JP2006206490A - 新規化合物及びそれを含む医薬組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】NMDA受容体の機能を抑制し、興奮性神経伝達の異常により引き起こされる各種疾患の治療や予防に有用な化合物の提供。
【解決手段】下記式(1)
Figure 2006206490

式(1)中、R6は1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンにより例示されるアザシクロアルカンである化合物又はその塩若しくはその水和物。
【選択図】図1

Description

本発明は、N−methyl−D−aspartate(以下「NMDA」という。)受容体アンタゴニストである、NMDA受容体に関連する疾患等の予防や治療に有効な化合物に関する。
グルタミン酸は脳内において興奮性神経伝達をつかさどる伝達物質であり、興奮性アミノ酸の一つとして知られている。興奮性アミノ酸が細胞外に大量に放出されると、中枢神経の異常な興奮が起こり、脳脊髄損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病などの様々な疾患、神経変性、精神障害、運動機能障害につながると報告されている。
神経伝達物質としてのグルタミン酸をリガンドとする受容体は、NMDA受容体;非NMDA受容体であるα−amino−3−hydroxy−5−methyl−4−isoxazolepropionic acid(以下「AMPA」という。)受容体およびカイニン酸受容体;代謝共役型受容体に分類され、グルタミン酸またはアスパラギン酸により活性化されてナトリウムイオンやカリウムイオンを細胞内に流入させる。特にNMDA受容体は活性化されるとカルシウムイオンも流入させることが知られており、そのため哺乳動物脳の記憶、学習の形成、神経の発達等に関与するが、一方でNMDA受容体の過剰興奮は細胞内に多量のカルシウムを流入させるために不可逆的な脳の神経細胞の壊死を生じさせ、後遺症として運動障害、知覚障害、異常行動等の障害を引き起こす。
特開2004−262762号公報 Benveniste, H.ら(1984), J. Neurochem., 43, 1369 Williams Kら(1993), Mol. Pharmacol. 44:851-859 Chris G. Parsonsら(1999), Neuropharmacology 38:85-108
NMDA受容体を介した興奮性神経伝達の異常な働きを調節する薬物は、興奮性グルタミン酸およびその受容体に関連する慢性神経変性疾患、脳虚血や脳脊髄損傷後の神経細胞の壊死による急性神経変性、てんかん、疼痛、痙性麻痺、脱髄性疾患の治療や予防剤として有用であり、その開発が切望されている。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、所定の化学構造を有する新規含窒素環状化合物が優れたNMDA受容体機能抑制作用を有することを見出し、特許文献1に報告している。しかし、特許文献1に記載の化合物では、未だNMDA受容体機能抑制作用の点で改良の余地があった。
このような状況下、本発明は、さらに優れたNMDA受容体機能抑制作用を有する化合物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記事情に鑑み、優れたNMDA受容体機能抑制作用を有する化合物を求めて鋭意研究を行った。その結果、所定の式で示される化合物又はその塩若しくはその水和物が優れたNMDA受容体機能抑制作用を有することを見出し、本発明を完成するに到ったものである。
すなわち、本発明は、下記式(1)
Figure 2006206490
[式(1)中、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族基であり;X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子又は2つの水素原子であり;R1は、−C(O)−又はCRR’(R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基又はC1−C6の炭化水素基である)であり;R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又はR6−Z1−(Z1は−CH2C(O)−又は−CH2CH2−であり、R6はアザシクロアルカンである)であり、かつ、R2又はR3の少なくとも一方は、R6−Z1−であり;R4及びR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。]で示される化合物又はその塩若しくはその水和物を提供するものである。
前記一般式(1)中のX1及びX2が2つの水素原子であることが好ましい。
前記一般式(1)中のA1及びA2がフェニレン基であることが好ましい。
前記一般式(1)中のR1が−C(O)−、−CH2−又は−C(CH32−であることが好ましい。
前記アザシクロアルカンが、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,3,8,12−テトラアザシクロペンタデカン又は1,5,9−トリアザシクロドデカンのいずれかであることが好ましい。
前記一般式(1)中のR4及びR5が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基であることが好ましい。
本発明の医薬組成物は、前記化合物(1)またはその塩若しくはその水和物を含有してなる。
前記医薬組成物は、グルタミン酸受容体機能抑制剤であってもよい。
前記医薬組成物は、NMDA受容体機能抑制剤であってもよい。
前記医薬組成物は、細胞死抑制剤であってもよい。
前記医薬組成物は、脳機能保護薬であってもよい。
前記化合物(1)またはその塩若しくはその水和物は、グルタミン酸受容体機能抑制剤を製造するために好適に使用される。
本発明の哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能抑制方法は、哺乳動物に前記化合物(1)またはその塩若しくはその水和物の有効量を投与するものである。
本発明の哺乳動物における細胞死抑制方法は、哺乳動物に、前記化合物(1)またはその塩若しくはその水和物の有効量を投与するものである。
前記化合物(1)またはその塩若しくはその水和物は、脳機能保護薬を製造するために好適に使用される。
