JP2006218546A - 硬質被覆層が高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 - Google Patents

硬質被覆層が高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具 Download PDF

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Abstract

【課題】 硬質被覆層が高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具を提供する。
【解決手段】 WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの合計平均層厚を有するTi化合物層、(b)中間層が、0.1〜3μmの平均層厚を有するCr層、(c)上部層が、1〜15μmの平均層厚、および化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、さらに、特定組成式:(Al1−XCrを満足すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、特定面の構成原子共有格子点の分布を算出しとき、特定の構成原子共有格子点分布グラフを示す(Al,Cr)層、で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる。
【選択図】 図5

Description

この発明は、特に各種の鋼や鋳鉄などの被削材の断続切削加工を、高速切削条件で行った場合にも、硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具(以下、被覆サーメット工具という)に関するものである。
従来、一般に、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された基体(以下、これらを総称して工具基体という)の表面に、
(a)下部層が、Tiの炭化物(以下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、炭酸化物(以下、TiCOで示す)層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)上部層が、1〜15μmの平均層厚、および化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、さらに、
組成式:(Al1−XCr、(ただし、原子比で、X:0.01〜0.1)、
を満足するAlとCrの複合酸化物[以下、α型(Al,Cr)23で示す)層、
以上(a)および(b)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる被覆サーメット工具が知られており、この被覆サーメット工具が、例えば各種の鋼や鋳鉄などの連続切削や断続切削に用いられることも良く知られるところである。
また、上記の従来被覆サーメット工具において、硬質被覆層の上部層であるα型(Al,Cr)23層が、通常の化学蒸着装置にて、
反応ガス組成:容量%で、AlCl:2.3〜4%、CrCl:0.04〜0.26%、CO:6〜8%、HCl:1.5〜3%、H2S:0.05〜0.2%、H2:残り、
反応雰囲気温度:1020〜1050℃、
反応雰囲気圧力:6〜10kPa、
の条件で蒸着形成されることも知られている。
さらに、上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層は、一般に粒状結晶組織を有するが、下部層であるTi化合物層のうちのTiCN層を、層自身の強度向上を目的として、通常の化学蒸着装置にて、反応ガスとして有機炭窒化物を含む混合ガスを使用し、700〜950℃の中温温度域で化学蒸着することにより形成して縦長成長結晶組織をもつようにすることも知られている。
さらに、上記の被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成するα型(Al,Cr)23層が、格子点にAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造、すなわち図1にα型(Al,Cr)23の単位格子の原子配列が模式図[(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図]で示される結晶構造を有する結晶粒で構成されることも知られている。
特開昭52−66508号公報 特開平6−8010号公報
近年の切削装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記の従来被覆サーメット工具においては、これを鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削や断続切削に用いた場合には問題はないが、特にこれを断続切削加工を高速加工条件で行うのに用いた場合には、硬質被覆層を構成するα型(Al,Cr)23層が十分な耐衝撃性を具備するものでないために、前記硬質被覆層にチッピング(微少欠け)が発生し易くなり、この結果比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、上記のα型(Al,Cr)23層が硬質被覆層の上部層を構成する被覆サーメット工具に着目し、特に前記α型(Al,Cr)23層の耐衝撃性向上を図るべく研究を行った結果、
(a)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層を構成する下部層であるTi化合物層を形成した後で、例えば通常の化学蒸着装置にて、酸化クロム(以下、Crで示す)層を0.1〜3μmの平均層厚で蒸着形成し、この上に上部層であるα型(Al,Cr)23層を蒸着形成すると、この結果のα型(Al,Cr)23層は、前記中間層として形成したCr層によって結晶配向および組織に強い影響を受け、材質的に改質されて、高温強度が一段と向上し、すぐれた耐機械的衝撃性を具備するようになることから、硬質被覆層の上部層が前記中間層として形成したCr層上に蒸着形成されたα型(Al,Cr)23層(以下、「改質α型(Al,Cr)23層」という)、下部層が上記Ti化合物層で構成された被覆サーメット工具は、特に激しい機械的衝撃を伴なう高速断続切削加工でも、前記硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮し、長期に亘ってすぐれた耐摩耗性を示すようになること。
