JP2006219022A - 弾性導電車輪及びその製造法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 優れた導電性が効果的に実現され得る弾性導電車輪と、そのような弾性導電車輪を有利に製造する方法を提供すること。
【解決手段】 ホイール部材12の外周面に対して、ニッケルメッキされた炭素繊維24を配合してなるゴム材料を用いて導電タイヤ部材14を一体的に成形する際に、かかる導電タイヤ部材14の外周面上に生じたバリ44を切除して、凸状の接地面を形成することによって、そのようなバリ切除部において、炭素繊維24の少なくとも一部が接地面に対して露呈するようにして、導電キャスター10を形成した。
【選択図】 図 2

Description

本発明は、弾性導電車輪及びその製造法に係り、特に、電気導電性を効果的に高め得た弾性導電車輪と、そのような弾性導電車輪を有利に製造することの出来る方法に関するものである。
近年、高度な電子化社会の到来により、物づくりは、温度や湿度の管理、異物の混入防止や付着防止等、様々な観点から、クリーンルーム化された環境において行われるようになってきている。そして、そのような環境下においては、静電気が発生し易く、この静電気によって、各種の問題が発生する恐れがあり、このため、各種物品の搬送に不可欠なキャスター(車輪)に対しても、帯電防止性能乃至は導電性能の向上、特に後者の特性改善が、強く求められている。
そこで、そのようなキャスターに帯電防止性能を付与すべく、例えば、特開平8−83512号公報(特許文献1)や特開平11−222003号公報(特許文献2)に明らかにされているように、キャスターを与えるタイヤ部材として、その構成材料に、カーボンブラックや、金属粉末、金属繊維等の導電材を単独乃至は組み合わせて配合した、導電性の弾性材料を用いて形成されてなるものが、採用されてきている。
ところで、上述せる如き導電材のうち、最も一般的に用いられているカーボンブラックを配合したものにあっては、カーボンブラックによってタイヤ部材の色が黒色に限定されてしまい、望みの色を付与することが出来ず、デザイン性に劣るといった欠点があることに加えて、ブレーキや横滑り等によって、タイヤ部材が路面や床面等に擦りつけられた際に、それら路面や床面上にタイヤの黒い跡が生じてしまい、汚染されるといった問題を内在するものであった。
一方、導電材として金属粉末や金属繊維を配合したものにあっては、カーボンブラックを配合したものよりも導電性が有利に付与されることとなるが、金属繊維は比重が大きいために、高い導電性を得るべく多くの金属繊維を配合したりすると、重量が嵩んだり、弾性材料が硬くなり過ぎたり、或いはタイヤ表面がざらつく等の、タイヤ部材の特性が悪化せしめられる恐れがあった。加えて、金属粉末や金属繊維が高配合された弾性材料からなるタイヤ部材を使用すると、タイヤ部材の表面が磨耗することによって、配合されていた金属粉末や金属繊維が金属粉となって空気中に飛散してしまう恐れもあり、クリーンルームでは使用できないといった問題もあった。
また、そのような金属繊維に代わって、導電材として炭素繊維を用いるようにすれば、重量が嵩む等のタイヤ特性の悪化を回避することが出来るのではあるが、金属繊維を与えるニッケルや鉄、アルミニウム、銅等の金属類と比べて、炭素繊維は、固有抵抗値が低く、所望とする導電性を実現することが困難であった。そこで、このような炭素繊維に対して、ニッケル等の金属メッキを施したものを用いることによって、炭素繊維単体で配合するよりも効果的に導電性を付与することが出来ると共に、重量やタイヤ硬度の特性悪化や磨耗によって金属紛が発生してしまう等の問題を、有利に解消することが出来るところから、そのような金属メッキされた炭素繊維を用いてタイヤ部材を形成することが、近年、検討されている。
しかしながら、これらの導電性を有した繊維を、タイヤ部材を与える弾性材料に配合して、タイヤ部材の導電性を得る場合にあっては、タイヤ部材を成形するための成形型の成形キャビティ内に、それらの導電性繊維を配合した弾性材料が導入されることとなるが、その際に、かかる弾性材料の成形キャビティ内における流れ方向において、弾性材料に配合された繊維が配列し、成形キャビティ面との間には弾性材料が介在するようになってしまうところから、成形されたタイヤ部材の表面部分において、導電性繊維が横向きに(表面に沿って)配向してしまい、表面に露呈され難くなって、導電性を与える繊維と路面との間の接触が妨げられ、その結果、配合される繊維の割合に比して、充分な導電性能が実現され得なくなってしまうという問題を内在するものであった。