本発明の哺乳動物における脳機能保護方法は、哺乳動物に、前記化合物(1)またはその塩若しくはその水和物の有効量を投与するものである。
本発明の化合物によれば、NMDA受容体の機能を効果的に抑制することが可能である。したがって、本発明にかかる化合物は、NMDA受容体に関連する慢性神経変性疾患、脳虚血や脳脊髄損傷後の神経細胞の壊死による急性神経変性、てんかん、疼痛、痙性麻痺、脱髄性疾患の治療や予防に有用である。
以下、本発明の化合物及び製造方法等について説明する。
本発明の化合物は、下記式(1)
Figure 2006206490
で示されるものである。
式(1)中、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族基である。ここで、「それぞれ独立」とは、A1及びA2が互いに同じであっても、異なっていてもよいという意を示す(以下においても同様の意味とし、説明を省略する)。また、置換基としては、例えばオキソ、ハロゲン原子、C1-3アルキレンジオキシ、ニトロ、シアノ、ハロゲン化されていてもよいC1-6炭化水素基、ヒドロキシ、アミノ、アシル、アシルアミノ、アシルオキシなどの基が挙げられる。但し、A1及びA2は、置換基を有しないフェニレン基であることが好ましい。
1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子又は2つの水素原子である。
1は、−C(O)−又はCRR’である。ここで、CRR’のR及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基又はC1−C6の炭化水素基である。このような中でも、R1は、−C(O)−、−CH2−又は−C(CH32−であることが好ましい。
2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又はR6−Z1−である。ここで、R6−Z1−のZ1は−CH2C(O)−又は−CH2CH2−であり、R6はアザシクロアルカンである。また、R2又はR3の少なくとも一方は、R6−Z1−基、すなわち、アザシクロアルカンを有する。
このようなR2又はR3に用いられるアザシクロアルカン基としては、以下のような
Figure 2006206490
で示される1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン基、
Figure 2006206490
で示される1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン基、
Figure 2006206490
で示される1,4,8,12−テトラアザシクロペンタデカン基、
Figure 2006206490
で示される1,5,9−トリアザシクロドデカン基などが挙げられる。
4及びR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。
ここで、置換基を有していてもよい複素環基としては、例えば、置換基を有していてもよい5−12員の含窒素複素環基(例えばピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル等)が挙げられ、特にピリジルが好ましい。また、ピリジルにおいて、ピリジン環の窒素原子は炭化水素基に結合してピリジン塩を作ってもよい。
また、置換基を有していてもよい芳香族基は、例えば、置換基を有していてもよいC6-12アリールが挙げられる。好ましくはC6-12アリール、さらに好ましくはフェニルまたはナフチルである。
ここで、「置換基を有していてもよい複素環基」および「置換基を有していてもよい芳香族基」における「置換基」としては、C1-6アルキル、アミノ、C1-6アルキルアミノ(例えばメチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ等)、ジ(C1-6アルキル)アミノ(例えばジメチルアミノ、ジエチルアミノ、ジイソプロピルアミノ等)などが挙げられる。好ましくはC1-6アルキル又はジ(C1-6アルキル)アミノであり、さらに好ましくはメチル又はジメチルアミノである。
このような中でも、R4及びR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基であることが好ましい。
このような本発明の化合物(1)の好適な例としては、例えば、下記式
Figure 2006206490
で示される化合物(以下、DNCnともいう)、また、下記式
Figure 2006206490
で示される化合物(以下、TsDCnともいう)、また、
Figure 2006206490
で示される化合物(以下、TsMCnともいう)などが挙げられる。
また、化合物(1)の「塩」としては、無機塩基との塩(例:アンモニウム塩)、有機塩基との塩、無機酸との塩、有機酸との塩、塩基性アミノ酸との塩、酸性アミノ酸との塩などが挙げられる。このような中でも、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩などの無機酸塩であって薬理学的に許容しうる塩が好ましい。中でも塩酸塩が好ましい。
また、化合物(1)は水和物であっても非水和物であってもよい。
本発明の化合物(1)が、光学異性体、立体異性体、位置異性体、回転異性体を含有する場合には、これらも本発明の化合物(1)として含有される。このような異性体は、公知の合成手法、分離手法によりそれぞれを得ることができる。
次に、本発明の化合物(1)の製造方法について以下に述べる。但し、本発明の化合物(1)の製造方法は、以下の方法に限定されるものではない。
化合物(1)は、例えば以下のスキームで示される方法あるいはこれに準ずる方法に従って製造される。
Figure 2006206490
なお、上記スキームに記載の化合物(2)〜(8)におけるA1、A2、R1、R2、R3、R4及びR5は、上述した化合物(1)におけるA1、A2、R1、R2、R3、R4及びR5と同様のものを示す。
以下、上記スキームに沿って各工程について順次説明する。
[工程1] まず、化合物(3)を化合物(2)と反応させ、化合物(4)を得る。ここで、化合物(3)のZはハロゲン基などの脱離基を示し、R’はアルキル基等の脂肪族基又は芳香族基を示す。具体的には、化合物(3)としては、ブロモ酢酸メチル、ブロモ酢酸エチル等のハロゲノ酢酸エステルが挙げられる。この反応は、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどの塩基の存在下で行われることが好ましい。またこの反応は、ジメチルホルムアミドなどの極性溶媒中で、0℃から100℃で行われることが好ましい。