(b)上記の従来被覆サーメット工具の硬質被覆層の上部層を構成するα型(Al,Cr)23層(以下、「従来α型(Al,Cr)23層」という)と上記(a)の改質α型(Al,Cr)23層について、
電界放出型走査電子顕微鏡を用い、図2(a),(b)に概略説明図で例示される通り、表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角[図2(a)には前記結晶面の傾斜角が0度の場合、同(b)には傾斜角が45度の場合を示しているが、これらの角度を含めて前記結晶粒個々のすべての傾斜角]を測定し、この場合前記結晶粒は、上記の通り格子点にAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現し、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフを作成した場合(この場合前記の結果から、Σ5、Σ9、Σ15、Σ25、およびΣ27の構成原子共有格子点形態は存在しないことになる)、上記従来α型(Al,Cr)23層は、図5に例示される通り、Σ3の分布割合が30%以下の相対的に低い構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、前記改質α型(Al,Cr)23層は、図4に例示される通り、Σ3の分布割合が60〜80%のきわめて高い構成原子共有格子点分布グラフを示し、この高いΣ3の分布割合は、上記中間層であるCr層の平均層厚によって変化すること。
なお、上記の改質α型(Al,Cr)23層および従来α型(Al,Cr)23層において、相互に隣接する結晶粒の界面における構成原子共有格子点形態のうちのΣ3、Σ7、およびΣ11の単位形態を模式図で例示すると図3(a)〜(c)に示される通りとなる。
(c)上記の改質α型(Al,Cr)23層は、α型(Al,Cr)23層自体が具備するすぐれた高温硬さと耐熱性に加えて、上記従来α型(Al,Cr)23層に比して一段と高い高温強度を具備するようになるので、これを硬質被覆層の上部層として蒸着形成してなる被覆サーメット工具は、同下部層であるTi化合物層が具備するすぐれた高温強度と相俟って、特に断続切削加工を高速切削条件で行うのに用いた場合にも、同じく前記従来α型(Al,Cr)23層を上部層として蒸着形成してなる従来被覆サーメット工具に比して、硬質被覆層が一段とすぐれた耐チッピング性を発揮すること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、WC基超硬合金またはTiCN基サーメットで構成された工具基体の表面に、
(a)下部層が、TiC層、TiN層、TiCN層、TiCO層、およびTiCNO層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
(b)中間層が、0.1〜3μmの平均層厚を有するCr層、
(c)上部層が、1〜15μmの平均層厚、および化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、さらに、
組成式:(Al1−XCr、(ただし、原子比で、X:0.01〜0.1)、
を満足すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60〜80%である構成原子共有格子点分布グラフを示す改質α型(Al,Cr)23層、
以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する被覆サーメット工具に特徴を有するものである。
以下に、この発明の被覆サーメット工具の硬質被覆層の構成層において、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)下部層のTi化合物層
Ti化合物層は、中間層であるCr層を介して、上部層である改質α型(Al,Cr)23層の下部層として存在し、自身の具備するすぐれた高温強度によって硬質被覆層の高温強度向上に寄与するほか、工具基体および前記Cr層のいずれにも強固に密着し、よって硬質被覆層の工具基体に対する密着性を向上させる作用を有するが、その平均層厚が3μm未満では、前記作用を十分に発揮させることができず、一方その平均層厚が20μmを越えると、特に高熱発生を伴なう高速切削では熱塑性変形を起し易くなり、これが偏摩耗の原因となることから、その平均層厚を3〜20μmと定めた。
(b)中間層のCr
Cr層は、上記の通り上部層であるα型(Al,Cr)23層の蒸着時の結晶配向および組織に影響を及ぼし、その平均層厚を調整することによって前記α型(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフにおけるΣ3の分布割合を60〜80%とする作用を有するが、その平均層厚が0.1μm未満では前記Σ3の分布割合を60%以上にすることができず、この場合は所望のすぐれた高温強度を前記α型(Al,Cr)23層に確保することができず、一方、その平均層厚を3μmを越えて厚くしても、前記Σ3の分布割合が飽和し、これを80%以上にすることはできず、むしろ3μmを越えて厚くなり過ぎると、Cr層自身相対的に高温強度の高いものでないため、硬質被覆層の高温強度に急激に低下傾向が現れるようになることから、その平均層厚を0.1〜3μmと定めた。
(c)上部層の改質α型(Al,Cr)23
上記の改質α型(Al,Cr)23層において、これの構成成分であるAlは層の高温硬さおよび耐熱性を向上させ、同Cr成分にはAl成分との共存において、さらに一段と耐熱性を向上させる作用を有するが、Crの含有割合を示すX値が原子比で0.01未満では前記作用に所望の向上効果を確保することができず、一方同X値が0.1を越えると高温強度に低下傾向が現れるようになることから、前記X値を0.01〜0.1と定めた。
また、上記の改質α型(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフにおけるΣ3の分布割合は、上記の通り中間層であるCr層の平均層厚を調整することによって60〜80%とすることができるが、この場合Σ3の分布割合が60%未満では、高速断続切削加工で、硬質被覆層にチッピングが発生しない、すぐれた高温強度を確保することができず、したがってΣ3の分布割合は高ければ高いほど望ましいが、Σ3の分布割合を80%を越えて高くすることは中間層であるCr層の平均層厚と相俟って困難であることから、Σ3の分布割合を60〜80%と定めた。
さらに、上記改質α型(Al,Cr)23層は、上記の通りα型(Al,Cr)23層自体のもつすぐれた高温硬さと耐熱性に加えて、さらに一段とすぐれた高温強度を有するようになるが、その平均層厚が1μm未満では前記改質α型(Al,Cr)23層の有する前記の特性を硬質被覆層に十分に具備せしめることができず、一方その平均層厚が15μmを越えると、偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し易くなり、摩耗が加速するようになることから、その平均層厚を1〜15μmと定めた。