特開平8−83512号公報 特開平11−222003号公報
ここにおいて、本発明は、かかる事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた導電性が効果的に実現され得る弾性導電車輪と、そのような弾性導電車輪を有利に製造する方法を提供することにある。
そして、本発明者等は、そのような課題を解決するために種々なる検討を重ねた結果、成形型を用いてタイヤ部材を成形する際に、その複数に分割された成形型の合わせ目部分(パーティングライン)には必然的にバリが発生することとなるが、製品として仕上げるためのバリ取り作業を実施したとき、その発生するバリを切除した箇所において、車輪中央の導電性ホイールとの間の抵抗値を測定し、その導電性を評価したところ、バリの発生していない箇所と導電性ホイールとの間の抵抗値よりも小さな抵抗値を示し、より導電性が高くなることを見出したのである。
すなわち、本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものであって、その要旨とするところは、導電性のホイール部材の外周部に、導電性繊維を配合してなる弾性材料を用いて形成された導電性タイヤ部材が一体的に固設されてなり、更に該導電性タイヤ部材の外周面上に生じたバリの切除によって、タイヤの凸状接地面が形成されていると共に、かかる切除部において、前記導電性繊維の少なくとも一部が、該凸状接地面に露呈されていることを特徴とする弾性導電車輪にある。
なお、このような本発明に従う弾性導電車輪の望ましい態様の一つによれば、前記バリが、前記導電性タイヤ部材の外周面の中央部において、該外周面の全周に亘って生ぜしめられるようになっており、また、本発明の別の望ましい態様の一つによれば、前記導電性繊維が、金属メッキされた炭素繊維であることを特徴としている。
加えて、本発明に従う弾性導電車輪の好ましい態様の他の一つによれば、前記弾性材料が、ゴム材料とされ、更に別の好ましい態様の他の一つにあっては、前記ゴム材料に対して、補強剤としてのカーボンブラックに代えて、ホワイトカーボンが配合せしめられていることを特徴とする。
ところで、本発明にあっては、前述した弾性導電車輪を製造する方法も、また、その対象とするものであって、そこでは、成形キャビティの前記導電性タイヤ部材形成部位におけるタイヤ外周面形成部位の中央部において軸方向の二つの部分に分割された成形型を用いて、該成形型の成形キャビティ内に前記導電性ホイール部材を配置せしめた後、前記導電性繊維を配合してなる弾性材料を供給することにより、前記導電性タイヤ部材の成形を行ない、更にその後、その成形された導電性タイヤ部材の、前記成形型の分割部位に対応する外周面上に全周に亘って生じたバリを切除することを特徴とする弾性導電車輪の製造法を、その要旨としている。
このように、本発明に従う弾性導電車輪によれば、導電性ホイール部材の外周部に、導電性繊維が含有せしめられた導電性のタイヤ部材が、一体的に形成された構造とされているところから、車輪の電気抵抗値を効果的に低減せしめることが出来ると共に、かかるタイヤ部材の外周面が径方向外方に凸状とされた接地面とされているために、大きな荷重の際には、タイヤ部材が弾性変形して平坦な接地面となり、大きな接地面積をもって荷重を受けることが出来ると共に、小さな荷重の際には、そのような凸状とされた外周面の一部が接地して、接地面積が小さくなるため、手押し台車等に使用するキャスターとして、良好な転がり抵抗とすることが可能となる。
そして、本発明にあっては、かかるタイヤ部材の外周面上に生ぜしめられたバリ部分に存在する導電性繊維が、タイヤ部材の成形に際しての材料の流れに従って、タイヤ部材側より径方向外方に向かって配向せしめられている状態下において、そのようなバリ部分を切除することによって、導電性繊維も同時に切断されて、その切断端面がバリ切除部位に露呈されることとなると共に、そのようなバリ切除部位を含んで外部に凸状とされた接地面(外周面)が形成されているところから、タイヤ表面には、導電性繊維の少なくとも一部が露呈せしめられた状態となるのであり、その結果、タイヤ部材に配合された導電性繊維が、効果的に路面に対して接触せしめられることとなり、以て、車輪と路面との間の電気抵抗値を、有利に低減することが可能となるのである。