なお、次の工程に移る前に、化合物(4)のエステル残基OR’を、置換基を有するアリールエステル(例えばペンタフルオロフェニルエステル等)などの活性エステルに変換し、次の化合物(5)のアミノ基とより効果的に反応させてもよい。このような活性エステルは、化合物(4)を加水分解した後、ペンタフルオロフェノールなどの置換フェノールと反応させて得ることができる。このエステル化反応は、N,N’−ジクロロヘキシルカルボジイミドなどの縮合剤の存在下で行うことが好ましい。
[工程2] 化合物(5)を化合物(4)と反応させて化合物(6)を得る。この反応は、塩化メチレン(CH2Cl2)などの溶媒中で化合物(4)を化合物(5)と反応させることにより行う。反応温度は室温から50℃とする。
[工程3] 化合物(6)を還元して化合物(7)を得る。この還元反応は、ボラン−ジメチルスルフィド複合体などの水素化ホウ素の存在下で行うことが好ましい。また、この反応はテトラヒドロフランなどの溶媒中で、0℃から溶媒の還流温度までの間で行うことが好ましい。この工程を経ずに化合物(6)を用いて、後述の工程4及び5を行ってもよく、その場合は最終化合物(1)においてX1及びX2が酸素原子となる。
[工程4]
化合物(7)に、R2基及びR3基を導入することにより、アザシクロアルカンが導入された化合物(8)を得る。
この工程4について、具体例を挙げてさらに詳しく説明する。
ここではR2基及びR3基として1−カルボキシメチル−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカンを導入する場合について説明する。
まず、アミノ基がtert−ブトキシカルボニル基(以下、Boc基ともいう)により保護された1−カルボキシメチル−4,7,10−トリス(tert−ブトキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン
Figure 2006206490
を化合物(7)と反応させる。この反応は、ジクロロメタンを溶媒とし、1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミド塩酸塩存在下で、窒素雰囲気中反応時間を24時間〜36時間程度として行うことが好ましい。
その後、Boc基をはずすことにより、化合物(1)の一例としての化合物
Figure 2006206490
が得られる。この反応は、例えば、化合物(7)のTHF溶液に濃塩酸を加え、室温で20から24時間程度撹拌することにより行うことができる。
尚、化合物(9)は、4,7,10−トリス(tert−ブトキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(化合物(9a))を原料として自体公知の方法、例えば以下のスキームで示される方法あるいはこれに準ずる方法に従って製造される。
Figure 2006206490
まず、化合物(9a)、ブロモ酢酸ベンジルおよびK2CO3をCH3CN中で混合し、窒素雰囲気中で12時間、80℃で撹拌し、化合物(9b)を得る。次に、化合物(9b)を水素化し、化合物(9)を得る。例えば、化合物(9b)のTHF溶液を、Pd−C存在下、室温で水素雰囲気中24時間反応させることにより行うことができる。
尚、本発明による化合物(1)は、公知の手段、例えば溶媒抽出、液性変換、転溶、晶出、再結晶、クロマトグラフィーなどによって単離精製することができ、単離精製された化合物は公知の手段により塩または水和物に変換することもできる。化合物(1)の原料化合物またはその塩は、同様に公知の手段によって単離精製することができるが、単離することなくそのまま反応混合物として次の工程の原料とすることもできる。
また、上記工程4において、反応条件によっては化合物(7)の2つのアミノ基のいずれか一方にしか化合物(9)が導入されない場合もあり、この場合にはアミノ基のプロトンがそのまま残る。よって、化合物(1)としてR2又はR3のいずれかが水素原子である化合物が得られる。
次に、本発明の化合物(1)の有する作用について説明する。
化合物(1)は、優れたNMDA受容体機能抑制作用を有する。本明細書におけるNMDA受容体の「機能抑制」とは、NMDA受容体のイオンチャンネルとしての機能を阻害する作用を示す。特に化合物(1)は、化合物(1)自体がオープンチャンネルブロッカーとして細胞内へのイオンの流入を防ぐのと同時に、NMDA受容体のアゴニストであるグルタミン酸と複合体を形成することで、該グルタミン酸が該NMDA受容体に結合してイオンチャンネルを開くのを防ぐ、という二通りの方法でNMDA受容体の機能を抑制することができると考えられる。具体的には、本発明の化合物(1)は、環状ポリアミン、アミド、スルホンアミド部位の3ヶ所がグルタミン酸をトラップすると考えられ、特にスルホンアミド基の導入により効果が向上されたものと予想される。NMDA受容体を活性化する細胞外のグルタミン酸をトラップすることで従来の化合物よりもNMDA受容体の機能を顕著に阻害すると考えられる。
すなわち、本発明の化合物(1)は、NMDA受容体からの細胞内への過剰なカルシウムの流入を防ぐことができる。例えば脳虚血部分では大量のグルタミン酸が細胞外へ放出されることが知られているが(非特許文献1)、この高濃度の細胞外グルタミン酸によってNMDA受容体が異常に活性化され、細胞内に多量のカルシウムイオンが流入して神経細胞の壊死を引き起こすことがある。化合物(1)はこのような細胞の壊死やその後遺症の治療、改善、予防剤として有用である。
該「脳虚血」としては、例えば、脳血栓症、脳塞栓症、脳梗塞を伴わない一過性脳虚血発作、可逆性脳虚血性神経脱落、慢性脳循環不全症(脳動脈硬化症)、高血圧性脳症などの虚血性脳血管障害、頭部外傷や脊髄損傷等の中枢神経細胞の急性変性疾患によるものが挙げられる。
「神経細胞の壊死による後遺症」としては、言語障害、しびれ等の知覚障害、手足等の運動障害、頭痛、嘔吐、視力喪失、嚥下障害、構音障害、痴呆などがあげられる。従って化合物(1)はこれらの症状の治療や予防にも有用である。
また、化合物(1)はNMDA受容体、すなわち興奮性アミノ酸受容体の機能を抑制するので、中枢神経の異常な興奮により発症または悪化する疾患の治療、改善、予防剤としても有用である。