なお、切削工具の使用前後の識別を目的として、黄金色の色調を有するTiN層を、必要に応じて硬質被覆層の最表面層として蒸着形成してもよいが、この場合の平均層厚は0.1〜1μmでよく、これは0.1μm未満では、十分な識別効果が得られず、一方前記TiN層による前記識別効果は1μmまでの平均層厚で十分であるという理由からである。
この発明被覆サーメット工具は、各種の鋼や鋳鉄などの切削加工を、強い機械的衝撃を伴なう断続切削加工を高速切削条件で行うのに用いた場合にも、硬質被覆層の上部層を構成する改質α型(Al,Cr)23層が、(Al,Cr)23自身のもつすぐれた高温硬さと耐熱性に加えて、一段とすぐれた高温強度を具備することから、すぐれた耐チッピング性を発揮し、使用寿命の一層の延命化を可能とするものである。
つぎに、この発明の被覆サーメット工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で30時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、98MPaの圧力で所定形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を5Paの真空中、1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に1時間保持の条件で真空焼結し、焼結後、切刃部にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO・CNMG160412に規定するスローアウエイチップ形状をもったWC基超硬合金製の工具基体A〜Fをそれぞれ製造した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(質量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで30時間湿式混合し、乾燥した後、98MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を1.3kPaの窒素雰囲気中、温度:1540℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.07mmのホーニング加工を施すことによりISO規格・CNMG160412のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の工具基体a〜fを形成した。
ついで、これらの工具基体A〜Fおよび工具基体a〜fのそれぞれを、通常の化学蒸着装置に装入し、まず、表3(表3中のl−TiCNは特開平6−8010号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつTiCN層の形成条件を示すものであり、これ以外は通常の粒状結晶組織の形成条件を示すものである)に示される条件にて、表4に示される組み合わせおよび目標層厚でTi化合物層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、ついで、同じく表3に示される条件で、かつ表4に示される目標層厚でCr層を中間層として蒸着形成し、さらに同じく表3に示される条件でα型(Al,Cr)23層(a)〜(f)のうちのいずれかを表4に示される組み合わせおよび目標層厚で硬質被覆層の上部層として蒸着形成することにより、前記α型(Al,Cr)23層(a)〜(f)のいずれも中間層としての前記Cr層の作用で改質α型(Al,Cr)23層とした本発明被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、表5に示される通り、硬質被覆層の中間層としてのCr層の形成を行わない(この結果上部層としてのα型(Al,Cr)23層(a)〜(f)のいずれも従来α型(Al,Cr)23層で構成されることになる)以外は同一の条件で従来被覆サーメット工具1〜13をそれぞれ製造した。
ついで、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の上部層を構成する改質α型(Al,Cr)23層および従来α型(Al,Cr)23層のそれぞれについて、電界放出型走査電子顕微鏡を用いて、構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ作成した。
すなわち、上記構成原子共有格子点分布グラフは、上記の改質α型(Al,Cr)23層および従来α型(Al,Cr)23層の表面を研磨面とした状態で、電界放出型走査電子顕微鏡の鏡筒内にセットし、前記研磨面に70度の入射角度で15kVの加速電圧の電子線を1nAの照射電流で、前記表面研磨面の測定範囲内に存在する結晶粒個々に照射して、電子後方散乱回折像装置を用い、30×50μmの領域を0.1μm/stepの間隔で、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を求めることにより作成した。
この結果得られた各種の改質α型(Al,Cr)23層および従来(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、ΣN+1全体(上記の結果からΣ3、Σ7、Σ11、Σ13、Σ17、Σ19、Σ21、Σ23、およびΣ29のそれぞれの分布割合の合計)に占めるΣ3の分布割合をそれぞれ表4,5にそれぞれ示した。
上記の各種の構成原子共有格子点分布グラフにおいて、表4,5にそれぞれ示される通り、本発明被覆サーメット工具の改質α型(Al,Cr)23層は、いずれもΣ3の占める分布割合が60〜80%である構成原子共有格子点分布グラフを示すのに対して、従来被覆サーメット工具の従来α型(Al,Cr)23層は、いずれもΣ3の分布割合が30%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示すものであった。
なお、図4は、本発明被覆サーメット工具4の改質α型(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフ、図5は、従来被覆サーメット工具4の従来α型(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフをそれぞれ示すものである。