なお、本発明に従う弾性導電車輪の望ましい態様の一つによれば、タイヤ部材の外周面の軸方向中央部において、その全周に亘って形成されたバリを切除して、凸状の接地面が形成されているところから、タイヤ部材が路面上で回転しても、常にバリが切除された部位を路面に対して押し付けることが可能となり、以て、車輪と路面との間の電気抵抗値を小さくする効果を、より有効に発揮することが出来ることとなる。
また、本発明に従う望ましい態様に従って、タイヤ部材に配合せしめられる導電性繊維として、金属メッキされた炭素繊維を用いるようにすれば、従来の金属繊維に比べて、機械的強度に優れていることに加えて、耐摩耗性が良好であり、タイヤ部材の耐摩耗性が効果的に向上せしめられ得ると共に、使用によって荷重が繰り返し負荷されて、タイヤ部材が弾性変形させられても、従来の導電車輪に比して、導電性の低下が極めて有利に抑制され、より一層長期に亘って、導電性を維持することが出来るという格別の特徴を発揮することとなる。加えて、この金属メッキされた炭素繊維は、その配合量(重量基準)を、従来の金属繊維の配合量よりも少なくすることが出来るところから、同程度の抵抗値乃至は導電性であっても、導電材の添加による弾性材料の硬化等、タイヤ部材の特性の悪化も有利に抑制乃至は防止することが出来る利点をも、有しているのである。
さらに、タイヤ部材を形成する弾性材料として、ゴム材料を用いるようにすれば、路面や床面等から受ける衝撃を有利に吸収せしめることが可能であると共に、そのようなゴム材料に対しての補強剤として、ホワイトカーボンが配合せしめられることによって、補強剤としてカーボンブラックが配合せしめられた黒色のゴムのように、路面を擦った際に、路面を黒く汚染してしまう恐れがないと共に、ゴム材料に各種の着色剤を配合せしめることによって、任意の色に着色された弾性導電車輪を得ることも可能となる。
一方、本発明に従う弾性導電車輪の製造方法によれば、タイヤ部材を成形するための成形型が、車輪の軸方向の二つの部分に分割され、その分割位置が、タイヤ部材の接地面となる外周面を形成する部位の中央部とされているところから、成形型の成形キャビティ内にホイール部材を配置せしめた後、成形キャビティ内にゴム等の弾性体材料を注入して、ホイール部材とタイヤ部材を一体成形する際に、タイヤ部材の外周面の中央部の全周に亘って、効果的にバリを発生させることが可能となるのであり、そして、そのような発生したバリを切除することによって、本発明に従う弾性導電車輪を有利に形成することが出来るのである。
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明することとする。
先ず、図1及び図2には、本発明に従う弾性導電車輪である導電キャスター10の一例が、平面形態及び断面形態において、それぞれ示されている。そして、それらの図より明らかな如く、導電キャスター10は、ここでは、所定の金属材料にて形成されたホイール部材12と、そのようなホイール部材12の外周部に、ゴム等の弾性材料に所定の導電材を混入せしめたものから形成された導電タイヤ部材14が一体的に固着されて、全体として、平坦な円柱状形状を呈している。
より詳細には、ホイール部材12は、ここでは、鉄やステンレス等の導電性を有した金属材料を用いて、その外周面に導電タイヤ部材14が外挿される外筒16と、かかる外筒16の内側に配置された内筒18とが、それらの軸方向中央部において板状の連結部材20で連結されることによって、工字状の横断面を呈するように形成されている。そして、内筒18の内周面は、軸部材が貫通される軸穴22とされており、そのような軸穴22に対して、導電性を有しているスリーブやベアリング等の、公知の各種の軸受け部材を介して、或いは直接に、軸部材が挿入されて、ホイール部材12と軸部材との導電性が確保された状態において、用いられることとなる。