すなわち化合物(1)は、運動障害、知覚障害、異常行動等の脳虚血後障害・脳脊髄損傷後の急性神経変性による障害;アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、ハンチントン舞踏病等の慢性神経変性疾患;てんかん;慢性疼痛、偏頭痛、癌性疼痛、糖尿病性神経障害等に由来する疼痛;痙性麻痺;多発性硬化症、脳脊髄炎、ギラン・バレー症候群、マルキャファーヴァ・ビギャミ病、デビック病、バロ病、レフサム病、タンギエール病、デジェリン−ソタス病、HIVまたはHTLV性脊髄炎、白質脳炎等の脱髄性疾患などの治療、改善、予防剤としても有用である。
化合物(1)は、各種併用用薬剤とともに用いてもよい。
このような併用用薬剤としては、例えば他のNMDAアンタゴニスト;脳虚血により形成される毒生産物(例えば、酸化窒素、反応性酸素および窒素中間体、脂質過酸化物、インターロイキン、サイトカイン、ケモカイン、水素イオン等)の形成または作用を阻害し、あるいは除去を促進する物質;脳虚血によりおこる細胞の減極を阻害し、あるいは減極に対抗する信号経路を活性化する物質;アポトーシスの機構を阻害する物質;虚血に反応する免疫細胞の補充、免疫細胞の血管への接着を防ぐ物質などが挙げられる。
「他のNMDAアンタゴニスト」としては、例えばグルタミン酸やNMDAなどのアゴニストの結合部位に拮抗的に結合するもの(例えばD−2−アミノ−5−ホスホノ吉草酸等)、NMDA受容体のアゴニストによる活性化に必要なグリシンの結合部位に拮抗的に結合するもの(例えば7−クロロキヌレン酸等)、活性増強剤であるポリアミンの結合部位に拮抗的に結合するもの(例えばアルカイン等)、他のオープンチャンネルブロッカー(例えばMK−801、Mg2+)などが挙げられる。
「脳虚血により形成される毒生産物の形成または作用を阻害し、あるいは除去を促進する物質」としては、例えば抗酸化化合物、好中球阻害因子(NIF)、ナトリウムチャンネルアンタゴニスト、NOS阻害剤、カリウムチャンネル開口剤、グリシン部位アンタゴニスト、AMPA/カイニン酸受容体アンタゴニスト、カルシウムチャンネルアンタゴニスト、GABAA受容体モジュレーター、および抗炎症剤などが挙げられる。
「脳虚血によりおこる細胞の減極を阻害し、あるいは減極に対抗する信号経路を活性化する物質」としては、例えばGABAA受容体の活性化、電圧またはリガンド制御カリウムチャンネルの活性化、電圧またはリガンド制御塩素チャンネルの活性化をする物質が挙げられ、具体的にはカリウムチャンネル開口剤やGABAA受容体アゴニストなどを用いることができる。
「アポトーシスの機構を阻害する物質」としては、FAS/TNFα/p75受容体の活性化、カスパーゼの活性化、NFκBの活性化、JNKおよび/またはp38キナーゼシグナルカスケードの活性化、ミトコンドリアの崩壊の阻害およびミトコンドリアの浸透性移動孔の活性化、カルパインなど細胞間プロテアーゼの活性化を行う物質が挙げられ、具体的にはカスパーゼ阻害剤、アポトーシス機構の媒介物質である酵素の阻害剤などを用いることができる。
「虚血に反応する免疫細胞の補充を阻害する化合物」としては各種サイトカインやケモカイン受容体、「血管への免疫細胞の接着を阻害する化合物」としてはサイトカインおよびケモカイン受容体に対するアンタゴニスト、NIFおよび各種の細胞接着分子の抗体などが挙げられる。
本発明の医薬組成物は自体公知の手段に従って製造することができる。該医薬組成物は通常、化合物(1)と薬理学的に許容される担体とを、自体公知の製剤化手段によって混合することにより製造される。
たとえば、化合物(1)を製剤上許容しうる担体(賦形剤、結合剤、崩壊剤、矯味剤、矯臭剤、乳化剤、希釈剤、溶解補助剤等)と混合して得られる医薬組成物または錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤、注射剤(液剤、懸濁剤等)、坐剤、吸入剤、経皮吸収剤、点眼剤、眼軟膏等の製剤として経口または非経口に適した形態で処方される。
固体製剤とする場合は、添加剤、たとえば、ショ糖、乳糖、セルロース糖、D−マンニトール、マルチトール、デキストラン、デンプン類、寒天、アルギネート類、キチン類、キトサン類、ペクチン類、トランガム類、アラビアゴム類、ゼラチン類、コラーゲン類、カゼイン、アルブミン、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グリセリン、ポリエチレングリコール、炭酸水素ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク等が用いられる。さらに、錠剤は必要に応じて通常の剤皮を施した錠剤、たとえば糖衣錠、腸溶性コーティング錠、フィルムコーティング錠あるいは二層錠、多層錠とすることができる。
半固体製剤とする場合は、動植物性油脂(オリーブ油、トウモロコシ油、ヒマシ油等)、鉱物性油脂(ワセリン、白色ワセリン、固形パラフィン等)、ロウ類(ホホバ油、カルナバロウ、ミツロウ等)、部分合成もしくは全合成グリセリン脂肪酸エステル(ラウリル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸等)等が用いられる。これらの市販品の例としては、ウイテプゾール(ダイナミッドノーベル社製)、ファーマゾール(日本油脂社製)等が挙げられる。
液体製剤とする場合は、添加剤、たとえば塩化ナトリウム、グルコース、ソルビトール、グリセリン、オリーブ油、プロピレングリコール、エチルアルコール等が挙げられる。特に注射剤とする場合は、無菌の水溶液、たとえば生理食塩水、等張液、油性液、たとえばゴマ油、大豆油が用いられる。また、必要により適当な懸濁化剤、たとえばカルボキシメチルセルロースナトリウム、非イオン性界面活性剤、溶解補助剤、たとえば安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。さらに、点眼剤とする場合は水性液剤または水溶液が用いられ、特に、無菌の注射用水溶液があげられる。この点眼用液剤には緩衝剤(刺激軽減のためホウ酸塩緩衝剤、酢酸塩緩衝剤、炭酸塩緩衝剤等が好ましい)、等張化剤、溶解補助剤、保存剤、粘稠剤、キレート剤、pH調整剤(pHは通常約6〜8.5に調整することが好ましい)、芳香剤のような各種添加剤を適宜添加してもよい。これらの製剤の有効成分の量は製剤の0.1〜100重量%であり、適当には1〜50重量%である。投与量は患者の症状、体重、年令等により変わりうるが、通常経口投与の場合、成人一日当たり1〜500mg程度であり、これを一回または数回に分けて投与するのが好ましい。
