JP2006230350A - スペーサーを介した分子会合体結晶とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】広い範囲の分子に適用可能な試行錯誤によらない一般的結晶化方法、該方法によって結晶化された結晶および位相問題解決方法の開発。
【解決手段】1種若しくは2種以上の会合ユニットが複数個会合した会合体を含む結晶であって、同一種の会合ユニット各々は、互いに同一の分子種及び同一の分子数で構成されかつ同じ立体構造を有し、少なくとも1種の該会合ユニットは、会合ユニット構成分子いずれかもしくは2個以上と結合した1個若しくは2個以上の解析目的分子を含み、該解析目的分子が該会合体の内部に配置されていることを特徴とする結晶。
【選択図】なし

Description

本発明は、ウイルスキャプシドおよび繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを利用することにより目的となるタンパク質の結晶化を可能にし、得られた結晶を用いて目的となるタンパク質の立体構造解析を可能にする。また、その結晶を製造する遺伝子発現ベクターと結晶の製造方法に関する。
(生体高分子であるタンパク質の立体構造解析について)
ヒト・ゲノムプロジェクトの結果、人間の遺伝子はおよそ3万種類であることが判明し、これら3万種類の遺伝子から得られるタンパク質の構造と機能を理解しコントロールすることは、医療・医薬品開発を推進していくものであり、すべての疾病・疾患に対する治療が可能になることを意味する。疾患に関わるタンパク質の立体構造が明らかになれば、その触媒部位の特定が可能となり、その立体構造情報をベースとした医薬品の開発が可能となる。現在までに、タンパク質立体構造解析の主たる方法として、Distance Geometry法に基づくNMRによるもの、極低温電子線回折法に基づく電子顕微鏡によるもの、これらの方法により、タンパク質の結晶を作成し、この回折現象を利用したX線結晶構造解析法がある。NMR法は溶液中での立体構造解析が可能であるが、取り扱い可能な分子量の制限があり、人のタンパク質の大部分は対象外となっている。また、電子顕微鏡法は、二次元結晶中での膜タンパク質の解析に特に、効力を発揮しているが、その二次元結晶の作成が極めて難しく、まだ、数十例に留めており、とても、すべてのタンパク質の解析に適用できる状態ではない。最後のX線結晶構造解析は、結晶さえできれば、分子量に対する制限は事実上なく、分解能も1Åを切るものも報告され、これまでの解析例が数万種類と他の方法を圧倒し、立体構造解析法の中心にあると考えられる。このX線結晶解析法から得られた立体構造情報は、医薬のほかに、食品などいわゆるバイオ関連産業および、化学系の生体触媒を利用する関連産業に与える影響は絶大と考えられる。
(X線結晶構造解析の課題 結晶化)
現在までに、クローニングされたタンパク質のうち10%程度しか構造解析に至っていない。これは、結晶化条件がそのタンパク質の表面構造に強く依存しており、しかも、すべてのタンパク質で、異なっているため、タンパク質ごとに新たな結晶化条件を探索しなければならない。温度、タンパク質濃度、沈殿剤の種類、pH、精製条件などさまざまな因子が結晶化に影響を与えるので、すぐにひとつのタンパク質の結晶化条件を検討するのに数千から数万におよぶ実験を行わねばならない。一方で、実験計画法にのっとったスパースマトリクスを適用した結晶化キットにより、その条件検討の数はかなり減少させることができた。さらに、米国ベンチャー企業のSyrrix(J. Structural Biology, 142, (2003), 207-217)(非特許文献1)が、これら結晶化キットを利用し、完全なオートメーションにより24時間ロボットが結晶化を行っている。いずれにしても、結晶化の過程は難しく、数十例の解析が成功しているに過ぎない。
(X線結晶構造解析の課題 位相問題の解決)
X線結晶構造解析においては、分子の立体構造を波動方程式として捉え振幅と位相の両方を決めることが出来れば、一義的にその解、すなわち分子の立体構造座標を求めることが出来る。振幅は回折像の各指数の黒化度を測定することによって実験的に求められ、これを構造因子と呼ぶ。ところが、X線はほぼ光速で進行するので、その位相は測定することは出来ない。この位相問題を解決するための最も一般的な方法は「同型置換法」と呼ばれる方法である。重原子誘導体を導入していない結晶(Native結晶)に対して、重原子誘導体を導入した結晶(Derivative結晶)が、その格子定数を変えずに得られたとする。重原子はタンパク質等の生体高分子を構成する原子(炭素、窒素、酸素、イオウ、水素等)より遙かに電子数が多くX線散乱能の強く、回折データより計算したパターソン関数から直ちに重原子の結晶中での位置を決定することが出来る。この重原子の位置情報すなわち位相情報から、解析目的分子の位相情報求めることが出来る。求めた強度データと位相データにより、解析目的分子の立体構造を計算で求めることが出来る。重原子が入った結晶を得るための方法として、既に得られた結晶に後から重原子誘導体を導入する方法「ソーキング法」がある。このソーキング法を使った場合では、様々な重原子誘導体を試してみる必要があり、結晶によってはタンパク質間の隙間が狭く導入できない場合も多い。別な方法に重原子誘導体と目的分子を溶液中で相互作用させ結晶化させる「共結晶法」がある。この共結晶法の場合は、一般に重原子のない目的分子単独の場合(Native結晶)と結晶化条件が異なる。そのような場合、別途新たに最適結晶化条件を探索する必要がある。その他に、重原子を導入する手段として、セレノメチオニン導入法がある。これはタンパク質中のメチオニンの代わりにセレノメチオニンを栄養源として大腸菌に与えセレノメチオニンタンパク質を作成方法である。しかし、発現方法が大腸菌等に限定され、またメチオニンを含まないタンパク質には適用できないなど、汎用的な技術になっていない。また、分子置換法が適用できる場合、結晶に重原子を導入する必要なく解析が可能であるが、この方法は分子置換しうる立体構造座標、すなわち解析対象の分子と非常に類似した分子の立体構造座標が入手できる場合に限られ、新規構造を持つタンパク質には適応出来ない。
(X線結晶構造解析の課題 複合体結晶)
特に、医薬品の開発においては、酵素、受容体、核酸等の医薬品の標的となる生体高分子単独の立体構造情報も有用であるが、それら医薬品標的生体高分子と相互作用する相手の分子、もしくは基質や医薬品候補物質との複合体の立体構造情報は医薬品分子設計上さらに有用である。前節の重原子誘導体の作成法でも述べたように、主な複合体結晶の作成法には、「ソーキング法」と「共結晶法」がある。一部の低分子や前述の重原子誘導体などは、Native結晶中の分子間のわずかな隙間を通り抜けることができるため、前者の「ソーキング法」によって複合体結晶作成可能である。しかし、タンパク質等の高分子は、Native結晶中の分子間の隙間を通り抜けることができないため、一般に「ソーキング法」によって複合体結晶を作成することができない。ソーキング法が適用できない場合は、共結晶法によって複合体結晶を作らざるを得ない。この共結晶法の場合においては、複合体結晶はNative結晶と結晶化条件が異なるため、別途新たに最適結晶化条件を探索する必要が生じる。
(構造解析へのウイルスキャプシドタンパク質の利用)
(ウイルスキャプシドの立体構造解析)