そして、そのようなホイール部材12に外挿される導電タイヤ部材14は、本実施形態においては、天然ゴムをベースにホワイトカーボン(シリカ)を主な添加剤として配合したゴム材料に対して、その表面に金属メッキ処理を施した炭素繊維24が均一に混入せしめられたものを用いて、円環状に形成されており、そのような導電タイヤ部材14が、導電性を有した接着剤等を用いて、ホイール部材12に固着されている。そして、導電タイヤ部材14の路面との設置面となる外周面は、図2からも明らかなように、径方向外方に向かって凸状とされ、導電キャスター10の軸方向(導電キャスター10の厚さ方向)の略中央部位が凸状の頂点部分となる、なだらかな円弧状となっている。
このような導電タイヤ部材14の外周面の略中央部分は、導電タイヤ部材14を成形する際に発生したバリを切除して、凸状の外周面が形成されているところから、図2の部分拡大図にも示すように、かかる導電タイヤ部材14を形成する弾性材料に配合された炭素繊維24の向きが、径方向外側、つまり接地面に向かって延びるように配向されて、その一部が、バリ切除操作によって切断され、そしてその切断端面が凸状外周面のバリ切除部位に存在していることにより、接地面に対して効果的に露呈されることとなる。このように、内部に配合された炭素繊維24が、接地面に露呈されていることによって、かかる炭素繊維24を、接地面に対して効果的に押し付けて、電気的に導通させることが出来、その結果、導電キャスター10の導電性が有利に向上せしめられることとなるのである。
また、導電タイヤ部材14が、弾性材料を用いて、その外周面が凸状とされているところから、大きな荷重が加わった際には、かかる導電タイヤ部材14が弾性変形し、平坦な接地面となり、大きな接地面積をもって荷重を受けると共に、小さな荷重が加わった際には、そのような凸状とされた外周面の一部が接地して、接地面積が小さくなるため、手押し台車等に使用する導電キャスターとして、良好な転がり抵抗とすることが出来るのである。さらに、かかる導電タイヤ部材14の凸状の外周面の軸方向中央部において、成形の際に生じたバリを切除して、内部に配合された導電性繊維の少なくとも一部が、接地面に露呈せしめられているために、導電キャスター10が路面上で回転した際に、導電タイヤ部材14のバリが切除された部位を常に路面に対して押し付けることが可能となり、以て、車輪と路面との間の電気抵抗値を小さくする効果が、より一層有効に発揮され得るのである。
なお、導電タイヤ部材14を与えるべく用いられる、金属メッキされた炭素繊維24としては、炭素繊維の表面に、例えば、ニッケルや鉄、アルミニウム、銅等の導電性に優れた金属がメッキされてなる、各種の公知のものを挙げることが出来る。そして、このような金属メッキされた炭素繊維にあっては、従来の金属繊維と比べて、比重が顕著に小さいところから、同一重量でも、ゴム材料に対してより多くの容量において添加することが出来ると共に、炭素繊維が有する優れた機械的特性と金属が有する電気特性とを兼ね備えているところから、優れた導電性がタイヤ部材14に付与されると共に、荷重が負荷された状態での使用においても、導電性の著しい低下が惹起されず、優れた導電性が長期に亘って維持されることとなり、更に、タイヤ部材14の耐摩耗性も有利に向上せしめられることとなる。また、このように金属メッキされた炭素繊維は、カーボンブラックのように、路面や床面に黒色のタイヤ跡を付けるものではないと共に、金属粉末のように摩耗によって金属粉を飛散せしめるものでもないという特徴をも有しているのである。
また、かかる金属メッキが施された炭素繊維24としては、従来から公知の各種繊維形態のものが適宜に選択されて、用いられ得るものであるが、本発明にあっては、特に、短繊維形態のもの、例えば、繊維径:1〜20μm、好ましくは5〜15μm、繊維長:0.5〜20mm、好ましくは5〜10mm程度のものが、好適に採用されることとなる。なお、かかる炭素繊維の繊維径や繊維長が、上述せる範囲から外れる場合には、金属をメッキすることが困難となったり、或いは弾性材料中に均一に混入せしめることが困難となったりする等の恐れがある。また、この金属メッキの施された炭素繊維は、その体積抵抗率が、炭素繊維の体積抵抗率に比して、極めて小さな値となっている。そして、このような金属メッキされた炭素繊維の中でも、特に、ニッケルでメッキされた炭素繊維が、好適に用いられることとなる。