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
なお、以下の実施例中「室温」は0〜30℃を示し、「%」は特記しない限り重量パーセントを意味する。また、混合溶媒を用いる場合の溶媒比は容積比を示す。
(製造例1)
〔化合物(A)(化合物(6)においてR1=メチレン、A1及びA2=フェニレン、R4及びR5=ジメチルアミノナフチル)の合成〕
Figure 2006206490
4,4’−ビス(ペンタフルオロフェノキシカルボニルメトキシ)ジフェニルメタン(245mg、0.38mmol)、5−ジメチルアミノナフタレン−1−(N−2−アミノエチル))スルフォンアミド(222mg、0.76mmol)、及びトリエタノールアミン(以下、TEAともいう)(0.11mL、0.8mmol)をCH2Cl2(15mL)に加え、室温で撹拌した。24時間後、反応混合物をH2Oで洗浄し、MgSO4で乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。残渣を、酢酸エチルを溶離液とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色の固体(0.32g)を収率97%で得た。これをさらに、CH2Cl2−ヘキサンにより再結晶することで、黄色の針状結晶を得た。
mp 132−133℃。1HNMR(600MHz:CDCl3) δ:2.85(s,12H)、3.38(s,4H)、3.05−3.08(m,4H)、3.88(s,2H)、4.32(s,4H)、5.30(t,2H,J=11.7Hz)、6.78(d,4H,J=8.6Hz)、6.89(br t,2H,J=5.8Hz)、7.10(d,4H,J=8.6Hz)、7.15(d,2H,J=7.2Hz)、7.50(d,1H,J=7.56Hz)、7.51(d,1H,J=7.2Hz)、7.55(dd,2H,J=8.6、7.56Hz)、8.219(d,1H,J=7.2Hz)、8.221(d,1H,J=7.56Hz)、8.23(d,1H,J=8.6Hz)、8.53(d,2H,J=8.6Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C4551682):867.3209、実測値:867.3208[M+1]+
〔化合物(B)(化合物(7)においてR1=メチレン、A1及びA2=フェニレン、R4及びR5=ジメチルアミノナフチル)の合成〕
Figure 2006206490
化合物(A)(303mg、0.35mmol)をテトラヒドロフラン(以下、「THF」と略す)(10mL)に加え、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。BH3・SMe3(0.42mL、4.2mmol)を加えた。反応混合物を80℃で24時間撹拌し、その後、室温にまで冷却した。0.7M 塩化水素−メタノール溶液(3mL)を加え、反応混合物を1時間還流して、減圧下で溶媒を留去した。残渣は、過剰の25%NH4OHでpH11になるよう塩基性化した。混合物は、CH2Cl2(30mL)で抽出し、飽和食塩水で洗浄後、Na2SO4で乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、黄色の油状物質を得た。これを、酢酸エチル:メタノール(9:1)を溶離液とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、黄色のアモルファス状物質(264mg)を収率90%で得た。これを、更に精製することなしに次の反応に用いた。
1HNMR(600MHz:CDCl3) δ:2.60(t,4H,J=5.2Hz)、2.62−2.64(m,4H)、2.86(s,12H)、2.92−2.94(m,4H)、3.76(t,4H,J=5.2Hz)、3.86(s,2H)、6.74(d,4H,J=8.6,1.7Hz)7.07(d,4H,J=8.6Hz)、7.12(d,2H,J=6.9Hz)、7.508(dd,2H,J=8.6,7.6Hz)、7.514(dd,2H,J=8.6,7.2Hz)、8.256 (d,1H,J =7.2 Hz)、8.258(d,1H,J=7.2Hz)、8.28(d,2H,J=8.6Hz)、8.52(d,2H,J=8.6Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C4555662):839.3624、実測値:839.3620[M+1]+
〔化合物(C)の合成〕
Figure 2006206490
化合物(B)(84mg,0.1mmol)、1−カルボキシメチル−4,7,10−トリス(tert−ブトキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(106mg,0.2mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(45mg,0.23mmol)及びTEA(32μL,0.23mmol)をCH2C12(5mL)に加え、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。反応混合物を、CH2Cl2(15mL)で希釈し、2N NaOHで洗浄し、Na2S04で乾燥させた。溶媒を減圧下で濃縮した。残渣は、酢酸エチル:メタノール(9:1)を溶離液とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、薄黄色の粉末状物質(60mg)を収率32%で得た。これを、更に精製することなしに次の反応に用いた。
mp 118−121℃。1H NMR(600MHz:CDCl3) δ:1.40−1.47(m,54H)、2.87(s,12H)、2.98−3.72(m,SOH)、3.83−3.85(m,2H)、4.06(br s,4H)、6.68−6.69(m,2H)、6.76−6.78(m,2H)、7.01−7.07(m,4H)、7.15−7.17(m,2H)、7.43−7.53(m,4H)、8.14−8.21(m,2H)、8.25−8.28(m,2H)、8.49−8.52(m,2H)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C951431422):1864.0043、実測値:1864.0066[M+1]+。計算値(C9514214202):C,61.20;H,7.68;N,10.52、実測値:C,61.36;H,7.95;N,10.41。