ウイルスのキャプシドはウイルスの外殻を構成するものであり、ウイルス侵入、脱コート、複製に重要な役割を有するとされる。ところで、キャプシドのX線結晶構造解析は以前から数多くなされている。バクテリオファージ、植物ウイルスをはじめ、動物ウイルスでもポリオウイルス、アデノウイルス、B型肝炎ウイルスなどが解析されており、その座標は公開データベースであるProtein Data Bankに登録、公開されている。例えばNormanら(非特許文献2)は、B型肝炎ウイルスのキャプシドタンパク質(HBcAg)の自己集積化には数残基のペプチドが重要であることを証明しており、この中でcryo-EM(電子顕微鏡)によるキャプシドタンパク質の解析を行っている。しかし、電子顕微鏡の解像度が十分でないためキャプシド内部の構造を正確には測定できていない。また、ウイルスキャプシドに外来分子を内包させた複合体の結晶の作成例も、X線結晶構造解析例もない。
(融合タンパク質について)
タンパク質を構成しているアミノ酸の一部の配列を他のアミノ酸に置換したり、一部の配列を挿入、もしくは欠損させた、タンパク質の変異体は、遺伝子工学、タンパク質工学等のいわゆるバイオテクノロジーの進歩によって、比較的容易に作成できるようになった。2種類以上のタンパク質について、そのアミノ酸配列をつなげた融合タンパク質も同様に比較的容易に作成できるようになってきた。
(キャプシドタンパク質と外来タンパク質との融合タンパク質の例)
キャプシドタンパク質と外来タンパク質との融合タンパク質は、いわゆるドラッグデリバリーシステムとして、すなわち薬物やタンパク質を目標とする特定の細胞へ送達する担体としてやワクチンとして、数多くの試みがなされている。
例えば、Kratzら(非特許文献3)はB型肝炎ウイルスのキャプシドタンパク質(HBcAg)と外来タンパク質との融合タンパク質をワクチンとして利用する目的で作成し報告している。すなわち、彼らは融合タンパク質の結晶作成を行っておらず、また、X線結晶構造解析も行っていない。さらに電子顕微鏡を用いて、この融合体タンパク質がキャプシドを構成しているところを観察している。その観察によると残念ながらその立体構造はかろうじて分子全体の像が判別できる程度でしかなかった。また、同様の報告例として吉川らの報告(特許文献1)があるが、彼らの作成したB型肝炎ウイルスのキャプシドタンパク質(HBcAg)と外来タンパク質との融合タンパク質は外来タンパク質に対する抗体に反応する。このことから、外来タンパク質は表面に抗体に認識される形で存在し、キャプシドに内包されていないことがわかる。
また、Stockleyらは、バクテリオファージMS2のキャプシドを、いわゆるドラッグデリバリーシステムとして、すなわち薬物を目標とする特定の細胞へ送達する担体として、利用している。バクテリオファージMS2のキャプシドを構成している会合ユニットタンパク質(キャプシドタンパク質)は、少なくとも19塩基からなる特定の配列を含んだRNAと結合し、そのRNAとの結合により、会合体が形成されることが知られている。Stockleyらは、そのRNAにricin A毒素等のタンパク質を共有結合で結合させ、キャプシド内部に外来タンパク質を封じ込めることに成功している(非特許文献4、非特許文献5)。さらに、彼らはキャプシドタンパク質において、キャプシドの外側に突き出たループ部分に外来ペプチド(エピトープ)を挿入している。また、キャプシドの外側に抗体を結合させて、標的の細胞にキャプシドを到達させる工夫をしている。しかし、彼らは融合タンパク質の結晶化には至っていない。そのため、X線結晶構造解析も行っていない。彼らが報告しているキャプシド内部にricin A毒素等のタンパク質を封じ込めたキャプシドにおいては、ricin A毒素タンパク質表面に存在する不特定のリジン残基側鎖とRNAとの間に共有結合を形成させ結合させているため、キャプシド内部に封じ込められたricin A毒素タンパク質は規則正しく配置されない。そのため、ricin A毒素タンパク質も含めた各々の会合ユニットは、互いに同じ立体構造を有していないため、結晶構造解析によりricin A毒素タンパク質の立体構造を明らかにすることは原理的に不可能である。
特開平6−279500号公報 シリックス(Syrrix)、ジャーナル ストラクチュラル バイオロジー(J. Structural Biology), 142, (2003), 207-217 ノーマン・アール・ワッツ他(Norman R.Watts, et al.)、エンボジャーナル(The EMBO Journal)、ザ・モルフォジェニック・リンカー・ペプチド・オブ・エッチビーブイ・キャプシド・プロテイン・フォームズ・ア・モビル・アレイ・オン・ザ・インテリア・サーフェイス(The morphogenic linker peptide of HBV capside protein forms a mobile array on the interior surface)、米国、2002年、第21巻、p.876-884 ピーター・エー・クラッツ他(Peter A. Kratz, et al.)、プロシーディング・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proceeding National Academy Science USA)、ネィティブ・ディスプレー・オブ・コンプリート・フォーリン・プロテイン・ドメイン・オン・ザ・サーフェス・オブ・ヘパティティス・ビー・ビロス・キャプシド(Native display of complete foreign protein domains on the surface of hepatitis B virus capsids)、米国、1999年、第96巻、p.1915-1920 ウイリアム・エル・ブラウン他(William L. Brown, et al.)、インタービロロジー(Intervirology )、アールエヌエイ・バクテリオファージ・キャプシド メディエイテド・ドラッグ・デリバリー・アンド・エピトープ・プレゼンテーション(RNA bacteriophage capsid-mediated drug delivery and epitope presentation.)、スイス、2002年、第45巻、p.371−380 ミン・ウー他(Min Wu, el al.)、バイオコンジュゲート・ケミストリー(Bioconjugate Chemistry)、セル スペシフィック・デリバリー・オブ・バクテリオファージ エンキャプシデート・リシン・エー・チェイン(Cell-specific delivery of bacteriophage-encapsidated ricin A chain.)、米国、1995年、第6巻、p.587−595
生体高分子であるタンパク質の結晶化は一般に個々のタンパク質ごとに試行錯誤的に最適な結晶化条件を探索し、見つけだす必要があった。さらに、個々の結晶に対する位相問題を解決する必要がある上、複合体結晶を作成するにあたっては、Native結晶の結晶化条件と異なるので、はじめから結晶化条件の探索を行う必要があった。そして、これらがX線結晶構造解析を迅速に実施する上で、大きな障害となっていた。これらの障害をクリアし生体高分子であるタンパク質の結晶化の簡便化を図るために、ウイルスキャプシドを用いて普遍的に結晶を作成しうる方法の探索が課題となる。
