JP2006212472A - 排水の処理方法および処理装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】 排水中のノニオン系界面活性剤の曇点を低下させることによって、排水を加温せずに油相と処理水相とに容易に分離することができ、得られた処理水の水質を向上させることができる。
【解決手段】 第1混和槽1内の洗浄排水に、これに含まれるノニオン系界面活性剤のHLB値より低いHLB値のノニオン系界面活性剤を添加、混合し、次いで、第2混和槽3において凝集剤を添加、混合し、そして、沈殿槽5において、汚濁成分および界面活性剤を主成分とする油相と、清澄な処理水相とに分離する。
【選択図】 図1

Description

この発明は、ノニオン系界面活性剤を含有する排水の処理方法および装置、特に、洗浄工程でノニオン系界面活性剤を使用する各種の洗浄排水や、ノニオン系界面活性剤を用いた製品を製造する工場の排水等を、排水を加温することなく油相と処理水相とに効率良く分離できる、ノニオン系界面活性剤を含有する排水の処理方法および装置に関するものである。
ノニオン系界面活性剤を含む排水の処理方法としては、微細気泡を大量に排水に注入して気泡に界面活性剤を同伴させて分離する泡沫分離法や、微生物によって分解する生物処理法が知られている。
泡沫分離法は、一般に濃縮液の界面活性剤濃度が比較的低く、高濃度排水を処理する場合に大量の濃縮液が発生すると共に、処理に要する動力が極めて大きくなるという欠点があった。また、生物処理法は、比較的低コストで処理可能であるものの、処理に長時間を要し、対象水の濃度変動への追随が困難であるという問題があった。
一方、ノニオン系界面活性剤は、固有の曇点を有し、その水溶液を曇点以上に加温すると、界面活性剤の親水性が失われて微細な液滴として析出する現象が知られている。特に、対象水が界面活性剤と油とのエマルジョンである場合、油の性状や濃度等の条件によっては、曇点以上の液温において、油相と処理水とが良好に分離する。
しかしながら、曇点以上の温度条件においては、一般にノニオン系界面活性剤の洗浄力は十分に発揮されない。そこで、十分な洗浄力を確保し、且つ、油相と処理水とを効率良く分離するために、曇点以下の温度条件で洗浄した後に排水を曇点以上に加温して、油相と処理水とを分離することが考えられるが、この場合には、加温のためのエネルギーコストが莫大なものとなるといった問題があった。
この発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであって、ノニオン系界面活性剤を含有する排水を、これを加温することなく油相と処理水相とに効率良く分離することができる、排水の処理方法および処理装置を提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、ノニオン系界面活性剤を含む排水の処理方法において、排水に含まれているものより低いHLBのノニオン系界面活性剤を排水に添加、混合して、排水中の界面活性剤の曇点を降下させ、かくして、分離手段により排水を汚濁成分および界面活性剤を主成分とする油相と、清澄な処理水相とに排水を加温することなく分離することに特徴を有するものである。
この方法によれば、排水に対して低HLBのノニオン系界面活性剤を添加、混合することによって、排水中の界面活性剤の曇点を降下させ、これによって排水を加温せずに界面活性剤の疎水化および分離を達成するものである。
なお、HLBとは、Hydrophile-Lipophile Balanceの略で、界面活性剤の性状を示す指標値の1つである。HLB値が低いほど、より疎水的な界面活性剤であり、その曇点は、HLB値の高い界面活性剤に比べて低くなる。低HLBの界面活性剤と高HLBの界面活性剤とを混合すると、分子間力で結合する際に、界面活性剤の複合体が形成され、そのHLB値や曇点は、元の界面活性剤の平均値となり、低HLBのノニオン系界面活性剤は、油相に取り込まれるものと考えられる。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、排水に含まれているものより低いHLBのノニオン系界面活性剤を排水に添加、混合した後または同時に、さらに凝集剤を添加、混合して、汚濁成分および界面活性剤を主成分とする油相と、清澄な処理水相とに分離することに特徴を有するものである。
この方法によれば、汚濁成分および界面活性剤を主成分とする油相が凝集剤の作用により強固なフロックとなり、分離速度の上昇や分離後の処理水相の汚濁成分あるいは界面活性剤濃度の低下といった分離効率の向上効果が得られる。
