JP2006206991A - 成形性に優れた転動体用金属球 - Google Patents
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Abstract
【課題】 平滑な表面と、高い真球度の成形性に優れた転動体用金属球を提供する。
【解決手段】 液相線温度が1350℃以下で、かつ液相線温度と固相線温度の差が150℃以内を満たすNi基合金からなり、球状に凝固した転動体用金属球である。上記の転動体用金属球は、不活性ガス中で凝固したものであることが好ましい。本発明によれば、従来の鍛造工程を経ずして必要な機械的特性を維持でき、最終の精研磨作業も容易な転動体用素球が提供できる。
【選択図】図2
【解決手段】 液相線温度が1350℃以下で、かつ液相線温度と固相線温度の差が150℃以内を満たすNi基合金からなり、球状に凝固した転動体用金属球である。上記の転動体用金属球は、不活性ガス中で凝固したものであることが好ましい。本発明によれば、従来の鍛造工程を経ずして必要な機械的特性を維持でき、最終の精研磨作業も容易な転動体用素球が提供できる。
【選択図】図2
Description
本発明は、転がり軸受け等に使用される転動体用金属球に関する。
従来、ボールベアリングなどに用いられる転動体用の鋼球は、鋼線を一定の長さに切断したピースを両側から半球状の球座をもつ雌、雄の金型で圧縮して球形に成形し、次に2枚の硬質鋳物盤の間にはさんで圧力をかけて転動させ、バリを除去した後、組織調整のための熱処理を行い、精研磨して製造される(例えば、非特許文献1参照)。
しかし、前述の鍛造成形する方法だとボールが小径になるほど製造時間が掛かり、不経済である。そこで例えば、所望の金属あるいは合金をるつぼで溶解し、溶湯に圧力と振動を付与して前記るつぼの底部に設けたオリフィスから溶湯を押出し、前記オリフィスから滴下した溶湯を急冷凝固させて金属球を製造する、均一液滴法と呼ばれる方法(特許文献1参照)などの、金属を一旦溶融して凝固させる方法が多数開示されており、前述の転動体用金属球を製造するのに適した方法であるとされている。
株式会社天辻鋼球製作所ホームページ(2004)(インターネット<URL:http://www.aksball.co.jp/seir.htm>) 米国特許第5,266,098号
株式会社天辻鋼球製作所ホームページ(2004)(インターネット<URL:http://www.aksball.co.jp/seir.htm>)
しかしながら、前述のような溶融状態から凝固させる方法で金属球を製造するには、溶湯の表面張力を利用して球状に凝固させるため、少なくとも合金の液相線温度を上回る高温で溶湯を加熱しなければならない。転動体用鋼球として一般的である高炭素クロム軸受鋼(例えばSUJ2鋼(1.0mass%C−1.5mass%Cr))や,マルテンサイト系ステンレス鋼(例えばSUS440C鋼(1.2mass%C−17mass%Cr))は、融点が1400℃以上あり、溶湯を加熱保持するには多くのエネルギーを要し不経済である。それに加え前述の合金は広い固液共存領域が存在するため、溶融状態で球形を保持できたとしても、凝固に伴って初晶デンドライトが晶出した場合、その最終凝固部分に空隙が残った状態で凝固が完了してしまうと、完全な球形とならない事が多い。
また、鋼は全般的に凝固収縮が大きいため、固液共存領域が広いと最終凝固部で粗大な引け巣を形成しやすい。これらの空隙・引け巣は、後工程の研磨で除去するのが困難であり、著しく歩留まりを低下させる。したがって、このような溶融・凝固させる方法を用いた転動体用金属球の製造はこれまで実現されてこなかった。
本発明の目的は、真球に近い凝固体を直接に製造可能にすることで、後工程における平滑な表面と、高い真球度の成形性に優れた転動体用金属球を提供することにある。
本発明者らは、前述の均一液滴法を用いて金属球を製造し、引け巣や形状欠陥の少ない合金を検討した結果、共晶に近い組成を有する合金が真球形状を得られやすいことを見出し、本発明に到達した。
すなわち、本発明の第一は、液相線温度が1350℃以下で、かつ液相線温度と固相線温度の差が150℃以内を満たす組成のNi基合金からなり、球状に凝固した、成形性に優れた転動体用金属球である。
本発明の第二は、不活性ガス中で凝固した、本発明の第一の成形性に優れた転動体用金属球である。
本発明によれば、高い真球度を有する転動体用の素球を、凝固過程で直接製造することができ、その内部は空隙や引け巣が抑えられた凝固組織とできる。よって、従来の鍛造工程を経ずして必要な機械的特性を維持でき、最終の精研磨作業も容易な素球が提供できることから、転動体用金属球の製造コスト低減に有効な技術となる。
本発明の重要な特徴は、機械的特性は維持しかつ、共晶に近い組成の合金を溶融・凝固させて、直接に転動体用金属球を製造する点にある。以下に詳細を説明する。
本発明において、転動体用金属球を凝固製造する際に共晶に近い組成を狙う理由は、固液共存領域を狭め、特定の結晶を融液中で異常成長させることなく凝固を完了させるためである。つまり、亜共晶組成の場合だと、主成分金属のデンドライトが成長するので、そのアーム間に空隙が残った状態で凝固が完了しやすく、球内部に残ってしまうと除去が困難になる。また、先に晶出したデンドライト間の液相が凝固に伴って大きく収縮するため、最終凝固部に粗大な引け巣が残りやすい。
そこで本発明を構成する素材は、基本材料としてはNi基合金を採用して、その固液共存領域を狭め、共晶あるいは共晶に近い組成とする。これにより、球全体がほぼ同時に凝固し、収縮も均一に起こるので、引け巣などの空隙の少ない、真球に近い金属球が得られる。このような金属球は,転動体に要求される極めて平滑な表面を、研磨で成形することが容易である。