本願発明者らは鋭意研究の結果、キャプシドと解析目的分子間の最適なスペーサー配列を同定することにより、会合体の内部、すなわち会合体間の相互作用に影響を与えない空間に解析目的分子を人工的に配置することを可能にし、さらにキャプシドを強制的に2量体化することにより試行錯誤に依存することなく、解析目的分子を含む会合体結晶およびその結晶製造方法見いだし、種々のタンパク質に広く適用できるタンパク質の結晶化方法を完成させた。
本発明は以下を提供する。
1.会合ユニットが複数個会合した会合体を含む結晶であって、繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを介して会合ユニットと解析目的分子が結合し、該解析目的分子が該会合体の内部に配置していることを特徴とする結晶。
2.該繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーが2残基以上5残基以下のアミノ酸配列からなる上記1に記載の結晶。
3.該繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを構成するアミノ酸残基が環状構造を有さない上記1または2記載の結晶。
4.該繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを構成するアミノ酸残基が脂肪族アミノ酸、ヒドロキシアミノ酸、含硫アミノ酸および酸性アミノ酸からなる群より選択される1種以上である上記1〜3のいずれかに記載の結晶。
5.上記1〜4のいずれかに記載の結晶を作製するための遺伝子発現ベクターであって、解析目的分子、会合ユニットならびにスペーサーをコードする遺伝子を含む遺伝子発現ベクター。
6.該会合ユニットがウイルスのキャプシドタンパク質若しくはその変異体タンパク質であることを特徴とする上記5に記載の遺伝子発現ベクター。
7.該キャプシドタンパク質がヘパドナウイルス科ウイルスのキャプシドタンパク質であることを特徴とする上記6に記載の遺伝子発現ベクター。
8.該ヘパドナウイルス科ウイルスがB型肝炎ウイルスであることを特徴とする上記7に記載の遺伝子発現ベクター。
9.結晶化可能な会合ユニットと解析目的分子が繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを介して融合している融合タンパク質を生産する工程と、会合ユニットを会合させて目的分子を含む結晶を生産する工程を有することを特徴とする結晶の製造方法。
本発明の結晶は、「同一種の会合ユニット各々が互いに同一の分子種及び同一の分子数で構成され、同じ立体構造を有し、解析目的分子が最適なスペーサーおよびそのスペーサーを繰り返すことにより会合体の内側に包み込まれた会合体」で構成されており、会合ユニットと解析目的分子間を結合する最適なスペーサーとその繰り返し数を同定することより、会合体内部の解析目的分子が規則正しく配置させる効果を生んでおり、その結果本結晶を用いた結晶構造解析が可能となった。
従来、個々の解析目的分子ごとに結晶化条件の検索を行わなければならなかった。これに対して、解析目的分子が会合体の内側に包み込まれ会合体間の相互作用に解析目的分子が影響を与えないため、元の会合体の結晶化条件および異なる解析目的分子を内包させた会合体の結晶化条件と同じ結晶化条件で結晶化可能となった。その結果、個々の解析目的分子ごとに結晶化方法を試行錯誤して検索する労力を費やす必要がなくなり、生体高分子とくにタンパク質の立体構造解析の効率化が可能となる。
会合体形成後に会合体内部に解析目的分子を内包させることは、会合体表面に解析目的分子が通過可能なほど大きな隙間が存在する場合を除いて、非常に困難である。ところが、会合ユニットと解析目的分子間を結合させる最適なスペーサーとその繰り返し数を同定し、さらにこれらを含む遺伝子発現ベクターを用いて、会合体内部に解析目的分子を内包した会合体を作製することが可能になった。
スペーサーによる結合は、遺伝子さえあれば容易に慣用の遺伝子操作によって解析目的分子間を結合でき、遺伝子を組み込んだ発現ベクターは容易に増幅可能であり、何度でも再現性よく解析目的分子が同一部位に融合したタンパク質を作成できる。そのため、互いに同一の分子種及び同一の分子数かつ同じ立体構造を有した会合ユニットを作成するために非常に有効である。
ウイルスキャプシドは、内部に解析目的分子を内包しうる空間を有し、慣用の蛋白生産のための遺伝子組み換え体を用いた製造に適していることから、本発明の会合体に好都合であることがわかった。特に、球状のウイルスキャプシド、例えばヘパドナウイルス科ウイルス、MS2、φX174等の一部のバクテリオファージ等は会合体として適している。中でも、ヘパドナウイルス科のキャプシドは安定な会合体を形成するため、本発明の会合体に好適であることがわかった。その中でも特にヒトB型肝炎ウイルスのコアキャプシドは容易に結晶化可能であるという利点を有している。
また、本発明の会合体においては、内包させた解析目的分子の有無、種類によらず、解析目的分子以外の部分は同一であり、そのためこれらは互いにその座標および位相をそのまま利用して立体構造を解析することが可能となる。すなわち、解析目的分子を内包させていない会合体の結晶構造解析における座標と位相を利用して、様々な解析目的分子が内包させた会合体結晶の構造解析が可能となる。
(1.会合体の選択)
本発明で用いられる会合体は好ましくは結晶化条件が既知のもので、結晶構造解析可能なものを用いる。既に結晶構造解析され、その原子座標がPDB(プロテインデータバンク)に登録され公開されているキャプシドは本発明で用いられる会合体として好都合である。なお、本発明で用いられる用語「会合」とは、複数の「会合ユニット」が互いに結合することを意味し、「会合体」とは「会合」した「会合ユニット」集合体をあらわす。2種類以上の「会合ユニット」が複数個互いに結合した集合体も「会合体」である。また、会合体はキャプシドタンパク質に限定されるものではない。フィコシアニン等の円筒状の会合体であってもよいし、人工的に設計された内部に目的分子を導入出来る空間を有した会合体であってもよい。すなわち、「会合体の内部」とは、会合体結晶において会合体間の相互作用に影響を与えない空間を意味する。
(2.キャプシドについて)
キャプシドは、内部に何も含まれない状態でも安定で強固な構造を取っていることが知られており、本発明の結晶の作成には好都合である。キャプシドは、任意のウイルス由来であってよい。たとえば、微生物に感染するバクテリオファージ、動物ウイルス、植物ウイルス、無脊椎動物ウイルス、藻類ウイルスなど、広い範囲のウイルスを会合体として用いることができる。より好ましくは、球状ウイルス由来のキャプシドで、B型肝炎ウイルスのコアタンパク質、アデノウイルス、ポリオウイルスなどの動物ウイルス、φX174、MS2などのファージ、カリフラワーモザイクウイルス、トマトブッシースタントウイルス、イネわい化ウイルスなどの植物ウイルス、ガガンボイリデッセントウイルス、ブラックビートルウイルスなどの無脊椎動物ウイルス、ゾウリムシ共生藻ウイルスなどの藻類ウイルス、のキャプシドが用いることができる。