ここで、金属メッキされた炭素繊維24の弾性材料への配合量は、目的とする体積抵抗値の導電タイヤ部材14を実現し得るように適宜設定されることが望ましく、一般に、弾性材料に金属メッキされた炭素繊維を合わせた合計量の20〜60重量%、好ましくは、30〜45重量%となる割合が、好適に採用されることとなる。これは、かかる配合量が上記範囲よりも少ない場合には、導電タイヤ部材14に対して帯電防止性を付与することは出来ても、キャスター10の抵抗値を104 Ω以下にすることが困難となり、このため、目的とする導電性能を実現することが出来なくなる恐れがあるからであり、また、上記範囲よりも多い場合には、主材である弾性材料の本来の特性が充分に発揮され得なくなると共に、導電タイヤ部材14の成形加工が困難となる傾向があるからである。
なお、導電タイヤ部材14を与える弾性材料には、必要に応じて、所望の色に着色するための着色剤や紫外線吸収剤等、従来よりキャスターのタイヤ部材を与える材料に添加されている公知の各種の添加剤が、適量において、適宜に添加、配合せしめられても、何等差支えない。
ところで、かかる図1及び図2に示される如き、本発明に従う弾性導電車輪である導電キャスター10を製作するに際しては、例えば、図3及び図4に示される如き手法が、有利に採用されることとなる。
すなわち、先ず、鉄やアルミニウム等の所定の金属材料を用いて、プレスや鋳造、切削加工等の各種の公知の加工方法によって形成される導電性のホイール部材12を準備し、そしてこのホイール部材12の、導電タイヤ部材14が固着せしめられる外周面30に対して、導電性を有する接着剤を塗布した後に、図3(a)に示すように、固定型32aと可動型32bとからなる所定の成形装置の、固定型32aの成形面34内にセットする。ここで、それら固定型32aと可動型32bとは、導電タイヤ部材14の外周面を形成する部位の略中央部、換言すれば、導電キャスター10の軸方向(厚さ方向)の中央部分において、二つに分割されている。また、それら二つの型32aと32bのパーティング面(合わせ面)には、後述するように、材料の注入口やエア逃がしも設けられている。
次に、このように、固定型32aの成形面34内に、ホイール部材12を保持した状態で、かかる固定型32aに向かって、可動型32bを接近移動させて(図3(b))、該固定型32aと可動型32bとを型合せすることにより、図3(c)に示されるように、それら固定型32aの成形面34と可動型32bの成形面36とホイール部材12の外周面30との間で、円環状の成形キャビティ38が形成せしめられる。
その後、図4(a)に示すように、固定型32aと可動型32bの型合わせ部(パーティングライン部)に設けられた、材料注入口となる供給口40を通じて、成形キャビティ38内に、金属メッキされた炭素繊維が均一に混入されたゴム材料を注入し、成形キャビティ38内をゴム材料にて充填せしめた後、一体加硫成形を行なう。このような導電タイヤ部材14の加硫成形の際には、固定型32aと可動型32bの型合わせ部において、成形キャビティ38内に注入されたゴム材料が、供給口40やエア逃がしに存在することとなる他、成形キャビティ40内からパーティングラインにおいて僅かに食み出すことによって、必然的にバリが発生することとなるが、そのようなバリ部分においては、図6(a)に示す如く、ゴム材料に配合された炭素繊維46が、成形の際に供給口40から注入されたゴム材料の流れに従って、導電タイヤ部材14の側からバリ44の先端側、つまり径方向外方に向かって配向せしめられている状態となっているのである。
そしてその後、型開きを行なうことによって(図4(b))、ホイール部材12に導電性ゴム弾性体からなる導電タイヤ部材14が加硫接着せしめられた一体加硫成形品42が得られるのである。ところで、このようにして得られた一体加硫成形品42においては、前述したように、図5(a),(b)に示す如く、導電タイヤ部材14の外周面の中央部分(型合わせ部分)に、略全周に亘ってバリ44が発生しているため、そのようなバリ44は、カッター等の刃物で切除せしめられることとなるが、そのようなバリ44を切除して、凸状の外周面を形成することによって、同時にかかるタイヤ部材14からバリ44に向かって延びる(配向した)炭素繊維24も切断されることとなるのであり、以て、図6(b)にも示す如く、タイヤ部材14の表面に対して、その内部に配合された炭素繊維24が、その切断面において、バリ切除部位で直接に露呈せしめられた状態となり、これによって、本発明に従う導電キャスター10が形成されることとなるのである。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述してきたが、それは文字通りの例示であって、本発明は、そのような実施形態の記載によって、何等、限定的に解釈されるものでないことが、理解されるべきである。
