまう。本発明で用いられる会合体は、会合体間の相互作用に影響を与えない、すなわち会合体表面の形状、電荷状態に影響を与えることのない様に会合体内部がリン脂質二重膜で覆われ受容体を配置させた会合体である。そのため、この会合体は、受容体を結合させていない会合体と同様の会合体間の相互作用を通じて、同様の結晶化条件で結晶化することができる。そこで、結合させた受容体が会合体の内部に配置するように、受容体を結合させる必要がある。会合体間の相互作用に影響を与えない、すなわち会合体表面の形状、電荷状態に影響を与えることのない様に受容体を結合させ内部に配置させた会合体を作成するためには、上述の通り、受容体が内部に配置可能な適切な大きさの会合体を用い、適切な位置、すなわち会合体の内側表面に受容体を結合させることが好ましい。
(4.解析対象が複数の分子からなる複合体である場合の結合方法)
受容体が2量体以上の多量体である場合、受容体を会合体に結合させる方法には次の2通りの方法を用いることができる。たとえば、蛋白質Aと蛋白質Bからなる2量体を立体構造解析したい場合、会合体の会合ユニットに蛋白質Aを結合させ、会合ユニットの蛋白質Aの結合部位とは異なる部位、好ましくは蛋白質Aの結合するサブユニットとは異なるサブユニットに蛋白質Bを結合させ、会合体内部に2量体を内包させる方法がある。後述のリンカーを介して結合させる方法もこの方法に含まれる。
(5.融合蛋白質を利用した結合方法)
会合体の会合ユニットと受容体との結合は、会合ユニット、受容体、それぞれを構成する蛋白質を融合させた融合蛋白質を慣用の遺伝子操作によって作成することで達成できる。受容体である蛋白質を会合ユニット構成蛋白質に融合させる部位は、会合体の内側に露出しているアミノ酸の直前または直後、あるいは会合体と会合体の間であることが好ましい。
融合による結合においては、遺伝子さえあれば容易に慣用の遺伝子操作によって受容体を結合でき、遺伝子を組み込んだ発現ベクターは容易に増幅可能であり、何度でも再現性よく受容体が同一部位に融合した蛋白質を作成できる。そのため、結合部位を制御する必要が無く、後述の共有結合を形成させた結合に比べて、融合による結合は互いに同一の分子種及び同一の分子数かつ同じ立体構造を有した会合ユニットを作成するための有効な手段の一つである。
(6.非共有結合性の分子間結合を利用した結合)
会合ユニットと受容体との結合には分子と分子が特異的に結合する性質を利用することができる。例えば、分子間の特異的な結合としては、ウイルスキャプシドと核酸、抗体と抗原、ビオチンとアビジンとの結合等がある。
(7.分子間に共有結合を形成させた結合)
会合ユニットと受容体との結合は、両者を互いに化学的に共有結合させることで達成できる。分子間に共有結合を形成させる方法には様々な方法があるが、蛋白質の場合、例えば、蛋白質を構成している反応性の高い官能基(リジン側鎖のアミノ基(-NH2)、グルタミン酸側鎖およびアスパラギン酸側鎖のカルボキシル基(-COOH)、システィンの側鎖チオール基(-SH)、アミノ末端のアミノ基(-NH2)、カルボキシ末端のカルボキシル基(-COOH))は共有結合させる部位として利用できる。例えば、フィコシアニンの会合体の内側にあるループ上の残基をシスティン残基に置換した変異体蛋白質は、受容体に存在するチオール基(-SH)と共有結合させることができる。受容体が蛋白質で、受容体にジスルフィド結合していないシスティン残基がある場合、例えば受容体と会合ユニットを共発現させて、共有結合を介して両者を結合させることができる。受容体にジスルフィド結合していないシスティン残基が無い場合でも、慣用の遺伝子操作によって受容体の表面に露出していると予測されるアミノ酸をシスティン残基に置換することにより、会合ユニットと受容体とを共有結合を介して結合させることができる。ただし、会合ユニット側、若しくは受容体側、若しくは両側に共有結合させる部位が複数存在する場合は、結合部位の異なる複数種の複合体ができてしまう場合がある。そのような結合部位の異なる複数種の複合体から形成される会合体は、結晶中において受容体が規則的に配置されないため、結晶構造解析に適さない。
(8.リンカーを介した結合)
受容体と会合体とを直接結合させることなく、リンカー、すなわち受容体と会合ユニットとの両方に同時に結合する分子を用いて、会合ユニットと受容体とを結合させることができる(図4)。リンカーと受容体との結合、およびリンカーと会合ユニットとの結合様式は、上述の蛋白質間の融合、共有結合、非共有結合等のいずれか若しくはその組み合わせであってもかまわない。