多くのキャプシドタンパク質は、そのアミノ酸およびそれをコードする核酸配列が既知で、かつ遺伝子工学的手法で作成可能である上、内部に解析目的分子を内包しうるため、本発明の結晶の作成には好都合である。特に、B型肝炎ウイルスが属するヘパドナウイルス科ウイルスのキャプシドタンパク質は、大腸菌等を用いた遺伝子工学的手法で容易に作成、精製可能であり、内部に何も含まれない状態でも安定で強固な構造を取っているため、本発明の結晶の作成には好都合である。また、ヘパドナウイルス科のウイルスの外殻は、脂質膜を含む外側のエンベロープと内側のコアの2重のキャプシドで構成されている。特に、内側のコアキャプシドは、安定な会合体を形成することが知られているため、本発明で用いる会合体として好都合である。中でも、B型肝炎ウイルスのコアタンパク質(HBcAg)は、強制的に会合体を形成させる条件が既知であり、また結晶化条件が既知で、既に結晶構造解析され、その原子座標がPDBに登録され公開されているため、本発明で用いる会合体の会合ユニットとして用いるのに特に好都合である。
解析目的分子の大きさ、形状に応じて適切な会合体を選択することができる。会合体の大きさは会合体結晶のX線結晶構造解析結果の原子座標により測定することができる。解析目的分子全体の大きさ、形状は、電子顕微鏡、原子間力顕微鏡、X線小角散乱等を用いて測定することができる。たとえば、会合体であるB型肝炎ウイルスのコアタンパク質(HBcAg)T4会合体の内径、すなわち内側の半径はX線結晶構造解析の結果、約11.2nm、内側の表面積は約1576nm2であることが知られている(サマンサ・エー・ワイニー(Samantha A. Wynne et al.:)モレキュラー・セル(Molecular Cell)、ザ・クリスタル・ストラクチャー・オブ・ザ・ヒューマン・ヘパタイテス・ビー・ビロス・キャプシド(The crystal structure of the human hepatitis B virus capsid.)、米国、1999年、第3巻、p.771-780、図1)。この会合体は240個の会合ユニットであるHBcAgで形成されているので、1会合ユニットあたりの会合体内側の表面積は約6.6nm2である。従って、断面積が6.6nm2より小さい解析目的分子は、HBcAgT4会合体に結合させて、解析可能であると判断できる。また、解析目的分子の長さはHBcAgT4会合体の内径11.2nm以下である必要がある。すなわち、HBcAgT4会合体に対しては断面積6.6nm2以下、長さ11.2nm以下の解析目的分子を結合させることが好ましい。会合体内部に解析目的分子が内包可能かどうかは、適切なコンピュータプログラムを用いて会合体の原子座標を観察することにより判断することができる。より大きなタンパク質などが解析目的分子である場合には、バクテリオファージφX174やライノウイルス等の1会合ユニットあたりの表面積が大きな会合体を用いることができる。一方、非常に小さなタンパク質を解析する場合には、フィコシアニン等の円柱状の会合体も用いることができる。
(3.解析目的分子)
本発明の会合体結晶を解析目的に使用する場合において、解析対象となるタンパク質をあらわす。言い換えると、解析するために会合体に結合させたタンパク質をあらわす。なお、既に解析されているHBcAgは「解析目的分子」ではない。
(4.会合体と解析目的分子間のスペーサーについて)
解析目的分子と会合ユニットとの両方に同時に結合する分子であるスペーサーを用いて、会合ユニットと解析目的分子とを結合させることができる(図2)。スペーサーと解析目的分子との結合、およびスペーサーと会合ユニットとの結合様式は、ペプチドを介したものである。
たとえば、解析目的分子であるタンパク質に結合する性質を有するペプチドはファージディスプレー法を用いて入手することができる。例えば、Hashiguchiらの文献(シューヘイ・ハシグチ(Shuhei Hashiguchi, et al.,)、ザ・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(the Journal of Biochemistry),ヒューマン・エフシーイプシロンアールワンアルファー スペシフィック・ヒューマン・シングル チェイン・エフブイ(scFV)・アンチボディ・ウイズ・アンタゴニスティック・アクティビティ・トゥワード・アイジーイー/エフシーイプシロンアールワンアルファー・バインディング(Human Fc varepsilon RIalpha-Specific Human Single-Chain Fv (scFv) Antibody with Antagonistic Activity toward IgE/Fc varepsilon RIalpha-Binding)、日本、2003年、第133巻、p.43〜49.)記載のファージディスプレー法によって得られたsFvは、ヒトFcε受容体を結合させるのに適している。また、核酸に対する抗体を作成することは一般に難しい。解析目的分子がDNAである場合には、転写因子などのDNAと結合する性質を有したタンパク質、例えば、cFos/cJunやmybなどのDNA結合性タンパク質を抗体の代わりにスペーサーとして利用することができる。また、抗体と結合し、しかも抗体と抗原間の結合を妨げない分子、例えばProtein Aなどは、抗体を結合させるためのスペーサーとして利用できる。例えば、会合ユニットとProtein Aの融合タンパク質は、ほとんどのIgG抗体と結合する。そのためこの融合タンパク質を利用すると、様々なIgG抗体の立体構造解析が可能になる。さらに、IgG抗体と結合する抗原はこの融合タンパク質とIgG抗体を介して結合させることができる。言い換えると、解析目的分子はその分子を認識するIgG抗体があれば、この融合タンパク質を用いて結合させることができる。
逆に、会合ユニットと結合する性質を有したペプチドをスペーサーとして用いることができる。この場合、スペーサーと解析目的分子を構成するタンパク質との融合タンパク質を利用できる。例えば、会合ユニットの内部に結合するsFvのカルボキシ末端に解析目的分子を構成するペプチドを融合させた融合タンパク質を用いて会合体を作成することができる。
(5.ペプチドで構成されるスペーサーについて)
本発明において解析目的分子と会合ユニットとの両方に同時に結合する分子であるスペーサーは、ペプチドで構成されている。一般にペプチドは数個のアミノ酸で構成されているものをさし、本発明では2~5残基のアミノ酸が最適である。また、本発明において、ペプチドからなるスペーサーは環状構造を有さないものが最適である。すなわち、スペーサーが環状構造を有することにより、会合体の内部に解析目的分子を導入し得ない場合が想定されるためである。例えば、会合体を構成するキャプシドタンパク質が二量体を形成できず、そのため解析目的分が外部に形成され、結晶構造解析が不可となる。さらに、スペーサーであるペプチドを構成するアミノ酸としては、環状構造を有する可能性のある、芳香族アミノ酸、複素環アミノ酸および塩基性アミノ酸以外のアミノ酸である脂肪族アミノ酸、ヒドロキシアミノ酸、含硫アミノ酸および酸性アミノ酸が最適である。
(6.融合タンパク質を利用した結合方法)
会合体の会合ユニットと解析目的分子との結合は、会合ユニット、解析目的分子、それぞれを構成するタンパク質を融合させた融合タンパク質を慣用の遺伝子操作によって作成することで達成できる。解析目的分子であるタンパク質を会合ユニットを構成するタンパク質に融合させる部位は、会合体の内側に露出しているアミノ酸の直前または直後であることが好ましい。また、本発明で用いられる用語「融合」とは、両タンパク質間をペプチド結合で結合させることを意味する。通常、タンパク質をコードしたDNAの前後または途中にタンパク質もしくはペプチドをコードするDNAを挿入し、そのDNAを用いて融合タンパク質を作製するが、他の方法、たとえば、化学合成によっても融合タンパク質は得られる。