また、この結果得られた本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13の硬質被覆層の構成層の厚さを、走査型電子顕微鏡を用いて測定(縦断面測定)したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均層厚(5点測定の平均値)を示した。
つぎに、上記の本発明被覆サーメット工具1〜13および従来被覆サーメット工具1〜13各種の被覆サーメット工具について、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、
被削材:JIS・SCr420Hの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:330m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.15mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Aという)での合金鋼の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は150m/min)、
被削材:JIS・FCD700の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:300m/min、
切り込み:2mm、
送り:0.2mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Bという)でのダクタイル鋳鉄の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は120m/min)、さらに、
被削材:JIS・S20Cの長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度:405m/min、
切り込み:1.5mm、
送り:0.12mm/rev、
切削時間:10分、
の条件(切削条件Cという)での炭素鋼の湿式高速断続切削試験(通常の切削速度は200m/min)を行い、いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Figure 2006218546
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表4〜6に示される結果から、本発明被覆サーメット工具1〜13は、いずれも硬質被覆層の上部層が、Σ3の分布割合が60〜80%の構成原子共有格子点分布グラフを示す改質α型(Al,Cr)23層で構成され、機械的衝撃がきわめて高い鋼や鋳鉄の高速断続切削でも、前記改質α型(Al,Cr)23層が一段とすぐれた高温強度を有し、すぐれた耐チッピング性を発揮することから、硬質被覆層のチッピング発生が著しく抑制され、すぐれた耐摩耗性を示すのに対して、硬質被覆層の上部層が、Σ3の分布割合が30%以下の構成原子共有格子点分布グラフを示す従来α型(Al,Cr)23層で構成された従来被覆サーメット工具1〜13においては、いずれも高速断続切削では硬質被覆層の耐機械的衝撃性が不十分であるために、硬質被覆層にチッピングが発生し、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の被覆サーメット工具は、各種の鋼や鋳鉄などの通常の条件での連続切削加工や断続切削加工は勿論のこと、特に高い高温強度が要求される高速断続切削加工でも硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮するものであるから、切削装置の高性能化並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
α型(Al,Cr)23層を構成するコランダム型六方最密晶の単位格子の原子配列を示す模式図にして、(a)は斜視図、(b)は横断面1〜9の平面図である。 α型(Al,Cr)23層における結晶粒の(0001)面および(10-10)面の傾斜角の測定態様を示す概略説明図である。 相互に隣接する結晶粒の界面における構成原子共有格子点形態の単位形態を示す模式図にして、(a)はΣ3、(b)はΣ7(c)はΣ11の単位形態をそれぞれ示す図である。 本発明被覆サーメット工具4の改質α型(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフである。 従来被覆サーメット工具4の従来α型(Al,Cr)23層の構成原子共有格子点分布グラフである。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された工具基体の表面に、
    (a)下部層が、Tiの炭化物層、窒化物層、炭窒化物層、炭酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1層または2層以上からなり、かつ3〜20μmの全体平均層厚を有するTi化合物層、
    (b)中間層が、0.1〜3μmの平均層厚を有する酸化クロム層、
    (c)上部層が、1〜15μmの平均層厚、および化学蒸着した状態でα型の結晶構造を有し、さらに、
    組成式:(Al1−XCr、(ただし、原子比で、X:0.01〜0.1)、
    を満足すると共に、電界放出型走査電子顕微鏡を用い、表面研磨面の測定範囲内に存在する六方晶結晶格子を有する結晶粒個々に電子線を照射して、前記表面研磨面の法線に対して、前記結晶粒の結晶面である(0001)面および(10-10)面の法線がなす傾斜角を測定し、この場合前記結晶粒は、格子点にAl、Cr、および酸素からなる構成原子がそれぞれ存在するコランダム型六方最密晶の結晶構造を有し、この結果得られた測定傾斜角に基づいて、相互に隣接する結晶粒の界面で、前記構成原子のそれぞれが前記結晶粒相互間で1つの構成原子を共有する格子点(構成原子共有格子点)の分布を算出し、前記構成原子共有格子点間に構成原子を共有しない格子点がN個(ただし、Nはコランダム型六方最密晶の結晶構造上2以上の偶数となるが、分布頻度の点からNの上限を28とした場合、4、8、14、24、および26の偶数は存在せず)存在する構成原子共有格子点形態をΣN+1で現した場合、個々のΣN+1がΣN+1全体に占める分布割合を示す構成原子共有格子点分布グラフにおいて、Σ3に最高ピークが存在し、かつ前記Σ3のΣN+1全体に占める分布割合が60〜80%である構成原子共有格子点分布グラフを示すAlとCrの複合酸化物層、
    以上(a)〜(c)で構成された硬質被覆層を蒸着形成してなる、硬質被覆層が高速断続切削加工ですぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具。
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