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、油相と処理水相との分離手段が、沈殿、浮上、遠心分離およびろ過の少なくとも1つから構成されることに特徴を有するものである。この方法によれば、油相と処理水相とを沈殿、浮上、遠心分離およびろ過の少なくとも1つの手段によって分離し、清澄な処理水を得ることができる。
請求項4に記載の発明は、排水へのノニオン系界面活性剤注入装置と、排水とノニオン系界面活性剤との混和装置と、油相と処理水相との分離装置とを備えたことに特徴を有するものである。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の発明において、凝集剤添加装置を備えたことに特徴を有するものである。
請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の発明において、分離装置は、沈殿、浮上、遠心分離およびろ過の少なくとも1つから構成されることに特徴を有するものである。
この発明によれば、排水中のノニオン系界面活性剤の曇点を低下させることによって、排水を加温せずに油相と処理水相とに容易に分離することができ、得られた処理水の水質を向上させることができるといった効果を奏する。
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、この発明の排水の処理方法を示す工程図である。
図1において、1は、第1混和槽、2は、ノニオン系界面活性剤注入装置としての界面活性剤注入管、3は、第2混和槽、4は、凝集剤添加装置としての凝集剤注入管、5は、油相と処理水相との分離装置としての沈殿槽である。
洗浄効果を高めるために高いHLB値を有するノニオン系界面活性剤を含む洗浄排水は、第1混和槽1内に送られ、ここで界面活性剤注入管2から供給される低HLBのノニオン系界面活性剤と混和されて、ノニオン系界面活性剤が疎水化される。すなわち、排水中の界面活性剤のHLB値が降下する。
引き続いて、排水は、第2混和槽3に送られ、ここで凝集剤注入管4から注入される凝集剤と混合される。この結果、疎水化されたノニオン系界面活性剤および有機質の汚濁物質等が凝集剤によって凝集されて、フロックが形成される。その後、凝集処理水は、沈殿槽5において沈殿分離され、清澄な上澄水が処理水として得られる。
一方、フロックの沈殿により生成した汚泥(汚濁成分および界面活性剤を主成分とする油相)は、沈殿槽5の下部から引き抜かれる。この汚泥は、一般には脱水処理された後に焼却あるいは埋立等の手段によって処分される。
ここで、ノニオン系界面活性剤とは、曇点を有するポリエチレングリコール型の界面活性剤を指すが、疎水基に関してはアルキルフェノールや高級アルコールを始めとして、特定の物質に限定されるものではない。また、共存する油分に関しては必須ではなく油の種類も問わないが、タール等の水との比重差が大きい場合は、分離がより良好に行われる傾向がある。
排水中に含まれるノニオン系界面活性剤の疎水化は、界面活性剤の疎水基に、洗浄対象とする有機性汚濁物質および添加するノニオン系界面活性剤の疎水基が疎水的親和作用によって結合することによって達成される。その結果、ノニオン系界面活性剤の見かけ上のHLBが低下し、排水の曇点が降下して界面活性剤および有機性汚濁物質の複合体が疎水化分離される。
排水に対して添加するノニオン系界面活性剤のHLBに関しては、高すぎるか、あるいはノニオン系界面活性剤の添加量が不足する場合には、曇点降下作用が十分に得られず、混合排水の曇点が液温より高いために界面活性剤の疎水化効果が得られない。また、曇点降下の度合いは、洗浄対象とする汚濁物質によっても変化することから、排水に対して添加するノニオン系界面活性剤のHLBおよび添加量に関しては、別途実験を実施して決定することが望ましい。
十分な曇点降下作用が得られた場合においても排水中の油分や界面活性剤の性状によっては、短時間の静置のみでは油相と処理水相とが十分に分離できない場合もある。このような場合には、水油分離前に凝集剤を添加してフロックを形成させると、効率的な分離処理を行うことが可能となる。用いる凝集剤としては、鉄塩やアルミニウム塩等の無機系、あるいはポリアクリルアミド等の有機系の凝集剤の何れを用いることも可能である。
但し、凝集対象物が有機性の汚濁成分およびノニオン系の界面活性剤であるため、用いる凝集剤には荷電中和能力は特に要求されず、ノニオン系ポリマーのように粒子間の架橋作用が主として発揮される薬剤が好ましい。具体的な凝集剤の種類や注入率等の条件は、別途ジャーテスト等の実験を実施して決定することが望ましい。