融合による結合においては、遺伝子さえあれば容易に慣用の遺伝子操作によって解析目的分子を結合でき、遺伝子を組み込んだ発現ベクターは容易に増幅可能であり、何度でも再現性よく解析目的分子が同一部位に融合したタンパク質を作成できる。そのため、結合部位を制御する必要が無く、後述の共有結合を形成させた結合に比べて、融合による結合は互いに同一の分子種及び同一の分子数かつ同じ立体構造を有した会合ユニットを作成するための有効な手段の一つである。
(7.会合ユニットの配列情報および遺伝子の入手)
キャプシドなどの会合体の会合ユニットを構成しているタンパク質の遺伝子、すなわちアミノ酸配列をコードするDNAは、ウイルスに感染した患者、動物、細胞、微生物からPCR法により単離することができる。例えば、B型肝炎ウイルスのコアタンパク質(HBcAg)の場合、慢性活動性B型肝炎感染患者の血清から抽出したcDNAライブラリーから、例えば文献(アントニー・トウズ他(Antoine Touze, et al.)、ジャーナル・オブ・クリニカル・マイクロバイオロジー(Journal of Clinical Microbiology)、バキュロビロス・エクスプレッション・オブ・キメリック・ヘパタイテス・ビー・ビロス・コア・パーティクルズ・ウイズ・ヘパタイテス・イー・ビロス・エピトープス・アンド・ゼア・ユース・イン・ア・ヘパタイテス・イー・イミュノアッセイ(Baculovirus Expression of Chimeric Hepatitis B Virus Core Particles with Hepatitis E Virus Epitopes and Their Use in a Hepatitis E Immunoassay)、米国、1999年、第37巻、p.438-441)記載のプライマーを用いて、PCR法により単離することができる。B型肝炎ウイルス以外のウイルスのキャプシドタンパク質遺伝子も同様の方法で単離することができる。単離に必要なプライマーは各ウイルスの遺伝子の配列情報を使って設計することができる。ウイルスのDNAおよびアミノ酸配列情報は例えばNCBIのゲノムデータベースに登録されており、インターネット上で公開されている。ウイルスキャプシド以外の会合体も同様の方法で入手可能である。例えば、実施例Xのフィコシアニン遺伝子はシアノバクテリアから抽出したcDNAライブラリーを用いてPCR法により単離できる。
また、PCR法で単離できない場合、および人工的に設計した会合体の場合は、会合体の会合ユニットのDNAもしくはアミノ酸配列情報に従って部分的に化学合成したDNAをDNAポリメラーゼ等を用いてつなぎ合わせることでその遺伝子を作成することができる。また、バクテリオファージの遺伝子はたとえば独立行政法人製品評価技術基盤機構・生物遺伝資源センター(NBRC)から有償で入手することができる。
(8.解析目的分子の入手)
解析目的分子は、どのような手段で入手してもかまわない。通常次のいずれの方法を用いることで入手できる。化学合成、動植物や微生物などの解析目的分子を含む物質からの単離・抽出、解析目的分子であるタンパク質をコードする遺伝子を用いた蛋白発現。解析目的分子がタンパク質である場合には会合体の生産方法と同様にして解析目的分子はその遺伝子を用いて生産できる。解析目的分子を会合ユニットと融合させて生産する場合も同様である。解析目的分子の遺伝子もまた会合ユニット遺伝子と同様の方法で入手可能である。
(9.融合タンパク質の配列設計)
会合体と解析目的分子であるタンパク質を融合させた融合タンパク質を生産させるためのDNAの設計は慣用の遺伝子操作により以下の様に行うことができる。たとえば、公知の遺伝子操作技術を用いて、HBcAg遺伝子と部分的に相補的なDNAを合成することにより、HBcAgの遺伝子の任意の部分に特定の制限酵素で切断される部分(制限酵素部位)を導入または消失させることおよび導入した制限酵素部位前後に任意のタンパク質をコードするDNAを導入することができる。
(9(2)融合タンパク質のスペーサーの設計)
会合体と解析目的分子であるタンパク質を融合させた融合タンパク質を生産させるためのスペーサー部分のDNAの設計は慣用の遺伝子操作により以下の様に行うことができる。たとえば、公知の遺伝子操作技術を用いて、HBcAgの5’末端に導入する場合は、解析目的分子であるタンパク質DNAの3‘末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを結合させ、HBcAgと連結させる。また、HBcAgの3’末端に導入する場合は、解析目的分子であるタンパク質DNAの5‘末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを結合させ、HBcAgと連結させる。さらに、二つのHBcAgの間に解析目的分子を導入する場合は、解析目的分子であるタンパク質DNAの5‘末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを、さらにその3‘末端に数個のアミノ酸と適当な制限酵素部位をコードするDNAを結合させ、二つのHBcAgの間に連結させる。
(10.発現用ベクターの作成)
遺伝子、すなわちPCR産物もしくは化学合成DNAは精製後、適切な制限酵素を用いて、切り出し、発現用ベクターに組み込むことができる。PCR法の場合は、用いたプライマーに、化学合成の場合は合成するDNA配列に予め特定の制限酵素で切断される配列(制限酵素サイト)を組み込んでおけば、発現用ベクターの作成はより容易になる。発現用ベクターは発現用ベクターを組み込ませる予定の宿主の種類に応じて、宿主に適した発現用ベクターを用いることが好ましい。
(11.会合体の作成)
会合体は、慣用のタンパク質生産のための遺伝子組換え体を用い、作成することができる。例えば、会合ユニットの遺伝子を組み込んだ発現ベクターを大腸菌などの微生物、植物体あるいは植物細胞、動物細胞あるいはトランスジェニック動物、昆虫細胞あるいは昆虫などの宿主に感染またはリポソームなどとともに取り込ませて、形質転換して、タンパク質発現することが可能である。また、宿主を用いることなく、無細胞タンパク質発現系を用いて作成することもできる。無細胞タンパク質発現キットは、例えばロッシュリサーチ社から販売されており、タンパク質を簡便かつ短時間で作成することができ、有用な手段の一つである。
会合体がウイルスのキャプシドである場合には、ウイルスのキャプシドの種類によって会合ユニットが会合体を形成する特定の会合条件を用いて、会合体を形成させることができる。例えば、HBcAgT4会合体の場合は、会合ユニットであるHBcAgを大腸菌菌体内に大量かつ高濃度に発現させることによって、HBcAgT4会合体形成を誘導させることができる。また、会合体がバクテリオファージMS2のキャプシドである場合には、19塩基からなる特定の配列を含んだRNAと結合し、そのRNAとの結合により、強制的に会合体を形成させることができる。これまで、結晶構造解析が報告されているウイルスのキャプシドおよびフィコシアニン等のウイルスキャプシドではない会合体の大部分については、会合体を形成を誘導させるための条件がそれらの結晶化もしくは結晶構造解析を報告した文献によって明らかにされているので、その条件を利用して会合体を形成させることができる。