また一方で、合金が過共晶組成の場合、副成分からなる、例えばホウ化物、珪化物などが粗大に晶出しやすくなり、転動体に必要な特性である疲労特性、転がり時の静粛性を阻害するおそれがある。共晶組成は、複数の固相成分を同時に、かつ微細に晶出させることが可能であるため、本発明における合金は組織の均質性が要求される転動体用金属球として優れた特性を発揮すると考えられる。また、共晶合金は過冷しやすいため、急冷すると非晶質相や準安定相が得られやすい。したがって、本発明の採用する組成の液滴を急冷することにより、本来の共晶凝固組織とは異なる組織が得られ、強度やじん性,耐疲労性が改善される可能性も考えられる。
本発明の金属球が基本材料に採用するNi基合金の組成においては、Si,B,P等の元素を添加することができる。これらの元素は、転動体としての金属球の機械的特性を決定する一方で、上記の共晶組成による効果を得るための重要な元素である。しかし,これらSi,B,P等の元素を添加する場合は、過度に添加すると過共晶組成となり、金属球の形状、特性に悪影響を及ぼすので、好ましくは質量%でSiが15%以下,Bが5%以下,Pが15%以下とする。また、転動体の機械的特性を向上させる目的でMn,Cr,Fe,Co,Mo,Ta,Nb,Ti,Cu,Al等の元素を添加することもできる。
ところで、本発明のNi基合金組成における液相線温度、固相線温度、融点は平衡状態図における値を指しているが、実際に上述のような液滴を急冷する方法で金属球を製造した場合、平衡状態における共晶とは異なる組織が得られる場合がある。これは、急冷によって液滴が過冷されるため、平衡相への成分元素の分配(拡散)が不十分となるからで、みかけの共晶点がずれるからである。本発明では、本質的には共晶組成を狙うものであるが、目的は成形性の良い、真球に近い金属球を提供することであるため、上述の理由から本発明における合金は、好ましくは液相線温度と固相線温度の差が150℃以内を満たす組成とし、製造における経済性の観点から融点を1350℃以下とする。
また、金属球の凝固、回収については、溶湯液滴の表面に酸化が生じるような雰囲気では、表面張力による球状化が酸化膜によって阻害されるばかりでなく、凝固の際に異常な核生成を引き起こす可能性もある。そのため、本発明の凝固による転動体用金属球は、不活性ガス中で凝固され回収されるのが好ましい。
なお、本発明の“球状に凝固した”転動体用金属球は、その組織が凝固ままのものであってもよい他には、必要に応じて、熱処理といった、組織あるいは特性改善処理を施してもよい。つまり、製造した凝固ままの金属球は、適切な熱処理を施してその特性を最大限に引き出すことが可能である。例えば、凝固ひずみを焼鈍で除去することによってじん性を向上させたり、化合物を微細析出させて強度を向上させたり、非晶質相を結晶化させて強度を向上させたりすることができる。
本発明の転動体用金属球は,溶融した合金を球状に凝固させることができれば如何なる製造方法でも適用することができるが、好ましくは、前述したような、均一液滴法を用いるのが良い。溶融合金では、全ての構成成分の拡散が固体に比べると非常に高速で生じているので、均質に混ざり合った溶融合金から直接、液滴を作製し、凝固させて金属球とすれば、全ての金属球ごとの成分比は等しくなり、既に偏析を生じているインゴットから製造された細線を用いる従来の製造方法では得ることが困難であった均質な金属球を安定して製造することができる。また、溶湯から直接、液滴を作り凝固させるので、塑性加工が不要であり、高合金化が可能である。
上述した均一液適法により、組成を質量%で12.5%Cr−4.5%Si−2.7%B−4.5%Fe−残部NiのNi基合金とした金属球を製造した。回収した金属球の粒径は中央値でφ462μmであり、図1に示すように単分散を呈していた。また、図2に示すように、外観に大きな引け巣はなく、平滑な表面を有していた。この製造した凝固ままの金属球断面を、精研磨によって調整し、アカシ製ビッカース硬度計MUK−E3を用いて荷重490mN(50gf)で硬さ測定した結果、10点平均で628HVを示し、強度としても転動体用球として供するに十分であった。
Claims (2)
- 液相線温度が1350℃以下で、かつ液相線温度と固相線温度の差が150℃以内を満たす組成のNi基合金からなり、球状に凝固したことを特徴とする成形性に優れた転動体用金属球。
- 不活性ガス中で凝固したことを特徴とする請求項1に記載の成形性に優れた転動体用金属球。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2005022928A JP2006206991A (ja) | 2005-01-31 | 2005-01-31 | 成形性に優れた転動体用金属球 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2005022928A JP2006206991A (ja) | 2005-01-31 | 2005-01-31 | 成形性に優れた転動体用金属球 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
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JP2006206991A true JP2006206991A (ja) | 2006-08-10 |
Family
ID=36964163
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP2005022928A Pending JP2006206991A (ja) | 2005-01-31 | 2005-01-31 | 成形性に優れた転動体用金属球 |
Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP2006206991A (ja) |
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2005
- 2005-01-31 JP JP2005022928A patent/JP2006206991A/ja active Pending
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