(8.(1)ペプチドあるいは蛋白質のリンカーとしての利用)
リンカーとして受容体と結合する性質を有したペプチドあるいは蛋白質を用いることができる。リンカーがペプチドあるいは蛋白質である場合は、会合ユニットを構成する蛋白質とを融合して、融合蛋白質を作成することができる。ペプチドあるいは蛋白質のリンカーとしては、例えば、抗体およびFab fragment, sFv(single chain Fv fragment)などの抗体の一部はリンカーとして適している。リンカーとして抗体を利用した場合、その抗体が認識・結合する分子、例えば蛋白質あるいは蛋白質複合体あるいは低分子化合物などを結合させた会合体を作成することができる。受容体と結合する抗体は受容体を動物等に免疫することやファージディスプレー法を用いて、容易に作成することが可能であり、かつ、抗原すなわち受容体と特異的かつ高い親和性を持って結合するので、リンカーとして適している。さらに、リンカーとして用いる抗体若しくは抗体の一部はモノクローナル抗体等の単一分子種からなる抗体若しくは抗体の一部であることが好ましい。また、抗体全体よりも、抗体の一部、たとえば、Fab, sFvは1分子あたりの体積が小さく、会合体の大きさに応じてこれらを使い分けることができる。また、Affibody(エリサベット・ボールベルグ(Elisabet Wahlberg el al.)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proceeding National Academy Science USA)、アン・アフィボディ・イン・コンプレックス・ウイズ・ア・ターゲット・プロテイン:ストラクチャー・アンド・カップルド・フォールディング(An affibody in complex with a target protein: Structure and coupled folding)、米国、2003年、第100巻、p.3185-3190)等の人工蛋白質もリンカーとして利用できる。また、Affibodyに限らず受容体である蛋白質に結合する性質を有する蛋白質若しくはペプチドはファージディスプレー法を用いて入手することができる。
逆に、会合ユニットと結合する性質を有したペプチドあるいは蛋白質をリンカーとして用いることができる。この場合、リンカーと受容体を構成する蛋白質との融合蛋白質を利用できる。例えば、会合ユニットの内部に結合するsFvのカルボキシ末端に受容体を構成する蛋白質を融合させた融合蛋白質を用いて会合体を作成することができる。
(8.(2)核酸のリンカーとしての利用)
リンカーとして、受容体と結合する性質を有した核酸を用いることができる。特に、ウイルスのキャプシドはキャプシドの内側に核酸が結合する性質を有するものが多く、核酸を用いた結合に適している。キャプシド内部で受容体を規則正しく配置させ、結晶構造解析に供するためには、受容体内のある特定の部位で共有結合を形成させることが好ましい。
これら、抗体、抗原、Protein A、ファージディスプレー法で得られた蛋白質等およびアプタマー等の核酸およびこれらの融合蛋白質を適宜組み合わせ、適切な会合体内部に内包させるることにより、ほとんどの受容体の立体構造解析が可能となる。
(9.会合ユニットの配列情報の入手)
キャプシドなどの会合体の会合ユニットを構成している蛋白質の遺伝子、すなわちアミノ酸配列をコードするDNAは、ウイルスに感染した患者、動物、細胞、微生物からPCR法により単離することができる。単離に必要なプライマーは各ウイルスの遺伝子の配列情報を使って設計することができる。ウイルスのDNAおよびアミノ酸配列情報は例えばNCBIのゲノムデータベースに登録されており、インターネット上で公開されている。ウイルスキャプシド以外の会合体も同様の方法で入手可能である。
また、PCR法で単離できない場合、および人工的に設計した会合体の場合は、会合体の会合ユニットのDNA若しくはアミノ酸配列情報に従って部分的に化学合成したDNAをDNAポリメラーゼ等でつなぎ合わせることでその遺伝子を作成することができる。
(10.受容体の入手)
受容体は、どのような手段で入手してもかまわない。通常次のいずれの方法を用いることで入手できる。化学合成、動植物や微生物などの受容体を含む物質からの単離・抽出、受容体である蛋白質をコードする遺伝子を用いた蛋白発現。受容体が蛋白質である場合には会合体の生産方法と同様にして受容体はその遺伝子を用いて生産できる。受容体を会合ユニットと融合させて生産する場合も同様である。受容体の遺伝子もまた会合ユニット遺伝子と同様の方法で入手可能である。