会合させる前、若しくは会合後再度会合した会合ユニットを解離させて、会合ユニットに解析目的分子およびスペーサーを結合させる。なぜなら、解析目的分子およびスペーサーは会合体内部に配置されている必要があるため、会合体形成後解析目的分子やスペーサーを会合体内部挿入し、結合させることは、一部の核酸および低分子量の分子を除いて、難しいからである。解析目的分子が会合体形成時に会合体の内側に配置されるように、会合前に予め解析目的分子を結合させ、その後に会合体を形成させるためには、どのような条件下でも自発的に会合体を形成してしまう会合ユニットよりも、ある特定の条件下で会合体を形成する会合ユニットを用いることが好ましい。具体的には、ヘパドナウイルス科B型肝炎ウイルスのキャプシドである場合には、ホモダイマーになるように会合体形成を誘導させ、解析目的分子をその間にスペーサーにより連結することにより挿入する。その結果、120個の融合タンパク質で構成されることが予想され、HBcAgタンパク質2分子と解析目的分子1分子で構成され、互いに同じ立体構造を有しているものと考えられる。
解析目的分子が2量体の場合、キャプシドと解析目的分子のスペーサーにより連結する。その結果、240個の融合タンパク質で構成されることが予想され、HBcAgタンパク質2分子と解析目的分子2分子で構成され、互いに同じ立体構造を有しているものと考えられる。
また、HBcAgT3会合体の場合は、HBcAgT4同様に会合ユニットであるHBcAgを大腸菌菌体内に大量かつ高濃度に発現させることによって、HBcAgT3会合体形成を誘導させることができる。
具体的には、ヘパドナウイルス科B型肝炎ウイルスのキャプシドである場合には、ホモダイマーになるように一定条件下会合体形成を誘導させ、解析目的分子をその間にリンカーにより連結することにより挿入する。その結果、90個の融合タンパク質で構成されることが予想され、HBcAgタンパク質2分子と解析目的分子1分子で構成され、互いに同じ立体構造を有しているものと考えられる。
解析目的分子が2量体の場合、キャプシドと解析目的分子のリンカーにより連結する。その結果、180個の融合タンパク質で構成されることが予想され、HBcAgタンパク質2分子と解析目的分子2分子で構成され、互いに同じ立体構造を有しているものと考えられる。
(12.HBcAgT4会合体との結合)
例えば、HBcAgT4会合体を会合体として利用する場合、既に報告されているHBcAgT4会合体の立体構造上、HBcAgT4会合体の内側に露出しているアミノ酸の直前または直後に解析目的分子を結合させるのが好ましい。さらに好ましくは132番アミノ酸から152番アミノ酸までのいずれかのアミノ酸の直後である。解析目的分子であるタンパク質を会合ユニットを構成するタンパク質へ融合させる部位は、会合体の結晶構造解析の結果得られた立体構造座標をコンピューターグラフィックスを用いて観察し、内側に露出しているアミノ酸を特定することで容易に決めることができる。また、会合ユニットを構成するタンパク質と導入する解析目的分子であるタンパク質との間にスペーサーとして任意のアミノ酸配列を挿入してもよい。特に、このアミノ酸挿入は、結合させた解析目的の分子が会合体の会合状態または会合体の表面形状に影響を与えてしまい、会合体単独と同じ条件で結晶が得られなかった場合に有効な手段である。
(13.HBcAgT3会合体との結合)
例えば、HBcAgT3会合体を会合体として利用する場合、既に報告されているHBcAgT3会合体の立体構造上、HBcAgT3会合体の内側に露出しているアミノ酸の直前または直後に解析目的分子を結合させるのが好ましい。さらに好ましくは132番アミノ酸から152番アミノ酸までのいずれかのアミノ酸の直後である。解析目的分子であるタンパク質を会合ユニットを構成するタンパク質へ融合させる部位は、会合体の結晶構造解析の結果得られた立体構造座標をコンピューターグラフィックスを用いて観察し、内側に露出しているアミノ酸を特定することで容易に決めることができる。また、会合ユニットを構成するタンパク質と導入する解析目的分子であるタンパク質との間にスペーサーとして任意のアミノ酸配列を挿入してもよい。特に、このアミノ酸挿入は、結合させた解析目的の分子が会合体の会合状態または会合体の表面形状に影響を与えてしまい、会合体単独と同じ条件で結晶が得られなかった場合に有効な手段である。
(14.精製)
以上のように設計され、作製された会合ユニットを会合させ、会合体を形成させる。当然会合体は会合ユニットに比べ、大きくかつ高分子量である。この大きさおよび分子量の違いを利用して、例えば公知の精製法であるゲルクロマトグラフィー等の分子ふるいや遠心操作で会合体を形成しないものや不純物を取り除けば、会合体は容易に精製することができる。例えば、HBcAgT4会合体の場合、蔗糖密度勾配法を用いた遠心操作で容易に精製することができる。また、蔗糖密度勾配法では会合状態の異なるHBcAgT4会合体とHBcAgT3会合体とを分離することができる。
(15.結晶化)
会合体間の相互作用、すなわち非共有結合性の分子間相互作用を通じて、会合体は結晶化する。会合体間の相互作用が異なれば、その結晶化条件も異なったものになってしまう。本発明で用いられる会合体は、会合体間の相互作用に影響を与えない、すなわち会合体表面の形状、電荷状態に影響を与えることのない様に会合体内部に解析目的分子を配置させた会合体である。そのため、この会合体は、解析目的分子を結合させていない会合体と同様の会合体間の相互作用を通じて、同様の結晶化条件で結晶化することができる。
具体的には、解析目的分子を結合させた会合体の結晶の調製は以下の手順で進めることができる。得られた会合体は、解析目的分子を結合させていない会合体と同等の条件下で、一般的なタンパク質結晶化法を利用して結晶化することができる。例えば、解析目的分子を結合させたHBcAgT4会合体の場合、解析目的分子を結合させていないHBcAgT4会合体と同等の結晶化条件(サマンサ・エー・ワイニー他(Samantha A. Wynne et al.)モレキュラー・セル(Molecular Cell)、ザ・クリスタル・ストラクチャー・オブ・ザ・ヒューマン・ヘパタイテス・ビー・ビロス・キャプシド(The crystal structure of the human hepatitis B virus capsid.)、米国、1999年、第3巻、p.771-780)により、最も一般的に利用されているハンギングドロップ法を用い結晶化することができる。他にも、例えば解析目的分子を結合させたバクテリオファージφx174キャプシドの場合、既に報告されている解析目的分子を結合させていない会合体の結晶化条件(テージェ・ドックランド他(Terje Dokland et al. )、ネイチャー(Nature)、ストラクチャー・オブ・ア・ヴァイラル・プロキャプシド・ウィズ・モレキュラー・スキャフォールディング(Structure of a viral procapsid with molecular scaffolding)、英国、1997年、第389巻、p.308-313)と同等の結晶化条件により、結晶化することができる。他のウイルスキャプシドやフィコシアニン会合体等、既に結晶構造解析が報告されている会合体については、その結晶化条件が既知であり、それらを用いた本発明の結晶も同等の結晶化条件で結晶化することができる。
(16.結晶解析)