〔化合物(D)(化合物(8))の合成〕
Figure 2006206490
化合物(C)(56mg,0.03mmol)及び濃塩酸をTHF(1mL)に加え、室温で撹拌した。24時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。酢酸エチル(2mL)を残渣に加えた後、固体をろ過により回収した。吸湿性の固体をTHF及びメタノールで粉砕し、減圧下で濃縮した後、吸湿性の白色粉末(46mg)を100%の収率で得た。
1HNMR(600MHz:D20) δ:2.60−3.10(m,32H)、3.13(s,3H)、3.14(s,3H)、3.15(s,3H)、3.16(s,3H)、3.22−3.26(m,4H)、3.44−3.48(m,6H)、3.53−3.56(m,8H)、3.91−3.95(m,4H)、6.59(d,1H,J=8.6Hz)、6.61(d,1H,J=8.9Hz)、6.64(d,1H,J=8.9Hz)、6.65(d,1H,J=8.9Hz)、6.97(d,1H,J=8.6Hz)、7.01(d,1H,J=8.6Hz),7.04(d,1H,J=8.9Hz)、7.07(d, 1H,J=8.9Hz)、7.53−7.59(m,2H)、7.44−7.51(m,2H)、7.68−7.71(m,2H)、7.82−7.85(m,2H)、8.13−8.19(m,2H)、8.32−8.36(m,2H)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C65951482):1263.6898。実測値:1263.6930[M−8 HCI+l]+。計算値(C65941482・8HC1):C,50.19;H,6.61;N,12.61、実測値:C,50.39;H,6.37;N,12.54。
(製造例2)
〔化合物(E)(化合物(6)においてR1=メチレン、A1及びA2=フェニレン、R4及びR5=メチルフェニル)の合成〕
Figure 2006206490
4,4’−ビス(ペンタフルオロフェノキシカルボニルメトキシ)ジフェニルメタン(450mg,0.69mmol)、N−(2−アミノエチル)−4−メチルベンゼンスルホンアミド(297mg,1.39mmol)、及びTEA(0.21mL,1.5mmol)をCH2C12(30mL)に加え、室温で撹拌した。24時間後、この反応混合物を水で洗浄し、MgS04で乾燥した。その後、減圧下で溶媒を留去した。残渣を、溶離液として酢酸エチルを用い、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色のアモルファス状物質(0.274g)を収率49%で得た。
1HNMR(600MHz:CDC13) δ:2.37(s,6H)、3.11−3.13(m,4H)、3.42−3.44(m,4H)、3.87(s,2H)、4.40(s,4H)、5.07(t,2H,J=5.8Hz)、6.82(d,4H,J=8.6Hz)、6.98(br t,2H,J=5.8Hz)、7.11(d,4H,J=8.6Hz)、7.28(d,2H,J=7.9Hz)、7.71(d,1H,J=8.2Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C3541482):709.2365。実測値:709.2365[M+l]+
〔化合物(F)(化合物(7)においてR1=メチレン、A1及びA2=フェニレン、R4及びR5=メチルフェニル)の合成〕
Figure 2006206490
化合物(E)(270mg、0.38mmol)をTHF(15mL)に加え、窒素雰囲気下、室温で撹拌した。BH3・SMe3(0.5mL、5mmol)を加えた。反応混合物を80℃で24時間撹拌し、その後、室温にまで冷却した。0.7M 塩化水素−メタノール溶液(5mL)を加え、反応混合物を1時間還流して、減圧下で溶媒を留去した。残渣は、過剰の25%NH4OHでpH11になるよう塩基性化した。混合物は、CH2Cl2(30mL)で抽出し、飽和食塩水で洗浄後、Na2SO4で乾燥した。減圧下で溶媒を留去し、黄色の油状物質を得た。これを、クロロホルム:メタノール(10:1)を溶離液とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、無色の油状物質(210mg)を収率81%で得た。これを、更に精製することなしに次の反応に用いた。
1HNMR(600MHz:CDC13) δ:2.40(s,6H)、2.74−2.75(m,4H)、2.84(t,4H,J=5.5Hz)、3.00−3.01(m,4H)、3.86(s,2H)、3.86(s,2H)、3.94(t,4H,J=5.1Hz)、5.01(br,2H)、6.79(d,4H,J=8.59Hz)、7.07(d,4H,J=8.93Hz)、7.27(d,4H,J=8.25Hz)、7.74(d,4H,J=8.25Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C3545462):681.2780、実測値:681.2780[M+l]+
〔化合物(G)及び化合物(H)の合成〕
Figure 2006206490
Figure 2006206490
化合物(F)(136mg,0.2mmol)、1−カルボキシメチル−4,7,10−トリス(tert−ブトキシカルボニル)−1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン(212mg,0.4mmol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノ−プロピル)カルボジイミド塩酸塩(88mg,0.46mmol)及びTEA(64μL,0.46mmol)を、CH2Cl2(10mL)に加え、窒素雰囲気下、室温で24時間撹拌した。反応混合物をCH2Cl2(30mL)希釈し、2N NaOHで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。溶媒を、減圧下で濃縮した。残渣を、酢酸エチル:メタノール(9:1)及びクロロホルム:メタノール(10:1)を溶離液とし、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、白色の粉末状の化合物(G)(78mg)を収率23%で、また、白色の粉末状の化合物(H)(117mg)を49%で得た。これを、更に精製することなしに次の反応に用いた。