例えば、ホイール部材12は、本実施形態においては、鉄やアルミニウム等の金属材料にて形成されていたが、充分な導電性が確保されておれば、金属材料以外のもので形成されていてもよく、例えば、導電性を有する樹脂材料を用いて形成することも、勿論可能である。このように、ホイール部材12を樹脂製とすることによって、より軽量な導電キャスター10を形成することが可能となる。
また、導電タイヤ部材14を構成する弾性材料にあっても、上記したゴム材料の他、ポリウレタンエラストマー材料等の各種の弾性材料が、導電キャスター10に求められる清音性や走行性、防振性等の特性を満たすようにして適宜選択されて、採用されることとなる。例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー材料にて導電タイヤ部材14を形成する一方、ホイール部材12を、熱可塑性ポリウレタンエラストマー材料との一体的な接合性に優れている、ナイロン6等のナイロン樹脂材料にて形成することによって、金属製のホイール部材12と導電タイヤ部材14との接合に必要であった接着剤を用いることなく、例えば、先に導電タイヤ部材14を形成してから、ホイール部材12を形成する成形型にセットし、金属繊維の混入されたナイロン樹脂材料を加熱し、可塑化して、成形型の成形キャビティ内に充填してホイール部材12を成形することによって、導電タイヤ部材14とホイール部材12とが熱接着せしめられて、一体的に形成することが可能となるのである。
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもないところである。
以下に、本発明の代表的な実施例を示し、本発明を更に具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような実施例の記載によって、何等の制約をも受けるものでないことは、言うまでもないところである。
先ず、鉄製ホイール部材(12)の表面に対して、ショットブラスト処理と脱脂処理を行なった後、導電タイヤ部材(14)が加硫接着される部位に対して、下塗り接着剤としてCH205(ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド社製)を、上塗り接着剤としてCH6225(ロード・ファー・イースト・インコーポレイテッド社製)をそれぞれ塗布した。そして、そのようにして準備したホイール部材(12)を、図3、図4に示される如き固定型(32a)と可動型(32b)からなる成形金型内にセットした後、成形キャビティ(38)内に導電材料が均一に配合されたゴム材料を充填し、一体加硫成形を行い、本発明例1及び比較例1,2に係る導電キャスター(10)を作製した。なお、ゴム材料としては、下記表1に示される配合割合とされたNR系バッチ材料に対して、下記表2に示される配合割合において、導電材及び顔料が均一に配合されたものを、用いた。また、導電材としては、本発明例1および比較例1においては、繊維径:8μm、繊維長:6mm、比重:1.80である、ニッケルメッキされた炭素繊維(表2中、Ni/CFと略記する)を用い、比較例2においては、導電カーボン・ブラックを、用いた。
Figure 2006219022
Figure 2006219022
そして、このようにして得られた本発明例1及び比較例1,2に係る導電キャスター(10)を用いて、以下の如き車輪特性試験を行った。先ず、それぞれのキャスターの抵抗値を、本発明例1及び比較例2にあっては、タイヤ部材(14)のバリ切断面とホイール部材(12)との間において、また比較例1にあっては、タイヤ部材(14)の表皮部とホイール部材(12)との間において、それぞれ測定した後、それぞれのキャスターに対して150kg/輪の荷重を負荷して、鉄鋼板路面上を、0.8km/時間の速度で、4000m走行させた後、キャスターの外観を目視で観察して、以下の評価基準で、車輪の特性を評価すると共に、得られた結果を、下記表3に併せて示した。
−評価基準−