結晶化したタンパク質の立体構造を解析する方法としては、X線回折、中性子線回折、電子線回折いずれの方法を用いても解析することができるが、X線回折を用いた結晶構造解析が最も一般的である。通常のX線回折装置を用いてもよいが、例えば、複数の波長の異なる高輝度X線を同時に照射することができるSPring-8等の放射光実験設備のビームラインを利用して解析することにより、短時間でかつ精度のよい回折データおよび立体構造座標を得ることが可能である。HBcAgT4会合体等は結晶構造解析の対象としては比較的大きな粒子である。そのため、放射光実験設備のビームラインとしては、Bending Magnet方式のビームラインよりもアンジュレーター方式のビームラインの方が、解析に適している。
通常、タンパク質等の生体高分子のX線結晶構造解析においては、解析対象の立体構造が未知である場合、位相問題を解決するために重原子同型置換体結晶を作成する必要がある。しかし、本発明の結晶の場合、例えば解析目的分子を内包するHBcAgT4会合体結晶の場合、HBcAgT4会合体の結晶解析で用いた位相および原子座標をそのまま利用することができる。
(17.分子設計への利用)
結晶構造解析の結果得られた解析目的分子の原子座標を用いることによって、解析目的分子に結合もしくは作用する分子を設計することができる。また、解析目的分子が複合体である場合は、複合体を形成している分子間の相互作用を解析することによって、より容易に分子設計することができる。
設計可能な分子の種類は、タンパク質等の高分子である。代表的な設計手法には、例えば、A)対話式の分子モデリングシステムを利用しコンピューターグラフィックス上に解析目的分子を表示し視覚的に解析し設計する方法、B)解析目的分子の結合部位にフィットする分子を自動的に作成するプログラムを使う方法、C) 化合物データベース中の個々の化合物を解析目的分子の結合部位に自動的にフィットさせてうまくフィットする化合物を見つけだす、 in silicoスクリーニングと呼ばれる方法、などがある。これらの手法やそれ以外の手法を単独若しくは適宜組み合わせて使って分子設計することができる。A)の方法で利用できる対話式の分子モデリングシステムとしては、例えばTRIPOS社のSYBYL、Acceralys社のDiscovery Studio やInsightII、CGC社のMOE等が市販されており、これらは、Windows(登録商標)2000もしくはLinuxが稼働するパソコン上で利用可能である。B)の方法は、CAVEAT, Leap-Flog等のプログラム、C)の方法は、FlexX, DOCK等のプログラムが市販若しくは大学等から入手でき、利用できる。
本発明の結晶は様々な複合体を同じ結晶化条件で作成可能であるため、それらの解析結果からより容易かつ精密に分子設計することができる。例えば、ある酵素とその酵素に対する酵素阻害活性の強さが異なる一連の阻害剤との複合体を解析することによって、阻害剤の活性の強弱が酵素・阻害剤間のどの相互作用の有無や強弱で生じているかを理解することができる。その結果、より活性の強い阻害剤を設計することができる。さらに、阻害剤の分子構造中で活性発現に寄与している部分と寄与していない部分とを特定できるため、活性を弱めることなく阻害剤の物性や経口吸収性・代謝安定性・毒性などを改善するための分子設計も可能である。また、これら阻害剤と別の酵素との複合体の解析を行えば、一方をより選択的に阻害する阻害剤を設計することができる。酵素阻害剤に限らず、複数の複合体結晶の解析結果を用いることで、より精度の高い分子設計が可能となる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、何らこれに限定されるものではない。本発明の範囲は、実施例に示す特定の実施形態よりも、発明の詳細な説明の項目中で記述した内容により、請求の範囲が定義されるべきものである。
実施例1 HBcAgと緑色蛍光タンパク質(GFP)の融合タンパク質を会合ユニットとし、GFPを解析目的分子とした場合の実施例
1. 遺伝子の調製
HBcAgの遺伝子及びクラゲ由来緑色蛍光タンパク質GFP遺伝子及び発現ベクターを材料として、制限酵素及びDNAポリメラーゼを用いて、発現ベクターのマルチクローニングサイトの5‘側にHBcAgの1〜149番アミノ酸をコードする遺伝子1(配列番号1)を、さらに3’側にHBcAgの1〜149番アミノ酸をコードする遺伝子2(配列番号2)を導入し、HBcAgを2つ含む遺伝子発現ベクターを構築した。さらにHBcAgの5’側、3‘側または二つのHBcAgの間にGFPを導入した。GFP遺伝子はClontech社製の遺伝子を用いた。HBcAg遺伝子は、慢性活動性B型肝炎患者の血清より作成したcDNAライブラリーを用いて、クローニングした遺伝子を用いた。発現ベクターはNovagen社製pET20b+を使用した。
2.スペーサーの設計
HBcAg遺伝子とGFP遺伝子を連結する際は、HBcAgの5’末端、3‘末端または二つのHBcAgの間に導入することができる。HBcAgの5’末端に導入の場合は、GFPの3’末端にグリシン、セリン、セリンの3種のアミノ酸の繰り返し数を2,4,6,8,10,12とするDNAを設計し結合させた(配列番号3〜8)。HBcAgの3‘末端に導入する場合はGFPの5’末端にグリシン、セリン、セリンの3種のアミノ酸をコードするDNAを結合した(配列番号9)。最後に二つのHBcAgの間にGFPを導入する場合は、GFPの3‘末端にグリシン、セリン、セリンの3種のアミノ酸の繰り返し数を2,4,6,8,10,12とするDNAを設計し結合させ、5’末端にグリシン、セリン、セリンの3種のアミノ酸からなる遺伝子を融合した(配列番号10〜15)。
3. 会合体の調製
1.2.で得られた遺伝子を用いて、次のように発現誘導、溶菌、遠心、硫安沈殿、透析、蔗糖密度勾配法およびゲル濾過クロマトグラフィーによる精製を行い、結晶化に適するように高純度に精製した会合体粒子を得た。
すなわち、HBcAgのみの発現用ベクターおよびGFPを導入した発現ベクターを大腸菌BL21に組み込み、16時間培養後、IPTG(イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド)を使って発現誘導した。さらに3時間培養後、15分間8,000rpmで遠心操作し集菌した。このように菌体内に高濃度の融合タンパク質を発現させることによって、融合タンパク質は強制的に会合体を形成した。形成された会合体を単離精製するため、さらに以下の操作を行った。PBS(リン酸塩)バッファーにて菌を懸濁し、超音波にて10秒間3回破砕した。さらに、20分間10,000rpmで遠心操作をして、細胞片を取り除いた。遠心操作後の上澄みに硫安((NH4)2SO4)を濃度20%になるように加え、それぞれ、二つのHBcAg単独および二つのHBcAgとGFPとの融合タンパク質を含んだ会合体粒子を沈殿させた。ペレット(沈殿物)をPBSバッファーに再溶解させ、蔗糖密度勾配法(60%〜5%)により、分取した。このとき、分取すべき会合体粒子を含んだ画分は、SDS-PAGEを使って確認した。その結果、HBcAgのみのものは蔗糖濃度が30%で、GFPを含んでいるもののうち、スペーサーの繰り返し数6,8,10において40〜50%濃度中に回収されることが判明した。さらに、ゲル濾過クロマトグラフィー(ハイロードスーパーデックス300 HR26/60 、アマシャム社)により精製し、5mM Tris-HCl, 150mM NaCl溶液を用いて透析した結果、結晶化に適する高純度に精製された会合体粒子を得た。