化合物(G)
mp 123−126℃。1H NMR(600MHz:CDC13) δ:1.43−1.46(m,54H)、2.39(s,3H)、2.40(s,3H)、2.95−3.68(m,48H)、3.83−3.84(m,2H)、4.08−4.09(m,4H)、6.73(dd,2H,J=8.64,3.1Hz)、6.78(d,2H,J=8.58Hz)、7.04(d,2H,J=8.58Hz)、7.07(d,2H,J=8.64Hz)、7.25(d,4H,J=7.86Hz)、7.68(d,2H,J=8.22Hz)、7.70(d,2H,J=8.22Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C8513312202):1705.9199、実測値:1705.9210[M+l]+
化合物(H)
mp 97−98℃。1H NMR(600MHz:CDC13) δ:1.40−1.46(m,27H)、2.39−2.40(m,6H)、2.75(t,2H,J=5.82Hz)、2.84(t,2H,J=4.86Hz)、2.99−3.66(m,26H)、3.84−3.85(m,2H)、3.94(t,2H,J=4.86Hz)、4.08−4.09(m,2H)、6.73(d,2H,J=8.58Hz)、6.79(dd,2H,J=8.64,2.1Hz)、7.03−7.08(m,4H)、7.25(d,2H,J=8.22Hz)、7.27(d,2H,J=8.22Hz)、7.68(d,1H,J=8.28Hz)、7.70(d,1H,J=8.22Hz)、7.74(d,2H,J=8.28Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C60898132):1193.5984、実測値:1193.5984[M+l]+
〔化合物(I)(化合物(8))の合成〕
Figure 2006206490
化合物(G)(68mg,0.04mmol)及び濃塩酸(0.3mL)をTHF(1mL)に加え、室温で撹拌した。24時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。固体をろ過により回収した。吸湿性固体をTHF及びメタノールの混合液で粉砕し、減圧下で濃縮することにより、吸湿性の白色粉末(55mg)を収率100%で得た。
1HNMR(600MHz:D20) δ:2.11−2.13(m,6H)、2.62−3.02(s,36H)、3.23−3.28(m,4H)、3.49−3.52(m,8H)、3.70(t,2H,J=7.9Hz)、3.92−3.94(m,2H)、3.98(t,2H,J=5.1Hz)、6.61−6.66(m,4H)、7.01−7.09(m,8H)、7.29(d,4H,J=8.24Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C55851282):1105.6054、実測値:1105.6051[M−8HCl+l]+
〔化合物(J)(化合物(8))の合成〕
Figure 2006206490
化合物(H)(90mg,0.075mmol)及び濃塩酸(0.3mL)をTHF(1mL)に加え、室温で撹拌した。24時間後、反応混合物を減圧下で濃縮した。残渣に酢酸エチル(2mL)を加えた後、固体をろ過により回収した。吸湿性固体をTHF及びメタノールの混合液で粉砕し、減圧下で濃縮することにより、吸湿性の白色粉末(80mg)を収率100%で得た。
1HNMR(600MHz:D20) δ:2.14−2.16(m,6H)、2.86−3.00(s,20H)、3.24−3.29(m,4H)、3.41−3.45(m,2H)、3.48−3.50(m,4H)、3.71(d,4H,J=7.56Hz)、3.94(t,1H,J=5.1Hz)、3.98(t,1H,J=5.1Hz)、4.05−4.07(m,2H)、6.62(d,2H,J=8.93Hz)、6.66(d,2H,J=8.59Hz)、6.75(d,1H,J=8.93Hz)、6.76(d,1H,J=8.59Hz)、7.03−7.10(m,6H)、7.13−7.15(m,2H)、7.34(dd,2H,J=8.59,2.2Hz)、7.45(d,2H,J=8.25Hz)。HRMS(FAB)(m/z) 計算値(C4565872):893.4417、実測値:893.4422[M−5HCl+l]+
(試験例)
以下に本発明化合物の薬理作用を具体的に示すが、これらに限定されるものではない 。
本発明の化合物として、上記方法により製造された化合物(D)(DNCn)、化合物(I)(TsDCn)及び化合物(J)(TsMCn)を用い、以下の試験に供した。
また、対照例として、化合物(B)(以下、ACPDnともいう)、及び、下記式
Figure 2006206490
で示される化合物(L)(以下、CPCnともいう)を用いて、これらの化合物がNMDA受容体の活性に及ぼす影響を二電極膜電位固定法(Voltage Clamp法)により測定した。
(1)NMDA受容体を発現したアフリカツメガエルの卵母細胞の準備
卵母細胞の発現試験例のスキームを図1に示す。
卵母細胞にはNR1及びNR2のcRNAを1:5の割合(NR1が0.1−4ng、NR2が0.5−20ng)で注入し、NMDA受容体を発現した卵母細胞を得た。
この卵母細胞をCulture medium(96mM NaCl、2mM KCl、1mM MgCl2、1.8mM CaCl2、5mMNa−HEPES、2.5mM sodium pyruvate、50μg/ml gentamycin、pH=7.5)中で1〜3日間19℃で培養した。
測定日には、卵母細胞中にK+−BAPTAを注入した後、Recording buffer(96mM NaCl、2mM KCl、1.8mM BaCl2、10mM Na−HEPES、pH=7.5)を用いて後述の二電極膜電位固定法により活性を測定した。
なお、NR1は1種類、NR2はNR2A〜NR2Dの4種類の遺伝子が存在するが、NR1/NR2A、NR1/NR2B、NR1/NR2C及びNR1/NR2Dの全てのNMDA受容体サブタイプを準備した。
(2)二電極膜電位固定法