[摩耗性]◎:走行跡が付く程度。
○:表皮が削れる程度。
△:表皮が削れ内部まで磨耗又は表面が荒れた状態。
[走行性]○:鉄鋼板路面上で滑らかに回転する。
×:鉄鋼板路面上で滑らかに回転しない。
[導電性]◎:抵抗値が50Ω以下。
○:抵抗値が50Ω〜103 Ω。
△:抵抗値が103 Ω以上。
Figure 2006219022
かかる表3の結果から明らかなように、本発明例1に係る弾性導電車輪(キャスター)にあっては、耐摩耗性、走行性及び導電性の何れにおいても、良好であることが分かる。
また、本発明例1の導電キャスター(10)を形成したときに発生したバリ(44)を切り出した円環状のものについて、その周方向と径方向の2点間の一定距離の抵抗値を測定したところ、周方向の10mmを測定した場合は30〜100Ωの抵抗値を、径方向の10mmを測定したところ10〜40Ωの抵抗値となった。これは、成形金型内で余分なゴム材料が、型合わせ部においてバリとして放射状に搾り出される際に、ゴム材料に配合されたニッケルメッキ炭素繊維が、導電タイヤ部材14の径方向外側に搾り出される流れに沿って、配向したため、径方向においてかかるニッケルメッキ炭素繊維同士の絡まりが多くなり、抵抗値がより小さくなったものと推測される。
本発明に従う弾性導電車輪である導電キャスターの一例を示す平面形態説明図である。 図1におけるA−A断面説明図である。 本発明手法に従って図1に示す導電キャスターを製造する一工程例を示す断面説明図であって、(a)は、固定型にホイール部材をセットする工程を、(b)は、固定型に対して移動型を接近させて型閉めを行なう工程を、(c)は、成形キャビティ内にホイール部材がセットされた状態で型合せした状態を、それぞれ示している。 本発明手法に従って導電キャスターを製造する図3に続く工程を示す断面説明図であって、(a)は、導電材が均一に混入されたゴム材料を成形キャビティ内に充填した状態を、(b)は、型開きを行い、ホイール部材に硬化したゴム材料が加硫接着されて、一体加硫成形品として得られた状態を、それぞれ示している。 本発明手法に従って導電キャスターを製造する際に得られる一体加硫成形品を示す説明図であって、(a)はその平面形態説明図を、(b)は正面形態説明図を、それぞれ示している。 図5に示される一体加硫成形品のバリ発生部を拡大して示す断面説明図であって、(a)は、バリ切断前の状態を、(b)は、バリ切断後の状態を、それぞれ示している。
符号の説明
10 導電キャスター
12 ホイール部材
14 導電タイヤ部材
16 外筒
18 内筒
20 連結部材
22 軸穴
24 炭素繊維

Claims (6)

  1. 導電性のホイール部材の外周部に、導電性繊維を配合してなる弾性材料を用いて形成された導電性タイヤ部材が一体的に固設されてなり、更に該導電性タイヤ部材の外周面上に生じたバリの切除によって、タイヤの凸状接地面が形成されていると共に、かかる切除部において、前記導電性繊維の少なくとも一部が、該凸状接地面に露呈されていることを特徴とする弾性導電車輪。
  2. 前記バリが、前記導電性タイヤ部材の外周面の中央部において、該外周面の全周に亘って生じたものである請求項1に記載の弾性導電車輪。
  3. 前記導電性繊維が、金属メッキされた炭素繊維である請求項1または請求項2に記載の弾性導電車輪。
  4. 前記弾性材料が、ゴム材料である請求項1乃至請求項3の何れか一つに記載の弾性導電車輪。
  5. 前記ゴム材料に対して、補強剤としてのカーボンブラックに代えて、ホワイトカーボンが配合せしめられている請求項4に記載の弾性導電車輪。
  6. 請求項1乃至請求項5の何れか一つに記載の弾性導電車輪を製造する方法にして、
    成形キャビティの前記導電性タイヤ部材形成部位におけるタイヤ外周面形成部位の中央部において軸方向の二つの部分に分割された成形型を用いて、該成形型の成形キャビティ内に前記導電性ホイール部材を配置せしめた後、前記導電性繊維を配合してなる弾性材料を供給することにより、前記導電性タイヤ部材の成形を行ない、更にその後、その成形された導電性タイヤ部材の、前記成形型の分割部位に対応する外周面上に全周に亘って生じたバリを切除することを特徴とする弾性導電車輪の製造法。
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