(11.融合蛋白質の配列設計)
会合体と受容体である蛋白質を融合させた融合蛋白質を生産させるためのDNAの設計は慣用の遺伝子操作により以下の様に行うことができる。たとえば、公知の遺伝子操作技術を用いて、キャプシド遺伝子と部分的に相補的なDNAを合成することにより、キャプシド遺伝子の任意の部分に特定の制限酵素で切断される部分(制限酵素部位)を導入または消失させることおよび導入した制限酵素部位前後に任意の蛋白質をコードするDNAを導入することができる。
(12.融合蛋白質のペプチドリンカーの設計)
会合体と受容体である蛋白質を融合させた融合蛋白質を生産させるためのペプチドリンカー部分のDNA設計は慣用の遺伝子操作により以下の様に行うことができる。たとえば、公知の遺伝子操作技術を用いて、キャプシドタンパク質の5’末端に導入する場合は、受容体である蛋白質DNAの3’末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを結合させ、キャプシドタンパク質をコードする遺伝子と連結させる。また、キャプシドタンパク質をコードする遺伝子の3’末端に導入する場合は、受容体をコードするDNAの5’末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを結合させ、キャプシドタンパク質をコードする遺伝子と連結させる。さらに、二つのキャプシドタンパク質をコードする遺伝子の間に受容体を導入する場合は、受容体である蛋白質DNAの5’末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを、さらにその3’末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを結合させ、二つのキャプシドタンパク質をコードする遺伝子の間に連結させる。
(13.発現用ベクターの作成)
遺伝子、すなわちPCR産物若しくは化学合成DNAは精製後、適切な制限酵素を用いて、切り出し、発現用ベクターに組み込むことができる。PCR法の場合は、用いたプライマーに、化学合成の場合は合成するDNA配列に予め特定の制限酵素で切断される配列(制限酵素サイト)を組み込んでおけば、発現用ベクターの作成はより容易になる。発現用ベクターは発現用ベクターを組み込ませる予定の宿主の種類に応じて、宿主に適した発現用ベクターを用いることが好ましい。
(14.会合体の作成)
会合体は、慣用の蛋白質生産のための遺伝子組み換え体を用い、作成することができる。例えば、会合ユニットの遺伝子を組み込んだ発現ベクターを大腸菌などの微生物、植物体あるいは植物細胞、動物細胞あるいはトランスジェニック動物、昆虫細胞あるいは昆虫などの宿主に感染またはリポソームなどとともに取り込ませて、形質転換して、蛋白質発現することが可能である。
会合させる前、若しくは会合後再度会合した会合ユニットを解離させて、会合ユニットに受容体および必要に応じてリンカーを結合させる。なぜなら、受容体およびリンカーは会合体内部に配置されている必要があるため、会合体形成後受容体やリンカーを会合体内部挿入し、結合させることは、一部の核酸および低分子量の分子を除いて、難しいからである。受容体が会合体形成時に会合体の内側に配置されるように、会合前に予め受容体を結合させ、その後に会合体を形成させるためには、どのような条件下でも自発的に会合体を形成してしまう会合ユニットよりも、ある特定の条件下で会合体を形成する強制会合性会合ユニットを用いることが好ましい。
(15.精製)
以上のように設計され、作製された会合ユニットを会合させ、会合体を形成させる。当然会合体は会合ユニットに比べ、大きくかつ高分子量である。この大きさおよび分子量の違いを利用して、例えば公知の精製法であるゲルクロマトグラフィー等の分子ふるいや遠心操作で会合体を形成しないものや不純物を取り除けば、会合体は容易に精製することができる。
(16.結晶化)
会合体間の相互作用、すなわち非共有結合性の分子間相互作用を通じて、会合体は結晶化する。会合体間の相互作用が異なれば、その結晶化条件も異なったものになってしまう。本発明で用いられる会合体は、会合体間の相互作用に影響を与えない、すなわち会合体表面の形状、電荷状態に影響を与えることのない様に会合体内部に受容体を配置させた会合体である。そのため、この会合体は、受容体を結合させていない会合体と同様の会合体間の相互作用を通じて、同様の結晶化条件で結晶化することができる。