油相と処理水相との分離装置としては、対象水の濃度が比較的高い場合は、沈殿や浮上、遠心分離が、比較的低濃度の排水を対象とする場合には、ろ過分離を用いることが好ましい。浮上分離に関しては、加圧水を導入して圧開放の際に発生する微細気泡にフロックを同伴させる加圧浮上法を用いることもできる。また、ろ過に関しては、ろ材は砂やアンスラサイト等の天然ろ過材の他、セラミックや樹脂の成形体を用いることもできるし、更には膜ろ過を採用することもできる。
次に、この発明を実施例により、さらに説明する。
タールと水とのエマルジョンに、HLB値の異なるノニオン系界面活性剤A、BおよびC(HLB値は表1に示す)の少なくとも1種類を添加して6種類の試験液を調製した。そして、各試験液を25℃および35℃にそれぞれ加温して沈殿の生成状況を観察した。このときの界面活性剤の添加量および沈殿の生成状況を表1に示す。但し、用いたノニオン系界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系であった。
Figure 2006212472
表1から明らかなように、HLB値が高い薬剤Cの単独添加(実験No.1−3)では、試験液の曇点が試験時の液温より高かったので、何れの温度の場合でも沈殿が生成しなかった。
これに対して、HLB値が最も低い薬剤Aと薬剤Cとの混合添加(実験No.1−4)、HLB値が低い薬剤Bと薬剤Cとの混合添加(実験No.1−5)、あるいは、それぞれ同量の薬剤A、BおよびCを混合添加(実験No.1−6)した場合には、試験液の曇点が試験時の液温より低下したために沈殿が生成された。
また、実験No.1−1、実験No.1−2から、よりHLB値の低い界面活性剤を用いた場合、あるいは、より液温が高い場合には、沈殿物の含水率が低くなることから見掛けの容積が小さく、緻密な沈殿物が生成された。
タール汚染物の洗浄排水を、図1に示した処理装置により処理した結果を表2に示す。但し、処理条件は、以下の通りであった。
(a)洗浄用界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、HLB12.1、使用量1000mg/L
(b)分離用(低HLB)界面活性剤:ポリオキシエチレンアルキルエーテル系、HLB10.5、使用量1000mg/L
(c)凝集剤:ポリアクリルアミド系ポリマー、条件(1):注入率0mg/L、条件(2):注入率5ml/L(凝集剤は、活性剤の添加、混合後に添加)
(d)水温:20℃
Figure 2006212472
表2から明らかなように、高HLBの洗浄排水に低HLBのノニオン系界面活性剤を添加、混合することによって、油相と処理水相とを良好に分離できた。また、凝集剤を添加することによって、さらに分離効率が高くなることが分かった。
この発明の排水の処理方法を示す工程図である。
符号の説明
1:第1混和槽
2:界面活性剤注入管
3:第2混和槽
4:凝集剤注入管
5:沈殿槽

Claims (6)

  1. ノニオン系界面活性剤を含む排水の処理方法において、排水に含まれているものより低いHLBのノニオン系界面活性剤を排水に添加、混合して、排水中の界面活性剤の曇点を降下させ、かくして、分離手段により排水を汚濁成分および界面活性剤を主成分とする油相と、清澄な処理水相とに排水を加温することなく分離することを特徴とする、排水の処理方法。
  2. 排水に含まれているものより低いHLBのノニオン系界面活性剤を排水に添加、混合した後または同時に、さらに凝集剤を添加、混合することを特徴とする、請求項1に記載の、排水の処理方法。
  3. 前記分離手段が、沈殿、浮上、遠心分離およびろ過の少なくとも1つから構成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の、排水の処理方法。
  4. 排水へのノニオン系界面活性剤注入装置と、排水とノニオン系界面活性剤との混和装置と、油相と処理水相との分離装置とを備えたことを特徴とする、排水の処理装置。
  5. 凝集剤添加装置を備えたことを特徴とする、請求項4に記載の、排水の処理装置。
  6. 前記分離装置は、沈殿、浮上、遠心分離およびろ過の少なくとも1つから構成されることを特徴とする、請求項4または5に記載の、排水の処理装置。
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