4.結晶の調製
Hampton Research社のHampton Crystal Screen I およびIIを使って、ハンギングドロップ法とよばれる蒸気拡散の手法により、結晶化条件を検討した結果、遺伝子1由来の(融合タンパク質を含まない)会合体粒子の結晶および遺伝子2由来の(融合タンパク質を含んだ)会合体の粒子の結晶が得られた。
まず、会合体粒子濃度20mg/mlの溶液(5mM Tris-HCl, 150mM NaCl(pH7.5))に、等量の結晶化バッファー(0.5M MgSO4, 4%(w/v) PEG 8000, 0.5M MES(pH6.5))を加えた4μlの液滴に、リザーバー側に結晶化バッファーと同じ組成のバッファー用いて平衡化させたとき、最も良い結晶が得られた。遺伝子1由来の結晶も遺伝子2由来の結晶も同じ条件で最も良い結晶が得られた。さらに、結晶化バッファーにD(-)-butanediolを濃度が30%(w/v)になるように加えた低温沈殿剤に得られた結晶を浸し、結晶を成長させ、温度100Kで窒素ガスを吹き付けて凍結した。ともに、最大60μm×60μm×600μm程度の大きさを有し、構造解析に供する結晶が得られた。
5.立体構造解析
融合タンパク質を含んだ会合体粒子の結晶は、SPring-8の放射光設備を利用して解析した。回折データはSPring-8のビームラインを使って、mar CCD 検出器で収集した。融合タンパク質を含んだ会合体粒子を構成する原子の3次元座標は融合タンパク質を含まないHBcAgT4会合体粒子の3次元座標を利用して、分子置換法により決定した。
まず、融合タンパク質を含まないHBcAgT4会合体粒子において決定された座標をそのまま用い、融合部分のGFPタンパク質のアミノ末端をHBcAgのカルボキシ末端に固定し、Protein Data Bankに公開されているGFPタンパク質の座標(PDB ID 1B9C)を回転操作することによりできる限りパターソン関数が一致する位置を決定し、融合タンパク質会合体の初期座標として用いた。得られた初期座標を用いて、精密化を行い融合タンパク質会合体の結晶の電子密度図を得た。更に、溶媒領域の電子密度の平滑化、ならびに、非結晶学的対称性を用いた電子密度の平均化の計算を行い、電子密度図上に、融合タンパク質会合体を構成するアミノ酸残基に相当する部位を同定した。
次に、アミノ酸残基に相当する部位の位置の精密化を行い、アミノ酸残基の同定を行った。この操作を繰り返し行い、HBcAgタンパク質にGFPタンパク質を融合した融合タンパク質の3次元構造座標を同定した。収集データについて、まず空間群は結晶のつまり方を示すものであり、ユニットセルは結晶の繰り返し単位を表す。通常6面体であるので、A,B,Cは3つの辺の長さである。β(°)は辺A,Cのなす角を表す。分解能はブラックの法則で2つの面の間でX線の反射の起こる条件である。R−割合(%)は、回折点を測定するとき、っCDカメラを用いるが、回折されたX線は四方八方に飛び散るので、全部を拾うことができない。そのため結晶を少し回すごとにデータを集めその際強弱が発生するのでその指標を意味する。この段階で、当業者において結晶パラメータの内構造座標の正確さの指標とされているR因子は、6Åから4.5Åのブラッグ反射角を持つ回折像から得られる構造因子を用いた場合、R=23.7%であった。更に精密化の段階で独立に精密化の計算に入れなかった構造因子から計算されるR因子(当業者においてFree R因子と呼ばれている因子)はR=25.8%であった。更に各原子間の結合距離及び結合角の理想状態からの2乗平均平方根誤差は、それぞれ0.015Å及び2.3度であった。温度因子は、それぞれの原子が結晶中で熱により振動していると考えたとき、それらの原子は振動しているためうまく回折できないことを表す因子で、ウイルスの場合は、約40程度である。これらの解析にはプログラムパッケージCNXを用い、プログラム設定値となる収集データ、データとして得られた結晶パラメータを表1に記載した。
Figure 2006230350
得られた立体構造によると、会合体はHBcAgタンパク質にGFPタンパク質を融合した融合タンパク質120個で構成されており、それら融合タンパク質は互いに同一の分子種および同一の分子数、すなわちHBcAgタンパク質2分子とGFPタンパク質1分子で構成されていた。そして、120個の融合タンパク質は互いに同じ立体構造を有しており、得られたそれぞれの座標を回転・並進操作によって重ね合わせることによって、融合タンパク質を構成しているアミノ酸残基は互いに対応付けすることが可能であった。
本発明は、ウイルスのキャプシドタンパク質と解析目的分子間に最適なスペーサー利用し、キャプシド内部にある解析目的分子を含む結晶およびその結晶を利用した解析目的分子であるタンパク質の立体構造解析に応用できる。
HBcAgT4会合体の断面図である。 会合体内部に解析対象の分子と結晶性会合体とを、スペーサーを用いて結合させ、内包させた会合体の模式図である。
符号の説明
A:内側の半径(11.2 nm)
B:内側の表面積(1576 nm2)
D:解析対象分子B
L:スペーサー
1:サブユニット1
2:サブユニット2

Claims (9)

  1. 会合ユニットが複数個会合した会合体を含む結晶であって、繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを介して会合ユニットと解析目的分子が結合し、該解析目的分子が該会合体の内部に配置していることを特徴とする結晶。
  2. 該繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーが2残基以上5残基以下のアミノ酸配列からなる請求項1に記載の結晶。
  3. 該繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを構成するアミノ酸残基が環状構造を有さない請求項1または2記載の結晶。
  4. 該繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを構成するアミノ酸残基が脂肪族アミノ酸、ヒドロキシアミノ酸、含硫アミノ酸および酸性アミノ酸からなる群より選択される1種以上である請求項1〜3のいずれかに記載の結晶。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の結晶を作製するための遺伝子発現ベクターであって、解析目的分子、会合ユニットならびにスペーサーをコードする遺伝子を含む遺伝子発現ベクター。
  6. 該会合ユニットがウイルスのキャプシドタンパク質若しくはその変異体タンパク質であることを特徴とする請求項5に記載の遺伝子発現ベクター。
  7. 該キャプシドタンパク質がヘパドナウイルス科ウイルスのキャプシドタンパク質であることを特徴とする請求項6に記載の遺伝子発現ベクター。
  8. 該ヘパドナウイルス科ウイルスがB型肝炎ウイルスであることを特徴とする請求項7に記載の遺伝子発現ベクター。
  9. 結晶化可能な会合ユニットと解析目的分子が繰り返し構造を有するペプチドからなるスペーサーを介して融合している融合タンパク質を生産する工程と、会合ユニットを会合させて目的分子を含む結晶を生産する工程を有することを特徴とする結晶の製造方法。
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