具体的には、受容体を結合させた会合体の結晶の調製は以下の手順で進めることができる。得られた会合体は、受容体を結合させていない会合体と同等の条件下で、一般的な蛋白質結晶化法を利用して結晶化することができる。
(17.結晶解析)
結晶化した蛋白質の立体構造を解析する方法としては、X線回折、中性子線回折、電子線回折いずれの方法を用いても解析することができるが、X線回折を用いた結晶構造解析が最も一般的である。通常のX線回折装置を用いてもよいが、例えば、複数の波長の異なる高輝度X線を同時に照射することができるSPring-8等の放射光実験設備のビームラインを利用して解析することにより、短時間でかつ精度のよい回折データおよび立体構造座標を得ることが可能である。
通常、蛋白質等の生体高分子のX線結晶構造解析においては、解析対象の立体構造が未知である場合、位相問題を解決するために重原子同型置換体結晶を作成する必要がある。しかし、本発明の結晶の場合、例えば受容体を内包する会合体結晶の場合、受容体していない会合体の結晶解析で用いた位相および原子座標をそのまま利用することができる。
(18.分子設計への利用)
結晶構造解析の結果得られた受容体の原子座標を用いることによって、受容体に結合若しくは作用する分子を設計することができる。また、受容体が複合体である場合は、複合体を形成している分子間の相互作用を解析することによって、より容易に分子設計することができる。
設計可能な分子の種類は、蛋白質等の高分子であっても合成有機化合物等の低分子であってもよく、分子の種類は問わない。代表的な設計手法には、例えば、A)対話式の分子モデリングシステムを利用しコンピューターグラフィックス上に受容体を表示し視覚的に解析し設計する方法、B)受容体の結合部位にフィットする分子を自動的に作成するプログラムを使う方法、C) 化合物データベース中の個々の化合物を受容体の結合部位に自動的にフィットさせてうまくフィットする化合物を見つけだす、 In silicoスクリーニングと呼ばれる方法、などがある。これらの手法やそれ以外の手法を単独若しくは適宜組み合わせて使って分子設計することができる。A)の方法で利用できる対話式の分子モデリングシステムとしては、例えばTRIPOS社のSYBYL、Acceralys社のDiscovery Studio やInsightII、CGC社のMOE等が市販されており、これらは、OS若しくはLinuxが稼働するパソコン上で利用可能である。B)の方法は、CAVEAT, Leap-Flog等のプログラム、C)の方法は、FlexX, DOCK等のプログラムが市販若しくは大学等から入手でき、利用できる。
本発明の結晶は様々な複合体を同じ結晶化条件で作成可能であるため、それらの解析結果からより容易かつ精密に分子設計することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、何らこれに限定されるものではない。本発明の範囲は、実施例に示す特定の実施形態よりも、発明の詳細な説明の項目中で記述した内容により、請求の範囲が定義されるべきものである。
実施例1
「PRD1キャプシド蛋白質(P3蛋白質)を「会合ユニット」とし、PRD1キャプシド蛋白質(P3蛋白質)とヒトEGF受容体の融合蛋白質を会合体とした場合の実施例」
1.遺伝子の調製
PRD1キャプシド遺伝子(P3遺伝子)及びヒトEGF受容体遺伝子及び発現ベクターを材料として、制限酵素及びDNAポリメラーゼを用いて、発現ベクターのマルチクローニングサイトの5’側にPRD1のP3遺伝子(配列番号1)の遺伝子発現ベクターを構築した。さらにPRD1のP3遺伝子の5’側にヒトEGF受容体遺伝子(配列番号2)を導入した。また、PRD1のP10遺伝子(配列番号3)、P17遺伝子(配列番号4)、P30遺伝子(配列番号5)、P33遺伝子(配列番号6)の遺伝子発現ベクターを構築した。ヒトEGF受容体遺伝子は理研DNAバンクの遺伝子を用いた。PRD1のP3遺伝子、P10遺伝子、P17遺伝子、P30遺伝子、P33遺伝子は、バクテリオファージPRD1よりクローニングした遺伝子を用いた。発現ベクターはNovagen社製のDuetベクターを使用した。
2.ペプチドリンカーの設計
PRD1のP3遺伝子とヒトEGF受容体遺伝子を連結する際は、PRD1のP3遺伝子の5’末端に導入した。PRD1のP3の5’末端に導入の場合は、ヒトEGF受容体の3’末端にグリシン、セリン、セリンの3種アミノ酸の繰り返し数を2,4,6,8,10,12とするDNAを設計し結合させた(配列番号7〜12)。