二電極膜電位固定法は、Williamsらの方法(非特許文献2)に従った。二電極膜電位固定用増幅器CEZ−1250(日本光電)を用いて、卵母細胞の膜全体を通過する電流を測定した。電極に3M 塩化カリウムを満たし、抵抗は0.4−4MΩとした。また、測定の際は、NMDA受容体のアゴニストとしてグルタミン酸とグリシンを添加した。
(3)CPCn,DNCn,TsDCn,TsMCn及びACPDnがNMDA受容体(NR1/NR2A及びNR1/MR2B)に与える影響の測定
上記方法により得られた卵母細胞に、10μMのCPCn,DNCn,TsDCn,TsMCn及びACPDnを添加し、固定電位をVh=−70mV(静止膜電位)として測定した。例数4〜5の卵母細胞から得た値の平均値±S.E.M.を測定値とした。結果を図2に示す。
図2に示すように、比較例として用いたACPDnでは、ほとんど効果が認められなかった。これに対して、DNCn,TsDCn及びTsMCnでは、参考例として用いたCPCnと同様又はそれ以上に顕著な阻害効果が認められた。特に、DNCnでは、優れたNMDA受容体阻害効果を示した。
なお、脳内においては、NR1/NR2A及びNR1/MR2Bサブタイプが広く発現していると考えられており、ここでは、この2種類のNMDA受容体サブタイプに対する活性阻害効果について測定した。
(4)DNCnがNMDA受容体(NR1/NR2A、NR1/NR2B、NR1/NR2C及びNR1/NR2D)に与える影響の測定
上記方法により得られた卵母細胞に、10μMのDNCnを添加し、固定電位をVh=−70mV(静止膜電位)とし、全てのNMDA受容体サブタイプに対する活性阻害効果を測定した。4つの卵母細胞から得た値の平均値±S.E.M.を測定値とした。結果を図3に示す。
図3に示すように、全てのNMDA受容体サブタイプにおいて、NMDA受容体活性阻害効果が認められた。
(5)DNCnの濃度とNR1/NR2A受容体阻害効果との関係
上記方法により得られた卵母細胞に、種々の濃度のDNCnを添加し、固定電位をVh=−70mV(静止膜電位)として、NR1/NR2A受容体に対する活性阻害効果を測定した。IC50は0.35μMであった。結果を図4に示す。
なお、従来よりNMDA受容体の活性阻害効果が知られている化合物として、例えばMRZ 2/579及び1−アミノ−3,5−ジメチル−アダマンタン(以下、メマンチンともいう)が挙げられる。非特許文献3には、MRZ 2/579及びメマンチンを用いた場合のNR1/NR2Aに対するIC50の値が報告されており、各々0.49、0.89となっている。これに対し、DNCnではIC50が0.35μMと低く、低濃度で優位な阻害効果が得られることが示された。
図1は、アフリカツメガエル卵母細胞を用いたNMDA受容体発現系のスキームを示す。 図2は、NR1/NR2A及びNR1/NR2B受容体に対する、CPCn、DNCn、TsDCn、TsMCn及びACPDnの影響を二電極膜電位固定法により測定した結果を示す。 図3は、DNCnのNR1/NR2A、NR1/NR2B、NR1/NR2C及びNR1/NR2D受容体に対する影響を二電極膜電位固定法により測定した結果を示す。 図4は、DNCnの濃度を変化させた場合のNR1/NR2A受容体に対する影響を二電極膜電位固定法により測定した結果を示す。

Claims (14)

  1. 下記式(1)
    Figure 2006206490
    [式(1)中、A1及びA2は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族基であり;X1及びX2は、それぞれ独立に、酸素原子又は2つの水素原子であり;R1は、−C(O)−又はCRR’(R及びR’は、それぞれ独立に、水素原子、ヒドロキシル基又はC1−C6の炭化水素基である)であり;R2及びR3は、それぞれ独立に、水素原子又はR6−Z1−(Z1は−CH2C(O)−又は−CH2CH2−であり、R6はアザシクロアルカンである)であり、かつ、R2又はR3の少なくとも一方は、R6−Z1−であり;R4及びR5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい複素環基又は置換基を有していてもよい芳香族基である。]で示される化合物又はその塩若しくはその水和物。
  2. 前記一般式(1)中のX1及びX2が2つの水素原子である、請求項1に記載の化合物又はその塩若しくはその水和物。
  3. 前記一般式(1)中のA1及びA2がフェニレン基である、請求項1又は請求項2に記載の化合物又はその塩若しくはその水和物。
  4. 前記一般式(1)中のR1が−C(O)−、−CH2−又は−C(CH32−である、請求項1〜3のいずれかに記載の化合物又はその塩若しくはその水和物。
  5. 前記アザシクロアルカンが、1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン、1,4,8,11−テトラアザシクロテトラデカン、1,3,8,12−テトラアザシクロペンタデカン又は1,5,9−トリアザシクロドデカンのいずれかである、請求項1〜4のいずれかに記載の化合物又はその塩若しくはその水和物。
  6. 前記一般式(1)中のR4及びR5が、それぞれ独立に、置換基を有していてもよいフェニル基又はナフチル基である、請求項1〜5のいずれかに記載の化合物又はその塩若しくはその水和物。
  7. 請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物を含有してなる医薬組成物。
  8. グルタミン酸受容体機能抑制剤である請求項7に記載の組成物。
  9. NMDA受容体機能抑制剤である請求項7に記載の組成物。
  10. 細胞死抑制剤である請求項7に記載の組成物。
  11. 脳機能保護薬である請求項7に記載の組成物。
  12. 哺乳動物に請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物におけるグルタミン酸受容体機能抑制方法。
  13. 哺乳動物に、請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における細胞死抑制方法。
  14. 哺乳動物に、請求項1に記載の化合物またはその塩若しくはその水和物の有効量を投与することを特徴とする、該哺乳動物における脳機能保護方法。
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