3.会合体の調製
1.2.で得られた遺伝子を用いて、発現誘導、溶菌、遠心、硫安沈殿、透析、蔗糖密度勾配法およびゲル濾過クロマトグラフィーによる精製を行い、結晶化に適するように高純度に精製した会合体粒子を得た。
まず、PRD1のP3遺伝子とヒトEGF受容体を連結した発現ベクターとP10遺伝子、P17遺伝子、P30遺伝子、P33遺伝子の遺伝子発現ベクターを大腸菌BL21に組み込み、16時間培養後、IPTG(ispporpyl-β-D-thiogalactopyranoside)を使って発現誘導した。さらに3時間培養後、15分間8,000rpmで遠心操作し集菌した。このように菌体内に高濃度の融合蛋白質を発現させることによって、融合蛋白質は強制的に会合体を形成した。形成された会合体を単離精製するため、さらに以下の操作を行った。PBSバッファーにて菌を懸濁し、超音波にて10秒間3回破砕した。さらに、20分間10,000rpmで遠心操作をして、細胞片を取り除いた。遠心操作後の上澄みに硫安((NH4)2SO4)を濃度20%になるように加え、それぞれ、PRD1のP3蛋白質とヒトEGF受容体との融合蛋白質を含んだ会合体粒子を沈殿させた。ペレット(沈殿物)をPBSバッファーに再溶解させ、蔗糖密度勾配法(60%〜5%)により、分取した。このとき、分取すべき会合体粒子を含んだ画分は、SDS-PAGEを使って確認した。その結果、ヒトEGF受容体を含んでいるものは40〜50%濃度中に回収されることが判明した。さらに、ゲル濾過クロマトグラフィー(ハイロードスーパーデックス300 HR26/60 、ファルマシア社)により精製し、5mM Tris-HCl, 150mM NaCl(pH7.5)溶液を用いて透析した結果、結晶化に適する高純度に精製された会合体粒子を得た。
4.結晶の調製
Hampton Research社のHampton Crystal Screen I およびIIを使って、ハンギングドロップ法とよばれる蒸気拡散の手法により、結晶化条件を検討した結果、融合蛋白質を含んだ会合体の粒子の結晶が得られた。
まず、会合体粒子濃度20mg/mlの溶液(5mM Tris-HCl, 150mM NaCl(pH7.5))に、等量の結晶化バッファー(0.5M MgSO4, 4%(w/v) PEG 8000, 0.5M MES(pH6.5))を加えた4μlの液滴に、リザーバー側に結晶化バッファーと同じ組成のバッファー用いて20℃で平衡化させたとき、最も良い結晶が得られた。さらに、結晶化バッファーにD(-)-butanediolを濃度が30%(w/v)になるように加えた低温沈殿剤に得られた結晶を浸し、結晶を成長させ、温度100Kで窒素ガスを吹き付けて凍結した。最大60μm×60μm×600μm程度の大きさを有し、構造解析に供する結晶が得られた。
5.立体構造解析
融合蛋白質を含んだ会合体粒子の結晶は、SPring-8の放射光設備を利用して解析した。回折データはSPring-8のビームラインを使って、mar CCD 検出器で収集した。融合蛋白質を含んだ会合体粒子を構成する原子の3次元座標はバクテリオファージPRD1の3次元座標を利用して、分子置換法により決定した。
まず、融合部分のヒトEGF受容体蛋白質のカルボキシ末端をPRD1のP3蛋白質のアミノ末端に固定し、Protein Data Bankに公開されているヒトEGF受容体蛋白質の座標(PDB ID 1M0X)を回転操作することによりできる限りパターソン関数が一致する位置を決定し、融合蛋白質会合体の初期座標として用いた。得られた初期座標を用いて、精密化を行い融合蛋白質会合体の結晶の電子密度図を得た。更に、溶媒領域の電子密度の平滑化、ならびに、非結晶学的対称性を用いた電子密度の平均化の計算を行い、電子密度図上に、融合蛋白質会合体を構成するアミノ酸残基に相当する部位を同定した。
次に、アミノ酸残基に相当する部位の位置の精密化を行い、アミノ酸残基の同定を行った。この操作を繰り返し行い、PRD1のP3蛋白質にヒトEGF受容体蛋白質を融合した融合蛋白質の3次元構造座標を同定した。この段階で、当業者において構造座標の正確さの指標とされているR因子は、6Åから4.5Åのブラッグ反射角を持つ回折像から得られる構造因子を用いた場合、R=23.7%であった。更に精密化の段階で独立に精密化の計算に入れなかった構造因子から計算されるR因子(当業者においてFree R因子と呼ばれている因子)はR=25.8%であった。更に各原子間の結合距離及び結合角の理想状態からの2乗平均平方根誤差は、それぞれ0.015Å及び2.3度であった。これらの解析にはプログラムパッケージCNXを用いた。結晶パラメータ、収集データ、精密化パラメータを表1に記載した。
得られた立体構造によると、会合体はPRD1のP3蛋白質にヒトEGF受容体蛋白質を融合した融合蛋白質720個で構成されており、それら融合蛋白質は互いに同一の分子種および同一の分子数で構成されていた。そして、720個の融合蛋白質は互いに同じ立体構造を有しており、得られたそれぞれの座標を回転・並進操作によって重ね合わせることによって、融合蛋白質を構成しているアミノ酸残基は互いに対応付けすることが可能であった。
腸内細菌ファージPRD1のキャプシド蛋白質会合体の断面図である。外径Aは約32.5nmである。 バクテリオファージPM2のキャプシド蛋白質会合体の断面図である。内径Bは約22.5nmである。 会合体内部に解析対象受容体Aと解析対象受容体Bからなる2量体を内包させた会合体の模式図である。図に示されているのはサブユニット1と解析対象分子A、サブユニット2と解析対象分子Bをそれぞれ結合させ、会合体内部に解析目的の2量体を内包させた会合体である。 会合体内部に解析対象受容体と結晶性会合体とを、リンカーを用いて結合させ、内包させた会合体の模式図である。図に示されているのはサブユニット1とリンカー、リンカーと解析対象受容体Bをそれぞれ結合させ、会合体内部に解析目的の受容体Bを内包させた会合体である。
符号の説明
A:外側の半径(32.5 nm)
B:内側の半径(22.5. nm)
C:解析対象受容体A
D:解析対象受容体B
L:リンカー
1:サブユニット1
2:サブユニット2
P:リン脂質二重膜

Claims (10)

  1. 互いに会合する会合ユニットと該会合ユニットに結合する受容体を含む会合体からなる結晶であって、該会合体の内部がリン脂質二重膜で覆われた結晶。
  2. 該会合ユニットが、強制会合性会合ユニットであることを特徴とする請求項1に記載の結晶。
  3. 該会合ユニットより該受容体を除いた場合と同等の結晶化条件で結晶化可能な請求項1または2に記載の結晶。
  4. 該受容体が蛋白質であり、該結合が融合であることを特徴とする請求項1に記載の結晶。
  5. 該会合ユニットがウイルスのキャプシド蛋白質若しくはその変異体蛋白質であって該変異体蛋白質を含む会合体を形成可能なアミノ酸配列を有し、該会合体の内部がリン脂質二重膜で覆われていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の結晶。
  6. 該会合ユニットを構成するアミノ酸配列のN末端残基またはC末端残基に該受容体を結合していることを特徴とする請求項5に記載の結晶。
  7. 該キャプシド蛋白質がテクティウイルス科ウイルスのキャプシド蛋白質であることを特徴とする請求項5に記載の結晶。
  8. 該テクティウイルス科ウイルスが腸内細菌ファージPRD1であることを特徴とする請求項7に記載の結晶。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の結晶の製造方法であって、互いに会合する会合ユニットと該会合ユニットに結合する複数の受容体とリン脂質二重膜を同一宿主内で作製させることを特徴とする結晶の製造方法。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の結晶を用いることを特徴とする受容体の立体構造解析方法。
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WO2009060857A1 (ja) 2007-11-05 2009-05-14 Riken 膜タンパク質の製造方法
JP2009125005A (ja) * 2007-11-24 2009-06-11 Kitasato Institute 生体膜内在性ウイルス様粒子及びその製造方法
US11618777B2 (en) 2015-07-31 2023-04-04 Shigeyuki Yokoyama Method of manufacturing membrane protein and utilization thereof

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